(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025429
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】合成システム
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130174
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
(72)【発明者】
【氏名】須賀 健雄
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA62
4G075AA65
4G075BA10
4G075BD01
4G075DA02
4G075EB01
(57)【要約】
【課題】フロー合成における作業者の負担を低減することが可能な合成システムを提供する。
【解決手段】合成システム100は、流路部101~流路部103および切替部40を備える。流路部101は、液体原料を収容可能な容器10に接続される。流路部102は、液体原料を収容可能な容器20に接続される。流路部103は、容器10と容器20とを接続する。流路部103には、液体原料から反応物を生成する合成反応装置60が接続される。切替部40は、ガス供給部30により供給されるガスを流路部101に導く流路状態と、ガス供給部30により供給されるガスを流路部102に導く流路状態とに切り替え可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料を収容可能な第1の容器に接続される第1の流路部と、
液体原料を収容可能な第2の容器に接続される第2の流路部と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを接続し、液体原料から反応物を生成する合成反応装置が接続される第3の流路部と、
ガス供給部により供給されるガスを前記第1の流路部に導く流路状態と前記ガス供給部により供給されるガスを前記第2の流路部に導く流路状態とに切り替え可能な切替部とを備える、合成システム。
【請求項2】
所定の切替条件が満たされた場合に、前記切替部の流路状態を切り替える制御部をさらに備える、請求項1記載の合成システム。
【請求項3】
前記切替条件は、前記第1の容器または前記第2の容器内の液量が所定値以下になることである、請求項2記載の合成システム。
【請求項4】
前記切替条件は、前記第1の容器または前記第2の容器内の液量が所定値以上になることである、請求項2記載の合成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
重合等の合成により、原料から薬品、食品または化学物質等の反応物が生成される(例えば、特許文献1参照)。近年、原料から反応物を生成する合成手法として、フロー合成が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロー合成を行う合成システムにおいては、2つの容器の間に光重合反応装置を配置することが考えられる。作業者は、不活性ガスの供給装置を一方の容器に接続する。この場合、一方の容器に不活性ガスが供給され、当該容器に収容された原料が光重合反応装置を通過して他方の容器に圧送される。光重合反応装置においては、光が一定時間原料に照射されることにより、原料の一部から反応物が生成される。したがって、他方の容器には、反応物と未反応の原料との混合物が収容される。
【0005】
その後、作業者は、不活性ガスの供給装置を他方の容器に接続する。この場合、他方の容器に不活性ガスが供給され、当該容器に収容された原料が光重合反応装置を通過して、一方の容器に圧送される。これにより、一方の容器には、反応物と残り未反応の原料との混合物が収容される。この動作が繰り返されることにより、十分な量の反応物が生成される。
【0006】
しかしながら、上記の反応物生成の工程においては、数十回もの原料への光照射を繰り返す必要があるため、作業者の負担が大きい。そのため、作業者の負担を低減可能な合成システムを開発することが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、作業者の負担を低減することが可能な合成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、液体原料を収容可能な第1の容器に接続される第1の流路部と、液体原料を収容可能な第2の容器に接続される第2の流路部と、前記第1の容器と前記第2の容器とを接続し、液体原料から反応物を生成する合成反応装置が接続される第3の流路部と、ガス供給部により供給されるガスを前記第1の流路部に導く流路状態と前記ガス供給部により供給されるガスを前記第2の流路部に導く流路状態とに切り替え可能な切替部とを備える、合成システムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロー合成における作業者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る合成システムの構成を示す図である。
【
図2】合成システムの動作を説明するための図である。
【
図3】合成システムの動作を説明するための図である。
【
図4】合成システムの動作を説明するための図である。
【
図5】合成システムの動作を説明するための図である。
【
図7】
図6の制御部により実行される合成処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1の変形例に係る合成システムの構成を示す図である。
【
図9】第2の変形例に係る合成システムの構成を示す図である。
【
図10】第3の変形例に係る合成システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)合成システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係る合成システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る合成システムの構成を示す図である。
図1に示すように、合成システム100は、分析装置200に接続される。分析装置200は、分取装置を含む。本実施の形態では、分析装置200は液体クロマトグラフであるが、他の分析装置であってもよい。
