IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特開2025-25374半導体装置および半導体装置の製造方法
<>
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図5
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図6
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図7
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図8
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図9
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図10
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図11
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図12
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図13
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図14
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図15
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図16
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図17
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図18
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図19
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図20
  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025374
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20250214BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130092
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 聖一
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA02
4M109DB09
4M109EA10
(57)【要約】
【課題】絶縁封止部材の気泡、剥離および結露の発生を防止して、絶縁信頼性の向上を図る。
【解決手段】半導体装置10は、複数の配線パターン12b、12c-1、12c-2を備える絶縁基板12と、複数の配線パターン12b、12c-1、12c-2の少なくとも1つの配線パターン12c-1上に配置された半導体チップ1と、半導体チップ1と電気的に接続される金属ワイヤ14-1、14-2、14-3と、絶縁基板12を底部に配置するケース16とを有する。また、絶縁封止部材15が、絶縁基板12とケース16とで囲まれる領域に対し、絶縁基板12の上面から半導体チップ1を覆い、金属ワイヤ14-1、14-2、14-3の少なくとも一部が露出する深さまで該領域に充填される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線パターンを備える絶縁基板と、
前記複数の配線パターンの少なくとも1つの配線パターン上に配置された半導体チップと、
前記半導体チップと電気的に接続される金属配線と、
前記絶縁基板を底部に配置するケースと、
前記絶縁基板と前記ケースとで囲まれた領域に対し、前記絶縁基板の上面から前記半導体チップを覆い、前記金属配線の少なくとも一部が露出する厚さまで前記領域に充填される絶縁封止部材と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁封止部材は、ゲルである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップは、縦型の半導体チップであり、おもて面主電極と、前記配線パターンに接続される裏面主電極とを備え、
前記おもて面主電極と電気的に接続される前記配線パターンに接続され、外部に導出される第1の端子を備え、
前記第1の端子は、前記絶縁封止部材に覆われず露出している箇所を有し、
前記金属配線は、前記裏面主電極と電気的に接続され、
前記金属配線と前記第1の端子が隣接する箇所であって、前記金属配線が前記絶縁封止部材で覆われていない露出箇所もしくは前記第1の端子が露出している箇所の少なくとも一方を被覆する絶縁部材を備える、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップは、縦型の半導体チップであり、おもて面主電極と、前記配線パターンに接続される裏面主電極とを備え、
前記裏面主電極と電気的に接続される前記配線パターンに接続され、外部に導出される第1の端子を備え、
前記第1の端子は、前記絶縁封止部材に覆われず露出している箇所を有し、
前記金属配線は、前記おもて面主電極と電気的に接続され、
前記金属配線と前記第1の端子が隣接する箇所であって、前記金属配線が前記絶縁封止部材で覆われていない露出箇所もしくは前記第1の端子が露出している箇所の少なくとも一方を被覆する絶縁部材を備える、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップは、縦型の半導体チップであり、おもて面主電極と、前記配線パターンに接続される裏面主電極とを備え、
前記おもて面主電極と電気的に接続される前記配線パターンに接続されて、外部に導出される第1の端子と、
前記裏面主電極と電気的に接続され前記第1の端子が接続される前記配線パターンとは異なる前記配線パターンに接続されて、外部に導出される第2の端子と、を備え、
前記第1の端子および前記第2の端子は、前記絶縁封止部材に覆われず露出している箇所を有し、
前記第1の端子が露出している箇所もしくは前記第2の端子が露出している箇所の少なくとも一方を被覆する絶縁部材を備える、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップは、縦型の半導体チップであり、前記配線パターンに接続される裏面主電極、おもて面主電極および前記半導体チップのおもて面に設けられた制御電極を備え、
前記金属配線は、前記制御電極と電気的に接続される第1の金属配線と、前記裏面主電極と電気的に接続される第2の金属配線を備え、
前記第1の金属配線と前記第2の金属配線が隣接する箇所であって、前記絶縁封止部材で覆われていない露出箇所のうち、前記第1の金属配線もしくは前記第2の金属配線の少なくとも一方を被覆する絶縁部材を備える、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップは、縦型の半導体チップであり、前記配線パターンに接続される裏面主電極と、おもて面主電極とを備え、
