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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025273
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】気象管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250214BHJP
   G01W 1/02 20060101ALI20250214BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20250214BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/10
G01W1/02 A
G01W1/10 P
G06Q50/26
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129897
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】和田 将一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L049CC35
5L050CC11
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】投稿者から投稿される気象関連投稿情報を利用した気象アラートの出力制御を実現する。
【解決手段】実施形態の気象管理システムは、気象観測データを解析し、所定の基準に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子を出力する解析処理を行い、解析処理の結果に応じてアラート情報を出力する。解析処理に用いられる所定の基準は、投稿者端末から投稿される気象関連投稿情報に基づいて変更することができる。ここで、所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアを記憶しておく。気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から有効エリア内に位置する観測データに対して変更後の所定の基準を適用した解析処理を行うことで、気象関連投稿情報の投稿頻度を考慮した適切な防災の呼び掛けを行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象管理システムであって、
気象レーダーの観測データを解析し、所定の基準に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子を出力する解析処理を行う解析部と、
前記解析処理の結果に基づいて、アラート情報を出力するアラート制御部と、
投稿者端末から投稿される気象関連投稿情報に基づいて、前記所定の基準を変更する基準制御部と、
所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアを記憶する記憶部と、を有し、
前記解析部は、前記気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた前記有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から前記有効エリア内に位置する観測データに対して変更後の前記所定の基準を適用した前記解析処理を行うことを特徴とする気象管理システム。
【請求項2】
前記基準制御部は、前記所定の基準を変更する際に、前記所定の基準を変更する契機となった前記気象関連投稿情報の投稿位置に該当する前記所定の投稿エリアを特定するとともに、前記気象関連投稿情報の投稿時刻に該当する前記所定の投稿時間帯を特定し、特定された前記所定の投稿エリア及び前記所定の投稿時間帯に紐付く前記有効時間及び前記有効エリアを抽出することを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項3】
前記有効時間及び前記有効エリアを設定する有効時間・有効エリア管理部をさらに有し、
前記有効時間・有効エリア管理部は、
過去の気象関連投稿情報群の統計情報を用い、所定の投稿エリア毎に投稿時間帯別投稿間隔を算出し、前記投稿時間帯別投稿間隔に基づいて、所定の投稿エリアにおける所定の投稿時間帯別の前記有効時間を設定する第1処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項4】
前記有効時間・有効エリア管理部は、
所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する前記所定の投稿時間帯中に投稿された複数の前記気象関連投稿情報のリアルタイム投稿間隔を算出する第2処理を行い、
前記統計情報に基づいて算出された前記投稿時間帯別投稿間隔と、前記リアルタイム投稿間隔とを比較し、前記所定の投稿時間帯に適用中の前記有効時間を変動させることを特徴とする請求項3に記載の気象管理システム。
【請求項5】
前記有効時間及び前記有効エリアを設定する有効時間・有効エリア管理部をさらに有し、
前記有効時間・有効エリア管理部は、
過去の気象関連投稿情報群の統計情報を用い、所定の投稿エリア毎に投稿時間帯別の投稿位置の距離差を算出し、前記投稿位置の距離差に基づいて、所定の投稿エリアにおける所定の投稿時間帯別の前記有効エリアを設定する第3処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項6】
前記有効時間・有効エリア管理部は、
所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する前記所定の投稿時間帯中に投稿された複数の前記気象関連投稿情報の投稿位置のリアルタイム距離差を算出する第4処理を行い、
前記統計情報に基づいて算出された前記投稿位置の距離差と、前記投稿位置のリアルタイム距離差とを比較し、前記所定の投稿時間帯に適用中の前記有効エリアを変動させることを特徴とする請求項5に記載の気象管理システム。
【請求項7】
前記有効時間及び前記有効エリアを設定する有効時間・有効エリア管理部をさらに有し、
前記有効時間・有効エリア管理部は、
所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の前記気象関連投稿情報のリアルタイム投稿間隔を算出する第5処理と、
所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の前記気象関連投稿情報の投稿位置のリアルタイム距離差を算出する第6処理と、を行い、
前記リアルタイム投稿間隔に基づいて現在時間に対応する所定の投稿時間帯に適用されている前記有効時間を変動させ、前記投稿位置のリアルタイム距離差に基づいて前記有効エリアを変動させることを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項8】
前記解析部は、前記有効時間の期間経過後、変更前の前記所定の基準に戻して前記解析処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項9】
前記解析部は、気象レーダーの観測データを解析し、種別分類基準に基づいて上空の雲の中の降水粒子の降水粒子推定処理を行い、地表に降り注ぐ降水粒子を出力する前記解析処理を行い、
前記基準制御部は、投稿者端末から投稿される前記気象関連投稿情報に基づいて、前記種別分類基準を変更することを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項10】
前記解析部は、前記降水粒子推定処理を行うとともに、観測データから把握される降水強度に基づく地表への降水状態判別処理を行い、前記降水粒子推定処理及び前記降水状態判別処理の各処理結果に基づいて、地表に降り注ぐ降水粒子を出力する前記解析処理を行い、
前記基準制御部は、投稿者端末から投稿される前記気象関連投稿情報に基づいて、前記種別分類基準、又は前記種別分類基準及び前記降水状態判別処理に用いられる降水強度に対する降水状態判別基準の双方を変更することを特徴とする請求項9に記載の気象管理システム。
【請求項11】
前記解析部は、所定の時間間隔で生成される、気象レーダーの観測データに基づく降水分布画像を用いて、雲の動きベクトルを算出し、
前記解析部は、前記有効エリアを前記雲の動きベクトルに基づいて拡張するとともに、前記気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた前記有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から前記拡張された有効エリア内に位置する観測データに対して変更後の前記所定の基準を適用した前記解析処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項12】
前記気象関連投稿情報は、ひょう、あられ、竜巻又はつむじ風に関連する投稿情報であることを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項13】
気象管理装置によって実行されるプログラムであって、前記気象管理装置に、
気象レーダーの観測データを解析し、所定の基準に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子を出力する解析処理を行う第1機能と、
