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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025403
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】エキシマランプ、光照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/33 20060101AFI20250214BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20250214BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20250214BHJP
   H01J 61/50 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01J61/33 F
H01J65/00 B
H01J61/35 F
H01J61/50 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130138
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】笠木 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】堀部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】竹添 法隆
【テーマコード(参考)】
5C043
【Fターム(参考)】
5C043AA02
5C043BB01
5C043CC16
5C043CD08
5C043CD12
5C043DD03
5C043DD31
5C043EA01
5C043EA14
(57)【要約】
【課題】より簡単に実施可能な構成で、発光管に生じる歪を低減し、より長期間にわたって使用可能なエキシマランプを提供する。
【解決手段】第一方向に延伸し、第一方向に直交する平面で切断したときの第一断面において、第一領域と、第一領域よりも管壁が厚い第二領域とを含み、前記第一領域と前記第二領域とによって外壁面上に凹凸が形成された、紫外光に対して透光性を示す発光管と、発光管の径方向において、発光管の管壁を介して対向する一対の電極と、発光管内で発生した紫外光を発光管の外側へと取り出すための光取り出し部とを備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延伸し、前記第一方向に直交する平面で切断したときの第一断面において、第一領域と、前記第一領域よりも管壁が厚い第二領域とを含み、前記第一領域と前記第二領域とによって外壁面上に凹凸が形成された、紫外光に対して透光性を示す発光管と、
前記発光管の径方向において、前記発光管の管壁を介して対向する一対の電極と、
前記発光管内で発生した紫外光を前記発光管の外側へと取り出すための光取り出し部とを備えることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記発光管の前記第一断面の形状が矩形状を呈し、それぞれ異なる平面に沿う前記発光管の壁面のうちの少なくとも一つの壁面に前記光取り出し部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記光取り出し部には、前記第一領域及び前記第二領域のいずれもが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記発光管の前記光取り出し部とは異なる壁面に反射膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記第一断面を見たときに、前記光取り出し部が形成された壁面の中央部に前記第一領域が形成され、前記反射膜と前記光取り出し部との境界近傍に前記第二領域が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記第一断面を見たときに、前記光取り出し部が形成された壁面の中央部に前記第二領域が形成され、前記反射膜と前記光取り出し部との境界近傍に前記第一領域が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記第一断面を見たときに、前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面は、第三領域と、前記第三領域よりも管壁が厚い第四領域とを含み、外壁面上に前記第三領域と前記第四領域とによる凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記第一断面を見たときの前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面において、中央部に前記第三領域が形成され、両端部に前記第四領域が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のエキシマランプ。
