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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025324
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】列車無線システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20250214BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20250214BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W4/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129995
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】筒井 貴行
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA15
5K067BB05
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】実際の通話を迅速に開始させることができる列車無線システムを得る。
【解決手段】中央装置30の起動時(A)においては、例えば、中央装置30における電源スイッチやリセットスイッチの操作により、初期化動作が行われる(S101)。この動作は、例えば列車の始発前に1回行うことができる。その後、回線制御部は、この初期化動作をトリガとして認識し、指令卓40、中央装置30、全ての基地局20との間の回線を確立、接続し(S102)、各回線は、音声信号を流すためのスタンバイ状態となる。指令卓40から移動局10側への通話を行う際の動作(B)、移動局10から指令卓40側への通話を行う際の動作(C)は、いずれも、上記の動作の後に行われる。このため、これらでは、通話を開始させる旨の制御信号(通話開始電文)の送信(S103、S106)の後で、速やかに音声信号の送信(S104、S107)を行わせることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載される移動局と、地上における異なる地点にそれぞれ設置され前記移動局と無線通信により接続された複数の基地局と、前記基地局の各々とネットワークを介して接続された中央装置と、前記中央装置と接続され前記移動局側に指示を発する指令卓と、を具備し、前記指令卓と前記移動局との間で音声信号が送受信される列車無線システムであって、
前記音声信号の送信の開始前に、前記音声信号の送信を開始させる旨の制御信号が、前記送信を開始させる側である前記指令卓、複数の前記移動局の中の一つから前記中央装置に向けて前記音声信号の送信前に発せられ、
前記中央装置を介した前記指令卓と前記基地局の各々との間で前記音声信号を伝送する複数の回線が、前記音声信号の送信を開始させる旨の制御信号が発せられるよりも前に、前記中央装置、前記指令卓、前記基地局のいずれかから発せられたトリガによって一斉に接続されることを特徴とする列車無線システム。
【請求項2】
前記トリガは、前記中央装置の起動時に前記中央装置が発することを特徴とする請求項1に記載の列車無線システム。
【請求項3】
前記トリガは、前記指令卓、又は複数の前記基地局の一つが発することを特徴とする請求項1に記載の列車無線システム。
【請求項4】
前記指令卓、前記基地局、前記移動局のいずれかは、前記音声信号の送信を開始した後において、前記送信を開始させる旨の制御信号を繰り返し発することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の列車無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車に搭載された移動局と指令卓との間で基地局を介して無線通信が行われる列車無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動する列車に搭載された移動局(車上局)と、地上の一点に固定された指令卓との間の無線通信を行わせる列車無線システムにおいては、地上における複数の地点に基地局が設置され、指令卓と移動局との間の通信は、列車の位置に対応する一つの基地局を介して行われる。この際の通信の内容としては、例えば指令卓側から全ての列車(移動局)に対して共通の指示をする連絡や、各列車(移動局)側から指令卓側への個別の連絡等がある。
