(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025295
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F01P 3/20 20060101AFI20250214BHJP
F01P 5/10 20060101ALI20250214BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20250214BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20250214BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F01P3/20 F
F01P5/10 C
F01P7/16 A
F01P7/16 504Z
F01P11/04 Z
B60K11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129943
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勇真
(72)【発明者】
【氏名】野口 智輝
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和晃
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC08
(57)【要約】
【課題】搭載された熱管理対象部の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン内の温度が変化するのを抑制することができる車両を提供する。
【解決手段】車両1には、熱管理の対象であるエンジン10が搭載されている。キャビン1bの上方は、キャビン1bの内方と外方とを区画するルーフ1cが配されている。ルーフ1cの外板と内装材との間隙には、外板側配管17とキャビン側配管18とが配されている。外板側配管17およびキャビン側配管18のそれぞれには、エンジン10を冷却する冷却液が流れる往路配管15および復路配管16に接続されている。往路配管15と外板側配管17との間には開閉バルブ19が設けられ、往路配管15とキャビン側配管18との間には開閉バルブ20が設けられている。キャビン側配管18は、外板側配管17よりも内装材の側に偏って配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱管理の対象である熱管理対象部が搭載された車両であって、
キャビンと外方とを区画するとともに、前記外方に面する外板と、前記外板に対して前記キャビン側に離間して前記キャビンに面する内装材とを有する区画パネル部と、
前記区画パネル部における前記外板と前記内装材との間隙に配された熱交換器と、
前記熱管理対象部と熱結合されるとともに、前記熱交換器と連結されてループ状の熱媒体の流通経路を構成する熱媒体流路と、
を備え、
前記熱交換器は、前記外板に熱結合された外板側熱交換器と、前記外板側熱交換器よりも前記内装材の側に偏って配置されたキャビン側熱交換器と、を含み、
前記熱媒体流路は、前記熱管理対象部から導出された前記熱媒体を前記外板側熱交換器に導入させるか否か、および、前記熱管理対象部から導出された前記熱媒体を前記キャビン側熱交換器に導入させるか否かをそれぞれ切り替える流路切替部を含む、
車両。
【請求項2】
前記熱媒体流路は、前記熱管理対象部からの前記熱媒体の導出経路である往路配管と、前記熱管理対象部への前記熱媒体の導入経路である復路配管と、前記熱交換器を経由しないように前記往路配管と前記復路配管とを繋ぐバイパス配管と、をさらに含み、
前記流路切替部は、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由するか否かも切り替える、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記熱媒体流路は、前記熱媒体を循環させるポンプをさらに含み、
該車両は、
前記熱管理対象部での前記熱媒体の温度を検出する第1温度センサと、
前記外板側熱交換器での前記熱媒体の温度を検出する第2温度センサと、
前記キャビン側熱交換器での前記熱媒体の温度を検出する第3温度センサと、
前記第1温度センサ、前記第2温度センサ、および前記第3温度センサからの検出情報と、当該車両の車速に関する情報と、前記キャビンの空調に関する情報と、前記キャビンの温度情報とを取得し、前記流路切替部および前記ポンプを制御するコントローラをさらに備える、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第1温度センサが検出した第1温度が第1閾値以下であって、且つ、前記第1温度が前記第3温度センサが検出した第3温度よりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器を経由し、且つ、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由しないように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、
前記第1温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値よりも高く、且つ、前記車速が閾値車速よりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器を経由するようにし、且つ、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由しないように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動する、
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1温度が前記第2閾値よりも高く、且つ、前記車速が前記閾値車速以下であると判定した場合であって、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器および前記外板側熱交換器を経由せず、且つ、前記バイパス配管を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動する、
請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記空調モードとして冷房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第1温度センサが検出した第1温度、前記第2温度センサが検出した第2温度、および前記第3温度センサが検出した第3温度の何れよりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、
前記空調モードとして暖房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第1温度、前記第2温度、および前記第3温度の全ての温度以下であると判定した場合に、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、
前記空調モードとして暖房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第3温度よりも高く、前記第2温度以下であると判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器および前記キャビン側熱交換器の双方を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動する、
請求項3に記載の車両。
【請求項7】
前記外板側熱交換器と前記キャビン側熱交換器との間に介挿された断熱材をさらに備える、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両。
【請求項8】
前記熱媒体は、液体であって、
前記熱交換器に対して前記キャビン側となる部分に配設された吸湿材をさらに備える、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両。
【請求項9】
前記熱媒体は、液体であって、
前記外板側熱交換器は、前記熱媒体が流通する管体である外板側配管により構成され、
前記キャビン側熱交換器は、前記熱媒体が流通する管体であるキャビン側配管により構成され、
前記外板側配管と前記キャビン側配管とは、前記管体内における前記熱媒体の流れ方向が互いに反対向きとなるように隣接配置された部分を有するように配設されている、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両。
【請求項10】
前記区画パネル部は、ルーフである、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両。
【請求項11】
前記熱媒体流路は、リアピラー内の経由するように配設されている、
請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記キャビン側熱交換器は、前記キャビン内の前席の上方に配置された前キャビン側熱交換器と、前記キャビン内の後席の上方に配置された後キャビン側熱交換器と、を含み、
前記熱媒体流路は、前記後キャビン側熱交換器を経由せずに前記往路配管と前記前キャビン側熱交換器とを繋ぐキャビン側バイパス配管をさらに備え、
前記流路切替部は、前記熱媒体が前記キャビン側バイパス配管を経由するか否かも切り替える、
