(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025258
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】冷却用熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/10 20060101AFI20250214BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20250214BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20250214BHJP
F28D 7/08 20060101ALI20250214BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20250214BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20250214BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20250214BHJP
【FI】
F28F1/10 Z
F28F1/02 A
F28F21/06
F28D7/08
F28D15/02 E
B60K11/04 G
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129871
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】杠 千秋
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一朗
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】小瀬 峻久
(72)【発明者】
【氏名】杉江 陽成
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
3L103
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC14
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH04
3D235HH51
3L103AA03
3L103AA37
3L103BB37
3L103CC01
3L103DD06
3L103DD32
3L103DD98
(57)【要約】
【課題】部品点数の少ない簡単な構成によって、高い冷却効率を安定して実現することができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供する。
【解決手段】冷却対象34を冷却するための冷却用熱交換器10であって、冷却用の熱通路部材12の表面に対して、弾性基材22に多数の熱伝導フィラー24が混合された伝熱弾性体14が密着状態で形成されており、伝熱弾性体14には冷却対象34に追従した変形が許容されて冷却対象34に重ね合わされる冷却面26が形成されており、伝熱弾性体14における多数の熱伝導フィラー24によって冷却面26と冷却用の熱通路部材12との間の熱伝導パスが構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器であって、
冷却用の熱通路部材の表面に対して、弾性基材に多数の熱伝導フィラーが混合された伝熱弾性体が密着状態で形成されており、
該伝熱弾性体には前記冷却対象に追従した変形が許容されて該冷却対象に重ね合わされる冷却面が形成されており、
該伝熱弾性体における該多数の熱伝導フィラーによって該冷却面と該冷却用の熱通路部材との間の熱伝導パスが構成されている冷却用熱交換器。
【請求項2】
前記多数の熱伝導フィラーが前記冷却用の熱通路部材と前記冷却面との間でそれら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に延びる直線状に配向されることによって、それら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に延びる形態をもって前記熱伝導パスが該多数の熱伝導フィラーによって構成されている請求項1に記載の冷却用熱交換器。
【請求項3】
前記熱伝導フィラーが磁性材料で形成されており、前記伝熱弾性体の内部において特定方向の磁路を形成する形態をもって多数の該熱伝導フィラーが配向されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項4】
前記冷却用の熱通路部材がパイプ部材を含んで構成されており、
冷却用の熱媒体が流れる冷却通路が該パイプ部材の内孔によって構成されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項5】
前記パイプ部材が非磁性材料で形成されていると共に、前記熱伝導フィラーが磁性材料で形成されている請求項4に記載の冷却用熱交換器。
【請求項6】
前記パイプ部材における前記伝熱弾性体に固着された部分が、前記冷却面に対する直交方向での投影において幅広とされた扁平筒状とされている請求項4に記載の冷却用熱交換器。
【請求項7】
前記冷却用の熱通路部材は、内部に冷却用の熱媒体が流れる冷却通路を備えた袋体を含んで構成されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項8】
前記冷却用の熱通路部材は、合成樹脂製の通路形成部材の表面に伝熱性蓋体が積層状態で固着された構造を有しており、
該通路形成部材には表面に開口する空所が設けられており、該空所の開口が該伝熱性蓋体で覆われることによって冷却用の熱媒体が流れる冷却通路が形成されており、
該伝熱性蓋体の表面に対して前記伝熱弾性体が密着状態で形成されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項9】
前記冷却用の熱通路部材がヒートパイプを含んで構成されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項10】
前記伝熱弾性体には複数の前記冷却面が設けられており、それら複数の冷却面に複数の前記冷却対象がそれぞれ重ね合わされている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項11】
前記伝熱弾性体が板状とされて、一対の前記冷却面が該伝熱弾性体の板厚方向の両面に設けられており、それら一対の冷却面に各別の前記冷却対象がそれぞれ重ね合わされている請求項10に記載の冷却用熱交換器。
【請求項12】
前記冷却用の熱通路部材が少なくとも一部において並列的に配置されており、
該冷却用の熱通路部材と前記冷却面との対向間に配された前記伝熱弾性体における熱伝達方向での前記熱伝導フィラーの配向率よりも、隣り合う該冷却用の熱通路部材の間に配された該伝熱弾性体における熱伝達方向での該熱伝導フィラーの配向率が低くされている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項13】
前記伝熱弾性体が発泡体とされている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項14】
冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器の製造方法であって、
冷却用の熱通路部材を準備する準備工程と、
弾性基材に磁性材料からなる多数の熱伝導フィラーが混合された形成材料を、該冷却用の熱通路部材がセットされた成形用金型のキャビティに充填して、該冷却対象に重ね合わされる冷却面を備えた伝熱弾性体を該冷却用の熱通路部材の表面に対して密着状態となるようにインサート成形する成形工程とを、有し、
