IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調システム 図1
  • 特開-車両用空調システム 図2A
  • 特開-車両用空調システム 図2B
  • 特開-車両用空調システム 図3
  • 特開-車両用空調システム 図4A
  • 特開-車両用空調システム 図4B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002526
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20241226BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20241226BHJP
   F24F 8/15 20210101ALI20241226BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60H3/06 Z
B60H3/00 Z
B60H3/00 B
B60H3/00 A
B60H3/00 F
F24F8/15
B01D53/26 230
B01D53/04 220
B01D53/04 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102762
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】昆野 由規
【テーマコード(参考)】
3L211
4D012
4D052
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA04
3L211BA09
3L211BA42
3L211DA72
3L211DA73
3L211DA75
3L211EA12
3L211EA13
3L211FB08
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CA10
4D012CA20
4D012CB02
4D012CD05
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF04
4D012CF10
4D012CG01
4D012CH05
4D052AA08
4D052CE00
4D052DA03
4D052DA06
4D052DB01
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB00
4D052GB02
4D052GB03
4D052GB08
4D052HA00
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】除湿材(除湿層)の再生処理時に空気中に放出された水分を選択的に除去しつつ、加熱された空気を有効利用することが可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】少なくとも隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、一対の電極と、隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む除湿デバイス10と、一対の電極に電圧を印加するための電源20と、車室又は車外からの空気を除湿デバイス10に流入させる流入配管30と、除湿デバイス10によって除湿された空気を車室に戻す第1流出配管40と、除湿デバイス10の再生処理によって放出された水分を含む空気が流通する第2流出配管50と、空気の流れを第1流出配管40又は第2流出配管50に切替え可能な切替えバルブ60とを備える車両用空調システムである。第2流出配管50内には、水分を除去するためのフィルタを備えるミストセパレータ70が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、前記第1端面及び前記第2端面に設けられた一対の電極と、前記隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む除湿デバイスと、
前記一対の電極に電圧を印加するための電源と、
車室又は車外からの空気を前記除湿デバイスに流入させる流入配管と、
前記除湿デバイスによって除湿された前記空気を前記車室に戻す第1流出配管と、
前記除湿デバイスの再生処理によって放出された水分を含む前記空気が流通する第2流出配管と、
前記第1流出配管と前記第2流出配管との分岐部に設けられ、前記空気の流れを前記第1流出配管又は前記第2流出配管に切替え可能な切替えバルブと
を備え、
前記第2流出配管内に、前記水分を除去するためのフィルタを備えるミストセパレータが配置されており、
前記第2流出配管は、前記ミストセパレータの下流側において前記第1流出配管と合流している、車両用空調システム。
【請求項2】
前記切替えバルブは、前記空気の流れを前記第1流出配管又は前記第2流出配管に切替え可能な差圧バルブであり、
前記空気の流れを前記第1流出配管に切替えるように前記差圧バルブを制御する第1通風機と、
前記空気の流れを前記第2流出配管に切替えるように前記差圧バルブを制御する第2通風機と
を更に備える、請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記第1流出配管と前記第2流出配管との前記分岐部において、前記第2流出配管が前記第1流出配管の内部に配置された二重管構造を有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記第1通風機が前記流入配管に配置されている、請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記第2通風機が前記第2流出配管に配置されている、請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とする、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
前記除湿層は、二酸化炭素及び揮発成分から選択される少なくとも1つを吸着する機能を有する吸着材、並びに/又は触媒を含有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項8】
前記空気の流れを前記第1流出配管に切替えるように前記切替えバルブを制御して車室内の除湿を行う除湿モードと、
前記除湿デバイスの前記一対の電極に電圧を印加するとともに、前記空気の流れを前記第2流出配管に切替えるように前記切替えバルブを制御して前記除湿層の再生処理を行う再生モードと
を実行可能な制御部を更に備える、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
前記車室のガラスの曇りを検知することが可能な検知部を更に備え、前記制御部は、前記ガラスの曇りが検知されたときに前記再生モードを実行し、前記ガラスの曇りが検知されていないときに前記除湿モードを実行する、請求項8に記載の車両用空調システム。
【請求項10】
前記検知部は、車室内の温度及び湿度に基づいて前記ガラスの曇りを検知する、請求項9に記載の車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種車両において、車室環境の向上に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分などの有害な揮発成分を除去することなどが挙げられる。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の低下を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、特許文献1及び2には、車室の空気中の水分(水蒸気)、CO2などの除去対象成分を吸着材などの機能材に捕捉した後、加熱によって除去対象成分を反応又は離脱させて車外に放出し、機能材を再生する車両用空調システムが開示されている。このような車両用空調システムでは、除去対象成分の捕捉性能を確保するために空気と機能材との接触ができるだけ多いこと、及び機能材の再生を促進するために機能材を所定の温度に加熱できることが求められる。再生は、例えば、機能材に吸着した除去対象成分を酸化反応により除去する方法、及び機能材に吸着した除去対象成分を脱離させて排出する方法などにより行われるが、いずれにしても吸着された除去対象成分の種類に応じて機能材を適切な温度に加熱することが必要である。