請求項10に記載の車両。
【請求項13】
前記熱管理対象部は、エンジンおよびバッテリーの少なくとも一方である、
請求項1から請求項6に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に車両における熱管理に係る構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車をはじめとする車両には、熱の管理が必要な構成が種々搭載されている。例えば、車両における熱管理対象部の一例としてエンジンがある。エンジンは、所定の温度範囲内での駆動が必要となる。エンジンは、シリンダブロックやシリンダヘッドに設けられたウォータージャケットに冷却液を流通させ、暖められた冷却液をラジエータで冷却して戻すことで、所定の温度範囲内で駆動できるように構成されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、ルーフにソーラーパネルが配設された車両であって、ルーフにおけるソーラーパネルの下側に配管(ルーフ配管)を設置し、当該ルーフ配管にエンジンの冷却液が循環可能となるように構成された車両が開示されている。エンジンの駆動時において、ルーフ配管に溜まった冷却液をエンジンに戻すことにより、ルーフで暖められた冷却液によってエンジンを早期に暖機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の車両では、エンジン暖気後において、冷却液を冷却するためにルーフ配管を用いることが難しいと考えられる。即ち、上記特許文献1の車両においては、エンジン暖気後に冷却液をルーフ配管に送ることで、ルーフ外板を介して外気で冷却液の熱を逃がそうとした場合、ルーフ配管における冷却液はキャビン内の空気と熱交換してしまうことになる。この場合に、キャビンの温度が不所望に上昇することが考えられ、上記特許文献1に開示の車両では、エンジン暖気後において、冷却液を冷却するためにルーフ配管を用いることが難しいと考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、搭載された熱管理対象部の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン内の温度が変化するのを抑制することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両は、熱管理の対象である熱管理対象部が搭載された車両であって、キャビンと外方とを区画するとともに、前記外方に面する外板と、前記外板に対して前記キャビン側に離間して前記キャビンに面する内装材とを有する区画パネル部と、前記区画パネル部における前記外板と前記内装材との間隙に配された熱交換器と、前記熱管理対象部と熱結合されるとともに、前記熱交換器と連結されてループ状の熱媒体の流通経路を構成する熱媒体流路と、を備え、前記熱交換器は、前記外板に熱結合された外板側熱交換器と、前記外板側熱交換器よりも前記内装材の側に偏って配置されたキャビン側熱交換器と、を含み、前記熱媒体流路は、前記熱管理対象部から導出された前記熱媒体を前記外板側熱交換器に導入させるか否か、および、前記熱管理対象部から導出された前記熱媒体を前記キャビン側熱交換器に導入させるか否かをそれぞれ切り替える流路切替部を含む。
【0008】
上記態様に係る車両では、外板に熱結合された外板側熱交換器と、外板側熱交換器よりもキャビン寄りに配置されたキャビン側熱交換器とを区画パネル部に備え、流路切替部の切り替え制御により外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器のそれぞれに対して熱媒体を経由させるか否かを選択することができる。よって、上記態様に係る車両では、熱媒体の温度、キャビン内の温度、空調装置の設定条件等に基づいて流路切替部を切り替え制御することにより、搭載された熱管理対象部の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0009】
上記態様に係る車両において、前記熱媒体流路は、前記熱管理対象部からの前記熱媒体の導出経路である往路配管と、前記熱管理対象部への前記熱媒体の導入経路である復路配管と、前記熱交換器を経由しないように前記往路配管と前記復路配管とを繋ぐバイパス配管と、をさらに含み、前記流路切替部は、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由するか否かを切り替えてよい。
【0010】
上記態様に係る車両では、バイパス配管が設けられるとともに、当該バイパス配管を熱媒体が経由するか否かを流路切替部が切り替え可能であるので、熱媒体の温度、キャビン内の温度、空調装置の設定条件等に基づいて外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器の何れにも熱媒体を流通させないという選択が可能であり、熱管理対象部やキャビンの状況にきめ細かく対応することが可能である。即ち、熱媒体が外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器の何れも経由せず、熱媒体がバイパス配管を経由して循環するようにすることも可能である。
【0011】
上記態様に係る車両において、前記熱媒体流路は、前記熱媒体を循環させるポンプをさらに含み、該車両は、前記熱管理対象部での前記熱媒体の温度を検出する第1温度センサと、前記外板側熱交換器での前記熱媒体の温度を検出する第2温度センサと、前記キャビン側熱交換器での前記熱媒体の温度を検出する第3温度センサと、前記第1温度センサ、前記第2温度センサ、および前記第3温度センサからの検出情報と、当該車両の車速に関する情報と、前記キャビンの空調に関する情報と、前記キャビンの温度情報とを取得し、前記流路切替部および前記ポンプを制御するコントローラをさらに備えてもよい。
【0012】
上記態様に係る車両では、第1流路切替部、第2流路切替部、第3流路切替部、およびポンプを制御するコントローラを備えるので、各部における熱媒体の温度、キャビン内の温度、空調装置の設定条件等に基づいてコントローラが熱媒体の流通経路を制御することができる。
【0013】
上記態様に係る車両において、前記コントローラは、前記第1温度センサが検出した第1温度が第1閾値以下であって、且つ、前記第1温度が前記第3温度センサが検出した第3温度よりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器を経由するようにし、且つ、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由しないように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、前記第1温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値よりも高く、且つ、前記車速が閾値車速よりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器を経由するようにし、且つ、前記熱媒体が前記バイパス配管を経由しないように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動してもよい。
【0014】
上記態様に係る車両では、第1温度が第1閾値以下の冷間時には、熱媒体が外板側熱交換器を流通するように流路切替部を切り替え制御してポンプを駆動するので、外方からの熱で暖められた熱媒体で熱管理対象部の温度上昇を図ることができる。
【0015】
一方、第1温度が第2閾値よりも高い場合であって、車両の車速が閾値車速よりも高い場合にも、熱媒体が外板側熱交換器を流通するように流路切替部を切り替え制御してポンプを駆動するので、外板を介して熱媒体と外方の空気との間での熱交換が行われ、熱媒体の温度を低下させることができる。
【0016】
上記態様に係る車両において、前記コントローラは、前記第1温度が前記第2閾値よりも高く、且つ、前記車速が前記閾値車速以下であると判定した場合であって、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器および前記外板側熱交換器を経由せず、且つ、前記バイパス配管を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動してもよい。
【0017】
上記態様に係る車両では、第1温度が第2閾値よりも高い場合であって、車両の車速が閾値車速以下の場合には、上述のような走行風による熱媒体の温度低減が期待しにくいため、熱媒体が外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器の何れも経由せずバイパス配管を経由するようにすることができる。これにより、熱管理対処部で暖められた熱媒体により不所望にキャビンの温度が上昇するのを抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る車両において、前記コントローラは、前記空調モードとして冷房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第1温度センサが検出した第1温度、前記第2温度センサが検出した第2温度、および前記第3温度センサが検出した第3温度の何れよりも高いと判定した場合に、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、前記空調モードとして暖房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第1温度、前記第2温度、および前記第3温度の全ての温度以下であると判定した場合に、前記熱媒体が前記キャビン側熱交換器を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動し、前記空調モードとして暖房が選択され、且つ、前記キャビンの温度が、前記第3温度よりも高く、前記第2温度以下であると判定した場合に、前記熱媒体が前記外板側熱交換器および前記キャビン側熱交換器の双方を経由するように前記流路切替部を切り替え制御して前記ポンプを駆動してもよい。