【請求項9】
前記第一断面を見たときの前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面において、中央部に前記第四領域が形成され、両端部に前記第三領域が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のエキシマランプ。
【請求項10】
前記第一断面を見たときに、前記発光管の前記管壁は、少なくとも一部の厚さが徐々に変化することを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエキシマランプと、
前記発光管の前記光取り出し部と対向する管壁に向かって突出し、先端部が当該管壁と近接するように配置された規制体とを備えることを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプ、及び光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶パネルの製造や、空気清浄用のオゾンの生成に、紫外光が用いられている。紫外光を出射する光源として、例えば、下記特許文献1に記載されているようなエキシマランプが利用されている。下記特許文献1には、発光管から放射される紫外光を、効率よく照射対象物に照射するために、発光管の内壁面に反射膜を形成したエキシマランプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5633354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体や液晶パネルの製造等に用いる産業用の光照射装置として、エキシマランプの高出力化が求められている。そこで、本発明者らは、上記特許文献1に記載の光照射装置に基づいて、エキシマランプの高出力化を検討したところ、以下のような課題が存在することを見出した。以下、図を参照しながら説明する。
【0005】
図9Aは、従来のエキシマランプ100の構成をY方向に見たときの模式的な図面である。図9Bは、図9Aのエキシマランプ100をZ方向に見たときの模式的な図面である。図9A及び図9Bに示すように、発光管101と、発光管101の外壁面101aに対向するように設けられた一対の電極102と、発光管101の内壁面101bに設けられた反射膜103とを備える。
【0006】
以下の説明においては、図9Aに示すように、エキシマランプ100の発光管101が延伸する方向(管軸方向)をX方向、電極102が対向する方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0007】
発光管101は、紫外光に対して透過性を有する材料(例えば、シリカガラス)で構成されており、内側には発光ガスG1が封入された発光空間101cが形成されている。電極102は、図9Bに示すように、発光管101から放射された紫外光が発光管101の外側に取り出されるように網目状に形成されている。なお、図9Bには、+Z側の電極102のみが図示されているが、-Z側の電極102は、+Z側の電極102と同じ形状である。
【0008】
エキシマランプ100は、一対の電極102間に電圧を印加することで、発光空間101c内で紫外光が発生し、電極102の網目から外側に向かって紫外光を出射する。出射する紫外光の波長に応じて発光空間101c内に封入される発光ガスG1の種類や組み合わせが選択される。
【0009】
半導体や液晶パネルの製造等に用いられるような200nm以下の紫外光は、発光管101の材料であるシリカガラスが有するSiとOの結合を切断することができる。したがって、エキシマランプ100を点灯させていると、発光空間101cから放射される紫外光によって、発光管101を構成するシリカガラスの結合が次々と切断されSiとOの結合角が変わる。それにより、歪が生じ、内壁面101bには、X方向のそれぞれの端部側に向かって引っ張るように応力が発生する。
【0010】