【0003】
特許文献1には、このような列車無線システムの構成が記載されている。ここでは、指令卓と基地局、移動局との間の通信回線を適切に制御する回線制御局(中央装置)が設けられる。指令卓から移動局側に対して音声メッセージを送信する際には、まず、指令卓は、送信前の呼制御として、回線制御局に対して、これから音声メッセージを送信する旨の信号である呼設定メッセージを送信し、回線制御局は、この呼設定メッセージを基地局に送信する。基地局はその後にこれに対応した発呼信号を移動局側に送信し、これによって、移動局は指令卓から通話の要求がある旨を認識し、これに対する確認応答を基地局に送信し、基地局はその旨を回線制御局に送信し、更に回線制御局はその旨を指令卓に送信する。
【0004】
これによって、指令卓、回線制御局、基地局、移動局の全てが、これから指令卓から移動局への通話が行われることを認識する。このため、回線制御局は、この通話のために用いる通話チャネル(回線)を確立し、その後に指令卓側からの通話を開始させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-289646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の動作においては、実際に通話が開始されるまでの間には、呼制御に伴う一定の時間を要する。これに対して、例えば列車無線システムにおいて、指令卓から移動局への通話、移動局から指令卓への通話としては、緊急性の高いものが多い。このため、実際の通話を迅速に開始させることができる列車無線システムが求められた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、列車に搭載される移動局と、地上における異なる地点にそれぞれ設置され前記移動局と無線通信により接続された複数の基地局と、前記基地局の各々とネットワークを介して接続された中央装置と、前記中央装置と接続され前記移動局側に指示を発する指令卓と、を具備し、前記指令卓と前記移動局との間で音声信号が送受信される列車無線システムであって、前記音声信号の送信の開始前に、前記音声信号の送信を開始させる旨の制御信号が、前記送信を開始させる側である前記指令卓、複数の前記移動局の中の一つから前記中央装置に向けて前記音声信号の送信前に発せられ、前記中央装置を介した前記指令卓と前記基地局の各々との間で前記音声信号を伝送する複数の回線が、前記音声信号の送信を開始させる旨の制御信号が発せられるよりも前に、前記中央装置、前記指令卓、前記基地局のいずれかから発せられたトリガによって一斉に接続される。
前記トリガは、前記中央装置の起動時に前記中央装置が発してもよい。
前記トリガは、前記指令卓、又は複数の前記基地局の一つが発してもよい。
前記指令卓、前記基地局、前記移動局のいずれかは、前記音声信号の送信を開始した後において、前記送信を開始させる旨の制御信号を繰り返し発してもよい。
【発明の効果】
【0009】
実際の通話を迅速に開始させることができる列車無線システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る列車無線システム全体の構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る列車無線システムにおける、中央装置と指令卓、基地局の間の接続を示す図である。
図3】従来の列車無線システムにおける、実際の通話が開始されるまでの制御信号の流れの一例である。
図4】実施の形態に係る列車無線システムの第1の例における、通話が開始されるまでの動作の例である。
図5】実施の形態に係る列車無線システムの第1の例において、中央装置における回線の接続を一斉に行う動作を示す図である。
図6】実施の形態に係る列車無線システムの第1の例において、通話を開始させる旨の制御信号を受信した場合(a)、その後に通話を行っている場合(b)における動作を示す図である。
図7】実施の形態に係る列車無線システムの第2の例における、通話が開始されるまでの動作の例である。
図8】実施の形態に係る列車無線システムの第3の例における、通話が開始されるまで、及び通話中の動作の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。図1は、この列車無線システム1全体の構成を示す図である。移動局10は、移動する列車Tに搭載されている。基地局20は、地上に固定されており、複数の場所に設置されている。移動局10は、移動に伴っていずれかの基地局20との間で無線通信が可能である。図示されるように、列車T(移動局10)は複数設けられ、各々が基地局20のいずれかと無線通信を行う。