前記解析処理の結果に基づいて、アラート情報を出力する第2機能と、
投稿者端末から投稿される気象関連投稿情報に基づいて、前記所定の基準を変更する第3機能と、
所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアを記憶する第4機能と、を実現させ、
前記第1機能は、前記気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた前記有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から前記有効エリア内に位置する観測データに対して変更後の前記所定の基準を適用した前記解析処理を行うことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気象レーダーの観測データに基づく気象現象に対してアラートを出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
気象レーダーは、電波(マイクロ波)を発射し、所定範囲内に存在する雨や雪を観測する。発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測することができる。
【0003】
近年では、二重偏波気象ドップラーレーダーが導入され、水平方向に振動する電波(水平偏波)と垂直方向に振動する電波(垂直偏波)を用いることで、雲の中の降水粒子の種別や降水の強さをより正確に推定することを可能にしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Park, H. -S and A. V. Ryzhkov, D. S. Zrnic and K. -E Kim 2009: The Hydrometeor Classification Algorithm for the Polarimetric WSR-88D:Description and Application to an MCS. Wea. Forecasting., 24, 730-748
【非特許文献2】影澤秀明(他5名)著,タイトル「Twitterを用いたセンシングシステムの提案と考察」,発行年:平成26年(2014年)7月2日,URL:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=104972&item_no=1&page_id=13&block_id=8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気象レーダーの観測データに基づく気象現象に対してアラートを出力する気象管理システムにおいて、投稿者から投稿される気象関連投稿情報を利用したアラートの出力制御を行う仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の気象管理システムは、気象レーダーの観測データを解析し、所定の基準に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子を出力する解析処理を行う解析部と、前記解析処理の結果に基づいて、アラート情報を出力するアラート制御部と、投稿者端末から投稿される気象関連投稿情報に基づいて、前記所定の基準を変更する基準制御部と、所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアを記憶する記憶部と、を有する。前記解析部は、前記気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた前記有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から前記有効エリア内に位置する観測データに対して変更後の前記所定の基準を適用した前記解析処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の気象管理システムの機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。
図2】第1実施形態の気象観測データに対応する気象現象として、投稿情報から把握される気象現象を紐付けた真値情報の生成処理を説明するための図である。
図3】第1実施形態の種別分類基準の変更処理を説明するための図である。
図4】第1実施形態の気象関連投稿情報の投稿間隔と、出力されるアラートの関係を説明するための図である。
図5】第1実施形態の投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図である。
図6】第1実施形態の投稿エリア、投稿時間帯毎の基準変更制御を適用した説明図である
図7】第1実施形態の気象管理システムによって実行される処理フローを示す図である。
図8】第2実施形態の投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図である。
図9】第3実施形態の投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図であり、有効時間及び有効エリアを動的に変化させる一例を示す図である。
図10】第4実施形態の雲の動きベクトルを用いた有効エリアの拡大処理を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0009】
上述のように、二重偏波気象ドップラーレーダーなどの気象レーダーによって、雲の中の降水粒子の種別や降水強度を正確に推定することができるようになった。気象庁は、気象レーダーの観測データ(気象観測データ)に基づいて、大雨や暴風などによって発生する災害の防止・軽減のため、気象警報や注意報などの防災気象情報を発表している。
【0010】
ここで、気象観測データに基づく解析結果は、あくまでも「推定」である。このため、実際に現地(地表)で生じていた気象現象と相違することもある。そこで、気象庁は、気象観測データに加え、気象庁・国土交通省・地方自治体が保有する全国の雨量計などの観測機器のデータを組み合わせ、実際に現地又はその付近で観測された気象現象を用いて、気象観測データに基づく推定精度の向上に努めている。
【0011】
しかしながら、例えば、ひょう(雹)やあられ(霰)などの気象現象は、発生頻度の低さに加え、発生範囲が局所的で狭かったりするため、観測機器での観測が難しい。また、ひょうやあられなどを観測可能な観測機器(例えば、ディスドロメーター(降水粒径・速度分布測定装置))もあるが、発生頻度が低く、地上で観測できることは稀である気象現象に対し、このような専用の観測機器を配備することは現実的ではない。これは、竜巻やつむじ風などの突風の気象現象も同様である。したがって、ひょうやあられなどの気象現象に対し、気象観測データに基づく推定精度の向上を図り難い課題があった。
【0012】
一方で、近年のスマートフォンの発展及びSNSサービスの充実により、投稿者が気象関連投稿情報(静止画像や動画像を含む)を投稿する機会が増えている。そこで、この投稿情報を利用することにより、観測機器を用いなくても、地表で生じたひょう(雹)やあられ(霰)などの気象現象を的確に把握することができる。
【0013】
そこで、気象観測データから把握される気象現象に関してアラートを出力する気象管理システムにおいて、投稿者から投稿される気象関連投稿情報を利用したアラートの出力制御を行う仕組みを実現する。
【0014】
特に、投稿者によって投稿される投稿情報は、時間帯や場所に応じて投稿間隔が異なることが知られている。そこで、気象関連投稿情報を利用したアラートの出力制御において、気象関連投稿情報の投稿頻度等を考慮した防災の呼び掛けができるようにする。
【0015】
(第1実施形態)
図1から図7は、第1実施形態を説明するための図である。図1は、本実施形態の気象管理システム100の機能ブロックとネットワーク構成を示す図である。
【0016】
気象管理システム100は、気象レーダーから観測データが提供され、ウェブサーバ300から投稿者が投稿した投稿情報が提供される。
【0017】
気象レーダーは、例えば、電波(マイクロ波)を発射し、雨や雪を観測する。発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測する。また、上述のように、二重偏波気象ドップラーレーダーが導入され、水平方向と垂直方向に振動する電波(水平偏波,垂直偏波)を用いることで、雲の中の降水粒子の種別を判別したり、降水の強さ(降水の状態)を推定したりする。
【0018】
二重偏波気象ドップラーレーダーは、振幅の比によって降水粒子の形を推定することができる。降水粒子は、粒が大きいほど、より空気抵抗をうけて扁平になる。これを水平偏波と垂直偏波により観測し、その反射波の振幅比から降水粒子の形を推定する。また、位相差で雨の強さを推定することができる。電波には雨粒などの水の中を進むとき、何もない大気中と比べて速度が少し遅くなる性質がある。強い雨ほど水平偏波の速度が遅くなる性質を利用して、水平偏波と垂直偏波により観測し、その反射波の位相の差(反射波の強さ)から、降水強度(降水の状態)を推定する。
【0019】
なお、降水粒子の形を推定したり、降水強度を推定したりする各推定手法は、反射波の振幅に限らず、気象観測データから得られる他の情報を用いた公知の手法であってもよい。例えば、水平偏波と垂直偏波の相互相関係数や水平偏波と垂直偏波の強度比などに基づいて、降水粒子の形や降水強度を推定することもできる。また、反射波の振幅と、水平偏波と垂直偏波の相互相関係数や水平偏波と垂直偏波の強度比を組み合わせた推定手法を適用してもよい。