【0004】
他方、特許文献3には、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する柱状ハニカム構造体を備え、隔壁がPTC特性を有しており、隔壁の平均厚さが0.13mm以下であり、第1端面及び第2端面における開口率が0.81以上であるヒーターエレメントが開示されている。このヒーターエレメントは、車室の暖房用途に用いられるものであるが、ハニカム構造を有することで加熱面積を大きくすることができるので、効率の良い加熱手段である。したがって、このようなヒーターエレメントを機能材の担体として使用すると、機能材の再生時間の短縮化に貢献できると考えられる。特に、このヒーターエレメントは、通電による加熱が可能であり且つPTC特性を有するため、機能材を容易に加熱できる一方で、過剰な発熱を抑制し、機能材の熱劣化を抑制することもできると考えられる。また、過剰な温度になってしまう恐れが回避されるので、初期抵抗を小さく設定して加熱速度を速めても安全を確保でき、短時間での昇温が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-104774号公報
【特許文献2】特開2020-111282号公報
【特許文献3】国際公開第2020/036067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車両用空調システムでは、機能材の再生処理時に機能材を加熱することにより、機能材に捕捉された除去対象成分を反応又は脱離させ、加熱された空気とともに車外に放出しており、熱エネルギーが無駄になっていた。しかしながら、除去対象成分が水分である場合、機能材として除湿材が用いられるが、除湿材の再生処理時に空気中に放出された水分を選択的に除去できれば、加熱された空気を暖房などに有効利用できると考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、除湿材(除湿層)の再生処理時に空気中に放出された水分を選択的に除去しつつ、加熱された空気を有効利用することが可能な車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ハニカム構造体の隔壁上に除湿層が形成された除湿デバイスを備える車両用空調システムについて鋭意研究を行った結果、除湿デバイスの再生処理によって放出された水分を含む空気が流通する配管内に、水分を除去するためのフィルタを備えるミストセパレータを設けるとともに、この配管をミストセパレータの下流側で空気を車室に戻す配管と合流させることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0009】
(1) 外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、前記第1端面及び前記第2端面に設けられた一対の電極と、前記隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む除湿デバイスと、
前記一対の電極に電圧を印加するための電源と、
車室又は車外からの空気を前記除湿デバイスに流入させる流入配管と、
前記除湿デバイスによって除湿された前記空気を前記車室に戻す第1流出配管と、
前記除湿デバイスの再生処理によって放出された水分を含む前記空気が流通する第2流出配管と、
前記第1流出配管と前記第2流出配管との分岐部に設けられ、前記空気の流れを前記第1流出配管又は前記第2流出配管に切替え可能な切替えバルブと
を備え、
前記第2流出配管内に、前記水分を除去するためのフィルタを備えるミストセパレータが配置されており、
前記第2流出配管は、前記ミストセパレータの下流側において前記第1流出配管と合流している、車両用空調システム。
【0010】
(2) 前記切替えバルブは、前記空気の流れを前記第1流出配管又は前記第2流出配管に切替え可能な差圧バルブであり、
前記空気の流れを前記第1流出配管に切替えるように前記差圧バルブを制御する第1通風機と、
前記空気の流れを前記第2流出配管に切替えるように前記差圧バルブを制御する第2通風機と
を更に備える、(1)に記載の車両用空調システム。
【0011】
(3) 前記第1流出配管と前記第2流出配管との前記分岐部において、前記第2流出配管が前記第1流出配管の内部に配置された二重管構造を有する、(1)又は(2)に記載の車両用空調システム。
【0012】
(4) 前記第1通風機が前記流入配管に配置されている、(2)又は(3)に記載の車両用空調システム。
【0013】
(5) 前記第2通風機が前記第2流出配管に配置されている、(2)~(4)のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0014】
(6) PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とする、(1)~(5)のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0015】
(7) 前記除湿層は、二酸化炭素及び揮発成分から選択される少なくとも1つを吸着する機能を有する吸着材、並びに/又は触媒を含有する、(1)~(6)のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0016】
(8) 前記空気の流れを前記第1流出配管に切替えるように前記切替えバルブを制御して車室内の除湿を行う除湿モードと、
前記除湿デバイスの前記一対の電極に電圧を印加するとともに、前記空気の流れを前記第2流出配管に切替えるように前記切替えバルブを制御して前記除湿層の再生処理を行う再生モードと
を実行可能な制御部を更に備える、(1)~(7)のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0017】
(9) 前記車室のガラスの曇りを検知することが可能な検知部を更に備え、前記制御部は、前記ガラスの曇りが検知されたときに前記再生モードを実行し、前記ガラスの曇りが検知されていないときに前記除湿モードを実行する、(8)に記載の車両用空調システム。
【0018】
(10) 前記検知部は、車室内の温度及び湿度に基づいて前記ガラスの曇りを検知する、(9)に記載の車両用空調システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、除湿材(除湿層)の再生処理時に空気中に放出された水分を選択的に除去しつつ、加熱された空気を有効利用することが可能な車両用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調システムの概略構成図である。
図2A】本発明の実施形態に係る車両用空調システムに用いられる除湿デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。
図2B図2Aの除湿デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る車両用空調システムの概略構成図である。
図4A】除湿モード時の差圧バルブの状態を示す部分拡大図である。
