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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025287
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H01L21/78 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129927
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植茶 雅史
(72)【発明者】
【氏名】南雲 裕司
(72)【発明者】
【氏名】霜野 貴也
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA45
5F063CB02
5F063CB10
5F063CB28
5F063CC35
5F063DD34
5F063DD78
5F063DF12
(57)【要約】
【課題】チッピングが発生しにくい構造を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、半導体基板2と、半導体基板2の第1主面2a上に設けられている凸状のパターン構造6と、を備えており、第1側面3aから第1方向に沿って第1所定距離D1内にあるパターン構造6と、第2側面3bから第1方向に沿って第1所定距離D1内にあるパターン構造6と、が第2方向に伸びる線に対して対称であり、第3側面3cから第2方向に沿って第2所定距離D2内にあるパターン構造6と、第4側面3dから第2方向に沿って第2所定距離D2内にあるパターン構造6と、が第1方向に伸びる線に対して対称である。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1)であって、
第1主面(2a)と、前記第1主面に対向する第2主面(2b)と、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)と、を有している半導体基板(2)であって、前記側面が、前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含んでおり、前記側面が劈開面である、半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面上に設けられている凸状のパターン構造(6)と、
を備えており、
前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であり、
前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1所定距離が、前記第1方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W2)の2倍であり、
前記第2所定距離が、前記第2方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W1)の2倍である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の前記第2主面の残留応力が前記第1主面の残留応力よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1所定距離内及び第2所定距離内にある前記パターン構造が保護膜(7)である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置(1)の製造方法であって、
第1主面(2a)と第2主面(2b)を有する半導体ウェハ(2)の前記第1主面上に凸状のパターン構造(6)を形成する工程であって、前記半導体ウェハ内にマトリクス状に配置された複数の素子領域(3)の各々に前記パターン構造を形成する、パターン構造形成工程と、
前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向に伸びる複数の第1スクライブライン(12x)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向に伸びる複数の第2スクライブライン(12y)と、に沿って前記半導体ウェハを分割する工程であって、前記複数の第1スクライブラインと前記複数の第2スクライブラインに分割部材(22)を押し当てて前記半導体ウェハを分割することにより個片化された複数の半導体装置を形成する、分割工程と、
を備えており、
個片化された前記複数の半導体装置の各々は、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)であって、前記第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含む、側面を有する、半導体基板を備えており、
前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であり、
