(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025314
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/06 20060101AFI20250214BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F04B39/06 Q
F04B39/00 106Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129971
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】手島 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 和哉
(72)【発明者】
【氏名】嶋 俊匡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰造
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB06
3H003AC03
3H003BE09
3H003CD01
3H003CE03
3H003CF01
(57)【要約】
【課題】従来技術に比べてインバータのスイッチング素子の冷却性能を高めることができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1Aにおいて、インバータ13を収容するインバータケース5Aの端壁52には貫通孔54が形成されており、電動モータ9等を収容すると共に吸入ポート36を有するハウジング3の前端壁32の外面は貫通孔54を介してインバータケース5A内に露出する露出部35を有している。インバータ13は、放熱シート21を介在させて露出部35に取り付けられた複数のスイッチング素子131と、インバータケース5Aの基板取付部55に取り付けられて複数のスイッチング素子131が接続された電子回路基板132と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸、前記回転軸を回転させる電動モータ及び前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮機構を収容すると共に流体を内部に導く吸入ポートを有するハウジングと、前記電動モータを駆動するインバータを収容するインバータケースと、を有し、前記インバータケースは、前記インバータケースの端壁の外面と前記ハウジングの端壁の外面とが連結するように、前記ハウジングに固定されている、電動圧縮機であって、
前記インバータケースの前記端壁には貫通孔が形成され、前記ハウジングの前記端壁の前記外面は前記貫通孔を介して前記インバータケース内に露出する露出部を有し、
前記インバータは、放熱シートを介在させて前記露出部に取り付けられた複数のスイッチング素子と、前記インバータケースの基板取付部に取り付けられて前記複数のスイッチング素子が接続された電子回路基板と、を含む、
電動圧縮機。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子は、前記放熱シートを押圧した状態で前記露出部に取り付けられている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記露出部は、前記ハウジングの内部空間の断面積の1/2以上の面積を有する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記ハウジングの前記端壁は、前記インバータケースの前記端壁に形成された前記貫通孔に嵌合された突出部を有し、前記突出部の先端面が前記露出部を形成している、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記露出部は、前記インバータケースの前記端壁の内面における前記貫通孔の周囲の部分と略面一となっている、請求項4に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動圧縮機の例として、特許文献1に記載された電動圧縮機は、有底筒状の吐出ハウジングと、前記吐出ハウジングに連結される有底筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングに連結されるインバータケースと、を有する。前記モータハウジングは、回転軸と、前記回転軸の回転によって冷媒を圧縮する圧縮部と、前記回転軸を回転させる電動モータと、を収容している。前記インバータケースは、有底筒状のケース本体と、前記ケース本体の開口部を閉塞する蓋部と、を有し、前記電動モータを駆動するインバータを収容している。前記インバータは、複数のスイッチング素子を有する。前記インバータケースは、前記ケース本体の底壁が前記モータハウジングの底壁に連結されることによって、前記モータハウジングに取り付けられている。
【0003】
また、特許文献2に記載された電動圧縮機においては、圧縮機ハウジング(ハウジング)内が仕切壁(隔壁)によって電動モータ等が配置された空間とインバータが収容された収容空間とに仕切られている。インバータを構成する複数の電力用半導体素子(スイッチング素子)は、隣接する電力用半導体素子間の熱干渉を抑制するため、電動モータの駆動軸と交差する平面内において駆動軸の周囲に放射状に配置されている。特許文献1、2に記載された電動圧縮機は、例えば車両空調装置に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-116787号公報
【特許文献2】特開2010-275951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の自動車の電動化に伴い、自動車に搭載される電動圧縮機の用途が拡大している。例えば、自動車に搭載される電動圧縮機は、車室内空調に用いられるだけでなく、バッテリなどの車載電子機器の冷却にも用いられるようになってきている。そのため、インバータのスイッチング素子に流れる電流が従来に比べて増大し、スイッチング素子の発熱量が大きくなっており、その対策が要望されている。なお、このような要望は、自動車に搭載される電動圧縮機に限られるものではなく、インバータを一体的に有する電動圧縮機(すなわち、インバータ一体型電動圧縮機)に共通するものである。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術に比べてインバータのスイッチング素子の冷却性能を高めることができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると電動圧縮機が提供される。