前記金属配線は、前記おもて面主電極と電気的に接続される第1の金属配線と、前記裏面主電極と電気的に接続される第2の金属配線を備え、
前記第1の金属配線と前記第2の金属配線が隣接する箇所であって、前記絶縁封止部材で覆われていない露出箇所のうち、前記第1の金属配線もしくは前記第2の金属配線の少なくとも一方を被覆する絶縁部材を備える、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項8】
電流定格が100A以上かつ電圧定格が1700V以上である、請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁封止部材の前記絶縁基板の上面からの厚さが3mm以下である、請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁部材は、接着剤または樹脂である、請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体チップを複数備えている、請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体チップを複数備え、前記第1の端子に電気的に接続される前記半導体チップと前記第2の端子と電気的に接続される前記半導体チップとは異なる、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項13】
複数の配線パターンを備える絶縁基板と、
前記複数の配線パターンの少なくとも1つの配線パターン上に配置された半導体チップと、
前記半導体チップと電気的に接続される金属配線と、
前記絶縁基板を底部に配置するケースと、
前記絶縁基板と前記ケースとで囲まれた領域に対し、前記絶縁基板の上面から前記半導体チップを覆う絶縁封止部材と、
前記絶縁封止部材から露出している絶縁性を確保すべき箇所に被覆されている絶縁部材と、
を有し、
電流定格が100A以上かつ電圧定格が1700V以上であって、前記絶縁封止部材の前記絶縁基板の上面からの厚さが3mm以下である、
半導体装置。
【請求項14】
半導体装置の製造方法において、
複数の配線パターンを備える絶縁基板と前記絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、
前記絶縁基板の上面から、前記複数の配線パターンの少なくとも1つの配線パターン上に配置された半導体チップを覆い、前記半導体チップと電気的に接続される金属配線の少なくとも一部が露出する厚さまで前記領域に絶縁封止部材を充填する、
半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁封止部材は、ゲルである、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまで前記絶縁封止部材を充填する、
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁封止部材から露出しており、かつ絶縁性を確保すべき箇所を絶縁部材で被覆する、
請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記領域に対して前記厚さまで前記絶縁封止部材を充填した場合に、露出している前記箇所を前記絶縁部材で予め被覆しておいた後に、前記領域に対して前記厚さまで前記絶縁封止部材を充填する、
請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記領域に対して前記厚さより高い位置まで前記絶縁封止部材を注入し、前記箇所を絶縁封止部材で被覆した後に前記厚さになるまで前記絶縁封止部材を吸引して、吸引後の前記厚さまで充填されている前記絶縁封止部材から露出している前記箇所に前記絶縁封止部材を被覆する、
請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記領域に対して前記厚さまで前記絶縁封止部材を充填した場合に露出する前記箇所に向けて前記厚さに達するまで前記絶縁封止部材を吐出し、前記絶縁封止部材が前記厚さに達した場合に吐出を停止して、露出する前記箇所に対して前記絶縁封止部材を被覆する、
請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記絶縁部材は、接着剤または樹脂である、請求項17、18のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、放熱用ベースの上に、パワー半導体素子を実装した絶縁回路基板を接合した構造になっており、金属端子を介して外部回路に電気的に接続される。また、半導体装置は、樹脂ケースと閉空間をなしており、その内部は絶縁封止部材で充填される構造を有している。
【0003】
関連技術としては、例えば、基板を支えるケースに下面にのみ開放部を有する部材を形成し、部材の下面が一次封止樹脂に接して内部に密閉空間を有する構成の半導体パワーモジュールが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-210758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、絶縁封止部材の気泡、剥離および結露の発生を防止して、絶縁信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、複数の配線パターンを備える絶縁基板と、複数の配線パターンの少なくとも1つの配線パターン上に配置された半導体チップと、半導体チップと電気的に接続される金属配線と、絶縁基板を底部に配置するケースと、絶縁基板とケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から半導体チップを覆い、金属配線の少なくとも一部が露出する厚さまで領域に充填される絶縁封止部材と、を有する。
また、上記課題を解決するために、半導体装置の製造方法が提供される。半導体装置の製造方法は、複数の配線パターンを備える絶縁基板と絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から、複数の配線パターンの少なくとも1つの配線パターン上に配置された半導体チップを覆い、半導体チップと電気的に接続される金属配線の少なくとも一部が露出する厚さまで領域に絶縁封止部材を充填する。
【発明の効果】
【0007】
1側面によれば、絶縁封止部材の気泡、剥離および結露の発生を防止して、絶縁信頼性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の半導体装置の一例を説明するための図である。
図2】絶縁封止部材の深さと気泡発生との関係を示す図である。
図3】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図4】半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図5】絶縁部材の被覆動作の一例を示す図である。