該成形工程において、該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向間に磁場を及ぼして、それら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に該熱伝導フィラーを配向させる冷却用熱交換器の製造方法。
【請求項15】
冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器の製造方法であって、
冷却用の熱通路部材を準備する準備工程と、
弾性基材に磁性材料からなる多数の熱伝導フィラーが混合された形成材料を、該冷却用の熱通路部材がセットされた成形用金型のキャビティに充填して、該冷却対象に重ね合わされる冷却面を備えた伝熱弾性体を該冷却用の熱通路部材の表面に対して密着状態となるようにインサート成形する成形工程とを、有し、
該成形工程において、該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向方向に対して傾斜する磁場を該熱伝導フィラーに及ぼして、多数の該熱伝導フィラーを該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向方向に対して傾斜する方向に配向させる冷却用熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の電動化車両においてバッテリーパック等の冷却対象の冷却に用いられる冷却用熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動化車両において、冷却対象であるバッテリーパックや電子機器等は、小型化や高性能化によって発熱量が大きくなっており、冷却性能の重要性が増している。バッテリーパック等の冷却には、従来、相互に重ね合わされた金属製のプレート間に冷却通路が形成された構造の冷却用熱交換器が採用されていた。この冷却用熱交換器は、一方のプレートがバッテリーパック等の冷却対象に重ね合わされており、当該一方のプレートが冷却通路を流れる冷媒で冷却されることによって冷却対象が冷却されるようになっている。
【0003】
また、電動化車両では車両の軽量化への強い要求があることから、冷却用熱交換器の軽量化も検討されている。例えば、特開2020-088108号公報(特許文献1)には、冷却対象に重ね合わされて高い熱伝導率が求められる一方のプレートを金属製冷却パネルとし、熱伝導性能を求められない他方のプレートを金属よりも比重が小さい合成樹脂製の樹脂製流路とすることが提案されている。特許文献1において、樹脂製流路は板状とされており、樹脂製流路の表面に開口する溝が金属製冷却パネルで覆われることによって、内部に冷媒が流れる冷却通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き従来の冷却用熱交換器を使用する場合に、冷却対象を効率よく冷却するために、バッテリーパック等の冷却対象と、冷却対象に対する重ね合わせ面である冷却面との間に、熱伝導層が設けられる。熱伝導層は、例えば、弾性変形可能なシートや粘性を有するゲル等で形成されており、冷却用熱交換器の冷却面と冷却対象の各重ね合わせ面における微小な凹凸に起因する隙間を充填することで、冷却用熱交換器と冷却対象との間での熱交換効率の向上を図るものである。
【0006】
しかし、このような熱伝導層は、冷却用熱交換器と冷却対象との組付け時に冷却面と冷却対象との重ね合わせ面間に設けられることから、部品点数の増加や、組付け作業の煩雑化が問題になる。特に、熱伝導層は、冷却面と冷却対象との重ね合わせ面に対して位置決めされた状態で配される必要があるが、冷却面に対して冷却対象を熱伝導層を介して重ね合わせる際に、熱伝導層がずれるおそれがあり、冷却面と冷却対象との実質的な重ね合わせ面積が小さくなって、熱交換効率が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明の解決課題は、部品点数の少ない簡単な構成によって、高い冷却効率を安定して実現することができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供することにある。
【0008】
また、上述の如き新規な構造の冷却用熱交換器の製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第一の態様は、冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器であって、冷却用の熱通路部材の表面に対して、弾性基材に多数の熱伝導フィラーが混合された伝熱弾性体が密着状態で形成されており、該伝熱弾性体には前記冷却対象に追従した変形が許容されて該冷却対象に重ね合わされる冷却面が形成されており、該伝熱弾性体における該多数の熱伝導フィラーによって該冷却面と該冷却用の熱通路部材との間の熱伝導パスが構成されているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、冷却用の熱通路部材と冷却対象との間に別体の熱伝導層を設けることなく、冷却用の熱通路部材と冷却対象とを伝熱弾性体を介して密着させることができる。しかも、弾性基材に多数の熱伝導フィラーが混合された伝熱弾性体は、多数の熱伝導フィラーによる熱伝導パスが構成されていることから、冷却面と冷却用の熱通路部材との間に介在しても、冷却面と冷却用の熱通路部材との間での熱の伝達を十分に許容する。それゆえ、冷却用の熱通路部材と冷却対象との間での効率的な熱交換による冷却対象の有効な冷却が、少ない部品点数で実現される。
【0012】
さらに、伝熱弾性体は、冷却用の熱通路部材の表面に対して密着状態で形成されていることから、例えば冷却対象が冷却面に重ね合わされる際に、伝熱弾性体が冷却用の熱通路部材に対してずれることがなく、冷却面が冷却用の熱通路部材に対する位置決め状態に保持される。それゆえ、冷却面が熱通路部材によって安定して冷却されて、冷却面に重ね合わされる冷却対象の安定した冷却が実現される。
【0013】
第二の態様は、第一の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記多数の熱伝導フィラーが前記冷却用の熱通路部材と前記冷却面との間でそれら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に延びる直線状に配向されることによって、それら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に延びる形態をもって前記熱伝導パスが該多数の熱伝導フィラーによって構成されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、冷却用の熱通路部材と冷却対象に重ね合わされる冷却面との対向方向に延びる熱伝導パスによって、冷却用の熱通路部材と冷却対象との間での熱交換が効率的に生じて、冷却対象を効果的に冷却することができる。特に、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に延びる熱伝導パスによって、冷却用の熱通路部材から冷却面へ短い経路で熱が伝達されることから、冷却効率の更なる向上が図られる。
【0015】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記熱伝導フィラーが磁性材料で形成されており、前記伝熱弾性体の内部において特定方向の磁路を形成する形態をもって多数の該熱伝導フィラーが配向されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、例えば伝熱弾性体の成形時に磁場を作用させることにより、熱伝導フィラーを特定方向に配向させることが可能であり、熱伝導パスを簡単に且つ高い熱伝導率をもって形成することができる。
