(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025305
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129960
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立田 典久
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川田 拓哉
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS13
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT27
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】多関節ロボットの旋回部周辺を省スペースにする。
【解決手段】多関節ロボット1は、複数の関節を有するロボットアーム10と、ロボットアーム10を支持する支持面26を有する旋回部2と、上下方向に延びる第1軸線O1に沿って支持面26の上方又は下方に位置し、旋回部2を第1軸線O1まわりに旋回させる減速機3と、第1軸線O1を水平方向にずらした第2軸線O2まわりに回転しかつ減速機3に連結されたシャフト41と、シャフト41を収容しかつ旋回部2に支持されたケース42とを有し、ケース42が、支持面26を基準にして、上下方向において減速機3と同じ側に位置するモータ4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節を有するロボットアームと、
前記ロボットアームを支持する支持面を有する旋回部と、
上下方向に延びる第1軸線に沿って前記支持面の上方又は下方に位置し、前記旋回部を前記第1軸線まわりに旋回させる減速機と、
前記第1軸線を水平方向にずらした第2軸線まわりに回転しかつ前記減速機に連結されたシャフトと、前記シャフトを収容しかつ前記旋回部に支持されたケースとを有し、前記ケースが、前記支持面を基準にして、上下方向において前記減速機と同じ側に位置するモータと、を備える、多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載された多関節ロボットにおいて、
前記減速機及び前記ケースは、前記支持面の下方に位置する、多関節ロボット。
【請求項3】
請求項2に記載された多関節ロボットにおいて、
前記旋回部は、上下方向に延びかつ前記ケースが通る貫通孔を有する、多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1に記載された多関節ロボットにおいて、
前記シャフトを前記減速機に連結するベルトを備える、多関節ロボット。
【請求項5】
請求項1に記載された多関節ロボットにおいて、
前記旋回部は、
前記第1軸線に沿って前記減速機が位置する第1端と、
前記ロボットアームを支持する第2端と、を有し、
前記ロボットアームは、前記第1軸線及び前記第2軸線に平行な第1関節軸まわりに旋回し、
前記第2軸線は、前記水平方向において、前記第2端よりも前記第1端に近接する、多関節ロボット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された多関節ロボットにおいて、
前記ロボットアームは、7軸かつ垂直多関節式のロボットアームである、多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多関節ロボットの一例を開示している。特許文献1に開示された多関節ロボットは、第一腕部と、第二腕部と、第三腕部と、旋回部と、アクチュエータと、を備えている。第一腕部、第二腕部及び第三腕部は、互いに直列に接続されている。旋回部は、第一腕部の基端部に接続されている。アクチュエータは、旋回部を、鉛直な軸線まわりに旋回させる。アクチュエータは、例えば電動機、減速機及びブレーキにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたような多関節ロボットの場合、旋回部の軸線付近にアクチュエータを配置することが考えられる。しかしながら、例えば鉛直な軸線上にアクチュエータを配置してしまうと、旋回部周辺の寸法が、他の場所にアクチェータを配置した場合に比して上下方向に長くなる可能性がある。寸法が長くなることは、旋回部周辺を省スペースにする上で不都合である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示する技術は、多関節ロボットに関する。