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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025280
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】包装袋およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/30 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129913
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】村山 達彦
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】東野 美玲
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096BA08
3E096BA16
3E096BA30
3E096CA12
3E096EA02X
3E096FA05
3E096FA07
3E096GA02
(57)【要約】
【課題】クリーン環境内で使用される物品を収容でき、高い清浄度を有する包装袋の製造方法を提供する。
【解決手段】包装袋の製造方法は、共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、該フィルムを扁平状に変形させる工程、および、扁平状に変形されたチューブ状フィルム等に対して、対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する工程、を含み、包装袋は、表面シートと、表面シートに対向する裏面シートと、を備え、表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、表面シートおよび裏面シートにおいて、第1の樹脂層は、第2の樹脂層から剥離できるように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋の製造方法であって、
前記製造方法は、
共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有する、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、前記フィルムを扁平状に変形させる工程、および
扁平状に変形された前記チューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している前記第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する工程、
を含み、
前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、前記第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する前記第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有する、
包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂層が、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を少なくとも備え、前記ヘテロ原子含有樹脂層が、前記第2の樹脂層と接している、請求項1に記載の包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂層が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、請求項2に記載の包装袋の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、請求項4に記載の包装袋の製造方法。
【請求項6】
前記第2の樹脂層が、前記チューブ内面を構成する、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える、請求項1に記載の包装袋の製造方法。
【請求項7】
前記熱融着性樹脂層が、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有する、請求項6に記載の包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記チューブ内面を構成する、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記第2の樹脂層における前記ポリエチレン層が、前記第1の樹脂層における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、請求項2に記載の包装袋の製造方法。
【請求項9】
前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下の前記ポリエチレン層と、前記熱融着性樹脂層との間に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備える、請求項8に記載の包装袋の製造方法。
【請求項10】
前記包装袋において、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の包装袋の製造方法。
【請求項11】
包装袋であって、
前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、
前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有し、
前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、
前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有し、
前記包装袋は、共押出インフレーション法により作製された、チューブ外面を構成する前記第1の樹脂層と、チューブ内面を構成する前記第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを扁平状に変形させたフィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムを、直接製袋してなる、
包装袋。
【請求項12】
包装袋であって、
前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、
前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有し、
前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、
前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有し、
パーティクルカウンタを用いて測定される、前記包装袋の内面に付着した、粒子径が0.2μm以上のパーティクルの数が、100個/cm2以下である、
包装袋。
【請求項13】
前記第1の樹脂層が、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を少なくとも備え、前記ヘテロ原子含有樹脂層が、前記第2の樹脂層と接している、請求項11または12に記載の包装袋。
【請求項14】
前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、請求項13に記載の包装袋。
【請求項15】
前記第1の樹脂層が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、請求項13に記載の包装袋。
【請求項16】
前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、請求項15に記載の包装袋。
【請求項17】
前記第2の樹脂層が、前記包装袋の内面を構成する、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える、請求項11または12に記載の包装袋。
【請求項18】
前記熱融着性樹脂層が、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有する、請求項17に記載の包装袋。
【請求項19】
前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記包装袋の内面を構成する、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記第2の樹脂層における前記ポリエチレン層が、前記第1の樹脂層における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、請求項13に記載の包装袋。
【請求項20】
前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下の前記ポリエチレン層と、前記熱融着性樹脂層との間に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備える、請求項19に記載の包装袋。
【請求項21】
前記包装袋において、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、請求項11または12に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品は、埃および塵等の異物が該製品に付着すると品質が低下しえることから、清浄度の高いクリーンルーム等のクリーン環境下で製造または使用されている。このような環境内に物品を持ち込む際には、プラスチックフィルム製の袋内に物品を収容した包装体を、クリーン環境内に持ち込む場合が多い。したがって、半導体製品等の高いクリーン度が要求される物品を収容する包装袋に対しても、高いクリーン性が求められている。
【0003】
包装体は、従来、内袋および外袋を少なくとも備える2重袋を用いて以下のようにして製造されている(例えば、特許文献1参照)。まず内袋の内側に物品を入れ、真空脱気し、内袋の開口部を密封する。次に外袋の内側に該内袋を入れ、真空脱気し、外袋の開口部を密封する。このような2重包装、または必要に応じて3重包装により、物品は包装されている。物品を使用する際には、クリーンルームの前室で外袋を開封し、クリーンな状態の内袋をクリーンルーム内で開封して、物品は取り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-126437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2重脱気包装または3重脱気包装により物品を包装する際、脱気包装が複数回行われる。このため、物品包装の作業効率が高くない場合がある。また、包装袋の開封時には、複数回行われる袋の開封が手間である場合がある。
【0006】
本開示の課題は、クリーン環境内で使用される物品を収容でき、高い清浄度を有する包装袋およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、剥離可能な表面フィルムを備える積層体により包装袋を作製することを検討した。クリーンルームの前室で包装袋の表面フィルムを剥離することで、クリーンな状態の包装袋をクリーンルーム内に持ち込むことができる。このような知見のもと、本発明者らは、以下の構成を備える包装袋およびその製造方法により上記課題を解決できることを見出した。
本開示の一実施形態の包装袋の製造方法は、共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有する、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、該フィルムを扁平状に変形させる工程、および、扁平状に変形されたチューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する工程、を含み、上記包装袋は、表面シートと、表面シートに対向する裏面シートと、を備え、表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、表面シートおよび裏面シートにおいて、第1の樹脂層は、第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、包装袋は、表面シートにおける第2の樹脂層の一部と裏面シートにおける第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有する。
本開示の一実施形態の包装袋は、表面シートと、表面シートに対向する裏面シートと、を備え、表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有し、表面シートおよび裏面シートにおいて、第1の樹脂層は、第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、包装袋は、表面シートにおける第2の樹脂層の一部と裏面シートにおける第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有し、包装袋は、共押出インフレーション法により作製された、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを扁平状に変形させたフィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムを、直接製袋してなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、クリーン環境内で使用される物品を収容でき、高い清浄度を有する包装袋およびその製造法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、包装袋の一実施形態の模式断面図およびその関連図である。
図2図2は、包装袋の一実施形態の正面図である。
図3図3は、ハーフカット線を説明する模式図である。
図4図4は、包装袋の作製を説明するための正面図である。
図5図5は、積層体の一実施形態の模式断面図である。