【0017】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却用の熱通路部材がパイプ部材を含んで構成されており、冷却用の熱媒体が流れる冷却通路が該パイプ部材の内孔によって構成されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、冷却用の熱媒体がパイプ部材の内孔を流れることによってパイプ部材が冷却状態に保持されることから、パイプ部材と冷却対象との熱交換によって冷却対象が持続的に冷却される。また、冷却通路の壁部がパイプ部材で構成されることにより、冷却通路から熱媒体が漏出するのを防ぐことができる。
【0019】
第五の態様は、第四の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記パイプ部材が非磁性材料で形成されていると共に、前記熱伝導フィラーが磁性材料で形成されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、例えば伝熱弾性体の成形時に磁場を及ぼして熱伝導フィラーを特定方向に配向させる場合に、パイプ部材が非磁性材料で形成されていれば、パイプ部材が磁束を誘導する等して磁場を乱すことがなく、目的とする熱伝導パスを形成し易くなる。
【0021】
第六の態様は、第四又は第五の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記パイプ部材における前記伝熱弾性体に固着された部分が、前記冷却面に対する直交方向での投影において幅広とされた扁平筒状とされているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、冷却面に対するパイプ部材の投影面積が大きくなることによって、冷却面をより効率的に冷却することができる。
【0023】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却用の熱通路部材は、内部に冷却用の熱媒体が流れる冷却通路を備えた袋体を含んで構成されているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、冷却用の熱通路部材が袋体とされることによって、熱通路部材の製造が容易になる。また、袋体の内部に形成された冷却通路に冷却用の熱媒体を流すことにより、袋体が冷却状態に保持されて、袋体と冷却対象との熱交換による冷却対象の冷却が持続的に実現される。また、袋体で構成された冷却用の熱通路部材自体が表面の変形を許容されることから、冷却対象に追従する冷却面の変形がより大きな自由度で許容されて、冷却対象に対する冷却面の密着性を高めることができる。
【0025】
第八の態様は、第一~第七の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却用の熱通路部材は、合成樹脂製の通路形成部材の表面に伝熱性蓋体が積層状態で固着された構造を有しており、該通路形成部材には表面に開口する空所が設けられており、該空所の開口が該伝熱性蓋体で覆われることによって冷却用の熱媒体が流れる冷却通路が形成されており、該伝熱性蓋体の表面に対して前記伝熱弾性体が密着状態で形成されているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、通路形成部材と伝熱性蓋体との重ね合わせ面間に冷却通路が形成された冷却用の熱通路部材を採用する場合に、伝熱性蓋体の表面に対して伝熱弾性体を密着状態で形成することによって、伝熱性蓋体と冷却対象とを伝熱弾性体を介して密着させることで、冷却対象を有効に冷却することができる。
【0027】
第九の態様は、第一~第八の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却用の熱通路部材がヒートパイプを含んで構成されているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、ヒートパイプの低温部の表面に伝熱弾性体を形成して冷却面を設定することにより、冷却面に重ね合わされる冷却対象を有効に冷却することができる。
【0029】
第十の態様は、第一~第九の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記伝熱弾性体には複数の前記冷却面が設けられており、それら複数の冷却面に複数の前記冷却対象がそれぞれ重ね合わされているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、1つの冷却用熱交換器によって、複数の冷却対象を冷却することができる。なお、複数の冷却対象は、例えば、それぞれ別部材であってもよいし、1つの部材の異なる複数箇所であってもよい。
【0031】
第十一の態様は、第十の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記伝熱弾性体が板状とされて、一対の前記冷却面が該伝熱弾性体の板厚方向の両面に設けられており、それら一対の冷却面に各別の前記冷却対象がそれぞれ重ね合わされているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、1つの冷却用熱交換器によって2つの冷却対象を冷却することができる。また、例えば、冷却用熱交換器と冷却対象とを伝熱弾性体の板厚方向で交互に配して積層状態で重ね合わせれば、各冷却対象の両面をそれぞれ冷却用熱交換器によって冷却することもできる。
【0033】
第十二の態様は、第一~第十一の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却用の熱通路部材が少なくとも一部において並列的に配置されており、前記伝熱弾性体における該冷却用の熱通路部材と前記冷却面との対向間に配された部分での前記熱伝導フィラーの配向率よりも、該伝熱弾性体における隣り合う該冷却用の熱通路部材の間に配された部分での該熱伝導フィラーの配向率が低くされているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、例えば、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向間において熱伝導フィラーをそれら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に配向させて、冷却用の熱通路部材と冷却面との間での熱伝導率を高めつつ、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向間を外れた部分では、熱伝導フィラーの配向率を低くして散在させることで、近傍に配置された冷却用の熱通路部材から熱が伝達され易くすることもできる。
【0035】
第十三の態様は、第一~第十二の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記伝熱弾性体が発泡体とされているものである。
【0036】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、伝熱弾性体の柔軟性を高めることができて、冷却対象に対する冷却面の変形追従性が向上する。また、伝熱弾性体の密度が小さくなることで、冷却用熱交換器の軽量化を実現し易くなる。
【0037】
第十四の態様は、冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器の製造方法であって、冷却用の熱通路部材を準備する準備工程と、弾性基材に磁性材料からなる多数の熱伝導フィラーが混合された形成材料を、該冷却用の熱通路部材がセットされた成形用金型のキャビティに充填して、該冷却対象に重ね合わされる冷却面を備えた伝熱弾性体を該冷却用の熱通路部材の表面に対して密着状態となるようにインサート成形する成形工程とを、有し、該成形工程において、該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向間に磁場を及ぼして、それら冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に該熱伝導フィラーを配向させるものである。