【0020】
振幅の比による降水粒子推定では、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリが予め用意される。例えば、振幅の比が所定値以上である場合、降水粒子がひょうであると判定(カテゴライズ)する。各降水粒子の振幅の比は、種別分類基準として設定されており、気象観測データに基づいて、観測エリアにおける気象現象を推定する。なお、ひょうは、積乱雲から降る直径5mm以上の氷粒であり、直径5mm未満の氷粒はあられと定義される。
【0021】
気象管理システム100は、気象観測データを用いて、降水粒子推定処理及び降水状態判別処理を含む解析処理を行い、地表に降り注ぐ降水粒子を出力する。
【0022】
ウェブサーバ300は、投稿者端末Tから投稿される投稿情報を受け付け、受け付けた投稿情報をウェブ上で公開するウェブサイトを提供する。投稿者は、ウェブサーバ300に登録したユーザであり、不特定多数の投稿者が含まれる。一例として、X(旧Twitter(登録商標))やFacebook(登録商標)などのSNS(Social Networking Service)への投稿情報を利用することができる。この場合、ウェブサーバ300には、気象関連投稿情報以外の投稿情報も蓄積される。
【0023】
他の例としては、気象関連専門の投稿情報を受け付けるウェブサイトへの投稿情報を利用することができる。例えば、投稿者が気象リポーターや観測員となり、日々の気象情報を投稿する。この場合、ウェブサーバ300には、気象関連投稿情報のみが蓄積される。
【0024】
さらに他の例としては、本実施形態の気象管理システム100が、ウェブサーバ300を介さずに直接、投稿者端末Tから気象関連投稿情報を取得するように構成してもよい。
【0025】
また、気象管理システム100は、1つ又は複数のウェブサイト300と接続して、気象関連の投稿情報を取得するができる。なお、投稿者端末Tは、スマートフォンなどの多機能携帯電話機やタブレット型コンピュータなどのモバイル端末であり、IP(Internet protocol)網又は移動通信回線網(Mobile communication network)を通じたデータ通信機能、演算機能(CPU等)及び記憶装置(メモリ、補助記憶装置等)を備えている。
【0026】
また、投稿者端末Tは、ブラウザなどの表示制御アプリケーションを備えると共に、静止画像や動画像を撮影する撮影装置、タッチパネル方式の表示入力装置、GPS装置を備えることができる。後述するように、投稿者端末Tから投稿される投稿情報は、投稿内容と共に、GPS装置で取得される位置情報及び時刻情報が含まれる。
【0027】
気象管理システム100は、図1に示すように、通信装置110、第1制御装置120、第2制御装置130、第1記憶装置140、及び第2記憶装置150を含んで構成されている。通信装置110は、データ通信インターフェースであり、気象管理システム100は、通信装置100を介して、IP網又は専用回線を通じて気象レーダーやウェブサイト300から各種情報を取得したり、アラート情報を提供したりする。
【0028】
<気象関連投稿情報を利用した真値情報の説明>
図2は、気象関連投稿情報と、気象関連投稿情報に該当する気象観測データを紐付けることで生成される真値情報を説明するための図である。気象関連投稿情報の管理及び真値情報の生成の各機能は、第2制御装置130と第2記憶装置150とが主体となって遂行される。第2制御装置130は、投稿情報管理部131、真値情報生成部132を含んで構成されている。
【0029】
ウェブサーバ300に投稿される投稿情報は、投稿記事又は/及び投稿画像、位置情報、時刻情報、投稿者情報を含む。投稿記事は、投稿文であり、投稿画像は、投稿者端末Tが備える撮影装置で撮影された画像、又は投稿者端末Tとは別の撮影装置で撮影された画像である。位置情報は、投稿者(投稿者端末T)の現在位置(投稿位置)である。位置情報は、現在位置に対応する住所情報が含まれていてもよい。投稿時刻は、ウェブサーバ300が投稿情報を受け付けた日時情報である。投稿者情報は、ウェブサーバ300に登録したユーザID等のユーザ識別子である。
【0030】
投稿者は、投稿者端末Tを通じて、ウェブサーバ300が提供する投稿用画面から投稿記事や投稿画像を入力し、投稿情報をウェブサーバ300に送信する。ウェブサーバ300は、投稿者端末Tから送信される投稿情報を受け付け、ウェブサーバ300が提供する投稿ウェブサイトに投稿情報を掲載し、公開する。
【0031】
なお、本実施形態では、気象管理システム100が、投稿情報をウェブサーバ300から取得する態様を例示しているが、これに限るものではない。例えば、検索サーバ(検索サイト)を経由して、投稿情報を取得してもよい。検索サイトでは、複数の異なる投稿ウェブサイト(複数の異なるウェブサイト300)から、キーワードなどの検索キーに関連する投稿情報を収集することができる。そこで、気象管理システム100は、ウェブサイト300から又はウェブサイト300の投稿情報を収集可能な検索サイトから、当該ウェブサーバ300に投稿された投稿情報を取得することができる。
【0032】
投稿情報管理部131は、図2に示すように、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいて、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、気象関連投稿情報を取得する。気象関連投稿情報は、1つ又は複数取得することができる。例えば、キーワード「ひょう」を含む投稿情報を気象関連情報として取得したり、「ひょう」が映っている基準画像を用い、当該基準画像に類似する投稿画像を有する投稿情報を気象関連投稿情報として取得したりすることができる。「ひょう」を一例に説明したが、「あられ」に関連する気象関連投稿情報を同様に収集することができる。なお、「ひょう」に関連する投稿画像を有する投稿情報を抽出する処理として、画像認識AIモデルを利用することもできる。例えば、予め「ひょう」が映っている画像群を学習データとして入力し、学習処理を行って「ひょう画像認識」AIモデルを生成することができる。そして、生成したAIモデルを使用し、投稿画像の「ひょう」に対する類似度を算出し、類似度が所定値以上の投稿画像を有する投稿情報が、気象関連情報として取得されるように構成することができる。
【0033】
次に、真値情報生成部132は、気象観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する。
【0034】
例えば、気象観測データの解析結果、すなわち、振幅の比による降水粒子推定処理において、ひょうと判定された観測エリア及び観測時刻と、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻とをマッチングする。真値情報生成部132は、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻が、観測エリア及び観測時刻と十分に近い所定の範囲内に属するか否かを判定し、十分に近い所定の範囲内にある「ひょう」に関連する気象関連投稿情報を抽出する。
【0035】
真値情報生成部132は、気象観測データにマッチングした気象関連投稿情報を、当該気象観測データに対応する気象現象として紐付ける。真値情報生成部132は、気象関連投稿情報から把握される気象現象と紐付いた気象観測データを、真値情報として第2記憶装置150(真値情報153)に記憶する。
【0036】
なお、上記例では、気象観測データによる降水粒子推定処理において、ひょうと判定された観測データと、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報とをマッチングする態様について説明したが、これに限るものではない。例えば、「ひょう」に関連する気象関連投稿情報の位置情報及び投稿時刻が、降水粒子推定処理で降水粒子があられと判別された気象観測データの観測エリア及び観測時刻とマッチングすることがある。この場合、あられと判別された観測エリア及び観測時刻の気象観測データに対し、真値情報として「ひょう」が紐付けられる。逆も同様である。
【0037】
このように真値情報は、解析処理の正解ラベルとして生成される。つまり、ひょうやあられといった発生頻度が低く、地上で観測できることは稀な気象現象に対し、観測データの解析結果の答え合わせを行うことができる。真値情報をフィードバックすることで、気象観測データに基づく解析精度を向上させることができる。
【0038】
<気象観測データの解析機能とアラート出力機能>
次に、気象観測データの解析機能とアラート出力機能とを含む気象管理機能について説明する。
【0039】
本実施形態の気象管理機能は、図1に示すように、第1制御装置120及び第1記憶装置140が主体となって遂行される。第1制御装置120は、解析部121、アラート制御部122、基準制御部123を含んで構成されている。
【0040】
解析部121は、気象観測データを種別分類基準に基づいて分類し、当該種別分類基準に基づく解析結果を出力する。上述のように、解析部121は、振幅の比による降水粒子推定処理を行うことができ、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリ(分類)が予め用意される。各降水粒子の種別毎に所定の振幅の比が種別分類基準として設定され、解析部121は、種別分類基準に基づいて、気象観測データから観測エリアにおける気象現象を推定する。