図6】半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図7】半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図8】半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図9】半導体装置の等価回路の一例を示す図である。
図10】MOSFETの平面図である。
図11】外部に導出される端子とワイヤとの絶縁部材による被覆の一例を示す図である。
図12】絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および外部に導出される端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填およびワイヤの被覆状態を示す図である。
図13】外部に導出される端子とワイヤとの絶縁部材による被覆の一例を示す図である。
図14図13に示すX1-X2の部分の断面図である。
図15】絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および外部に導出される端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填およびワイヤの被覆状態を示す図である。
図16】第1の端子と第2の端子との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。
図17】絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および第2の端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填および第1の端子の被覆状態を示す図である。
図18】制御電極配線と裏面電極配線との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。
図19】おもて面主電極配線と裏面電極配線との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。
図20】縦型の半導体チップを備える半導体装置の構成の一例を示す図である。
図21】縦型の半導体チップを備える半導体装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置10の横断面図を示している。半導体装置10は、冷却体11に搭載された半導体チップ1および絶縁基板(絶縁回路基板)12を備える。
【0010】
絶縁基板12は、セラミック12a、パターン(箔)12b、12c-1、12c-2を有する(以下、パターン12c-1、12c-2を総称する場合はパターン12cと呼ぶ)。また、パターン12b、12cが例えば、銅パターンの場合には、セラミック12aに対して、パターン12b、12cを直接接合したDCB(Direct Copper Bonding)基板を使用できる。
【0011】
冷却体11の上面には、放熱グリス(サーマルグリス)11aを介して金属ベース板(放熱用ベース)11bの一方の面が対向するように搭載され、金属ベース板11bの他方の面には、絶縁基板12が搭載される。そして、はんだ13aを介して絶縁基板12のパターン12bが金属ベース板11bに接合される。絶縁基板12のパターン12c-1上には、例えば、シリコンで形成された半導体チップ1がはんだ13bを介して接合される。
【0012】
一方、金属配線である金属ワイヤ(以下、ワイヤ)14-1、14-2、14-3は、例えば、ワイヤ径が300μmから500μmのアルミニウムからなるボンディングワイヤである。ワイヤ14-1は、パターン12c-1と、ケース16に設けられている外部端子16aとを接合する。ワイヤの材質としては、銅、銀または金などでもよい。
【0013】
ワイヤ14-2は、半導体チップ1の電極と、絶縁基板12のリード電極となるパターン12c-2とを接合する。なお、半導体チップ1には、例えば、Al-Si合金膜が被覆された電極(Al-Si電極)が形成されうる。
【0014】
ワイヤ14-3は、パターン12c-2と、ケース16に設けられている外部端子16bとを接合する。ワイヤ14-1、14-2、14-3による接合としては、超音波および荷重によるワイヤボンディングが行われる。なお、半導体チップ1と接続される金属配線としては、ワイヤの他に金属板で構成されるリードフレームや導電ピンを用いることができる。これらは銅などの金属材料により構成することができ、はんだや焼結材を介して半導体チップ1と接続できる。
【0015】
半導体チップ1が接合された絶縁基板12は、ケース16に収容され、ケース16と金属ベース板11bとで囲まれる領域には、絶縁封止部材15が充填されて封止される。なお、ケース16と金属ベース板11bとは接着剤等で固着される。
【0016】
ここで、絶縁基板12のパターン12b、12cは、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。パターン12b、12cの厚さは、好ましくは、0.10mm以上、2.00mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上、1.00mm以下である。
【0017】
また、パターン12cには、半導体チップ1の他に、必要に応じて、ボンディングワイヤ、リードフレームおよび接続端子等の配線部材並びに電子部品を適宜配置することができる。
【0018】
このようなパターン12cに対して、耐食性に優れた材質によりめっき処理を行うことも可能である。このような材質は、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、タンタル、ニオブ、タングステン、バナジウム、ビスマス、ジルコニウム、ハフニウム、金、銀、白金、パラジウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等である。なお、パターン12cの個数、配置位置並びに形状は、適宜設計により選択することができる。
【0019】
一方、金属ベース板11bは、熱伝導性に優れた金属により構成されている。この金属は、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの1種を含む合金である。このような合金の例として、アルミニウム-窒化珪素(Al-SiC)またはマグネシウム-窒化珪素(Mg-SiC)等の金属複合材でもよい。
【0020】
また、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により金属ベース板11bの表面に形成してもよい。具体的には、ニッケルの他に、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等がある。めっき膜の厚さは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、冷却体11は、1以上のフィンを備えるヒートシンクまたは水冷による冷却装置等である。
【0021】
一方、半導体チップ1は、シリコン、炭化シリコンまたは窒化ガリウムから構成されるパワーデバイスである。半導体チップ1は、スイッチング素子を含む。スイッチング素子は、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。
【0022】
