(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002537
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車載隔壁
(51)【国際特許分類】
B62D 33/06 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B62D33/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102777
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 頼和
(57)【要約】
【課題】上下に分割される一方で、変形しにくい車載隔壁を提供する。
【解決手段】座席の背後において立脚し、前記座席またはベルトアンカと連結される隔壁は、車体のフロアから立脚する下側ユニット14であって、車両上下方向に延びる下縦部材18と、水平方向に延びる下横部材20と、を含む下側ユニット14と、車体の天井から車両下方に延びる上側ユニット16であって、前記下横部材20と連結される上縦部材26を含む上側ユニット16と、前記下横部材20に固着され、前記上縦部材26に締結されることで、両者を連結するブラケット30と、を備え、前記ブラケット30は、前記上縦部材26に締結される締結面32と、前記締結面32よりも前記上縦部材26から離れる方向に突出するとともに車両上下方向に延びる縦凸部40と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の背後において立脚し、前記座席またはベルトアンカと連結される隔壁であって、
車体のフロアから立脚する下側ユニットであって、車両上下方向に延びる下縦部材と、水平方向に延びる下横部材と、を含む下側ユニットと、
車体の天井から車両下方に延びる上側ユニットであって、前記下横部材と連結される上縦部材を含む上側ユニットと、
前記下横部材に固着され、前記上縦部材に締結されることで、両者を連結するブラケットと、
を備え、前記ブラケットは、前記上縦部材に締結される締結面と、前記締結面よりも前記上縦部材から離れる方向に突出するとともに車両上下方向に延びる縦凸部と、を含む、
ことを特徴とする車載隔壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車内において立脚する隔壁を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車内に、隔壁を配置する構成が知られている。例えば、バス等の車両において、運転席の背後に、上下に立脚する隔壁を配置し、この隔壁の柱に、運転席用の座席や、ベルトアンカを取り付ける構造が知られている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、こうした隔壁は、車両上下方向に延びる支柱を有しており、この支柱に、座席またはベルトアンカが連結されることが多い。しかし、支柱を、上下に長い一つの部材で構成した場合、車内での取り回しや、車体への締結が煩雑となる。そこで、支柱を、上下に分割した二部材で構成することも考えられる。しかし、この場合、二部材を連結する連結箇所において強度が低下し、座席またはベルトアンカから入力される荷重で変形するおそれがある。
【0005】
そこで、本明細書では、上下に分割される一方で、変形しにくい車載隔壁を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する車載隔壁は、座席の背後において立脚し、前記座席またはベルトアンカと連結される隔壁であって、車体のフロアから立脚する下側ユニットであって、車両上下方向に延びる下縦部材と、水平方向に延びる下横部材と、を含む下側ユニットと、車体の天井から車両下方に延びる上側ユニットであって、前記下横部材と連結される上縦部材を含む上側ユニットと、前記下横部材に固着され、前記上縦部材に締結されることで、両者を連結するブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記上縦部材に締結される締結面と、前記締結面よりも前記上縦部材から離れる方向に突出するとともに車両上下方向に延びる縦凸部と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する車載隔壁は、上下に分割されているものの、縦凸部を有するブラケットを介して連結されているため、変形しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して車載隔壁10の構成について説明する。
図1は、車両に組み付けられる隔壁10の背面図である。この隔壁10は、運転席の背後に隔壁が配置された車両(例えば、路線バス等)に組み付けられる。
図1では、隔壁10の骨格のみを図示しているが、隔壁10は、この骨格だけで構成されてもよいし、当該骨格に加えて、複数のパネル材を有してもよい。隔壁10の前側には、運転手が座る座席(図示せず)が配置される。隔壁10の骨格には、座席のフレームや、シートベルトアンカ(いずれも図示せず)が、連結される。
【0010】
隔壁10の骨格は、
図1に示すように、車室のフロアに固定される下側ユニット14と、車室の天井に固定される上側ユニット16と、を有する。下側ユニット14は、複数の下縦部材18と、複数の下横部材20と、を含む。下縦部材18は、フロアから車両上方に延びており、その下端は、ボルト等により車室のフロアに締結されている。複数の下縦部材18は、車幅方向に間隔を開けて並んでいる。
【0011】
下横部材20は、車幅方向、すなわち、水平方向に延びる骨格部材であり、溶接等により下縦部材18に固着されている。複数の下横部材20は、上下方向に間隔を開けて並んでいる。したがって、下側ユニット14は、全体としては、複数の骨格部材が格子状に組み合わされた構成となっている。ここで、複数の下横部材20のうち、最も上側の下横部材20を、以下では、「第一横クロス20f」と呼び、次の下横部材20を「第二横クロス20s」と呼び、他の下横部材20と区別する。
【0012】
上側ユニット16は、一つの上縦部材26を有する。上縦部材26は、上下方向に延びる骨格部材であり、その上端は、ボルト等により車室の天井に締結されている。上縦部材26の下端は、第一横クロス20fおよび第二横クロス20sに連結されている。この連結の具体的な構成については後述する。