【0019】
上記態様に係る車両では、空調モードとして冷房が選択されている場合であって、キャビンの温度が、第1温度、第2温度、および第3温度の何れよりも高いと判定した場合に、熱媒体がキャビン側熱交換器を経由するように流路切替部を切り替え制御してポンプを駆動するので、キャビン側熱交換器でキャビン内の空気に対して熱媒体が吸熱する。これより、キャビン内の冷却を促進することができる。
【0020】
一方、上記態様に係る車両では、空調モードとして暖房が選択されている場合であって、キャビンの温度が、第1温度、第2温度、および第3温度の全ての温度以下であると判定した場合に、熱媒体がキャビン側熱交換器を経由するように流路切替部を切り替え制御してポンプを駆動するので、キャビン側熱交換器でキャビン内の空気に対して熱媒体が放熱する。これにより、キャビン内の温度上昇を促進することができる。
【0021】
さらに、上記態様に係る車両では、空調モードとして暖房が選択されている場合であって、キャビンの温度が、第3温度よりも高く、且つ、第2温度以下であると判定した場合には、外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器の双方に熱媒体が流通するように流路切替部を切り替え制御するので、キャビン内の温度よりも高い外板側熱交換器の熱媒体によりキャビン内の温度上昇を促進することができる。
【0022】
上記態様に係る車両において、前記外板側熱交換器と前記キャビン側熱交換器との間に介挿された断熱材をさらに備えてもよい。
【0023】
上記態様に係る車両では、外板側熱交換器とキャビン側熱交換器との間に断熱材が介挿されているので、外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器の一方にだけ熱媒体を流通させた場合に、他方の熱交換器の熱媒体との間での不所望の熱交換が抑制される。よって、車両における高精度な熱管理を行うのに有効である。
【0024】
また、区画パネル部の内部に断熱材を配設することにより、外気温によりキャビン内の温度が影響され難くすることができる。
【0025】
上記態様に係る車両において、前記熱媒体は、液体であって、前記熱交換器に対して前記キャビン側となる部分に配設された吸湿材をさらに備えてもよい。
【0026】
上記態様に係る車両では、熱交換器に対してキャビン側の部分に吸湿材が配設されているので、衝突や配管損傷などの場合にも液体である熱媒体がキャビン内に漏れ出るのを抑制することができる。よって、熱媒体が高温である場合にも、キャビン内の乗員の安全性を確保するのに有効である。
【0027】
上記態様に係る車両において、前記熱媒体は、液体であって、前記外板側熱交換器は、前記熱媒体が流通する管体である外板側配管により構成され、前記キャビン側熱交換器は、前記熱媒体が流通する管体であるキャビン側配管により構成され、前記外板側配管と前記キャビン側配管とは、前記管体内における前記熱媒体の流れ方向が互いに反対向きとなるように隣接配置された部分を有するように配設されてもよい。
【0028】
上記態様に係る車両では、外板側熱交換器が外板側配管で構成され、キャビン側熱交換器がキャビン側配管で構成されているので、簡易な構成により省スペース化を図りながら区画パネル部に外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器を収容することができる。また、製造コストの上昇を抑制することもできる。
【0029】
上記態様に係る車両において、前記区画パネル部は、ルーフであってもよい。
【0030】
上記態様に係る車両では、区画パネル部としてルーフが選択されているので、キャビンと外方とを区画するパネル部の内で大面積を有する部分に外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器を配設することができる。よって、外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器での優れた熱交換を実現するのに有効である。
【0031】
上記態様に係る車両において、前記熱媒体流路は、リアピラー内の経由するように配設されてもよい。
【0032】
上記態様に係る車両では、熱媒体流路がリアピラー内を経由するように配設されているので、フロントピラー内にカーテンエアバッグが収容されているような場合にも、カーテンエアバッグと熱媒体流路との相互干渉を回避することができる。よって、熱媒体流路を構成する管体の径を細径化しなくてもよく、熱媒体の流れを阻害し難い。
【0033】
上記態様に係る車両において、前記キャビン側熱交換器は、前記キャビン内の前席の上方に配置された前キャビン側熱交換器と、前記キャビン内の後席の上方に配置された後キャビン側熱交換器と、を含み、前記熱媒体流路は、前記後キャビン側熱交換器を経由せずに前記往路配管と前記前キャビン側熱交換器とを繋ぐキャビン側バイパス配管をさらに備え、前記流路切替部は、前記熱媒体が前記キャビン側バイパス配管を経由するか否か切り替えることとしてもよい。
【0034】
上記態様に係る車両では、キャビン側熱交換器が前キャビン側熱交換器と後キャビン側熱交換器とを含み、キャビン側バイパス配管により後キャビン側熱交換器を経由させずに熱媒体を前キャビン側熱交換器へと送ることができる。このため、キャビン側熱交換器を用いてキャビン内の温度管理を行う場合において、前席にだけ乗員が着座しているような場合には、前席の上方に配置された前キャビン側熱交換器を用いて熱媒体とキャビン内の空気との間で熱交換が可能である。よって、高効率にキャビン内の熱管理を行うことができる。
【0035】
上記態様に係る車両において、前記熱管理対象部は、エンジンおよびバッテリーの少なくとも一方であってもよい。
【0036】
上記態様に係る車両では、エンジンおよびバッテリーの少なくとも一方を熱管理対象部としているので、車両の走行に伴って温度上昇しようとするエンジンやバッテリーの熱管理を行うのに有効である。
【発明の効果】
【0037】
上記の各態様に係る車両では、搭載された熱管理対象部の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン内の温度が変化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両の概略構成を示す平面図である。
【
図2】車両に搭載されている熱管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】車両のルーフにおける外板側配管およびキャビン側配管の配置形態を示す断面図である。
【
図4】熱管理装置におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図5】コントローラが実行するエンジンの熱管理方法を示すフローチャートである。
【
図6】コントローラが実行するキャビンの熱管理方法を示すフローチャートである。
【
図7】(a)は冷却液の第1流通形態を示すブロック図であり、(b)は冷却液の第2流通形態を示すブロック図である。
【
図8】(a)は冷却液の第3流通形態を示すブロック図であり、(b)は冷却液の第4流通形態を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る車両の概略構成を示す平面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る車両の概略構成を示す平面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る車両に搭載されている熱管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】(a)は本発明の第5実施形態に係る車両に搭載されている熱管理装置の一部構成を示す模式図であり、(b)は外板側配管およびキャビン側配管のそれぞれを流れる冷却液の温度変化を示すグラフである。
【
図13】本発明の第6実施形態に係る車両の概略構成を示す平面図である。
【
図14】本発明の第7実施形態に係る車両の概略構成を示す平面図である。
【
図15】本発明の第8実施形態に係る車両に搭載されている熱管理装置の一部構成を示す断面図である。
【
図16】本発明の第9実施形態に係る車両に搭載されている熱管理装置の一部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0040】
[第1実施形態]
1.車両1の概略構成
第1実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0041】
図1に示すように、車両1は、キャビン1bの前方のエンジンルーム1aに、車両1の走行駆動用としてのエンジン(熱管理対象部)10と、エンジン10を冷却するラジエータ11とが搭載されている。エンジン10とラジエータ11との間には、冷却液(熱媒体)をエンジン10からラジエータ11に導出する経路である導出管12と、冷却液をラジエータ11からエンジン10に還流させる経路である導入管13とが接続されている。導入管13には、冷却液を循環させるポンプ14が設けられている。