図4B】再生モード時の差圧バルブの状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の車両用空調システムは、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも隔壁がPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、第1端面及び第2端面に設けられた一対の電極と、隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む除湿デバイスと;一対の電極に電圧を印加するための電源と;車室又は車外からの空気を除湿デバイスに流入させる流入配管と;除湿デバイスによって除湿された空気を車室に戻す第1流出配管と;除湿デバイスの再生処理によって放出された水分を含む空気が流通する第2流出配管と;第1流出配管と第2流出配管との分岐部に設けられ、空気の流れを第1流出配管又は第2流出配管に切替え可能な切替えバルブとを備え;第2流出配管内に、水分を除去するためのフィルタを備えるミストセパレータが配置されており;第2流出配管は、ミストセパレータの下流側において第1流出配管と合流している。本発明の車両用空調システムは、このような構成とすることにより、再生処理時に空気中に放出された水分をミストセパレータによって選択的に除去できる。そして、加熱された空気は車内に戻すことができるため、暖房などに有効利用できる。したがって、特に、冬場のエネルギー効率を向上させることができる。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、自動車などの各種車両に用いられる。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などを用いるガス燃料車、燃料電池自動車、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車が挙げられる。本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、特に電気自動車及び電車のような内燃機関を持たない車両に好適に利用可能である。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調システムの概略構成図である。図2Aは、本発明の実施形態に係る車両用空調システムに用いられる除湿デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。図2Bは、図2Aの除湿デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
【0025】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用空調システム100は、除湿デバイス10、電源20、流入配管30、第1流出配管40、第2流出配管50、切替えバルブ60及びミストセパレータ70を備える。また、車両用空調システム100は、電源20、切替えバルブ60、配管(流入配管30、第1流出配管40及び第2流出配管50)に空気を流通させるための通風機80などを制御するための制御部90を更に備えることができる。
【0026】
図2A及び2Bに示されるように、除湿デバイス10は、外周壁11と、外周壁11の内側に配設され、第1端面12aから第2端面12bまで延びる流路となる複数のセル13を区画形成する隔壁14とを有するハニカム構造体15と、第1端面12a及び第2端面12bに設けられた一対の電極16a,16bと、隔壁14の表面上に形成された除湿層17とを含む。電源20は、一対の電極16a,16bに電圧を印加することができる。流入配管30は、車室又は車外からの空気を除湿デバイス10に流入させることができる。第1流出配管40は、除湿デバイス10によって除湿された空気を車室に戻すことができる。第2流出配管50は、除湿デバイス10の再生処理によって放出された水分を含む空気を流通させることができる。切替えバルブ60は、第1流出配管40と第2流出配管50との分岐部に設けられ、空気の流れを第1流出配管40又は第2流出配管50に切替えることができる。ミストセパレータ70は、水分を除去するためのフィルタを備えており、第2流出配管50内に配置される。第2流出配管50は、ミストセパレータ70の下流側において第1流出配管40と合流している。
【0027】
上記のような構成を有する車両用空調システム100では、車室又は車外からの空気が、流入配管30を通って除湿デバイス10に流入し、除湿デバイス10を通過する間に除湿層17で空気中の水分が捕捉(除去)される。そして、水分が低減された空気は、第1流出配管40を通って車室に戻る。このようにして車室又は車外からの空気に含まれる水分を除去して車室に戻すモードを除湿モードという。
一方、除湿層17の性能は、水分の捕捉量が多くなるにつれて徐々に低下するため、除湿層17を再生しなければならない。除湿層17の再生処理は、一対の電極16a,16bに対して電圧印加を行い、ハニカム構造体15を加熱することにより行われる。ハニカム構造体15の加熱によって除湿層17が直接的に加熱されるため、除湿層17に捕捉された水分が除湿層17から効率的に脱離又は反応して放出される。放出された空気は、第2流出配管50を通ってミストセパレータ70に流入する。ミストセパレータ70は、空気中の水分を選択的に分離(除去)し、加熱された空気を排出する。加熱された空気は、第2流出配管50を通り、第1流出配管40と合流して車室に戻る。このようにして除湿層17の再生処理を行うモードを再生モードという。
【0028】
以下、車両用空調システム100の各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
(1.除湿デバイス10)
除湿デバイス10は、図2A及び2Bに示されるように、外周壁11と、外周壁11の内側に配設され、第1端面12aから第2端面12bまで延びる流路となる複数のセル13を区画形成する隔壁14とを有するハニカム構造体15と、第1端面12a及び第2端面12bに設けられた一対の電極16a,16bと、隔壁14の表面上に形成された除湿層17とを含む。また、除湿デバイス10は、必要に応じて、一対の電極16a,16bに接続された端子18を更に含むことができる。
(1-1.ハニカム構造体15)
ハニカム構造体15の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体15の流路方向(セル13が延びる方向)に直交する断面の外形を、四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状(卵形、楕円形、長円形、角丸長方形など)などにすることができる。なお、端面(第1端面12a及び第2端面12b)は、当該断面と同一の形状である。また、断面及び端面が多角形の場合、角部を面取りしてもよい。
【0030】
セル13の形状は、特に限定されないが、ハニカム構造体15の流路方向に直交する断面において、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル13を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。
【0031】
ハニカム構造体15は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周側面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量確保に重要なセル13の総断面積を増やすことが可能となる。
なお、接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス材料に、水などの溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC特性を有する材料を含有してもよく、外周壁11及び隔壁14と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0032】