図6図6は、積層体の一実施形態の模式断面図である。
図7図7は、積層体の一実施形態の模式断面図である。
図8図8は、積層体の一実施形態の模式断面図である。
図9図9は、積層体の一実施形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0012】
本明細書の以下の説明において、登場する各成分(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、ヘテロ原子含有樹脂などの樹脂材料、ならびに添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0013】
本明細書においてポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0014】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0016】
本明細書においてポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.965g/cm3以下である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.932g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.932g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.932g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.932g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.932g/cm3以下である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0017】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0018】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0019】
ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレン(以下「バイオマスポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。すなわち、ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレン等に代えて、バイオマス由来のエチレン等を用いてもよい。バイオマスポリエチレンは、カーボンニュートラルな材料であることから、包装袋による環境負荷を低減できる。バイオマスポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0020】
ポリエチレンとしては、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。これにより、包装袋による環境負荷を低減できる。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、フィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。ケミカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどをモノマーレベルまで分解し、当該モノマーを再度重合してポリエチレンを得る方法である。
【0021】
本明細書において、ある層における「主成分」とは、当該層中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0022】
本明細書において、「フィルム」および「シート」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。
【0023】
[包装袋およびその製造方法]
本開示の包装袋は、表面シートと、該表面シートに対向する裏面シートと、を備える。表面シートは、包装袋の表面を構成する。裏面シートは、包装袋の裏面を構成する。上記シートにおける「表面」および「裏面」の用語は、包装袋の表面と裏面とを相対的に表したものに過ぎない。包装袋の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における表面と裏面とによっては限定されない。
【0024】
表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備える。第1の樹脂層は、一実施形態において、包装袋の外面を構成する。第2の樹脂層は、包装袋の収容空間に面する内面(包装袋内の物品が接触する面)を構成する。表面シートおよび裏面シートにおいて、第1の樹脂層は、第2の樹脂層から剥離できるように設けられている。
【0025】
表面シートおよび裏面シートは、それぞれ、共押出インフレーション法により作製された同一のチューブ状フィルムに由来するシートである。該チューブ状フィルムは、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備える。上記内面は、後述するとおり、チューブ状フィルムおよび包装袋の製造時に外気等と接触することが抑制されていることから、清浄度が高い。
【0026】
第2の樹脂層は、第1面と、該第1面に対向する第2面と、を有する。第1の樹脂層は、第2の樹脂層の第1面上に設けられている。第1の樹脂層は、第2の樹脂層に接しており、具体的には、第2の樹脂層の第1面に接している。したがって、通常、第2の樹脂層の第1面は、第1の樹脂層を剥離する際の剥離面である。
【0027】
本開示の包装袋の内面に付着した、粒子径が0.2μm以上のパーティクルの数は、好ましくは100個/cm2以下、より好ましくは80個/cm2以下、さらに好ましくは60個/cm2以下、よりさらに好ましくは40個/cm2以下、特に好ましくは20個/cm2以下、15個/cm2以下、10個/cm2以下または5個/cm2以下である。上記パーティクルの数の下限は、特に限定されないが、例えば0.1個/cm2でもよく、0.5個/cm2でもよく、1個/cm2でもよい。上記パーティクルの数は、パーティクルカウンタを用いて測定される。測定方法の詳細は、実施例欄に記載する。後述する製造方法により包装袋を作製することにより、包装袋の内面に付着するパーティクルの数を抑制できる。
【0028】
包装袋は、表面シートにおける第2の樹脂層の一部と裏面シートにおける第2の樹脂層の一部とが接合(例えば融着)して形成されたシール部を有する。シール部は、通常、ヒートシールされた箇所(ヒートシール部)である。
【0029】
図1aは、本開示の包装袋の一実施形態を示す断面図である。包装袋50は、表面シート54と裏面シート55とを備える。表面シート54は、第1の樹脂層10と第2の樹脂層20とを備える。裏面シート55は、第1の樹脂層10と第2の樹脂層20とを備える。包装袋50は、表面シート54における第2の樹脂層20の一部と裏面シート55における第2の樹脂層20の一部とが接合して形成されたシール部HSを有する。
【0030】
包装袋50は、例えば、以下のようにして形成される。
図1bに示すように、共押出インフレーション法により、チューブ外面Soutを構成する第1の樹脂層10と、チューブ内面Sinを構成する第2の樹脂層20と、を少なくとも備えるチューブ状フィルム2を形成し、該フィルム2を扁平状に変形させる(具体的には折り畳む)。次に、図1cに示すように、チューブ状フィルム2において対面する第2の樹脂層20の一部同士を接合させ、シール部HSを形成する。図1cでは、図を見やすくするために、チューブ状フィルム2は扁平状に変形されてはいない。次に、ヒートシールされたチューブ状フィルム2の両端部を所定の幅で切除する。なお、この切除を行った後に、シール部HSを形成してもよい。次に、所定の切断処理を行う。このようにして、包装袋50が得られる。このように包装袋50は、扁平状に変形されたチューブ状フィルム2または該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムを直接製袋して得られる。包装袋50の製造方法の詳細は、後述する。
「扁平状に変形されたチューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムを直接製袋して得られる包装袋」とは、扁平状に変形されたチューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく、シール部の形成およびフィルムの切断を行って得られる包装袋を意味する。ここで、シール部の形成の前に、チューブ状フィルムの例えば流れ方向に沿って該フィルムを切断してもよいが、該切断後の重ね合わされたフィルムにおいて、第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行う。
「対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく」とは、扁平化されたチューブ状フィルムの場合は、チューブ内に外気を導入せずに扁平化された状態を維持することを意味し、重ね合わされたフィルムの場合は、チューブ状フィルムの切断から、重ね合わされたフィルムを互いに分離せずに両フィルムが重ね合わされた状態を維持することを意味する。本開示の目的を損なわない範囲において、対面する第2の樹脂層同士がわずかな領域において接触していなくともよい。
【0031】
図1dは、本開示の包装袋の使用形態の一実施形態を示す断面図である。例えば、第1の樹脂層10,10は、クリーンルーム内に持ち込まれる直前に、包装袋50の第2の樹脂層20,20からそれぞれ剥離される。
【0032】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。包装袋の平面形状は、例えば、矩形でもよく、矩形以外の円形等の形状でもよい。
【0033】
包装袋は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装袋を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成された易開封線が挙げられる。
【0034】
図2は、本開示の包装袋の一実施形態を示す正面図である。以下、図2を参照して、包装袋の一例を説明する。図2の包装袋50は、物品を収容する収容部50aを備える。包装袋50は、上部51、下部52および側部53,53を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」および「側部」等の名称、ならびに、「上方」および「下方」等の用語は、包装袋50やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。包装袋50の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0035】
図2に示すように、包装袋50は、表面を構成する表面シート54および裏面を構成する裏面シート55を備える。図2に示す包装袋50において、表面シート54および裏面シート55は、それぞれ、共押出インフレーション法により作製された同一のチューブ状フィルムに由来するシートである。
【0036】
表面シート54および裏面シート55は、内面同士がシール部において接合されている。図2に示す包装袋50の正面図においては、シール部にハッチングが施されている。シール部は、第2の樹脂層同士が接合されている部分である。
【0037】
図2に示すように、包装袋50は、包装袋50の4辺に沿って延びるシール部を有する。シール部は、上部51に沿って延びる上部シール部51aと、一対の側部53,53に沿って延びる一対の側部シール部53a,53aと、下部52に沿って延びる下部シール部52aと、を含む。物品が収容される前の状態(物品が収容されていない状態)の包装袋50においては、包装袋50の上部51には開口部(図示せず)が形成されている。そして、包装袋50中に物品を収容した後、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを上部51において接合することにより、上部シール部51aが形成されて包装袋50が封止される。
【0038】
上部シール部51a、側部シール部53a,53aおよび下部シール部52aは、表面シート54の内面と裏面シート55の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
【0039】
対向するシート54,55同士を接合して包装袋50を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によってシートの内面を溶融させ、内面同士を融着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成する。
【0040】
包装袋を構成する表面シートおよび/または裏面シートは、一実施形態において、ハーフカット線を有する。ハーフカット線とは、上記シートを構成する第1の樹脂層の表面から、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面にまで達しているが、上記シートは貫通していない切れ込み線をいう。ハーフカット線を起点として、上記シートにおける第1の樹脂層を容易に手で剥離除去できる。
【0041】
ハーフカット線が形成される位置は、特に限定されない。例えば、矩形状の平面形状を有する包装袋の場合は、包装袋の少なくとも1つの隅部にハーフカット線を設けることが好ましい。ハーフカット線は、包装袋の表面シートおよび裏面シートのいずれにも形成されていることが好ましい。ハーフカット線は、一実施形態において、表面シートおよび裏面シートの隅部において、該シートの側部外縁から下部外縁に延びている。ハーフカット線は、例えば、カッター等を用いて機械的に上記シートの厚さ方向に切れ目を入れることにより、または上記シートにレーザーを照射することにより、形成できる。
【0042】
図2および図3を用いて、ハーフカット線を具体的に説明する。