提供される電動圧縮機は、回転軸、前記回転軸を回転させる電動モータ及び前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮機構を収容すると共に内部に流体を導く吸入ポートを有するハウジングと、前記電動モータを駆動するインバータを収容するインバータケースと、を有する。前記インバータケースは、前記インバータケースの端壁の外面と前記ハウジングの端壁の外面とが連結するように、前記ハウジングに固定されている。前記インバータケースの前記端壁には貫通孔が形成され、前記ハウジングの前記端壁の外面は、前記貫通孔を介して前記インバータケース内に露出する露出部を有する。前記インバータは、放熱シートを介在させて前記露出部に取り付けられた複数のスイッチング素子と、前記インバータケースの基板取付部に取り付けられ且つ前記複数のスイッチング素子が接続された電子回路基板と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、インバータのスイッチング素子の冷却性能を高めることができる電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電動圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る電動圧縮機の変形例を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る電動圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る電動圧縮機の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動圧縮機の概略構成を示す断面図である。第1実施形態に係る電動圧縮機1Aは、主に自動車などの車両に搭載される。電動圧縮機1Aは、例えば車両空調装置及び/又は車両のバッテリ冷却装置の冷媒回路に組み込まれ、冷媒回路を流れる冷媒(つまり、流体)を圧縮し、高圧化して吐出するように構成される。なお、以下では、
図1における左側を電動圧縮機1Aの前側として、
図1における右側を電動圧縮機1Aの後側として説明する。
【0012】
図1を参照すると、電動圧縮機1Aは、ハウジング3と、インバータケース5Aと、を有する。インバータケース5Aが前側に、ハウジング3が後側に配置されている。
【0013】
ハウジング3は、前後方向に延びる円筒状の周壁31と、周壁31の前側開口を閉塞する前端壁32と、周壁31の後側開口を閉塞する後端壁33と、を有する。ハウジング3は、回転軸7、電動モータ9及び圧縮機構11を収容している。特に限定されないが、本実施形態において、圧縮機構11は、スクロール圧縮機構であり、圧縮機構11は、固定スクロール111及び可動スクロール112を有する。
【0014】
インバータケース5Aは、有底筒状に形成されている。インバータケース5Aは、前後方向に延びる筒状の周壁51と、周壁51の後側開口を閉塞する端壁52と、を有する。インバータケース5Aは、インバータ13を収容している。なお、インバータケース5Aの端壁52は、インバータケース5Aの底壁とも称され得る。インバータケース5Aの開口、すなわち、周壁51の前側開口は、蓋部材53によって閉塞されている。蓋部材53は、インバータケース5Aに対して着脱可能であり、図示省略のボルト等によってインバータケース5Aの周壁51に固定されている。
【0015】
インバータケース5Aは、インバータケース5Aの端壁52の外面とハウジング3の前端壁32の外面とが連結するように、図示省略のボルト等によってハウジング3に固定されている。したがって、ハウジング3の前端壁32が本発明の「ハウジングの端壁」に相当する。なお、インバータケース5Aの端壁52の外面は、インバータケース5Aの底面とも称され得る。
【0016】
インバータケース5Aの端壁52には貫通孔54が形成されている。ハウジング3の前端壁32は、インバータケース5Aの端壁52に形成された貫通孔54に嵌合された突出部34を有している。突出部34は、貫通孔54に対応する形状を有し、前端壁32の他の部分よりもハウジング外方(ここでは前方)に突出している。特に限定されないが、本実施形態において、貫通孔54は円形孔として形成され、突出部34は貫通孔54に対応する円柱状に形成される。好ましくは、突出部34は、先端が閉塞された中空の円柱状(円筒状)に形成される。
【0017】
ハウジング3の前端壁32の外面のうち突出部34の先端面は、貫通孔54を介してインバータケース5A内に露出している。つまり、ハウジング3の前端壁32の外面は、貫通孔54を介してインバータケース5A内に露出する露出部35(突出部34の先端面)を有している。
【0018】
本実施形態において、露出部35は、全体又は大部分が平坦な面(厳密に平坦である必要はなく、概ね平坦であればよい。)として形成されている。また、露出部35は、ハウジング3の内部空間の断面積(横断面積)以上の面積を有している。さらに、露出部35は、インバータケース5Aの端壁52の内面における貫通孔54の周囲の部分と略面一となっている。
【0019】
ハウジング3についてさらに説明する。
【0020】
本実施形態において、ハウジング3は、有底円筒状のモータハウジング41と、有底円筒状の圧縮機ハウジング42と、をハウジング構成要素として有する。そして、ハウジング3は、モータハウジング41と圧縮機ハウジング42とが互いの開口端同士が接合されるように図示省略のボルト等によって締結されて形成されている。モータハウジング41が前側に配置され、圧縮機ハウジング42が後側に配置されている。また、接合されるモータハウジング41の開口端と圧縮機ハウジング42の開口端との間には必要に応じてシール材(図示省略)が介装される。
【0021】
したがって、本実施形態においては、モータハウジング41の円筒状の周壁及び圧縮機ハウジング42の円筒状の周壁によってハウジング3の周壁31が形成され、モータハウジング41の端壁によってハウジング3の前端壁32が形成され、圧縮機ハウジング42の端壁によってハウジング3の後端壁33が形成されている。また、露出部35は、モータハウジング41の内部空間の断面積(横断面積)以上の面積を有している。なお、モータハウジング41の端壁、圧縮機ハウジング42の端壁は、それぞれモータハウジング41の底壁、圧縮機ハウジング42の底壁とも称され得る。
【0022】
本実施形態において、ハウジング3は、隔壁部材43をさらに有する。隔壁部材は、モータハウジング41及び圧縮機ハウジング42によって形成されるハウジング3の内部空間を前側空間と後側空間とに仕切る部材である。前記前側空間は、モータハウジング41の内部空間であり、前記後側空間は、主に圧縮機ハウジング42の内部空間である。そして、前記前側空間、つまり、モータハウジング41に電動モータ9が収容されており、前記後側空間、つまり、圧縮機ハウジング42に圧縮機構11が収容されている。