【0012】
合成システム100は、容器10,20、ガス供給部30、切替部40,50、合成反応装置60、試料供給部70および制御部80を含む。また、合成システム100は、流路部101~104を含む。流路部101~103は、それぞれ第1~第3の流路部の例である。流路部101~104の各々は、1または複数の配管により構成されてもよい。
【0013】
容器10,20は、それぞれ第1および第2の容器の例である。容器10,20の各々は、例えばフラスコであり、液体原料を収容可能である。本実施の形態では、液体原料はモノマである。ガス供給部30は、窒素ガスを供給する。ガス供給部30は、他の不活性ガスを供給してもよいし、クリーンエア等のガスを供給してもよい。
【0014】
切替部40は、例えば多方切替バルブであり、6つのポート41~46を有する。切替部40は、切替部の例であり、第1の流路状態と第2の流路状態とで切り替え可能である。第1の流路状態においては、ポート41,42間が接続され、ポート43,44間が接続され、ポート45,46間が接続される。第2の流路状態においては、ポート42,43間が接続され、ポート44,45間が接続され、ポート46,41間が接続される。
【0015】
ポート41は、ガス供給部30に接続される。ポート42は、流路部101を通して容器10に接続される。ポート43,45は、大気に開放される。ポート46は、流路部102を通して容器20に接続される。この接続によれば、第1の流路状態においては、ガス供給部30により供給されるガスが、流路部101を通して容器10に導かれる。第2の流路状態においては、ガス供給部30により供給されるガスが、流路部102を通して容器20に導かれる。
【0016】
容器10と容器20とは、流路部103により接続される。流路部103には、切替部50および合成反応装置60が設けられる。切替部50は、分析装置200に接続される。切替部50は、切替部40と同様の多方切替バルブであり、第3の流路状態と第4の流路状態とで切り替え可能である。第3の流路状態においては、容器10と容器20との間で液体が導かれる。第4の流路状態においては、流路部103を流れる液体が分析装置200に導かれる。ここで、液体とは、液体原料または後述する反応物を含む。
【0017】
流路部103を流れる液体原料は、滞留しつつ一定時間かけて合成反応装置60を通過する。合成反応装置60は、自己を通過する液体原料を反応させることにより、液体原料から反応物を生成する。本実施の形態では、合成反応装置60は、光重合反応装置であり、紫外線を出射可能な光源を含む。合成反応装置60を通過する液体原料に紫外線が照射されることにより、高分子ポリマが反応物として生成される。
【0018】
試料供給部70は、複数(
図1の例では4つ)のボトル71~74、切替部75および送液部76を含む。ボトル71には、補充用の液体原料が収容される。ボトル72~74の各々には、液体添加物が収容される。切替部75は、5つのポート75a~75eを有し、第5~第8の流路状態のいずれかに切り替え可能である。第5~第8の流路状態においては、ポート75a~75dと、ポート75eとがそれぞれ接続される。
【0019】
ポート75a~75dは、ボトル71~74にそれぞれ接続される。ポート75eは、切替部75に接続される。この接続によれば、第5の流路状態においては、ボトル71に収容された液体原料が送液部76に導かれる。第6~第8の流路状態においては、ボトル72~74に収容された液体添加物が送液部76にそれぞれ導かれる。
【0020】
送液部76は、例えばポンプを含み、切替部75により導かれた液体原料または液体添加物を、流路部104を通して容器10に供給する。これにより、容器10に液体原料を補充することができる。あるいは、容器10内の液体原料に液体添加物を添加することができる。送液部76は、流路部104により容器20に接続されてもよい。この場合、送液部76は、切替部75により導かれた液体原料または液体添加物を、流路部104を通して容器20に供給する。
【0021】
制御部80は、メモリ81およびCPU(中央演算処理装置)82を含む。また、本実施の形態では、制御部80は、経過時間を計測するタイマ83をさらに含む。メモリ81には、液体原料から反応物を生成するための合成プログラムが記憶される。CPU82は、メモリ81に記憶された合成プログラムに従って、ガス供給部30,切替部40,50,合成反応装置60および試料供給部70の動作を制御する。制御部80の詳細については後述する。
【0022】
(2)合成システムの動作
図2~
図5は、合成システム100の動作を説明するための図である。合成システム100の初期状態においては、容器10,20には液体原料が収容されていないとする。そこで、試料供給部70の切替部75の流路状態が第5の流路状態に切り替えられ、送液部76が駆動される。この場合、
図2に太い実線の矢印で示すように、ボトル71に収容された液体原料が流路部104を通して容器10に圧送される。所定時間が経過した後、送液部76の駆動が停止される。これにより、容器10に一定量の液体原料が収容される。
【0023】
次に、切替部40の流路状態が第1の流路状態に切り替えられ、切替部50の流路状態が第3の流路状態に切り替えられる。この状態で、ガス供給部30が駆動される。この場合、ガス供給部30により供給されたガスが流路部101を通して容器10に導かれることにより、
図3に太い実線の矢印で示すように、容器10に収容された液体原料が流路部103を通して容器20に圧送される。容器10に供給されたガスは、流路部103、容器20、流路部102および切替部40のポート46,45を順次通過して大気中に排出される。
【0024】
流路部103においては、液体原料が合成反応装置60を通過することにより、液体原料の一部に反応が発生する。これにより、液体原料の一部から反応物が生成される。したがって、容器20には、未反応の液体原料と、反応済みの反応物とが混合された液体(以下、単に液体原料と呼ぶ。)が収容される。
【0025】
その後、切替部40流路状態の切替条件が満たされた場合、切替部40の流路状態が第1の流路状態から第2の流路状態に切り替えられる。切替部40の流路状態の切替条件は、例えば容器10,20内の液量が所定値以下になることである。したがって、容器10内の液量が所定値以下になると、切替部40の流路状態が第1の流路状態から第2の流路状態に切り替えられる。