前記多関節ロボットは、複数の関節を有するロボットアームと、前記ロボットアームを支持する支持面を有する旋回部と、上下方向に延びる第1軸線に沿って前記旋回部の上方又は下方に位置し、前記旋回部を前記第1軸線まわりに旋回させる減速機と、前記第1軸線を水平方向にずらした第2軸線まわりに回転しかつ前記減速機に連結されたシャフトと、前記シャフトを収容しかつ前記旋回部に支持されたケースとを有し、前記ケースが、前記支持面を基準にして、上下方向において前記減速機と同じ側に位置するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
前記多関節ロボットによれば、旋回部周辺を省スペースにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図3は、変形例に係る多関節ロボットの
図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、多関節ロボットの実施形態を説明する。以下の実施形態は例示である。
【0009】
(全体構成)
図1は、多関節ロボット1の側面図である。多関節ロボット1は、例えば物流分野に用いられる。具体的に、
図1に例示する多関節ロボット1は、物品の積み降ろしに用いることができる。なお、多関節ロボット1の用途は、物流分野に限定されない。また、多関節ロボット1は、設置面F上に設置されている。言い換えると、設置面Fが、多関節ロボット1を下方から支持している。設置面Fは、物品の積み降ろし場、工場等の床面としてもよい。
【0010】
なお、以下の記載における上下方向とは、
図1の両矢印D1に示すように、多関節ロボット1の高さ方向を指す。上下方向は、
図1の紙面上での上下方向に相当する。同様に、以下の記載における水平方向とは、
図1の両矢印D2に示すように、前記上下方向に直交する方向を指す。水平方向は、
図1の紙面上での左右方向に相当する。
【0011】
図1に示すように、多関節ロボット1は、ロボットアーム10と、旋回部2と、減速機3と、モータ4と、第1ベース5と、を備えている。ロボットアーム10は、複数の関節を有している。旋回部2は、ロボットアーム10を支持する支持面26を有している。減速機3は、旋回部2を第1軸線O1まわりに旋回させる。後述のように、第1軸線O1は、上下方向に延びる軸線である。モータ4は、減速機3を介して旋回部2に動力を供給する。第1ベース5は、上下方向において、設置面Fと旋回部2との間に介在している。なお、第1ベース5は、多関節ロボット1において必須の要素ではない。
【0012】
物品の積み降ろしに用いられる場合、多関節ロボット1は、いわゆる搬送コンベアCを利用してもよい。搬送コンベアCは、例えば旋回部2の直上まで伸びている。多関節ロボット1及び搬送コンベアCは、物品を搬送するための搬送システムを構成している。
【0013】
ロボットアーム10は、第2ベース11を備えている。第2ベース11は、ロボットアーム10の基端部である。第2ベース11は、ベース本体111と、支持部112と、を有している。ベース本体111は、平らな上面を有している。支持部112は、ベース本体111の上面に固定されている。なお、第2ベース11は、必須ではない。
【0014】
また、ロボットアーム10は、エンドエフェクタとしてのロボットハンド12を備えている。ロボットハンド12は、ロボットアーム10の先端部である。ロボットハンド12は、積み降ろしの対象となる物品を把持する。なお、ロボットアーム10のエンドエフェクタは、ロボットハンド12に限定されない。
【0015】
ロボットアーム10は、7軸かつ垂直多関節式のロボットアームである。具体的に、ロボットアーム10は、関節JT1-JT7を備えている。関節JT1-JT7は、基端部から先端部に向かって、互いに直列に接続されている。
【0016】
関節JT1は、旋回部2と第2ベース11とを連結している。関節JT1は、第1関節軸Ax1を中心に、第2ベース11を旋回させる。第2ベース11の旋回によって、ロボットアーム10全体が、第1関節軸Ax1を中心に旋回する。第1関節軸Ax1は、設置面Fに垂直な軸線である。なお、第1関節軸Ax1は、必須ではない。
【0017】
関節JT2は、第2ベース11と第1リンク61とを連結する関節である。第1リンク61は、関節JT2と後述の関節JT3とを接続するアームである。第1リンク61は、第2関節軸Ax2を中心に、第2ベース11に対して相対的に回転する。第2関節軸Ax2は、水平な軸線であって、設置面Fに平行な軸線である。第2関節軸Ax2は、第1関節軸Ax1に直交する。