【0023】
具体的には、隔壁部材43は、フランジ付き有底円筒状の部材として形成されており、円筒状の周壁431と、周壁431の一端を閉塞する端壁432と、端壁432とは反対側の開口端に形成されたフランジ433と、を有する。なお、隔壁部材43の端壁432は、隔壁部材43の底壁とも称され得る。隔壁部材43は、端壁432が前方を向いた状態でモータハウジング41内の後側に配置されている。そして、隔壁部材43は、フランジ433の周縁部が圧縮機ハウジング42内に配置された固定スクロール111の周縁部と共にモータハウジング41と圧縮機ハウジング42とによって挟持されている。これにより、隔壁部材43がモータハウジング41及び圧縮機ハウジング42と一体化され、固定スクロール111がハウジング3に固定され、及び、隔壁部材43によってハウジング3の内部空間が前記前側空間と前記後側空間とに仕切られる。但し、前記前側空間と前記後側空間とは、隔壁部材43のフランジ433及び/又はその近傍に形成された連通路434を介して連通している。
【0024】
また、ハウジング3は、流体としての冷媒(前記冷媒回路を流れる冷媒)をハウジング3内に導く吸入ポート36を有している。本実施形態において、吸入ポート36は、ハウジング3の周壁31における前端壁32に近い部分、すなわち、モータハウジング41に形成されている。
【0025】
次に、ハウジング3に収容された回転軸7、電動モータ9及び圧縮機構11について説明する。
【0026】
回転軸7は、ハウジング3内を前後方向に延びている。回転軸7は、前軸受61及び後軸受62によって回転自在に支持されている。特に限定されないが、本実施形態では、前軸受61及び後軸受62として転がり軸受が採用されている。
【0027】
前軸受61は、軸受保持部37に保持されている。軸受保持部37は、ハウジング3の前端壁32の内面の略中央に設けられている。換言すれば、軸受保持部37は、ハウジング3の前端壁32の内面における露出部35の内側に位置する部分に設けられている。本実施形態において、軸受保持部37は、ハウジング3の前端壁32の内面における露出部35の内側に位置する部分からハウジング内方に円筒状に突出して形成されており、内部に前軸受61を保持している。後軸受62は、隔壁部材43の周壁431の内部に保持されている。
【0028】
つまり、ハウジング3は、回転軸7を回転自在に支持する前軸受61を保持する第1軸受保持部と、回転軸7を回転自在に支持する後軸受62を保持する第2軸受保持部と、を有する。前記第1軸受保持部は、ハウジング3の前端壁32の内面における露出部35の内側に位置する部分に設けられた(円筒状の)軸受保持部37である。前記第2軸受保持部は、ハウジング3の内部空間を前記前側空間と前記後側空間とに仕切る隔壁部材43の(円筒状の)周壁431である。
【0029】
ここで、本実施形態では、隔壁部材43の端壁432の略中央には回転軸7が挿通可能な軸挿通孔(貫通孔)435が形成されており、回転軸7は、中間部分が軸挿通孔435に挿通された状態で前軸受61と後軸受62とによって回転自在に支持されている。
【0030】
また、本実施形態では、軸挿通孔435を介した前記前側空間と前記後側空間との連通を遮断するための軸シール部材63が設けられている。軸シール部材63は、隔壁部材43の周壁431の内部における後軸受62よりも端壁432側に配置されている。軸シール部材63は、例えば円環状に形成され、外周部が隔壁部材43の周壁431の内部に例えば圧入によって固定され、内周部が回転軸7の外周面に接触(摺動接触)するように構成され得る。
【0031】
電動モータ9は、三相交流モータであり、ステータ91とロータ92とを含む。ステータ91は、ステータコアとステータ巻線とを有する。ステータ91は、ハウジング3の周壁31(モータハウジング41の周壁)の内周面に固定されている。ロータ92は、ステータ91の径方向内側に配置されている。ロータ92には永久磁石が組み込まれている。ロータ92は、円筒状に形成され、内部に回転軸7が挿通された状態で回転軸7に固定されている。ロータ92は、回転軸7と一体に回転する。電動モータ9は、インバータ13からステータ91(ステータ巻線)に給電されることでロータ92が回転して回転軸7を回転させる。つまり、電動モータ9は、インバータ13によって駆動されて回転軸7を回転させるように構成されている。
【0032】
圧縮機構11は、上述のように、固定スクロール111と、可動スクロール112と、を有する。固定スクロール111は、第1渦巻壁111aを有し、可動スクロール112は、第1渦巻壁111aに対応する第2渦巻壁112aを有する。固定スクロール111は、上述のように、ハウジング3に固定されている。可動スクロール112は、第2渦巻壁112aが固定スクロール111の第1渦巻壁111aとかみ合うように、固定スクロール111の前側に配置されている。
【0033】
圧縮機構11は、回転軸7の回転によって可動スクロール112が駆動されることで冷媒を圧縮するように構成されている。具体的には、冷媒が吸入ポート36によってハウジング3内に導かれ、ハウジング3内に導かれた冷媒が電動モータ9の隙間及び隔壁部材43に形成された連通路434を通過して圧縮機構11に至る。圧縮機構11においては、回転軸7の回転がクランク機構81を介して可動スクロール112に伝達されて可動スクロールが駆動される。クランク機構81は、回転軸7の回転を固定スクロール111に対する公転旋回運動に変換する機構である。駆動された可動スクロール112は、自転阻止機構83によって自転が阻止された状態で固定スクロール111に対して公転旋回運動を行う。そして、圧縮機構11は、可動スクロール112が固定スクロール111に対して公転旋回運動を行うことにより、周囲の冷媒を取り込んで圧縮する。
【0034】
圧縮機構11で圧縮された冷媒は、吐出ポート38から流出する。吐出ポート38は、圧縮機ハウジング42に形成されている。より具体的には、圧縮機構11で圧縮された冷媒は、固定スクロール111に形成された吐出孔111b及び吐出孔111bを開閉する吐出リード弁85を介して、圧縮機ハウジング42に形成された吐出室87に吐出され、オイルセパレータ89を通過した後に吐出ポート38から流出する。
【0035】
次に、インバータケース5Aに収容されたインバータ13について説明する。
【0036】
インバータ13は、電動モータ9に給電することで電動モータ9を駆動する。インバータ13は、図示省略の車載バッテリなどの直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、給電線15を介して電動モータ9のステータ91(のステータ巻線)に供給するように構成されている。インバータ13は、複数(ここでは6個)のスイッチング素子(例えば、IGBT)131と、複数のスイッチング素子131を制御するための制御回路などが実装された電子回路基板132と、を含む。