図2に示すように、包装袋50のシール部の一つの隅部に、ハーフカット線60が形成されている。図2に示すように、ハーフカット線60は、包装袋50の側部53外縁から下部52外縁まで延びている。ハーフカット線60は、包装袋50の表裏両面、すなわち表面シート54および裏面シート55にそれぞれ形成されている。
図3は、包装袋を構成する上記シートに設けられたハーフカット線の拡大図である。
【0043】
包装袋50の表裏両面にハーフカット線60が形成されているので、物品が収容された包装袋50をクリーンルーム内に持ち込む直前で、一方の面に形成されたハーフカット線60を介して包装袋50の隅部を折り曲げることができる。このことにより、第1の樹脂層10を第2の樹脂層20から容易に剥離することができる。次に、他方の面に形成されたハーフカット線60を介して同様に包装袋50の隅部を折り曲げることにより、他方の第1の樹脂層10を第2の樹脂層20から剥離することができる。
【0044】
表面シートおよび裏面シートの厚さは、包装袋の強度および耐熱性という観点から、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、よりさらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上である。表面シートおよび裏面シートの厚さは、包装袋の加工適性という観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、よりさらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0045】
表面シートおよび裏面シートは、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸フィルムである。「未延伸フィルム」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、共押出インフレーション法による製膜の際に加えられる張力に起因して延伸されているフィルムも包含する概念である。
【0046】
表面シートおよび裏面シートにおけるポリオレフィン系樹脂の含有割合は、一実施形態において、該シートの質量を基準として、70質量%以上でもよく、75質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、85質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。このような包装袋は、リサイクル性に優れる。表面シートおよび裏面シートにおけるポリオレフィン系樹脂の含有割合は、該シートの質量を基準として、99質量%以下でもよく、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。上記「ポリオレフィン系樹脂の含有割合」を、「ポリエチレン系樹脂の含有割合」、「ポリプロピレン系樹脂の含有割合」と読み替えることができる。
【0047】
本開示の包装袋の製造方法は、
共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有する、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、該フィルムを扁平状に変形させる工程(以下「工程(1)」ともいう)、および
扁平状に変形された上記チューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している上記第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する工程(以下「工程(2)」ともいう)、
を含む。
【0048】
本開示の製造方法により、上述した本開示の包装袋を作製できる。
【0049】
<工程(1)>
工程(1)では、共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有する、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、該フィルムを扁平状に変形させる(具体的には折り畳む)。
【0050】
共押出インフレーション法で用いる溶融押出機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機およびタンデム押出機が挙げられる。包装袋は多層構造を有することから、多層環状ダイと複数台の溶融押出機とを使用する。共押出インフレーション法には、空冷式インフレーション法および水冷式インフレーション法がある。製膜速度が速く、幅広の製膜が可能であることから、空冷式インフレーション法が好ましく、上向きの空冷式インフレーション法がより好ましい。
【0051】
共押出インフレーション法の一実施形態について、以下に説明する。
まず、各層を構成する材料を押出機に供給して溶融させ、多層環状ダイによりチューブ状に押し出す。このとき、チューブ状の溶融樹脂の内部に下方から空気を送り、チューブの径を所定の大きさに膨張させると共に、チューブ外方から冷却用空気を送り、チューブ状フィルムを形成する。続いて、得られたチューブ状フィルムをピンチロールで引っ張り上げながら、安定板およびピンチロールによって扁平状に変形させる。このとき、チューブ状フィルムにおいて対面する内面同士、すなわち対面する第2の樹脂層同士が接触している。所望により、巻き上げ部において扁平化されたチューブ状フィルムを巻き取り、ロール状体を得る。
【0052】
共押出インフレーション法によれば、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが積層されたチューブ状フィルムを一工程で容易に製造できる。ここで、第1の樹脂層は、後述するとおり製袋後においては、第2の樹脂層から剥離できるように設けられている。
【0053】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で扁平状に変形された上記チューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する。
扁平状に変形されたチューブ状フィルムでは、該フィルムを構成する、対面する第2の樹脂層同士、すなわち該フィルムの内面同士は、接触している。工程(2)では、扁平状に変形されたチューブ状フィルムから、対面して接触している第2の樹脂層同士の接触を解除することなく、包装袋を作製する。
例えば、扁平状に変形されたチューブ状フィルムにおいて、対面して接触している第2の樹脂層の一部同士を接合させてシール部を形成した後、該フィルムを切断して、包装袋を作製する。例えば、扁平状に変形されたチューブ状フィルムを例えば流れ方向に沿って切断してなる重ね合わされたフィルムにおいて、対面して接触している第2の樹脂層の一部同士を接合させてシール部を形成した後、該フィルムを切断して、包装袋を作製する。
【0054】
シール部の形成方法としては、例えば、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールなどのヒートシール方法が挙げられる。
【0055】
本開示の製造方法によれば、包装袋の製造時および製造後のいずれにおいても、第2の樹脂層における第1の樹脂層と接する第1面が直接外気に触れることはない。したがって、包装袋の製造時から第1の樹脂層を剥離除去するまでの間に、第2の樹脂層の第1面に埃および塵等の異物が付着することを抑制できる。包装袋の使用時において、包装袋の第2の樹脂層から第1の樹脂層を剥離除去することにより、第2の樹脂層の第1面が露出する。この第1面は、異物の付着が抑制されており、清浄な面である。
【0056】
また、チューブ状フィルムを扁平状に変形させることにより、チューブ状フィルムの内面は、外気と触れず清浄に保たれる。扁平状に変形されたチューブ状フィルムの内面同士が接した状態のまま製袋処理することにより、内面が外気と触れず清浄に保たれたまま包装袋を製造できる。すなわち、第2の樹脂層の第2面は、異物の付着が抑制されており、清浄な面である。したがって、本開示の方法によれば、製袋処理は必ずしもクリーン環境内で行わなくともよい。より高い清浄度が求められる場合は、製袋処理をクリーン環境内で行ってもよい。一方、チューブ状フィルムにおける幅方向の両端部を所定の幅で切除して2枚のフィルムに分けた後に、両者を重ね合わせて製袋処理する方法では、製袋処理前に該フィルムの両面に外気が触れることから、包装袋の内面に異物が付着することを充分抑制できない場合がある。
【0057】
製袋処理の一例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの流れ方向(押出方向)に対して交差(例えば直交)する幅方向の両端部を流れ方向に沿ってヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。次に、幅方向に延びるシール部から僅かに下方の位置でフィルムを幅方向に沿って切断する。図4A1に、フィルムの正面図を示し、ハッチング部分はシール部を示し、点線は切断される箇所を示す。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0058】
製袋処理の他の例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの幅方向の両端部を、流れ方向に沿ってヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。次に、フィルムの幅方向の中央箇所でフィルムを流れ方向に沿って切断し、幅方向に延びるシール部でフィルムを幅方向に沿って切断する(図4A2参照)。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0059】
製袋処理の他の例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの幅方向の一方の端部を流れ方向に沿ってヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。次に、幅方向に延びるシール部でフィルムを幅方向に沿って切断する(図4B参照)。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0060】
製袋処理の他の例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの幅方向の中央箇所において流れ方向に延びる部分をヒートシールするとともに、あるいは、フィルムの流れ方向に延びる部分を幅方向に一定間隔を空けてヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。フィルムの流れ方向に沿ってヒートシールされる部分は、例えば、1列以上5列以下でもよく、1列以上3列以下でもよい。次に、流れ方向に延びるシール部でフィルムを流れ方向に沿って切断し、幅方向に延びるシール部でフィルムを幅方向に沿って切断する(図4Cおよび図4D参照)。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0061】
製袋処理の他の例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの流れ方向に延びる部分を幅方向に間隔を空けてヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。次に、流れ方向に延びるシール部でフィルムを流れ方向に沿って切断し、フィルムの幅方向の中央箇所でフィルムを流れ方向に沿って切断し、幅方向に延びるシール部でフィルムを幅方向に沿って切断する(図4E参照)。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0062】
製袋処理の他の例について、以下に記載する。
扁平状に変形されたフィルムの幅方向の両端部を流れ方向に沿ってヒートシールし、フィルムの流れ方向に延びる部分を幅方向に一定間隔を空けてヒートシールするとともに、フィルムの幅方向に延びる部分を流れ方向に一定間隔を空けてヒートシールして、シール部を形成する。フィルムの流れ方向に沿ってヒートシールされる部分は、例えば、1列以上5列以下でもよく、1列以上3列以下でもよい。次に、流れ方向に延びるシール部でフィルムを流れ方向に沿って切断し、幅方向に延びるシール部から僅かに下方の位置でフィルムを幅方向に沿って切断する(図4F参照)。このようにして、一つの辺に開口部を有する包装袋が複数個得られる。
【0063】
製袋処理の以上の例において、上記フィルムの幅方向の両端部を流れ方向に沿って所定の幅で切除する。この切除は、ヒートシールの前に行ってもよく、ヒートシールの後に行ってもよい。
【0064】
例えばクリーン環境内で、上記で製造した包装袋の未シール部の開口部から、物品を装入する。次いで、包装袋の開口部をヒ-トシールしてシール部を形成して、包装袋中に物品が収容された包装体を得ることができる。
【0065】
以下、上述した第1の樹脂層および第2の樹脂層について詳細に説明する。以下の説明において、表面シートまたは裏面シートを、「積層体」と記載する場合がある。
【0066】
<第1の樹脂層>
第1の樹脂層は、第2の樹脂層から剥離できるように設けられている。
本明細書において、包装袋の第2の樹脂層から第1の樹脂層を剥離して得られる、第1の樹脂層からなるフィルムを「剥離フィルム」ともいう。該剥離後の第2の樹脂層からなるフィルムを「シーラントフィルム」ともいう。
【0067】
第1の樹脂層と第2の樹脂層との剥離強度は、好ましくは1.0N/15mm幅以下、より好ましくは0.9N/15mm幅以下、さらに好ましくは0.8N/15mm幅以下、よりさらに好ましくは0.7N/15mm幅以下、特に好ましくは0.6N/15mm幅以下である。このような剥離強度を有する包装袋の場合、第1の樹脂層を第2の樹脂層から、第2の樹脂層を破損することなく適度な力で容易に剥離できる。上記剥離強度は、例えば0.01N/15mm幅、0.05N/15mm幅または0.1N/15mm幅以上である。このような剥離強度を有する包装袋の場合、第2の樹脂層からの第1の樹脂層の浮きを抑制でき、包装袋の外観に優れるとともに、第1の樹脂層が意図しない時期に第2の樹脂層から剥離されることを抑制できる。
【0068】