発光管101の光出射面104側(-Z側)の管壁は、エキシマランプ100を点灯させていると、常に発光空間101cから放射される紫外光に晒される。一方で、発光管101の光出射面104とは反対側(+Z側)の管壁は、発光管101から放射される紫外光が、内壁面101bに形成された反射膜103によって光出射面104側に向かうように反射されるため、ほとんど紫外光には曝されない。このような、-Z側の管壁において、紫外光の照射による歪が生じ、+Z側の管壁において、紫外光の照射による歪が生じないことによって、発光管全体で+Z側に向かって凸となるような変形が生じる。
【0011】
図10は、紫外光によって変形したエキシマランプ100をY方向に見たときの図面である。発光管101は、発光空間101cから放射される紫外光によって、上述したような変形が生じ、図10に示すように、-Z側壁面の変形に伴って全体が+Z側に向かって凸となるように変形する。発光管101が変形してしまうと、位置によって光出射面104と照射領域との距離に差異が生じ、照射ムラができてしまう。なお、図10のエキシマランプ100は、変化がわかりやすいように、実際よりも変形が大きく表現されている。
【0012】
上記特許文献1は、発光管の変形による紫外光の照射ムラや、発光管101の破損を防止すべく、紫外光の照射による歪が生じることで、発光管の壁面が平坦に近づくように、予め湾曲させた発光管を備えたエキシマランプを開示している。
【0013】
しかしながら、紫外光の照射によって生じる歪の程度を正確に予測することは困難であり、発光管の製造過程において、所望の曲率で湾曲させるには、高度な加工技術が要求される。
【0014】
なお、上述した説明では、反射膜103が設けられたエキシマランプ100に基づいて説明がなされているが、当然ながら、反射膜103が設けられていないエキシマランプにおいても、紫外光の照射による発光管101の変形は生じ得る。つまり、反射膜103を設けた場合と、設けていない場合とでは、発光管101に生じる変形のパターンが異なるが、いずれの場合においても発光管101にも紫外光の照射による変形は生じる。このため、反射膜103が設けられていないエキシマランプにおいても、照射ムラの課題は、同様に生じ得る。
【0015】
そして、上述した課題は、発光管101の外側に反射部材が設けられる場合や、冷却機構が設けられる場合等、それぞれの装置構成に応じて、発光管101の変形する方向や部分が異なってくるという事情も存在する。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑み、より簡単に実施可能な構成で、発光管に生じる歪を低減し、より長期間にわたって使用可能なエキシマランプ、及び光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のエキシマランプは、
第一方向に延伸し、前記第一方向に直交する平面で切断したときの第一断面において、第一領域と、前記第一領域よりも管壁が厚い第二領域とを含み、前記第一領域と前記第二領域とによって外壁面上に凹凸が形成された、紫外光に対して透光性を示す発光管と、
前記発光管の径方向において、前記発光管の管壁を介して対向する一対の電極と、
前記発光管内で発生した紫外光を前記発光管の外側へと取り出すための光取り出し部とを備えることを特徴とする。
【0018】
さらに、上記エキシマランプは、
前記発光管の前記第一断面の形状が矩形状を呈し、それぞれ異なる平面に沿う前記発光管の壁面のうちの少なくとも一つの壁面に前記光取り出し部が形成されていても構わない。
【0019】
さらに、上記エキシマランプにおいて、
前記光取り出し部には、前記第一領域及び前記第二領域のいずれもが形成されていても構わない。
【0020】
また、上記エキシマランプは、
前記発光管の前記光取り出し部とは異なる壁面に反射膜が形成されていても構わない。
【0021】
第二領域は、発光管を作成する金型の調整や、作製された発光管の管壁の一部を溶融、切削する等して、簡単かつ安定的に作製することができる。なお、このような発光管の作製方法は、単なる一例であって、他の作製方法が採用されても構わない。
【0022】
上述したように、紫外光の照射によって発光管に生じる歪は、Si-O結合の切断が顕著に発生する内壁面側と、当該切断が内壁面側と比べて生じにくい外壁面側との膨張差に起因して生じる。
【0023】
本発明は、内壁面の膨張に伴う発光管全体の湾曲や、外的な衝撃や力に対してより強度を高める観点から、少なくとも外壁面に凹凸形状が形成される。ただし、このことは、内壁面に凹凸形状を形成することを除外するものではない。
【0024】