【0041】
また、解析部121は、降水強度を用いた降水状態判別処理を行うことができる。上述のように、降水強度は、反射波の強さに基づく降水の多さ(強さ)を推定するための指標であり、降水強度が大きければ多くの降水があり、降水強度が小さければ少ない降水となる。ここで、降水強度は、大きく分けて2つの使い方がある。1つ目は、危険度を表す指標として用いるケースである。つまり、降水強度が大きく多くの降水があると推定される場合は、防災の観点に基づいて警戒すべき気象現象であると把握することができる。2つ目は、降水粒子推定処理によって把握された上空の降水粒子が、実際に地表に降り注ぐか否かを判定する指標として用いられるケースである。つまり、降水強度が小さければ、上空に降水粒子が存在しても、地表に降り注がない状態であると判定することができる。
【0042】
本実施形態の解析部121は、所定の基準に基づいて、降水粒子推定処理と降水状態判別処理を含む解析処理を遂行し、地表に降り注ぐ降水粒子を出力する。そして、所定の基準は、降水粒子推定処理に用いられる上述の種別分類基準と、降水状態判別処理に用いられる降水状態判別基準とが含まれる。種別分類基準及び降水状態判別基準は、基準情報142として第1記憶装置140に保存されている。
【0043】
降水状態判別基準は、地表に降り注ぐ降水粒子の強さ(多さ)を分類する第1降水状態判別基準と、上空の降水粒子が地表に降り注ぐか否かを判定する第2降水状態判別基準と、を含む。解析部121は、降水強度が第2降水状態判別基準(閾値)よりも大きい場合に、降水粒子推定処理で把握された降水粒子が地表に降り注ぐと判定する。一方、降水強度が第2降水状態判別基準(閾値)よりも小さい場合は、降水粒子推定処理で把握された降水粒子が地表に降り注がないと判定する。
【0044】
本実施形態の解析処理は、気象観測データを種別分類基準に基づいて分類し、上空の雲の中の降水粒子の種別を把握し、把握された降水粒子が地表に降り注ぐか否かを降水強度と第2降水状態判別基準とを比較して判定する。降り注ぐと判定された場合に、解析部121は、把握された上空の雲の中の降水粒子を、地表に降り注ぐ降水粒子として出力する。このとき、第1降水状態判別基準を用いて、地表に降り注ぐ降水粒子の強さ(多さ)も出力するように構成してもよい。
【0045】
次に、アラート出力機能について説明する。アラート制御部122は、解析部121の解析結果に基づいて、アラート情報を出力する。例えば、複数のユーザが登録する情報配信システムやウェブサイトで情報を公開するウェブサーバに、アラート情報を出力することができる。また、気象管理システム100に登録されたユーザ(ユーザ端末)に、アラート情報を提供することもできる。
【0046】
アラート情報は、気象現象に関する注意や警戒、確認などを促すメッセージである。アラート情報は、現在発生している気象現象以外にも、将来発生するおそれがある気象現象に対する予報も含むことができる。アラート情報の一例として、警戒アラート、注意アラートなどがある。警戒アラートは、重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかける防災関連情報である。注意アラートは、災害が発生するおそれのあるときに注意を呼びかける防災関連情報である。なお、アラート情報は、警戒アラート、注意アラートに限らず任意に構成することができる。
【0047】
各アラート情報は、予め設定される警戒アラート・注意アラートを発する基準情報に基づいて管理することができる。アラート制御部122は、解析部121の解析結果(降水粒子の種別及び降水強度)が、警戒アラート・注意アラートを発する基準情報のどのアラート情報に該当するか否かを判定し、該当するアラート情報が出力されるように制御することができる。なお、警戒アラート・注意アラートを発する基準情報は、気象現象の種別(降水粒子の種別)、気象現象の強さ(降水強度)に応じて複数の各種アラートが規定された情報である。
【0048】
そして、本実施形態は、基準制御部123を備え、気象観測データに対応する気象関連投稿情報から把握される気象現象(真値情報)に基づいて、種別分類基準及び降水状態判別基準を変更する。
【0049】
図3は、本実施形態の種別分類基準の変更処理を説明するための図である。
【0050】
気象管理システム100は、気象観測データAを用いて降水粒子推定処理を行う。気象観測データAは、観測時刻が2023年7月21日の15:31、観測エリアがA市である。解析部121は、気象観測データAの解析結果として粒子径「3mm」を出力すると共に、種別分類基準に基づいて粒子径「3mm」に該当する気象現象「あられ(直径5mm未満)」を出力する。アラート制御部122は、例えば、「A市は、あられが降っている可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報(注意アラート)を出力する。
【0051】
一方で、この気象観測データAは、気象管理システム100の解析処理と並行してリアルタイムに第2制御装置130に提供され、真値情報生成部132が気象関連投稿情報に基づく真値情報生成処理を行う。図3の例では、気象観測データAに基づく解析結果が「あられ」であり、気象観測データAの観測時刻及び観測エリアに該当する気象関連投稿情報が「ひょう」なので、気象観測データAの真値情報として気象現象「ひょう」が生成される。なお、気象観測データAに基づく解析結果と気象関連投稿情報の気象現象が一致する場合は、真値情報を生成してもよいし、生成しなくてもよい。
【0052】
真値情報生成部132は、気象観測データAに基づく解析結果と気象関連投稿情報の気象現象が相違した場合、気象観測データAの解析結果と生成した真値情報を、基準制御部123に出力する。基準制御部123は、図3に示すように、気象観測データAの解析結果が「あられ」であり、真値情報が「ひょう」であるので、両者が相違すると判定し、種別分類基準を変更する。
【0053】
例えば、降水粒子推定処理の種別分類基準は、振幅の比が所定値X以上所定値Y未満の場合は「あられ」、振幅の比が所定値Y以上の場合は「ひょう」と判定し、気象現象の解析結果として、「あられ」や「ひょう」などを出力する。基準制御部123は、図3の例において、気象観測データAの振幅の比が所定値X以上所定値Y未満であったので「あられ」を解析結果として出力していたが、実際には「ひょう」が降っていたので、「あられ」と「ひょう」の境界閾値である所定値Yを、所定値Y1に変更する。所定値Y1は、所定値Yよりも小さい値であり、観測データで「ひょう」と判定される領域を広げる閾値変更を行う。
【0054】
このように「あられ」と判定される領域を一時的に狭くし、「ひょう」と判定される領域を広げる閾値変更を、種別分類基準に対して行う。そして、気象観測データA以降に観測された気象観測データBの解析処理に、変更された種別分類基準を適用する。
【0055】
気象観測データBは、観測時刻が2023年1月5日の15:42、観測エリアがB市(A市の隣)である。このとき、気象観測データBは、気象観測データAと同様の観測データであり、変更前の種別分類基準を用いた解析結果は「あられ」と判定されるが、気象関連投稿情報に基づく真値情報によって変更後の種別分類基準では、気象観測データBの解析結果として気象現象「ひょう」が出力される。アラート制御部122は、例えば、「B市は、ひょうが降っている可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報(警戒アラート)を生成し、出力する。なお、気象レーダーは上空の降水粒子を観測するため、地上に落ちる数分から数十分前にアラート情報を出力できる。そこで、「B市は、まもなくひょうが降る可能性があります。ご注意ください」などのアラート情報(警戒アラート)を出力するように構成することもできる。
【0056】
次に、降水状態判別基準(第2降水状態判別基準)の変更処理について説明する。具体的には、気象観測データXの解析結果が「降水なし」であり、気象観測データXの観測時刻及び観測エリアに該当する気象関連投稿情報の気象現象が「あられ」である場合、気象観測データXに対して真値情報「あられ」が生成される。このとき、基準制御部123は、第2降水状態判別基準を一時的に小さい値に変更し、降水状態判別処理において、上空の降水粒子が地表に降り注ぐと判定されやすいようにする。
【0057】
つまり、気象観測データXに基づく解析処理は、降水粒子推定処理と降水状態判別処理とにおいて、降水粒子推定処理で上空の雲の中に降水粒子(あられ)が存在すると判定されたが、降水強度が第2降水状態判別基準よりも小さいので、地表に降り注がないと判定されるケースがある。そこで、基準制御部123は、気象観測データXの真値情報「あられ」を根拠に、第2降水状態判別基準を小さい値に変更し、気象観測データXと同様の気象観測データに対して、上空で把握された降水粒子(あられ)が地表に降り注ぐと判定されるようにする。
【0058】
また、基準制御部123は、種別分類基準と降水状態判別基準の双方を変更することもできる。例えば、気象関連投稿情報には、降水強度に関する情報が含まれることがある。気象関連投稿情報の投稿記事の「ものすごく降っています」、「大雨です」などを、降水強度に関する情報として抽出することができる。また、投稿画像を用いて降水状態を判別して、降水強度を推定(抽出)することもできる。真値情報は、気象現象「ひょう」と共に、気象関連投稿情報から把握される降水強度に関する情報を含むように構成することができる。