【0018】
関節JT3は、第1リンク61と第2リンク62とを連結する関節である。第2リンク62は、関節JT3と後述の関節JT4とを接続するアームである。第2リンク62は、第3関節軸Ax3を中心に、第1リンク61に対して相対的に回転する。第3関節軸Ax3は、第2関節軸Ax2に平行な軸線である。
【0019】
関節JT4は、第2リンク62と第3リンク63とを連結する関節である。第3リンク63は、関節JT4と後述の関節JT5とを接続するアームである。第3リンク63は、第4関節軸Ax4を中心に、第2リンク62に対して相対的に回転する。第4関節軸Ax4は、第2関節軸Ax2に平行な軸線である。
【0020】
関節JT5は、第3リンク63と第4リンク64とを連結する関節である。第4リンク64は、ロボットハンド12が連結されるアームである。第4リンク64は、第5関節軸Ax5を中心に、第3リンク63に対して相対的に回転する。第5関節軸Ax5は、第2関節軸Ax2に平行な軸線である。
【0021】
関節JT6は、第3リンク63を回転させる関節である。詳しくは、第6の関節JT6は、第3リンク63を、第6関節軸Ax6を中心に回転させる。第6関節軸Ax6は、第2関節軸Ax2に直交する軸線である。
【0022】
関節JT7は、第4リンク64を回転させる関節である。詳しくは、第7の関節JT7は、第4リンク64を、第7関節軸Ax7を中心に回転させる。第7関節軸Ax7は、第2関節軸Ax2に直交する軸線である。
【0023】
一番目の関節JT1の動作は、
図1に示すアクチュエータ13を動力源としている。アクチュエータ13は、支持部112と同様に、ベース本体111の上面に固定されている。アクチュエータ13は、支持部112と水平方向に並んでいる。
【0024】
アクチュエータ13は、電気モータである。電気モータのシャフトは、回転軸線Oaを中心に回転する。シャフトの回転軸線Oaは、設置面Fに直交する。電気モータは、サーボモータ又はステップモータとしてもよい。
【0025】
アクチュエータ13は、コントローラ100から入力される電気信号に基づいて作動する。コントローラ100は、アクチュエータ13と電気的に接続されている。コントローラ100は、プロセッサ、メモリ及び入出力バスを有している。コントローラ100は、電気信号を生成する。
【0026】
旋回部2は、第1ベース5と第2ベース11とを接続するリンク部材である。旋回部2としてのリンク部材は、水平方向に延びている。後述のように、旋回部2は、水平方向に延びるアームとみなすこともできる。
【0027】
また、旋回部2は、第1端21と、第2端22とを有している。第1端21は、旋回部2を第1ベース5に連結している。第1端21は、旋回部2の基端である。第2端22は、第2ベース11を支持している。第2端22は、旋回部2の先端である。第1端21と第2端22は、水平方向に離れている。
図1に示すように、第1関節軸Ax1は、第2端22を通過している。
【0028】
旋回部2は、第1ベース5に対して旋回できる。つまり、多関節ロボット1は、関節JT1-JT7に加え、旋回部2と第1ベース5との連結部を第8の関節JT8とみなした8軸のロボットと呼ぶこともできる。
【0029】
具体的に、関節JT8は、第1軸線O1を中心に、第1ベース5に対して旋回部2を相対的に旋回させる。第1軸線O1は、上下方向に延びる軸線である。例えば、第1軸線O1は、設置面Fに直交している。また、第1軸線O1は、第1関節軸Ax1に対して水平方向にずれている。詳しくは、第1軸線O1は、水平方向において、第1関節軸Ax1と比べて旋回部2の第1端21に近接している。さらに詳しくは、第1軸線O1は、第1端21を通過している。
【0030】
関節JT8の動作は、
図1に示すモータ4を動力源としている。モータ4から出力される動力は、減速機3を介して関節JT8を駆動させる。減速機3及びモータ4は、旋回部2に支持されている。詳細は後述するが、モータ4は、シャフト41と、ケース42と、を有している。シャフト41は、モータ4の出力軸である。ケース42は、シャフト41を収容する本体である。
【0031】
(第1ベース5、旋回部2、減速機3及びモータ4の詳細)
以下、第1ベース5、旋回部2、減速機3及びモータ4の詳細について、
図2を参照して説明する。
図2は、旋回部2の縦断面図である。なお、
図2の縦断面は、旋回部2における関節JT8周辺の構造を示している。
図2の両矢印D1は、