ここで、紫外光の照射によって生じる発光管の歪は、上述したように、シリカガラスが有するSiとOの結合が切断されることで生じる。ところが、紫外光の照射によって切断されたSiとOの結合は、シリカガラス中に含まれるOH基による修復作用により、再結合することが知られている。また、このような修復作用は、シリカガラスの温度が高くなると、内部の原子移動が活発なほど顕著となる。つまり、発光管は、温度が高くなるほど、OH基による修復作用効果が顕著となり、SiとOの切断によって生じている歪が緩和される。
【0025】
一部に管壁が薄い領域が形成されている発光管は、管壁が薄い領域が形成されていない発光管と比べて熱容量が小さいため、点灯直後における昇温速度が向上する。したがって、一部に管壁が薄い領域が形成されている発光管は、点灯後すぐに発光管が高温状態となる。すなわち、当該構成の発光管は、従来構成の発光管に比べて、紫外光の照射によって歪が発生した場合であっても、点灯開始直後から早期に歪を修復する作用が生じ始めるため、歪が生じる前の状態を維持しやすい。例えば、エキシマランプの休止時間(ランプが消灯してから再び点灯するまでの時間)が比較的長く、休止後に再点灯する場合において、一部に管璧が薄い領域が形成されている発光管であれば、再点灯の開始直後から早期に歪を修復する作用が生じる。
【0026】
一部の管壁が薄い発光管は、例えば、従来通りに作製した発光管の一部を溶融、切削する等して作製できるが、この場合は、溶融、切削されて管壁が薄くなった部分が第一領域、何ら加工を加えていない部分が第二領域に相当する。
【0027】
上記構成の発光管は、第一方向に延伸し、第一断面において、第一領域と第二領域とが形成される。第一領域と第二領域とが形成されることにより、上記構成の発光管は、第一方向に対して湾曲する変形に対する強度が向上する。したがって、上記構成の発光管は、従来構成の発光管と比べて、紫外光の照射による変形が抑制される。
【0028】
また、一部に管壁が厚い領域が形成されている発光管は、管壁が厚い領域が形成されていない発光管と比べて発光管に蓄積される熱量が大きくなるため、保温効果が向上する。したがって、一部に管壁が厚い領域が形成されている発光管は、消灯後も発光管の高温状態がより長く維持されることとなり、上述した修復作用効果が長時間にわたって継続する。すなわち、当該構成の発光管は、従来構成の発光管に比べて、紫外光の照射によって歪が発生した場合であっても、歪が発生する前の状態に戻りやすい。例えば、エキシマランプの休止時間が比較的短く、エキシマランプの点滅動作を短時間で繰り返す場合において、一部に管璧が厚い領域が形成されている発光管であれば、保温効果が継続されることで歪が発生しにくい。
【0029】
上記のように、第一領域と第二領域とによって外壁面上に凹凸が形成されている発光管は、エキシマランプの休止時間が比較的長い場合や、休止時間が比較的短く点滅動作を短時間で繰り返す場合においても、発光管の歪の修復作用効果が発揮されやすい。
【0030】
さらに、発光管は、管壁が最も薄い部分の厚みと、管壁が最も厚い部分の厚みとの差が、管壁が最も厚い部分の厚みを基準として3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。なお、必ずしも、管壁が最も薄い部分が第一領域、管壁が最も厚い部分が第二領域である必要はない。
【0031】
一部の管壁が厚い発光管は、例えば、所定の形状の発光管を作製可能な金型に溶融したガラスを流し込む等して作製できるが、この場合は、相対的に管壁が薄い部分が第一領域、相対的に管壁が厚い部分が第二領域に相当する。
【0032】
なお、上述した第一領域と第二領域との関係は、加工前後の形状や、絶対的な厚みによって分類されるものではなく、作製後の発光管の管壁に形成されている相対的な厚みによって分類される。
【0033】
上記エキシマランプは、
前記第一断面を見たときに、前記光取り出し部が形成された壁面の中央部に前記第一領域が形成され、前記反射膜と前記光取り出し部との境界近傍に前記第二領域が形成されていても構わない。
【0034】
本明細書において、「境界近傍」とは、反射膜と光取り出し部との境界から発光管全体の平均厚みに相当する距離だけ離間した位置までの領域を含むことを意図して用いられる。
【0035】
上記エキシマランプは、
前記第一断面を見たときに、前記光取り出し部が形成された壁面の中央部に前記第二領域が形成され、前記反射膜と前記光取り出し部との境界近傍に前記第一領域が形成されていても構わない。
【0036】
光取り出し部が形成された壁面の中央部における発光管の管壁が、他の部分より厚くなるように作製、又は加工することで、第一領域と第二領域とが形成されている場合は、紫外光の照射量が比較的多い、光取り出し部の保温効果を高めることができ、かつ、より高い温度に到達しやすくなる。つまり、上記構成の発光管は、相対的に歪が生じやすい部分において、上記修復作用のより高い効果が長時間にわたって得られるため、発光管全体の歪をより低減することができる。