【0042】
さらに、車両1は、エンジン10側の端部で導入管13に接続された往路配管15と、エンジン10側の端部で導出管12に接続された復路配管16とを備える。往路配管15および復路配管16は、ラジエータ11、導出管12、および導入管13とともに、冷却液の流路(熱媒体流路)を構成する。
【0043】
往路配管15および復路配管16は、フロントピラー1d内に配設されて、キャビン1b上のルーフ(区画パネル部)1cまで延びるように配されている。ルーフ1cのルーフパネル(外板)とルーフトリム(内装材)との間隙に配設された外板側配管(外板側熱交換器)17およびキャビン側配管(キャビン側熱交換器)18に接続されている。
【0044】
車両1では、往路配管15および復路配管16を含む冷却液の流路と、外板側配管17およびキャビン側配管18とでループ状の冷却液の流通経路が構成されている。
【0045】
車両1において、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18を経由しないようにするバイパス配管21が設けられている。バイパス配管21は、一端が往路配管15に接続され、他端が復路配管16に接続されている。
【0046】
往路配管15における外板側配管17との接続部分あるいはその近傍には、往路配管15を流れる冷却液を外板側配管17に導入するか否かを切り替え可能な開閉バルブ19が設けられている。また、往路配管15におけるキャビン側配管18との接続部分あるいはその近傍には、往路配管15を流れる冷却液をキャビン側配管18に導入するか否かを切り替え可能な開閉バルブ20が設けられている。
【0047】
さらに、バイパス配管21には、往路配管15を流れる冷却液をバイパス配管21を経由して復路配管16に流すか否かを切り替え可能な開閉バルブ22が設けられている。
【0048】
なお、本実施形態では、開閉バルブ19,20,22をそれぞれ別々のバルブで構成しているが、1つのバルブでこれらを構成することもできる。即ち、往路配管15の冷却液を外板側配管17およびキャビン側配管18のそれぞれに導入するか否かと、冷却液がバイパス配管21を経由するか否かと、を1つの流路切替部で切り替え可能とすることも可能である。
【0049】
2.車両1における熱管理装置23
車両1においては、外板側配管17およびキャビン側配管18を含む冷却液の流通経路によってエンジン10およびキャビン1bの熱管理を実行可能な熱管理装置23が設けられている。車両1における熱管理装置23について、
図2を用いて説明する。
【0050】
図2に示すように、車両1における熱管理装置23は、上記の構成に加えて、温度センサ24~26およびコントローラ27を備える。温度センサ24は、エンジン10に取り付けられており、エンジン10内での冷却液の温度(第1温度)Tmを検出する。温度センサ25は、外板側配管17に取り付けられており、外板側配管17内での冷却液の温度(第2温度)Trを検出する。温度センサ26は、キャビン側配管18に取り付けられており、キャビン側配管18内での冷却液の温度(第3温度)を検出する。
【0051】
コントローラ27は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有し構成されている。コントローラ27は、メモリに予め格納されたファームウェアを実行することにより、温度センサ24~26からの各温度情報を参照しながら、ポンプ14の駆動、および各開閉バルブ19,20,22の開閉を制御する。なお、以下においては、温度センサ24を「エンジン部温度センサ」、温度センサ25を「外板側温度センサ」、温度センサ26を「キャビン側温度センサ」と記載する場合がある。また、開閉バルブ19を「外板側バルブ」、開閉バルブ20を「キャビン側バルブ」、開閉バルブ22を「バイパスバルブ」と記載する場合がある。
【0052】
3.ルーフ1cにおける外板側配管17およびキャビン側配管18の配置形態
ルーフ1cにおける外板側配管17およびキャビン側配管18の配置形態について、
図3を用いて説明する。
【0053】
図3に示すように、ルーフ1cは、外方側にルーフパネル(外板)28が配され、内方側にルーフトリム(内装材)29が配されている。ルーフパネル28とルーフトリム29とは間隙を空けて配されている。そして、ルーフパネル28とルーフトリム29との間隙には、断熱材30が挿設されている。
【0054】
断熱材30には、ルーフパネル28側に線状(
図3の紙面に直交する方向に延びる線状)の凹入部30aが形成され、ルーフトリム29側に線状(
図3の紙面に直交する方向に延びる線状)の凹入部30bが形成されている。
【0055】
断熱材30の凹入部30aには、外板側配管17が填め込まれている。
図3の拡大部分に示すように、外板側配管17は、凹入部30aに挿入された状態において、外周面17aの一部がルーフパネル28の内側面28aに当接するように配されている(A1部分)。
【0056】
断熱材30の凹入部30bには、キャビン側配管18が挿入されている。キャビン側配管18は、外板側配管17に対してキャビン1b側に偏って配置されている。また、キャビン側配管18は、外板側配管17との間に断熱材30が介挿されている。断熱材30の介挿により、キャビン側配管18と外板側配管17とで冷却液同士の伝熱が抑制される。
【0057】
図3の別の拡大部分に示すように、キャビン側配管18は、凹入部30bに挿入された状態において、外周面18aの一部がルーフトリム29の内側面29aに当接または近接するように配されている(A2部分)。
【0058】
4.コントローラ27の詳細構成
熱管理装置23におけるコントローラ27の詳細構成について、
図4を用いて説明する。
【0059】
車両1は、上記の各構成に加えて、空調装置31、キャビン内温度センサ32、および車速センサ33を備える。空調装置31は、少なくとも冷房モードと暖房モードとを実行可能な装置であって、キャビン1bの空調を実行する。
【0060】
キャビン内温度センサ32は、キャビン1b内部の温度を検出する温度センサであって、検出した温度情報をコントローラ27に入力する。車速センサ33は、車両1の走行速度を検出するセンサであって、検出した車速情報をコントローラ27に入力する。
【0061】
コントローラ27は、判定部271、ポンプ作動指令部272、キャビン側バルブ開閉指令部273、外板側バルブ開閉指令部274、およびバイパスバルブ開閉指令部275を有する。判定部271は、温度センサ24~26,32、空調装置31、および車速センサ33からの入力情報に基づいて演算処理を行い、各種判定を行う処理部である。
【0062】
ポンプ作動指令部272は、判定部271での判定結果に基づいてポンプ14の作動/停止を指令する処理部である。キャビン側バルブ開閉指令部273は、判定部271での判定結果に基づいて、キャビン側バルブ20の開弁/閉弁の切り替えを指令する処理部である。外板側バルブ開閉指令部274は、判定部271での判定結果に基づいて、外板側バルブ19の開弁/閉弁の切り替えを指令する処理部である。バイパスバルブ開閉指令部275は、判定部271での判定結果に基づいて、バイパスバルブ22の開弁/閉弁の切り替えを指令する処理部である。
【0063】
5.コントローラ27により熱管理方法
コントローラ27が実行する車両1の熱管理方法について、
図5~8を用いて説明する。なお、以下では、熱管理の対象がエンジン10である場合と、キャビン1Bである場合とに分けて説明する。
【0064】
(1)エンジン10の熱管理方法
図5に示すように、コントローラ27は、エンジン10の熱管理に際して、各種情報の取得を開始する(ステップST1)。コントローラ27が取得する情報は、
図4を用いて説明したように、温度センサ24~25および車速センサ33からの各情報である。そして、コントローラ27は、IGオンの状態では、各種情報を逐次に取得する。
【0065】
コントローラ27の判定部271は、エンジン10での冷却液の温度Tmが所定の閾値Tth1よりも高いか否かを判定する(ステップST2)。これにより、エンジン10の暖機が必要か否かを判定する。
【0066】
判定部271は、温度Tmが閾値Tth1以下であると判定した場合(ステップST2:YES)、続いて温度Tmが外板側配管17での冷却液の温度Trよりも低いか否かを判定する(ステップST3)。
【0067】
温度Tmが温度Trよりも低いと判定部271が判定した場合(ステップST3:YES)、外板側バルブ開閉指令部274は外板側バルブ19に対して開弁指令を発し(ステップST4)、バイパスバルブ開閉指令部275はバイパスバルブ22に対して閉弁指令を発する(ステップST5)。そして、ポンプ作動指令部272は、ポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST6)。このように温度が高い外板側配管17内の冷却液をエンジン10へと流すことによって、冷間状態のエンジン10の暖機促進を図ることができる。即ち、
図7(b)の矢印C1~C4で示すように、冷却液が外板側配管17を経由するようにバルブ19,20,22の開閉を行う。
【0068】
一方、温度Tmが温度Tr以上であると判定部271が判定した場合(ステップST3:NO)、判定部271はキャビン側バルブ20が開状態であるか否かを判定する(ステップST12)。キャビン側バルブ20が開状態である場合には(ステップST12:YES)、コントローラ27は、制御をリターンする。
【0069】
ステップST12の判定でキャビン側バルブ20が閉状態であると判定した場合には(ステップST12:NO)、ポンプ作動指令部272がポンプ14に対して作動停止指令を発し(ステップST13)、コントローラ27は、制御をリターンする。冷却液の循環を停止することで、早期にエンジン10の暖機を行うことができる。