【0059】
そこで、基準制御部123は、気象観測データの降水粒子推定処理の結果と、当該気象観測データの観測時刻及び観測エリアに該当する気象関連投稿情報の気象現象とが異なる場合、種別分類基準を変更し、かつ気象観測データの降水状態判別処理の結果と、気象関連投稿情報の降水強度に関する情報とが異なる場合、降水状態判別基準も変更するように構成することができる。
【0060】
本実施形態は、気象観測データを解析し、所定の基準に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子を出力する解析処理を行い、解析処理の結果に基づいて、アラート情報を出力する。そして、投稿者端末から投稿される気象関連投稿情報に基づいて、所定の基準を変更する。このとき、解析処理は、降水粒子推定処理と降水状態判別処理とを含んで構成され、所定の基準は、種別分類基準と降水状態判別基準を含む。そして、基準制御部123は、投稿者端末Tから投稿される気象関連投稿情報に基づいて、種別分類基準、又は種別分類基準及び降水状態判別基準の双方を変更することができる。
【0061】
<投稿エリア、投稿時間帯毎の基準変更制御>
本実施形態の気象管理システム100は、気象観測データの解析処理で使用される所定の基準を、気象関連投稿情報を契機に変更する。このため、アラートを出力し易くしたり、注意アラートから警報アラートに切り替え易くすることができる。
【0062】
そして、ひょうは、上述のように観測される頻度が低い特殊な気象現象であり、長時間、広範囲に及ぶ気象現象ではない。このため、所定の基準を変更するエリア(変更値を適用するエリア)は、真値情報として使用された気象関連投稿情報の投稿位置や、気象関連投稿情報(真値情報)に対応する気象観測データの観測エリアに基づいて設定することができる。また、変更値を適用する期間も、30分や1時間といった短時間に設定することができる。そして、変更値を適用する期間が過ぎれば、基準制御部123は、変更値を初期化し、変更前の基準値(デフォルト値)を用いて解析処理が行われるように制御する。
【0063】
このように構成することで、自然災害として被害が大きい気象現象に対してアラートを出しやすくしつつ、ひょうの降水アラートを出力する時間やエリアを適切に限定することができる。つまり、ひょうの降水アラートを出力する時間やエリアをむやみに広げ過ぎず、当該アラートによる混乱等を抑制することができる。
【0064】
一方で、本実施形態の基準変更制御は、気象関連投稿情報の投稿が契機となって行われる。このため、気象関連投稿情報の投稿がなければ、解析処理に適用される所定の基準が変更されない。図4は、気象関連投稿情報の投稿間隔と、出力されるアラートの関係を説明するための図である。
【0065】
図4に示すように、気象関連投稿情報1によって一時的に所定の基準が変更されるが、基準変更の期間経過後、デフォルト値に戻る。その後、気象関連投稿情報2が投稿されるまで所定の基準が変更されない。したがって、X地点で同様の気象観測データが観測されても、基準が変更された状態でないため、「ひょう」に関する警戒アラートを出すことができない。また、X地点周辺のY地点で、気象関連投稿情報1に対応する気象観測データと同様の気象観測データが観測されても、基準が変更された状態でないため、「ひょう」に関する警戒アラートを出すことができない。
【0066】
つまり、気象関連投稿情報の投稿がなく、真値情報が提供されない状態が続くと、気象観測データに基づく解析結果だけで、地表に降り注ぐ降水粒子を判別しなければならない。例えば、X地点やY地点の気象関連投稿情報が無いので所定の基準を変更することができず、「ひょう」に関する警戒アラートを出せない事態が生じてしまう。また、注意アラートよりも警戒アラートを出した方が好ましい場合でも、「ひょう」に関する警戒アラートが出せない、といった事態も生じてしまう。
【0067】
気象関連投稿情報は、あくまでも投稿者による投稿情報であるため、その投稿頻度が重要になる。気象関連投稿情報の投稿間隔が長かったりすると、その間は、気象観測データに基づく上空の降水粒子と地表に降る注ぐ降水粒子との間に齟齬が生じた状態となり、警戒アラートを出したくても出せないことになる。
【0068】
さらに、投稿頻度(投稿間隔)は、場所や時間帯に応じて異なり、例えば、繁華街と住宅街、昼間と夜間では、投稿頻度が異なる。繁華街は夜間でも人出が多く、住宅街と比べて投稿頻度が高いが、住宅街は、寝静まった夜間の投稿頻度が低く、気象関連投稿情報の投稿間隔が長くなる。
【0069】
そこで、本実施形態では、気象関連投稿情報を利用したアラートの出力制御において、気象関連投稿情報の投稿頻度等を考慮した防災の呼び掛けができるようにする。具体的には、所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じた有効時間及び有効エリアを設定し、基準制御部123によって変更された所定の基準の変更値を適用する時間及びエリアを管理する。
【0070】
図5は、投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図であり、同投稿エリアにおいて投稿時間帯が複数に区切られ、各投稿時間帯に有効時間及び有効エリアが設定されている。図5の例は、住宅エリアが多いABC市の有効時間及び有効エリアの設定例である。
【0071】
設定1は、夜間の時間帯である。夜間の時間帯は投稿頻度が低く、気象関連投稿情報の投稿が少ない。このため、有効時間が6時間に設定され、有効エリアが気象関連投稿情報の投稿位置か半径40kmに設定されている。これに対して設定2は、昼間の時間帯であり、設定1の夜間の時間帯よりも投稿頻度が高い。設定2の時間帯では、有効時間が2時間に設定され、有効エリアが投稿位置から半径20kmに設定されている。
【0072】
なお、有効時間、有効エリアは、気象関連投稿情報に基づいて変更される所定の基準の適用時間、適用エリアであり、有効時間中は、有効エリアにおいて変更値を元に戻さずに継続して変更値を使用した解析処理が行われるようになる。つまり、気象関連投稿情報の影響が及ぶ時間とエリアが、有効時間、有効エリアとして設定される、変更された所定の基準を用いた解析処理が継続して行われる時間が有効時間、変更された所定の基準を用いた解析処理が適用されるエリアが有効エリアである。
【0073】
また、有効時間及び有効エリアは、任意に設定することができる。例えば、気象関連投稿情報が投稿される地域毎に複数の投稿時間帯を設定し、各投稿時間帯にその地域の地域性を考慮した有効時間及び有効エリアを設定することができる。
【0074】
気象管理システム100は、第2制御装置130に、有効時間・有効エリア管理部133が設けられている。有効時間・有効エリア管理部133は、投稿エリア、投稿エリアに対する複数の投稿時間帯、各投稿時間帯に対する有効時間、有効エリアの入力を受け付ける。所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアは、第2記憶装置150に記憶される。
【0075】
そして、基準制御部123は、所定の基準を変更する際に、所定の基準を変更する契機となった気象関連投稿情報の投稿位置に該当する所定の投稿エリアを特定するとともに、気象関連投稿情報の投稿時刻に該当する所定の投稿時間帯を特定し、特定された所定の投稿エリア及び所定の投稿時間帯に紐付く有効時間及び有効エリアを抽出する。解析部121は、気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた有効時間の期間中、気象関連投稿情報の投稿位置から有効エリア内に位置する気象観測データに対して変更後の所定の基準を適用した解析処理を行う。
【0076】
図6は、本実施形態の投稿エリア、投稿時間帯毎の基準変更制御を適用した説明図である。図6に示すように、気象関連投稿情報の投稿を契機に、地点Xを中心とした半径40kmの範囲は、「注意アラート」から「警戒アラート」に切り替わったアラート出力が行われる。そして、投稿時刻(23:41)から6時間の間、気象関連投稿情報に対応する気象観測データと同様の気象観測データが観測された場合、気象現象が「ひょう」と判別され、警戒アラートが出力される。なお、有効時間の期間中に、次の気象関連投稿情報が投稿された場合、現在使用している所定の基準の変更値がさらに変更される場合もある。この場合、有効時間、有効エリアは変更されずに、最新の変更値が適用された解析処理が行われる。
【0077】
このように構成することで、投稿頻度が低く、気象関連投稿情報の投稿間隔が長くなる時間帯であっても、直近の気象関連投稿情報に基づく変更された所定の基準が適用されるので、警戒アラートを出したくても出せない状況を回避し、警戒アラートを出した方が好ましいときに、警戒アラートを出すことができる。
【0078】
図7は、本実施形態の気象管理システム100によって実行される処理フローを示す図である。
【0079】
気象管理システム100は、有効時間・有効エリア管理部133を通じ、所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じて設定された有効時間及び有効エリアの入力を受け付け、第2記憶装置150に記憶する(S151)。
【0080】
気象管理システム100は、真値情報提供処理とアラート出力処理を互いに独立して行う。気象レーダーは、所定の間隔で時系列に連続して観測を行い、気象観測データを出力する。気象管理システム100(第1制御装置120の解析部121)は、入力された気象観測データの解析処理を行う(S101)。このとき、第1制御装置120の解析部121に入力される気象観測データと同じ気象観測データが、第2制御装置130の真値情報生成部132にも提供される。