【0037】
複数のスイッチング素子131は、ハウジング3の前端壁32の外面の露出部35(突出部34の先端面)に、弾性を有する放熱シート21を介在させて取り付けられている。つまり、複数のスイッチング素子131のそれぞれと露出部35との間には放熱シート21が配置されている。本実施形態では、放熱シート21として、弾性及び放熱性に加えて絶縁性を有するシート材が採用されている。このようなシート材は、例えばシリコーン製の絶縁・放熱シートであり得る。
【0038】
本実施形態において、複数のスイッチング素子131は、それぞれが押圧部材としての押圧アーム22により、放熱シート21を押圧した状態で露出部35に取り付けられている。押圧アーム22は、例えば露出部35に形成されたアーム取付部39に図示省略のボルト等によって固定されている。
【0039】
電子回路基板132は、インバータケース5Aに形成された基板取付部55に図示省略のボルト等によって取り付けられている。また、電子回路基板132には、露出部35に取り付けられた複数のスイッチング素子131のそれぞれから延びるリード131aが例えば半田付けによって接続されている。
【0040】
図2は、
図1のA-A端面図に相当する図であり、主に吸入ポート36と軸受保持部37との位置関係及び複数のスイッチング素子131の配置を説明するための図である。
【0041】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態において、吸入ポート36は、冷媒をハウジング3内に導くと共に、冷媒を軸受保持部37に向かわせるように形成されている。具体的には、吸入ポート36の軸線36aは、軸受保持部37の外周面を向いている。
【0042】
また、複数(6個)のスイッチング素子131は、露出部35における軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられている。さらに言えば、複数のスイッチング素子131は、全部又は大部分が露出部35における軸受保持部37に対応する部分に位置するように互いに間隔をあけた状態で露出部35に取り付けられている(
図2における破線を参照)。
【0043】
第1実施形態に係る電動圧縮機1Aによれば以下の効果が得られる。
【0044】
インバータケース5Aの端壁52には貫通孔54が形成されており、ハウジング3の前端壁32の外面は、貫通孔54を介してインバータケース5A内に露出する露出部35を有している。具体的には、ハウジング3の前端壁32は、貫通孔54に嵌合された突出部34を有し、突出部34の先端面が露出部35を形成している。また、インバータ13の複数のスイッチング素子131は、放熱シート21を介在させて露出部35に取り付けられている。
【0045】
ハウジング3内に導かれる冷媒は、前記冷媒回路において膨張弁や蒸発器を通過した低温の冷媒である。そのため、露出部35は、ハウジング3内に導かれた冷媒により冷却され得る。また、複数のスイッチング素子131の熱は、放熱シート21を介して効率的に露出部35へと伝えられ得る。したがって、実施形態に係る電動圧縮機1Aによれば、従来に比べて複数のスイッチング素子131の冷却性能を高めることができる。
【0046】
複数のスイッチング素子131は、押圧部材としての押圧アーム22により、放熱シート21を押圧した状態で露出部35に取り付けられている。そのため、複数のスイッチング素子131と露出部35との間における接触熱抵抗が小さくなり、複数のスイッチング素子131の熱がより効率的に露出部35へと伝えられる。したがって、電動圧縮機1Aにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。
【0047】
露出部35は、ハウジング3の内部空間の断面積以上の面積を有する。そのため、ハウジング3内に導かれた冷媒により、露出部35が効果的に且つ安定して冷却され得る。したがって、電動圧縮機1Aにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。
【0048】
露出部35は、インバータケース5Aの端壁52の内面における貫通孔54の周囲の部分と略面一となっている。そのため、複数のスイッチング素子131を、放熱シート21を介在させた状態で、露出部35に容易に取り付けることが可能である。
【0049】
回転軸7を回転自在に支持する前軸受61を保持する軸受保持部37が、ハウジング3の前端壁32の内面における露出部35の内側に位置する部分に設けられている。また、冷媒をハウジング3内に導く吸入ポート36は、冷媒を軸受保持部37に向かわせるように形成されている。具体的には、軸受保持部37は、ハウジング3の前端壁32の内面における露出部35の内側に位置する部分から円筒状に突出して形成されて内部に前軸受61を保持しており、吸入ポート36の軸線36aは、軸受保持部37の外周面を向いている。さらに、複数のスイッチング素子131は、露出部35における軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられている。そのため、露出部35における複数のスイッチング素子131が取り付けられた部分がハウジング3内に導かれた冷媒によって効果的に冷却され得る。したがって、電動圧縮機1Aにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。
【0050】
なお、上述の実施形態において、インバータケース5Aの端壁52の貫通孔54は円形孔として形成され、ハウジング3の前端壁32の突出部34は貫通孔54に対応する円柱状に形成されている。しかし、これに限られるものではない。貫通孔54及び突出部34は任意の形状を有し得る。例えば、貫通孔54が矩形孔として形成され、突出部34が貫通孔54に対応する矩形柱状に、好ましくは、先端が閉塞された中空の矩形柱状に形成されてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態において、露出部35は、ハウジング3(モータハウジング41)の内部空間の断面積(横断面積)以上の面積を有している。しかし、これに限られるものではない。露出部35がハウジング3内に導かれた冷媒によって十分に冷却可能であればよい。例えば、露出部35は、ハウジング3(モータハウジング41)の内部空間の断面積(横断面積)の1/2以上の面積を有するものとすることができる。
【0052】