【0070】
次に、ステップST2の判定で温度Tmが閾値Tth1よりも高いと判定部271が判定した場合(ステップST2:YES)、判定部271は、続いて温度Tmが別の閾値Tth2よりも高いか否かを判定する(ステップST7)。ここで、閾値Tth2は、閾値Tth1よりも高い値に設定されており、エンジン10の冷却が必要か否かの判定を行うのに用いられる閾値である。
【0071】
判定部271は、温度Tmが閾値Tth2よりも高いと判定した場合(ステップST7:YES)、続いて車両1の車速Vが閾値Vthよりも高いか否かを判定する(ステップST8)。なお、閾値Vthは、外板側配管17内の冷却液からルーフ1cの外方に放熱可能となるように設定された値である。
【0072】
ステップST8の判定で車速Vが閾値Vthよりも高いと判定部271が判定した場合(ステップST8:YES)、外板側バルブ開閉指令部274は外板側バルブ19に対して開弁指令を発し(ステップST4)、バイパスバルブ開閉指令部275はバイパスバルブ22に対して閉弁指令を発し(ステップST5)、ポンプ作動指令部272はポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST6)。これにより、
図7(b)の矢印C1~C4で示すように、冷却液が外板側配管17を経由するようにバルブ19,20,22の開閉を行うことにより、ルーフパネル28に沿って流れる走行風によって冷却液の冷却を促進することができ、エンジン10の冷却促進を図ることが可能となる。
【0073】
一方、ステップST8の判定で車速Vが閾値Vth以下であると判定部271が判定した場合(ステップST8:NO)、判定部271はキャビン側バルブ20が開状態であるか否かを判定する(ステップST9)。キャビン側バルブ20が開状態であると判定した場合には(ステップST12:YES)、コントローラ27は制御をリターンする。
【0074】
ステップST9の判定でキャビン側バルブ20が閉状態であると判定した場合には(ステップST12:NO)、バイパスバルブ開閉指令部275はバイパスバルブ22に対して開弁指令を発し(ステップST10)、外板バルブ開閉指令部274は外板側バルブ19に対して閉弁指令を発する(ステップST11)。そして、ポンプ作動指令部272は、ポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST6)。これにより、
図8(b)の矢印E1~E4で示すように、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18を経由させず、バイパス配管21を経由させてラジエータ11で冷却液を冷却する。
【0075】
(2)キャビンの熱管理方法
図6に示すように、コントローラ27は、キャビン1bの熱管理に際して、各種情報の取得を開始する(ステップST21)。コントローラ27が取得する情報は、
図4を用いて説明したように、温度センサ24~25,32および空調装置31からの各情報である。そして、コントローラ27は、IGオンの状態では、各種情報を逐次に取得する。
【0076】
コントローラ27の判定部271は、空調装置31からの情報を基に、空調モードとして冷房が選択されているか否かを判定する(ステップST22)。ステップST22の判定で冷房が選択されていると判定部271が判定した場合(ステップST22:YES)、判定部271は、続いてキャビン1b内の温度Taが、キャビン側配管18の冷却液の温度Tc、外板側配管17の冷却液の温度Tr、エンジン10の冷却液の温度Tmの何れよりも高いか否かを判定する(ステップST23、ステップST24、ステップST25)。
【0077】
温度Taが温度Tc,Tr,Tmの何れよりも高いと判定部271が判定した場合には(ステップST23:YES、ステップST24:YES、ステップST25;YES)、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に開弁指令を発し(ステップST26)、ポンプ作動指令部272はポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST27)。これにより、
図8(a)の矢印D1~D4で示すように、冷却液がキャビン側配管18を経由するようにして、キャビン1bから冷却液へと吸熱させることができ、キャビン1bの冷房を促進することができる。
【0078】
ステップST23の判定で温度Taが温度Tc以下であると判定部271が判定した場合(ステップST23:NO)、判定部271は、続いて温度Taが温度Trよりも高いか否かを判定する(ステップST28)。そして、ステップST28の判定で温度Taが温度Tr以下であると判定部271が判定した場合には(ステップST28:NO)、判定部271は、ステップST25の判定に戻る。
【0079】
一方、ステップST28の判定で温度Taが温度Trよりも高いと判定部271が判定した場合には(ステップST28:YES)、外板側バルブ開閉指令部274は外板側バルブ19の開弁指令を発し(ステップST29)、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に開弁指令を発し(ステップST26)、ポンプ作動指令部272はポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST27)。これにより、
図7(a)の矢印B1~B5で示すように、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18の双方を経由するようにして、キャビン1bから冷却液への吸熱によりキャビン1bの冷房を促進することができる。
【0080】
ステップST24およびステップST25の少なくとも一方の判定で“NO”と判定した場合には、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に閉弁指令を発し(ステップST36)、コントローラ27は制御をリターンする。
【0081】
ステップST22の判定で空調モードとして冷房が選択されていないと判定部271が判定した場合には(ステップST22:NO)、判定部271は、続いて空調モードとして暖房が選択されているか否かを判定する(ステップST30)。ステップST30の判定で空調モードとして暖房が選択されていないと判定部271が判定した場合には(ステップST30:NO)、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に閉弁指令を発し(ステップST36)、コントローラ27は制御をリターンする。
【0082】
一方、ステップST30の判定で空調モードとして暖房が選択されていると判定部271が判定した場合には(ステップST30:YES)、判定部271は、続いてキャビン1b内の温度Taが、キャビン側配管18の冷却液の温度Tc、外板側配管17の冷却液の温度Tr、エンジン10の冷却液の温度Tmの何れよりも高いか否かを判定する(ステップST31、ステップST32、ステップST33)。
【0083】
温度Taが温度Tc以下、温度Tr以下、温度Tm以下であると判定部271が判定した場合には(ステップST31:NO、ステップST32:NO、ステップST33;NO)、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に開弁指令を発し(ステップST26)、ポンプ作動指令部272はポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST27)。これにより、
図8(a)の矢印D1~D4で示すように、冷却液がキャビン側配管18を経由するようにして、冷却液の熱をキャビン1b内の空気へと伝達させて、キャビン1bの暖房を促進することができる。
【0084】
ステップST31の判定で温度Taが温度Tcよりも高いと判定部271が判定した場合(ステップST31:YES)、判定部271は、続いて温度Taが温度Trよりも高いか否かを判定する(ステップST34)。そして、ステップST34の判定で温度Taが温度Trよりも高いと判定部271が判定した場合には(ステップST31:YES)、判定部271は、ステップST33の判定に戻る。
【0085】
一方、ステップST34の判定で温度Taが温度Tr以下であると判定部271が判定した場合には(ステップST34:NO)、外板側バルブ開閉指令部274は外板側バルブ19の開弁指令を発し(ステップST35)、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に開弁指令を発し(ステップST26)、ポンプ作動指令部272はポンプ14に対して作動指令を発する(ステップST27)。これにより、
図7(a)の矢印B1~B5で示すように、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18の双方を経由するようにして、冷却液の熱をキャビン1b内の空気へと伝達させて、キャビン1bの暖房を促進することができる。
【0086】
ステップST32およびステップST33の少なくとも一方の判定で“YES”と判定した場合には、キャビン側バルブ開閉指令部273はキャビン側バルブ20に閉弁指令を発し(ステップST36)、コントローラ27は制御をリターンする。
【0087】
6.効果
