(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025364
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20250214BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130064
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中久保 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩子
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大神 貴史
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL21
(57)【要約】
【課題】投入完了後しばらくの間、注射針がハウジングから突出された状態を維持できる注射装置を提供する。
【解決手段】注射針がハウジングの一方側から突出した状態で、バレルはバレル収容部に収容され、且つプランジャがプランジャ付勢部の付勢力によって終点に位置した状態で、プランジャと係合部材6とが中心軸線まわりに相対回転することにより、プランジャと係合部材6との係合を解除する係合解除機構とを備え、プランジャと係合部材6との相対回転における回転速度を抑制する回転抑制機構を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に注射針が設けられたバレルと、前記バレルの基端側を始点とし、前記注射針側を終点としてこの間を往復動可能に前記バレル内に挿入されるプランジャとを備えるシリンジと、
前記シリンジを収容する筒状に形成されたハウジングであって、中心軸線方向の一方側には、前記注射針を収容した状態と、該収容した状態から一方側へ所定距離離れた前記注射針が前記ハウジングの一方側から突出した状態との間を移動可能に前記バレルを収容するバレル収容部が形成され、前記バレル収容部よりも他方側には前記プランジャを収容するプランジャ収容部が形成されたハウジングと、
前記バレル収容部に設けられ、前記バレルを前記ハウジングの一方側から他方側へ付勢するバレル付勢部と、
前記プランジャ収容部に配置され、前記プランジャに係合する係合部材と、
前記係合部材に係合し、前記プランジャを前記始点から前記終点の方へ付勢するプランジャ付勢部と、
前記注射針が前記ハウジングの一方側から突出した状態で前記バレルが前記バレル収容部に収容され、且つ前記プランジャが前記プランジャ付勢部の付勢力によって前記終点に位置した状態で、前記プランジャと前記係合部材とが中心軸線まわりに相対回転することにより、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除する係合解除機構とを備え、
前記係合解除機構における前記プランジャと前記係合部材との前記相対回転の回転速度を抑制する回転抑制機構を備えることを特徴とする、注射装置。
【請求項2】
前記係合解除機構は、前記係合部材が前記プランジャに対して中心軸線まわりに回転することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、
前記回転抑制機構は、前記係合部材の回転速度を抑制する、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
前記係合部材は、前記プランジャに係合し、前記プランジャに対して中心軸線まわりに回転して前記プランジャとの係合を解除する係合回転部を含み、
前記係合解除機構は、前記プランジャに対して前記係合回転部が回転して前記プランジャと前記係合回転部との係合を解除することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、
前記回転抑制機構は、前記係合回転部に対して中心軸線まわりで回転しない係合非回転部と、前記係合回転部と前記係合非回転部との間に配置され、前記係合非回転部に対する前記係合回転部の回転速度を抑制する回転抑制部とを含み、前記係合回転部の前記係合非回転部に対する回転速度を抑制する、請求項2に記載の注射装置。
【請求項4】
前記回転抑制部は、前記係合回転部と前記係合非回転部との間に弾性変形した状態で配置される弾性体である、請求項3に記載の注射装置。
【請求項5】
前記係合解除機構は、前記プランジャが前記係合部材に対して中心軸線まわりに回転することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、
前記回転抑制機構は、前記プランジャの回転速度を抑制する、請求項1に記載の注射装置。
【請求項6】
前記プランジャは、前記係合部材に係合し、前記係合部材に対して中心軸線まわりに回転して前記係合を解除するプランジャ回転部と、前記プランジャ回転部に対して中心軸線まわりで回転しないプランジャ非回転部と、前記プランジャ回転部と前記プランジャ非回転部との間に配置され、前記プランジャ非回転部に対する前記プランジャ回転部の回転速度を抑制する回転抑制部とを備え、
前記係合解除機構は、前記係合部材に対して前記プランジャ回転部が回転して前記係合部材と前記プランジャ回転部との係合を解除することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、
前記回転抑制機構は、前記プランジャ非回転部と前記回転抑制部とを含み、前記プランジャ回転部の前記プランジャ非回転部に対する回転速度を抑制する、請求項5に記載の注射装置。
【請求項7】
前記回転抑制部は、前記プランジャ回転部と前記プランジャ非回転部との間に弾性変形した状態で配置される弾性体である、請求項6に記載の注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する際に注射針をハウジングから引き出し、使用した後に注射針をハウジング内に戻すことが可能な注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記注射装置の一例として、例えば特許文献1記載のものが存在している。この注射装置は、シリンジ、係合部材、プランジャ付勢部及びバレル付勢部と、これらを収容するハウジングと、トリガー部とを備える。前記シリンジは、内部に薬液を充填し且つ先端に注射針が設けられたバレルと、該バレルの基端側から先端側に移動可能に構成され、且つ前記バレル内に挿入されるプランジャとを備える。前記バレルの基端には、螺旋状の傾斜部が設けられている。前記プランジャは、中心軸線方向に伸びるロッド本体と、該ロッド本体の外周面から突出している第一枝部及び第二枝部とを備え、該第二枝部は、前記第一枝部よりも中心軸線方向の先端側に設けられる。前記係合部材は、前記ロッド本体を挿入可能な筒状の係合本体と、該係合本体の外周面から径方向に突出する外鍔状の付勢係合部とを備え、該付勢係合部には、中心軸線方向において、前記第一枝部を挿通可能な解除孔が設けられている。また、前記第二枝部と前記付勢係合部とが係合することにより、前記プランジャと前記係合部材とが係合している。さらに、前記プランジャ付勢部は、前記係合部材を中心軸線方向の先端側に付勢し、前記バレル付勢部は、前記バレルを中心軸線方向の基端側に付勢するためのものである。また、前記バレル付勢部の付勢力は、前記プランジャ付勢部の付勢力より弱く設定されている。そして、前記ハウジングは、バレル収容部及びプランジャ収容部を備える。前記バレル収容部には、中心軸線方向の基端側から先端側にかけて前記バレル、前記バレル付勢部が順番に収容されている。加えて、前記プランジャ収容部には、中心軸線方向の基端側から先端側にかけて、前記プランジャ付勢部、前記係合部材、前記プランジャが順番に収容されている。また、前記係合部材は、前記プランジャ付勢部の付勢に抗した状態で前記プランジャ収容部内に収容されている。さらに、前記トリガー部は、前記プランジャ収容部に収容された前記係合部材と係合することで前記プランジャ付勢部の付勢が解放されないように保持し、操作されることにより、前記係合部材との係合を解除して前記プランジャ付勢部の付勢を解放する。
【0003】
この注射装置によれば、前記トリガー部を操作して前記係合部材との係合を解除することで、前記プランジャ付勢部の付勢が解放される。そして、前記プランジャ付勢部の付勢により、前記係合部材と前記シリンジが中心軸線方向の先端側に押される。これにより、前記バレルが前記バレル付勢部を圧縮しながら前記バレル収容部内で先端側に動くことで、前記注射針が前記バレル収容部から突出する。よって、前記注射針を例えば皮膚に穿刺できる。
【0004】
また、先端側に動く前記バレルが前記バレル収容部内の一部に当接すると、前記バレルの移動は規制される。これに対し、前記プランジャ付勢部の付勢によって、前記係合部材と前記プランジャとは中心軸線方向の先端側に更に移動する。そして、前記プランジャが前記バレル内で先端側に移動すると、薬液が前記注射針から吐出される。よって、例えば皮膚内に薬液を投与できる。
【0005】
ここで、特許文献1記載の注射装置では、前記プランジャが前記バレルの先端の直前まで到達すると、前記第二枝部が前記傾斜部に当接して滑動することで、前記プランジャが前記係合部材に対して相対回転する。そのため、前記第一枝部と前記解除孔とが周方向で一致した位置に配置されて、前記プランジャと前記係合部材との係合が解除される。よって、前記シリンジは、前記プランジャ付勢部による付勢から解放され、前記バレル付勢部の付勢により基端側に押される。したがって、前記注射針が前記ハウジング内に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/162086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば穿刺箇所から薬液が漏れるといった問題に対応するため、投与完了後しばらくの間、前記注射針を皮膚に穿刺した状態で維持したい場合がある。しかし、上記特許文献1記載の注射装置は、投与完了後しばらくの間、前記注射針を皮膚に穿刺した状態で維持するための機能を備えていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、投入完了後しばらくの間、注射針がハウジングから突出された状態を維持することで確実に投与を完了することができる注射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端に注射針が設けられたバレルと、前記バレルの基端側を始点とし、前記注射針側を終点としてこの間を往復動可能に前記バレル内に挿入されるプランジャとを備えるシリンジと、前記シリンジを収容する筒状に形成されたハウジングであって、中心軸線方向の一方側には、前記注射針を収容した状態と、該収容した状態から一方側へ所定距離離れた前記注射針が前記ハウジングの一方側から突出した状態との間を移動可能に前記バレルを収容するバレル収容部が形成され、前記バレル収容部よりも他方側には前記プランジャを収容するプランジャ収容部が形成されたハウジングと、前記バレル収容部に設けられ、前記バレルを前記ハウジングの一方側から他方側へ付勢するバレル付勢部と、前記プランジャ収容部に配置され、前記プランジャに係合する係合部材と、前記係合部材に係合し、前記プランジャを前記始点から前記終点の方へ付勢するプランジャ付勢部と、前記注射針が前記ハウジングの一方側から突出した状態で前記バレルが前記バレル収容部に収容され、且つ前記プランジャが前記プランジャ付勢部の付勢力によって前記終点に位置した状態で、前記プランジャと前記係合部材とが中心軸線まわりに相対回転することにより、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除する係合解除機構とを備え、前記係合解除機構における前記プランジャと前記係合部材との前記相対回転の回転速度を抑制する回転抑制機構を備えることを特徴とする、注射装置である。