【0013】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、本例の隔壁10の骨格は、上下に分割されている。かかる構成とするのは、隔壁10の車室内での組み付け作業を容易にするためである。すなわち、隔壁10の骨格が、上下に分割されていない場合、フロアから天井まで延びる長い柱部材が必要となる。しかし、こうした長い柱部材を、重く、運びづらい。また、長い柱部材を、車室に組み付けるために車室内で取り回した場合、壁面などに干渉しやすい。つまり、長い柱部材は、その取り回しが煩雑となりやすい。一方、本例のように、隔壁10の骨格を上下に分割した場合、各部材を小さくできるため、その取り回しが容易となる。
【0014】
しかしながら、骨格を上下に分割した場合、下側ユニット14と上側ユニット16との連結箇所の強度が低下するという別の問題を招く。この場合、例えば、急ブレーキや衝突等に起因して、座席やシートベルトアンカが車両前方に引っ張られると、これら座席およびシートベルトアンカに連結された隔壁10の骨格部材が折れたり変形したりするおそれがあった。
【0015】
こうした問題を避けるために、本例では、第一横クロス20fと、上縦部材26と、を特別なブラケット30を用いて連結している。以下、この第一横クロス20fおよび上縦部材26の連結構造について説明する。
【0016】
図2は、連結部周辺の模式的な分解斜視図である。また、
図3は、ブラケット30の斜視図である。上述した通り、また、
図2に示す通り、第一横クロス20fは、車幅方向に延びる骨格部材である。第一横クロス20fの前端面には、下縦部材18および上縦部材26の一部を受け入れるための切り欠き21が、複数形成されている。
【0017】
上縦部材26は、上述した通り、また、
図2に示す通り、上下方向に延びる骨格部材である。この上縦部材26の下端は、第一横クロス20fの切り欠き21に挿し込まれた状態で、ブラケット30により、第一横クロス20fに連結される。この連結を可能にするために、上縦部材26には、上下に間隔を開けて一対の締結孔28が、形成されている。締結孔28は、上縦部材26を前後方向に貫通している。締結孔28の出口(すなわち上縦部材26の前端面)には、ナット(図示せず)が固着されている。上縦部材26および第一横クロス20fは、この二つの締結孔28が、第一横クロス20fを挟んで上下に位置するように、位置決めされる。
【0018】
ブラケット30は、第一横クロス20fに溶着されるとともに、上縦部材26に螺合締結される。ブラケット30は、
図3に示すように、主部31と、主部31の左右両側に繋がった一対のサイド部38と、に大別される。主部31は、上縦部材26の後端面に重ねられる締結面32を有する。この締結面32には、締結用ボルト(図示せず)が挿し込まれる締結孔34が上下に間隔を開けて二つ形成されている。二つの締結孔34の間には、車両後方に向かって隆起したクロス用隆起部36が形成されている。クロス用隆起部36は、第一横クロス20fとの干渉を避けるために隆起した部分である。
【0019】
サイド部38は、主部31の車幅方向端部に繋がっており、車両後方に向かって山折りしたような形状である。したがって、サイド部38は、締結面32より車両後方(すなわち上縦部材26から離れる方向)に突出し、上下方向に延びる縦凸部40を構成する。この縦凸部40を設けることで、隔壁10の骨格部材の折れや変形を効果的に防止できるが、これについては後述する。
【0020】
サイド部38には、さらに、クロス用切り欠き42が、形成されている。クロス用切り欠き42は、第一横クロス20fとの干渉を避けるための切り欠きである。ブラケット30は、このクロス用切り欠き42内に第一横クロス20fを咥え込むようにして第一横クロス20fに取り付けられた状態で、第一横クロス20fに溶着される。
【0021】
こうしたブラケット30は、予め第一横クロス20fに溶着されている。そして、上縦部材26を第一横クロス20fに連結する場合は、上縦部材26を第一横クロス20fの切り欠き内に挿し込み、その状態で、上縦部材26を車両の天井に締結する。このとき、上縦部材26の二つの締結孔28は、第一横クロス20fの上下方向を両側に位置しており、ブラケット30の締結孔34と重複している。この状態になれば、作業者は、締結孔34から締結用ボルトを挿しこみ、締結孔28の出口に固着されたナットに、締結用ボルトを締めつける。これにより、上縦部材26が、第一横クロス20f、ひいては、下側ユニット14に螺合締結される。なお、こうした組み付けの手順は一例であり、適宜変更されてもよい。
【0022】
いずれにしても、上縦部材26が、ブラケット30を介して、第一横クロス20fに連結されることで、当該連結箇所における変形を効果的に防止できる。これは、ブラケット30が、上下方向に延びる縦凸部40を有するためである。かかる縦凸部40を設けることで、ブラケット30の上下の折れ、ひいては、連結箇所の変形が効果的に抑制される。結果として、急ブレーキや車両衝突が生じた場合でも、隔壁10により、座席やシートベルトを適切に保持できる。
【0023】
なお、上述した構成は、一例であり、請求項1に記載の構成を有するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、上述した説明では、ブラケット30を利用した連結箇所を一つだけとしているが、こうした連結箇所を複数設けてもよい。例えば、上縦部材26を、第一横クロス20fに加えて、第二横クロス20sにも連結してもよい。そして、上縦部材26と第二横クロス20sを連結する際に、上述したブラケット30を使用してもよい。また、ブラケット30は、少なくとも締結面32と、縦凸部40と、を有するのであれば、その他の形状は、適宜変更されてもよい。例えば、締結孔34は、二つに限らず、一つでもよいし、三つ以上でもよい。また、縦凸部40も二つに限らず、より多数でもよい。また、これまでの説明では、隔壁10が車両前方を向いて設置された場合を例に挙げて説明している。しかし、本明細書で開示した技術は、他の向きで設置された隔壁10にも適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 隔壁、14 下側ユニット、16 上側ユニット、18 下縦部材、20 下横部材、20f 第一横クロス、20s 第二横クロス、21 切り欠き、26 上縦部材、28 締結孔、30 ブラケット、31 主部、32 締結面、34 締結孔、36 クロス用隆起部、38 サイド部、40 縦凸部、42 クロス用切り欠き。