前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称である、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1所定距離が、前記第1方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W2)の2倍であり、
前記第2所定距離が、前記第2方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W1)の2倍である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記分割工程よりも前に、前記半導体ウェハの前記第2主面の前記複数の第1スクライブラインと前記複数の第2スクライブラインの各々に押圧部材(18)を押し当てることにより前記半導体ウェハ内にクラック(5)を形成するクラック形成工程、をさらに備えている、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記分割工程よりも前に、前記半導体ウェハの前記第1主面側に保護テープを貼り付ける貼付工程、をさらに備えている、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1所定距離内及び第2所定距離内にある前記パターン構造が保護膜(7)である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体ウェハの材料が炭化珪素である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体ウェハ内の前記複数の素子領域は、実素子領域(3A)と検査素子領域(3B)を含み、
前記検査素子領域の前記第1所定距離内及び前記第2所定距離内にある前記パターン構造の高さは、前記検査素子領域に隣接する前記実素子領域の前記第1所定距離内及び前記第2所定距離内にある前記パターン構造の高さと同一又はそれよりも高い、請求項6~11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法は、複数の素子領域がマトリクス状に配置された半導体ウェハを素子領域毎に個片化する工程を備えている。このような個片化工程において、スクライブアンドブレイク工法が採用されることがある。スクライブアンドブレイク工法は、隣り合う素子領域の境界に沿って脆弱部を形成した後に、境界に沿って分割部材を押し当てて半導体ウェハを分割する工法である。スクライブアンドブレイク工法は、脆弱部を起点とする劈開により半導体ウェハが分割されるので、比較的硬い材料に対しても有用である。また、スクライブアンドブレイク工法は、スクライブラインを狭くすることができるので、半導体ウェハ当たりの取り数を増加させることが可能なことから、製造コストを低減することができる。特許文献1には、スクライブアンドブレイク工法を採用した半導体装置の製造方法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-104578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクライブアンドブレイク工法では、分割部材を押し当てて半導体ウェハを分割するときに、チップの一部が欠けるチッピングという現象が発生してしまうことがある。本明細書では、チッピングが発生しにくい構造を備えた半導体装置、及び、チッピングの発生が抑えられる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置(1)は、第1主面(2a)と、前記第1主面に対向する第2主面(2b)と、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)と、を有している半導体基板(2)であって、前記側面が、前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含んでおり、前記側面が劈開面である、半導体基板と、前記半導体基板の前記第1主面上に設けられている凸状のパターン構造(6)と、を備えていてもよい。前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であってもよい。前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称であってもよい。この半導体装置は、半導体ウェハを分割して個片化されるときに、チッピングが生じにくい構造を備えている。