本実施形態に係る車両1では、ルーフパネル(外板)28に熱結合された外板側配管17と、ルーフ1cのルーフパネル28とルーフトリム29との間において、外板側配管17よりもキャビン1b寄りに偏って配置されたキャビン側配管18とをルーフ1cに備え、開閉バルブ19,20の切り替え制御により外板側配管17およびキャビン側配管18のそれぞれに対して冷却液(熱媒体)を経由させるか否かを選択することができる。よって、車両1では、各箇所での冷却液の温度Tm,Tr,Tc、キャビン1b内の温度Ta、空調装置31の設定条件(モードが冷房か暖房か)等に基づいて開閉バルブ19,20を切り替え制御することにより、搭載されたエンジン(熱管理対象部)10の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン1b内の温度Taが変化するのを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る車両1では、バイパス配管21が設けられるとともに、当該バイパス配管21を冷却液が経由するか否かを開閉バルブ22が切り替え可能であるので、各箇所での冷却液の温度Tm,Tr,Tc、キャビン1b内の温度Ta、空調装置31の設定条件(モードが冷房か暖房か)等に基づいて外板側配管17およびキャビン側配管18の何れにも冷却液を流通させないという選択が可能であり、エンジン10やキャビン1bの状況にきめ細かく対応することが可能である。即ち、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18の何れも経由せず、冷却液がバイパス配管21を経由して循環するようにすることも可能である。
【0089】
また、本実施形態に係る車両1では、開閉バルブ19,20,22の開閉制御を実行するとともに、ポンプ14の作動制御を実行するコントローラ27を備えるので、各箇所における冷却液の温度Tm,Tr,Tc、キャビン1b内の温度Ta、空調装置31の設定条件(モードが冷房か暖房か)等に基づいてコントローラ27が冷却液の流通経路を制御することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る車両1では、エンジン10での冷却液の温度(第1温度)Tmが閾値(第1閾値)Tth1以下の冷間時には、冷却液が外板側配管17を経由するように開閉バルブ19,20,22を切り替え制御してポンプ14を駆動するので、車外からの熱で暖められた冷却液でエンジン10の暖機促進を図ることができる。
【0091】
一方、エンジン10での冷却液の温度Tmが閾値(第2閾値)Tth2よりも高い場合であって、車両1の車速Vが閾値(閾値車速)Vthよりも高い場合にも、冷却液が外板側配管17を流通するように開閉バルブ19,20,22を切り替え制御してポンプ14を駆動するので、ルーフパネル28を介して冷却液と車外の空気との間での熱交換が行われ、冷却液を介してエンジン10の温度を低下させることができる。
【0092】
また、本実施形態に係る車両1では、エンジン10での冷却液の温度Tmが閾値Tth2よりも高い場合であって、車両1の車速Vが閾値Vth以下の場合には、上述のような走行風による冷却液の温度低減が期待しにくいため、冷却液が外板側配管17およびキャビン側配管18の何れも経由せずバイパス配管21を経由するようにすることができる。これにより、エンジン10で暖められた冷却液により不所望にキャビン1b内の温度Taが上昇するのを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る車両1では、空調モードとして冷房が選択されている場合であって、キャビン1bの温度Taが、温度Tm,Tr,Tcの何れよりも高いと判定部271が判定した場合に、冷却液がキャビン側配管17を経由するように開閉バルブ19,20,22を切り替え制御してポンプ14を駆動するので、キャビン側配管17でキャビン1b内の空気に対して冷却液が吸熱する。これより、キャビン1b内の冷却を促進することができる。
【0094】
一方、車両1では、空調モードとして暖房が選択されている場合であって、キャビン1b内の温度Taが、温度Tm,Tr,Tcの全ての温度以下であると判定部271が判定した場合に、冷却液がキャビン側配管18を経由するように開閉バルブ19,20,22を切り替え制御してポンプ14を駆動するので、キャビン側配管18でキャビン1b内の空気に対して冷却液が放熱する。これにより、キャビン1b内の温度上昇を促進することができる。
【0095】
さらに、車両1では、空調モードとして暖房が選択されている場合であって、キャビン1bの温度Taが、温度Tcよりも高く、且つ、温度Tr以下であると判定部271が判定した場合には、外板側配管17およびキャビン側配管18の双方を冷却液が経由するように開閉バルブ19,20,22を切り替え制御するので、キャビン1b内の温度Taよりも高い外板側配管17の冷却液によりキャビン1b内の温度上昇を促進することができる。
【0096】
また、本実施形態車両1では、外板側配管17とキャビン側配管18との間に断熱材30が介挿されているので、外板側配管17およびキャビン側配管18の一方にだけ冷却液を流通させた場合に、他方の配管の冷却液との間での不所望の熱交換が抑制される。よって、車両1における高精度な熱管理を行うのに有効である。
【0097】
また、ルーフ1cにおけるルーフパネル28とルーフトリム29との間に断熱材30を配設することにより、外気温によりキャビン1b内の温度が影響され難くすることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る車両1では、外板側配管17を外板側熱交換器として構成し、キャビン側配管18をキャビン側熱交換器として構成しているので、簡易な構成により省スペース化を図りながらルーフ1cに外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器を収容することができる。また、製造コストの上昇を抑制することもできる。
【0099】
また、本実施形態に係る車両1では、外板側配管17およびキャビン側配管18をルーフ1c内に配設しているので、キャビン1bと外方とを区画するパネル部の内で大面積を有する部分に外板側配管17およびキャビン側配管18を配設することができる。よって、外板側配管17およびキャビン側配管18での高効率な熱交換を実現するのに有効である。
【0100】
また、本実施形態に係る車両1では、熱管理装置23の熱管理対象部としてエンジン10を含むので、冷間時における暖機や走行に伴って温度上昇しようとするエンジン10の熱管理を行うのに有効である。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る車両1では、エンジン10の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン1b内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0102】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両2の構成について、
図9を用いて説明する。なお、
図9では、上記第1実施形態と同じ部位には同じ符号を付している。そして、以下では、上記第1実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0103】
図9に示すように、本実施形態に係る車両2では、往路配管35および復路配管36が車体下部(例えば、サイドシル内)を経由してエンジンルーム2aからリアピラー2eの下方まで配設されている。そして、往路配管35および復路配管36は、リアピラー2e内を通りルーフ2cまで延びる。
【0104】
本実施形態に係る車両2は、往路配管35および復路配管36の配設形態が上記第1実施形態と異なるが、他の形態は上記第1実施形態と同じである。よって、本実施形態に係る車両2においても、エンジン10の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン2b内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る車両2では、往路配管35および復路配管36がリアピラー2eを通るようにしているので、フロントピラー内にカーテンエアバッグが収容されているような場合にも、カーテンエアバッグと往路配管35および復路配管36との相互干渉を回避することができる。よって、往路配管35および復路配管36を構成する管体の径を細径化しなくてもよく、冷却液の流れを阻害し難い。
【0106】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両4の構成について、
図10を用いて説明する。なお、
図10では、上記第1実施形態と同じ部位には同じ符号を付している。そして、以下では、上記第1実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0107】
図10に示すように、車両3は、熱管理対象部として車両3の走行駆動用に用いられるバッテリー40を備える。バッテリー40は、例えば、リチウムイオンバッテリであり、熱管理のための冷却液が流れる往路配管45および復路配管46が熱結合されている。
【0108】
往路配管45および復路配管46は、上記第2実施形態と同様に、リアピラー3e内を通るように配設されている。そして、ルーフ3cに配された外板側配管17およびキャビン側配管18に接続されている。
【0109】
バッテリー40は、一例として、車両3の後部のラゲッジルーム3fの下方に搭載されている。ただし、バッテリー40については、フロアパネルの下方に搭載されていてもよい。
【0110】