【0081】
気象管理システム100は、解析結果を第1記憶装置140に格納するとともに(S102)、解析結果に基づいてアラート情報の出力制御を行う(S103)。
【0082】
一方、気象管理システム100は、真値情報提供処理を行う。投稿情報管理部131は、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいて、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、気象関連投稿情報を抽出する(S131)。例えば、「ひょう」、「あられ」といったキーワードや、「ひょう」や「あられ」のサンプル画像を抽出キーとして、ウェブサーバ300に蓄積された投稿情報を検索する。なお、抽出キーは、気象管理システム100の運営側で任意に設定される。
【0083】
なお、気象関連投稿情報は、気象に関連するキーワード及びサンプル画像のいずれか1つに該当する投稿情報、気象に関連するキーワード及びサンプル画像の双方に該当する投稿情報である。
【0084】
真値情報生成部132は、気象観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する(S132)。真値情報生成部132は、気象観測データにマッチングした気象関連投稿情報から把握される気象現象を、当該気象観測データに対応する気象現象の真値情報として出力する(S133)。気象関連投稿情報に基づく真値情報は、第1記憶装置140に記憶されるとともに、第1制御装置120の基準制御部123に出力される。
【0085】
基準制御部123は、真値情報の受信に伴い、基準変更処理を開始する(S104)。基準制御部123は、真値情報に対応する気象観測データの解析結果と、提供された真値情報とを比較し、互いの気象現象が相違するか否かを判定する。相違しない(一致する)と判定された場合は、基準変更処理を行わない(S105のNO)。一方、異なる気象現象であると判定された場合は(S105のYES)、真値情報(気象関連投稿情報)に基づいて、基準変更処理を行う(S106)。
【0086】
基準制御部123は、基準変更処理に際して、所定の基準を変更する契機となった気象関連投稿情報の投稿位置に該当する所定の投稿エリアを特定するとともに、気象関連投稿情報の投稿時刻に該当する所定の投稿時間帯を特定し、特定された所定の投稿エリア及び所定の投稿時間帯に紐付く有効時間及び有効エリアを抽出する(S107)。基準制御部123は、抽出した有効時間及び有効エリアを、変更値を適用する時間及びエリアとして設定する(S108)。解析部121は、気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた有効時間の期間中、気象関連投稿情報の投稿位置から有効エリア内に位置する気象観測データに対して変更後の所定の基準(変更値)を適用した解析処理を行う。
【0087】
基準制御部123は、変更後の所定の基準が適用される有効時間を監視し、適用中の変更値の有効時間が経過したか否かを判定する(S109)。基準制御部123は、有効時間が過ぎたと判定された場合、適用中の変更値をリセットして元の基準に戻す(S110)。解析部121は、有効時間の期間経過後、変更前の元の基準が適用された解析処理を行う。つまり、変更値が適用されていない他のエリアと同様に、有効時間に紐付く有効エリアに対して変更前の元の基準を適用した解析処理が行われる。気象管理システム100は、後続の気象観測データの解析処理を繰り返し行う(S111のNOからS101)。
【0088】
本実施形態は、気象管理システム100における気象観測データの解析処理において、リアルタイムに気象関連投稿情報に基づく真値情報を適用し、その後の気象観測データの解析処理に反映する。気象観測データの解析結果と気象関連投稿情報に基づく真値情報とが互いに相違する場合、解析処理に用いられる所定の基準を変更することで、その後の気象観測データの解析結果をより正確に行うことができる。
【0089】
特に、ひょうは、自然災害として被害が大きい。気象観測データの解析結果がひょうではなくあられが降っていると判定しても、実際に(投稿情報では)ひょうが降っている場合がある。そこで、その後の気象観測データの解析処理において、あられと判定された同様の気象観測データであっても、ひょうが降っていると厳しめに判定する。つまり、ひょうと判定される頻度を多くし、ひょうと判定されない見逃しを低減させる。このように構成することで、自然災害として被害が大きい気象現象のアラートを出しやすくすることができ、防災への注意喚起を適切に行うことができる。
【0090】
そして、気象関連投稿情報の投稿間隔が長くなる時間帯であっても、直近の気象関連投稿情報に基づいて変更された所定の基準が、有効時間の期間中、継続して適用される。これにより、気象現象に対する防災の呼び掛けが必要なときに適切に行える仕組みを提供することができる。
【0091】
ここまで、ひょう、あられの気象現象を一例に説明したが、気象管理システム100は、竜巻やつむじ風などの気象現象に対するアラート出力を行うことができる。例えば、気象関連投稿情報は、ひょう、あられ、竜巻又はつむじ風に関連する各投稿情報を含むことができる。キーワード又は/及び類似画像として竜巻、つむじ風が含まれる気象関連投稿情報をウェブサーバ300から取得することができる。そして、真値情報生成部132は、気象観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする気象関連投稿情報を抽出する。気象関連投稿情報から把握される竜巻又はつむじ風の気象現象が、気象観測データに対応する真値情報として紐付けられる。
【0092】
竜巻やつむじ風を観測する手法は、気象ドップラーレーダー観測がある。降水の位置や強さの他に、風に流される降水粒子から反射される電波のドップラー効果を用いて、気象レーダーに近づく風の成分と遠ざかる風の成分を測定することができる。これをドップラー速度と呼ぶ。この近づく速度が所定値以上でかつ遠ざかる速度が所定値以上の場合、風の渦(竜巻をもたらす発達した積乱雲の中の回転;メソサイクロン)が発生していると判定することができる。例えば、ドップラー速度が所定値以上である場合、竜巻が発生していると判定することができる。気象管理システム100は、気象ドップラーレーダーからドップラー速度の気象観測データを取得し、竜巻やつむじ風の発生可否の解析処理を行うことができる。
【0093】
そして、気象管理システム100は、竜巻やつむじ風を対象として、アラート情報の出力処理及び気象関連投稿情報に基づく竜巻やつむじ風に関する所定の基準の変更処理を行うことができる。所定の基準の変更処理では、竜巻の発生を判定するためのドップラー速度の閾値を変更することができる。そして、所定の投稿エリア毎に、所定の投稿時間帯に応じた有効時間及び有効エリアが設定され、基準制御部123によって変更された所定の基準の変更値を適用する時間及びエリアが管理される。
【0094】
なお、本実施形態の気象管理システム100は、ひょう、あられ、竜巻やつむじ風の少なくとも1つを対象にした構成であってもよく、また、ひょう、あられ、竜巻やつむじ風のすべて、または任意の組み合わせを対象にした構成であってもよい。
【0095】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態を説明するための図である。図8は、本実施形態の投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図である。本実施形態は、過去の気象関連投稿情報の投稿履歴に基づいて、上記第1実施形態の有効時間、有効エリアを設定する機能を備える。
【0096】
有効時間・有効エリア管理部133は、過去の気象関連投稿情報群の統計情報を用い、所定の投稿エリア毎に投稿時間帯別投稿間隔を算出し、投稿時間帯別投稿間隔に基づいて、所定の投稿エリアにおける所定の投稿時間帯別の有効時間を設定する有効時間算出処理(第1処理)と、過去の気象関連投稿情報群の統計情報を用い、所定の投稿エリア毎に投稿時間帯別の投稿位置の距離差を算出し、投稿位置の距離差に基づいて、所定の投稿エリアにおける所定の投稿時間帯別の有効エリアを設定する有効エリア算出処理(第3処理)を行う。
【0097】
図8に示すように、例えば、DEF市において、時間帯6:00~14:00は、投稿間隔が平均30分、時間帯14:00~24:00は、投稿間隔が平均70分、時間帯24:00~6:00は、投稿間隔が平均180分であったとする。
【0098】
そして、有効時間・有効エリア管理部133は、例えば、時間帯6:00~14:00は、投稿間隔が30分を超えるので有効時間を1時間に設定する。時間帯14:00~24:00は投稿間隔が1時間を超えるので、有効時間を120分に設定する。時間帯24:00~6:00は、投稿間隔が3時間と長いので、有効時間を6時間に設定する。なお、統計情報に基づく各投稿時間帯の投稿間隔に基づいて、どのくらいの時間を有効時間として設定するかは任意であるが、例えば、予め、投稿間隔+30分、投稿間隔+1時間、投稿間隔+180分などの投稿間隔に所定の時間を加算して決めてもよい。また、例えば、投稿間隔の1.5倍、2倍の時間が、有効時間として設定されるように構成してもよい。
【0099】