【0010】
前記構成によれば、前記注射針が前記ハウジングの一方側から突出した状態で、前記プランジャが終点に位置すると薬液の注出が完了する。そして、前記係合解除機構により、前記プランジャが終点に位置した状態で、前記プランジャと前記係合部材とが相対回転して、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除する。ここで、本発明の注射装置は、前記回転抑制機構を備えるため、前記プランジャと前記係合部材とが相対回転する際に、前記相対回転の回転速度が抑制され、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0011】
また、本発明では、前記係合解除機構は、前記係合部材が前記プランジャに対して中心軸線まわりに回転することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、前記回転抑制機構は、前記係合部材の回転速度を抑制してもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記回転抑制機構が前記係合部材の回転速度を抑制することにより、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0013】
また、本発明では、前記係合部材は、前記プランジャに係合し、前記プランジャに対して中心軸線まわりに回転して前記プランジャとの係合を解除する係合回転部を含み、前記係合解除機構は、前記プランジャに対して前記係合回転部が回転して前記プランジャと前記係合回転部との係合を解除することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、前記回転抑制機構は、前記係合回転部に対して中心軸線まわりで回転しない係合非回転部と、前記係合回転部と前記係合非回転部との間に配置され、前記係合非回転部に対する前記係合回転部の回転速度を抑制する回転抑制部とを含み、前記係合回転部の前記係合非回転部に対する回転速度を抑制してもよい。
【0014】
前記構成によれば、前記回転抑制機構が前記係合回転部の前記係合非回転部に対する回転速度を抑制することにより、前記プランジャに対する前記係合回転部の回転速度を抑制して、前記プランジャと前記係合回転部との係合を解除するまでの時間を長くすることができ、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0015】
また、本発明では、前記回転抑制部は、前記係合回転部と前記係合非回転部との間に弾性変形した状態で配置される弾性体であってもよい。
【0016】
前記構成によれば、前記回転抑制部の弾性力によって前記係合回転部の前記係合非回転部に対する回転速度を抑制することができるため、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0017】
また、本発明では、前記係合解除機構は、前記プランジャが前記係合部材に対して中心軸線まわりに回転することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、前記回転抑制機構は、前記プランジャの回転速度を抑制してもよい。
【0018】
前記構成によれば、前記回転抑制機構が前記プランジャの回転速度を抑制することにより、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0019】
また、本発明では、前記プランジャは、前記係合部材に係合し、前記係合部材に対して中心軸線まわりに回転して前記係合を解除するプランジャ回転部と、前記プランジャ回転部に対して中心軸線まわりで回転しないプランジャ非回転部と、前記プランジャ回転部と前記プランジャ非回転部との間に配置され、前記プランジャ非回転部に対する前記プランジャ回転部の回転速度を抑制する回転抑制部とを備え、前記係合解除機構は、前記係合部材に対して前記プランジャ回転部が回転して前記係合部材と前記プランジャ回転部との係合を解除することで、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するように構成され、前記回転抑制機構は、前記プランジャ非回転部と前記回転抑制部とを含み、前記プランジャ回転部の前記プランジャ非回転部に対する回転速度を抑制してもよい。
【0020】
前記構成によれば、前記回転抑制機構が前記プランジャ回転部の前記プランジャ非回転部に対する回転速度を抑制することにより、前記係合部材に対する前記プランジャ回転部の回転速度を抑制して、前記係合部材と前記プランジャ回転部との係合を解除するまでの時間を長くすることができ、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【0021】
また、本発明では、前記回転抑制部は、前記プランジャ回転部と前記プランジャ非回転部との間に弾性変形した状態で配置される弾性体であってもよい。
【0022】
前記構成によれば、前記回転抑制部の弾性力によって前記プランジャ回転部の前記プランジャ非回転部に対する回転速度を抑制することができるため、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上、本発明によれば、前記プランジャと前記係合部材との係合を解除するまでの時間を長くすることできるため、投入完了後しばらくの間、前記注射針が前記ハウジングから突出された状態を維持することで確実に投与を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る注射装置の断面図であって、初期状態を示すと共に、プランジャを外形図で示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るハウジングの第一径方向視の断面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るシリンジの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るプランジャ本体を示す図であり、プランジャ基部の部分拡大図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る係合部材の斜視図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る係合部材の第二径方向視の断面図である。
【
図8】
図8は、
図1のVIII―VIII断面線における断面図である。
【
図9】
図9は、
図1のIX-IX断面線における断面図である。
【
図10】
図10は、
図1において、プランジャ収容係合部と本体係合部とが係合する状態を示す詳細図である。
【
図11】
図11は、同実施形態に係る注射装置の断面図であって、注射針がハウジングから突出した状態を示すと共に、プランジャを外形図で示す図である。
【
図12】
図12は、同実施形態に係る注射装置の断面図であって、薬液の投与が完了した状態を示すと共に、プランジャと係合部材を外形図で示す図である。
【
図13】
図13は、
図12において、プランジャ収容係合部と本体係合部との係合が解除された状態を示す詳細図である。
【
図14】
図14は、同実施形態に係る注射装置の断面図であって、係合部材がプランジャに対して中心軸線まわりに回転した状態を示すと共に、プランジャと係合部材を外形図で示す図である。
【
図17】
図17は、同実施形態に係る注射装置の断面図であって、注射針がハウジング内に戻った状態を示すと共に、プランジャと係合部材を外形図で示す図である。
【
図18】
図18は、第二実施形態に係るプランジャ収容部の第二径方向視の断面図である。
【
図19】
図19は、同実施形態に係るプランジャ本体の正面図である。
【
図21】
図21は、プランジャのうち、ロッド本体とプランジャリングと弾性体の断面図である。
【
図22】
図22は、同実施形態に係る係合部材の斜視図である。
【
図23】
図23は、同実施形態に係る係合部材の第二径方向視の断面図である。
【
図24】
図24は、同実施形態に係る注射装置の正面図であって、ハウジングを断面で示し、初期状態を示す図である。
【
図26】
図26は、同実施形態に係る注射装置の正面図であって、ハウジングを断面で示し且つ薬液の投与が完了した状態を示す図である。
【
図28】
図28は、同実施形態に係る注射装置の正面図であって、ハウジングを断面で示し、且つプランジャが係合部材に対して中心軸線まわりに回転した状態を示す図である。
【
図30】
図30は、同実施形態に係る注射装置の正面図であって、ハウジングを断面で示し、且つ注射針がハウジング内に戻った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の注射装置に係る実施形態について説明する。まず初めに、第一実施形態に係る注射装置1の構成について説明する。
【0026】
なお、以下の説明において、注射装置1の中心軸線Oが延びる方向を中心軸線方向Xと称する。
図1の下側を中心軸線方向Xの一方側とし、
図1の上側を中心軸線方向Xの他方側とする。また、中心軸線方向Xに直交する方向を径方向と称する。
図3,5に示すように、径方向には、互いに直交する第一径方向Y1と第二径方向Y2とが含まれているものとする。さらに、中心軸線Oまわりの方向を周方向と称する。
【0027】