【0037】
また、光取り出し部は、紫外光が照射されるために、歪がより顕著に発生するが、反射膜が形成されている領域は、発光管自体に照射される紫外光が少ないために、光取り出し部ほどの歪が生じない。このため、反射膜と光取り出し部との境界近傍は、歪が発生する領域と、歪が発生しにくい領域との境界となるため、局所的に強い応力がかかりやすく破損が生じやすい。
【0038】
発光管の管壁の反射膜と光取り出し部との境界近傍をより薄くなるように作製、又は加工することで、第一領域と第二領域とが形成されている場合は、局所的に強い応力がかかる部分の昇温速度を高めることができる。つまり、上記構成の発光管は、局所的に強い応力がかかる部分において、上記修復作用の効果が早期に現れるため、特に点灯開始直後に発生する歪に起因した破損を抑制することができる。
【0039】
なお、上記に対応するように、反射膜の端部の中間の位置における発光管の管壁をより薄くなるように作製、又は加工することで、第一領域と第二領域とが形成されている場合は、相対的に歪が生じやすい部分において、特に点灯開始直後に発生する歪に起因した破損を抑制することができる。
【0040】
そして、発光管の管壁の反射膜と光取り出し部との境界近傍がより厚くなるように作製、又は加工することで、第一領域と第二領域とが形成されている場合は、局所的に強い応力がかかりやすい領域において、上記修復作用のより高い効果が長時間にわたって得られるため、発光管の当該領域に生じる負荷をより低減することができる。
【0041】
上記エキシマランプにおいて、
前記第一断面を見たときに、前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面は、第三領域と、前記第三領域よりも管壁が厚い第四領域とを含み、外壁面上に前記第三領域と前記第四領域とによる凹凸が形成されていても構わない。
【0042】
上記構成とすることで、複数の壁面に上述した凹凸が形成されるため、発光管の歪に対する強度がより高められる。
【0043】
さらに、上記エキシマランプは、
前記第一断面を見たときの前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面において、中央部に前記第三領域が形成され、両端部に前記第四領域が形成されていても構わない。
【0044】
また、上記エキシマランプは、
前記第一断面を見たときの前記発光管の前記光取り出し部と対向する壁面において、中央部に前記第四領域が形成され、両端部に前記第三領域が形成されていても構わない。
【0045】
上記構成によれば、発光管は、紫外光の照射による歪を低減できるとともに、後述されるような、紫外光の照射による歪を低減するために設けられる規制体が接触する部分の強度が高められる。
【0046】
上記エキシマランプは、
前記発光管の前記管壁は、少なくとも一部の厚さが徐々に変化するように構成されていても構わない。
【0047】
本明細書において、「厚さが徐々に変化する」とは、厚さが最も小さい部分から最も大きい部分に向かって、厚さが段階的に複数回増加すること、又は厚さが連続的に単調増加することをいう。
【0048】
本発明の光照射装置は、
上記エキシマランプと、
前記発光管の前記光取り出し部と対向する管壁に向かって突出し、先端部が当該管壁と近接するように配置された規制体とを備えることを特徴とする。
【0049】
本明細書において、「近接」とは、離間距離が2mm以下である場合を指す意図で用いられている。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、より簡単に実施可能な構成で、発光管に生じる歪を低減し、より長期間にわたって使用可能なエキシマランプ、及び光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】光照射装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図2】一実施形態におけるエキシマランプをY方向に見たときの模式的な断面図である。
図3】一実施形態におけるエキシマランプをZ方向に見たときの模式的な図面である。
図4】一実施形態におけるエキシマランプをX方向に見たときの模式的な断面図である。
図5】光照射装置の規制体周辺をX方向に見たときの拡大断面図である。
図6】一実施形態におけるエキシマランプをX方向に見たときの模式的な断面図である。
図7】一実施形態におけるエキシマランプをX方向に見たときの模式的な断面図である。
図8】一実施形態におけるエキシマランプをX方向に見たときの模式的な断面図である。