ハニカム構造体15の強度確保、空気がセル13を通過する際の圧力損失の低減、機能材の担持量確保、及び、セル13内を流れる空気との接触面積の確保等の観点から、隔壁14の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセル13の開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造体15の一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造体15の一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセル13の開口率とは、ハニカム構造体15の流路方向に直交する断面において、隔壁14によって区画されるセル13の合計面積を、ハニカム構造体15の一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)で除して得られた値である。なお、セル13の開口率を算出するに当たり、一対の電極16a,16b及び除湿層17は考慮しない。
【0033】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁14の厚さが0.300mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.200mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つセルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.130mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つセルピッチが1.3mm以上である。
【0034】
ハニカム構造体15の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁14の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体15の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体15の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更に好ましい。
【0035】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁14の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、セル13の開口率が0.70以上である。好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.09~0.35mm、セル密度が15~100セル/cm2、セル13の開口率が0.80以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.14~0.30mm、セル密度が20~90セル/cm2、セル13の開口率が0.85以上である。
【0036】
ハニカム構造体15の強度を確保する観点から、セル13の開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0037】
外周壁11の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造体15を補強するという観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を高くして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁11の厚さとは、流路方向に直交する断面において、外周壁11と最も外周側のセル13又は隔壁14との境界からハニカム構造体15の側面までの、当該側面の法線方向の長さを指す。
【0038】
ハニカム構造体15の流路方向の長さ及び流路方向に直交する断面積は、要求される除湿デバイス10のサイズに合わせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトな除湿デバイス10に用いられる場合、ハニカム構造体15は、流路方向の長さを2~20mm、流路方向に直交する断面積を10cm2以上とすることができる。なお、流路方向に直交する断面積の上限値は、特に限定されないが、例えば、300cm2以下である。
【0039】
ハニカム構造体15を構成する隔壁14は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC特性を有する材料で構成される。必要に応じて外周壁11も隔壁14と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、発熱する隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)からの伝熱によって除湿層17を直接加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ハニカム構造体15の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する除湿層17の熱劣化を抑制することも可能である。
【0040】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、30Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0041】
通電発熱可能であり、且つPTC特性を有するという観点から、外周壁11及び隔壁14は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。また、この材料は、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0042】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%、好ましくは98質量%である。
このBaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析によって測定することができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0043】
外周壁11及び隔壁14に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁11及び隔壁14は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁14に接触させることで加温された空気をヒトなどの生物に安全に当てることができる。なお、外周壁11及び隔壁14において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0044】
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点は、常温(25℃)の抵抗値から2倍以上の抵抗値になったときの温度範囲にあることが好ましい。キュリー点がこのような温度範囲にあれば、除湿デバイス10が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、除湿デバイス10の過剰な発熱が効率的に抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する除湿層17の熱劣化を抑制することができる。
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点の下限は、除湿層17を効率良く加熱する観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、特に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