このような半導体チップ1は、例えば、主電極としてドレイン電極(正極電極、IGBTではコレクタ電極)、およびソース電極(負極電極、IGBTではエミッタ電極)、および制御電極としてゲート電極をそれぞれ備えている。
【0023】
また、半導体チップ1は、ダイオード素子を含む。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオード等のFWD(Free Wheeling Diode)である。
【0024】
半導体チップ1の厚さは、例えば、80μm以上、500μm以下であって、平均は、200μm程度である。なお、パターン12cには、必要に応じて、その他の電子部品を配置することもできる。電子部品は、例えば、コンデンサ、抵抗、サーミスタ、電流センサ、制御IC(Integrated Circuit)である。
【0025】
一方、絶縁封止部材15は、絶縁基板12とケース16とで囲まれた領域に対し、絶縁基板12の上面から半導体チップ1の全体または一部を覆い、ワイヤ14-1、14-2、14-3の少なくとも一部が露出する深さまで該領域に充填される。
【0026】
従来では、例えば、絶縁封止部材15の充填高さ(充填の厚み)h2は、絶縁基板12の上面(図1の例では、パターン12c-1、12c-2の上面)からおよそ15mmである。これに対し、本発明の半導体装置10では、絶縁封止部材15の充填高さh1は、絶縁基板12の上面から3mm以下である。なお、絶縁封止部材15には、ゲルが用いられ、例えば、ゲルとしては、シリコーンゲルまたは追従性のよい樹脂を使用することができる。
【0027】
このように、半導体装置10では、絶縁基板12とケース16とで囲まれた領域に対し、絶縁基板12の上面から半導体チップ1を覆い、ワイヤ14―1、14-2の少なくとも一部が露出する深さまで該領域に充填される絶縁封止部材15を有する。半導体チップ1とワイヤ14-2との接合部も絶縁封止部材15で覆われている。
【0028】
このような構成により、半導体装置10では、絶縁封止部材の気泡発生、剥離および結露の発生を防止して、絶縁信頼性を向上させることが可能になる。なお、上記の構成が適用される半導体装置10としては、例えば、小容量・汎用電圧定格の半導体装置に対して有効である。
【0029】
一方、大容量・高電圧定格の半導体装置に対しては、絶縁封止部材の充填高さを絶縁基板の上面から3mm以下としても、端子間等の絶縁の確保が求められる。このため、大容量・高電圧定格の半導体装置では、絶縁封止部材の充填高さを低くするだけでなく、絶縁封止部材から露出した端子やワイヤの一部には絶縁部材を被覆することで絶縁性を確保する。このような絶縁部材を用いて端子やワイヤ等の一部を被覆した構成を有する大容量・高電圧定格の半導体装置については、図3以降で後述する。
【0030】
<絶縁封止部材>
半導体装置の内部に充填される絶縁封止部材には、シリコーンゲルや樹脂が使われ、追従性のよいシリコーンゲルが最も汎用的に用いられる。また、近年では、耐熱性、耐熱サイクル性が求められる用途(主に車載用途)では樹脂封止構造が用いられている。
【0031】
絶縁封止部材は、半導体装置の内部回路の機械的保護(異物などからの保護)と、電極間(回路間)の絶縁を行うものである。半導体素子面、ワイヤ面、端子面を含む回路面および電極間(回路間)を絶縁材で覆い満たすことで絶縁信頼性を担保している。
【0032】
例えば、剥き出しの回路間に導電性の異物が付着すると、回路が短絡して故障する可能性があり、また、導電性の低い異物であってもトラッキングにより短絡故障する可能性がある。このため、絶縁封止部材で半導体素子面、ワイヤ面、端子面を含む回路面を覆い満たすことで、回路保護が可能になり故障を防ぐことができる。また、絶縁封止部材で電極間を覆い満たすことで、空気絶縁よりも格段に絶縁距離を短くすることができ、高密度実装による半導体モジュールの小型化が可能になる。
【0033】
<絶縁封止部材の気泡発生による問題点>
シリコーンゲルは柔らかくて追従性が高いため剥離を起こしづらいが、吸湿(透湿)性が高く内部に気泡や結露を生じやすい。硬くすることで気泡の発生を抑えることができるが、追従性が下がり剥離しやすくなる。
【0034】
また、樹脂は、弾性が高いため(硬いため)使用時に気泡は発生しないが、ゲルに比べて剥離が起こりやすい。このように、絶縁材に対して気泡発生・剥離、結露が発生すると、絶縁信頼性の低下が生じることになる。
【0035】
ここで、シリコーンゲルおよび樹脂のような絶縁封止部材は、空気よりも誘電率が高いため、電極間に絶縁封止部材の内部の気泡や絶縁封止部材の剥離といった空隙を生じると、空隙部で電界強度が高まり、絶縁信頼性が低下する。例えば、空隙が生じると、放電開始電圧が1/3程度にまで低下する。特にボンディングワイヤの表面では電界集中し易いため、それ以外の領域に対して放電開始電圧が1/6程度にまで低下し、さらにボンディングワイヤが細いほど絶縁性能は低くなる。
【0036】
半導体チップの最大定格電圧が1.7kV以下程度であれば、たとえ電極間に空隙ができても、ボンディングワイヤに対して必要な絶縁距離は比較的小さいため、設計上(小型化)の制約は低い。しかし、半導体チップの最大定格電圧が3.3kV以上の高耐圧となると、直径300μm程度のボンディングワイヤに対して必要な絶縁距離が、最大定格電圧が1.7kV以下程度の場合に直径125μm程度のボンディングワイヤに対して必要な絶縁距離よりも大きくなり、小型化の足かせとなる。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、絶縁封止部材の気泡発生、剥離および結露の発生を防止して、絶縁信頼性を向上させるものである。
【0037】
<絶縁封止部材の深さ>
吸湿したシリコーンゲルを加熱するとシリコーンゲル内部(特にシリコーンゲルと部材の界面)に気泡が発生する。これは、加熱により溶解しきれなくなった水分が気泡核(微小な空間・欠陥)の内圧を上昇させ発砲することによる。
【0038】
この現象は、昇温時に水分がゲル上面から抜けていく速さと競合している。したがって、吸湿ゲルを加熱しても、気泡核内圧が十分に上がる前にゲル内水分濃度が下がってしまえば、気泡は発生しない。
【0039】
一方で、吸湿したシリコーンゲルを冷却すると、吸湿分がゲル内で凝集し結露する。これは、ゲル中の隙間に水蒸気(ガス)として存在できる量が下がるためで、この現象も水分がゲル上面から抜ける速さと競合している。ゲル内隙間の相対湿度が100%に到達する前にゲル内水分濃度が下がってしまえば、結露は発生しない。
【0040】
ゲル内の水分輸送は拡散輸送に従うため、ゲル脱湿速度は厚みの2乗に反比例する(15mm→3mmで25倍)。したがって、絶縁封止部材であるシリコーンゲルの深さを所定の深さまで浅くすることで、脱湿速度が勝り、気泡発生および結露を抑えることができる。
【0041】
図2は絶縁封止部材の深さと気泡発生との関係を示す図である。縦軸は気泡発生数密度(個/cm)であり、横軸は絶縁封止部材の深さ(mm)である。絶縁封止部材に対し、85℃85%24時間の吸湿後、150℃熱板上に放置して発生気泡数を測定したグラフを示している。図2に示すように、絶縁封止部材の深さに対して正の相関があり、絶縁封止部材が3mmの深さでは気泡の発生が見られない。
【0042】