また、上述の実施形態において、露出部35は、インバータケース5Aの端壁52の内面における貫通孔54の周囲の部分と略面一となっている。しかし、これに限られるものではない。露出部35は、インバータケース5Aの端壁52の内面における貫通孔54の周囲の部分よりも凹んでいてもよいし、出っ張っていてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態において、複数のスイッチング素子131は、それぞれが押圧部材としての押圧アーム22により放熱シート21を押圧した状態で露出部35に取り付けられている。しかし、これに限られるものではない。複数のスイッチング素子131は、何らかの手段により、放熱シート21を押圧した状態で露出部35に取り付けられていればよい。また。例えば、複数のスイッチング素子131が合成樹脂(好ましくは絶縁樹脂)によって一体化(モジュール化)され、一つのスイッチング素子モジュールとして露出部35に取り付けられてもよい。この場合、スイッチング素子モジュールが押圧部材により放熱シート21を押圧した状態で露出部35に取り付けられ得、あるいは、スイッチング素子モジュールがボルトなどの締結部材により放熱シート21を介在させて露出部35に取り付けられ得る。
【0054】
また、上述の実施形態においては、インバータケース5Aの端壁52に形成された貫通孔54に嵌合された、ハウジング3の前端壁32の突出部34の先端面が露出部35を形成している。しかし、これに限られるものではない。
図3に示されるように、ハウジング3の前端壁32の平坦な外面の一部が露出部35を形成してもよい。なお、この場合、複数のスイッチング素子131は、インバータケース5Aの端壁52の内面よりも外側に、換言すれば、インバータケース5Aの端壁52に形成された貫通孔54の内部に配置されることになる。
【0055】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る電動圧縮機の概略構成を示す断面図である。第2実施形態に係る電動圧縮機1Bは、主に自動車などの車両に搭載される。電動圧縮機1Bは、例えば車両空調装置及び/又は車両のバッテリ冷却装置の冷媒回路に組み込まれ、冷媒回路を流れる冷媒(つまり、流体)を圧縮し、高圧化して吐出するように構成される。なお、以下では、
図1における左側を電動圧縮機1Bの前側として、
図1における右側を電動圧縮機1Bの後側として説明する。
【0056】
図4を参照すると、電動圧縮機1Bは、ハウジング3と、インバータ収容部5Bと、を有する。
【0057】
ハウジング3は、円筒状の断面を有して前後方向に延びている。ハウジング3は、回転軸7、電動モータ9及び圧縮機構11を収容している。特に限定されないが、本実施形態において、圧縮機構11は、スクロール圧縮機構であり、圧縮機構11は、固定スクロール111及び可動スクロール112を有する。
【0058】
インバータ収容部5Bは、ハウジング3の前端側に配置され、ハウジング3と一体的に設けられている。インバータ収容部5Bは、有底筒状に形成され、前後方向に延びる筒状の周壁51と、周壁の一方の開口である後側開口を閉塞する端壁52と、を有する。インバータ収容部5Bは、インバータ13を収容している。なお、インバータ収容部5Bの端壁52は、インバータ収容部5Bの底壁とも称され得る。インバータ収容部5Bの開口、すなわち、周壁51の他方の開口である前側開口は、蓋部材53によって閉塞されている。蓋部材53は、インバータ収容部5Bに対して着脱可能であり、図示省略のボルト等によってインバータ収容部5Bの周壁51に固定されている。
【0059】
ここで、本実施形態においては、前方(又は後方)から見たとき、インバータ収容部5B(の端壁52)がハウジング3の外形よりも大きく形成されている。そして、インバータ収容部5Bの端壁52の一部が、ハウジング3内とインバータ収容部5B内とを仕切る隔壁6を形成している。
【0060】
ハウジング3についてさらに説明する。
【0061】
本実施形態において、ハウジング3は、モータハウジング41及び圧縮機ハウジング42をハウジング構成要素として有する。そして、ハウジング3は、モータハウジング41と圧縮機ハウジング42とが図示省略のボルト等によって締結されて形成されている。モータハウジング41が前側に配置され、圧縮機ハウジング42が後側に配置されている。なお、モータハウジング41と圧縮機ハウジング42との接合部には必要に応じてシール材(図示省略)が介装される。また、インバータ収容部5Bは、モータハウジング41と一体的に設けられており、隔壁6は、モータハウジング41内とインバータ収容部5B内とを仕切っている。
【0062】
ハウジング3は、隔壁部材43をさらに有している。隔壁部材43は、モータハウジング41及び圧縮機ハウジング42によって形成されるハウジング3の内部空間を、前側空間と後側空間とに仕切る部材である。前記前側空間は、モータハウジング41の内部空間であり、前記後側空間は、主に圧縮機ハウジング42の内部空間である。そして、前記前側空間、つまり、モータハウジング41に電動モータ9が収容され、前記後側空間、つまり、圧縮機ハウジング42に圧縮機構11が収容されている。
【0063】
具体的には、隔壁部材43は、フランジ付き有底円筒状の部材として形成されており、円筒状の周壁431と、周壁431の一端を閉塞する端壁432と、端壁432とは反対側の開口端に形成されたフランジ433と、を有する。なお、隔壁部材43の端壁432は、隔壁部材43の底壁とも称され得る。隔壁部材43は、端壁432が前方を向いた状態でモータハウジング41内の後側に配置されている。そして、隔壁部材43は、フランジ433の周縁部が圧縮機ハウジング42内に配置された固定スクロール111の周縁部と共にモータハウジング41と圧縮機ハウジング42とによって挟持されている。これにより、隔壁部材43がモータハウジング41及び圧縮機ハウジング42と一体化され、固定スクロール111がハウジング3に固定され、及び、隔壁部材43によってハウジング3の内部空間が前記前側空間と前記後側空間とに仕切られる。但し、前記前側空間と前記後側空間とは、隔壁部材43のフランジ433及び/又はその近傍に形成された連通路434を介して連通している。
【0064】
また、ハウジング3は、流体としての冷媒(前記冷媒回路を流れる冷媒)をハウジング3内に導く吸入ポート36を有している。本実施形態において、吸入ポート36は、ハウジング3の周壁31における隔壁6の近くに、すなわち、モータハウジング41に形成されている。
【0065】
次に、ハウジング3に収容された回転軸7、電動モータ9及び圧縮機構11について説明する。
【0066】
回転軸7は、ハウジング3内を前後方向に延びている。回転軸7は、前軸受61及び後軸受62によって回転自在に支持されている。特に限定されないが、本実施形態では、前軸受61及び後軸受62として転がり軸受が採用されている。
【0067】