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1)の製造方法は、第1主面(2a)と第2主面(2b)を有する半導体ウェハ(2)の前記第1主面上に凸状のパターン構造(6)を形成する工程であって、前記半導体ウェハ内にマトリクス状に配置された複数の素子領域(3)の各々に前記パターン構造を形成する、パターン構造形成工程と、前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向に伸びる複数の第1スクライブライン(12x)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向に伸びる複数の第2スクライブライン(12y)と、に沿って前記半導体ウェハを分割する工程であって、前記複数の第1スクライブラインと前記複数の第2スクライブラインに分割部材(22)を押し当てて前記半導体ウェハを分割することにより個片化された複数の半導体装置を形成する、分割工程と、を備えていてもよい。個片化された前記複数の半導体装置の各々は、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)であって、前記第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含む、側面を有する半導体基板を備えていてもよい。前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であってもよい。前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称であってもよい。この半導体装置の製造方法では、前記分割工程において、隣接する素子領域の各々に均等な荷重が加わるので、チッピングの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半導体ウェハのレイアウトを模式的に表す平面図。
図2】(A)x軸方向に隣接する素子領域を含む断面図であって、パターン構造を模式的に示す断面図。(B)y軸方向に隣接する素子領域を含む断面図であって、パターン構造を模式的に示す断面図。
図3】4つの素子領域のレイアウトを模式的に表す拡大平面図。
図4】個片化された半導体装置のレイアウトを模式的に表す平面図。
図5】個片化された半導体装置のレイアウトを模式的に表す平面図。
図6】保護テープ貼付工程を説明するための図。
図7】クラック形成工程を説明するための図。
図8】分割工程を説明するための図。
図9】分割工程を説明するための図。
図10】分割工程を説明するための図。
図11】比較例の分割工程を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本明細書が開示する技術について説明する。図示明瞭化を目的として、図面中の繰り返し構造についてはその一部のみに符号を付す。以下では、相互に直交するxyz座標を用いて半導体ウェハ及び半導体装置の構造について説明する。x軸及びy軸が半導体ウェハ及び半導体装置の半導体基板の主面に平行に伸びており、z軸が半導体ウェハ及び半導体装置の半導体基板の厚み方向に平行に伸びている。
【0009】
図1に、半導体ウェハ2のレイアウトを表す平面図を模式的に示す。半導体ウェハ2の材料は、特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素、窒化物半導体又はシリコンであってもよい。この例では、半導体ウェハ2の材料が炭化珪素である。半導体ウェハ2内には複数の素子領域3がマトリクス状に配置されている。複数の素子領域3は、ハッチングが施されていない複数の実素子領域3Aと、ハッチングが施された複数の検査素子領域3B(「TEG(Test Element Group)領域」とも称される)と、を含む。
【0010】
実素子領域3Aは、素子構造が形成される領域であり、個片化された後に半導体装置となる領域である。実素子領域3Aに形成される素子構造は、特に限定されるものではないが、例えばMOSFET、IGBT又はダイオードであってもよい。この例では、実素子領域3Aに形成される素子構造がMOSFETである。
【0011】
検査素子領域3Bは、テストパターンが形成される領域である。検査素子領域3Bのテストパターンは、特に限定されるものではないが、例えば実素子領域3Aの素子構造を形成するときのプロセスを評価するためのテストパターンであってもよく、実素子領域3Aの素子構造の電気的特性を評価するためのテストパターンであってもよい。検査素子領域3Bは、その目的に応じて半導体ウェハ2内に適宜形成される。
【0012】
複数の素子領域3は、スクライブライン12によって区画されている。スクライブライン12は、x軸方向に伸びる複数の第1スクライブライン12xと、y軸方向に伸びる複数の第2スクライブライン12yと、を含む。複数の第1スクライブライン12xの各々は、y軸方向に相互に間隔を置いて伸びている。複数の第2スクライブライン12yの各々は、x軸方向に相互に間隔を置いて伸びている。スクライブライン12には、半導体ウェハ2を分割するときの分割予定線4が含まれる。分割予定線4は、実際に半導体ウェハ2の上に記された線ではなく、仮想的な線である。
【0013】
図2に、隣接する素子領域3を含む断面図を模式的に示す。図2(A)はx軸方向に隣接する素子領域3を含む断面図であり、図2(B)はy軸方向に隣接する素子領域3を含む断面図である。なお、図示される素子領域3は、実素子領域3Aと検査素子領域3Bのいずれであってもよい。即ち、図2(A)の断面図は半導体ウェハ2内においてx軸方向に隣接する任意の素子領域3を含む断面図を示しており、図2(B)の断面図は半導体ウェハ2内においてy軸方向に隣接する任意の素子領域3を含む断面図を示している。図2に示すように、半導体ウェハ2は、xy平面に平行に延びているとともにz軸方向に対向する第1主面2aと第2主面2bを含む。半導体ウェハ2の第1主面2a上には、第1主面2aから突出する凸状のパターン構造6が複数の素子領域3の各々に設けられている。素子領域3が実素子領域3Aの場合、実素子領域3Aに設けられているパターン構造6は、素子構造を構成する絶縁体(この例では、ポリイミドである)の保護膜、金属電極等のパターンである。なお、実素子領域3Aに設けられているパターン構造6は、複数の実素子領域3Aの間で共通形状である。素子領域3が検査素子領域3Bの場合、検査素子領域3Bに設けられているパターン構造6は、テストパターンとして形成された絶縁体(この例では、ポリイミドである)の保護膜、金属電極等のパターンである。