注射装置1は、例えば、患者が自ら身体にインシュリンやリウマチ治療薬等の液状の薬剤である薬液を投与する際に使用されるものである。
図11,17に示すように、この注射装置1は、使用時にハウジング2から注射針503を突出し、使用後に注射針503をハウジング2内に戻すものである。
図1に示すように、注射装置1は、ハウジング2と、プランジャ付勢部3と、バレル付勢部4と、シリンジ5と、係合部材6とを備える。
【0028】
図1に示すように、ハウジング2は、プランジャ付勢部3やバレル付勢部4、シリンジ5や係合部材6を収容するためのものである。
図2に示すように、ハウジング2は、中心軸線方向Xにおいて、他方側が後述するトリガー部23によって閉じられ、一方側が開口した筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。ハウジング2は、バレル収容部20と、仕切部21と、プランジャ収容部22と、とを備える。
【0029】
図1に示すように、バレル収容部20は、バレル50を収容するためのものである。バレル収容部20は、中心軸線方向Xの両側が開口した筒状である。
図2に示すように、バレル収容部20は、中心軸線方向Xの他方側に配置される筒状のバレル他方収容部200と、中心軸線方向Xの一方側に配置される筒状のバレル一方収容部201とを備える。
【0030】
図2に示すように、本実施形態のバレル他方収容部200の内周面には、径内側に突出するバレル凸部20Aが設けられている。このバレル凸部20Aは、バレル他方収容部200の中心軸線方向Xの全域に亘って設けられている。また、本実施形態のバレル凸部20Aは、中心軸線方向Xに沿って設けられる。なお、本実施形態では、バレル凸部20Aは、第一径方向Y1で対向するようにバレル他方収容部200の内周面に一対設けられている。
【0031】
図2に示すように、バレル一方収容部201の内周面には、中心軸線方向Xに貫通孔(採番しない)を形成する内鍔状に構成される付勢台部20Bが設けられている。なお、本実施形態の付勢台部20Bは、バレル一方収容部201の中心軸線方向Xの他方端よりも一方側に配置されている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のバレル一方収容部201には、径方向に貫通する貫通部20Cが設けられている。この貫通部20Cは、バレル一方収容部201を第二径方向Y2に貫通する貫通孔である。本実施形態の貫通部20Cは、バレル一方収容部201の周面に沿う長方形状に構成されている。また、本実施形態では、貫通部20Cは、付勢台部20Bよりも中心軸線方向Xの一方側及び他方側に設けられている。なお、貫通部20Cは、第二径方向Y2で対向するようにバレル一方収容部201に一対設けられている。
【0033】
図2に示すように、バレル一方収容部201は、バレル他方収容部200の中心軸線方向Xの一方側に接続している。ここで、バレル一方収容部201の内径は、バレル他方収容部200の内径よりも小径である。そのため、バレル一方収容部201の中心軸線方向Xの他方端には、バレル他方収容部200と連続する段部であるバレル段部20Dが形成されている。なお、バレル段部20Dは、径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。
【0034】
図2に示すように、仕切部21は、中心軸線方向Xに貫通する貫通孔を形成する環状部材で構成されている。この仕切部21は、中心軸線方向Xの一方端及び他方端が径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。仕切部21の内径は、バレル他方収容部200の内径よりも小径である。一方で、仕切部21の外径は、バレル他方収容部200の外径と略同一である。そして、仕切部21は、中心軸線方向Xの一方端がバレル収容部20の中心軸線方向Xの他方端に当接した状態で配置されている。
【0035】
プランジャ収容部22は、中心軸線方向Xに延びる筒状である。
図2に示すように、プランジャ収容部22は、中心軸線方向Xの一方側に配置される筒状のプランジャ一方収容部220と、中心軸線方向Xの他方側に配置される筒状のプランジャ他方収容部221とを備える。
【0036】
プランジャ一方収容部220は、内径がバレル他方収容部200及び仕切部21の外径よりも大径に構成された筒状である。そのため、
図2に示すように、プランジャ一方収容部220が中心軸線方向Xの他方側からバレル他方収容部200及び仕切部21に外嵌することで、プランジャ収容部22がバレル収容部20及び仕切部21に接続されている。よって、ハウジング2が構成される。
【0037】
プランジャ他方収容部221の内周面上には、プランジャ収容係合部(採番しない)が設けられている。
図2に示すように、本実施形態のプランジャ収容係合部は、プランジャ他方収容部221から径内側に突出するプランジャ収容凸部22Aと、プランジャ他方収容部221に凹設されたプランジャ収容凹部22Bとを備える。
【0038】
プランジャ収容凸部22Aは、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの他方端から一方側に向かって連続して形成されている。また、プランジャ収容凸部22Aの中心軸線方向Xの一方端は、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの一端よりも他方側に設けられている。そのため、プランジャ収容凸部22Aは、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの全域には形成されておらず、中心軸線方向Xでプランジャ他方収容部221よりも短い。さらに、プランジャ収容凸部22Aは、中心軸線方向Xに沿うように形成されている。なお、本実施形態のプランジャ収容凸部22Aは、第一径方向Y1及び第二径方向Y2それぞれで対向するようにプランジャ他方収容部221の内周面に一対ずつ設けられている。これに対して、プランジャ収容凹部22Bは、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの全域に設けられている。このプランジャ収容凹部22Bは、中心軸線方向Xに沿うように形成されている。また、プランジャ収容凹部22Bは、周方向で隣り合うプランジャ収容凸部22A,21Aの間に配置されている。
【0039】
図2に示すように、プランジャ他方収容部221がプランジャ一方収容部220の中心軸線方向Xの他方側に接続することで、プランジャ収容部22が構成されている。ここで、プランジャ他方収容部221の内径は、プランジャ一方収容部220の内径よりも小径である。そのため、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの一方端には、プランジャ一方収容部220と連続する段部であるプランジャ段部(採番しない)が形成されている。なお、プランジャ段部は、径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。
【0040】
ここで、プランジャ他方収容部221は、内径が仕切部21の外径よりも小径である。そのため、
図2に示すように、ハウジング2では、プランジャ段部が仕切部21の中心軸線方向Xの他方端に当接している。なお、本実施形態では、プランジャ他方収容部221の内径は、仕切部21の内径よりも大径である。
【0041】
図1,2に示すように、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの他方側には、トリガー部23が設けられている。トリガー部23は、トリガー取付部230と、トリガー本体部23Aと、トリガーロック操作部23aとを備える。
【0042】
図2に示すように、トリガー取付部230は、プランジャ他方収容部221から径内側に突出するトリガー取付台部231と、トリガー取付台部231から中心軸線方向Xの他方側に突設される円筒状のトリガー筒部232と、を備える。
【0043】
トリガー取付台部231は、中心軸線方向Xに挿通孔を形成する内鍔状である。トリガー取付台部231は、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの他方端に配置されている。なお、トリガー取付台部231の中心軸線方向の一方端には、挿入孔(図示しない)が設けられている。
【0044】
トリガー筒部232は、挿通孔を囲うように配置されている。トリガー筒部232の内周面には、ロック段部233が形成されている。ロック段部233は、トリガー取付台部231からトリガー筒部232の途中に亘って中心軸線方向Xに伸びる。ロック段部233は、周方向に略180度離れて一対設けられている。また、トリガー筒部232の外周面には、径外側に突出する凸部234が複数形成されている。
【0045】
図2に示すように、トリガー本体部23Aは、操作する使用者によって押下される円板形状の天板部23Bと、天板部23Bの外周縁から中心軸線方向Xの一方側に垂下する外スカート部23Cと、外スカート部23Cよりも径内側で天板部23Bから中心軸線方向Xの一方側に垂下する内スカート部23Fと、平板部23Gとを備える。
【0046】
外スカート部23Cは、円筒状に構成されている。
図1に示すように、外スカート部23Cには、周方向の一部を中心軸線方向Xの一方端から中心軸線方向Xの他方側を切り欠くことで解除溝23Dが形成されている。この解除溝23Dは、ロック段部233を挿入可能に構成されている。また、本実施形態の外スカート部23Cには、径方向で対向する一対の解除溝23Dが形成されている。
図2に示すように、外スカート部23Cの外周面には、窪んだ連動溝23Eが設けられている。この連動溝23Eは、外スカート部23Cの中心軸線方向Xの他方端から一方側に設けられている。なお、連動溝23Eは、外スカート部23Cの外周面に複数設けられている。
【0047】
外スカート部23Cの外径は、トリガー筒部232の内径よりも小径である。そのため、トリガー本体部23Aは、トリガー筒部232に挿入可能に構成されている。外スカート部23Cの中心軸線方向Xの長さは、トリガー筒部232の中心軸線方向Xの長さと同一である。
図2では、外スカート部23Cの中心軸線方向Xの一方端がロック段部233に当接した状態で、トリガー本体部23Aがトリガー筒部232内に挿入されている。さらに、外スカート部23Cは、トリガー筒部232内に挿入された状態で、中心軸線Oまわりで回転可能に構成されている。そのため、トリガー筒部232内に挿入された外スカート部23Cを中心軸線Oまわりに回転させ、ロック段部233と解除溝23Dとが周方向で一致することにより、解除溝23Dにロック段部233を挿入可能となる。よって、解除溝23Dとロック段部233とが周方向で一致すると、トリガー本体部23Aは、中心軸線方向Xの一方側に押し込み可能となる。