図9A】従来のエキシマランプの構成をY方向に見たときの模式的な図面である。
図9B図9AのエキシマランプをZ方向に見たときの模式的な図面である。
図10】紫外光によって変形したエキシマランプをY方向に見たときの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明のエキシマランプ及び光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0053】
[第一実施形態]
図1は、光照射装置1の第一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。図1に示すように、第一実施形態の光照射装置1は、エキシマランプ2と、規制体3と、照射対象物W1を載置する搬送機構4とを備える。
【0054】
まず、エキシマランプ2の構成について説明する。図2は、第一実施形態におけるエキシマランプ2をY方向に見たときの模式的な断面図である。図3は、第一実施形態におけるエキシマランプ2をZ方向に見たときの模式的な図面である。図4は、一実施形態におけるエキシマランプ2をX方向に見たときの模式的な断面図である。図2及び図4に示すように、エキシマランプ2は、発光管10と、一対の電極(11,12)と、反射膜13と、光取り出し部14とを備える。
【0055】
以下の説明においては、図2に示すように、エキシマランプ2が延伸する方向(管軸方向)をX方向(第一方向)、一対の電極(11,12)が対向する方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向(第二方向)とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0056】
発光管10は、紫外光L1に対して透光性を有する材料(例えば、シリカガラス)で形成されており、図2に示すように、X方向に延伸し、YZ平面で切断した時の断面(第一断面)を見たときに矩形状を呈する。また、発光管10は、内側に発光ガスG1が封入される発光空間10cが設けられている。
【0057】
第一実施形態におけるエキシマランプ2は、ピーク波長が172nmの紫外光L1を出射するように、発光管10の発光空間10c内に、キセノン(Xe)ガスを含む発光ガスG1が封入されている。なお、当該構成は単なる一例であって、発光管10に封入する発光ガスG1の種類は、光照射装置1の使用目的、すなわち、出射させたい紫外光L1の波長に応じて任意に選択される。
【0058】
第一実施形態における発光管10は、図4に示すように、第一断面を見たときに、-Z側の管壁において、第一領域10pと、第一領域10pよりも管壁が厚い第二領域10qとが形成されている。また、+Z側の管壁において、第三領域10rと、第三領域10rよりも管壁が厚い第四領域10sとが形成されている。
【0059】
第一実施形態においては、発光管10の第一断面の周方向に関し、反射膜13の端部13aの中間の位置C1に第二領域10q、反射膜13と光取り出し部14との境界10d近傍に第一領域10pが形成されている。そして、発光管10の第一断面の周方向に関し、+Z側の壁面において、中央部に第三領域10r、両端部に第四領域10sが形成されている。
【0060】
なお、第一実施形態における第二領域10q及び第四領域10sは、図4に示すように、第一領域10p及び第三領域10rよりも管壁が厚く形成されているとともに、発光管10の周方向において、徐々に厚みが変化するように形成されている。
【0061】
電極(11,12)は、発光管10の外壁面10a上にZ方向において発光管10を介して径方向において対向するように形成された、メッシュ状の金属膜であり、図示されない電源装置に接続されて、点灯に必要な電圧が印加される。電圧の印加方法は任意であるが、第一実施形態においては、電極(11,12)間に、所望レベルのパルス状の電圧が、周期的に印加されることで、発光空間10c内において紫外光L1が発生する。
【0062】
電極(11,12)は、例えば、メッシュ状に編み込んだ金属線や、マスキングを施した発光管10の外壁面10a上に金属材料を蒸着させて、又は金属ペーストを塗布して形成した金属膜である。なお、反射膜13が形成される管壁の外壁面10a上に形成される電極11は、メッシュ状である必要はなく、一部、又は全体にわたってベタ状の電極であっても構わない。また、電極(11,12)を構成する材料としては、例えば、金、銀、銅、プラチナ等である。
【0063】
さらに、電極(11,12)のうちの一方が、発光管10の内側に配置されていても構わない。なお、ここでの、発光管10の内側に配置されるとは、一方の電極が、発光空間10c内に配置されている場合や、内管壁と外管壁を備え、円筒形状呈するように内管壁と外管壁とに挟まれた領域に発光空間10cが形成された発光管において、内管壁の内側に配置されている場合をも含む。