【0014】
スクライブライン12は、隣接する素子領域3の間であってパターン構造6が設けられていない領域として定義される。図2(A)に示すように、第2スクライブライン12yの幅は2×W2であり、素子領域3の各々の第2スクライブライン12の幅がW2である。図2(B)に示すように、第1スクライブライン12xの幅は2×W1であり、素子領域3の各々の第1スクライブライン12xの幅がW1である。なお、第1スクライブライン12xの幅W1と第2スクライブライン12yの幅W2は、同一の大きさであってもよく、異なる大きさであってもよい。
【0015】
図3に、半導体ウェハ2の第1主面2aのうち4つの素子領域3(この例では、4つの実素子領域3A)を含む拡大平面図を模式的に示す。4つの素子領域3の各々には、グレーで図示されたポリイミドの保護膜7と、保護膜7で囲まれたアルミニウムの複数の電極部8と、が設けられている。複数の電極部8は、一対の主電極と、ゲート信号及びセンサ信号の入出力のための複数の信号電極と、を含む。これら保護膜7と電極部8がパターン構造6を構成する。
【0016】
ここで、スクライブライン12とパターン構造6の関係について説明する。図4及び図5に、個片化された後の半導体装置1を示す。なお、スクライブライン12に沿って分割された半導体ウェハ2の各々は半導体基板と称する。後述の製造方法で説明するように、スクライブアンドブレイク工法を用いて分割された半導体装置1の半導体基板は、4つの劈開面を有している。第1側面3aと第2側面3bは、z軸方向に沿って第1主面2aと第2主面2bの間を延びているとともに第1主面2a及び第2主面2bに平行なx方向において対向している。第3側面3cと第4側面3dは、z軸方向に沿って第1主面2aと第2主面2bの間を延びているとともに第1主面2a及び第2主面2bに平行なy方向において対向している。
【0017】
図4に示すように、第1側面3aからx方向に沿って第1所定距離D1内にあるパターン構造と、第2側面3bからx方向に沿って第1所定距離D1内にあるパターン構造と、がy方向に伸びる線に対して対称である。この例では、第1所定距離D1内にあるパターン構造がポリイミドの保護膜7のみである。したがって、第1側面3aからx方向に沿って第1所定距離D1内にある保護膜7の構造と、第2側面3bからx方向に沿って第1所定距離D1内にある保護膜7の構造と、がy方向に伸びる線に対して対称である。即ち、y方向に伸びる線に対して対称な位置関係にある第1所定距離D1内の保護膜7の高さが同一である。なお、第1所定距離D1は、図2(A)に示すように、個片化された半導体装置1の第2スクライブライン12yの幅W2の2倍として定義される。
【0018】
図5に示すように、第3側面3cからy方向に沿って第2所定距離D2内にあるパターン構造と、第4側面3dからy方向に沿って第2所定距離D2内にあるパターン構造と、がx方向に伸びる線に対して対称である。この例では、第2所定距離D2内にあるパターン構造がポリイミドの保護膜7のみである。したがって、第3側面3cからy方向に沿って第2所定距離D2内にある保護膜7の構造と、第4側面3dからy方向に沿って第2所定距離D2内にある保護膜7の構造と、がx方向に伸びる線に対して対称である。即ち、x方向に伸びる線に対して対称な位置関係にある第2所定距離D2内の保護膜7の高さが同一である。なお、第2所定距離D2は、図2(B)に示すように、第1スクライブライン12xの幅W1の2倍として定義される。
【0019】
半導体ウェハ2内の複数の実素子領域3Aのパターン構造6は共通形状である。したがって、上記関係が成立していると、半導体ウェハ2内において隣接する実素子領域3Aの間では、スクライブライン12を間に置いて対向するパターン構造6が分割予定線4に対して対称となる。また、検査素子領域3Bのパターン構造は、所定距離D1,D2内において実素子領域3Aのパターン構造と共通形状となっていてもよい。この場合、上記関係が成立していると、半導体ウェハ2内において隣接する実素子領域3Aと検査素子領域3Bの間では、スクライブライン12を間に置いて対向するパターン構造6が分割予定線4に対して対称となる。以下で説明するように、上記関係が成立していると、半導体ウェハ2を個片化するときに、チッピングが抑えられるという効果が得られる。
【0020】
(半導体装置の製造方法)
本明細書が開示する半導体装置の製造方法では、半導体ウェハ2内の素子領域3の各々にパターン構造6を含む素子構造を形成した後に、スクライブアンドブレイク工法を利用して半導体ウェハ2を個片化して半導体装置1を製造する。以下、図面を参照してスクライブアンドブレイク工法について説明する。