【0038】
本態様に従う冷却用熱交換器の製造方法によれば、伝熱弾性体の成形工程において、成形用金型のキャビティに充填された伝熱弾性体の形成材料に磁場を及ぼすことにより、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向間において、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に熱伝導フィラーを簡単に配向させることができる。
【0039】
また、伝熱弾性体の形成材料に磁場を及ぼす際に、冷却用の熱通路部材と冷却面との対向間を外れた部分では、例えば磁場の作用を阻害したり作用する磁力を小さくする等して、熱伝導フィラーの配向率を、冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向間に比して低くするようにしてもよい。これにより、当該部分において熱伝導フィラーを分散させて、当該部分による冷却面から冷却用の熱通路部材への伝熱量の低下を抑えることなども可能になる。
【0040】
第十五の態様は、冷却対象を冷却するための冷却用熱交換器の製造方法であって、冷却用の熱通路部材を準備する準備工程と、弾性基材に磁性材料からなる多数の熱伝導フィラーが混合された形成材料を、該冷却用の熱通路部材がセットされた成形用金型のキャビティに充填して、該冷却対象に重ね合わされる冷却面を備えた伝熱弾性体を該冷却用の熱通路部材の表面に対して密着状態となるようにインサート成形する成形工程とを、有し、該成形工程において、該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向方向に対して傾斜する磁場を該熱伝導フィラーに及ぼして、多数の該熱伝導フィラーを該冷却用の熱通路部材と該冷却面との対向方向に対して傾斜する方向に配向させるものである。
【0041】
本態様に従う冷却用熱交換器の製造方法によれば、伝熱弾性体の成形工程において、成形用金型のキャビティに充填された伝熱弾性体の形成材料に磁場を及ぼすことにより、磁性材料からなる熱伝導フィラーを特定の方向に簡単に配向させることができる。
【0042】
熱伝導フィラーを冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向に対して傾斜する方向に配向させることにより、例えば冷却用の熱通路部材と冷却面との対向方向の伝熱効率を調節することも可能になり、後述する実施形態に例示するように冷却対象が冷却面に押し当てられることで伝熱弾性体が圧縮された状態において、熱伝導フィラーが相互に接近することを利用して冷却性能の向上を図ることなども可能になる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、冷却用熱交換器において、部品点数の少ない簡単な構成によって、高い冷却効率を安定して実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器を示す斜視図
【
図5】
図1に示す冷却用熱交換器の成形工程を示す断面図
【
図6】
図1に示す冷却用熱交換器の使用状態の斜視図
【
図7】
図6に示す冷却用熱交換器の使用状態の平面図
【
図8】本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器を示す断面図であって、
図9のVIII-VIII断面に相当する図
【
図10】本発明の第三の実施形態としての冷却用熱交換器を示す断面図
【
図11】本発明の別の一実施形態としての冷却用熱交換器の成形工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図1~
図4には、本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器10が示されている。冷却用熱交換器10は、後述するバッテリーパック34を冷却するための熱交換器であって、冷却用の熱通路部材を構成するパイプ部材12の表面に対して、伝熱弾性体14が密着状態で形成された構造を有している。
【0047】
パイプ部材12は、金属や合成樹脂等で形成されている。パイプ部材12は、非磁性材料で形成されていることが望ましく、例えばアルミニウム合金等の非磁性金属材料やポリアミド等の合成樹脂によって形成されている。パイプ部材12は、例えば、引抜加工や押出加工によって継ぎ目なく形成された継目なし管であってもよいし、板材を丸めて周上の一部で溶接した電縫管や鍛接した鍛接管であってもよい。
【0048】
パイプ部材12は、内孔が冷却用の熱媒体(冷媒)が流れる冷却通路16とされている。冷却通路16を流れる冷却用の熱媒体は、特に限定されるものではなく、空気等の気体であってもよいが、例えば、水、エチレングリコール等の不凍液などの液体が望ましい。
【0049】
パイプ部材12は、中間部分が折り返した蛇行状に延びており、左右方向に直線的に延びるストレート部18と、半円弧状に湾曲して延びる折返部20とを、長さ方向で交互に各複数備えている。複数のストレート部18,18は、上下方向において相互に離隔して並列的に配されている。パイプ部材12は、全長に亘って一定の断面形状及び断面積で延びていてもよいが、本実施形態では、
図2,
図3に示すように、後述する伝熱弾性体14から突出した両端部分が略円形断面とされていると共に、伝熱弾性体14に埋設状態で固着される中間部分が、扁平な略長円形断面とされて、伝熱弾性体14の板厚方向(後述する伝熱弾性体14の冷却面26との直交方向)である前後方向の投影において幅広とされている。
【0050】
伝熱弾性体14は、外力の作用によって容易に変形する柔軟性を備えている。伝熱弾性体14は、後述するバッテリーパック34の当接によってバッテリーパック34の当接面とパイプ部材12との間で圧縮されて、表面がバッテリーパック34の当接面に追従して変形する柔軟性を備えている。また、伝熱弾性体14は、入力の解除によって形状が復元する弾性を有している。伝熱弾性体14は、ヤング率が0.5MPa以下とされていることが望ましく、より好適には0.2MPa以下とされている。伝熱弾性体14は、ゴムや樹脂エラストマーからなる弾性基材22に対して、金属等からなる熱伝導フィラー24が混合された形成材料によって形成されている。
【0051】
弾性基材22は、ゴムや樹脂エラストマで形成されており、好適には、例えば、特開2009-051148号公報に開示されているようなポリウレタンフォーム等で形成されている。弾性基材22は、好適には発泡体とされることによって、柔軟性の向上が図られる。尤も、弾性基材22は、発泡体に限定されず、非発泡であってもよい。なお、
図4,
図5(後述)に示す断面図では、弾性基材22中の気泡は、見易さのために図示を省略した。
【0052】
熱伝導フィラー24は、金属等の高い熱伝導率を有する材料で形成されており、球状(楕円球状及び長円球状を含む)、柱状、錘状、箔状、繊維状等の各種形状とされ得る。熱伝導フィラー24は、弾性基材22に対して多数を混合可能な大きさとされており、例えば、最大外法寸法が0.1mm以上且つ5mm以下の範囲内に設定されることが望ましい。
【0053】
熱伝導フィラー24は、磁性材料で形成されていることが望ましく、磁性材料としては、例えば、特開2009-051148号公報に磁性フィラーの材料として開示されているような強磁性体、反強磁性体、及びそれらを用いた合金等が好適に採用される。具体的には、例えば、熱伝導フィラー24は、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト等の強磁性体、酸化マンガン、酸化クロム、塩化鉄等の反強磁性体、及びそれらの合金等とされる。磁性を有する熱伝導フィラー24は、好適には、例えば、耐食性に優れたステンレス鋼や、磁性と熱伝導性との両方に優れた銅鉄合金等で形成される。磁性を有する熱伝導フィラー24の別の実施例としては、例えば、国際公開第2013/042611号に磁性フィラーの材料として開示されているような、黒鉛等と磁性粒子を複合化した複合粒子を採用してもよい。