【0064】
反射膜13は、発光管10の+Z側の管壁の内壁面10b、及びY方向において対向する管壁の内壁面10bに形成されている。反射膜13は、図4に示すように、発光空間10c内で発生し、光取り出し部14とは異なる方向に向かって進行する紫外光L1が、光取り出し部14側へと進行するように反射する。
【0065】
反射膜13は、例えば、粒子状のシリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)等が含まれる懸濁液を塗布し、焼成することで形成された金属酸化物の焼結膜を採用し得る。
【0066】
なお、反射膜13は、発光管10の外壁面10aに形成されていてもよく、反射膜13を備えず、別部材としての反射部材を設けるように構成されていても構わない。また、照射対象物W1とは異なる方向に向かって出射される紫外光L1について、特に対処する必要がない場合は、反射膜や、反射部材が設けられていなくても構わない。
【0067】
光取り出し部14は、発光管10の-Z側の管壁によって構成される、発光空間10c内で発生した紫外光L1を、発光管10の外側へと取り出すための発光管10の一部分である。なお、第一実施形態における光取り出し部14は、図3に示すように、メッシュ状の電極12が設けられている。したがって、発光管10の発光空間10cで発生した紫外光L1は、光取り出し部14と、電極12の網目とを介して、発光管10の外側へと出射される。
【0068】
図5は、光照射装置1の規制体3周辺をX方向に見たときの拡大断面図である。図5に示すように、規制体3は、発光管10に近づくように突出している。そして、先端部にローラ3aが設けられており、ローラ3aが+Z側の管壁に形成された第四領域10sと近接するように配置されている。ローラ3aは、図10に示すような歪が生じた場合に、発光管10と接触して、位置によって光取り出し部14と照射対象物W1との距離に差異が生じることを規制し、照射対象物W1における照射ムラを抑制する。また、このように発光管10の管壁が厚い第二領域10q、又は第四領域10sが規制体3と近接するように配置されることで、規制体3と接触した際の応力負荷の耐性が高められ、発光管10の破損がより抑制される。
【0069】
第一実施形態の光照射装置1において、規制体3は、一つの光照射装置1において、複数の規制体3が設けられていてもよく、ローラ3aが設けられた先端部が二股、又は三股以上になっていても構わない。当該構成によれば、歪が生じたエキシマランプ2において、複数の点によって支持される。したがって、当該構成の光照射装置1は、一点で支持される場合と比較して、発光管10に加わる力が分散するため、発光管10の破損が抑制される。
【0070】
上記構成の光照射装置1が備える発光管10は、従来の発光管と比較すると、第一領域10p及び第二領域10qとが存在することによって形成される凹凸形状により、X方向に対して湾曲する変形に対する強度が向上する。したがって、上記構成の光照射装置1は、従来構成に比べて、発光管10の破損が抑制されるため、より長期にわたっての使用が可能となる。
【0071】
また、第一実施形態の光照射装置1が備えるエキシマランプ2によれば、紫外光L1の照射量が比較的多い、光取り出し部14の保温効果を高めることができる。つまり、上記構成の発光管10は、相対的に歪が生じやすい部分において、上述したような修復作用の効果が相対的に高められる構成であるため、発光管全体の歪をより低減することができる。
【0072】
なお、第一実施形態の発光管10は、図4に示すように、第一領域10p及び第一領域10pより管壁が厚い第二領域10qが形成されているが、当該管壁において、第一領域10p及び第二領域10qとは、厚みが異なる更なる別の領域が形成されていても構わない。
【0073】
また、第二領域10qは、第一領域10pよりも管壁が厚く形成されていればよく、図4に示すように、発光管10の内側と外側のいずれにも凸状である必要はない。例えば、第二領域10qは、内壁面10b側は平坦面とし、外壁面10a側のみが凸状である形状としても構わない。
【0074】
さらに、これらの点は、+Z側の管壁における、第三領域10rと、第四領域10sにおいても同様である。そして、第一実施形態においては、Y方向に関し、第一領域10p及び第二領域10qの形状や位置関係と、第三領域10r及び第四領域10sの形状や位置関係とが、同じように図示されているが、これらの形状や位置関係は一致していなくても構わない。
【0075】