【0021】
(保護テープ貼付工程及びクラック形成工程)
図6に示すように、保護テープ貼付工程では、半導体ウェハ2の第1主面2a側に保護テープ14を貼り付ける。保護テープ14は、半導体ウェハ2内の複数の素子領域3の各々に形成されたパターン構造6の表面に跨るように貼り付けられる。保護テープ14の材料は、特に限定されるものではないが、例えば樹脂等であってもよい。次に、半導体ウェハ2のうち保護テープ14が貼り付けられた面を下にして半導体ウェハ2をステージ16上に載置する。ステージ16は、不図示の真空吸着装置を有しており、これにより、半導体ウェハ2を吸着してステージ16に固定することができる。
【0022】
次に、図7に示すように、クラック形成工程では、半導体ウェハ2の第2主面2bに対してスクライビングホイール18を押し当てることにより、半導体ウェハ2にクラック5を伴う溝を形成する。なお、半導体ウェハ2の第2主面2bの全面には金属電極(図示省略)が形成されていてもよい。この場合、スクライビングホイール18は、その金属電極を介して半導体ウェハ2の第2主面2bに押し当てられる。スクライビングホイール18は、円板状の部材であり、支持装置(不図示)に回転可能に軸支されている。クラック形成工程では、半導体ウェハ2の第2主面2bにスクライビングホイール18を押し当てながらスクライビングホイール18を分割予定線4に沿って移動させる。スクライビングホイール18は、路面上を転がるタイヤのように半導体ウェハ2の第2主面2b上を転がる。スクライビングホイール18は、「押圧部材」の一例である。
【0023】
半導体ウェハ2の第2主面2bがスクライビングホイール18により押圧されると、半導体ウェハ2の第2主面2bの表層の領域に圧縮応力が生じる。スクライビングホイール18による押圧箇所には溝が形成される一方で、圧縮応力が生じた領域の直下では、半導体ウェハ2の内部に引張応力が生じる。引張応力は、圧縮応力が生じる領域の直下において、半導体ウェハ2の第2主面2bに沿って、分割予定線4から離れる方向に生じる。この引張応力により、半導体ウェハ2の内部に、半導体ウェハ2の厚み方向に延びるクラック5が形成される。クラック5は、半導体ウェハ2の第2主面2bの表層近傍に形成される。
【0024】
(分割工程)
次に、図8図10に示す分割工程を実施する。図8図10では、再び第1主面2a側を上にして半導体ウェハ2が描かれている。分割工程では、分割予定線4に沿ってブレイクバー22を押し当て、分割予定線4に沿って半導体ウェハ2を分割する。ここでは、まず、図8に示すように、半導体ウェハ2を2つの支持台24上に載置する。2つの支持台24は、間隔を空けて配置されている。半導体ウェハ2を支持台24に載置するときには、分割すべき位置(ブレイクバー22を押し当てる位置)の下方に当該間隔が位置するように、半導体ウェハ2が載置される。その後、図9に示すように、保護テープ14を介して半導体ウェハ2の第1主面2aにブレイクバー22を押し当てる。ブレイクバー22は、「分割部材」の一例である。
【0025】
ブレイクバー22の下方には支持台24が存在しないので、保護テープ14を介して半導体ウェハ2の第1主面2aにブレイクバー22を押し当てると、2つの支持台24の間隔内に入り込むように、半導体ウェハ2が撓む。ここで、クラック5は、半導体ウェハ2の第2主面2b側に形成されている。このため、半導体ウェハ2に第1主面2a側からブレイクバー22を押し当てると、押し当てられた部分(ライン)を軸として半導体ウェハ2が撓み、半導体ウェハ2の第2主面2b側ではクラック5に対して分割位置に隣接する2つの素子領域3を引き離す方向に力が加わる。また、上述したように、クラック5の周囲には引張応力が印加されている。このため、第1主面2aにブレイクバー22を押し当てると、クラック5が半導体ウェハ2の厚み方向に伸展し、クラック5を起点として、半導体ウェハ2が結晶面に沿って劈開する。これにより、半導体ウェハ2が分割される。分割工程では、上述のブレイクバー22を半導体ウェハ2の第1主面2aに押し当てる工程を、各分割予定線4に沿って繰り返し実施する。これにより、半導体ウェハ2を各素子領域3の境界に沿って分割することができる。その結果、図10に示すように、半導体ウェハ2が複数の半導体装置1に個片化される。
【0026】
以上に説明したように、スクライビングホイール18によりクラック5を形成して、ブレイクバー22により分割することで、半導体装置1を製造する。切削(ダイシング)ではなくクラック5を起点とする劈開により半導体ウェハ2が分割されるので、比較的硬い炭化珪素に対しても有用である。また、スクライブアンドブレイク工法は、スクライブライン12x、12yを狭くすることができるので、半導体ウェハ2当たりの取り数を増加させることが可能なことから、製造コストを低減することができる。
【0027】