上記剥離強度は、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される。具体的には、包装袋をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出す。試験片における長さ方向の一方の端部の第1の樹脂層を剥離して折り返して、部分的に剥離された第1の樹脂層(剥離フィルム)の端部を、引張試験機の一方のつかみ具に取り付け、上記部分的に剥離後の第2の樹脂層(シーラントフィルム)の端部を、引張試験機の他方のつかみ具に取り付ける。初期チャック間距離は100mmとする。次いで、第1の樹脂層の端部を取り付けたつかみ具を、試験片の表面に対して180度の方向に、該角度が維持されるように試験片の姿勢を保持しながら50mm/minの速度で引っ張り、最大強度(N)を測定する。15mm幅の試験片に対して測定された最大強度(N)を、剥離強度(N/15mm幅)とする。
【0069】
第1の樹脂層の厚さは、剥離性、強度および耐熱性という観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。第1の樹脂層の厚さは、加工適性という観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0070】
第1の樹脂層における含有量が最も大きい同種の樹脂材料の含有割合は、第1の樹脂層の質量を基準として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。このような第1の樹脂層を備える積層体は、リサイクル性に優れる。具体的には、上記積層体から第1の樹脂層を剥離して得られる剥離フィルムのリサイクル性に優れる。
【0071】
本明細書において同種の樹脂材料とは、例えば、ポリオレフィン系樹脂に分類されるポリマー同士、ポリアミドに分類されるポリマー同士、エチレン-ビニルアルコール共重合体に分類されるポリマー同士、ポリエステルに分類されるポリマー同士を指す。例えば、ポリオレフィン系樹脂とポリエステルとは、同種の樹脂材料には分類されない。
【0072】
一実施形態において、上記「第1の樹脂層における同種の樹脂材料の含有割合」を、「第1の樹脂層におけるポリアミドの含有割合」、「第1の樹脂層におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体の含有割合」、「第1の樹脂層におけるポリエステルの含有割合」、「第1の樹脂層におけるポリエチレン系樹脂の含有割合」と読み替えることができる。
【0073】
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィンだけでなく、酸変性ポリオレフィンなどの変性ポリオレフィンを包含する概念である。本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリエチレンだけでなく、酸変性ポリエチレンなどの変性ポリエチレンを包含する概念である。
【0074】
第1の樹脂層は、一実施形態において、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を備えてもよい。第1の樹脂層は、ヘテロ原子含有樹脂層でもよく、ヘテロ原子含有樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層とを備えてもよい。ヘテロ原子含有樹脂層は、一実施形態において、第2の樹脂層と接していてもよい。このような態様の積層体は、第2の樹脂層からの第1の樹脂層の剥離性に優れている。
第1の樹脂層におけるヘテロ原子含有樹脂層は、一実施形態において、第2の樹脂層における密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と接している。このような態様の積層体は、第2の樹脂層からの第1の樹脂層の剥離性、および第1の樹脂層と第2の樹脂層との密着性のバランスに優れている。
【0075】
積層体は、第1の樹脂層におけるポリオレフィン層と第2の樹脂層における密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層との間に、ヘテロ原子含有樹脂層を備えてもよい。積層体は、ポリオレフィン層を表面層として備えてもよい。このような積層体は、外観に優れ、またヘテロ原子含有樹脂層を薄くでき、製造コストを低減できる。
【0076】
第1の樹脂層は、一実施形態において、ポリメチルペンテンを主成分として含有するポリメチルペンテン層でもよい。
【0077】
(ヘテロ原子含有樹脂層)
ヘテロ原子含有樹脂層は、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有する。
ヘテロ原子含有樹脂層を備える第1の樹脂層は、ヤング率が高く、第2の樹脂層からの剥離性に優れる。また、ヘテロ原子含有樹脂層を備える積層体は、耐突刺し性に優れる。したがって、このような積層体を備える包装袋は、硬い物品の包装性に優れる。ヘテロ原子含有樹脂層を備える積層体は、酸素バリア性および水蒸気バリア性等のガスバリア性、耐熱性ならびに剛性に優れる。ヘテロ原子含有樹脂は、環境負荷の低減という観点から、バイオマス材料でもよい。
【0078】
ヘテロ原子含有樹脂におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子および塩素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有樹脂は、例えば、ヒドロキシ基、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合などのヘテロ原子含有基を有する。ヘテロ原子含有樹脂としては、例えば、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、剛性および耐突刺し性という観点から、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールが好ましく、ポリアミドおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体がより好ましい。これらの樹脂材料は、環境負荷の低減という観点から、バイオマス材料でもよい。
【0079】
ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが好ましく、結晶性脂肪族ポリアミドがより好ましい。
【0080】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ホモポリアミドおよび脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。以下の例示において、ポリアミドを「PA」とも記載する。
【0081】
脂肪族ホモポリアミドとしては、具体的には、ポリカプロラクタムまたはポリ(6-アミノカプロン酸)(PA6)、ポリエナントラクタムまたはポリ(7-アミノエナント酸)(PA7)、ポリウンデカンラクタムまたはポリ(11-アミノウンデカン酸)(PA11)、ポリラウリルラクタムまたはポリ(12-アミノラウリン酸)(PA12)、ポリペンタメチレンアジパミド(PA56)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリテトラメチレンセバカミド(PA410)、ポリテトラメチレンドデカミド(PA412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(PA59)、ポリペンタメチレンセバカミド(PA510)、ポリペンタメチレンドデカミド(PA512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリオクタメチレンセバカミド(PA810)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリノナメチレンアジパミド(PA96)、ポリノナメチレンアゼラミド(PA99)、ポリノナメチレンセバカミド(PA910)、ポリノナメチレンドデカミド(PA912)、ポリデカメチレンアジパミド(PA106)、ポリデカメチレンアゼラミド(PA109)、ポリデカメチレンデカミド(PA1010)、ポリデカメチレンドデカミド(PA1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(PA126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(PA129)、ポリドデカメチレンセバカミド(PA1210)およびポリドデカメチレンドデカミド(PA1212)が挙げられる。
【0082】
脂肪族共重合ポリアミドとしては、具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(PA6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(PA6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(PA6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(PA6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(PA6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(PA6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(PA6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(PA6/66/612)が挙げられる。
【0083】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは1.5以上、より好ましく2.0以上、さらに好ましくは2.5以上である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、JIS K6920-2:2009に準拠して、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mLに溶解させ、25℃で測定される。
【0084】
半芳香族ポリアミドとは、芳香族ジアミンに由来する構成単位と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミド、または、脂肪族ジアミンに由来する構成単位と、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミドである。例えば、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成されるポリアミド、および脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから構成されるポリアミドが挙げられる。
【0085】
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(PA6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6T/6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカミド共重合体(PA6T/12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA6I/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)共重合体(PA6T/M5T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6/6I)およびポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)が挙げられる。
【0086】
半芳香族ポリアミドのメルトボリュームレート(MVR)は、好ましくは5cm3/10分以上、より好ましくは10cm3/10分以上である。半芳香族ポリアミドのMVRは、好ましくは200cm3/10分以下、より好ましくは100cm3/10分以下である。MVRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度275℃、荷重5.00kgで測定される。
【0087】
ポリアミドとしては、結晶性脂肪族ポリアミドが好ましい。結晶性脂肪族ポリアミドとしては、例えば、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA1010、PA6/66およびPA6/66/12が挙げられる。
【0088】
結晶性脂肪族ポリアミドの融点(Tm)は、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上である。結晶性脂肪族ポリアミドのTmは、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。結晶性脂肪族ポリアミドのTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0089】
ポリアミドのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリアミドのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリアミドのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度235℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。測定温度は、ポリアミドの融点に応じて変更できる。
【0090】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、例えば、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合させた後にケン化させることにより得られる。エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。
【0091】