【0045】
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0046】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A YOKOGAWA HEWLETT PACKARD,LTD製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(20℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0047】
(1-2.一対の電極16a,16b)
一対の電極16a,16bは、図2Aに示されるように、第1端面12a及び第2端面12bに設けられる。
一対の電極16a,16bの間に電圧を印加することで、ジュール熱によりハニカム構造体15を発熱させることが可能となる。
【0048】
一対の電極16a,16bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。また、PTC特性を有する外周壁11及び/又は隔壁14とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAl、Au、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Zn、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、一対の電極16a,16bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。一対の電極16a,16bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0049】
一対の電極16a,16bの厚さは、一対の電極16a,16bの形成方法に応じて適宜設定することができる。一対の電極16a,16bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によっても一対の電極16a,16bを形成することもできる。さらに、金属板又は合金板を接合することによって一対の電極16a,16bとしてもよい。
【0050】
一対の電極16a,16bの厚さは、例えば、電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。また、金属板又は合金板の接合では、それらの厚さを5~100μm程度とすることが好ましい。
【0051】
(1-3.端子18)
端子18は、一対の電極16a,16bに接続され、一対の電極16a,16bの少なくとも一部に設けられる。端子18を設けることにより、外部電源との接続が容易になる。端子18は、電源20に接続された導線に接続される。
【0052】
端子18の材質としては、特に限定されないが、例えば、金属とすることができる。金属としては、単体金属及び合金などを採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金、リン青銅がより好ましい。
【0053】
端子18の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、図2Aに示されるように、外周壁11上の一対の電極16a,16bの全体に端子18を設けることができる。また、端子18は、外周壁11上の一対の電極16a,16bの一部に設けてもよいし、外周壁11上の一対の電極16a,16bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、端子18は、隔壁14上の一対の電極16a,16bの一部に設けてもよく、一部のセル13を塞ぐように設けてもよい。
また、端子18の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~10mm、典型的に0.05~5mmである。
【0054】
端子18と一対の電極16a,16bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0055】
(1-4.除湿層17)
除湿層17は、隔壁14(最外周のセル13の場合は、最外周のセル13を区画形成する隔壁14及び外周壁11)の表面上に設けることができる。このように除湿層17を設けることにより、再生処理時に除湿層17を加熱し易くなるため、除湿層17による除湿機能を再生させることができる。
【0056】
除湿層17は、除湿材を含有する。除湿材としては、特に限定されないが、吸湿材を用いることができる。
吸湿材は、水分(水蒸気)を-20~40℃で吸着し、60℃以上の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する吸湿材としては、アルミノケイ酸塩、シリカゲル、シリカ、酸化グラフェン、高分子吸湿材、ポリスチレンスルホン酸及び金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
アルミノケイ酸塩としては、AFI型、CHA型又はBEA型のゼオライト;アロフェン、イモゴライトなどの多孔質粘土鉱物を用いることが好ましい。また、アルミノケイ酸塩は、非晶質であることが好ましい。
【0058】
シリカゲルとしては、A型シリカゲルを用いることが好ましい。
高分子吸湿材としては、ポリアクリル酸系高分子鎖を有するものが好ましい。例えば、高分子吸湿材として、ポリアクリル酸ナトリウムなどを用いることができる。
金属有機構造体は、金属イオンと有機分子(有機配位子)とを含む結晶性のハイブリッド材料である。金属イオンは、親水性を有する金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)であることが好ましい。
【0059】
除湿層17は、除湿材以外の機能材や、触媒を含有することができる。除湿材以外の機能材としては、所望の機能を発揮させることができる材料であれば特に限定されないが、吸着材、触媒などを用いることができる。吸着材は、二酸化炭素及び揮発成分から選択される少なくとも1つを吸着する機能を有することが好ましい。また、触媒を用いることにより、除去対象成分を浄化することができる。更に、吸着材による除去対象成分の捕捉機能を高めるなどの目的で、吸着材と触媒とを併用してもよい。
【0060】
吸着材としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、アルミナ、シリカ、低結晶性粘土、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体などが挙げられる。これらの成分のいくつかは、吸湿材としても機能し得る。吸着材は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
触媒としては、酸化還元反応を促進させることが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Agなどの金属触媒、CeO2、ZrO2などの酸化物触媒などが挙げられる。触媒は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
車室の空気中に含まれる揮発成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)や、VOC以外のにおい成分などである。揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニルなどが挙げられる。
【0063】