ここで、図11を参照し、比較例の分割工程について説明する。この比較例は、隣接する素子領域3の第1主面2a上に形成されたパターン構造6が対称ではない例である。具体的には、分割予定線4から所定距離(図2のD1及びD2を参照)内にあるパターン構造6の最大高さが、図示左側の素子領域3よりも図示右側の素子領域3において低い(この例では、図示右側の素子領域3において、分割予定線4から所定距離内にパターン構造が形成されておらず、パターン構造6の高さが「0」である)。図11に示すように、パターン構造6が非対称の比較例では、保護テープ14を介して半導体ウェハ2の第1主面2aにブレイクバー22を押し当てたときに、隣接する素子領域3の各々に加わる荷重に差が生じる。分割予定線4から所定距離内にあるパターン構造6の最大高さが高い方の素子領域3に相対的に大きな荷重が加わる。このような荷重差は、パターン構造6の最大高さが高い方の素子領域3にチッピングを生じさせ得る。
【0028】
図2に示すように、本実施形態では、隣接する素子領域3において、分割予定線4から所定距離D1,D2内にあるパターン構造6が分割予定線4に対して対称に構成されている。このため、図9に示すように、保護テープ14を介して半導体ウェハ2の第1主面2aにブレイクバー22を押し当てたときに、隣接する素子領域3の各々に均等な荷重が加わる。この結果、本実施形態の分割工程では、チッピングの発生が抑えられる。なお、本実施形態では、所定距離D1の大きさについては、対応する第2スクライブライン12yの幅W2の2倍であり、所定距離D2の大きさについては、対応する第1スクライブライン12xの幅W1の2倍である。スクライブライン幅W1,W2の2倍である所定距離D1,D2内のパターン構造6が対称であれば、荷重差が十分に小さくなり、チッピングの発生を抑えることができる。なお、素子領域3のうちブレイクバー22によって荷重が加わる範囲は、ブレイクバー22の先端の曲率半径、保護テープ14の厚み及び保護テープ14内へのブレイクバー22の押し込み量に依存する。したがって、所定距離D1,D2は、「ブレイクバー22の先端の曲率半径」+「保護テープ14の厚み」-「保護テープ14内へのブレイクバー22の押し込み量」としてもよい。
【0029】
以下、本明細書が開示する技術の他の特徴について整理する。
【0030】
本明細書が開示する製造方法では、分割工程よりも前に、半導体ウェハ2の第2主面2bにスクライビングホイール18を押し当てることにより半導体ウェハ2内に溝及びクラック5を形成するクラック形成工程を実施する。半導体ウェハ2内に溝及びクラック5を形成するときに半導体ウェハ2の内部に生じた応力は、半導体ウェハ2を分割した後も残留応力として存在する。したがって、本明細書が開示する製造方法で製造された半導体装置1では、半導体基板2の第2主面2bの残留応力が第1主面2aの残留応力よりも高い。なお、このような残留応力が半導体基板2の第2主面2bに存在していても、半導体装置1の電気的特性に与える影響は小さい。なお、スクライビングホイール18を用いた溝及びクラック5を含む脆弱部の形成に代えて、例えばレーザ照射によって脆弱部を形成してもよい。
【0031】
実素子領域3Aのパターン構造6と検査素子領域3Bのパターン構造6は異なる。このため、従来構造は、実素子領域3Aにおいて所定距離D1,D2内にあるパターン構造6と検査素子領域3Bにおいて所定距離D1,D2内にあるパターン構造6は異なっており、隣接する実素子領域3Aと検査素子領域3Bの間において所定距離D1,D2内にあるパターン構造6は非対称である。本明細書が開示する技術では、検査素子領域3Bの所定距離D1,D2内にあるパターン構造6が実素子領域3Aの所定距離D1,D2内にあるパターン構造6と同一となるように設計される。これにより、隣接する実素子領域3Aと検査素子領域3Bの間において所定距離D1,D2内にあるパターン構造6が対称となり、チッピングの発生が抑えられる。なお、検査素子領域3Bの所定距離D1,D2内にあるパターン構造6の最大高さが、検査素子領域3Bに隣接する実素子領域3Aの所定距離D1,D2内にあるパターン構造6の最大高さよりも高くてもよい。この場合、検査素子領域3B内に優先的にチッピングが発生するので、実素子領域3A内に発生するチッピングを抑えることができる。
【0032】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0033】
(特徴1)
半導体装置(1)であって、
第1主面(2a)と、前記第1主面に対向する第2主面(2b)と、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)と、を有している半導体基板(2)であって、前記側面が、前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含んでおり、前記側面が劈開面である、半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面上に設けられている凸状のパターン構造(6)と、を備えており、
前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であり、
前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称である、半導体装置。
【0034】
(特徴2)
前記第1所定距離が、前記第1方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W2)の2倍であり、