ビニルエステル系モノマーとしては、一般的に酢酸ビニルが用いられるが、他のビニルエステル系モノマーを用いてもよい。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、ならびに安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステルが挙げられる。
【0092】
EVOHにおいてエチレンに由来する構成単位の含有割合(エチレン含有割合)は、積層体の加工適性という観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上である。EVOHにおけるエチレン含有割合は、積層体の耐熱性、酸素バリア性および水蒸気バリア性という観点から、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下である。エチレン含有割合は、NMR法により測定される。
【0093】
EVOHにおける平均ケン化度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。平均ケン化度は、JIS K6726:1994(ただしEVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液を使用)に準拠して測定される。
【0094】
EVOHの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。EVOHのTmは、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。EVOHのTmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0095】
EVOHのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。EVOHのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。EVOHのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。測定温度は、EVOHの融点に応じて210℃でもよい。
【0096】
EVOHは、公知の方法により、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化などの変性がされていてもよい。
【0097】
ポリビニルアルコール(PVA)における平均ケン化度は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。平均ケン化度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される。
【0098】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびテレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体が挙げられる。これらの中でも、PETが好ましい。
【0099】
ヘテロ原子含有樹脂層におけるヘテロ原子含有樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、例えば、包装袋の耐熱性などの上述した物性を向上できる。
【0100】
ヘテロ原子含有樹脂層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、顔料および染料が挙げられる。
【0101】
ヘテロ原子含有樹脂層の厚さは、積層体の耐熱性という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。ヘテロ原子含有樹脂層の厚さは、積層体のリサイクル性という観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0102】
(ポリオレフィン層)
第1の樹脂層におけるポリオレフィン層は、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。ポリオレフィン層としては、ポリエチレン層およびポリプロピレン層が好ましく、ポリエチレン層がより好ましい。ポリオレフィンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリオレフィンでもよい。
【0103】
ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、ポリエチレンの場合は190℃であり、ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0104】
ポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0105】
第1の樹脂層におけるポリオレフィン層は、ヘテロ原子含有樹脂層に対する密着性という観点から、さらに変性ポリオレフィンを含有してもよい。変性ポリオレフィンとしては、例えば、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和カルボン酸、またはその酸無水物、エステルもしくは金属塩による、ポリオレフィンの変性物、特にポリオレフィンのグラフト変性物が挙げられる。変性ポリオレフィンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマス材料でもよい。
【0106】
変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。変性ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、変性ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、変性ポリエチレンの場合は190℃であり、変性ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0107】
ポリオレフィン層における変性ポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。ポリオレフィン層における変性ポリオレフィンの含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0108】
ポリオレフィン層は、ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0109】
ポリオレフィン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0110】
ポリオレフィン層の厚さは、積層体の強度、耐熱性およびリサイクル性という観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。ポリオレフィン層の厚さは、積層体の加工適性という観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0111】
((ポリエチレン層))
第1の樹脂層におけるポリエチレン層は、ポリエチレンを主成分として含有する。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。ヒートシール時におけるチューブ状フィルムの耐熱性という観点から、高密度ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層が好ましい。ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0112】
第1の樹脂層におけるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0113】
第1の樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0114】
ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0115】
第1の樹脂層におけるポリエチレン層は、ヘテロ原子含有樹脂層に対する密着性という観点から、さらに変性ポリエチレンを含有してもよい。変性ポリエチレンとしては、例えば、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和カルボン酸、またはその酸無水物、エステルもしくは金属塩による、ポリエチレンの変性物、特にポリエチレンのグラフト変性物が挙げられる。変性ポリエチレンとしては、変性高密度ポリエチレンでもよく、無水マレイン酸グラフト変性高密度ポリエチレンでもよい。変性ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマス材料でもよい。
【0116】
変性ポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。変性ポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。変性ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0117】
ポリエチレン層における変性ポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。ポリエチレン層における変性ポリエチレンの含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0118】
((ポリプロピレン層))
第1の樹脂層におけるポリプロピレン層は、ポリプロピレンを主成分として含有する。
ポリプロピレン層を備える積層体は、耐油性に優れる。
【0119】
ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー(ホモポリプロピレン)、プロピレンランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)およびプロピレンブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)のいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0120】
プロピレンホモポリマーとは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンランダムコポリマーとは、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン等とのランダム共重合体である。プロピレンブロックコポリマーとは、少なくともプロピレンからなる重合体ブロックと、少なくともプロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックとを有する共重合体である。
【0121】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。
【0122】
ポリプロピレンの中でも、透明性という観点からは、プロピレンランダムコポリマーが好ましい。包装袋の剛性および耐熱性を重視する場合は、プロピレンホモポリマーが好ましい。包装袋の耐衝撃性を重視する場合は、プロピレンブロックコポリマーが好ましい。
【0123】
ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。ポリプロピレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0124】
ポリプロピレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。ポリプロピレンのTmは、好ましくは170℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0125】
ポリプロピレン層におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0126】
<第2の樹脂層>
第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有するシーラント層である。第2の樹脂層は、包装袋の収容空間に面する層である。一実施形態において、上記積層体から第1の樹脂層を分離除去して得られる包装袋のモノマテリアル化を図ることができる。
【0127】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。ポリオレフィンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリオレフィンでもよい。
【0128】
第2の樹脂層におけるポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、ポリエチレンの場合は190℃であり、ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0129】
第2の樹脂層におけるポリオレフィンの含有割合は、第2の樹脂層の質量を基準として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。このような第2の樹脂層を備える積層体は、リサイクル性に優れる。具体的には、上記積層体から第1の樹脂層を剥離除去した後の第2の樹脂層に相当するシーラントフィルムは、リサイクル性に優れる。
【0130】
一実施形態において、上記「第2の樹脂層におけるポリオレフィンの含有割合」を、「第2の樹脂層におけるポリエチレンの含有割合」、「第2の樹脂層におけるポリプロピレンの含有割合」と読み替えることができる。
【0131】
第2の樹脂層は、一実施形態において、ポリエチレンを主成分として含有する。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0132】
第2の樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性およびヒートシール性のバランスという観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0133】
第2の樹脂層は、一実施形態において、ポリプロピレンを主成分として含有する。このような第2の樹脂層を備える積層体は、耐油性に優れる。
【0134】