【0012】
全ての基地局20は、ネットワークNを介して、中央装置30と接続され、中央装置30には指令卓40が接続される。中央装置30は後述するような構成を具備するコンピュータであり、指令卓40は、音声の入出力が可能なコンピュータである。管理者は、指令卓40を用いて各移動局10、あるいは移動局10を介して列車Tの運転手等との間で通話を行うことができる。同様に、列車Tの運転手は、移動局10を用いて指令卓40を介して管理者と通話できる。なお、図1では指令卓40が一つだが、数設けられていてもよい。
【0013】
図2は、指令卓40と中央装置30の構成及びこれらにおける信号の流れを示す図である。前記のように、指令卓40、中央装置30は共にコンピュータで構成されるが、以下では、主に指令卓40、中央装置30における音声通話に関する構成のみについて説明する。すなわち、これらは、以下に説明する構成要素以外に、通常のコンピュータとして具備する構成要素も具備する。また、図2においては基地局20は1つのみが記載されているが、図1に示されるように、実際には複数の基地局20がネットワークNを介して中央装置30に接続されている。
【0014】
図2において指令卓40、中央装置30、基地局20の間を流れる信号としては、呼制御のために用いられる制御信号と、通話の音声信号があり、これらの経路は異なる。図2においては、制御信号の流れは点線で、音声信号の流れは実線でそれぞれ示されている。指令卓40には、呼制御に関わる制御信号を自身から発する、あるいは中央装置30側から受信する制御信号入出力部41が設けられる。また、この呼制御に関わる制御信号を中央装置30との間でやりとりする制御信号インターフェース(IF)部(指令卓側制御信号インターフェース(IF)部)42が設けられる。
【0015】
また、指令卓40には、管理者が通話をする際に用いるマイクやスピーカを含む音声入出力部43も設けられる。指令卓40側から送話する際には音声入出力部43はマイクに入力した音声から音声信号を生成し、指令卓40側が受話をする際には、受信した音声信号をスピーカから出力する。指令卓40には、この音声信号を中央装置30との間でやりとりする音声信号インターフェース(IF)部(指令卓側音声信号インターフェース(IF)部)44も設けられる。
【0016】
中央装置30にも、前記の制御信号IF部42、音声信号IF部44に対応して、制御信号、音声信号を指令卓40側との間でやりとりする制御信号IF部(中央装置側制御信号IF部)31、音声信号IF部(中央装置側音声信号IF部)32がそれぞれ設けられる。中央装置30側に入力された制御信号と音声信号は、共に回線制御部33に入力され、ここから、基地局20側との間におけるこれらの信号のやりとりをする基地局インターフェース(IF)部34に入力される。ここで、指令卓40から中央装置30を介して基地局20との間で形成される回線(通話チャネル)を介して音声信号はやりとりされる。
【0017】
また、基地局20(移動局10)側から送話が行われる際には、基地局20側からの制御信号、音声信号は基地局IF部34を介して回線制御部33に入力され、それぞれ制御信号IF部31、音声信号IF部を介して指令卓40側に送信される。この際、中央装置30には、制御信号に応じて回線制御部34を制御し、回線(通話チャネル)を定める呼制御部35が設けられる。
【0018】
本実施の形態に係る列車無線システムにおいては、特に回線制御部33、呼制御部35の動作が従来のものとは異なる。ここでは、まず、回線制御部33、呼制御部35の従来の動作を説明する。
【0019】
図1、2の構成においては、指令卓40と同時に通話が可能となる移動局10(あるいは基地局20)の数は、音声信号の伝送のために用いられる通話チャネル(回線)の数で定まる。このため、一般的には、例えば指令卓40と一つの基地局20(移動局10)との間で通話が行われている場合において、新たに他の基地局20(移動局10)が指令卓40と通話を行う場合には、他の回線がこの新たな通話に対して設定される。回線制御部33は、このような回線の設定を行う。従来の技術においては、この設定(回線の確立)は、指令卓40又は基地局20側から発せられた制御信号に基づいて行われる。
【0020】