図1と同様に上下方向を示している。
図2の両矢印D2は、
図1と同様に水平方向を示している。
【0032】
-第1ベース5-
図2に示すように、第1ベース5は、旋回部2の第1端21を、下方から支持している。具体的に、第1ベース5は、台座51と、連結板52と、を備えている。
【0033】
ここで、台座51は、円筒形状を有する中空の台座である。台座51は、設置面F上に設置されている。言い換えると、設置面Fが、台座51を下方から支持している。台座51は、連結板52を下方から支持している。
【0034】
連結板52は、環状の板状体である。連結板52は、台座51の上面に固定されている。連結板52は、第1端21を下方から支持している。なお、台座51と連結板52を別体とすることは、必須ではない。台座51及び連結板52を一体にしてもよい。
【0035】
-旋回部2-
旋回部2は、第1端21から第2端22に向かって延びる中空のアームである。第1端21には、第1軸線O1に沿って減速機3が位置している。第2端22には、第1関節軸Ax1に沿ってロボットアーム10が位置している。具体的に、旋回部2は、アーム本体23と、第1カバー24と、第2カバー25と、支持面26と、備えている。
【0036】
ここで、アーム本体23は、水平方向に延びかつ上面が開放されたアームである。アーム本体23は、第1端21から第2端22に向かって水平方向に延びている。アーム本体23は、旋回部2の側面2s及び下面2uを構成している。
【0037】
アーム本体23は、上下方向に延びる貫通孔23aを有している。具体的に、本実施形態に係る貫通孔23aは、旋回部2の下面2uを貫いている。貫通孔23aは、第1端21に対して水平方向に離間している。詳しくは、貫通孔23aは、第1端21及び第2端22の双方に対して水平方向に離間している。また、貫通孔23aには、モータ4のケース42が通される。貫通孔23aの内径は、ケース42が通る大きさになっている。
【0038】
第1カバー24は、水平方向に延びる板状の部材である。第1カバー24は、アーム本体23の開放部を閉塞する。第1カバー24は、旋回部2の上面を構成している。第1カバー24は、アーム本体23に固定されている。第1カバー24は、必要に応じて、アーム本体23から取り外すことができる。
【0039】
第2カバー25は、水平方向に延びる板状部材である。第2カバー25は、アーム本体23の内部に位置している。詳しくは、第2カバー25は、上下方向において、第1カバー24と下面2uの間に配置している。第2カバー25は、アーム本体23の内部に固定されている。第2カバー25は、必要に応じて、アーム本体23から取り外すことができる。第2カバー25は、該第2カバー25を上下方向に貫く開口部25aを有している。
図2に示すように、第1軸線O1は、開口部25aを通過している。
【0040】
また、第2カバー25は、旋回部2の内部空間を上下に仕切っている。具体的に、第1カバー24と第2カバー25との間には、ケーブル8を収容するための第1収容スペースS1が区画されている。第2カバー25と下面2uとの間には、ベルト7を収容するための第2収容スペースS2が区画されている。第1収容スペースS1と第2収容スペースS2は、前記開口部25aを通じて連通している。なお、第2カバー25、ひいては第1収容スペースS1は、必須ではない。
【0041】
旋回部2の上面は、支持面26を構成している。支持面26は、ロボットアーム10を支持している。詳しくは、支持面26は、ロボットアーム10を下方から支持している。例えば、支持面26は、旋回部2のうち、第2端22を含んだ部分の上面としてもよい。支持面26は、第1カバー24の上面としてもよいし、第1カバー24の上面に平行な他の面としてもよい。
【0042】
-減速機3-
減速機3は、
図2に示すように、第1軸線O1に沿って支持面26の下方に位置している。詳しくは、減速機3は、第1軸線O1に沿って第1カバー24の下方に位置している。さらに詳しくは、減速機3は、第1軸線O1に沿って第2カバー25の下方かつ第1ベース5の上方に位置している。前述のように、減速機3は、旋回部2を第1軸線O1まわりに旋回させる。
【0043】
減速機3は、中空構造を有するサイクロイド歯車減速機である。なお、減速機3をサイクロイド歯車減速機とすることは、必須ではない。減速機3は、例えば遊星歯車装置としてもよいし、波動歯車装置としてもよい。減速機3を中空とすることも、必須ではない。
【0044】