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等のプロピレンランダムコポリマー、およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロックコポリマーが挙げられる。α-オレフィンの詳細は、上述したとおりである。ポリプロピレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0135】
第2の樹脂層におけるポリプロピレンの密度は、ヒートシール性という観点から、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。ポリプロピレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0136】
第2の樹脂層におけるポリプロピレンの融点(Tm)は、耐熱性およびヒートシール性のバランスという観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0137】
第2の樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0138】
第2の樹脂層の厚さは、強度およびヒートシール性という観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上である。第2の樹脂層の厚さは、加工適性という観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0139】
第2の樹脂層は、一実施形態において、積層体の表面層として、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を少なくとも備える。第2の樹脂層における熱融着性樹脂層は、一実施形態において、第1の樹脂層と接している。
【0140】
第2の樹脂層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層を少なくとも備える。第2の樹脂層における上記ポリエチレン層は、一実施形態において、第1の樹脂層と接している。
【0141】
第2の樹脂層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、積層体の表面層として、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層と、を備える。第2の樹脂層における上記ポリエチレン層は、一実施形態において、第1の樹脂層と接している。
【0142】
第2の樹脂層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層とポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備える。
【0143】
(ポリエチレン層)
第2の樹脂層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層を備える。このようなポリエチレン層を備える積層体は、積層体の製造時において、第2の樹脂層からの第1の樹脂層の浮きを抑制でき、第1の樹脂層と第2の樹脂層との良好な剥離強度を有する。具体的には、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層は、ヘテロ原子含有樹脂層との密着性および剥離性のバランスに優れる。
【0144】
ポリエチレン層の密度は、好ましくは0.908g/cm3以下、より好ましくは0.907g/cm3以下、さらに好ましくは0.906g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.905g/cm3以下、特に好ましくは0.904g/cm3以下である。ポリエチレン層の密度は、好ましくは0.860g/cm3以上、より好ましくは0.870g/cm3以上、さらに好ましくは0.880g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.890g/cm3以上、特に好ましくは0.895g/cm3以上である。ポリエチレン層の密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0145】
ポリエチレン層は、一実施形態において、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンを主成分として含有し、好ましくは密度が0.909g/cm3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、コモノマーが少なくとも1-ブテンであるエチレン-1-ブテン共重合体(C4-LLDPE)、コモノマーが少なくとも1-ヘキセンであるエチレン-1-ヘキセン共重合体(C6-LLDPE)、およびコモノマーが少なくとも1-オクテンであるエチレン-1-オクテン共重合体(C8-LLDPE)が挙げられる。これらの共重合体において、上記コモノマーのみに限定されず、さらなるコモノマーが用いられていてもよい。ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0146】
直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレンの密度は、好ましくは0.908g/cm3以下、より好ましくは0.907g/cm3以下、さらに好ましくは0.906g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.905g/cm3以下、特に好ましくは0.904g/cm3以下である。上記ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上、より好ましくは0.870g/cm3以上、さらに好ましくは0.880g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.890g/cm3以上、特に好ましくは0.895g/cm3以上である。
【0147】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0148】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンは、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンでもよい。メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンとは、メタロセン系エチレン・α-オレフィン共重合体、すなわちメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体であり、分子構造が概ね直鎖状である。
【0149】
エチレンと共重合されるα-オレフィンとしては、例えば、炭素数3以上12以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。これらの中でも、炭素数3以上8以下のα-オレフィンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0150】
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの融点(Tm)は、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの融点(Tm)は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは88℃以上である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0151】
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの中でも、メタロセン系エチレンプラストマーと称される樹脂が好ましい。メタロセン系エチレンプラストマーは、具体的には、メタロセン触媒によって得られる、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)の一種である。メタロセン系エチレンプラストマーは、低密度の中でも比較的低い超低密度と呼ばれる領域の密度と、均一な触媒活性点を有する触媒であるメタロセン触媒による重合方法に由来する、狭い分子量分布(Mw/Mn)で指標される均一なポリマー分布と、プラストマー的性質と、を有する。
【0152】
メタロセン系エチレンプラストマーとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン製「カーネル(登録商標)」シリーズから選択することができる。例えば、「KF260T」、「KF360T」および「KS340T」が挙げられる。
【0153】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンにおける重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、さらに好ましくは3.0以下である。比(Mw/Mn)は、1.0以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.1以上である。
【0154】
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義される。MwおよびMnは、以下の方法で測定される。
装置:ウオーターズ社製GPC
150C型検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似する。試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算する。ポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンは、α=0.707、logK=-3.407である。]
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0155】
ポリエチレン層における密度が0.909g/cm3以下のポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0156】
ポリエチレン層は、ポリエチレン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
ポリエチレン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0157】
密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層の厚さは、剥離強度という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層の厚さは、フィルム製膜の加工性という観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0158】
(熱融着性樹脂層)
第2の樹脂層は、一実施形態において、積層体の表面層として、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える。このような熱融着性樹脂層は、積層体を備える包装袋におけるシール層として機能する。熱融着性樹脂層は、包装袋の収容空間に面する層である。
【0159】
一実施形態において、第2の樹脂層は、熱融着性樹脂層からなる。
一実施形態において、0.909g/cm3以下の密度を有する上記ポリエチレン層が、第2の樹脂層の一方の表面層であり、熱融着性樹脂層が、第2の樹脂層の他方の表面層である。
【0160】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられ、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0161】
熱融着性樹脂層は、ヒートシール性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。
【0162】
熱融着性樹脂層における、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの合計含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0163】
熱融着性樹脂層は、一実施形態において、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含有する。このような熱融着性樹脂層は、ヒートシール性と、包装袋内に収容された物品に対する低汚染性(アウトガス発生の抑制)とのバランスに優れる。
【0164】
熱融着性樹脂層における直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)との含有量比(LLDPE:LDPE)は、質量基準で、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは10:90~90:10、さらに好ましくは20:80~80:20である。
【0165】
熱融着性樹脂層におけるポリエチレンのMFRの数値範囲としては、第1の樹脂層のポリエチレン層に含まれるポリエチレンのMFRと同様の数値範囲を挙げることができる。
【0166】
熱融着性樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、ヒートシール性という観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0167】
熱融着性樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0168】
熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、よりさらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上である。熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下である。
【0169】
(中間層)