したがって、本発明では、絶縁封止部材の深さ(厚さ)を3mm以下とすることで絶縁封止部材の乾燥する速さを高めて、吸湿ゲルが加熱・冷却された場合であっても、気泡および結露の発生の抑制を図るものである。
【0043】
<大容量・高電圧定格の半導体装置>
次に本発明の半導体装置および半導体装置の製造方法について以降詳しく説明する。図3は半導体装置の構成の一例を示す図である。本発明の特徴を説明するための横断面の模式図を示している。半導体装置20は、例えば、電流定格が100A以上かつ電圧定格が1700V以上の大容量・高電圧定格の半導体装置である。
【0044】
半導体装置20は、金属ベース板21の一方の面に絶縁基板22が搭載され、絶縁基板22の上面にはパターン22a-1、22a-2、22a-3が敷設されている。また、外部に導出される端子30a、30bを備え、端子30aはパターン22a-1に接続され、端子30bはパターン22a-2に接続されている。さらに、パターン22a-2とパターン22a-3は、ワイヤ24を介して電気的に接続されている。
【0045】
ここで、絶縁基板22とケース(図示せず)とで囲まれる領域に対し、絶縁封止部材25が絶縁基板22の上面から3mm以下の高さまで充填される。また、端子30a、30bの絶縁封止部材25から露出している部分、およびワイヤ24の絶縁封止部材25から露出している部分は、絶縁部材26によって被覆されている。
【0046】
絶縁部材26には、例えば、接着剤または樹脂が適用される。樹脂としては例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、LCP(液晶ポリマ)、POM(ポリオキシメチレン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテルイミドがある。
【0047】
このように、大容量・高電圧定格の半導体装置20に対しては、絶縁封止部材の充填高さを絶縁基板の上面から3mm以下にし、かつ絶縁封止部材から露出した端子や金属配線の一部には絶縁部材を被覆する構成とした。
【0048】
これにより、絶縁封止部材の気泡の発生の抑制に加えて、端子間等の絶縁性を確保することが可能になる。なお、図3の例では、絶縁封止部材から露出している箇所すべてにおいて絶縁部材で被覆している状態を示しているが、絶縁上必要な露出箇所に対して絶縁部材が被覆されるものである。
【0049】
<半導体装置の製造方法>
次に図4から図8を用いて半導体装置の製造方法について説明する。以降の説明では絶縁封止部材をゲルと表記して説明する場合がある。なお、ゲルの充填が行われる場合、定格電圧程度の高電圧がかかる箇所で絶縁空間距離が不足する領域を埋めるようにゲルが注入されて充填されるものである。さらに、絶縁部材が被覆される箇所は、ゲルから露出して絶縁性の確保が求められる箇所とする。
【0050】
図4は半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
〔工程P1〕半導体チップおよび端子が絶縁基板上の配線パターンに接続される。
〔工程P2〕絶縁基板と、絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまでゲルで充填されるようにゲルが注入される。
〔工程P3〕当該領域に対してゲルが充填された後に、ゲルから露出している端子やワイヤ等の絶縁性を確保すべき箇所が絶縁部材で被覆される。
〔工程P4〕加熱処理によってゲルが硬化される。
【0051】
図5は絶縁部材の被覆動作の一例を示す図である。絶縁部材を所定箇所に被覆する場合、ディスペンサdsを用いることができる。ディスペンサdsを用いて、例えば、定格電圧程度の高電圧がかかる箇所に対し、絶縁空間距離が不足するような領域に絶縁部材26を被覆することができる。
【0052】
図6は半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
〔工程P11〕半導体チップおよび端子が絶縁基板上の配線パターンに接続される。
〔工程P12〕絶縁基板と、絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまでゲルを注入した場合に露出する箇所が絶縁部材で予め被覆される。
〔工程P13〕当該領域に対して、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまでゲルで充填されるようにゲルが注入される。
〔工程P14〕加熱処理によってゲルが硬化される。
【0053】
図7は半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
〔工程P21〕半導体チップおよび端子が絶縁基板上の配線パターンに接続される。
〔工程P22〕絶縁基板と、絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さより高い位置までゲルが注入される。
〔工程P23〕絶縁基板の上面から3mm以下の厚さになるまでゲルが吸引される。ゲルの吸引後、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまで充填されているゲルから露出している端子やワイヤ等の絶縁性を確保すべき箇所がゲルで被覆される。
〔工程P24〕加熱処理によってゲルが硬化される。
【0054】
このように、図7の製造方法では、3mmの厚さより高い位置まで絶縁封止部材を注入した後に3mm以下の厚さになるまで絶縁封止部材を吸引する。これにより、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまで充填されているゲルから露出している端子やワイヤ等の絶縁性を確保すべき箇所に対して、絶縁部材を使用せずにゲルで被覆することができる。
【0055】
ここで、ゲルの吸引は、吸引機(ポンプ)が用いられる。吸引機としては、ポンプの回転式や容積式のいずれでも使用できるが、ゲルの吸引は、高粘度、小流量で、定量(計測)が必要なため容積式が好ましい。
【0056】
また、ゲルの吸引量は、流量計で制御される。回転式ポンプの場合は、流量計を組み合わせて排出量を制御し、半導体装置内のゲル深さ水準を制御する。また、容積式ポンプでは、吐出量を定量化できるため、その特性を使って半導体装置内のゲル深さ水準を制御する。
【0057】
図8は半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
〔工程P31〕半導体チップおよび端子が絶縁基板上の配線パターンに接続される。
〔工程P32〕絶縁基板と、絶縁基板を底部に配置するケースとで囲まれた領域に対し、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまでゲルを注入した場合に露出する箇所に向けてゲルを吐出する。
〔工程P33〕ゲルが3mm以下の厚さに達した場合にゲルの吐出を停止して、露出する箇所に対してゲルを被覆する。
〔工程P34〕加熱処理によってゲルが硬化される。
【0058】
このように、図8の製造方法では、3mm以下の厚さまでゲルを充填した場合に露出する箇所に向けて、3mm以下に達するまでゲルを吐出し、ゲルが3mm以下の厚さに達した場合に吐出を停止して、露出する箇所に対してゲルを被覆する。
【0059】
これにより、絶縁基板の上面から3mm以下の厚さまで充填されているゲルから露出している端子やワイヤ等の絶縁性を確保すべき箇所に対して、絶縁部材を使用せずにゲルで被覆することができる。