【0054】
弾性基材22に熱伝導フィラー24を混合した形成材料で形成された伝熱弾性体14は、
図2~
図4に示すように、パイプ部材12の中間部分を覆って設けられている。伝熱弾性体14は、前後方向が板厚方向となる略矩形平板形状とされており、パイプ部材12の各複数のストレート部18及び折返部20が伝熱弾性体14の内部に埋設状態で配されていると共に、パイプ部材12の両端部が伝熱弾性体14から右側方へ突出して外部に露出している。
【0055】
そして、パイプ部材12が加熱又は冷却されると、パイプ部材12の熱が伝熱弾性体14に配合された熱伝導フィラー24によって、伝熱弾性体14の表面に伝達される。パイプ部材12は、内部の冷却通路16を冷却用の熱媒体が流れることによって低温とされることから、伝熱弾性体14の表面は、パイプ部材12との熱交換によって低温とされる。
【0056】
伝熱弾性体14の板厚方向となる前後方向の表面は、伝熱弾性体14の上下表面及び左右表面に比して、パイプ部材12からの距離が近くされており、パイプ部材12の熱が伝達され易くなっている。この伝熱弾性体14の前後表面が、後述するバッテリーパック34に重ね合わされて、バッテリーパック34を冷却する冷却面26,26とされている。本実施形態では、略矩形平板形状とされた伝熱弾性体14の厚さ方向の両面が、それぞれ冷却面26とされており、1つの伝熱弾性体14に2つの冷却面26,26が設定されている。
【0057】
冷却面26は、伝熱弾性体14の表面の一部であることから、外力の作用に対する変形が許容されている。従って、後述するバッテリーパック34が冷却面26に押し当てられることにより、冷却面26がバッテリーパック34の表面に追従するように変形して、冷却面26とバッテリーパック34とを隙間なく密着状態で重ね合わすことが可能とされている。
【0058】
ところで、伝熱弾性体14は、
図5に示すように、成形用金型28にパイプ部材12がセットされた状態で、成形用金型28のキャビティ30に対して、弾性基材22に熱伝導フィラー24を混合した形成材料が充填されることで成形される。以下に、冷却用熱交換器10の製造方法について、
図5を参照しつつ説明する。なお、
図5には、前後の成形用金型28a,28bで構成された成形用金型28が例示されており、キャビティ30がそれら成形用金型28a,28bの間に形成されているが、成形用金型28の構造(分割数、分割方向等)は、特に限定されない。
【0059】
先ず、パイプ部材12を準備する準備工程を実行する。即ち、例えば、アルミニウム合金の引抜加工による継目なし管や、アルミニウム合金製の帯材をロール成形後に電気溶接した電縫管等をストレート形状で製造し、当該ストレート形状の管を蛇行状に曲げ加工すると共に、中間部分をプレス加工で押し潰して扁平化することにより、パイプ部材12を準備する。なお、このパイプ部材12の準備工程において、パイプ部材12の両端部に接続管38a,38bを溶接等の手段で取り付けておいてもよいし、後述する伝熱弾性体14の成形工程を完了した後で伝熱弾性体14から突出したパイプ部材12の両端部に接続管38a,38bを取り付けてもよい。パイプ部材12は、合成樹脂製であってもよく、この場合には、例えば、ストレートな筒状に成形した後、曲げや扁平化等の加工をすればよい。パイプ部材12を合成樹脂製とする場合には、熱可塑性の樹脂材料を採用することが望ましく、それによって、加温することで曲げや扁平化等の加工を容易に行うことができる。
【0060】
次に、
図5に示すように、パイプ部材12を成形用金型28a,28bの間にセットして、パイプ部材12の中間部分をキャビティ30内に配置する。パイプ部材12は、両端部分において成形用金型28a,28bの間に挟み込まれて支持されているが、例えば、中間部分をキャビティ30内の所定位置に保持するために、成形用金型28a,28bの少なくとも一方に対してキャビティ30内のパイプ部材12へ向けて突出する支持ピンを設けてもよい。
【0061】
次に、成形用金型28のキャビティ30に対して、弾性基材22に熱伝導フィラー24を混合した伝熱弾性体14の形成材料を充填し、加温或いは冷却等して伝熱弾性体14をインサート成形する成形工程を実行する。そして、伝熱弾性体14の成形完了後に成形用金型28a,28bを成形品から取り外すことにより、冷却用熱交換器10の製造工程が完了する。冷却用熱交換器10は、伝熱弾性体14にパイプ部材12がインサートされた一体成形品とされており、パイプ部材12の表面に伝熱弾性体14が密着状態で固着されている。本実施形態の冷却用熱交換器10は、パイプ部材12の全体が伝熱弾性体14にインサートされた一体成形品とされているが、例えば、伝熱弾性体14は、パイプ部材12のストレート部18の表面のみに密着状態で固着されていてもよい。本実施形態では、伝熱弾性体14の形成材料に炭酸水素ナトリウム等の発泡剤が配合されており、伝熱弾性体14の成形時に気泡が形成されて、伝熱弾性体14が発泡体とされる。なお、伝熱弾性体14の成形工程として、例えば、特開2009-051148号公報に開示されたウレタン発泡成形体の製造方法を採用することもできる。
【0062】
また、伝熱弾性体14の成形工程において、
図5中に矢印で示す磁場を形成して、伝熱弾性体14の形成材料である熱伝導フィラー24を磁化する。これにより、伝熱弾性体14の熱伝導フィラー24を、作用する磁場の磁力線に沿って延びる磁路を形成する形態をもって前後方向に配向させる。そして、前後方向に配向された熱伝導フィラー24によって、前後方向に延びる熱伝導パスが構成されており、パイプ部材12から冷却面26,26への前後方向での熱伝達効率が高められている。
【0063】
本実施形態では、パイプ部材12が非磁性材料で形成されており、伝熱弾性体14の成形時にパイプ部材12が磁場に影響することがなく、伝熱弾性体14における前後方向でパイプ部材12と重なり合う部分に対して、前後方向の磁場が有効に作用する。
【0064】
成形用金型28a,28bは、前後方向の投影においてパイプ部材12を外れた部分に、磁束の通過を低減乃至は防止するシールド部材32を備えている。シールド部材32は、鉄等の強磁性材で形成されており、本実施形態では、略長方形断面の長手板状とされて、左右方向(
図5中の紙面直交方向)に延びている。本実施形態では、前後方向の投影において、上下方向で隣り合うストレート部18,18の間に位置するようにシールド部材32が配置されている。
【0065】
伝熱弾性体14の成形工程において、伝熱弾性体14におけるパイプ部材12を左右方向に外れた部分では、熱伝導フィラー24に対する磁場の作用がシールド部材32によって低減される。即ち、前後方向の磁場が形成されると、シールド部材32が配された部分では強磁性体であるシールド部材32が磁路を形成することから、磁束がシールド部材32の長手方向である左右方向に導かれて、伝熱弾性体14の熱伝導フィラー24に作用し難くなるものと考えられる。そして、熱伝導フィラー24の前後方向の配向率が、冷却面26における前後投影でパイプ部材12と重なり合う部分よりも低くされており、熱伝導フィラー24がよりランダムに分散した状態で配されている。それゆえ、伝熱弾性体14におけるパイプ部材12を左右方向に外れた部分では、パイプ部材12とその左右の伝熱弾性体14との間で熱交換が効率的に生じて、冷却面26がパイプ部材12を左右方向に外れた部分においても低温になり易い。尤も、冷却面26における前後投影でパイプ部材12と重なり合う部分は、熱伝導フィラー24が前後方向に配向されており、パイプ部材12によってより効率的に冷却されることから、パイプ部材12を左右方向に外れた部分よりも優れた冷却作用を発揮する。