第2の樹脂層は、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と熱融着性樹脂層との間に、ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備えてもよい。中間層は、積層体の耐突刺し性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有することがより好ましい。
【0170】
ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種が好ましく、ヒートシール性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種がより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPEおよびC8-LLDPEが挙げられる。ポリエチレンは、環境負荷の低減という観点から、バイオマスポリエチレンでもよい。
【0171】
中間層におけるポリエチレンの密度は、好ましくは0.925g/cm3以上、より好ましくは0.928g/cm3以上、さらに好ましくは0.930g/cm3以上である。このような中間層を備える積層体は、耐突刺し性に優れる。中間層におけるポリエチレンの密度は、好ましくは0.932g/cm3以下である。
【0172】
中間層におけるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。中間層におけるポリエチレンのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0173】
中間層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは140℃以下である。Tmは、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる融解ピーク温度である。
【0174】
中間層におけるポリエチレンの含有割合は、積層体の耐突刺し性およびリサイクル適性という観点から、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0175】
中間層は、上記樹脂材料を含有してもよい。
中間層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0176】
中間層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上である。中間層の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。
【0177】
<意匠層>
包装袋は、印刷層などの意匠層をさらに備えてもよい。
意匠層は、画像を有する。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装袋中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0178】
意匠層は、例えば、第1の樹脂層の表面上に設けられていてもよい。例えば、第1の樹脂層の、第2の樹脂層を向く面とは反対側の面(外側の面)上に、意匠層は設けられていてもよい。
【0179】
意匠層は、一実施形態において、着色剤を含有する。
着色剤としては、例えば、無機顔料および有機顔料等の顔料、ならびに、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料および昇華性色素等の染料が挙げられる。また、着色剤としては、紫外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料、および赤外線を吸収することにより蛍光を発する赤外線発光材料等の蛍光発光材料も挙げられる。
【0180】
意匠層における着色剤の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。意匠層における着色剤の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0181】
意匠層は、上記樹脂材料を含有してもよく、上記添加剤を含有してもよい。
意匠層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。意匠層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0182】
意匠層は、例えば、上述した成分および必要に応じて溶媒を含有するインキ組成物を用いて形成できる。意匠層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、活版印刷法および転写印刷法が挙げられる。一実施形態において、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法でもよい。
【0183】
意匠層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。意匠層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0184】
<積層体の構成>
図5図9に、チューブ状フィルムとしての積層体、または包装袋を構成する表面シートおよび裏面シートとしての積層体の一実施形態に係る模式断面図を示す。
【0185】
図5の積層体1は、第1の樹脂層10と、第2の樹脂層20と、を厚さ方向にこの順に備える。図6の積層体1は、第2の樹脂層20が密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層22と熱融着性樹脂層24とを備えること以外は、図5の積層体1と同様である。ポリエチレン層22が第1の樹脂層10と接している。
【0186】
図7の積層体1は、第1の樹脂層10がポリオレフィン層12とヘテロ原子含有樹脂層14とを備えること以外は、図6の積層体1と同様である。ヘテロ原子含有樹脂層14がポリエチレン層22と接している。
【0187】
図8の積層体1は、第2の樹脂層20がポリエチレン層22と熱融着性樹脂層24との間に中間層23をさらに備えること以外は、図6の積層体1と同様である。図9の積層体1は、第1の樹脂層10がポリオレフィン層12とヘテロ原子含有樹脂層14とを備えること以外は、図8の積層体1と同様である。
【0188】
[用途]
クリーンルーム等のクリーン環境内で使用される物品には、高い清浄度が必要とされる。上記物品を収容した包装袋は、クリーン環境内に持ち込まれ、開封される。したがって、包装袋にも、高い清浄度が必要とされる。すなわち、上記物品を収容した包装袋をクリーン環境内に持ち込む場合、包装袋の外面および/または内面に埃および塵等の異物が付着して、クリーン環境内に包装袋とともに異物が侵入することを抑制する必要がある。本開示の包装袋を用いることにより、例えば、以下のようにしてこのような異物の侵入を抑制できる。
【0189】
まず、クリーン環境下で本開示の包装袋内に物品を収容し、必要に応じて真空脱気等により脱気し、包装袋の開口部を密封し、包装袋内に物品が収容された包装体を得る。脱気は、包装袋内の気体を除去できれば真空脱気に限られない。例えば、押圧部材を用いて包装袋を外側から押圧することにより脱気を行ってもよい。クリーン環境の前室に包装体を持ち込む。ここで、包装袋を構成する第1の樹脂層(剥離フィルム)を剥離除去する。これにより、包装袋を構成する第2の樹脂層(シーラントフィルム)の第1面が露出する。第2の樹脂層の第1面は、上述したように異物の付着が抑制されており、清浄な面である。第1の樹脂層を剥離除去してなる包装袋は、その表面における異物の付着量が少ない。このような包装袋をクリーン環境内に持ち込む。クリーン環境内において、包装袋を開封して物品を取り出し、使用する。上述したように、第2の樹脂層の第2面(包装袋の内面)もまた、上述したように異物の付着が抑制されており、清浄な面である。このようにして、包装袋とともに異物がクリーン環境内に侵入することが抑制される。
【0190】
以上の構成によれば、本開示の包装袋を、内袋および外袋を少なくとも備える2重袋、または3重以上の袋として構成する必要はない。しかしながら、本開示の包装袋を、2重袋または3重以上の袋における外袋等として使用することは何ら制限されない。
【0191】
包装袋内に収容される物品としては、例えば、ICおよびLSIなどの半導体製品、半導体装置用バルブおよび半導体製造用フィルタなどの半導体関連部品、精密機械、磁気ディスク、シリコンウェハ、Oリング、ベローズ、医薬品製品、再生医療向け製品、ならびに血球検査装置用希釈液および人工透析液などの薬液製品が挙げられる。物品としては、クリーン環境内で使用される、防塵用衣服、防塵用手袋および器具なども挙げられる。
【0192】
[本開示の態様]
本開示は、例えば以下の[1]~[21]に関する。
[1]包装袋の製造方法であって、前記製造方法は、共押出インフレーション法により、チューブ外面を構成する第1の樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有する、チューブ内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを形成し、前記フィルムを扁平状に変形させる工程、および扁平状に変形された前記チューブ状フィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムに対して、対面して接触している前記第2の樹脂層同士の接触を解除することなく製袋処理を行い、包装袋を作製する工程、を含み、前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、前記第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する前記第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有する、包装袋の製造方法。
[2]前記第1の樹脂層が、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を少なくとも備え、前記ヘテロ原子含有樹脂層が、前記第2の樹脂層と接している、前記[1]に記載の包装袋の製造方法。
[3]前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、前記[2]に記載の包装袋の製造方法。
[4]前記第1の樹脂層が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、前記[2]または[3]に記載の包装袋の製造方法。
[5]前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、前記[4]に記載の包装袋の製造方法。
[6]前記第2の樹脂層が、前記チューブ内面を構成する、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の包装袋の製造方法。
[7]前記熱融着性樹脂層が、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有する、前記[6]に記載の包装袋の製造方法。
[8]前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記チューブ内面を構成する、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記第2の樹脂層における前記ポリエチレン層が、前記第1の樹脂層における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、前記[2]~[7]のいずれか一項に記載の包装袋の製造方法。
[9]前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下の前記ポリエチレン層と、前記熱融着性樹脂層との間に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備える、前記[8]に記載の包装袋の製造方法。
[10]前記包装袋において、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の包装袋の製造方法。
[11]包装袋であって、前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有し、前記包装袋は、共押出インフレーション法により作製された、チューブ外面を構成する前記第1の樹脂層と、チューブ内面を構成する前記第2の樹脂層と、を少なくとも備えるチューブ状フィルムを扁平状に変形させたフィルムまたは該フィルムを切断してなる重ね合わされたフィルムを、直接製袋してなる、包装袋。
[12]包装袋であって、前記包装袋は、表面シートと、前記表面シートに対向する裏面シートと、を備え、前記表面シートおよび前記裏面シートは、それぞれ、第1の樹脂層と、前記包装袋の内面を構成する第2の樹脂層と、を少なくとも備え、前記第2の樹脂層は、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記表面シートおよび前記裏面シートにおいて、前記第1の樹脂層は、前記第2の樹脂層から剥離できるように設けられており、前記包装袋は、前記表面シートにおける前記第2の樹脂層の一部と前記裏面シートにおける前記第2の樹脂層の一部とが接合して形成されたシール部を有し、パーティクルカウンタを用いて測定される、前記包装袋の内面に付着した、粒子径が0.2μm以上のパーティクルの数が、100個/cm2以下である、包装袋。
[13]前記第1の樹脂層が、ヘテロ原子含有樹脂を主成分として含有するヘテロ原子含有樹脂層を少なくとも備え、前記ヘテロ原子含有樹脂層が、前記第2の樹脂層と接している、前記[11]または[12]に記載の包装袋。
[14]前記ヘテロ原子含有樹脂が、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステルおよびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、前記[13]に記載の包装袋。
[15]前記第1の樹脂層が、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層をさらに備える、前記[13]または[14]に記載の包装袋。