このように本実施形態では、過去の気象関連投稿情報群の統計情報を用い、投稿時間帯別投稿間隔を算出し、算出された投稿時間帯別投稿間隔に基づいて、所定の投稿エリア毎の各投稿時間帯の有効時間を設定することができる。そして、投稿間隔(時間間隔)が短ければ有効時間を短く設定し、投稿間隔が長ければ有効時間を長く設定する。
【0100】
次に、有効エリアは、DEF市での投稿位置の散らばり度合いに基づいて設定することができる。散らばり度合いは、投稿位置の距離差を用いることができる。具体的には、過去の気象関連投稿情報の投稿位置を分析し、DEF市において、投稿位置の距離差の平均値が大きければ、有効エリアを大きくし、投稿位置の距離差が小さければ有効エリアを小さく設定する。
【0101】
図8を参照して説明すると、時間帯6:00~14:00は、投稿位置の距離差が平均20kmなので、有効エリアは半径20kmに設定する。時間帯14:00~24:00は、投稿位置の距離差が平均40kmなので、有効エリアは半径40kmに設定する。時間帯24:00~6:00は、投稿位置の距離差が平均30kmなので、有効エリアは半径30kmに設定する。なお、有効エリアは、投稿位置の距離差と同じか、投稿位置の距離差よりも大きく設定することができる。有効時間・有効エリア管理部133は、投稿位置間の距離が長ければ、有効エリアを広く設定し、投稿位置間の距離が短ければ、有効エリアを狭く設定する。
【0102】
まとめると、有効時間・有効エリア管理部133は、所定の投稿エリア毎に、投稿位置間の距離が長く投稿数が少ない時間帯は、投稿の有効エリアを広く、かつ有効時間を長く設定する。また、投稿位置間の距離が長く投稿数が多い時間帯は、有効エリアを広く、かつ有効時間を短く設定する。また、投稿位置間の距離が短く投稿数が少ない場合は、有効エリアを狭く、かつ有効時間を長くする。そして、投稿位置間の距離が短く投稿数が多い場合は、有効エリアを狭く、かつ有効時間を短くする。
【0103】
本実施形態は、蓄積された過去の気象関連投稿情報群から生成される各投稿エリア別の統計情報に基づいて、所定の投稿エリア毎に有効時間、有効エリアを設定するので、投稿エリアの地域性や投稿頻度に応じた適切な有効時間、有効エリアを設定することができる。
【0104】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態を説明するための図である。図9は、本実施形態の投稿エリア別の有効時間及び有効エリアの設定例を示す図であり、有効時間及び有効エリアを動的に変化させる一例を示す図である。
【0105】
上記第1実施形態及び第2実施形態の有効時間、有効エリアは、決め打ちで、又は過去の気象関連投稿情報の投稿情報に基づいて設定され、該当の投稿時間帯中に変動しない固定値である。本実施形態の有効時間・有効エリア管理部133は、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の気象関連投稿情報に基づいて、有効時間、有効エリアを動的に変更する機能を備える。
【0106】
図9は、上記第2実施形態の過去の気象関連投稿情報の統計情報に基づいて算出され、設定された有効時間、有効エリアを動的に変化させる一例を示している。図9に示すように、現在時間に対応する所定の投稿時間帯に投稿される気象関連投稿情報を監視し、有効時間・有効エリア管理部133は、一定の周期(一定の間隔)でリアルタイムに投稿された気象関連投稿情報群の投稿間隔、投稿位置の距離差を算出する。算出された投稿間隔は、リアルタイム投稿間隔、算出された投稿位置の距離差は、投稿位置のリアルタイム距離差として使用される。
【0107】
そして、有効時間・有効エリア管理部133は、現有効時間に対応する統計情報に基づいて算出された投稿時間帯別投稿間隔と、リアルタイム投稿間隔とを比較し、現在時間に対応する所定の投稿時間帯に適用中の有効時間を変動させる。
【0108】
例えば、設定2の時間帯14:00~23:00において、既設定の有効時間に対応する投稿時間帯別投稿間隔が平均70分、リアルタイム投稿間隔が平均120であった場合、有効時間・有効エリア管理部133は、2時間に設定されている有効時間を、3時間に変更する。
【0109】
このように有効時間・有効エリア管理部133は、所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の気象関連投稿情報のリアルタイム投稿間隔を算出する処理(第2処理)を行い、統計情報に基づいて算出された投稿時間帯別投稿間隔と、リアルタイム投稿間隔とを比較し、所定の投稿時間帯に適用中の有効時間を変動させることができる。
【0110】
同様に、有効時間・有効エリア管理部133は、所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の気象関連投稿情報の投稿位置のリアルタイム距離差を算出する処理(第4処理)を行い、統計情報に基づいて算出された投稿位置の距離差と、投稿位置のリアルタイム距離差とを比較し、現在時刻に対応する所定の投稿時間帯に適用中の有効エリアを変動させることができる。
【0111】
本実施形態では、リアルタイム投稿間隔が現有効時間に対応する投稿間隔よりも長ければ、有効時間を長くし、リアルタイム投稿間隔が現有効時間に対応する投稿間隔よりも短かれば、有効時間を短く変動させる。また、投稿位置のリアルタイム距離差が現有効エリアに対応する投稿位置の距離差よりも大きければ、有効エリアを大きくし、投稿位置のリアルタイム距離差が現有効エリアに対応する投稿位置の距離差よりも小さければ、有効エリアを小さく変動させる。
【0112】
本実施形態は、気象関連投稿情報を契機に変更される所定の基準の有効時間、有効エリアが、気象関連投稿情報の投稿頻度や投稿位置の変化に応じて適切な時間幅、エリア幅に調整される。したがって、気象関連投稿情報(真値情報)に基づいて変更された所定の基準を用いた、気象現象に対する防災の呼び掛け(アラート出力)をより適切に行うことができる。
【0113】
なお、有効時間を動的に変更させる処理と、有効エリアを動的に変更させる処理は、互いに独立した処理として構成したり、有効時間を変更させる処理と有効エリアを変更させる処理とが連動してセットで行われるように構成してもよい。つまり、有効時間、有効エリアの一方を動的に変更したり、有効時間、有効エリアの双方を動的に変更させたりすることができる。
【0114】
ここで、上記説明では、上記第2実施形態の過去の気象関連投稿情報の統計情報(投稿間隔、投稿位置の距離差)を用いた比較処理により、現有効時間、現有効エリアを動的に変化させているが、これに限るものではない。
【0115】
例えば、時間帯14:00~23:00において、既設定の有効時間が1時間で、リアルタイム投稿間隔が平均90分であった場合、単純に既設定の有効時間とリアルタイム投稿間隔とを比較し、有効時間を長く設定するように構成してもよい。
【0116】
このため、本実施形態の有効時間、有効エリアを動的に変更する機能は、上記第1実施形態にも適用することができる。有効時間・有効エリア管理部113は、所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の気象関連投稿情報のリアルタイム投稿間隔を算出する処理(第5処理)と、所定の投稿エリア毎に、現在時間に対応する所定の投稿時間帯中に投稿された複数の気象関連投稿情報の投稿位置のリアルタイム距離差を算出する処理(第6処理)と、を行うことができる。そして、算出されたリアルタイム投稿間隔に基づいて現在時間に対応する所定の投稿時間帯に適用されている現有効時間を変動させたり、算出された投稿位置のリアルタイム距離差に基づいて現有効エリアを変動させたりすることができる。
【0117】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態を説明するための図である。図10は、本実施形態の雲の動きベクトルを用いた有効エリアの拡大処理を説明するための図である。
【0118】
本実施形態は、雲の動きベクトルを用いた有効エリアの拡大機能を備える。解析部121は、所定の時間間隔で生成される、気象観測データに基づく降水分布画像を用いて、雲の動きベクトルを算出する。降水分布画像は、上記種別分類基準を用いた降水粒子推定処理で把握された上空の降水粒子の分布が地図上にプロットされた画像であり、一定の時間間隔で連続して生成される。なお、降水分布画像は、気象管理システム100(第1制御装置120)が生成する態様であってもよく、外部の気象情報提供システムから降水分布画像を取得して利用する態様であってもよい。
【0119】
雲の動きベクトルは、公知の画像処理技術を用いて算出することができる。例えば、一定の時間間隔で連絡した降水分布画像間の差分から、速度と方向を把握し、雲の動きベクトルを算出することができる。
【0120】
そして、解析部121は、有効エリアを雲の動きベクトルに基づいて拡張する。具体的には、図10に示すように、例えば、投稿位置から半径40kmの円状のエリアを、雲の動きベクトル方向に拡大する。解析部121は、気象関連投稿情報の投稿時刻に応じた有効時間の期間中、当該気象関連投稿情報の投稿位置から拡張された有効エリア内に位置する気象観測データに対して変更後の所定の基準を適用した解析処理を行うように制御する。
【0121】
雲の動きベクトルを利用した有効エリアの拡張は、例えば、気象関連投稿情報(真値情報)に基づく所定の基準を変更する際に行い、その後所定の時間経過後、拡張前の有効エリアに戻すように制御してもよい。また、有効エリアの拡張中も雲の動きベクトルを算出し、拡大領域の拡張方向を雲の動きベクトルの方向に合わせて調節することができる。また、雲の動きベクトルの速度が速ければ、拡大する領域が大きくなるように制御したり、雲の動きベクトルの速度が遅ければ、拡大する領域が小さくなるように制御したりすることができる。また、雲の動きベクトルの速度に関係なく、一定の領域が有効エリアに対して拡大されるように制御することもできる。