前軸受61は、軸受保持部37に保持されている。軸受保持部37は、隔壁6のハウジング3内(モータハウジング41内)を向いた面(以下「隔壁6の第1面」という)6aの略中央に設けられている。本実施形態において、軸受保持部37は、隔壁6の第1面6aからハウジング内方に円筒状に突出して形成されており、内部に前軸受61を保持している。後軸受62は、隔壁部材43の周壁431の内部に保持されている。
【0068】
つまり、ハウジング3は、回転軸7を回転自在に支持する前軸受61を保持する第1軸受保持部と、回転軸7を回転自在に支持する後軸受62を保持する第2軸受保持部と、を有する。前記第1軸受保持部は、隔壁6の第1面6aに設けられた(円筒状の)軸受保持部37である。前記第2軸受保持部は、ハウジング3の内部空間を前記前側空間と前記後側空間とに仕切る隔壁部材43の(円筒状の)周壁431である。
【0069】
ここで、本実施形態では、隔壁部材43の端壁432には回転軸7が挿通可能な軸挿通孔(貫通孔)435が形成されており、回転軸7は、中間部分が軸挿通孔435に挿通された状態で前軸受61と後軸受62とによって回転自在に支持されている。
【0070】
また、本実施形態では、軸挿通孔435を介した前記前側空間と前記後側空間との連通を遮断するための軸シール部材63が設けられている。軸シール部材63は、隔壁部材43の周壁431の内部における後軸受62よりも端壁432側に配置されている。軸シール部材63は、例えば円環状に形成され、外周部が隔壁部材43の周壁431の内部に例えば圧入によって固定され、内周部が回転軸7の外周面に接触(摺動接触)するように構成され得る。
【0071】
電動モータ9は、三相交流モータであり、ステータ91とロータ92とを含む。ステータ91は、ステータコアとステータ巻線とを有する。ステータ91は、ハウジング3の周壁31(モータハウジング41の周壁)の内周面に固定されている。ロータ92は、ステータ91の径方向内側に配置されている。ロータ92には永久磁石が組み込まれている。ロータ92は、円筒状に形成され、内部に回転軸7が挿通された状態で回転軸7に固定されている。つまり、ロータ92は、回転軸7と一体に回転する。電動モータ9は、インバータ13からステータ91(ステータ巻線)に給電されることでロータ92が回転して回転軸7を回転させる。すなわち、電動モータ9は、インバータ13によって駆動されて回転軸7を回転させるように構成されている。
【0072】
圧縮機構11は、上述のように、固定スクロール111と、可動スクロール112と、を有する。固定スクロール111は、第1渦巻壁111aを有し、可動スクロール112は、第1渦巻壁111aに対応する第2渦巻壁112aを有する。固定スクロール111は、上述のように、ハウジング3に固定されている。可動スクロール112は、第2渦巻壁112aが固定スクロール111の第1渦巻壁111aとかみ合うように、固定スクロール111の前側に配置されている。
【0073】
圧縮機構11は、回転軸7の回転によって可動スクロール112が駆動されることで冷媒を圧縮するように構成されている。具体的には、冷媒が吸入ポート36によってハウジング3内に導かれ、ハウジング3内に導かれた冷媒が電動モータ9の隙間及び隔壁部材43に形成された連通路434を通過して圧縮機構11に至る。圧縮機構11においては、回転軸7の回転がクランク機構81を介して可動スクロール112に伝達されて可動スクロールが駆動される。クランク機構81は、回転軸7の回転を固定スクロール111に対する公転旋回運動に変換する機構である。駆動された可動スクロール112は、自転阻止機構83によって自転が阻止された状態で固定スクロール111に対して公転旋回運動を行う。そして、圧縮機構11は、可動スクロール112が固定スクロール111に対して公転旋回運動を行うことにより、周囲の冷媒を取り込んで圧縮する。
【0074】
圧縮機構11で圧縮された冷媒は、吐出ポート38から流出する。吐出ポート38は、圧縮機ハウジング42に形成されている。より具体的には、圧縮機構11で圧縮された冷媒は、固定スクロール111に形成された吐出孔111b及び吐出孔111bを開閉する吐出リード弁85を介して、圧縮機ハウジング42に形成された吐出室87に吐出され、オイルセパレータ89を通過した後に吐出ポート38から流出する。
【0075】
次に、インバータ収容部5Bに収容されたインバータ13について説明する。
【0076】
インバータ13は、電動モータ9に給電することで電動モータ9を駆動する。インバータ13は、図示省略の車載バッテリなどの直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、給電線15を介して電動モータ9のステータ91(のステータ巻線)に供給するように構成されている。インバータ13は、複数(ここでは6個)のスイッチング素子(例えば、IGBT)131と、複数のスイッチング素子131を制御するための制御回路などが実装された電子回路基板132と、を含む。
【0077】
複数のスイッチング素子131は、隔壁6の第1面6aとは反対側にある面、つまり、隔壁6のインバータ収容部5B内を向いた面(以下「隔壁6の第2面」という。)6bに配置されている。具体的には、複数のスイッチング素子131は、隔壁6の第2面6bに、弾性を有する放熱シート21を介在させて取り付けられている。つまり、複数のスイッチング素子131と隔壁6の第2面6bとの間には放熱シート21が配置されている。本実施形態においては、放熱シート21として、弾性及び放熱性に加えて絶縁性を有するシート材が採用されている。このようなシート材は、例えばシリコーン製の絶縁・放熱シートであり得る。
【0078】
本実施形態において、複数のスイッチング素子131は、それぞれが押圧部材としての押圧アーム22により、放熱シート21を押圧した状態で隔壁6の第2面6bに取り付けられている。押圧アーム22は、例えば隔壁6の第2面6bに形成されたアーム取付部39に図示省略のボルト等によって固定されている。
【0079】
電子回路基板132は、インバータ収容部5Bに形成された基板取付部55に図示省略のボルト等によって取り付けられている。また、電子回路基板132には、隔壁6の第2面6bに取り付けられた複数のスイッチング素子131のそれぞれから延びるリード131aが例えば半田付けによって接続されている。
【0080】
図5は、
図4のB-B端面図に相当する図であり、主に吸入ポート36と軸受保持部37との位置関係及び複数のスイッチング素子131の配置を説明するための図である。
【0081】
図4及び
図5を参照すると、本実施形態において、吸入ポート36は、冷媒をハウジング3内に導くと共に、冷媒を軸受保持部37に向かわせるように形成されている。具体的には、吸入ポート36の軸線36aは、軸受保持部37の外周面を向いている。つまり、吸入ポート36の軸線36a(の延長線)が軸受保持部37の外周面に交差するようになっている。好ましくは、吸入ポート36の軸線36aは、回転軸7を向いている。