[16]前記ポリオレフィン層が、前記ポリオレフィンに加えて、変性ポリオレフィンをさらに含有する、前記[15]に記載の包装袋。
[17]前記第2の樹脂層が、前記包装袋の内面を構成する、ポリオレフィンを主成分として含有する熱融着性樹脂層を備える、前記[11]~[16]のいずれか一項に記載の包装袋。
[18]前記熱融着性樹脂層が、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種のポリエチレンを主成分として含有する、前記[17]に記載の包装袋。
[19]前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層と、前記包装袋の内面を構成する、ポリエチレンを主成分として含有する熱融着性樹脂層とを備え、前記第2の樹脂層における前記ポリエチレン層が、前記第1の樹脂層における前記ヘテロ原子含有樹脂層と接している、前記[13]~[18]のいずれか一項に記載の包装袋。
[20]前記第2の樹脂層が、密度が0.909g/cm3以下の前記ポリエチレン層と、前記熱融着性樹脂層との間に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する中間層をさらに備える、前記[19]に記載の包装袋。
[21]前記包装袋において、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層との剥離強度が、1.0N/15mm幅以下である、前記[11]~[20]のいずれか一項に記載の包装袋。
【実施例0193】
本開示の包装袋およびその製造方法について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示の包装袋およびその製造方法は実施例によって何ら限定されない。
【0194】
[原料成分]
以下の実施例および参考例で用いた成分を示す。
・ポリアミド(PA)
UBE製、5033B、ポリアミド6/66共重合体、
融点:197℃、密度:1.14g/cm3
MFR:4.0g/10分(温度235℃、荷重2.16kg)
・高密度ポリエチレン(HDPE)
プライムポリマー製、HZ5000SF、
融点:132℃、密度:0.954g/cm3、MFR:0.66g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
プライムポリマー製、SP0511、C6-LLDPE、
融点:98℃、密度:0.901g/cm3、MFR:1.2g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
プライムポリマー製、UZ2021L、C6-LLDPE、
融点:120℃、密度:0.919g/cm3、MFR:2.0g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
プライムポリマー製、UZ3520L、C6-LLDPE、
融点:124℃、密度:0.931g/cm3、MFR:2.1g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
宇部丸善ポリエチレン、UMERIT125FN、
融点:120℃、密度:0.924g/cm3、MFR:2.2g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
日本ポリエチレン、ハーモレックスNF444N、
融点:121℃、密度:0.912g/cm3、MFR:2.0g/10分
・低密度ポリエチレン(LDPE)
宇部丸善ポリエチレン製、B128、
融点:114℃、密度:0.928g/cm3、MFR:1.0g/10分
・無水マレイン酸グラフト変性高密度ポリエチレン(mHDPE)
ダウ・ケミカル製、BYNEL 40E 1053、接着性樹脂、
融点:130℃、密度:0.960g/cm3、MFR:2.0g/10分
【0195】
[実施例1]
80質量%のHDPE(HZ5000SF)および20質量%のmHDPE(BYNEL 40E 1053)の混合物と、PA(5033B)と、LLDPE(SP0511)と、LLDPE(UZ3520L)と、80質量%のLLDPE(UZ2021L)および20質量%のLDPE(B128)の混合物とを、5層共押出インフレーション装置を用いて押出機から多層環状ダイを通してチューブ状に押し出し、これを垂直方向に引き取りながら空気圧で膨らませてチューブ状フィルムを形成した。チューブ状フィルムは、チューブ外面を構成する厚さ15μmのHDPE層と、厚さ5μmのPA層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのLLDPE層と、チューブ内面を構成する厚さ25μmのポリエチレンブレンド層とを備え、総厚さ80μmであった。ピンチロールにてチューブ状フィルムの内面同士を接触させて扁平化した。
混合物における質量%の表記は、混合物中の各成分の含有割合を示す。
【0196】
扁平化されたフィルムを、高速三方シール自動製袋機(BH-60D トタニ技研工業製)を用いて、温度140℃、圧着時間0.8秒、圧力3kgf/cm2でヒートシールして、所定の切断処理を行い、三方シール袋を作製した。このような製袋方法を、「方法A」と記載する。
【0197】
第1の樹脂層である剥離層は、厚さ15μmのHDPE層と、厚さ5μmのPA層と、からなる。第2の樹脂層であるシーラント層は、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ25μmのポリエチレンブレンド層と、からなる。
【0198】
[実施例2]
80質量%のHDPE(HZ5000SF)および20質量%のmHDPE(BYNEL 40E 1053)の混合物と、PA(5033B)と、LLDPE(SP0511)と、LLDPE(UMERIT125FN)と、80質量%のLLDPE(NF444N)および20質量%のLDPE(B128)の混合物とを、実施例1と同様にして5層共押出5層共押出インフレーション装置を用いて押出機から多層環状ダイを通してチューブ状に押し出し、これを垂直方向に引き取りながら空気圧で膨らませてチューブ状フィルムを形成した。チューブ状フィルムは、チューブ外面を構成する厚さ15μmのHDPE層と、厚さ5μmのPA層と、厚さ15μmのLLDPE層と、厚さ20μmのLLDPE層と、チューブ内面を構成する厚さ25μmのポリエチレンブレンド層とを備え、総厚さ80μmであった。以降の作業は実施例1と同様にして、三方シール袋を作製した。
【0199】
[実施例3]
各層の厚さを変更したこと以外は実施例1と同様にして、チューブ外面を構成する厚さ30μmのHDPE層と、厚さ5μmのPA層と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ20μmのLLDPE層と、チューブ内面を構成する厚さ20μmのポリエチレンブレンド層とを備える、総厚さ95μmのチューブ状フィルムを得た。以降の作業は実施例1と同様にして、三方シール袋を作製した。
【0200】
[実施例4]
各層の厚さを変更したこと以外は実施例2と同様にして、チューブ外面を構成する厚さ30μmのHDPE層と、厚さ5μmのPA層と、厚さ20μmのLLDPE層と、厚さ20μmのLLDPE層と、チューブ内面を構成する厚さ20μmのポリエチレンブレンド層とを備える、総厚さ95μmのチューブ状フィルムを得た。以降の作業は実施例1と同様にして、三方シール袋を作製した。
【0201】
[参考例1]
実施例1と同様にして、チューブ状フィルムを得た。ピンチロールにてチューブ状フィルムの内面同士を合わせて扁平化した。扁平化されたフィルムにおける幅方向の両端部を所定の幅で切除して2枚のフィルムに分けてそれぞれ巻き取り、フィルムのロール状体を2つ得た。2つのロール状体からそれぞれ巻き出されたフィルムを、ポリエチレンブレンド層(熱融着性樹脂層)同士が接するように重ね合わせて、高速三方シール自動製袋機(BH-60D トタニ技研工業製)を用いて、温度140℃、圧着時間0.8秒、圧力3kgf/cm2でヒートシールし、所定の切断処理を行い、三方シール袋を作製した。このような製袋方法を、「方法B」と記載する。
【0202】
[参考例2~4]
実施例2で得られたチューブ状フィルムを用いて参考例1と同様にして、参考例2の三方シール袋を作製した。実施例3で得られたチューブ状フィルムを用いて参考例1と同様にして、参考例3の三方シール袋を作製した。実施例4で得られたチューブ状フィルムを用いて参考例1と同様にして、参考例4の三方シール袋を作製した。
【0203】
[物性評価]
包装袋である三方シール袋の物性の評価方法を以下に記載する。
特に言及しない限り、各物性の測定時の環境は、温度23℃および湿度50%RHである。各物性についてそれぞれ3個の試験片について測定を行い、得られた3個の値の算術平均値をそれぞれの物性値として記載した。
【0204】
<剥離強度>
三方シール袋をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。上記試験片と、測定器として卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)とを用いて、初期チャック間距離:100mm、剥離角度:180度、試験速度:50mm/minの条件にて、上記試験片における剥離層とシーラント層との剥離強度(N/15mm幅)を測定した。
【0205】
<突刺し強度>
三方シール袋をカットして、幅:5cm、長さ:5cmのサイズを有する試験片を得た。JIS Z1707:2019に準拠して、上記試験片の突刺し強度をそれぞれ測定した。測定器として、卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用いた。直径:1.0mm、先端形状半径:0.5mmの半円形の針を、試験速度:50mm/minで試験片のシーラント層面および剥離層面に突き刺し、針が試験片を貫通するまでの最大強度である突刺し強度(N)を測定した。
【0206】
<シール強度>
チューブ状フィルムをカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。2枚の試験片をそのシーラント層同士が接するように重ね合わせ、温度140℃(片面加熱)、圧着時間1秒および圧力1kgf/cm2の条件で試験片の一端15mm×15mmの部分をヒートシールして、シール部を形成し、試験体を得た。以下のとおり試験条件を変更したこと以外はJIS Z1707:2019に準拠して、測定器として卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)を用いて、チャック間距離:100mm、剥離態様:T型剥離、試験速度:300mm/minの条件にて、シール強度(N/15mm幅)を測定した。具体的には、試験体のシール部が上記試験機の2つのつかみ具の中央になるように、試験体を180度に開いて、試験体の両端を上記試験機の2つのつかみ具にそれぞれ取り付け、300mm/minの速度でシール部が破壊するまで引っ張り、最大強度(N)を求めた。15mm幅の試験体に対して測定された最大強度(N)を、ヒートシール強度(N/15mm幅)とした。
【0207】
<液中パーティクル数の測定方法>
三方シール袋の内面および第2の樹脂層の表面に付着した異物の個数(パーティクル数)を、測定装置としてパーティクルカウンタ(リオン社製、KE-40/KS-40AF)を用い、計測サイズ:0.2μm以上の条件にて、測定した。袋の作製は、クリーンクラス1000の環境で実施した。測定は、クリーンクラス100の環境で実施した。
【0208】
(液中パーティクル数の測定方法 袋の内面)
1.純水で測定装置内をパージ後(25mL×4回)に、
純水ブランクの液中パーティクル数を測定した。
2.実施例または参考例と同様にして30cm×30cmの三方シール袋を作製した。
3.ブランク数値確認済みの純水を三方シール袋内に注水し、三方シール袋の内面に純水を行きわたらせた後、三方シール袋を24時間静置した。
4.純水で測定装置内をパージ(25mL×4回)後に、上記「3.」後の三方シール袋内から採取した10mLの水について、液中パーティクル数を測定し、この液中パーティクル数から純水のブランク数値を差し引いて、三方シール袋の内面に付着した異物の個数(パーティクル数)を得た。
【0209】
(液中パーティクル数の測定方法 袋の第1の樹脂層剥離後の表面)
1.純水で測定装置内をパージ後(25mL×4回)に、
純水ブランクの液中パーティクル数を測定した。
2.ブランクフィルムを用いて、30cm×30cmのブランク袋を作製した。
3.実施例または参考例と同様にして20cm×20cmの三方シール袋を作製した。三方シール袋の開口部にヒートシールを施して密封した後、該袋の第1の樹脂層(剥離層)を剥離して、第2の樹脂層の表面(剥離面)が露出したサンプル袋を得た。ブランク袋内にサンプル袋を入れた試験袋1と、ブランク袋のみの試験袋2と、の2種類を用意した。
4.ブランク数値確認済みの純水を試験袋1のブランク袋内(サンプル袋の外側)に注水し、ブランク袋の内面およびサンプル袋の表面に純水を行きわたらせた後、試験袋1を24時間静置した。同様にして、ブランク数値確認済みの純水を試験袋2のブランク袋内に注水し、ブランク袋の内面に純水を行きわたらせた後、試験袋2を24時間静置した。
5.純水で測定装置内をパージ(25mL×4回)後に、上記「4.」後の試験袋1および試験袋2内からそれぞれ採取した10mLの水について、液中パーティクル数を測定した。試験袋1の液中パーティクル数から、純水のブランク数値および試験袋2の液中パーティクル数を差し引いて、サンプル袋の表面(三方シール袋の第2の樹脂層の表面(剥離面))に付着した異物の個数(パーティクル数)を算出した。
【0210】
【表1】
【符号の説明】
【0211】
1 …積層体
2 …チューブ状フィルム
10…第1の樹脂層
12…ポリオレフィン層
14…ヘテロ原子含有樹脂層
20…第2の樹脂層
22…密度が0.909g/cm3以下のポリエチレン層
23…中間層
24…熱融着性樹脂層
40…物品
50…包装袋
50a…収容部
51…上部
51a…上部シール部
52…下部
52a…下部シール部
53…側部
53a…側部シール部
54…表面シート
55…裏面シート
60…ハーフカット線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9