【0048】
内スカート部23Fは、筒状である。
図2に示すように、内スカート部23Fの外径は、外スカート部23Cの内径よりも小径である。そのため、内スカート部23Fは、外スカート部23Cよりも内側に配置されている。内スカート部23Fは、中心軸線方向Xで外スカート部23Cと略同一の長さである。
【0049】
平板部23Gは、中心軸線方向Xに長さを有し、径方向に幅と厚みを有する板状部材である。
図1,2では、平板部23Gが第一径方向Y1に幅を有し、第二径方向Y2に厚みを有している。平板部23Gは、内スカート部23Fよりも径内側で天板部23Bから垂下している。また、平板部23Gは、内スカート部23Fと外スカート部23Cよりも中心軸線方向Xで長い。この平板部23Gは、トリガー取付台部231の貫通孔に挿入可能に構成されている。
【0050】
図2に示すように、トリガーロック操作部23aは、円筒状の筒部23bと、筒部23bの中心軸線方向Xの他方端から径内方に突出する突出部23cとを備える。筒部23bには、周面の一部を切り欠くことで周方向に延びる回動溝23dが形成されている。この回動溝23dは、凸部234が挿入可能に構成されている。
【0051】
筒部23bの内径は、トリガー筒部232の外径よりも大径である。そのため、
図2では、回動溝23dに凸部234が挿入された状態で、筒部23bがトリガー筒部232を外嵌している。突出部23cは、連動溝23Eに挿入可能に構成されている。そして、突出部23cが連動溝23Eに挿入されることにより、トリガー本体部23Aがトリガー筒部232から抜けないように構成されている。なお、本実施形態の突出部23cは、周方向に複数設けられている。ここで、トリガーロック操作部23aは、中心軸線Oまわりに回転可能に構成されている。そのため、トリガーロック操作部23aが中心軸線Oまわりに回転することにより、トリガー本体部23Aを中心軸線Oまわりに回転させることができる。
【0052】
プランジャ付勢部3は、シリンジ5や係合部材6を中心軸線方向Xの他方側から一方側に付勢するものである。また、本実施形態のプランジャ付勢部3は、係合部材6を中心軸線Oまわりに回転するように付勢するためのものである。本実施形態のプランジャ付勢部3は、中心軸線Oまわりに巻回される圧縮コイルねじりばねである。プランジャ付勢部3の外径は、プランジャ収容部22の内径よりも小径である。そのため、プランジャ付勢部3は、プランジャ収容部22内に収容可能に構成されている。
図1に示すように、プランジャ付勢部3は、中心軸線方向Xの他方端が中心軸線方向Xの一方側からトリガー取付台部231に設けられた挿入孔に挿入された状態で、プランジャ一方収容部220内に収容されている。
【0053】
バレル付勢部4は、バレル50を中心軸線方向Xの一方側から他方側に付勢するためのものである。
図1に示すように、本実施形態のバレル付勢部4は、中心軸線Oまわりに巻回される圧縮コイルばねである。バレル付勢部4は、バレル収容部20に収容可能に構成されている。具体的に、バレル付勢部4は、付勢台部20Bにより形成された貫通孔よりも大径で且つバレル一方収容部201の内径よりも小径である。そのため、
図1に示すように、バレル付勢部4は、中心軸線方向Xの他方側から付勢台部20Bに当接した状態でバレル収容部20に収容されている。よって、バレル付勢部4は、付勢台部20Bによって中心軸線方向Xの一方側への移動が止められている。なお、バレル付勢部4の付勢力は、プランジャ付勢部3の付勢力よりも弱く設定されている。
【0054】
図3に示すように、シリンジ5は、先端に注射針503が設けられたバレル50と、プランジャ51とを備える。また、バレル50は、内部に薬液を充填したバレル本体部500と、バレル本体部500に取り付けられたカバー部50Aとを備える。
【0055】
バレル本体部500は、透明な樹脂やガラス等で構成される。バレル本体部500は、薬液が充填されたバレル筒部501と、バレル筒部501の中心軸線方向Xの他方端から径外側に突設される外鍔部502(
図1参照)とを備える。
【0056】
バレル筒部501は、円筒状である。
図3に示すように、バレル筒部501の中心軸線方向Xの一方端には、注射針503が突設している。よって、バレル50の先端である中心軸線方向Xの一方端には注射針503が設けられている。本実施形態では、バレル筒部501の外径が圧縮コイルばねであるバレル付勢部4の内径よりも小径である。そのため、
図1に示すように、バレル筒部501は、バレル付勢部4に対して挿入されている。また、バレル筒部501の外径は、付勢台部20Bにより形成された貫通孔よりも小径である。そのため、バレル本体部500は、バレル筒部501を貫通孔に挿入した状態でバレル収容部20内に配置されている。
【0057】
図3に示すように、カバー部50Aは、外周面の一部が切削され、底面が略C字状に形成された筒状である。このカバー部50Aは、中心軸線方向Xの一方端及び他方端が径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。カバー部50Aには、中心軸線方向Xに貫通する円形状の貫通孔50Bが形成されている。
図9に示すように、この貫通孔50Bには、カバー部50Aの内周面の一部を切り欠くことにより、軸移動溝部50Cが形成されている。本実施形態では、第二径方向Y2に二つの軸移動溝部50C,50Cが形成されている。また、
図3,9に示すように、カバー部50Aの外周面には、径内側に凹設されるカバー凹部50Dが設けられている。カバー凹部50Dは、中心軸線方向Xに沿って設けられている。カバー凹部50Dは、カバー部50Aの中心軸線方向Xの一方端から他方端にかけて形成されている。本実施形態では、一対のカバー凹部50D,50Dが第一径方向Y1で対向するようにカバー部50Aに設けられている。
【0058】
カバー部50Aは、バレル本体部500に取付可能に構成されている。本実施形態のカバー部50Aは、切削された外周面の一部から径方向に外鍔部502がスライド挿入されることにより、バレル本体部500に取り付けられている。なお、カバー部50Aがバレル本体部500に取り付けられた状態では、カバー部50Aの貫通孔50Bとバレル筒部501内とが連通している。
【0059】
カバー部50Aの外径は、バレル他方収容部200の内径と略同一である。そのため、カバー部50Aは、バレル他方収容部200に収容可能に構成されている。ここで、
図9に示すように、カバー部50Aのカバー凹部50Dがバレル他方収容部200のバレル凸部20Aに係合した状態で、カバー部50Aがバレル他方収容部200に収容されている。
【0060】
図1に示すように、カバー部50Aの中心軸線方向Xの長さは、バレル他方収容部200の中心軸線方向Xの長さよりも短い。そのため、カバー部50Aは、バレル他方収容部200内で中心軸線方向Xに移動可能である。
【0061】
ここで、カバー部50Aの外径は、圧縮コイルばねであるバレル付勢部4の外径よりも大径である。そのため、バレル50がバレル収容部20内に配置された状態では、カバー部50Aの中心軸線方向Xの一方端には、バレル付勢部4が当接している。よって、カバー部50Aは、中心軸線方向Xの他方側からバレル付勢部4の付勢を止めている。したがって、
図11、17に示すように、カバー部50Aは、バレル付勢部4の付勢力に抗することで中心軸線方向Xの一方側に移動し、バレル付勢部4の付勢力により中心軸線方向Xの他方側に移動する。
【0062】
ところで、カバー部50Aの外径は、バレル一方収容部201の内径及び仕切部21の内径よりも大径である。よって、カバー部50Aは、バレル他方収容部200内で中心軸線方向Xの一方側に移動するとバレル段部20Dに当接し、中心軸線方向Xの他方側に移動すると仕切部21の中心軸線方向Xの一方端に当接するように構成されている。
【0063】
バレル50の中心軸線方向Xの長さは、バレル収容部20の中心軸線方向Xの長さよりも短い。そのため、
図1に示す状態では、バレル付勢部4の付勢力によりバレル50(具体的には、カバー部50A)が中心軸線方向Xの他方側に付勢され、且つ注射針503がハウジング2内に収容されている。この状態のことを第一状態と称する。一方で、
図11に示す状態では、バレル50(具体的には、カバー部50A)がバレル付勢部4の付勢力に抗することで、注射針503がハウジング2の中心軸線方向Xの一方側から突出している。この状態のことを第二状態と称する。即ち、バレル50は、第一状態と、第二状態との間で移動可能である。
【0064】
プランジャ51は、バレル50内に挿入されるものである。
図3に示すように、プランジャ51は、ピストン51Aと、ピストン51Aに係合されるプランジャ本体510とを備える。
【0065】
ピストン51Aは、バレル50内の薬液がバレル50外に漏れることを防止すると共に、薬液を注射針503からバレル50外に押し出すためのものである。ピストン51Aは、バレル筒部501内に配置され、バレル筒部501の内周面全周に密接している。
【0066】
プランジャ本体510は、ロッド511と、ロッド511よりも中心軸線方向Xの他方側に配置されるプランジャ基部513とを備える。
【0067】
図3に示すように、ロッド511は、中心軸線方向Xに沿って延びる部材である。このロッド511は、バレル筒部501の内径とカバー部50Aの貫通孔50Bよりも小径である。そのため、ロッド511は、バレル50に挿入可能に構成されている。よって、
図1に示すように、プランジャ51は、バレル50の中心軸線方向Xの一方側及び他方側を往復動可能な状態でバレル50内に挿入されている。
【0068】
図3に示すように、ロッド511の外周面には、外側に突設する軸移動突部512が形成されている。軸移動突部512は、ロッド511の中心軸線方向Xの一方端から他方側に向かって延びる。軸移動突部512は、軸移動溝部50Cに内嵌可能に構成されている。なお、本実施形態では、第二径方向Y2に一対の軸移動突部512,512が形成されている。
【0069】
図9に示すように、軸移動突部512が軸移動溝部50Cに嵌った状態で、ロッド511が貫通孔50Bに挿入されることにより、プランジャ本体510は、中心軸線Oまわりで回転不能の状態で、バレル50に挿入されている。なお、
図1に示すように、ロッド511の中心軸線方向Xの一方端は、ピストン51Aの中心軸線方向Xの他方端に当接している。
【0070】
図3に示すように、プランジャ基部513は、ロッド511よりも中心軸線方向Xの他方側に配置されている。本実施形態のプランジャ基部513は、ロッド511部よりも大径である。プランジャ基部513は、プランジャ係合部514と、トリガー係合部515とを備える。