図3は、従来の技術における、指令卓40からある一つの移動局10に対して通話を開始するまでにおける信号の流れを示し、これは特許文献1の図3に記載された内容である。ここでも、図2における制御信号の流れが点線で、音声信号の流れが実線で示されている。ここで、管理者の操作(例えばキーの操作)により、指令卓40の制御信号入出力部41は、通話のためにこの移動局10を呼び出す旨の制御信号(呼設定メッセージ)を中央装置30側に発する。これを受けた中央装置30の回線制御部33は、この制御信号(呼設定メッセージ)を、この移動局10に対応した基地局20に送信する。この基地局20とこの移動局10間においてこの時点で通話が行われていない場合には、基地局20はこの移動局10に対して空線信号が送信されているものの、基地局20は、この制御信号を受信した場合には、空線信号を発呼信号に切り替える。これにより、この移動局10は、指令卓40から通話の要求があったことを認識する。
【0021】
その後、この移動局10は、この要求を認識した旨の制御信号(同期バースト信号)を基地局20に送信する。基地局20は、これに応じて中央装置30に制御信号(送信権確認メッセージ)を送信する。中央装置30は、これを受信すると、回線制御部33が現在使用可能な通話チャネル(回線)があるか否かを判定し、回線がある場合には、回答として制御信号(送信権受付メッセージ)を基地局20側に送信する。すなわち、この段階で、指令卓40とこの移動局20との間の通話において、指令卓40、中央装置30、基地局20の間において用いられる回線が設定される。
【0022】
このように指令卓40と基地局20の間の回線を設定する動作は、図2において、上記の制御信号を呼制御部35が受信した場合に、回線制御部33を制御することによって行われる。この場合に設定されるのは、この指令卓40と一つの基地局20との間の通話に用いられる一つの回線である。
【0023】
制御信号(送信権受付メッセージ)を受信した基地局20は、移動局10に対してこの回答としての新たな制御信号(バースト受付信号)を送信する。これによって、この移動局10は、指令卓40からの呼出に対する応答の準備ができたことを認識し、更に、基地局20側に新たな制御信号(発呼応答信号)を送信する。これを受信した基地局20は、新たな制御信号(送信権獲得メッセージ、呼設定受付信号、応答信号)を中央装置30に送信する。これによって、指令卓40から移動局10への通話をこれから行う旨の認識とその際に使用する回線の準備が整った旨を、中央装置30、基地局20、移動局10の間で共有することができる。
【0024】
その後、中央装置30は、制御信号(応答確認信号)を基地局20を介して移動局10に送信し、設定された回線情報を示す制御信号(回線情報表示(通話中)信号)を指令卓40に送信する。これにより指令卓40側から音声信号が送信されることによって、実際の通話が開始される。上記の動作においては指令卓40、中央装置30、基地局30、移動局10の間で複数回にわたり制御信号がやりとりされた後に音声信号を送信するための回線(通話チャネル)が確立され、その後に実際の通話が開始される。
【0025】
図3において、領域S1は回線を確立するまでにおける制御信号をやりとりする動作、領域S2はこの通話のために回線を確立する動作、領域S3は回線を確立してから実際の通話を開始するまでにおいて制御信号をやりとりする動作、領域S4は実際に通話を行う(音声信号を送受信する)動作、にそれぞれ対応する。
【0026】
これに対して、特に近年の列車無線システムにおいては、運行に対する安全性の確保、運行ダイヤの過密化等により、例えば指令卓40側からの一斉送話や危険に対する発報機能等、必要とされる通話の内容が多岐にわたっている。このため、前記の音声信号の送信に対して必要となる回線の数は多くなり、特に中央装置30の負荷が増大した。更に、このように通話の要求があった時点から実際に通話が行われるまで(送信開始まで)に要する時間を、短くすることが要求された。
【0027】
このため、本発明の実施の形態に係る列車無線システム1においては、これから通話を開始する旨の制御信号が通話元(指令卓40又は移動局10)から発せられたこととは無関係に、予め指令卓40、中央装置30、全ての基地局20間で回線が確立される。この際、図3の場合と同様に各種の制御信号は用いられるが、全ての回線は予め準備される。この場合、個々の通話を開始する際には図3における領域S2は不要となり、少なくともその前の準備段階としての領域S1の動作も大幅に簡略化が可能となる。このため、短時間で実際の通話を開始させることができる。このように全ての回線の確立を一斉に行う動作は、中央装置30がトリガを受信することによって行われる。このトリガは、中央装置30自身、指令卓40、基地局20のいずれかから発せられる。