具体的に、本実施形態に係る減速機3は、支持軸31と、中空管32と、第1プーリ33と、減速機構34と、ケース35と、を有している。減速機3は、第1プーリ33に入力された回転を、減速機構34によって減速する。減速機3は、減速後の回転を、ケース35を介して旋回部2に入力する。
【0045】
ここで、支持軸31は、筒形状を有する中空の部材である。支持軸31は、連結板52の上面に固定されている。減速機3は、支持軸31を介して第1ベース5に支持されている。
【0046】
中空管32は、第1軸線O1と同軸の円筒形状を有している。中空管32の下端は、支持軸31に挿入されている。中空管32の上端は、第1プーリ33及び減速機構34に挿入されている。ケーブル8は、中空管32に挿し通されている。ケーブル8は、開口部25aを介して第1収容スペースS1に繰り出されている。
【0047】
第1プーリ33は、第1軸線O1を中心に、支持軸31及び中空管32に対して相対的に回転する。第1プーリ33には、ベルト7が巻き掛けられている。ベルト7は、モータ4のシャフト41を、減速機3の第1プーリ33に連結している。シャフト41から出力される動力は、ベルト7を介して第1プーリ33に伝達する。第1プーリ33は、伝達した動力に応じて回転する。
【0048】
減速機構34は、クランク軸と、ピニオンと、を有する歯車機構である。減速機構34は、第1プーリ33及びケース35に連結されている。第1プーリ33が回転すると、減速機構34は、第1プーリ33よりも減速させた回転数でケース35を回転させる。
【0049】
ケース35は、第1軸線O1を中心に、支持軸31及び中空管32に対して相対的に回転する。ケース35は、旋回部2、特にアーム本体23の下面2uに固定されている。ケース35は、旋回部2と一体的に動作する。
【0050】
-モータ4-
モータ4は、
図2に示すように、支持面26の下方に位置している。詳しくは、モータ4は、第1カバー24の下方に位置している。さらに詳しくは、モータ4は、第2カバー25の下方に位置している。また、水平方向においては、モータ4は、旋回部2の長手方向に沿って減速機3と並んでいる。前述のように、モータ4は、減速機3を介して関節JT8を駆動させる。
【0051】
モータ4は、電気モータである。モータ4としての電気モータは、サーボモータ又はステップモータとしてもよい。モータ4は、前述のコントローラ100と電気的に接続されている。モータ4は、コントローラ100から入力される電気信号に基づいて作動する。
【0052】
具体的に、本実施形態に係るモータ4は、前述したように、出力軸としてのシャフト41と、本体としてのケース42と、を有している。シャフト41は、モータ4の出力軸である。ケース42は、シャフト41を収容する本体である。モータ4は、コントローラ100から入力された電気信号に基づいて、ケース42に対してシャフト41を相対的に回転させる。
【0053】
シャフト41は、第2軸線O2まわりに回転しかつ減速機3に連結されている。第2軸線O2は、第1軸線O1に平行な軸線である。言い換えると、第2軸線O2は、第1軸線O1を水平方向にずらした軸線である。詳しくは、第2軸線O2は、第1軸線O1及び第1関節軸Ax1の双方に対し、水平方向にずれている。さらに詳しくは、第2軸線O2は、水平方向において、第1関節軸Ax1よりも第1軸線O1に近接している。言い換えると、第2軸線O2は、水平方向において、第2端22よりも第1端21に近接している。また、第2軸線O2は、上下方向に延びている。例えば、第2軸線O2は、設置面Fに直交している。第2軸線O2は、第1軸線O1及び第1関節軸Ax1と平行である。
【0054】
シャフト41は、前述のように第1プーリ33に連結されている。具体的に、シャフト41は、第1端41aと、第2プーリ41bと、を有している。第1端41aは、ケース42から上方に突出している。第1端41aは、本実施形態ではシャフト41の上端である。第2プーリ41bは、第1端41aに位置している。シャフト41は、第1端41a及び第2プーリ41bを除いてシャフト41に収容されている。第2プーリ41bには、ベルト7が巻きかけられている。ベルト7は、第2プーリ41bを第1プーリ33に連結している。第1端41a及び第2プーリ41bは、
図2に示すように、水平方向において第1プーリ33と並んでいる。第1プーリ33、第1端41a及び第2プーリ41bは、ベルト7と同様に第2収容スペースS2内に位置している。
【0055】