【0071】
図4に示すように、プランジャ係合部514は、ロッド511の中心軸線方向Xの他方端に接続しているものである。なお、本実施形態のプランジャ係合部514は、ロッド511よりも大径の部材である。
【0072】
プランジャ係合部514の外周面には、径内側に窪む溝部51aが形成されている。
図4,5に示すように、本実施形態の溝部51aは、中心軸線方向Xに延びる軸溝部51bと、周方向に延びる周溝部51cとを備える。軸溝部51bは、プランジャ係合部514の中心軸線方向Xの一方端から他方側に亘るようにプランジャ係合部514に設けられている。この軸溝部51bは、中心軸線方向Xに沿って伸びる。
図4,5に示すように、周溝部51cは、周方向に沿うようにプランジャ係合部514に設けられている。周溝部51cは、周方向の一方端である周一方端51dと周方向の他方端である周他方端51eとを備える。周溝部51cは、軸溝部51bよりも中心軸線方向Xの他方側に配置され、中心軸線方向Xで軸溝部51bと連続している。具体的に、周溝部51cは、周一方端51dが軸溝部51bに連続している。
【0073】
図3,4に示すように、トリガー係合部515は、中心軸線方向Xの他方側が二股状に構成された部材である。トリガー係合部515は、二股状の部分を近づけるように撓むことが可能に構成されている。また、撓んだトリガー係合部515は、元の状態に戻るように構成されている。よって、トリガー係合部515は弾性変形可能に構成されている。トリガー係合部515の中心軸線方向Xの他方端には、径外側に突出するリブ516が形成されている。このリブ516は、中心軸線方向Xの他方側から一方側に進むにつれて径外側への突出量が大きくなるテーパ状に構成されている。なお、リブ516の中心軸線方向Xの一方端は、径方向に沿う平坦面である。
【0074】
トリガー係合部515は、トリガー取付台部231により形成された貫通孔に挿通可能に構成されている。具体的に、リブ516がトリガー取付台部231の内周面に当接して、トリガー係合部515の二股状の部分が近づくように撓むことで、
図1に示すように、トリガー係合部515はトリガー取付台部231により形成された貫通孔に挿通される。そして、トリガー係合部515が弾性力で元の状態に戻り、リブ516の中心軸線方向Xの一方端が中心軸線方向Xの他方側からトリガー取付台部231に当接する。
【0075】
トリガー係合部515の二股状の部分の離間距離は、平板部23Gの幅よりも長い。そのため、トリガー係合部515の二股状の部分の間には、平板部23Gを挿入可能に構成されている。
図1では、トリガー係合部515の二股状の部分の間に、平板部23Gが配置されている。
【0076】
図6に示すように、係合部材6は、環状に構成されている。係合部材6は、筒状の係合本体60と、係合リング61と、弾性体62とを備える。本実施形態の係合本体60は、係合環状部600と、係合筒部601とを備える。
【0077】
図6に示すように、係合環状部600は、環状の部材である。
図7に示すように、本実施形態の係合環状部600では、中心軸線方向Xの一方端及び他方端が平坦面である。この係合環状部600の内径は、プランジャ本体510よりも大径である。一方で、係合環状部600の外径は、プランジャ他方収容部221の内径よりも小径である。
【0078】
係合環状部600には、径内側に突出する径内突出部60aが形成されている。この径内突出部60aは、プランジャ係合部514の溝部51aに挿入可能に構成されている。
図6に示すように、本実施形態の係合環状部600には、周方向に複数(具体的には、二つ)の径内突出部60aが設けられている。また、係合環状部600の中心軸線方向Xの他方端には、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方端を固定するための固定部が設けられている。本実施形態の固定部は、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方端を挿入可能な挿入孔60bである。また、係合環状部600の外周面には、プランジャ収容凸部22Aに凹凸嵌合可能な環状凹部60Aが形成されている。この環状凹部60Aは、第一径方向Y1及び第二径方向Y2それぞれで一対設けられている。
【0079】
係合筒部601は、筒状である。
図7に示すように、係合筒部601は、中心軸線方向Xの一方側から係合環状部600に接続している。係合筒部601の内径は、係合環状部600の内径と略同一である。そのため、係合本体60に対してプランジャ本体510を挿入可能である。なお、係合筒部601の外径は、係合環状部600の外径よりも小径である。
【0080】
図7に示すように、係合筒部601の外周面には、径外側に突出する鍔部602が設けられている。本実施形態の鍔部602は、係合筒部601の中心軸線方向Xの一方側に配置されている。この鍔部602は、中心軸線方向Xの一方側が他方側よりも径方向の外側に位置する階段状に構成されている。そのため、本実施形態の鍔部602は、中心軸線方向Xの一方端における外径が最も大きい。また、鍔部602の中心軸線方向Xの他方端及び一方端は、径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。さらに、鍔部602は、中心軸線方向Xの一方端の外径が係合環状部600の外径と略同一である。そのため、係合本体60は、プランジャ他方収容部221に収容可能である。
【0081】
鍔部602の外周面には、プランジャ収容凸部22Aに凹凸嵌合可能な鍔凹部60Bが設けられている。この鍔凹部60Bは、鍔部602のうち、外径が最も大きい中心軸線方向Xの一方端に設けられている。また、鍔凹部60Bは、周方向において環状凹部60Aと略同一の位置に配置されている。そのため、鍔凹部60Bは、第一径方向Y1及び第二径方向Y2それぞれで一対設けられている。本実施形態では、鍔凹部60Bと環状凹部60Aとで、プランジャ収容係合部に係合可能な本体係合部60Cが構成される。
【0082】
係合リング61は、環状の部材である。係合リング61の中心軸線方向Xの一方端及び他方端は平坦面である。係合リング61の内径は、係合筒部601の外径よりも大径である。そのため、
図7に示すように、係合リング61は、係合筒部601に外嵌された状態で係合本体60の外周面上に配置されている。具体的に、係合リング61は、中心軸線方向Xにおいて係合環状部600と鍔部602との間に配置されている。そのため、係合リング61の中心軸線方向Xの長さは、係合筒部601の中心軸線方向Xの長さよりも短い。係合リング61の外径は、係合本体60のうち、係合環状部600の外径及び鍔部602の中心軸線方向Xの一方端の外径と略同一である。係合リング61の外周面には、プランジャ収容凹部22Bと凹凸嵌合可能に構成されるリング凸部61Aと、プランジャ収容凸部22Aと凹凸嵌合可能に構成されるリング凹部61Bとが設けられている。
図6に示すように、リング凹部61Bは、周方向において本体係合部60Cと略同一の位置に配置されている。そのため、リング凹部61Bは、第一径方向Y1及び第二径方向Y2それぞれで一対設けられている。
【0083】
弾性体62は、周方向に弾性変形可能に構成されている。本実施形態の弾性体62は、環状に構成されたOリングである。具体的に、本実施形態の弾性体62は、シリコーンゴムにオイルを練り込ませたオイルブリードシリコーンゴムで構成されている。なお、弾性体62は、オイルブリードシリコーンゴムの材質、例えばフッ素ゴムや、ニトリルゴム、シリコーンゴムで構成されていてもよい。
【0084】
弾性体62は、係合本体60と係合リング61との間に配置されている。本実施形態では、弾性体62は、中心軸線方向Xにおいて係合本体60と係合リング61との間に配置されている。具体的に、弾性体62が係合環状部600の中心軸線方向Xの一方端と係合リング61の中心軸線方向Xの他方端との間、係合リング61の中心軸線方向Xの一方端と鍔部602の中心軸線方向Xの他方端との間に配置されている。よって、本実施形態では、2つの弾性体62,62が中心軸線方向Xの一方側及び他方側で係合本体60と係合リング61との間に配置されている。また、弾性体62は、係合本体60と係合リング61に当接している。
【0085】
係合部材6の中心軸線方向Xの長さは、仕切部21とプランジャ収容凸部22Aとの中心軸線方向Xの離間距離よりも短い。なお、係合部材6の径方向の長さは、仕切部21の内径よりも大径である。
【0086】
係合部材6は、プランジャ係合部514に係合している。具体的に、プランジャ基部513を係合部材6に挿入する際に径内突出部60aを溝部51aに挿入することにより、係合部材6は、プランジャ係合部514に係合している。本実施形態では、軸溝部51bに挿入した径内突出部60aを周溝部51cに移動させた後、係合部材6とプランジャ本体510とを中心軸線Oまわりに相対回転させる。具体的には、係合本体60をプランジャ51に対して中心軸線Oまわりに回転させる。これにより、
図8に示すように、径内突出部60aが周溝部51cの周他方端51e側に配置される。よって、係合部材6は、プランジャ51に係合している。
【0087】
図1に示すように、プランジャ51に係合している係合部材6は、プランジャ収容部22に収容されている。この係合部材6は、プランジャ付勢部3をねじりが解放されない状態で中心軸線方向Xに圧縮している。ここで、プランジャ付勢部3は、中心軸線Oまわりでねじられた状態で、中心軸線方向Xの他方端がトリガー取付台部231に設けられた挿入孔に挿入され、中心軸線方向Xの一方端が係合環状部600の挿入孔60bに挿入されている。これに対して、係合本体60の本体係合部60C及び係合リング61のリング凹部61Bとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凸部22A、係合リング61のリング凸部61Aとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凹部22Bとを凹凸嵌合させた状態で、係合部材6がプランジャ他方収容部221に収容されている。よって、係合部材6は、中心軸線Oまわりで回転不能であることにより、プランジャ付勢部3のねじりを解放しないようにしている。また、係合部材6がプランジャ他方収容部221内で中心軸線方向Xの他方側に移動することで、係合部材6とトリガー取付台部231により、プランジャ付勢部3を中心軸線方向Xに圧縮している。さらに、トリガー係合部515がトリガー取付台部231によって形成された貫通孔に挿入されることにより、