【0028】
このため、この列車無線システム1においては、このような動作が行われるように、回線制御部33、呼制御部35が動作する。図4は、中央装置30の起動時にこのように全ての回線を確立する場合(第1の例)における動作を示すシーケンス図である。ここでは上から順に、A:中央装置30の起動の際、B:指令卓40から移動局10側への通話を行う際、C:移動局10から指令卓40側への通話を行う際、の動作が記載されている。
【0029】
まず、中央装置30の起動時(A)においては、例えば、中央装置30における電源スイッチやリセットスイッチの操作により、初期化動作が行われる(S101)。この動作は、例えば列車の始発前に1回行うことができる。その後、回線制御部33はこの初期化動作をトリガとして認識し、指令卓40、中央装置30、全ての基地局20との間の回線を確立、接続し(S102)、各回線は、音声信号を流すためのスタンバイ状態となる。
【0030】
図5は、この際の中央装置30中の動作を示す図である。ここで、図2において動作の際に信号が流れない構成要素間の線は記載が省略されている。前記のように、従来の技術においては、回線制御部33は、呼制御部35からの制御により、指令卓40と一つの基地局20との間の回線が接続されたのに対し、ここでは、特に、指令卓40と全ての基地局20との間の回線が一斉に接続される。
【0031】
図4における指令卓40から移動局10側への通話を行う際の動作(B)、移動局10から指令卓40側への通話を行う際の動作(C)は、いずれも、上記の動作の後に行われる。このため、これらでは、通話を開始させる旨の制御信号(通話開始電文)の送信(S103、S106)の後で、速やかに音声信号の送信(S104、S107)を行わせることができる。その後、通話元から通話を終了させる旨の制御信号の送信(S105、S108)によって、通話は終了する。
【0032】
図6は、指令卓40から移動局10側への通話を行う際の動作における、通話を開始させる旨の制御信号の送信(S103)(a)、音声信号の送信(b)における、中央装置30中の動作を示す図である。図6(a)において、通話を開始する旨の制御信号(通話開始電文)は、図2における指令卓40における制御信号入出力部41におけるフックオフや操作キーの操作によって発せられる。この制御信号は、中央装置30及び基地局20を介して移動局30に達する。
【0033】
図6(b)において、音声信号は、図2における指令卓40における音声入出力部43におけるマイクから生成される。この音声信号は、この時点で形成された回線を介して基地局20に送信され、その後に移動局10に達し、移動局30側のスピーカで出力される。
【0034】
図6においては、指令卓40側から通話が行われる際の動作が示されたが、移動局10(基地局20)側から通話が行われる場合においても、各信号の流れが逆向きとなること以外については同様である。
【0035】
次に、指令卓40側から発せられるトリガ(制御信号)によって中央装置30側で回線の接続が行われる際の動作(第2の例)について説明する。図7は、この場合の動作を示すシーケンス図であり、ここでは図4に対応して、D:中央装置30の起動の際、E:指令卓から中央装置への回線接続の指示、F:指令卓40から移動局10側への通話を行う際、の動作が上から順に記載されている
【0036】
ここで、中央装置30の起動時(D)では、図4の動作とは異なり、単なる装置(コンピュータ)の起動のみが行われ(S111)、回線の接続は行われない。代わりに、この動作の指示は、E:指令卓40側からこのための制御信号が発せられること(S112)によって行われ、これにより、中央装置30では全ての基地局20との間の回線が確立、接続され(S113)、図4におけるAの終了と同様の状態となる。このため、その後において通話を行う際(F)には、図4におけるCと同様に、通話を開始させる旨の制御信号の送信(S114)の後で、速やかに音声信号の送信(S115)を行わせることができる。ここでは指令卓40側から通話を行う場合が示されているが、移動局10側から通話を行う場合についても同様である。また、図7におけるEでは回線接続の指示は指令卓40側から発せられるものとしたが、基地局20のうちの一つからこの指示が発せられるものとしてもよい。
【0037】
なお、図7のEにおける回線の接続の指示(S112)は、回線が未接続の状態において、最初に指令卓40側から通話開始の制御信号が送信された場合(S114)において、自動的に回線接続の指示が発せられるものとしてもよい。この場合には、この初回の通話の開始までの時間は長くなるものの、その後の通話においては、通話開始までに要する時間は短くなる。同様に、この指示を、複数の基地局20において最初に移動局10からの通話開始の制御信号を受けたものが行うこともできる。