前記第2所定距離が、前記第2方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W1)の2倍である、特徴1に記載の半導体装置。
【0035】
(特徴3)
前記半導体基板の前記第2主面の残留応力が前記第1主面の残留応力よりも高い、特徴1又は2に記載の半導体装置。
【0036】
(特徴4)
前記第1所定距離内及び第2所定距離内にある前記パターン構造が保護膜(7)である、特徴1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0037】
(特徴5)
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、特徴1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0038】
(特徴6)
半導体装置(1)の製造方法であって、
第1主面(2a)と第2主面(2b)を有する半導体ウェハ(2)の前記第1主面上に凸状のパターン構造(6)を形成する工程であって、前記半導体ウェハ内にマトリクス状に配置された複数の素子領域(3)の各々に前記パターン構造を形成する、パターン構造形成工程と、
前記第1主面及び前記第2主面に平行な第1方向に伸びる複数の第1スクライブライン(12x)と、前記第1主面及び前記第2主面に平行であって前記第1方向に直交する第2方向に伸びる複数の第2スクライブライン(12y)と、に沿って前記半導体ウェハを分割する工程であって、前記複数の第1スクライブラインと前記複数の第2スクライブラインに分割部材(22)を押し当てて前記半導体ウェハを分割することにより個片化された複数の半導体装置を形成する、分割工程と、
を備えており、
個片化された前記複数の半導体装置の各々は、前記第1主面と前記第2主面の間を延びている側面(3a,3b,3c,3d)であって、前記第1方向において対向する第1側面(3a)及び第2側面(3b)と、前記第2方向において対向する第3側面(3c)及び第4側面(3d)と、を含む、側面を有する、半導体基板を備えており、
前記第1側面から前記第1方向に沿って第1所定距離(D1)内にある前記パターン構造と、前記第2側面から前記第1方向に沿って前記第1所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第2方向に伸びる線に対して対称であり、
前記第3側面から前記第2方向に沿って第2所定距離(D2)内にある前記パターン構造と、前記第4側面から前記第2方向に沿って前記第2所定距離内にある前記パターン構造と、が前記第1方向に伸びる線に対して対称である、半導体装置の製造方法。
【0039】
(特徴7)
前記第1所定距離が、前記第1方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W2)の2倍であり、
前記第2所定距離が、前記第2方向に沿って前記側面から前記パターン構造まで計測されるスクライブライン幅(W1)の2倍である、特徴6に記載の半導体装置の製造方法。
【0040】
(特徴8)
前記分割工程よりも前に、前記半導体ウェハの前記第2主面の前記複数の第1スクライブラインと前記複数の第2スクライブラインの各々に押圧部材(18)を押し当てることにより前記半導体ウェハ内にクラック(5)を形成するクラック形成工程、をさらに備えている、特徴6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【0041】
(特徴9)
前記分割工程よりも前に、前記半導体ウェハの前記第1主面側に保護テープを貼り付ける貼付工程、をさらに備えている、特徴6~8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0042】
(特徴10)
前記第1所定距離内及び第2所定距離内にある前記パターン構造が保護膜(7)である、特徴6~9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0043】
(特徴11)
前記半導体ウェハの材料が炭化珪素である、特徴6~10のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0044】
(特徴12)
前記半導体ウェハ内の前記複数の素子領域は、実素子領域(3A)と検査素子領域(3B)を含み、
前記検査素子領域の前記第1所定距離内及び前記第2所定距離内にある前記パターン構造の高さは、前記検査素子領域に隣接する前記実素子領域の前記第1所定距離内及び前記第2所定距離内にある前記パターン構造の高さと同一又はそれよりも高い、特徴6~11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0045】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
1:半導体装置、 2:半導体基板、半導体ウェハ、 3:素子領域、 4:分割予定線、 6:パターン構造、 12x:第1スクライブライン、 12y:第2スクライブライン、 D1:第1所定距離、 D2:第2所定距離、 W1,W2:スクライブライン幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11