【0066】
なお、伝熱弾性体14における熱伝導フィラー24の配向率(配向度)は、例えば、伝熱弾性体14の熱伝導率に基づいて測定することができる。即ち、特定方向(配向方向)での熱伝導フィラー24の配向率が高いほど、配向方向での熱伝導率が高くなる。従って、一様な形成材料で形成された伝熱弾性体14では、特定方向での熱伝導率が高いほど、当該特定方向における熱伝導フィラー24の配向率が高いと言える。冷却用熱交換器10は、パイプ部材12から冷却面26への熱伝達性能が求められることから、熱伝導フィラー24の配向率の高低は、パイプ部材12と冷却面26の対向方向における熱伝達率に基づいて測定される。
【0067】
また、伝熱弾性体14における熱伝導フィラー24の配向率は、例えば、X線照射による特定方向での熱伝導フィラー24間の距離の測定結果に基づいて算出することも可能である。なお、熱伝導フィラー24の配向率は、熱伝導フィラー24間の距離の相加平均値、中央値等に基づいて算出することができる。
【0068】
シールド部材32の断面形状は、長方形に限定されず、例えば、円形、正方形、台形、平行四辺形、異形等、各種の他形状も採用され得る。また、例えば、長方形断面のシールド部材32を磁場の磁力線に対して傾斜するように配することもできる。複数のシールド部材32は、一様な断面形状や断面積に限定されないし、磁力線に対して傾斜した配置とされる場合には傾斜角度が傾斜方向が相互に異なっていてもよい。
【0069】
かくの如き構造とされた冷却用熱交換器10は、
図6,
図7に示すように、冷却対象としてのバッテリーパック34に重ね合わされた状態で使用される。即ち、冷却用熱交換器10の前後両面に設定された冷却面26,26は、少なくとも一方がバッテリーパック34の表面に当接状態で重ね合わされる。
図6,
図7には、複数の冷却用熱交換器10と複数のバッテリーパック34とが、前後方向において交互に積層状態で配された熱交換器付きのバッテリーモジュール36が示されている。
図6,
図7に示すように、バッテリーパック34の前後両側に冷却用熱交換器10,10が配されている。換言すれば、前後中間に位置する1つの冷却用熱交換器10の冷却面26,26に対して、2つのバッテリーパック34,34の各一方が重ね合わされている。また、前後中間に位置する3つの冷却用熱交換器10,10,10は、何れも前後両側の冷却面26,26がそれぞれバッテリーパック34に重ね合わされており、前後両端に位置する2つの冷却用熱交換器10,10は、前後各一方の冷却面26だけがバッテリーパック34に重ね合わされている。
【0070】
複数の冷却用熱交換器10は、何れもパイプ部材12の両端部が伝熱弾性体14から右方へ突出している。そして、パイプ部材12の端部に設けられた前後方向に延びる接続管38が相互に連接されており、前後方向に延びる共通管40がそれら接続管38によって構成されている。なお、接続管38は、パイプ部材12の両端部にそれぞれ設けられており、各パイプ部材12の一方の端部に設けられた接続管38a同士が接続されることで、上部に位置する共通管40aが構成されていると共に、各パイプ部材12の他方の端部に設けられた接続管38b同士が接続されることで、下部に位置する共通管40bが構成されている。
【0071】
共通管40aを通じて複数の冷却用熱交換器10の各冷却通路16に流入した冷却用の熱媒体は、冷却通路16を流れてパイプ部材12を冷却した後、共通管40bを通じて外部へ排出される。共通管40aの一方の端部開口と共通管40bの一方の端部開口は、それぞれ閉塞されている。共通管40aの他方の端部開口と共通管40bの他方の端部開口は、図示しない外部流路によって相互に連通されている。これにより、冷却用の熱媒体が循環する循環通路が、パイプ部材12の中間部分の冷却通路16を含んで構成されている。なお、外部流路は、冷却用の熱媒体を冷却するための圧縮機等を備えている。
【0072】
冷却通路16を流れる冷却用の熱媒体によって冷やされたパイプ部材12は、中間部分の外側を覆う伝熱弾性体14を冷却する。伝熱弾性体14は、多数の熱伝導フィラー24を含んでいることから、それら熱伝導フィラー24で構成される熱伝導パスの熱伝達作用によって、パイプ部材12と伝熱弾性体14の前後表面である冷却面26,26との間での熱交換が効率的に実現されて、冷却面26,26が冷却される。
【0073】
そして、低温とされた冷却面26に重ね合わされたバッテリーパック34は、冷却面26を備える冷却用熱交換器10によって冷却されて、バッテリーパック34の高温化による充放電性能や耐久性等の低下が回避される。本実施形態では、各バッテリーパック34の前後両面が冷却用熱交換器10,10の冷却面26に重ね合わされていることから、それらバッテリーパック34の前後両面がそれぞれ冷却される。
【0074】
伝熱弾性体14の表面で構成された冷却面26に対してバッテリーパック34が押し当てられることによって、冷却面26がバッテリーパック34の表面形状に追従して変形した状態とされており、冷却面26がバッテリーパック34に密着状態で隙間なく重ね合わされている。このように、冷却用熱交換器10の冷却面26が伝熱弾性体14の表面によって構成されていることから、冷却面26とバッテリーパック34との間に隙間を埋めるための熱伝導材を設けることなく、冷却面26をバッテリーパック34に密着させることができる。その結果、部品点数の少ない簡単な構造によって、冷却面26とバッテリーパック34との間の熱伝導効率を確保することができる。
【0075】
なお、熱伝導パスは、多数の熱伝導フィラー24が相互に接触又は近接することによって、熱を伝え易い経路を構成したものであって、パイプ部材12と冷却面26,26との間に設けられている。本実施形態では、伝熱弾性体14の成形時に熱伝導フィラー24がパイプ部材12と冷却面26,26との前後対向間において前後方向で直線状に並ぶように配向されていることから、熱伝導パスは、パイプ部材12と冷却面26,26との前後対向間において前後方向に延びる形態をもって構成されている。従って、パイプ部材12と冷却面26,26との間で熱伝導パスの熱伝達作用による効率的な熱交換が実現されて、優れた冷却性能を得ることができる。
【0076】
また、伝熱弾性体14におけるパイプ部材12を左右方向に外れた部分では、熱伝導フィラー24の配向率が低くなっていることから、多方向に延びる熱伝導パスが構成されている。これにより、冷却面26におけるパイプ部材12と前後方向で対向していない部分も、近くのパイプ部材12によって冷却されて、有効な冷却性能を発揮することができる。
【0077】
本実施形態では、熱通路部材がパイプ部材12で構成されており、パイプ部材12の内孔によって構成された冷却通路16を冷却用の熱媒体が流れている。これにより、パイプ部材12は、バッテリーパック34との熱交換によって加温されたとしても、パイプ部材12の熱が冷却通路16を流れる冷却用の熱媒体によって速やかに奪われることで、低温状態に維持される。それゆえ、冷却用熱交換器10が継続的に使用される場合にも、冷却性能の低下が問題になり難く、バッテリーパック34を安定して冷却することができる。
【0078】
本実施形態の冷却用熱交換器10は、複数の冷却面26を備えていることから、複数のバッテリーパック34を同時に冷却することができる。また、本実施形態の冷却用熱交換器10は、伝熱弾性体14の前後両面が冷却面26,26とされていることから、複数の伝熱弾性体14と複数のバッテリーパック34とを交互に積層状態で配することによって、任意の数のバッテリーパック34を冷却することができる。従って、バッテリーパック34の数が異なる複数種類の電気自動車等において、共通構造の冷却用熱交換器10を用いて有効な冷却構造を提供することができる。なお、本実施形態では、4つのバッテリーパック34,34,34,34を冷却可能としたバッテリーモジュール36が例示されているが、バッテリーパック34の数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよく、冷却すべきバッテリーパック34の数に応じて冷却用熱交換器10の数を増減させることで対応可能である。