図1に示すように、リブ516が中心軸線方向Xの他方側からトリガー取付台部231に当接している。よって、係合部材6は、プランジャ付勢部3を中心軸線Oまわりでねじった状態であり、且つ中心軸線方向Xに圧縮した状態で保持している。
【0088】
また、係合部材6がプランジャ他方収容部221に収容された状態では、弾性体62がプランジャ他方収容部221の内周面と径方向で離間した状態で配置されている。
【0089】
以上が、第一実施形態に係る注射装置1の構成についての説明であった。続いて、この注射装置1の使用方法について説明する。
【0090】
図1に示すように、本実施形態の注射装置1は使用する前は初期状態にある。この初期状態において、注射針503はハウジング2内に収容されている。よって、バレル50は、第一状態にある。なお、初期状態では、ハウジング2の中心軸線方向Xの一方側には、図示しないキャップが取り付けられ、注射針503がハウジング2の外側に突出しないようになっているものとする。そのため、注射装置1を使用する場合には、まず最初に、ハウジング2からキャップを取り外す。
【0091】
続いて、注射針503をハウジング2の中心軸線方向Xの一方側から突出させて、バレル50を第一状態から第二状態に移動させる。よって、トリガー部23のロックを解除し、トリガー本体部23Aを中心軸線方向Xの一方側に押し込む。具体的には、トリガーロック操作部23a及びトリガー本体部23Aをトリガー取付部230に対して、中心軸線方向Xまわりに回転させ、解除溝23Dとロック段部233とを周方向で一致した位置に配置する。ここで、トリガー本体部23Aの中心軸線方向Xまわりの回転に伴い、平板部23Gの厚みがトリガー係合部515の二股状の部分が対向する方向に合った向きに配置される。そのため、トリガー係合部515は、二股状の部分同士が近づくように撓むことが可能となる。そして、トリガー本体部23Aを中心軸線方向Xの一方側に押込み操作する。これにより、解除溝23Dにロック段部233が挿入されると共に、内スカート部23Fがリブ516に当接する。よって、トリガー係合部515の二股状の部分同士が近づくように撓み、プランジャ51とトリガー部23との係合が解除される。したがって、圧縮状態で保持されていたプランジャ付勢部3の付勢が解放される。
【0092】
図11に示すように、解放されたプランジャ付勢部3の付勢により、係合部材6と、該係合部材6に係合するプランジャ51を備えるシリンジ5とが中心軸線方向Xの一方側に移動する。ここで、バレル付勢部4の付勢力は、プランジャ付勢部3の付勢力よりも弱く設定されている。そのため、プランジャ付勢部3の付勢によって、まず最初に、係合部材6を介してシリンジ5がバレル付勢部4を圧縮しながら中心軸線方向Xの一方側に移動する。具体的に、カバー部50Aがバレル付勢部4を圧縮しながらバレル段部20Dに当接するまで、バレル50が中心軸線方向Xの一方側に移動する。即ち、バレル付勢部4が、シリンジ5を介してプランジャ付勢部3によって圧縮される。なお、カバー凹部50Dとバレル凸部20Aとが係合している。そのため、バレル50が中心軸線方向Xまわりで回転することを防止している。そして、シリンジ5が中心軸線方向Xの一方側に移動することにより、注射針503がハウジング2の中心軸線方向Xの一方側から外側に突出する。よって、バレル50は、第一状態から第二状態に移動する。そして、カバー部50Aがバレル段部20Dに当接すると、バレル50の中心軸線方向Xの一方側への移動は規制される。
【0093】
プランジャ付勢部3の付勢力により、係合部材6とプランジャ51とが中心軸線方向Xの一方側に更に移動する。具体的に、
図11,12に示すように、プランジャ51は、バレル50の基端側である中心軸線方向Xの他方側を始点とし、注射針503側である中心軸線方向Xの一方側を終点として、バレル50内を移動する。よって、プランジャ51がバレル50内を移動することで、ピストン51Aが薬液を注射針503からバレル50外に押し出す。よって、バレル50内の薬液を吐出できる。なお、ピストン51Aは、バレル50の中心軸線方向Xの一方端である先端にまで移動する。
【0094】
ここで、本実施形態のプランジャ付勢部3は、シリンジ5や係合部材6を中心軸線方向Xの他方側から一方側に付勢するものであることに加えて、中心軸線Oまわりに回転するように付勢するためのものである。そして、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの他方端が中心軸線方向Xの一方側からトリガー取付台部231に設けられた挿入孔に挿入されている。また、
図8,10に示すように、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方端が挿入孔60bに挿入されている。一方で、環状凹部60A及び鍔凹部60Bがプランジャ収容凸部22Aに凹凸嵌合している。そのため、係合本体60は中心軸線Oまわりで回転不能である。よって、本体係合部60Cとプランジャ収容係合部とが係合している状態では、プランジャ付勢部3のねじりが解放されず、係合部材6は、中心軸線Oまわりに回転することなく、プランジャ他方収容部221内を中心軸線方向Xの一方側に移動する。なお、
図8,10に示すように、リング凹部61Bとプランジャ収容凸部22A、及びリング凸部61Aとプランジャ収容凹部22Bも凹凸嵌合している。
【0095】
また、
図9に示すように、軸移動突部512が軸移動溝部50Cに内嵌されている。そのため、プランジャ51は中心軸線Oまわりで回転不能に構成されている。よって、プランジャ本体510も中心軸線Oまわりに回転することなく、プランジャ収容部22内を中心軸線方向Xの一方側に移動する。したがって、
図8に示すように、径内突出部60aと溝部51aとが係合したまま、係合部材6とプランジャ本体510とが中心軸線方向Xの一方側に移動する。
【0096】
上述の通り、係合部材6の中心軸線方向Xの長さは、仕切部21とプランジャ収容凸部22Aとの中心軸線方向Xの離間距離よりも短い。
図12、13に示すように、ピストン51Aがバレル50の終点である中心軸線方向Xの一方端に移動するまで、係合部材6とプランジャ本体510とが中心軸線方向Xの一方側に移動すると、係合部材6は、仕切部21とプランジャ収容凸部22Aとの間に配置される。また、環状凹部60A、鍔凹部60B及びリング凹部61Bとプランジャ収容凸部22Aとの凹凸嵌合が解消される。即ち、本体係合部60Cとプランジャ収容部との係合が解消される。よって、係合本体60が中心軸線Oまわりに回転可能となることで、プランジャ付勢部3のねじりが解放可能となる。
【0097】
一方、プランジャ本体510が中心軸線方向Xの一方側に移動した後においても、軸移動突部512は軸移動溝部50Cに内嵌されたままである。また、
図13に示すように、リング凸部61Aはプランジャ収容凹部22Bに凹凸嵌合されたままである。よって、係合本体60は中心軸線Oまわりで回転可能となるのに対して、係合リング61とプランジャ本体510とは中心軸線Oまわりで回転不能のままである。
【0098】
ところで、
図13,15に示すように、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方端が係合環状部600の固定部に固定されている。具体的には、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方端が挿入孔60bに挿入されている。そのため、本体係合部60Cとプランジャ収容部との係合が解消されると、係合本体60は、解放されたプランジャ付勢部3のねじりにより、中心軸線Oまわりに回転するように付勢される。よって、係合本体60は、
図12,13に示す回転前の状態から、
図14,15に示す回転後の状態へと遷移する。
【0099】
一方で、上述の通り、係合リング61とプランジャ本体510とは中心軸線Oまわりで回転不能のままである。そのため、係合本体60は、回転不能である係合リング61及びプランジャ本体510に対して中心軸線Oまわりで回転する。したがって、本実施形態では、係合本体60は、プランジャ51に対して中心軸線Oまわりで回転する係合回転部として構成され、係合リング61は、係合回転部に対して中心軸線Oまわりに回転しない係合非回転部として構成される。
【0100】
ここで、
図12に示すように、弾性体62は、係合本体60と係合リング61に当接した状態で、係合本体60と係合リング61との間に配置されている。そのため、係合本体60は、弾性体62を周方向で弾性変形させながら中心軸線Oまわりで回転する。また、弾性体62の弾性力が係合本体60と係合リング61に作用し、係合本体60は、弾性変形した状態の弾性体62の弾性力を受けながら中心軸線Oまわりで回転する。よって、弾性体62の弾性力は、係合本体60が回転する方向とは逆向きの抵抗力である回転抵抗となり、この回転抵抗で係合本体60の回転速度が抑制される。したがって、弾性体62は、係合回転部と係合非回転部との間に配置され、係合非回転部に対する係合回転部の回転速度を抑制する回転抑制部として構成される。
【0101】
図12に示すように、本実施形態では、2つの弾性体62,62が中心軸線方向Xの一方側及び他方側で係合本体60と係合リング61との間に配置されている。そのため、本実施形態の係合本体60は、中心軸線方向Xの一方側及び他方側で弾性体62による回転抵抗を受けながら中心軸線Oまわりで回転する。
【0102】
また、係合本体60の回転速度が抑制されることにより、径内突出部60aの周溝部51cにおける周他方端51e側から周一方端51d側への移動がゆっくりとなる。そのため、径内突出部60aが周溝部51cを移動し続けている間、係合部材6とプランジャ51とが係合している状態が維持される。よって、注射針503がハウジング2から突出した状態が維持される。なお、本実施形態では、3~5秒の間、注射針503がハウジング2から突出した状態が維持される。
【0103】
したがって、プランジャ51に対する係合部材6の中心軸線Oまわりの回転速度を抑制する回転抑制機構が構成される。本実施形態では、回転抑制機構が、係合非回転部である係合リング61と、回転抑制部である弾性体62とを含み、係合本体60の係合リング61に対する回転速度を抑制する。
【0104】
図16に示すように、径内突出部60aが周溝部51cの周一方端51d側に移動すると、軸溝部51bと径内突出部60aとが周方向で一致した位置に配置される。よって、係合部材6とプランジャ本体510との係合が解除される。
【0105】
係合部材6とプランジャ本体510との係合が解除されることにより、シリンジ5に対するプランジャ付勢部3による付勢が解放される。そのため、シリンジ5を介してプランジャ付勢部3によって圧縮されていたバレル付勢部4が解放される。よって、
図17に示すように、バレル付勢部4の付勢により、シリンジ5が中心軸線方向Xの他方側に移動する。ここで、