【0082】
また、複数(6個)のスイッチング素子131は、互いに間隔をあけた状態で、隔壁6の第1面6aと反対側にある面である第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に配置されている(
図2における破線を参照)。さらに言えば、複数のスイッチング素子131は、放熱シート21を介在させて隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられており、複数のスイッチング素子131のそれぞれは放熱シート21を押圧している。
【0083】
第2実施形態に係る電動圧縮機1Bによれば以下の効果が得られる。
【0084】
ハウジング3内とインバータ収容部5B内とが隔壁6によって仕切られており、隔壁6のハウジング3内を向いた第1面6aには、回転軸7を回転自在に支持する前軸受61を保持する軸受保持部37が設けられている。また、冷媒をハウジング3内に導く吸入ポート36は、冷媒を軸受保持部37に向かわせるように形成されている。具体的には、軸受保持部37は、隔壁6の第1面6aから円筒状に突出して形成されて内部に前軸受61を保持しており、吸入ポート36の軸線36aは、軸受保持部37の外周面を向いている。さらに、複数のスイッチング素子131は、隔壁6の第1面6aとは反対側にある第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に配置されている。
【0085】
ハウジング3内に導かれる冷媒は、前記冷媒回路において膨張弁や蒸発器を通過した低温の冷媒である。そのため、ハウジング3内に導かれた冷媒により、軸受保持部37とその周囲、ひいては、隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分とその近傍が集中的に冷却される。つまり、複数のスイッチング素子131が配置された部分が集中的に冷却され得る。したがって、実施形態に係る電動圧縮機1Bによれば、従来に比べて複数のスイッチング素子131の冷却性能を高めることができる。
【0086】
複数のスイッチング素子131は、放熱シート21を介在させて隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられている。そのため、複数のスイッチング素子131の熱が、冷媒によって集中的に冷却され得る隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍へと効率的に伝えられる。したがって、電動圧縮機1Bにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。
【0087】
特に、複数のスイッチング素子131は、放熱シート21を押圧した状態で隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられている。そのため、接触熱抵抗の発生が抑制され、複数のスイッチング素子131の熱が、冷媒によって集中的に冷却され得る隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍へとさらに効率的に伝えられる。したがって、電動圧縮機1Bにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。
【0088】
なお、上述の実施形態においては、インバータ収容部5Bの端壁52の一部が隔壁6を形成している。しかし、これに限られるものではなく、隔壁6は、ハウジング3内(モータハウジング41内)とインバータ収容部5B内とを仕切るものであればよい。例えば、インバータ収容部5Bの端壁52の全体又はハウジング3の端壁の全体若しくは一部が隔壁6を形成してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態において、複数のスイッチング素子131は、それぞれが押圧部材としての押圧アーム22により放熱シート21を押圧した状態で隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられている。しかし、これに限られるものではない。例えば、複数のスイッチング素子131が合成樹脂(好ましくは絶縁樹脂)によって一体化(モジュール化)され、一つのスイッチング素子モジュールとして隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられてもよい。この場合、スイッチング素子モジュールが押圧部材により放熱シート21を押圧した状態で隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられ、あるいは、スイッチング素子モジュールがボルトなどの締結部材により放熱シート21を介在させて隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分又はその近傍に取り付けられる。
【0090】
また、隔壁6の第1面6aに軸受保持部37の一部を囲む円弧状のリブ14が形成されてもよい。この場合、円弧状のリブ14は、
図5に対応する
図6に示されるように、軸受保持部37の外周面における吸入ポート36側の所定範囲を除いた軸受保持部37の外周面部分を囲むように、隔壁6の第1面6aからハウジング内方に突出して形成される。円弧状のリブ14と軸受保持部37の前記外周面部分との間隔は、任意に設定され得る。また、円弧状のリブ14は、軸受保持部37の突出高さの1/2以上の突出高さを有する。好ましくは、円弧状のリブ14は、軸受保持部37の突出高さと同じ(厳密に同じである必要はなく、ほぼ同じであればよい。)突出高さを有する。なお、軸受保持部37の突出高さとは、隔壁6の第1面6aから軸受保持部37の先端部までの距離をいい、円弧状のリブ14の突出高さとは、隔壁6の第1面6aから円弧状のリブ14の先端部までの距離をいう。
【0091】
このようにすると、円弧状のリブ14と軸受保持部37の前記外周面部分と隔壁6の第1面6aとにより、冷媒が軸受保持部37の外周面及び隔壁6の第1面6aにおける軸受保持部37の周囲部分に沿って流れる流路が形成され、また、軸受保持部37の外周面に衝突した冷媒の拡散も抑制される。そのため、軸受保持部37とその周囲、ひいては、隔壁6の第2面6bにおける軸受保持部37に対応する部分とその近傍、つまり、複数のスイッチング素子131が配置された部分がさらに集中的且つ効率的に冷却され得る。したがって、電動圧縮機1Bにおいて、複数のスイッチング素子131の冷却性能がさらに高まり得る。なお、このような円弧状のリブ14は、第1実施形態におけるハウジング3の前端壁32の内面に形成されてもよい。