【0079】
図8,
図9には、本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器50が示されている。冷却用熱交換器50は、熱通路部材としての袋体52の表面に対して、伝熱弾性体14が密着状態で形成された構造を有している。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
袋体52は、例えば、アルミニウム箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせたアルミパウチが2枚重ね合わされて、それらアルミパウチの外周端部が相互に貼り合わされた構造を有している。袋体52の外周端部は、例えば、加熱溶封(ヒートシール)によって略全周に亘って一体化されることで封止されている。なお、袋体52は、樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着させたアルミフィルムに対して、蒸着面を覆うように別の樹脂フィルムを貼り合わせたラミネートフィルムで構成することもできる。
【0081】
袋体52の内部には、冷却用の熱媒体が流れる冷却通路54が形成されている。冷却通路54は、
図8に示すように、直線的に延びた先で折り返す蛇行状に延びており、両端部が袋体52の上下両側の右端部に位置している。冷却通路54は、例えば、袋体52を構成する一対のアルミパウチが上下中間部分において部分的にヒートシールで相互に密着していることで、所定の形状(経路)となるように形成されている。なお、冷却通路54の形状は、特に限定されるものではないが、前後方向の投影面積が大きく、且つ、冷却用の熱媒体の流れを制御し易い通路形状が望ましい。
【0082】
冷却通路54の両端部には、供給口56と排出口58との各一方が設けられている。供給口56と排出口58は、何れも、金属や硬質の合成樹脂等で形成された筒状の部材であって、一方の端部である左端部が袋体52を貫通して冷却通路54に連通されていると共に、他方の端部である右端部が袋体52から右方へ突出して図示しない外部流路に接続されている。なお、供給口56と排出口58は、袋体52を構成する一対のアルミパウチの重ね合わせ面間へ差し入れられており、外周端部のヒートシール部分を貫通している。袋体52を構成する一対のアルミパウチは、供給口56及び排出口58の貫通部分において、それら供給口56及び排出口58の外周面に対して、溶着や接着等の手段で固着されており、それら袋体52と供給口56及び排出口58との重ね合わせ面間が封止されている。
【0083】
このような袋体52の表面には、伝熱弾性体14が密着状態で形成されている。本実施形態では、伝熱弾性体14の外形が第一の実施形態と同様の矩形板状とされており、伝熱弾性体14の前後両面が冷却面26とされている。なお、伝熱弾性体14の熱伝導フィラー24は、例えば前後方向に直線的に並ぶように配向されていてもよいし、特定方向に配向されることなく分散状態で配されていてもよい。また、第一の実施形態と同様に、冷却通路16と冷却面26とが前後方向で対向する部分と、冷却通路54を上下方向に外れた部分とにおいて、熱伝導フィラー24の配向状態を相互に異ならせて、冷却通路54を上下方向に外れた部分において、冷却通路54と前後投影で重なる部分よりも配向率を低くしてもよい。
【0084】
かくの如き構造とされた冷却用熱交換器50は、
図9に示すように、前後両側に設けられた冷却面26,26にバッテリーパック34がそれぞれ重ね合わされることにより、バッテリーパック34,34を冷却する。冷却通路54を流れる冷却用の熱媒体によって冷やされる袋体52と、冷却対象であるバッテリーパック34との間には、伝熱弾性体14が介在することから、それら袋体52とバッテリーパック34とが伝熱性に優れた伝熱弾性体14を介して密着状態とされて、袋体52とバッテリーパック34との間で効率的な熱交換が実現される。特に本実施形態では、袋体52で構成された熱通路部材自体が外力に対する変形を許容されることから、バッテリーパック34の表面に対する冷却面26の追従性がより高く、冷却面26とバッテリーパック34との密着状態をより確実に実現できる。
【0085】
また、本実施形態の冷却用熱交換器50は、熱通路部材が袋体52で形成されていることから、熱通路部材をパイプ部材12で構成する場合よりも、軽量であると共に、製造の容易化も図られる。なお、冷却通路54の形状を設定するためのヒートシールは、袋体52の外周端部のヒートシールと同時に行うことが可能であり、少ない製造工程で冷却通路54を備えた袋体52を得ることもできる。
【0086】
袋体52の表面は、伝熱弾性体14で覆われていることから、袋体52がバッテリーパック34に対して直接的に接することはない。それゆえ、熱通路部材がパイプ部材12に比して摩擦等で損傷し易い袋体52によって構成されていても、バッテリーパック34との接触による耐久性の低下が問題になり難い。
【0087】
図10には、本発明の第三の実施形態としての冷却用熱交換器70が示されている。冷却用熱交換器70は、冷却用の熱通路部材72の表面が伝熱弾性体14で覆われた構造を有している。
【0088】
熱通路部材72は、全体して略四角板状とされており、合成樹脂製の通路形成部材74と、通路形成部材74の板厚方向の両面に重ね合わされた一対の伝熱性蓋体76,76とを含んで構成されている。なお、
図10は、第二の実施形態における
図9に相当し、前後方向と直交する前後中央の断面は、
図8と略同じとなる。
【0089】
通路形成部材74は、厚肉の略矩形板状とされている。通路形成部材74は、硬質の合成樹脂製とされており、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等が形成材料として好適に採用される。通路形成部材74は、繊維補強樹脂によって形成されていてもよい。
【0090】
通路形成部材74には、蛇行状に延びる空所としての貫通孔78が板厚方向に貫通して形成されている。貫通孔78の長さ方向の両端部には、供給口56と排出口58との各一方が接続されており、それら供給口56と排出口58とが通路形成部材74から右方へ突出している。
【0091】
伝熱性蓋体76は、通路形成部材74よりも高い熱伝達率を有しており、前後方向視の外形が通路形成部材74と略対応する形状とされている。伝熱性蓋体76は、金属や合成樹脂で形成された板材であってもよいが、例えば、第二の実施形態の袋体52を構成するアルミパウチのような金属箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせた積層フィルムや、アルミニウムの蒸着フィルムに樹脂フィルムを貼り合わせたラミネートフィルムとされ得る。伝熱性蓋体76は、通路形成部材74よりも薄肉とされている。伝熱性蓋体76は、通路形成部材74の前後表面に重ね合わされて、熱溶着や接着等の手段によって通路形成部材74に固着されている。通路形成部材74と伝熱性蓋体76の重ね合わせ面間は、少なくとも貫通孔78の周囲において流体密に封止されている。
【0092】
貫通孔78の前後両側の開口が伝熱性蓋体76,76で覆われることにより、それら伝熱性蓋体76,76の間には、蛇行状に延びる冷却通路80が、貫通孔78を利用して形成されている。冷却通路80の両端部には、供給口56と排出口58とが接続されており、それら供給口56と排出口58とによって給排される冷却用の熱媒体が冷却通路80を流れるようになっている。
【0093】