【0060】
次に絶縁部材によって被覆される箇所の例について説明する。なお、以降の説明において、端子とパターンとの接続、またはワイヤとパターンとの接続は、例えば、超音波またはレーザによる接続が行われる。
【0061】
<半導体装置の等価回路>
図9は半導体装置の等価回路の一例を示す図である。半導体装置10の等価回路は、半導体チップとしてMOSFETを用いたフルブリッジインバータ回路を示している。
P端子である外部に導出される端子41a、41b、41cは、各上アーム半導体チップ31a、31b、31cのドレイン電極に配線51a、51b、51cを介して電気的にそれぞれ接続されている。
【0062】
外部に導出される端子であるU端子47aとV端子47bとW端子47cとは、各上アーム半導体チップ31a、31b、31cのソース電極と各下アーム半導体チップ32a、32b、32cのドレイン電極との配線52a、52b、52cにおける接続点に電気的にそれぞれ接続されている。
【0063】
また、N端子である外部に導出される端子44a、44b、44cは、各下アーム半導体チップ32a、32b、32cのソース電極に配線53a、53b、53cを介して電気的にそれぞれ接続されている。
【0064】
さらに、外部に導出される補助端子49a、49b、49cは、各下アーム半導体チップ32a、32b、32cのソース電極および各端子44a、44b、44cに配線53a、53b、53cを介して電気的にそれぞれ接続されている。
【0065】
上アーム半導体チップ31a、31b、31cの制御電極G1、G3、G5は、配線54a、54b、54cを介して外部に導出される制御端子Ga、Gc、Geに電気的に接続されており、下アーム半導体チップ32a、32b、32cの制御電極G2、G4、G6は、配線55a、55b、55cを介して外部に導出される制御端子Gb、Gd、Gfに電気的に接続されている。
以下、本例の半導体装置10に1相(U相)のみを配置した例について説明する。もちろん、半導体装置10に2相分のみまたは、3相全て配置することもできる。
【0066】
図10はMOSFETの平面図である。図9に示した回路のMOSFETの平面視の図であり、おもて面を示している。図10に示されるMOSFETは、周囲に露出している半導体基板35と、その内側に形成されている保護膜36と、ソース電極37と、ソース電極37と離れて配置される制御電極38とを有する。裏面(図示せず)にはドレイン電極が形成されている。
【0067】
<おもて面電極に電気的に接続される外部に導出される端子と金属配線との絶縁>
図11は外部に導出される端子とワイヤとの絶縁部材による被覆の一例を示す図である。図12は絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および外部に導出される端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填およびワイヤの被覆状態を示している。
【0068】
図11において、絶縁基板4aには、パターン4a-1、4a-2、4a-3が敷設され、縦型の半導体チップ9aがパターン4a-2にはんだ接合などにより接合されている。
半導体チップ9aのおもて面主電極(ソース電極)は、複数のワイヤw2を通じてパターン4a-1に電気的に接続されており、外部に導出される端子5aは、パターン4a-1に接続されている。ワイヤw1、w2は、半導体チップと電気的に接続される金属ワイヤである。
【0069】
半導体チップ9aの裏面主電極(ドレイン電極)は、パターン4a-2に接続されている。また、複数のワイヤw1は、パターン4a-2とパターン4a-3に接続されている。なお、外部に導出される端子5aとワイヤw1は近接しており、絶縁性を確保すべき箇所とする。
【0070】
図11における図9のU相との対応関係では、例えば、端子5aが端子44aに対応し、半導体チップ9aが下アーム半導体チップ32aに対応し、ワイヤw1が上アーム半導体チップ31aのソース電極と下アーム半導体チップ32aのドレイン電極間の配線52aに対応する。
【0071】
図12(a)において、絶縁封止部材7aが絶縁基板4aの上面(パターン4a-1の上面)から3mm以下の厚さまで充填される。また、端子5aは、ワイヤw1との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7aから露出している箇所には、絶縁部材6a-1が被覆されている。
【0072】
図12(b)において、絶縁封止部材7aが絶縁基板4aの上面(パターン4a-2、4a-3の上面)から3mm以下の厚さまで充填される。また、ワイヤw1は、端子5aとの絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7aから露出している箇所には、絶縁部材6a-2が被覆されている。
【0073】
なお、上記では、端子5aとワイヤw1の両方に絶縁部材を被覆する構成としたが、どちらか一方にのみ絶縁部材を被覆する構成にしてもよい。また、ワイヤw2が絶縁封止部材7aから露出している箇所がある場合、その箇所を絶縁部材で被覆してもよい。さらに、ワイヤw1、w2の代わりにリードフレームを用いることもできる。
【0074】
<裏面電極に接続される外部に導出される端子とワイヤとの絶縁>
図13は外部に導出される端子とワイヤとの絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、図14図13に示すX1-X2の部分の断面図である。絶縁基板4bには、パターン4b-1、4b-2、4b-3が敷設され、縦型の半導体チップ9b1がパターン4b-3にはんだ接合などにより接合され、縦型の半導体チップ9b2がパターン4b-2にはんだ接合などにより接合されている。
【0075】
半導体チップ9b1のおもて面主電極は、複数のワイヤw3を通じてパターン4b-2に接続される。半導体チップ9b2のおもて面主電極は、複数のワイヤw3aを通じてパターン4b-1に接続される。ワイヤw3、w3aは、半導体チップと電気的に接続される金属ワイヤである。
【0076】
端子5b1は、パターン4b-1に接続されている。外部に導出される端子5b2は、パターン4b-3に接続されて、半導体チップ9b1の裏面主電極に接続されている。端子5b1、5b2は、モールド樹脂mdによって絶縁性を保って一体化されている。なお、端子5b2とワイヤw3は近接しており、絶縁性を確保すべき箇所とする。
【0077】
図13における図9のU相との対応関係では、例えば、端子5b2が端子41aに対応し、半導体チップ9b1が上アーム半導体チップ31aに対応し、ワイヤw3およびパターン4b-2が上アーム半導体チップ31aのソース電極と下アーム半導体チップ32aのドレイン電極間の配線52aに対応する。さらに、半導体チップ9b2が下アーム半導体チップ32aに対応し、端子5b1が端子44aに対応する。
【0078】
図15は絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および外部に導出される端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填およびワイヤの被覆状態を示す図である。
【0079】