車両3は、外板側配管17およびキャビン側配管18を経由せずに、往路配管45と復路配管46とを結ぶバイパス配管41を備える。そして、バイパス配管41には、冷却液がバイパス配管41を経由するか否かを切り替える開閉バルブ42が設けられている。開閉バルブ42については、上記第1実施形態と同様に、コントローラ27が開閉制御を実行する。
【0111】
また、車両3は、往路配管45に設けられたポンプ44を備える。ポンプ44についても、コントローラ27が作動制御を実行する。
【0112】
本実施形態に係る車両3は、熱管理対象部としてバッテリー40が適用され、それ以外の構成において上記第1実施形態と同じである。よって、本実施形態に係る車両3においても、バッテリー40の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン3b内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0113】
なお、
図10では詳細な図示を省略しているが、往路配管45および復路配管46は、外板側配管17およびキャビン側配管18とは別に設けられたラジエータにも接続されている。ラジエータに対する往路配管45および復路配管46の接続形態は、上記第1実施形態と同様に、外板側配管17やキャビン側配管18に対して直列の形態であってもよいし、外板側配管17やキャビン側配管18に対して並列の形態であってもよい。
【0114】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る車両が備える熱管理装置53の構成について、
図11を用いて説明する。なお、
図11では、上記第1実施形態と同じ部位には同じ符号を付している。そして、以下では、上記第1実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0115】
図11に示すように、本実施形態に係る車両が搭載する熱管理装置53は、キャビン側配管58が、前キャビン側配管581と、後キャビン側配管582と、中継配管583と、バイパス配管584とを有する。前キャビン側配管581は、ルーフにおける前席の上方に配置されている。後キャビン側配管582は、ルーフにおける後席の上方に配置されている。中継配管583は、冷却液の流路における前キャビン側配管581と後キャビン側配管582とを繋ぐ配管である。バイパス配管584は、後キャビン側配管583を経由せずに、往路配管15と前キャビン側配管581とを繋ぐ配管である。
【0116】
往路配管15と後キャビン側配管582との間には、開閉バルブ60が設けられている。また、バイパス配管584には、開閉バルブ61が設けられている。開閉バルブ60,61は、コントローラにより切り替え制御される。
【0117】
本実施形態に係る車両の熱管理装置53は、前キャビン側配管581と後キャビン側配管582とを有するキャビン側配管58を備える点で上記第1実施形態と異なるが、それ以外の構成において上記第1実施形態と同じである。よって、本実施形態に係る車両でも、エンジン10の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態に係る車両では、キャビン側配管58が前キャビン側配管581と後キャビン側配管582とを含み、バイパス配管(キャビン側バイパス配管)584により後キャビン側配管582を経由させずに冷却液を前キャビン側配管581へと送ることができる。このため、キャビン側配管58を用いてキャビン内の温度管理を行う場合において、前席にだけ乗員が着座しているような場合には、前席の上方に配置された前キャビン側配管581だけを用いて冷却液とキャビン内の空気との間で熱交換が可能である。よって、高効率にキャビン内の熱管理を行うことができる。
【0119】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る車両が備える熱管理装置63の構成について、
図12を用いて説明する。なお、
図12(a)では、熱管理装置63の内の外板側配管67とキャビン側配管68とを抜き出して図示している。図示を省略している部位については、上記第1実施形態と同じ構成を備える。
【0120】
図12(a)に示すように、本実施形態に係る車両が搭載する熱管理装置63についても、ルーフに外板側配管67とキャビン側配管68とが配設されている。外板側配管67およびキャビン側配管68のそれぞれは、平面視で梯状をおり、車幅方向の一方(運転席側または助手席側の一方)から他方(運転席側または助手席側の他方)に延びる車幅方向延伸部671,681を複数有する。
【0121】
外板側配管67の車幅方向延伸部671と、キャビン側配管68の車幅方向延伸部681とは、車両の前後方向において、対をなすように近接配置されている。そして、近接配置された外板側配管67の車幅方向延伸部671とキャビン側配管68の車幅方向延伸部681とでは、内部を流通する冷却液の流れ方向が逆向きとなるように配されている(矢印F1,F2)。即ち、近接配置された外板側配管67の車幅方向延伸部671とキャビン側配管68の車幅方向延伸部681とでは、冷却液が向流の関係をもって流通するように構成されている。
【0122】
図12(b)に、外板側配管67の車幅方向延伸部671を流れる冷却液の温度変化を線LN1で表し、キャビン側配管68の車幅方向延伸部681を流れる冷却液の温度変化を線LN2で表す。この場合に、車幅方向延伸部671においては、線LN1で示すように、運転席側から助手席側へと流れるのに従って(矢印F3)、冷却液の温度はT1からT2へと変化する。車幅方向延伸部681においては、線LN2で示すように、助手席側から運転席側へと流れるのに従って(矢印F4)、冷却液の温度はT3からT4へと変化する。
【0123】
ここで、車両衝突時においては、ルーフに設けられた外板側配管67およびキャビン側配管68が破損することも考えられる。このような場合に、本実施形態に係る車両の熱管理装置63では、外板側配管67の車幅方向延伸部671とキャビン側配管68の車幅方向延伸部681とを
図12(a)に示すような形態で配設することで、破損した車幅方向延伸部671,681から冷却液が漏洩したとしても、キャビンの乗員に高温の冷却液が漏れ出るのを抑制することができる。
【0124】
具体的に、
図12(b)に示すように、線LN1と線LN2とは逆の傾きを有するので、車幅方向延伸部671から漏洩した冷却液と車幅方向延伸部681から漏洩した冷却液とが混じり合うことにより(矢印F5,F6)、線LN3で示すように車幅方向の全域で高温の冷却液が冷やされる。このため、仮に外板側配管67およびキャビン側配管68が破損した場合にも、比較的低い温度の冷却液しかキャビンに漏れ出ないようにすることができる。
【0125】
なお、本実施形態に係る車両は、近接配置された外板側配管67の車幅方向延伸部671とキャビン側配管68の車幅方向延伸部681とが向流の関係をもって冷却液が流通するようにしている点を除き、上記第1実施形態と同じ構成が採用される。よって、本実施形態に係る車両も、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0126】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る車両4の構成について、
図13を用いて説明する。なお、
図13では、上記第1実施形態と同じ部位には同じ符号を付している。そして、以下では、上記第1実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0127】
図13に示すように、本実施形態に係る車両4において、往路配管15は、上記第1実施形態と同様に、エンジンルーム4aから左側のフロントピラー4d内を通りルーフ4cに設けられた外板側配管17およびキャビン側配管18に接続されている。
【0128】
これに対して、復路配管56は、ルーフ4cから右側のフロントピラー4gを通りエンジンルーム4aへと配設されている。即ち、上記第1実施形態では、左側のフロントピラー1d内を往路配管15および復路配管16を通していたのに対して、本実施形態では、往路配管15と復路配管56とを左右のフロントピラー4d,4gに振り分けて通している。
【0129】
本実施形態に係る車両4では、上記のように、往路配管15と復路配管56とを左右のフロントピラー4d,4gに振り分けて通しているので、配管15,56がフロントピラー4d,4g内でカーテンエアバッグなどと干渉するのを抑制することができる。また、フロントピラー4d,4g内でのカーテンエアバッグなどとの干渉を避けるために配管15,56を細径化しなくても、フロントピラー4d,4gをキャビン4b側などに膨出させる必要もない。よって、キャビン4bを圧迫するのも抑制することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、左側のフロントピラー4d内に往路配管15を通し、右側のフロントピラー4g内に復路配管56を通すこととしたが、逆に、左側のフロントピラー4d内に袋配管56を通し、右側のフロントピラー4g内に往路配管15を通すこととしてもよい。
【0131】
また、左右の一方側のリアピラー内に往路配管15を通し、左右の他方側のリアピラー内に復路配管56を通すこととしてもよい。
【0132】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る車両5の構成について、
図14を用いて説明する。なお、
図14では、上記第1実施形態と同じ部位には同じ符号を付している。そして、以下では、上記第1実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0133】