ケース42は、シャフト41を収容しかつ旋回部2に支持されている。加えて、ケース42は、支持面26を基準にして、上下方向において減速機3と同じ側に位置している。本実施形態では、ケース42は、支持面26を基準にして下側、つまり支持面26の下方に位置している。詳しくは、ケース42は、第1カバー24の下方に位置している。さらに詳しくは、ケース42は、第2カバー25の下方に位置している。
【0056】
また、ケース42は、旋回部2から下方に突出している。詳しくは、ケース42は、旋回部2の下面2uから下方に突出している。さらに詳しくは、ケース42は、アーム本体23の貫通孔23aを通って下方に突出している。
【0057】
ケース42は、取付板43を介して旋回部2に接続されている。取付板43は、貫通孔23aを通らない大きさの板状部材である。取付板43は、ケース42に固定されている。ケース42に固定された取付板43は、ケース42のフランジを形成する。ケース42は、取付板43が固定された状態で、貫通孔23aに上方から挿入されている。取付板43とアーム本体23は、上方から挿入された締結具44によって締結されている。締結具44は、例えばボルトである。ケース42は、取付板43を介して貫通孔23aの周縁に締結されている。取付板43は、貫通孔23aからのケース42の脱落を防ぐ抜け止めとして機能する。なお、取付板43を用いたケース42の接続は、必須ではない。なお、ケース42及び取付板43は、一体であってもよい。
【0058】
(旋回部の動作について)
コントローラ100は、電気信号をモータ4に入力する。電気信号に応じて、シャフト41が回転する。シャフト41の回転は、ベルト7を介して第1プーリ33に入力される。第1プーリ33は、ベルト7からの入力に応じて回転する。減速機構34は、第1プーリ33よりも減速させた回転数で、ケース35を回転させる。ケース35は、アーム本体23、ひいては旋回部2と一体的に回転する。旋回部2は、第1軸線O1を中心に、第1ベース5に対して相対的に旋回する。旋回部2が旋回することで、旋回部2の第2端22に支持されたロボットアーム10も旋回する。
【0059】
一方、
図2に示したように、モータ4は、旋回部2に支持されている。そうすると、旋回部2の旋回に際し、モータ4は、旋回部2とともに、第1軸線O1回りに一体的に旋回する。
【0060】
(旋回部周辺のスペースについて)
従来の多関節ロボットの場合、鉛直な軸線まわりに旋回する旋回部のモータは、軸線付近において、旋回部を支持するベースに固定されることが一般的である。そこで、前記多関節ロボット1においては、旋回部2の第1軸線O1付近にモータ4を配置することが考えられる。しかしながら、鉛直な第1軸線O1上にモータ4を配置してしまうと、旋回部2周辺の寸法が、他のレイアウトを採用した場合に比して上下方向に長くなる可能性がある。寸法が長くなることは、旋回部2周辺を省スペースにする上で不都合である。
【0061】
例えば、第1の手法として、旋回部2の第1端21において、第1ベース5に上方からモータ4を差し込むことが考えられる。そうすると、上下方向に沿って第1ベース5、減速機3及びモータ4が並ぶことになるため、他のレイアウトを採用した場合に比して、第1端21周辺が上方向に長くなってしまう。上方向に長くなることは、搬送コンベアC等との干渉を招き得るため不都合である。
【0062】
そこで、旋回部2周辺をコンパクトにする第2の手法として、旋回部2の第1端21において、第1ベース5に下方からモータ4を差し込むことが考えられる。下方から差し込まれたモータ4は、例えば、第1ベース5の台座51に収容されることになる。しかし、第2の手法が適用された場合、モータ4の交換に際し、第1ベース5、ひいては多関節ロボット1全体を逆さまにすることが求められる。多関節ロボット1全体を逆さまにすることは、手間を要する。手間の発生は、多関節ロボット1を効率よくメンテナンスするには不都合である。
【0063】
また、第1端21以外の部位にモータ4をレイアウトする第3の手法として、第2ベース11のベース本体111に、モータ4を配置することが考えられる。しかし、ベース本体111にモータ4を配置するためには、ベース本体111の上面をより広く形成することが求められる。ベース本体111の拡大は、多関節ロボット1を省スペースにする上で不都合である。
【0064】
一方、本実施形態のように、旋回部2とモータ4とが一体的に旋回すれば、旋回部2とモータ4との干渉が抑制される。また、旋回部2の下方に減速機3を配置した場合、減速機3の上下寸法に応じて、該減速機3の側方にスペースが生まれることになる。そこで、本実施形態では、旋回部2に支持されるモータ4を、減速機3の側方のスペースに配置することで、旋回部2周辺を省スペースにするに至った。
【0065】