図15(a)において、絶縁封止部材7bが絶縁基板4bの上面(パターン4b-3の上面)から3mm以下の厚さまで充填される。また、端子5b2は、ワイヤw3との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7bから露出している箇所には、絶縁部材6b-1が被覆されている。
【0080】
図15(b)において、絶縁封止部材7bが絶縁基板4bの上面(パターン4b-2、4b-3の上面)からおよそ3mm以下の厚さまで充填される。また、ワイヤw3は、端子5b2との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7bから露出している箇所には、絶縁部材6b-2が被覆されている。
【0081】
なお、上記では、端子5b2とワイヤw3の両方に絶縁部材を被覆する構成としたが、どちらか一方にのみ絶縁部材を被覆する構成にしてもよい。また、ワイヤw3aが絶縁封止部材7bから露出している箇所がある場合、その箇所を絶縁部材で被覆してもよい。さらに、ワイヤw3、w3aの代わりにリードフレームを用いることもできる。
【0082】
<第1の端子と第2の端子との絶縁>
図16は第1の端子と第2の端子との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。図17は絶縁封止部材の充填および絶縁部材による被覆の一例を示す図であり、(a)は絶縁封止部材の充填および第2の端子の被覆状態を示し、(b)は絶縁封止部材の充填および第1の端子の被覆状態を示している。
【0083】
図16において、絶縁基板4cには、パターン4c-1、4c-2、4c-3が敷設され、縦型の半導体チップ9cがパターン4c-1にはんだ接合などにより接合されている。
【0084】
半導体チップ9cのおもて面主電極は、複数のワイヤw4を通じてパターン4c-2に電気的に接続されている。ワイヤw4、w5は、半導体チップと電気的に接続される金属ワイヤである。
【0085】
外部に導出される第1の端子5c1は、パターン4c-3に接続されて、半導体チップ9cのおもて面主電極に電気的に接続されている。また、外部に導出される第2の端子5c2は、パターン4c-1に接続されて、半導体チップ9cの裏面主電極に電気的に接続されている。なお、第1の端子5c1と第2の端子5c2は近接しており、絶縁性を確保すべき箇所とする。
【0086】
図16における図9のU相との対応関係では、例えば、第2の端子5c2が端子41aに対応し、半導体チップ9cが上アーム半導体チップ31aに対応し、ワイヤw4、パターン4c-2、ワイヤw5およびパターン4c-3が上アーム半導体チップ31aのソース電極と接続される配線52aに対応する。第1の端子5c1が端子47aに対応する。
【0087】
図17(a)において、絶縁封止部材7cが絶縁基板4cの上面(パターン4c-3の上面)から3mm以下の厚さまで充填される。また、第1の端子5c1は、第2の端子5c2との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7cから露出している箇所には、絶縁部材6c-1が被覆されている。
【0088】
図17(b)において、絶縁封止部材7cが絶縁基板4cの上面(パターン4c-1の上面)から3mm以下の厚さまで充填される。また、第2の端子5c2は、第1の端子5c1との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材7cから露出している箇所には、絶縁部材6c-2が被覆されている。
【0089】
なお、上記では、第1の端子5c1と第2の端子5c2の両方に絶縁部材を被覆する構成としたが、どちらか一方にのみ絶縁部材を被覆する構成にしてもよい。また、ワイヤw4、w5が絶縁封止部材7cから露出している箇所がある場合、その箇所を絶縁部材で被覆してもよい。さらに、ワイヤw4、w5の代わりにリードフレームを用いることもできる。
【0090】
<制御電極配線と裏面電極配線との間の絶縁>
図18は制御電極配線と裏面電極配線との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。絶縁基板4dには、パターン4d-1、・・・、4d-4が敷設され、縦型の半導体チップ9dがパターン4d-1にはんだ接合などにより接合されている。
【0091】
半導体チップ9dの制御電極(ゲート電極)G1は、ワイヤw63を通じてパターン4d-2に電気的に接続され、パターン4d-2は、複数のワイヤw61を通じてパターン4d-3に電気的に接続されている。パターン4d-4は、複数のワイヤw62を通じてパターン4d-1に電気的に接続されている。ワイヤw61、w62、w63は、半導体チップと電気的に接続される金属ワイヤである。
【0092】
図18における図9のU相との対応関係では、例えば、半導体チップ9dが上アーム半導体チップ31aに対応し、ワイヤw61が上アーム半導体チップ31aの制御電極G1と制御端子Gaとの間の配線54aに対応し、ワイヤw62が上アーム半導体チップ31aと端子41aとの間の配線51aに対応する。
【0093】
ワイヤw61とワイヤw62は近接しており、絶縁封止部材から露出する箇所があるとする。この場合、ワイヤw61は、ワイヤw62との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材から露出している箇所には、絶縁部材6d-1が被覆される。また、ワイヤw62は、ワイヤw61との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材から露出している箇所には、絶縁部材6d-2が被覆される。
【0094】
なお、上記では、制御電極配線に対応するワイヤw61と、裏面電極配線に対応するワイヤw62の両方に絶縁部材を被覆する構成としたが、どちらか一方にのみ絶縁部材を被覆する構成にしてもよい。また、ワイヤw61、w62の代わりにリードフレームを用いることもできる。
【0095】
<おもて面主電極配線と裏面電極配線との間の絶縁>
図19はおもて面主電極配線と裏面電極配線との絶縁部材による被覆の一例を示す図である。絶縁基板4eには、パターン4e-1、・・・、4e-3が敷設され、縦型の半導体チップ9eがパターン4e-1にはんだ接合などにより接合されている。
【0096】
半導体チップ9eのおもて面主電極は、複数のワイヤw71を通じてパターン4e-3に接続されている。パターン4e-1は、半導体チップ9eの裏面主電極に接続されており、パターン4e-1は、複数のワイヤw72を通じてパターン4e-2に接続されている。ワイヤw71、w72は、半導体チップと電気的に接続される金属ワイヤである。
【0097】
図19における図9のU相との対応関係では、例えば、半導体チップ9eが上アーム半導体チップ31aに対応し、ワイヤw71が上アーム半導体チップ31aと下アーム半導体チップ32aとの間の配線52aに対応し、ワイヤw72が上アーム半導体チップ31aと端子41aの間の配線51aに対応する。
【0098】
ワイヤw71とワイヤw72は近接しており、絶縁封止部材から露出する箇所があるとする。この場合、ワイヤw71は、ワイヤw72との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材から露出している箇所には、絶縁部材6e-1が被覆される。また、ワイヤw72は、ワイヤw71との絶縁性の確保を要する箇所であるとして、絶縁封止部材から露出している箇所には、絶縁部材6e-2が被覆される。