図14に示すように、本実施形態に係る車両5では、復路配管66がリアピラー5h内を通り、ドア下のサイドシル内からエンジンルーム5aへと配設されている。往路配管15は、上記第1実施形態と同様に、エンジンルーム5aからフロントピラー5d内を通りルーフ5cへと配設されている。
【0134】
本実施形態に係る車両5でも、外板側配管77およびキャビン側配管78のそれぞれが平面視で梯状をしている。ただし、外板側配管77は車両前後方向に延びるように配設された複数本の前後方向延伸部772を有し、キャビン側配管78は車両前後方向に延びるように配設された複数本の前後方向延伸部781を有する。
【0135】
往路配管15は、ルーフ5cの前部で外板側配管77およびキャビン側配管78に接続され、復路配管66は、ルーフ5cの後部で外板側配管77およびキャビン側配管78に接続されている。
【0136】
本実施形態に係る車両5は、復路配管66の配設形態と、外板側配管77およびキャビン側配管78の各前後方向延伸部771,781の延伸方向が上記第1実施形態と異なるが、それ以外の構成において上記第1実施形態と同じである。よって、本実施形態に係る車両でも、エンジン10の熱管理を実行しながら、不所望にキャビン5b内の温度が変化するのを抑制することができる。
【0137】
また、本実施形態に係る車両5では、復路配管66の配設形態と、外板側配管77およびキャビン側配管78のそれぞれが、車両の前後方向に延びるように配設された前後方向延伸部771,781を備えるので、車両5の加速時および減速時に内部の冷却液に慣性力が働く。このため、長期の使用などにより前後方向延伸部771,781内において冷却液の成分や埃などを原因とする固化物が管内壁に付着するのを抑制することもできる。
【0138】
[第8実施形態]
第8実施形態に係る車両が備える熱管理装置73の構成について、
図15を用いて説明する。なお、
図15では、熱管理装置73の内の外板側配管87とキャビン側配管88の一部構成を抜き出して図示している。図示を省略している部位については、上記第1実施形態と同じ構成を備える。
【0139】
図15に示すように、本実施形態に係る車両の熱管理装置73では、互いに間隙SP1を空けて配された外板部871と内板部872とで外板側配管87が構成されている。同様に、キャビン側配管88も、互いに間隙SP2を空けて配された外板部881と内板部882とで構成されている。
【0140】
外板側配管87における外板部871は、ルーフパネル28と当接するように配されている。これにより、外板側配管87は、ルーフパネル28に熱結合されている。キャビン側配管88における外板部881は、ルーフトリム29と当接するように配されている。これにより、キャビン側配管88は、ルーフトリム29に熱結合されている。
【0141】
外板側配管87の内板部872とキャビン側配管88の内板部882との間には、断熱材30が介挿されている。
【0142】
外板側配管87の外板部871は、間隙SP1に面する面から下方に突設され、互いが並行するように延びる複数条のフィン871aを有する。外板側配管87の内板部872は、間隙SP1に面する面から上方に突設され、互いが並行するように延びる複数条のフィン872aを有する。これにより、外板側配管87内における冷却液が淀みなく流れるように整流することができる。
【0143】
同様に、キャビン側配管88の外板部881は、間隙SP2に面する面から上方に突設され、互いが並行するように延びる複数条のフィン881aを有する。外板側配管87の内板部882は、間隙SP2に面する面から下方に突設され、互いが並行するように延びる複数条のフィン882aを有する。これにより、外板側配管88内における冷却液が淀みなく流れるように整流することができる。
【0144】
本実施形態に係る車両の熱管理装置73は、2枚の板部871,872で構成された間隙SP1を冷却液の流路とし、2枚の板部881,882で構成された間隙SP2を冷却液の流路としている点を除き、上記第1実施形態と同じ構成が採用される。よって、本実施形態に係る車両も、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0145】
[第9実施形態]
第9実施形態に係る車両が備える熱管理装置83の構成について、
図16を用いて説明する。なお、
図16では、熱管理装置83の内の外板側配管17およびキャビン側配管18とその周辺部分の一部構成を抜き出して図示している。図示を省略している部位については、上記第1実施形態と同じ構成を備える。
【0146】
図16に示すように、本実施形態に係る車両の熱管理装置83では、断熱材30およびキャビン側配管18とルーフトリム29との間に吸湿材84が介挿されている。吸湿材84を構成する材料としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)スポンジや、ウレタンスポンジや、ポリオレフィンスポンジなどが採用される。
【0147】
本実施形態に係る車両の熱管理装置83は、ルーフにおけるルーフトリム29の内側に吸湿材84を設けている点を除き、上記第1実施形態と同じ構成が採用される。よって、本実施形態に係る車両も、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0148】
また、本実施形態では、ルーフにおけるルーフトリム29の内側に吸湿材84を設けているので、仮に車両の衝突により配管17,18が破損した場合や、長期の使用により配管17,18に穴が生じたような場合にも、配管17,18から漏洩した冷却液は吸湿材84で吸収される。よって、仮に配管17,18から冷却液が漏洩するような事態が生じても、キャビンに冷却液が漏出するのを抑制することができる。
【0149】
ここで、吸湿材84は、ルーフにおけるルーフパネル28とルーフトリム29との間の空間に存在する水分や、キャビンなどから浸入する水分なども吸収する。このため、配管17,18から冷却液が漏洩しなくても徐々に吸湿する。このため、一定の期間ごとに、外板側配管17やキャビン側配管18に高温の冷却液を流して、吸湿材84の除湿を行うようにしてもよい。吸湿材84の除湿を行うタイミングとしては、所定の期間を経過するごとや、車両の停止期間が所定の期間を超えた場合に次の駆動時としてもよい。
【0150】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第9実施形態では、往路配管15,45と外板側配管17,67,77,87との間に開閉バルブ19を設け、往路配管15,45とキャビン側配管18,58,68,78,88との間に開閉バルブ20,60,61を設け、バイパス配管21に開閉バルブ22を設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つの切替バルブにより、往路配管と外板側配管およびキャビン側配管との間の開閉切り替え、およびバイパス配管の開閉切り替えを行うようにしてもよい。
【0151】
また、上記第1実施形態から上記第9実施形態では、ルーフ1c,2c,3c,4c,5cに外板側配管17,67,77,87およびキャビン側配管18,58,68,78,88を配設することとしたが、本発明は、外板側配管(外板側熱交換器)およびキャビン側配管(キャビン側熱交換器)の配設箇所について、これに限定されない。例えば、側部のドアや、リアハッチ、さらにはフロアパネルなどを熱交換器の配設箇所である区画パネル部とすることも可能である。
【0152】
また、上記第1実施形態から上記第9実施形態では、熱媒体の一例として冷却液を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジンが搭載された車両などにおいて、エンジン冷却用の冷却液とは別の熱媒体を外板側熱交換器およびキャビン側熱交換器に流通させるようにしてもよい。なお、冷却液とは別の熱媒体としては、沸点が冷却液よりも低い物質などを採用して、低温の熱を外方やキャビン内の空気などと熱交換することとしてもよい。
【0153】
また、上記第1実施形態から上記第9実施形態では、復路配管16,46と外板側配管17,67,77,87およびキャビン側配管18,58,68,78,88との接続部分については、逆止弁を設けるなどの構成を採用しなかったが、本発明では、熱媒体の逆流を防ぐ観点から、各接続部分あるいは一方の接続部分に逆止弁を設けてもよい。
【0154】
また、上記第1実施形態から上記第9実施形態では、ルーフパネル(外板)28に対して外板側配管17,67,77,87が当接するように構成したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ルーフの外板と外板側熱交換器との間に伝熱シートを介挿させることとしてもよい。この場合にも、外板と外板側熱交換器を流通する熱媒体との間での熱結合を図ることができる。
【0155】
同様に、ルーフの内装材とキャビン側熱交換器を流通する熱媒体との間についても必ずしも接している必要はなく、内装材とキャビン側熱交換器との間で熱結合が図られていればよい。
【符号の説明】
【0156】
1~5 車両
1c,2c,3c,4c,5c ルーフ(区画パネル部)
10 エンジン(熱管理対象部)
14,44 ポンプ
15,45 往路配管
16,46 復路配管
17,67,77,87 外板側配管(外板側熱交換器)
18,58,68,78,88 キャビン側配管(キャビン側熱交換器)
19,20,22,60,61 開閉バルブ
23,63,73,83 熱管理装置
24~26 温度センサ
27 コントローラ
28 ルーフパネル(外板)
29 ルーフトリム(内装材)
30 断熱材
40 バッテリー(熱管理対象部)
84 吸湿材
581 前キャビン側配管
582 後キャビン側配管