【0092】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【0093】
第1実施形態及びその変形例から把握し得る条項(clauses)の例を以下に記載する。
【0094】
[条項1]
回転軸、前記回転軸を回転させる電動モータ及び前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮機構を収容すると共に流体を内部に導く吸入ポートを有するハウジングと、前記電動モータを駆動するインバータを収容するインバータケースと、を有し、前記インバータケースは、前記インバータケースの端壁の外面と前記ハウジングの端壁の外面とが連結するように、前記ハウジングに固定されている、電動圧縮機であって、
前記インバータケースの前記端壁には貫通孔が形成され、前記ハウジングの前記端壁の前記外面は前記貫通孔を介して前記インバータケース内に露出する露出部を有し、
前記インバータは、放熱シートを介在させて前記露出部に取り付けられた複数のスイッチング素子と、前記インバータケースの基板取付部に取り付けられて前記複数のスイッチング素子が接続された電子回路基板と、を含む、
電動圧縮機。
【0095】
[条項2]
前記複数のスイッチング素子は、前記放熱シートを押圧した状態で前記露出部に取り付けられている、条項1に記載の電動圧縮機。
【0096】
[条項3]
前記露出部は、前記ハウジングの内部空間の断面積の1/2以上の面積を有する、条項1又は2に記載の電動圧縮機。
【0097】
[条項4]
前記ハウジングの前記端壁は、前記インバータケースの前記端壁に形成された前記貫通孔に嵌合された突出部を有し、前記突出部の先端面が前記露出部を形成している、条項1~3のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【0098】
[条項5]
前記露出部は、前記インバータケースの前記端壁の内面における前記貫通孔の周囲の部分と略面一となっている、条項4に記載の電動圧縮機。
【0099】
[条項6]
前記回転軸を回転自在に支持する軸受を保持する軸受保持部が、前記ハウジングの前記端壁の内面における前記露出部の内側に位置する部分に設けられ、
前記吸入ポートは、流体を前記軸受保持部に向かわせるように形成され、
前記複数のスイッチング素子は、前記露出部における前記軸受保持部に対応する部分又はその近傍に取り付けられている、
条項1~5のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【0100】
[条項7]
前記軸受保持部は、前記ハウジングの前記端壁の内面における前記露出部の内側に位置する部分から円筒状に突出して形成されて内部に前記軸受を保持しており、
前記吸入ポートの軸線が前記軸受保持部の外周面を向いている、
条項6に記載の電動圧縮機。
【0101】
[条項8]
前記ハウジングは、前記電動モータを収容すると共に前記吸入ポートを有するモータハウジングをハウジング構成要素として有し、前記モータハウジングの端壁が前記ハウジングの前記端壁を形成している、条項1~7のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【0102】
第2実施形態及びその変形例から把握し得る条項(clauses)の例を以下に記載する。
【0103】
[条項9]
回転軸、前記回転軸を回転させる電動モータ及び前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮機構を収容すると共に流体を内部に導く吸入ポートを有するハウジングと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記ハウジングと一体的に設けられて前記インバータを収容するインバータ収容部と、を有し、前記ハウジング内と前記インバータ収容部内とが隔壁によって仕切られている、電動圧縮機であって、
前記隔壁の前記ハウジング内を向いた第1面には、前記回転軸を回転自在に支持する軸受を保持する軸受保持部が設けられ、
前記吸入ポートは、流体を前記軸受保持部に向かわせるように形成され、
前記インバータを構成する複数のスイッチング素子は、前記第1面とは反対側にある前記隔壁の前記インバータ収容部内を向いた第2面における前記軸受保持部に対応する部分又はその近傍に配置されている、
電動圧縮機。
【0104】
[条項10]
前記軸受保持部は、前記隔壁の前記第1面から円筒状に突出して形成されて内部に前記軸受を保持しており、
前記吸入ポートの軸線が前記軸受保持部の外周面を向いている、
条項9に記載の電動圧縮機。
【0105】
[条項11]
前記隔壁の前記第1面には、前記軸受保持部の外周面における前記吸入ポート側の所定範囲を除いた外周面部分を囲むように円弧状のリブが突出して形成されている、条項10に記載の電動圧縮機。
【0106】
[条項12]
前記円弧状のリブは、前記軸受保持部の突出高さの1/2以上の突出高さを有する、条項11に記載の電動圧縮機。
【0107】
[条項13]
前記インバータ収容部は、筒状の周壁と、前記周壁の一方の開口を閉塞する端壁と、を含み、前記端壁の一部が前記隔壁を形成している、条項9~12のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【0108】
[条項14]
前記複数のスイッチング素子は、放熱シートを介在させて前記隔壁の前記第2面における前記軸受保持部に対応する部分又はその近傍に取り付けられている、条項9~13のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【0109】
[条項15]
前記ハウジングは、前記電動モータを収容すると共に前記吸入ポートを有するモータハウジングをハウジング構成要素として有し、前記モータハウジングの端壁が前記ハウジングの前記端壁を形成している、条項9~14のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【符号の説明】
【0110】
1A,1B…電動圧縮機、3…ハウジング、5A…インバータケース、5B…インバータ収容部、6…隔壁、7…回転軸、9…電動モータ、11…圧縮機構、13…インバータ、21…放熱シート、32…前端壁(ハウジングの端壁)、34…突出部、35…露出部、36…吸入ポート、36a…吸入ポートの軸線、37…軸受保持部、41…モータハウジング、51…周壁(インバータケース、インバータ収容部の周壁)52…端壁(インバータケース、インバータ収容部の端壁)、53…蓋部材、54…貫通孔、55…基板取付部、61…前軸受(軸受)、131…スイッチング素子、132…電子回路基板