具体的に、本実施形態に係る多関節ロボット1では、
図1に例示したように、減速機3の第1軸線O1とモータ4の第2軸線O2とが水平方向にオフセットしている。加えて、支持面26を基準にして、減速機3と、モータ4のケース42とが同じ側に位置している。
【0066】
すなわち、本実施形態に係るモータ4は、減速機3の側方に位置することになる。ゆえに、減速機3の側方に生まれたスペースが、無駄なく活用される。スペースの活用によって、旋回部2周辺が上下方向にコンパクトになる。上下方向にコンパクトにすることで、旋回部2周辺を省スペースにできる。
【0067】
また、本実施形態のように旋回部2がモータ4を支持することで、旋回部2とモータ4とが一体的に旋回する。一体的な旋回により、旋回部2とモータ4との干渉が抑制される。本実施形態に係る多関節ロボット1は、旋回部2周辺を省スペースにすることと、旋回部2及びモータ4の干渉の抑制と、を両立できる。
【0068】
また、本実施形態に係る多関節ロボット1では、
図1に例示したように、減速機3が支持面26の下方に位置している。加えて、モータ4は、支持面26から下方に突出している。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る減速機3及びモータ4は、旋回部2を挟んで搬送コンベアCの反対側に位置することになる。したがって、減速機3及びモータ4と、搬送コンベアCとの干渉を抑制できる。搬送コンベアCの端を、ロボットアーム10の近くまで延長できる。
【0070】
また、本実施形態に係る旋回部2は、
図2に例示したように、上下方向に延びかつモータ4のケース42が通る貫通孔23aを備えている。
【0071】
本実施形態に係るモータ4は、上方から上向きに取り外すことができ、かつ下方から旋回部2に差し込まずとも固定できる。下方からの差し込みを不要としたことで、モータ4の取り付け及び取り外しに際し、旋回部2を逆さまにする必要がなくなる。旋回部2の反転を不要としたことで、モータ4の取り付け及び取り外しが容易になる。モータ4の取り付け及び取り外しを容易にすることで、多関節ロボット1を効率よくメンテナンスできる。
【0072】
また、本実施形態に係る多関節ロボット1では、
図2に例示したように、シャフト41は、ベルト7を介して減速機3に連結されている。
【0073】
仮に、歯車を介してモータ4と減速機3を連結させた場合、モータ4及び減速機3を水平方向に離間させるためには、複数の歯車を用いざるを得ない。一方、ベルト7を介した連結は、複数のベルトを用いずとも、モータ4及び減速機3を水平方向に離間させることが許容される。モータ4のレイアウトに際し、部品点数を抑制できる。部品点数の抑制は、旋回部2周辺を省スペースにする上で有効である。
【0074】
また、本実施形態に係る多関節ロボット1では、ロボットアーム10は、第1軸線O1及び第2軸線O2に平行な第1関節軸Ax1まわりに旋回する。そして、
図1に例示したように、第2軸線O2は、水平方向において、第1関節軸Ax1よりも第1軸線O1に近接している。
【0075】
第2軸線O2を第1軸線O1に近接させた分、第2軸線O2と第1関節軸Ax1とを離間させることができる。第2軸線O2及び第1関節軸Ax1の離間は、モータ4及び第2ベース11の干渉を抑制したり、モータ4及びアクチュエータ13の干渉を抑制したりする上で有効である。
【0076】
また、本実施形態に係るロボットアーム10は、
図1に例示したように、7軸の垂直多関節式ロボットアームである。
【0077】
一般に、7軸のロボットアームは、姿勢の自由度が高い。また、前述のように、多関節ロボット1全体では、旋回部2を旋回させる8軸のロボットとみなすこともできる。8軸のロボットは、姿勢の自由度がさらに高い。姿勢の自由が高いため、多関節ロボット1は、物品の積み降ろしに適している。
【0078】
(変形例)
図3は、変形例に係る多関節ロボット1の
図1対応図である。
図3に示す変形例では、旋回部2に対する減速機3及びモータ4のレイアウトが、前記実施形態とは相違している。
【0079】
具体的に、
図3に示すように、変形例に係る減速機3は、第1軸線O1に沿って支持面26の上方に位置している。そして、モータ4のケース42は、減速機3と同様に、支持面26の上方に位置している。ケース42は、支持面26から上方に突出している。
【0080】
変形例では、ケース42は、支持面26を基準にして上側、つまり支持面26の上方に位置している。すなわち、変形例に係るケース42は、支持面26を基準にして、上下方向において減速機3と同じ側に位置している。しかも、