除湿層17の厚さは、セル13の大きさに応じて決定すればよく、特に限定されない。例えば、除湿層17の厚さは、空気との接触を十分確保する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは30μm以上である。一方、隔壁14や外周壁11から除湿層17が剥離することを抑制する観点から、除湿層17の厚さは、好ましくは400μm以下、より好ましくは380μm以下、更に好ましくは350μm以下である。
【0064】
除湿層17の厚さは、以下の手順で測定する。ハニカム構造体15の流路方向に平行な任意の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡などで50倍程度の断面画像を取得する。また、この断面は、ハニカム構造体15の流路に直交する断面における重心位置を通るようにする。断面画像から視認される各除湿層17について、断面積をセル13の流路方向の長さで除することで厚さを算出する。この計算を当該断面画像から視認される全ての除湿層17について行い、全体の平均値を除湿層17の厚さとする。
【0065】
除湿材などが除湿デバイス10内で所望の機能を発揮するという観点から、除湿層17の量は、ハニカム構造体15の容積に対して、50~500g/Lであることが好ましく、100~400g/Lであることがより好ましく、150~350g/Lであることが更により好ましい。なお、ハニカム構造体15の容積は、ハニカム構造体15の外形寸法により定まる値である。
【0066】
(1-5.除湿デバイス10の製造方法)
除湿デバイス10の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。以下、除湿デバイス10を製造する方法について例示的に説明する。
除湿デバイス10を構成するハニカム構造体15の製造方法は、成形工程及び焼成工程を含む。
成形工程では、BaCO3粉末、TiO2粉末、及び希土類の硝酸塩又は水酸化物の粉末を含むセラミックス原料を含有する坏土を成形し、相対密度が60%以上のハニカム成形体を作製する。
セラミックス原料は、所望する組成となるように各粉末を乾式混合することによって得ることができる。
坏土は、セラミックス原料に、分散媒、バインダ、可塑剤及び分散剤を添加して混練することによって得ることができる。坏土には、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末などの添加剤を必要に応じて含有させてもよい。
セラミックス原料以外の成分の配合量は、ハニカム成形体の相対密度が60%以上となるような量であれば特に限定されない。
【0067】
ここで、本明細書において「ハニカム成形体の相対密度」とは、セラミックス原料全体の真密度に対するハニカム成形体の密度の割合のことを意味する。具体的には、以下の式によって求めることができる。
ハニカム成形体の相対密度(%)=ハニカム成形体の密度(g/cm3)/セラミックス原料全体の真密度(g/cm3)×100
ハニカム成形体の密度は、純水を媒体とするアルキメデス法により測定することができる。また、セラミックス原料全体の真密度は、各原料の質量を合計した値(g)を、各原料の実の体積を合計した値(cm3)で除することによって求めることができる。
【0068】
分散媒としては、水、又は水とアルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0069】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよいが、アルカリ金属元素を含有していないことが好ましい。
【0070】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステルなどを例示することができる。
【0071】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどの界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種を単独で使用するものであっても、二種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0072】
ハニカム成形体は、坏土を押出成形することによって作製することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度などを有する口金を用いることができる。
【0073】
押出成形によって得られるハニカム成形体の相対密度は、60%以上、好ましくは65%以上である。このような範囲にハニカム成形体の相対密度を制御することにより、ハニカム成形体を緻密化し、室温における電気抵抗を低下させることが可能となる。なお、ハニカム成形体の相対密度の上限値は、特に限定されないが、一般に80%、好ましくは75%である。
【0074】
ハニカム成形体は、焼成工程の前に乾燥させることができる。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0075】
焼成工程は、1150~1250℃で保持した後、20~600℃/時の昇温速度で1360~1430℃の最高温度に昇温させて0.5~10時間保持することを含む。
ハニカム成形体を1360~1430℃の最高温度で0.5~10時間保持することにより、Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子を主成分とするハニカム構造体15を得ることができる。
また、1150~1250℃で保持することにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が除去され易くなるため、ハニカム構造体15を緻密化させることができる。
さらに、1150~1250℃から1360~1430℃の最高温度までの昇温速度を20~600℃/時とすることにより、1.0~10.0質量%のBa6Ti1740結晶粒子をハニカム構造体15に生成させることができる。
【0076】
1150~1250℃での保持時間は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10時間である。このような保持時間とすることにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が安定して除去され易くなる。
【0077】
焼成工程は、昇温時に900~950℃で0.5~5時間保持することを含むことが好ましい。900~950℃で0.5~5時間保持することにより、BaCO3が効率良く分解し、所定の組成を有するハニカム構造体15が得られ易くなる。
【0078】
なお、焼成工程の前には、バインダを除去するための脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程の雰囲気は、有機成分を完全に分解するために大気雰囲気とすることが好ましい。
また、焼成工程の雰囲気も、電気特性の制御と製造コストの観点から大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成工程や脱脂工程に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉などを用いることができる。
【0079】
このようにして得られたハニカム構造体15に、一対の電極16a,16bを形成する。一対の電極16a,16bは、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によって形成することができる。また、一対の電極16a,16bは、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによっても形成することもできる。さらに、一対の電極16a,16bは、溶射によって形成することもできる。一対の電極16a,16bは単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。以下、一対の電極16a,16bの代表的な形成方法を説明する。