[第二実施形態]
本発明の光照射装置の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0076】
図6は、第二実施形態におけるエキシマランプ2をX方向に見たときの模式的な断面図である。第二実施形態における発光管10は、図6に示すように、第一断面を見たときに、Z方向に対向する管壁において、第一領域10pと、第一領域10pよりも管壁が厚い第二領域10qとが形成されている。そして、第二実施形態においては、発光管10の第一断面の周方向に関し、反射膜13の端部13aの中間の位置C1に第一領域10p、反射膜13と光取り出し部14との境界10d近傍に第二領域10qが形成されている。
【0077】
なお、第二実施形態における第二領域10q及び第四領域10sは、発光管10の外壁面10a上に形成された凸状の部分が形成されることによって、第一領域10p及び第三領域10rよりも管壁が厚くなっている。
【0078】
第二実施形態の光照射装置1が備えるエキシマランプ2によれば、反射膜13と光取り出し部14との境界10d近傍の保温効果を高めることができる。つまり、上記構成の発光管10は、局所的に強い応力がかかりやすい境界10d近傍において、上述したような修復作用がより高い効果で長時間にわたって得られるため、発光管10の境界10d近傍に生じる負荷がより低減される。
【0079】
[第三実施形態]
本発明の光照射装置の第三実施形態の構成につき、第一実施形態及び第二実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0080】
図7は、第三実施形態におけるエキシマランプ2をX方向に見たときの模式的な断面図である。第三実施形態における発光管10は、図7に示すように、-Z側の管壁の一部が切削されることによって、第一領域10pと、第一領域10pよりも管壁が厚い第二領域10qとが形成されている。
【0081】
第三実施形態の光照射装置1が備えるエキシマランプ2によれば、紫外光L1の照射量が比較的多い、光取り出し部14の昇温速度を向上させることができる。つまり、上記構成の発光管10は、相対的に歪が生じやすい部分において、特に点灯開始直後に発生する、紫外光L1の照射による歪に起因した破損が抑制される。
【0082】
[第四実施形態]
本発明の光照射装置の第四実施形態の構成につき、第一実施形態、第二実施形態及第三実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0083】
図8は、第四実施形態におけるエキシマランプ2をX方向に見たときの模式的な断面図である。第四実施形態における発光管10は、図8に示すように、-Z側の管壁の一部が切削されることによって、第一領域10pと、第一領域10pよりも管壁が厚い第二領域10qとが形成されている。
【0084】
第四実施形態の光照射装置1が備えるエキシマランプ2によれば、局所的に強い応力がかかる、反射膜13と光取り出し部14との境界10d近傍の昇温速度を向上させることができる。つまり、上記構成の発光管10は、局所的に強い応力がかかる境界10d近傍において、上述したような修復作用の効果が早期に現れるため、特に点灯開始直後に発生する歪に起因した破損が抑制される。
【0085】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0086】
〈1〉 上述した各実施形態では、第一断面の形状がいずれも矩形状を呈する発光管10を備えた構成が説明されたが、発光管10の第一断面における形状は、矩形状でなくてもよく、例えば、円形状や、長円状、楕円状、多角形状等、いずれの構成であっても構わない。
【0087】
〈2〉 上述した光照射装置1及びエキシマランプ2が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0088】
1 : 光照射装置
2 : エキシマランプ
3 : 規制体
3a : ローラ
4 : 搬送機構
10 : 発光管
10a : 外壁面
10b : 内壁面
10c : 発光空間
10d : 境界
10p : 第一領域
10q : 第二領域
10r : 第三領域
10s : 第四領域
11,12 : 電極
13 : 反射膜
13a : 端部
14 : 光取り出し部
100 : エキシマランプ
101 : 発光管
101a : 外壁面
101b : 内壁面
101c : 発光空間
102 : 電極
103 : 反射膜
104 : 光出射面
G1 : 発光ガス
L1 : 紫外光
W1 : 照射対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10