【0122】
本実施形態によれば、気象関連投稿情報(真値情報)に基づいて変更された所定の基準の適用範囲を、実際の雲の動きに合わせて拡張することができ、気象現象に対する防災の呼び掛けが必要な範囲に適切に行うことができる。
【0123】
以上、実施形態について説明したが、上述のように、降水粒子推定処理及び降水状態判別処理は、反射波の振幅以外の情報を用いた推定手法であってもよい。このため、種別分類基準及び降水状態判別基準は、反射波の振幅に関する基準でなく、水平偏波と垂直偏波の相互相関係数や水平偏波と垂直偏波の強度比に関する基準であってもよい。すなわち、基準制御部123は、降水粒子推定処理及び降水状態判別処理に適用される任意の推定手法において使用される1つ又は複数の基準を変動させることができる。
【0124】
また、解析部121は、気象検知モデルとして構成することができる。気象検知モデル(解析部121)は、上述の種別分類基準を用いた降水粒子推定処理及び降水状態判別基準を用いた降水状態判別処理を行い、上空の雲の中の降水粒子の降水粒子推定処理の結果を用いて、地表に降り注ぐ降水粒子を出力する。気象検知モデルは、過去の気象観測データ及び真値情報を用いて学習処理を行い、生成することができる。
【0125】
気象検知モデルは、上述の解析部121において、変更前の所定の基準を用いて解析処理を行う処理部として機能し、気象検知処理のベースを担う。気象検知モデルは、複数の異なるモデルを予め用意し、気象検知モデルを切り替えて解析処理を行うように構成することもできる。例えば、多めにアラートが出せる第1気象検知モデル、少な目にアラートが出せる第2気象検知モデル、第1気象検知モデルよりも少なく第2気象検知モデルよりも多いアラートが出せる第3気象検知モデルなど、さまざまなコンセプトでチューニングされた気象検知モデルを生成することができる。
【0126】
気象現象「ひょう」を一例に説明すると、第1気象検知モデルは、偽陽性率(実際はひょうではないものを間違ってひょうと判定した割合)と真陽性率(実際にひょうであるものを正しくひょうと判定した割合)の双方が高い気象検知モデルである。一方、第2気象検知モデルはその逆で、偽陽性率と真陽性率の双方が低い気象検知モデルであり、第3気象検知モデルは、第1気象検知モデルよりも低く、第2気象検知モデルよりも高い偽陽性率、真陽性率を有する気象検知モデルである。
【0127】
つまり、上記第1実施形態から第4実施形態において、例えば、所定の基準が予め緩めに設定され、ひょうと判定され易い解析処理(気象検知モデル)は、偽陽性率と真陽性率が高くなる。一方、所定の基準が厳しく設定され、ひょうと判定され難い解析処理(気象検知モデル)は、偽陽性率と真陽性率が低くなる。
【0128】
上記第1実施形態から第4実施形態は、ベースとなる気象検知モデルを用いて解析処理が行われ、気象関連投稿情報に基づいて、降水粒子推定処理及び降水状態判別処理の各基準(種別分類基準、降水状態判別基準)を変更する一方で、ベースとなる気象検知モデルも、気象関連投稿情報に基づいて変更するように構成してもよい。例えば、第3気象検知モデルを用いた解析処理を、気象関連投稿情報(真値情報)の投稿を契機に、第1気象検知モデルに切り替えて解析処理を行うように構成することができる。
【0129】
第1気象検知モデルに切り替えて解析処理を行うことで、気象関連投稿情報(真値情報)の投稿を契機に、偽陽性率及び真陽性率の双方が高い解析処理の結果を得ることができるようになり、「ひょう」に関する警戒アラートが出やすくなるとともに、設定された有効エリア内は、有効時間の期間の間、所定の基準が変更されるので、さらに「ひょう」に関する警戒アラートが出やすくなる環境を形成することができる。
【0130】
また、上記各実施形態の気象関連投稿情報は、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいてウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から、所定の評価情報を用いて評価し、抽出することができる。
【0131】
第1評価情報は、例えば、投稿者評価値である。投稿者評価値は、投稿者の過去の投稿数、他の投稿者から評価された数、過去の投稿情報が真値情報として採用された実績数などを評価パラメータ(評価基準)として算出することができる。投稿者の過去の投稿数及び他の投稿者から評価された数は、ウェブサーバ300で管理される投稿履歴等から取得することができる。過去の投稿情報が真値情報として採用された実績数は、気象管理システム100において、真値情報として採用された気象関連投稿情報の投稿者を保持することができる。
【0132】
第2評価情報は、例えば、投稿確度評価値である。具体的には、投稿情報の位置情報及び投稿時刻に近い所定の範囲内の位置情報及び時刻情報を含み、かつ気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性を有する他の投稿者の投稿情報(類似投稿情報)を、ウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報から抽出する。そして、抽出された類似投稿情報に基づいて、候補投稿情報に対する投稿確度評価値を生成することができる。投稿確度評価値は、類似する他の投稿者の投稿情報の数に基づく当該投稿情報の投稿確度を示すものである。
【0133】
第3評価情報は、例えば、気象現象評価値である。具体的には、外部の気象予測情報提供サービスから提供される予測情報(所定の気象予測モデルによって生成された予測情報)を用いて投稿情報の情報確度を評価する。投稿情報の位置情報及び投稿情報に対応する予測情報に基づいて、投稿情報に対する気象事象評価値を生成する。投稿情報の位置情報及び投稿情報における気象現象が、予測情報の気象情報と同様であれば、気象現象評価値は高く算出され、投稿情報の位置情報及び投稿情報における気象現象が、予測情報の気象情報と異なれば、気象現象評価値は低く算出される。
【0134】
投稿情報管理部131は、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値の各種算出処理を行うと共に、気象に関連するキーワード又は気象に関する画像の類似性に基づいてウェブサーバ300に投稿された複数の投稿情報をこれら各評価値で評価し、評価が所定値以上の投稿情報の中から気象関連投稿情報を抽出する。例えば、所定値以上の各評価値を有する投稿情報を気象関連投稿情報として抽出したり、各評価値の合計が所定値以上の投稿情報を気象関連投稿情報として抽出したりすることができる。また、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値に対し、重み値を適用し、例えば、投稿者評価値及び投稿確度評価値の重み値を高く設定し、気象事象評価値の重み値を低く設定して、評価値の合計値を算出するように構成してもよい。この場合、重み値は任意に設定できる。なお、投稿者評価値、投稿確度評価値、及び気象事象評価値の少なくとも1つ、またはこれらの任意の組み合わせで投稿情報を評価し、気象関連投稿情報を抽出するように構成してもよい。
【0135】
なお、上述の気象管理システム100を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0136】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM、Blu-ray(登録商標) Disc Rewritable等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magneto Optical)等の光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクなどの磁気ディスク、SDメモリカード、USBフラッシュドライブ等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ROMやRAMなどのICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
更に、上記プログラムを含めて本発明は、ノイマン型コンピュータのアーキテクチャ上で実行されることに限定されず、脳神経回路の仕組みをもとにしたニューロコンピュータや量子力学を情報処理に応用した量子コンピュータなどいわゆる非ノイマン型コンピュータのアーキテクチャ上で実行されてもよい。
【0137】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
100 気象管理システム
110 通信装置
120 第1制御装置
121 解析部
122 アラート制御部
123 基準制御部
130 第2制御装置
131 投稿情報管理部
132 真値情報生成部
133 有効時間・有効エリア管理部
140 第1記憶装置
141 気象観測データ
142 基準情報
150 第2記憶装置
151 投稿情報
152 真値情報
153 有効時間・有効エリア情報
300 ウェブサーバ
T 端末(投稿者端末)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10