【0038】
上記の列車無線システム1においては、実際に通話を開始する旨の制御信号が発せられる前に予め使用される回線が設定されるため、指令卓40側から、あるいは移動局10側からの通話を迅速に行わせることができる。
【0039】
更に、回線制御部33における回線を確立・接続する動作自身は従来の列車無線システムにおける中央装置と変わるところがなく、この動作が行われるタイミングのみが異なる。このため、この中央装置30(列車無線システム1)を従来の中央装置におけるファームウェアの変更等によって安価に得ることができる。
【0040】
ここで、例えば図4におけるBにおいて通話を行っている間(S104)に、中央装置30に障害が発生した場合には、この通話は中断する。この場合において、この障害の復旧のために、中央装置30を再起動することが必要となる場合がある。この場合には、図4におけるAに示されるように、この再起動後に再度回線の設定が自動的に行われる(S102)。
【0041】
しかしながら、この場合には、回線が再接続された段階では、中央装置30は、実際の通話を行わせる(S104)ための前提条件となる通話開始電文(S103)を受信していない。このため、回線が再接続されても、指令卓40側から通話開始電文を受信しない限り、中央装置30側では現在通話が行われている途中であることを認識できず、即時に通話を再開させることができない。
【0042】
図8は、こうした場合を考慮した例(第3の例)の、指令卓40側からの通話中における動作を、図4におけるBに対応させて示す。ここで、実際に通話を開始させる前に通話を開始させる旨の制御信号(通話開始電文)が送信されること(S103)、その後に音声信号の送信(S104)が行われることについては、同様である。
【0043】
ただし、図4におけるBの動作では通話開始電文の送信(S103)は音声信号の送信前に1回のみ行われたのに対し、図8の動作においては、音声信号の送信(S104)が行われてからも、繰り返し通話開始電文の送信(S121)が行われる。この動作は、音声信号の送信(S104)と平行して行われ、通話を終了させる旨の制御信号の送信(S105)があるまで一定の時間間隔で周期的に繰り返される。
【0044】
これにより、音声信号が送信(S104)され続けている間は、再起動後の中央装置30(呼制御部35)は、直後に通話開始電文を受信することができ、その後に通話を再開させることができる。すなわち、中央装置10の再起動後に速やかに通話を再開させることができる。なお、通話開始電文の送信(S121)は、複数回行われればよいため、必ずしも周期的に繰り返される必要はない。
【0045】
図8の例では指令卓40側からの通話について記載されているが、移動局10(基地局20)側からの通話の場合においても同様である。すなわち、移動局10又は基地局20は、図4におけるCにおける通話開始電文の送信(S106)を、音声信号の送信(S107)の開始時から繰り返し行わせることができる。
【0046】
この動作において、通話を開始させる旨の制御信号(通話開始電文)を発する動作自身は、従来の無線通信システムにおいて送話元である指令卓、基地局、移動局のいずれかの動作と変わるところがなく、この動作が通話中に繰り返し行われることのみが異なる。このため、第1の例、第2の例と同様に、この動作を行う指令卓40、基地局20、移動局10のいずれか(列車無線システム1)を、安価に得ることができる。前記のように回線の接続をトリガにより一斉に行うことに加え、こうした動作を行わせることにより、通話時に障害が発生した場合における復旧を迅速に行わせることができる。
【0047】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0048】
1 列車無線システム
10 移動局
20 基地局
30 中央装置
31 制御信号IF部(中央装置側制御信号IF部)
32 音声信号IF部(中央装置側音声信号IF部)
33 回線制御部
34 基地局IF部
35 呼制御部
40 指令卓
41 制御信号入出力部
42 制御信号IF部(指令卓側制御信号IF部)
43 音声入出力部
44 音声信号IF部(指令卓側音声信号IF部)
N ネットワーク
T 列車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8