【0099】
なお、上記では、おもて面主電極配線に対応するワイヤw71と、裏面電極配線に対応するワイヤw72の両方に絶縁部材を被覆する構成としたが、どちらか一方にのみ絶縁部材を被覆する構成にしてもよい。また、ワイヤw71、w72の代わりにリードフレームを用いることもできる。
【0100】
<縦型の半導体チップを備える半導体装置>
図20図21は縦型の半導体チップを備える半導体装置の構成の一例を示す図である。図20は平面模式図、図21は側面模式図である。
半導体装置100において、電極端子120として、3つの主電極端子121、122、123、および4つの補助電極端子124、125、126、127が接続される。主電極端子121、・・・、123および補助電極端子124、・・・、127は、Al,Cu等の金属材料を用いて、半導体装置100への取り付け前に予め形成される。
【0101】
主電極端子121は、第1DCB基板140Aの第1主導体パターン143a(C1端子)に接続される。主電極端子121は、端子本体部121aと、その端子本体部121aから続く2本の脚部121bを有する。主電極端子121は、その2本の脚部121bが第1DCB基板140Aの第1主導体パターン143a上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0102】
なお、このように主電極端子121に2本の脚部121bを設けて第1DCB基板140Aの第1主導体パターン143a上に接続するのは、第1DCB基板140Aの一方のIGBT151とFWD152の組と、もう一方のIGBT151とFWD152の組との間に電気的な偏り(抵抗、インピーダンスの不均衡)が生じるのを抑えるためである。
【0103】
主電極端子122は、第2DCB基板140Bの第2主導体パターン143b(E2端子)に接続される。主電極端子122は、端子本体部122aと、その端子本体部122aから続く2本の脚部122bを有する。主電極端子122は、その2本の脚部122bが第2DCB基板140Bの第2主導体パターン143b上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0104】
なお、このように主電極端子122の接続を2箇所で行うのは、第2DCB基板140Bの一方のIGBT151とFWD152の組と、もう一方のIGBT151とFWD152の組との間に電気的な偏りが生じるのを抑えるためである。
【0105】
主電極端子123は、第1DCB基板140Aの第2主導体パターン143bにワイヤ160で接続された、第2DCB基板140Bの第1主導体パターン143a(E1端子)に接続される。主電極端子123は、端子本体部123aと、その端子本体部123aから続く2本の脚部123bを有する。主電極端子123は、その2本の脚部123bが第2DCB基板140Bの第1主導体パターン143a上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0106】
なお、このように主電極端子123の接続を2箇所で行うのは、第2DCB基板140Bの一方のIGBT151とFWD152の組と、もう一方のIGBT151とFWD152の組との間に電気的な偏りが生じるのを抑えるためである。
主電極端子121、・・・、123の端子本体部121a、・・・、123aは、各々、脚部121b、・・・、123b側を開口方向とする、略U字状とされる。
【0107】
また、補助電極端子124は、端子本体部124aと脚部124bを有する。補助電極端子124は、その脚部124bが、第1DCB基板140Aの第2主導体パターン143bにワイヤ160を介して電気的に接続された補助導体パターン上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0108】
補助電極端子125は、端子本体部125aと脚部125bを有する。補助電極端子125は、その脚部125bが、第1DCB基板140Aの第3主導体パターン143c(G1端子)上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0109】
同様にして、補助電極端子126は、端子本体部と脚部を有する。補助電極端子126は、その脚部が、第2DCB基板140Bの第2主導体パターン143b(E2端子)がワイヤ160を介して電気的に接続された第1DCB基板140Aの補助導体パターン上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0110】
補助電極端子127は、端子本体部と脚部を有する。補助電極端子127は、その脚部が、第2DCB基板140Bの第3主導体パターン143c(G2端子)がワイヤ160を介して電気的に接続された第1DCB基板140Aの補助導体パターン上に、はんだ接合等によって取り付けられる。
【0111】
主電極端子121、・・・、123及び補助電極端子124、・・・、127はそれぞれ、脚部が所定箇所に取り付けられた状態で、各々の端子本体部が半導体装置100における所定位置に配置されるようになる形状で、予め形成される。
【0112】
例えば、図に示したように、主電極端子121、・・・、123の端子本体部121a、・・・、123aが半導体装置100の中央部に略等間隔で並設され、補助電極端子124、・・・、127の端子本体部が半導体装置100の端部に並設されるように予め形成される。
【0113】
図20図21においてケース(不図示)と絶縁基板140との間に充填される絶縁封止部材15の高さt1は、絶縁封止部材15の絶縁基板140の上面からの高さt2に比べて高くなっているが、絶縁基板140の上方に配置される絶縁封止部材15の平面の面積が大部分を占めるため、絶縁基板140からの高さを従来に比べて低くすることで、気泡発生を抑制する効果を得ることができる。
【0114】
以上説明したように、本発明によれば、吸湿ゲルの昇温時に発生する剥離・気泡を抑止することで、絶縁信頼性を向上することができる。また、吸湿ゲルの降温時に生じる結露を抑止し、耐湿性を向上することができる。さらに、絶縁距離を短くでき、例えば、高耐圧3.3kV定格品でも汎用定格1.7kVと同等の小型化設計が可能となる。
【0115】
さらにまた、3.3kV定格であっても、細ワイヤ径(Φ300μm)が使用でき、素子面で信号入力のみに使うゲートパッドを最小化できる。特に高価なSiC(シリコンカーバイド)素子では、素子サイズを小さくできるのでコストダウンを図ることが可能になる。
【0116】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 半導体チップ
10 半導体装置
11 冷却体
11a 放熱グリス
11b 金属ベース板
12 絶縁基板
12a セラミック
12b、12c-1、12c-2 パターン
13a、13b はんだ
14-1、14-2、14-3 ワイヤ
15 絶縁封止部材
16 ケース
16a、16b 外部端子
h1 絶縁封止部材の充填高さ(本発明)
h2 絶縁封止部材の充填高さ(従来)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21