【0080】
まず、電極材、有機バインダ及び分散媒を含む電極スラリーを調製し、ハニカム構造体15の第1端面12a又は第2端面12bに塗布する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。ハニカム構造体15の外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。その後、スラリーを乾燥させることによってハニカム構造体15の第1端面12a又は第2端面12bに一対の電極16a,16bを形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にヒーターエレメントを加熱しながら行うことができる。塗布、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの一対の電極16a,16bを設けることができる。
【0081】
次に、端子18を設ける場合、一対の電極16a,16bの所定の位置に端子18を配置し、一対の電極16a,16bと端子18とを接続する。一対の電極16a,16bと端子18との接続方法としては、上述の方法を用いることができる。
なお、端子18の設置は、下記の除湿層17を形成した後に行ってもよい。
【0082】
次いで、ハニカム構造体15の隔壁14などの表面に除湿層17を形成する。
除湿層17の形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程により形成可能である。除湿材、有機バインダ及び分散媒を含むスラリーにハニカム構造体15を所定時間浸漬し、ハニカム構造体15の端面及び外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14の表面に除湿層17を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体15を加熱しながら行うことができる。浸漬、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの除湿層17を隔壁14などの表面に設けることができる。
【0083】
(2.電源20)
電源20は、一対の電極16a,16bに電圧を印加するためのものである。電源20は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示にしたがって、一対の電極16a,16bに対する電圧の印加状態を調整する。
電源20としては、特に限定されず、バッテリーなどの公知の電源を用いることができる。
【0084】
(3.流入配管30)
流入配管30は、車室又は車外からの空気を除湿デバイス10に流入させるための配管である。
流入配管30の形状及び大きさなどは、車両の種類などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0085】
(4.第1流出配管40及び第2流出配管50)
第1流出配管40及び第2流出配管50はいずれも、除湿デバイス10を通過した空気が流通する配管である。特に、第1流出配管40は、除湿デバイス10によって除湿された空気を車室に戻す配管であり、第2流出配管50は、除湿デバイス10の再生処理によって放出された水分を含む空気が流通する配管である。
第1流出配管40及び第2流出配管50の形状及び大きさなどは、車両の種類などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。また、第1流出配管40及び第2流出配管50は、流入配管30とは別の配管であってもよいが、流入配管30と一体として構成された配管であってもよい。
【0086】
第2流出配管50は、ミストセパレータ70の下流側において、第1流出配管40と合流している。このような構成とすることにより、ミストセパレータ70で水分が除去された加熱空気を第1流出配管40に戻すことができるため、暖房などに有効利用できる。
【0087】
第1流出配管40及び第2流出配管50は、図3に示されるように、第1流出配管40と第2流出配管50との分岐部において、第2流出配管50が第1流出配管40の内部に配置された二重管構造を有してもよい。このような構成とすることにより、第1流出配管40と第2流出配管50との分岐部周辺の構造をコンパクト化するとともに、分岐部に下記で説明する市販の差圧バルブ65を用いることが可能となる。なお、図3は、本発明の別の実施形態に係る車両用空調システムの概略構成図である。
【0088】
(5.切替えバルブ60)
切替えバルブ60は、第1流出配管40と第2流出配管50との分岐部に設けられ、空気の流れを第1流出配管40又は第2流出配管50に切替える機能を有する。
切替えバルブ60の切替えは、例えば、制御部90と切替えバルブ60を電線又は無線で電気的に接続し、切替えバルブ60のスイッチを制御部90によって操作することで可能である。
【0089】
切替えバルブ60としては、電気で駆動し、流路を切替える機能を有するバルブであれば特に制限はないが、電磁弁及び電動弁が挙げられる。例えば、切替えバルブ60は、回転軸に支持された開閉ドアと、回転軸を回動操作するモータなどのアクチュエータを備えることができる。アクチュエータは制御部90によって制御可能に構成される。
【0090】
切替えバルブ60は、図3に示されるような、空気の流れを第1流出配管40又は第2流出配管50に切替えることが可能な差圧バルブ65とすることが好ましい。差圧バルブ65を用いることにより、切替えバルブ60の周辺に駆動部(例えば、アクチュエータ)を設ける必要がないため、分岐部周辺の構造をコンパクト化することができる。
差圧バルブ65としては、第1流出配管40と第2流出配管50との分岐部に配置することができ、配管内の圧力に応じて第1流出配管40又は第2流出配管50の流路を開閉可能なものであれば特に限定されない。
【0091】
差圧バルブ65は、例えば、図4A及び4Bに示されるように、基部66と、開閉部67a,67bと、基部66と開閉部67a,67bとを接続するバネ部68a,68bとを備える。このような構造を有する差圧バルブ65は、バネ部68a,68bの強さを調整することにより、開閉部67a,67bが開く圧力を制御することができる。
なお、差圧バルブ65は、以下で説明する第1通風機85a及び第2通風機85bによって制御することができる。
【0092】
(6.ミストセパレータ70)
ミストセパレータ70は、水分を除去するためのフィルタを備える。ミストセパレータ70は、第2流出配管50内に配置される。ミストセパレータ70を第2流出配管50内に配置することにより、除湿デバイス10の再生処理によって放出された水分を含む空気から水分を選択的に除去することができる。
【0093】
ミストセパレータ70としては、水分を除去するためのフィルタを備えていれば特に限定されず、市販品を用いることができる。典型的なミストセパレータ70は、水分を除去するためのフィルタと、フィルタを収容するハウジングと、水分を貯留する貯留部と、貯留部から水分を排出するドレンとを備えている。
ミストセパレータ70は、制御部90によって制御可能に構成される。
【0094】
(7.通風機80)
通風機80は、配管(流入配管30、第1流出配管40及び第2流出配管50)に空気を流通させるために設けられる。通風機80としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
通風機80の位置は、特に限定されず、図1に示すように流入配管30に設けてもよいが、流出配管(例えば、第1流出配管40と第2流出配管50との合流部よりも下流側の位置や、第1流出配管40及び第2流出配管50の両方など)に設けてもよい。
【0095】