図3に示すように、モータ4の第2軸線O2は、前記実施形態と同様に第1軸線O1に対して水平方向にオフセットしている。
【0081】
したがって、前記実施形態と同様に、減速機3の側方に生まれたスペースが、モータ4の配置によって無駄なく活用される。スペースの活用によって、旋回部2周辺が上下方向にコンパクトになる。上下方向にコンパクトにすることで、旋回部2周辺を省スペースにできる。
【0082】
また、減速機3を上方に配置したことで、第1ベース5が上下にコンパクトになる。第1ベース5がコンパクトになることで、旋回部2周辺がさらに省スペースになる。
【0083】
(他の実施形態)
前記実施形態では、アーム本体23の貫通孔23aにケース42が挿入されていたが、貫通孔23aは必須ではない。例えば、ケース42は、第1カバー24又は第2カバー25の下面に取り付けられてもよい。
【0084】
また、前記実施形態では、減速機3とモータ4とがベルト7によって連結されていたが、ベルト7は必須ではない。例えば、減速機3及びモータ4は、歯車によって連結されてもよい。
【0085】
また、前記実施形態のように、第2軸線O2が、水平方向において第2端22よりも第1端21に近接していることも必須ではない。例えば、第2軸線O2は、第1端21よりも第2端22に近接していてもよい。
【0086】
また、前記実施形態では、ロボットアーム10が7軸の垂直多関節式ロボットアームであったが、7軸を採用することは必須ではない。ロボットアーム10は、6軸以下の関節を有していてもよい。
【0087】
前述したバリエーションのいずれを採用したとしても、旋回部2周辺を省スペースにすることができる。各バリエーションの組み合わせを採用した場合も同様である。
【0088】
前述した配置は、旋回部2に対する減速機3及びモータ4の配置ばかりでなく、多関節ロボット1の第2ベース11に対する減速機3及びアクチュエータ13の配置に適用することができる。
【0089】
[態様]
前述した実施形態は、以下の態様の具体例である。
【0090】
(態様1)
複数の関節JT1-JT7を有するロボットアーム10と、前記ロボットアーム10を支持する支持面26を有する旋回部2と、上下方向に延びる第1軸線Ax1に沿って前記支持面26の上方又は下方に位置し、前記旋回部2を前記第1軸線Ax1まわりに旋回させる減速機3と、前記第1軸線O1を水平方向にずらした第2軸線O2まわりに回転しかつ前記減速機3に連結されたシャフト41と、前記シャフト41を収容しかつ前記旋回部2に支持されたケース42とを有し、前記ケース42が、前記支持面26を基準にして、上下方向において前記減速機3と同じ側に位置するモータ4と、を備える多関節ロボット1。
【0091】
(態様2)
前記減速機3及び前記ケース42は、前記支持面26の下方に位置する、態様1に記載の多関節ロボット1。
【0092】
(態様3)
前記旋回部2は、上下方向に延びかつ前記ケース42が通る貫通孔23aを有する、態様1又は態様2に記載の多関節ロボット1。
【0093】
(態様4)
前記シャフト41を前記減速機3に連結するベルト7を備える、態様1から態様3のいずれか1の態様に記載の多関節ロボット1。
【0094】
(態様5)
前記旋回部2は、前記第1軸線O1に沿って前記減速機3が位置する第1端21と、前記ロボットアーム10を支持する第2端22と、を有し、前記ロボットアーム10は、前記第1軸線O1及び前記第2軸線O2に平行な第1関節軸Ax1まわりに旋回し、前記第2軸線O2は、前記水平方向において、前記第2端22よりも前記第1端21に近接する、態様1から態様4のいずれか1の態様に記載の多関節ロボット1。
【0095】
(態様6)
前記ロボットアーム10は、7軸かつ垂直多関節式のロボットアームである、態様1から態様5のいずれか1の態様に記載の多関節ロボット1。
【符号の説明】
【0096】
1 多関節ロボット
10 ロボットアーム
11 第2ベース
13 アクチュエータ
2 旋回部
21 第1端
22 第2端
23 アーム本体
23a 貫通孔
24 第1カバー
25 第2カバー
25a 開口部
26 支持面
3 減速機
33 第1プーリ
4 モータ
41 シャフト
41a 第1端
41b 第2プーリ
42 ケース
5 第1ベース
7 ベルト
8 ケーブル
Ax1 第1関節軸
JT1 関節
JT2 関節
JT3 関節
JT4 関節
JT5 関節
JT6 関節
JT7 関節
JT8 関節
O1 第1軸線
O2 第2軸線
S1 第1収容スペース
S2 第2収容スペース