図16に示すように、係合部材6とプランジャ51との係合が解除された状態では、径内突出部60aと軸溝部51bとが周方向で一致した状態で配置されている。そのため、軸溝部51bが径内突出部60aに対して中心軸線方向Xの他方側に移動しながら、シリンジ5が中心軸線方向Xの他方側に移動する。したがって、
図17に示すように、バレル50を第二状態から第一状態に移動させて、注射針503をハウジング2内に収容できる。なお、カバー部50Aが中心軸線方向Xの一方側から仕切部21に当接することにより、シリンジ5は停止する。
【0106】
したがって、
図14,15,16に示すように、注射針503がハウジング2の中心軸線方向Xの一方側から突出した状態でバレル50がバレル収容部20に収容され、且つプランジャ51がプランジャ付勢部3の付勢力によって終点に位置した状態で、プランジャ51と係合部材6とが中心軸線Oまわりに相対回転することにより、プランジャ51と係合部材6との係合を解除する係合解除機構が構成される。本実施形態では、プランジャ付勢部3のねじりにより、係合本体60がプランジャ本体510に対して回転して、径内突出部60aと軸溝部51bとが周方向で一致した位置に配置される。よって、プランジャ本体510と係合部材6との係合が解除される。したがって、本実施形態では、係合本体60を中心軸線Oまわりで回転するように付勢するプランジャ付勢部3と、軸溝部51bとが係合解除機構を構成する。
【0107】
以上、本実施形態によれば、係合本体60がプランジャ本体510に対して中心軸線Oまわりで回転する際に、弾性体62の弾性力が回転抵抗として係合本体60の回転速度を抑制するため、係合部材6とプランジャ51との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。よって、薬液を吐出した注射針503をハウジング2から突出した状態を維持できる。本実施形態では、3~5秒の間、注射針503がハウジング2から突出した状態を維持できる。したがって、例えば患者の皮膚に穿刺された注射針503が皮膚から抜けて、穿刺箇所から薬液が漏出するといったことを防止できる。
【0108】
また、本実施形態では、プランジャ51が中心軸線Oまわりで回転不能に構成され、係合本体60が中心軸線Oまわりで回転可能に構成され、プランジャ付勢部3は、係合本体60に対して中心軸線Oまわりに回転する付勢力を与え、係合解除機構は、プランジャ付勢部3の付勢力によって、プランジャ51に対して係合本体60が回転して係合本体60とプランジャ51との係合を解除し、回転抑制機構は、プランジャ付勢部3の中心軸線Oまわりに回転する付勢力よる係合本体60の回転速度を抑制する。よって、回転抑制機構が係合リング61に対する係合本体60の回転速度を抑制することで、係合解除機構によって係合本体60とプランジャ51との係合が解除されるまでの時間を長くできる。
【0109】
本実施形態では、プランジャ収容凹部22Bは、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの全域に設けられ、係合リング61のリング凸部61Aがプランジャ収容凹部22Bに係合している。そのため、係合リング61が中心軸線Oまわりに回転不能である。また、係合本体60と係合リング61との間には、弾性体62が配置されている。よって、係合本体60の回転によって、係合リング61と弾性体62とが一緒に回転してしまうことを防止でき、確実に、係合本体60の回転速度を抑制するメカニズムを作動できる。
【0110】
また、本実施形態の弾性体62は、オイルブリードシリコーンゴムで構成されている。そのため、シリコーンに練り込まれたオイルが弾性体62の表面ににじんでいることで、係合本体60の回転速度を調整でき、結果的に、弾性体62によって係合本体60の回転速度を適度に抑制できる。
【0111】
また、本実施形態では、弾性体62は、中心軸線方向Xにおいて係合本体60と係合リング61との間に配置されている。そのため、弾性体62は、プランジャ付勢部3の付勢力によるシリンジ5や係合部材6の中心軸線方向Xの一方側への移動に影響を与えることがない。さらに、係合部材6がプランジャ他方収容部221に収容された状態では、弾性体62がプランジャ他方収容部221の内周面と径方向で離間した状態で配置されている。よって、係合部材6が中心軸線方向Xの一方側に移動する際に、弾性体62がプランジャ他方収容部221と当接して、係合部材6の中心軸線方向Xの一方側への移動を妨げることを防止できる。
【0112】
また、本実施形態では、係合リング61は、中心軸線方向Xにおいて係合環状部600と鍔部602との間に配置され、弾性体62は、中心軸線方向Xにおいて、係合本体60と係合リング61との間に配置されている。そのため、係合本体60が中心軸線Oまわりに回転する際に、弾性体62が係合本体60から離れて、係合本体60の回転速度が抑制されないといった事態が発生することを防止できる。
【0113】
また、本実施形態では、2つの弾性体62,62が中心軸線方向Xの一方側及び他方側で係合本体60と係合リング61との間に配置されている。そのため、本実施形態の係合本体60は、中心軸線方向Xの一方側及び他方側で弾性体62による回転抵抗を受けながら中心軸線Oまわりで回転する。そのため、より一層、係合本体60の回転速度を抑制できる。
【0114】
本実施形態のバレル一方収容部201には、径方向に貫通する貫通部20Cが設けられている。そのため、ハウジング2に収容されたバレル50内の薬液の残量を確認できる。
【0115】
続いて、
図18~30を参照しながら、第二実施形態に係る注射装置1について説明する。なお、第二実施形態を説明するに際して、第一実施形態と同一の構成、使用方法及び作用については説明を省略する。
【0116】
図18に示すように、第二実施形態のプランジャ収容係合部は、プランジャ収容凸部22Aのみを備える。そのため、第二実施形態のプランジャ収容係合部は、プランジャ収容凹部22Bを備えていない。また、第二実施形態のプランジャ収容凸部22Aは、プランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの全域に形成されている。なお、プランジャ収容凸部22Aは、第一径方向Y1及び第二径方向Y2それぞれで一対設けられている。
【0117】
第二実施形態のプランジャ付勢部3は、中心軸線Oまわりに巻回される圧縮コイルばねである。そのため、第二実施形態のプランジャ付勢部3は、第一実施形態とは異なり、シリンジ5や係合部材6を中心軸線方向Xの他方側から一方側に付勢するだけのものである。
【0118】
図19に示すように、第二実施形態のプランジャ本体510は、プランジャ本体部510aと、環状に構成されるプランジャリング510bと、弾性体510cとを備える。そして、プランジャ本体部510aは、ロッド511と、プランジャ基部513とを備える。
【0119】
図21に示すように、ロッド511は、中心軸線方向Xの中途部分511aが他の部分よりも小径に構成されている。そのため、中心軸線方向Xの中途部分511aと該中途部分511aよりも中心軸線方向Xの一方側及び他方側に配置される部分との間には、径方向に延びるロッド段部511b,511cが形成されている。なお、このロッド段部511b,511cは、径方向に沿うと共に周方向に広がる平坦面である。また、
図19に示すように、第二実施形態の軸移動突部512は、ロッド511のうち、中心軸線方向Xの中途部分511aよりも中心軸線方向Xの一方側に形成されている。
【0120】
ロッド511の中心軸線方向Xの中途部分511aには、環状に構成されたプランジャリング510bと弾性体510cとが配置されている。そのため、
図21に示すように、プランジャリング510bの内径は、ロッド511の中心軸線方向Xの中途部分511aの外径よりも大径である。一方で、プランジャリング510bの外径は、ロッド511の中心軸線方向Xの中途部分511a以外の部分の外径と略同一である。本実施形態では、プランジャリング510bは、中心軸線方向Xの一方端がロッド段部511cに当接している。
【0121】
図19に示すように、プランジャリング510bの外周面には、径外方向に突出する径外突出部510dが形成されている。この径外突出部510dは、ロッド511に形成された軸移動突部512と同一に構成されている。そのため、径外突出部510dは、軸移動溝部50Cに内嵌可能に構成されている。径外突出部510dは、周方向において軸移動突部512と略同一の位置に配置されている。よって、径外突出部510dは、軸移動突部512と中心軸線方向Xで連続している。
【0122】
弾性体510cは、周方向に弾性変形可能なOリングである。本実施形態の弾性体510cは、オイルブリードシリコーンゴムで構成されている。なお、第一実施形態と同様に、弾性体510cは、オイルブリードシリコーンゴムの材質、例えばフッ素ゴムや、ニトリルゴム、シリコーンゴムで構成されていてもよい。
【0123】
図19,21に示すように、弾性体510cは、プランジャ本体部510aとプランジャリング510bとの間に配置されている。本実施形態の弾性体510cは、中心軸線方向Xにおいてロッド511とプランジャリング510bとの間に配置されている。具体的に、弾性体510cは、ロッド段部511bと、プランジャリング510bの中心軸線方向Xの他方端とに当接している。
【0124】
図19に示すように、第二実施形態のプランジャ係合部514の外周面には、第一実施形態と同様、径内側に窪む溝部51aが形成されている。ここで、第二実施形態の溝部51aは、プランジャ係合部514の中心軸線方向Xの一方端から他方側に向かうように周方向に延びる螺旋溝部51aとして構成されている。また、
図20に示すように、螺旋溝部51aは、周方向の一方端である周一方端51dと周方向の他方端である周他方端51eとを備える。そして、周一方端51dは、中心軸線方向Xの他方側に配置され、周他方端51eは、中心軸線方向Xの一方側に配置されている。
【0125】
図22,23に示すように、第二実施形態の係合部材6は、係合本体60のみを備えている。そのため、第二実施形態の係合部材6は、第一実施形態とは異なり、係合リング61及び弾性体62を備えていない。また、第二実施形態の鍔部602は、中心軸線方向Xの一方側及び他方側の突出量が同一である。さらに、第二実施形態の径内突出部60aは、螺旋溝部51aに挿入可能に構成されている。
【0126】
図24に示すように、係合部材6は、プランジャ係合部514に係合している。本実施形態では、中心軸線方向Xの一方側から螺旋溝部51aに挿入した径内突出部60aが周他方端51e側から周一方端51d側に移動するように、係合部材6とプランジャ本体510とを中心軸線Oまわりに相対回転する。これにより、