熱通路部材72は、伝熱弾性体14に対して、供給口56及び排出口58が突出した埋設状態で配されている。伝熱弾性体14は、伝熱性蓋体76,76の前後外面を密着状態で覆って形成されており、その前後外面が冷却面26,26とされている。そして、冷却通路80を流れる低温の熱媒体と伝熱弾性体14との間で伝熱性蓋体76,76を介した熱交換が生じることにより、冷却面26,26が冷却されて低温状態に維持される。
【0094】
このような本実施形態に係る冷却用熱交換器70によれば、冷却通路80が硬質の通路形成部材74に設けられた貫通孔78を利用して形成されていることから、冷却通路80の通路形状の安定化が図られて、安定した冷却性能を得易くなる。
【0095】
さらに、通路形成部材74がアルミニウム合金等の金属に比して比重の小さい合成樹脂製とされていることにより、冷却用熱交換器70の重量の増加が抑制される。しかも、熱伝導率が冷却性能に大きく影響する伝熱性蓋体76は、通路形成部材74とは別部品であることから、通路形成部材74とは材質の異なる部品とすることが可能であり、高い熱伝導率を設定することが容易である。加えて、本実施形態の伝熱性蓋体76は、フィルム状とされており、通路形成部材74よりも十分に薄肉であることから、冷却通路80を流れる冷却用の熱媒体と伝熱弾性体14との間でより効率的な熱交換が実現される。
【0096】
なお、本実施形態では、冷却通路80が通路形成部材74を貫通する貫通孔78によって形成されていたが、例えば、通路形成部材74の1つの面だけに開口する凹溝を伝熱性蓋体76で覆うことにより、当該凹溝を利用して冷却通路を形成することもできる。この場合には、伝熱弾性体14における凹溝の開口側の表面だけに冷却面26が設定される。
【0097】
伝熱性蓋体は、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼等からなる金属プレートとされていてもよく、必ずしもシート状に限定されない。また、例えば、通路形成部材と伝熱性蓋体との重ね合わせ面間の封止は、例えば、通路形成部材と伝熱性蓋体との重ね合わせ面間にシール部材を設けることによって実現されていてもよく、溶着や接着といった通路形成部材と伝熱性蓋体との固着構造とは別の構造とされ得る。
【0098】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、熱通路部材は、熱の移動が許容されていることによって、少なくとも一部において低温状態を維持することが可能とされていればよく、熱通路部材は、前記実施形態に例示したような冷却用の熱媒体が流れる冷却通路16を備えた構造に限定されない。具体的には、例えば、熱通路部材は、ヒートパイプで構成することも可能であり、ヒートパイプの低温部と冷却面との間での熱交換によって冷却性能を得ることができる。なお、前記第一~第三の実施形態に示された熱通路部材12,52,72やヒートパイプからなる熱通路部材等、相互に異なる構造とされた複数種類の熱通路部材を組み合わせて採用することもできる。
【0099】
前記第一の実施形態において、パイプ部材12の両端部は、何れも伝熱弾性体14から左右方向の同じ側(右側)へ突出していたが、例えば、左右各一方側へ突出していてもよいし、上下方向の両側又は何れか一方側へ突出していてもよい。
【0100】
前記第一の実施形態では、伝熱弾性体14に埋設された中間部分が扁平とされたパイプ部材12を例示したが、熱通路部材をパイプ部材で構成する場合に、当該パイプ部材は全体が一様な断面形状とされていてもよく、例えば全体が円形断面とされ得る。
【0101】
複数のパイプ部材の表面に1つの伝熱弾性体14を形成することもできる。即ち、直線的に延びる複数のパイプ部材を並列的に配置して、それら複数のパイプ部材の表面に1つの伝熱弾性体14を形成することにより、1つの伝熱弾性体14を直線的に貫通して延びる複数の冷却通路を設けることもできる。
【0102】
冷却面26は、必ずしも伝熱弾性体14の両面に設定されていなくてもよく、例えば、前面及び上面等に設定されていてもよい。また、伝熱弾性体14の1つの面において、各別の冷却面26が複数箇所に設定されていてもよい。なお、前記各実施形態における上下・前後・左右の各方向は、説明の便宜上設定されているにすぎず、冷却用熱交換器10の使用状態での向きを限定するものではない。具体的には、例えば、冷却用熱交換器10は、冷却面26がバッテリーパック34の下面に重ね合わされる向きで使用され得る。
【0103】
前記第一の実施形態では、伝熱弾性体14の成形時に板厚方向である前後方向の磁場を形成して、熱伝導フィラー24を前後方向に配向させる例を示したが、熱伝導フィラー24を配向させる方向は、必ずしも伝熱弾性体14の冷却面26と直交する方向に限定されない。具体的には、例えば、
図11に示す冷却用熱交換器を構成する伝熱弾性体90のように、伝熱弾性体90の成形工程において、伝熱弾性体90の冷却面26との直交方向(板厚方向である前後方向)に対して傾斜する方向(
図11中の矢印方向)の磁場を及ぼして、熱伝導フィラー24を冷却面26との直交方向に対して傾斜する方向に配向させることもできる。
【0104】
このような熱伝導フィラー24を傾斜方向に配向した伝熱弾性体90を備える冷却用熱交換器によれば、例えば伝熱弾性体90の圧縮変形を考慮して伝熱特性を調節することも可能になる。具体的には、例えば冷却面26に図示しない冷却対象が押し当てられて、伝熱弾性体90が冷却面26に直交する方向で圧縮されると、熱伝導フィラー24間の距離が冷却面26との直交方向だけでなく冷却面26と平行な方向においても縮まる。それゆえ、パイプ部材12と冷却面26との間で高い熱交換効率が実現されると共に、冷却面26における前後投影でパイプ部材12を外れた部分にもパイプ部材12による冷却が及び易くなって、冷却面26のより広い範囲で冷却対象を有効に冷却することができる。また、例えば伝熱弾性体90における冷却面26と直交方向における圧縮率が、パイプ部材12が部分的に存在することによって、パイプ部材12の存在領域とそれを外れた領域との間で相違することを利用して、パイプ部材12の存在領域において熱伝導フィラー24間を配列方向だけでなく隣り合う配列間でも接近させることでより効率的な熱伝達経路を発現させることも可能である。
【0105】
熱伝導フィラーは、熱通路部材と冷却面との間で熱を伝達し得るものであればよく、必ずしも磁性材料で形成されるものに限定されない。非磁性材料からなる熱伝導フィラーは、例えば伝熱弾性体14の形成材料のキャビティへの射出方向を制御する等、磁場の作用以外の手段によって特定方向に配向され得る。また、熱伝導フィラーは、効率的な熱の伝達等の観点から特定方向に配向されることが望ましいが、例えば、特定方向に配向されることなくランダムな分散状態で配されていてもよい。この場合にも、例えば、伝熱弾性体における熱伝導フィラーの配合比率を高くしたり、冷却対象を冷却面に押し当てて伝熱弾性体を特定方向に圧縮するなどして、熱伝導フィラー間の距離を短く設定することにより、有効な熱伝導パスが形成され得る。
【0106】
冷却対象は、前記実施形態において例示したバッテリーパック34に限定されるものではなく、例えば、電子回路等を発熱体として備える制御装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
10 冷却用熱交換器(第一の実施形態)
12 パイプ部材(熱通路部材)
14 伝熱弾性体
16 冷却通路
18 ストレート部
20 折返部
22 弾性基材
24 熱伝導フィラー
26 冷却面
28(28a,28b) 成形用金型
30 キャビティ
32 シールド部材
34 バッテリーパック(冷却対象)
36 バッテリーモジュール
38(38a,38b) 接続管
40(40a,40b) 共通管
50 冷却用熱交換器(第二の実施形態)
52 袋体(熱通路部材)
54 冷却通路
56 供給口
58 排出口
70 冷却用熱交換器(第三の実施形態)
72 熱通路部材
74 通路形成部材
76 伝熱性蓋体
78 貫通孔
80 冷却通路
90 伝熱弾性体(別の一実施形態)