切替えバルブ60として差圧バルブ65が用いられる場合、図3に示すように、空気の流れを第1流出配管40に切替えるように差圧バルブ65を制御する第1通風機85aと、空気の流れを第2流出配管50に切替えるように差圧バルブ65を制御する第2通風機85bとが設けられる。具体的には、第1通風機85aは、差圧バルブ65の開閉部67aを開状態に制御するために設けられ、第2通風機85bは、差圧バルブ65の開閉部67bを開状態に制御するために設けられる。第1通風機85a及び第2通風機85bとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0096】
ここで、除湿モード時の差圧バルブ65の状態を示す部分拡大図を図4A、再生モード時の差圧バルブ65の状態を示す部分拡大図を図4Bにそれぞれ示す。
除湿モードでは、第2通風機85bを停止し、第1通風機85aを起動させることにより、図4Aに示されるように、空気の流れを第1流出配管40に切替えるように差圧バルブ65が制御される。また、再生モードでは、第1通風機85aを停止し、第2通風機85bを起動させることにより、図4Bに示されるように、空気の流れを第2流出配管50に切替えるように差圧バルブ65が制御される。
【0097】
第1通風機85aの位置は、上記のように差圧バルブ65を制御可能な位置であれば特に限定されない。
例えば、第1通風機85aの位置は、流入配管30内に配置することができる。このような位置に第1通風機85aを配置した場合、第1通風機85aを起動させると、差圧バルブ65よりも上流側の配管内が正圧となる。この正圧によって差圧バルブ65の開閉部67aのみが開状態となり、第1流出配管40に空気が流入する。
正圧によって差圧バルブ65の開閉部67aのみを開状態とするためには、バネ部68aを当該正圧によって開く強さにするとともに、バネ部68bを当該正圧によって開かない強さとすればよい。
【0098】
また、第1通風機85aの位置は、差圧バルブ65よりも下流側の第1流出配管40内(第2流出配管50との合流部よりも上流側の位置)に設けてもよい。このような位置に第1通風機85aを配置した場合、第1通風機85aを起動させると、差圧バルブ65と第1通風機85aとの間の第1流出配管40内が負圧となる。この負圧によって差圧バルブ65の開閉部67aのみが開状態となり、第1流出配管40に空気が流入する。この場合、差圧バルブ65のバネ部68a及びバネ部68bの強さは同程度であってもよい。
【0099】
第2通風機85bの位置は、上記のように差圧バルブ65を制御可能な位置であれば特に限定されない。
例えば、第2通風機85bの位置は、第2流出配管50内(第1流出配管40との合流部よりも上流側の位置)に配置することができる。このような位置に第2通風機85bを配置した場合、第2通風機85bを起動させると、差圧バルブ65と第2通風機85bとの間の第2流出配管50内が負圧となる。この負圧によって差圧バルブ65の開閉部67bのみが開状態となり、第2流出配管50に空気が流入する。
【0100】
(8.制御部90)
制御部90は、電源20、切替えバルブ60、ミストセパレータ70、通風機80(第1通風機85a及び第2通風機85b)などを制御するために設けることができる。制御部90は、電源20、切替えバルブ60、ミストセパレータ70、通風機80(第1通風機85a及び第2通風機85b)などと電気的に接続されている。
制御部90は、除湿デバイス10の一対の電極16a,16bに電圧を印加するための電源20を制御することにより、ハニカム構造体15の加熱状態を調整することができる。
制御部90は、切替えバルブ60を制御することにより、空気の流れを第1流出配管40又は第2流出配管50に切替えることができる。
制御部90は、通風機80を起動させることにより、配管内に空気を流通させることができる。
切替えバルブ60として差圧バルブ65を用いる場合、制御部90は、第1通風機85aを起動させ、差圧バルブ65における空気の流れを第1流出配管40に切替えるように制御することができる。また、制御部90は、第2通風機85bを起動させ、差圧バルブ65における空気の流れを第2流出配管50に切替えるように制御することができる。
【0101】
制御部90としては、特に限定されないが、一般にECU(Engine (electronic) Control Unit)である。ECUは、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUでの演算結果などが一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポートを備える。
【0102】
制御部90は、空気の流れを第1流出配管40に切替えるように切替えバルブ60を制御して車室内の除湿を行う除湿モードと、除湿デバイス10の一対の電極16a,16bに電圧を印加するとともに、空気の流れを第2流出配管50に切替えるように切替えバルブ60を制御して除湿層17の再生処理を行う再生モードとを実行可能であることが好ましい。特に、切替えバルブ60が差圧バルブ65である場合、制御部90は、第1通風機85aを起動し、空気の流れを第1流出配管40に切替えるように差圧バルブ65を制御して車室内の除湿を行う除湿モードと、第2通風機85bを起動し、除湿デバイス10の一対の電極16a,16bに電圧を印加するとともに、空気の流れを第2流出配管50に切替えるように差圧バルブ65を制御して除湿層17の再生処理を行う再生モードとを実行可能であることが好ましい。このようなモードが実行可能であれば、除湿モードにおいて車室からの空気に含まれる水分を除去して車室に戻すことができるとともに、再生モードにおいて除湿層17に捕捉された水分をミストセパレータ70によって車外に排出しつつ、加熱された空気を車室に戻すことができる。
【0103】
車両用空調システム100は、車室内のガラスの曇りを検知することが可能な検知部(図示していない)を更に備え、制御部90は、車室内のガラスの曇りが検知されたときに再生モードを実行し、車室内のガラスの曇りが検知されていないときに除湿モードを実行することが好ましい。このように制御することにより、車室内のガラスの曇りを抑制しつつ除湿層17の再生処理を効率良く進めることができる。
【0104】
車室内のガラスの曇りを検知することが可能な検知部としては、特に限定されないが、車室内の温度及び湿度に基づいて車室内のガラスの曇りを検知することが好ましい。このような機能を有する検知部であれば、ガラスの曇りを安定して検知することができる。
【0105】
除湿層17の再生モードにおいて、除湿層17に捕捉された水分の離脱を促進するため、除湿材の種類に応じて離脱温度以上に除湿層17を加熱することが好ましい。例えば、除湿層17を70~150℃に加熱することが好ましく、80~140℃に加熱することがより好ましく、90~130℃に加熱することが更により好ましい。
【0106】
上記の制御を安定して行う観点から、除湿デバイス10は車室に近い位置に配置されることが望ましい。したがって、感電防止などの観点から、除湿デバイス10の駆動電圧が60V以下であることが好ましい。除湿デバイス10に用いられているハニカム構造体15は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造体15の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造体15の加熱時の電流が大きくなるため、導線を太くする必要がある。
【符号の説明】
【0107】
10 除湿デバイス
11 外周壁
12a 第1端面
12b 第2端面
13 セル
14 隔壁
15 ハニカム構造体
16a,16b 一対の電極
17 除湿層
18 端子
20 電源
30 流入配管
40 第1流出配管
50 第2流出配管
60 切替えバルブ
65 差圧バルブ
66 基部
67a,67b 開閉部
68a,68b バネ部
70 ミストセパレータ
80 通風機
85a 第1通風機
85b 第2通風機
90 制御部
100 車両用空調システム
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B