図25に示すように、径内突出部60aが螺旋溝部51aの周一方端51d側に配置される。
【0127】
上述の通り、第二実施形態のプランジャ付勢部3は、シリンジ5や係合部材6を中心軸線方向Xの他方側から一方側に付勢するだけのものである。そのため、
図24に示すように、プランジャ他方収容部221に収容された係合部材6は、プランジャ付勢部3を中心軸線方向Xに圧縮している。さらに、
図25に示すように、係合本体60の本体係合部60Cとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凸部22Aとを凹凸嵌合させた状態で、係合部材6がプランジャ他方収容部221に収容されている。
【0128】
続いて、第二実施形態の注射装置1の使用方法について説明する。ここで、第二実施形態の注射装置1の使用方法を説明するにあたり、初期状態から注射針503が突出するまでは、第一実施形態と同様である。そのため、この部分についての説明を省略する。
【0129】
図26,27に示すように、ピストン51Aがバレル50の中心軸線方向Xの一方端である先端にまで移動した状態では、径外突出部510dが軸移動溝部50Cに内嵌している。そのため、プランジャリング510bは、中心軸線Oまわりで回転不能に構成されている。
【0130】
一方で、プランジャ付勢部3の付勢力により、係合部材6は中心軸線方向Xの一方側に更に移動しようとする。ここで、第二実施形態では、プランジャ収容凸部22Aがプランジャ他方収容部221の中心軸線方向Xの全域に形成され、係合本体60の本体係合部60Cとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凸部22Aとを凹凸嵌合している。そのため、係合部材6は、中心軸線Oまわりに回転不能である。よって、径内突出部60aが螺旋溝部51aの周一方端51d側から周他方端51e側に移動しながら、中心軸線Oまわりに回転不能な係合部材6が中心軸線方向Xの一方側に移動する。したがって、係合部材6が中心軸線方向Xの一方側に移動することにより、プランジャ本体510が中心軸線Oまわりに回転する。本実施形態のプランジャ本体510は、中心軸線Oまわりで反時計回りに回転する。
【0131】
そして、プランジャ本体510が回転する際には、ロッド511が回転不能に構成されたプランジャリング510bに対して中心軸線Oまわりで回転する。したがって、本実施形態では、プランジャ本体部510aは、係合部材6に対して中心軸線Oまわりに回転するプランジャ回転部として構成され、プランジャリング510bは、プランジャ回転部に対して中心軸線まわりで回転しないプランジャ非回転部として構成される。
【0132】
ここで、
図26に示すように、弾性体510cは、プランジャ本体部510aとプランジャリング510bとの間に配置されている。そして、弾性体510cは、ロッド段部511bと、プランジャリング510bの中心軸線方向Xの他方端とに当接している。そのため、
図28に示すように、プランジャ本体部510aは、弾性体510cを周方向で弾性変形させながら中心軸線Oまわりで回転する。また、弾性体510cの弾性力がプランジャ本体部510aとプランジャリング510bに作用し、プランジャ本体部510aは、弾性変形した状態の弾性体510cの弾性力を受けながら中心軸線Oまわりで回転する。よって、弾性体510cの弾性力は、プランジャ本体部510aが回転する方向とは逆向きの抵抗力である回転抵抗となり、この回転抵抗でプランジャ本体部510aの回転速度が抑制される。したがって、弾性体510cは、プランジャ回転部とプランジャ非回転部との間に配置され、プランジャ非回転部に対するプランジャ回転部の回転速度を抑制する回転抑制部として構成される。
【0133】
プランジャ本体部510aの回転速度が抑制されることにより、径内突出部60aの螺旋溝部51aの周一方端51d側から周他方端51e側への移動がゆっくりとなる。そのため、径内突出部60aが螺旋溝部51aを移動し続けている間、係合部材6とプランジャ51とが係合している状態が維持される。よって、注射針503がハウジング2から突出した状態が維持される。
【0134】
したがって、係合部材6に対するプランジャ51の中心軸線Oまわりの回転速度を抑制する回転抑制機構が構成される。本実施形態では、回転抑制機構が、プランジャ非回転部であるプランジャリング510bと、回転抑制部である弾性体510cとを含み、ロッド511のプランジャリング510bに対する回転速度を抑制する。したがって、回転抑制機構は、プランジャ51の回転速度を抑制する。
【0135】
径内突出部60aが螺旋溝部51aの周他方端51eに移動すると、径内突出部60aは、プランジャ係合部514の中心軸線方向Xの一方端に配置される。よって、径内突出部60aと螺旋溝部51aとの係合が解除される。したがって、第二実施形態の係合解除機構は、プランジャ51(具体的には、プランジャ回転部であるプランジャ本体部510a)が係合部材6に対して中心軸線Oまわりに回転し、係合部材6とプランジャ本体部510aとの係合を解除することで、プランジャ51と係合部材6との係合を解除するように構成されている。
【0136】
プランジャ51と係合部材6との係合を解除することにより、プランジャ付勢部3によって圧縮されていたバレル付勢部4が解放される。よって、
図30に示すように、シリンジ5は、バレル付勢部4の付勢力で中心軸線方向Xの他方側に移動する。したがって、注射針503がハウジング2内に収容される。
【0137】
以上、本実施形態によれば、プランジャ51の回転速度を抑制して、プランジャ51と係合部材6との係合を解除するまでの時間を長くすることができる。よって、薬液を吐出した注射針503をハウジング2から突出した状態を維持できる。
【0138】
また、本実施形態では、径外突出部510dが軸移動溝部50Cに挿入されることにより、プランジャ本体部510aがプランジャリング510bに対して中心軸線Oまわりで回転する。その際に、プランジャ本体部510aとプランジャリング510bとの間に配置されている弾性体510cの弾性力により、ロッド511の回転速度を抑制できる。
【0139】
また、本実施形態では、プランジャ付勢部3の付勢力により、中心軸線方向Xの一方側に移動する係合部材6において、径内突出部60aが螺旋溝部51aに沿って中心軸線方向Xの一方側に移動することで、プランジャ本体510を中心軸線Oまわりに回転させる。よって、プランジャ付勢部3の中心軸線方向Xの一方側への付勢力がプランジャ51を回転させる回転力に変わることで、プランジャ51を回転できる。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0141】
上記第二実施形態では、係合本体60の環状凹部60Aとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凸部22Aとが凹凸嵌合することで、係合本体60の中心軸線Oまわりの回転が規制されていた。しかし、これに限らず、例えば、係合本体60から径外方向に突出する環状凹部60Aを備え、プランジャ他方収容部221のプランジャ収容凹部22Bと凹凸嵌合することで、係合本体60の中心軸線Oまわりの回転が規制されていてもよい。
【0142】
上記実施形態では、係合部材6は、係合回転部と係合非回転部とを備えていた。しかし、これに限らず、例えば、係合部材6は、係合回転部のみを備えていてもよい。例えば、係合部材6が係合リング61及び弾性体62を備えておらず、仕切部21が中心軸線方向Xの他方側に弾性体を備え、係合本体60の環状凹部60Aとプランジャ他方収容部221のプランジャ収容凸部22Aとの凹凸嵌合が解除された際に、係合本体60が仕切部21の弾性体に当接するように構成されていてもよい。この場合、中心軸線方向Xにおいて、係合本体60が弾性体に当接している。
【0143】
上記実施形態では、弾性体62は、中心軸線方向Xにおいて、係合本体60と係合リング61との間に配置されていた。しかし、これに限らず、例えば、弾性体62は、径方向において、係合本体60と係合リング61との間に配置されていてもよい。なお、第二実施形態の弾性体510cについても同様である。
【0144】
例えば、プランジャ係合部514に形成された周溝部51cの周方向の長さを変えることにより、注射針503がハウジング2から突出した状態を維持できる時間を変更してもよい。
【0145】
上記実施形態では、バレル付勢部4及びプランジャ付勢部3が圧縮コイルばねである場合について説明したが、これに限らず、例えば中心軸線方向Xに伸びるように弾性変形可能なゴムであってもよい。
【0146】
上記実施形態では、係合部材6及びプランジャ51のうち、いずれか一方が軸線まわりに回転不能に固定され、他方が軸線まわりに回転可能に構成され、他方が一方に対して相対回転するように構成されていた。しかし、これに限らず、例えば、係合部材6とプランジャ51の両方を中心軸線Oまわりに回転させるようにしてもよい。
【0147】
上記実施形態では、始点はバレル50の中心軸線方向Xの他方端よりも一方側の位置で、終点はバレル50の中心軸線方向Xの一方端である場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば始点をバレル50の中心軸線方向Xの他方端としてもよい。また、終点をバレル50の中心軸線方向Xの一方端よりも他方側とすることもできる。即ち、始点がバレル50の中心軸線方向Xの他方側、終点がバレル50の中心軸線方向Xの一方側という配置関係になっていれば、始点がバレル50の中心軸線方向Xの他方端、終点がバレル50の中心軸線方向Xの一方端以外に設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1:注射装置、2:ハウジング、20:バレル収容部、200:バレル他方収容部、201、バレル一方収容部、20A:バレル凸部、20B:付勢台部、20C:貫通部、20D:バレル段部、21:仕切部、22:プランジャ収容部、220:プランジャ一方収容部、221:プランジャ他方収容部、22A:プランジャ収容凸部、22B:プランジャ収容凹部、23:トリガー部、230:トリガー取付部、231:トリガー取付台部、232:トリガー筒部、233:ロック段部、234:凸部、23A:トリガー本体部、23B:天板部、23C:外スカート部、23D:解除溝、23E:連動溝、23F:内スカート部、23G:平板部、23a:トリガーロック操作部、23b:筒部、23c:突出部、23d:回動溝、3:プランジャ付勢部、4:バレル付勢部、5:シリンジ、50:バレル、500:バレル本体部、501:バレル筒部、502:外鍔部、503:注射針、50A:カバー部