【0026】
作業者は、容器10,20内の液量が所定値以下になるまでの時間を実験または計算等により特定し、特定された時間を制御部80に設定してもよい。この場合、タイマ83により計測される時間が設定された時間に達すると、容器10,20内の液量が所定値以下になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0027】
あるいは、切替部40の流路状態の切替条件は、容器10,20内の液量が所定値以上になることであってもよい。この場合、容器20内の液量が所定値以上になると、切替部40の流路状態が第1の流路状態から第2の流路状態に切り替えられる。この場合においても、作業者は、容器10,20内の液量が所定値以上になるまでの時間を実験または計算等により特定し、特定された時間を制御部80に設定してもよい。この場合、タイマ83により計測される時間が設定された時間に達すると、容器10,20内の液量が所定値以上になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0028】
切替部40の流路状態が第2の流路状態に切り替えられることにより、ガス供給部30により供給されたガスが流路部102を通して容器20に導かれる。この場合、
図4に太い実線の矢印で示すように、容器20に収容された液体原料が流路部103を通して容器10に圧送される。容器20に供給されたガスは、流路部103、容器10、流路部101および切替部40のポート42,43を順次通過して大気中に排出される。
【0029】
流路部103においては、液体原料が合成反応装置60を通過することにより、未反応の液体原料の一部に反応が発生する。これにより、未反応の液体原料の一部から反応物がさらに生成される。したがって、容器10には、未反応の液体原料と、反応済みの反応物とが混合された液体が収容される。
【0030】
その後、切替部40流路状態の切替条件が満たされた場合、切替部40の流路状態が第2の流路状態から第1の流路状態に切り替えられる。これにより、
図3の動作と
図4の動作とが交互に繰り返される。これらの動作が繰り返されるごとに、容器10または容器20に収容される液体原料中の反応物の量が増加する。
【0031】
なお、容器10に収容される液体原料が減少した場合には、試料供給部70において、切替部75が第5の流路状態に切り替えられるとともに、送液部76が駆動されることにより、適宜液体原料が容器10に補充されてもよい。また、液体原料の反応が一定程度進んだ段階において、切替部75が第6~第8の流路状態のいずれかに切り替えられるとともに、送液部76が駆動されることにより、所定の添加物が容器10に供給されてもよい。これにより、反応を促進させることができる。
【0032】
その後、切替部50の流路状態の切替条件が満たされた場合、切替部50の流路状態が第3の流路状態から第4の流路状態に切り替えられる。本実施の形態では、切替部50の流路状態の切替条件は、タイマ83により計測される経過時間が制御部80に設定された時間に達することである。作業者は、十分な量の反応物が生成されるまでの時間を実験または計算等により特定し、特定された時間を制御部80に設定してもよい。この場合、十分な量の反応物が生成されると、切替部50の流路状態が第3の流路状態から第4の流路状態に切り替えられる。
【0033】
あるいは、切替部50の流路状態の切替条件は、切替部40の流路状態の切替回数が制御部80に設定された回数に達することであってもよい。作業者は、十分な量の反応物が生成されるまでの切替部40の流路状態の切替回数を実験または計算等により特定し、特定された回数を制御部80に設定してもよい。この場合でも、十分な量の反応物が生成されると、切替部50の流路状態が第3の流路状態から第4の流路状態に切り替えられる。
【0034】
切替部50の流路状態が第4の流路状態に切り替えられることにより、
図5に太い実線の矢印で示すように、容器20に収容された液体原料が流路部103を通して分析装置200に圧送される。なお、切替部50の流路状態が第4の流路状態に切り替えられるタイミングによっては、容器10に収容された液体原料が流路部103を通して分析装置200に圧送される。分析装置200においては、合成反応装置60により生成された反応物が分析される。また、分析された反応物が図示しない分取装置により回収される。
【0035】
(3)合成処理
図6は、制御部80の構成を示す図である。
図7は、
図6の制御部80により実行される合成処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御部80は、機能部として、試料制御部84、ガス制御部85、切替制御部86,87および合成制御部88を含む。制御部80の
図1のCPU82がメモリ81に記憶された合成プログラムを実行することにより、制御部80の機能部が実現される。制御部80の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0036】
以下、
図2~
図5の合成システム100、
図6の制御部80および
図7のフローチャートを用いて合成処理を説明する。まず、試料制御部84は、試料供給部70を制御することにより、容器10に液体原料を補充する(ステップS1および
図2)。なお、合成システム100の初期状態において、容器10に液体原料が収容されている場合には、ステップS1は省略されてもよい。
【0037】
次に、ガス制御部85は、ガス供給部30によりガスを供給する(ステップS2)。また、切替制御部87は、切替部50の流路状態を第3の流路状態に切り替える(ステップS3)。さらに、切替制御部86は、切替部40の流路状態を第1の流路状態に切り替える(ステップS4)。ステップS2~S4は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0038】
ステップS2~S4が実行されることにより、容器10に収容された液体原料が流路部103を通して容器20に圧送される(
図3)。ここで、合成制御部88は、合成反応装置60を制御することにより、合成反応装置60を通過する液体原料から反応物を生成する(ステップS5)。
【0039】
続いて、切替制御部86は、切替部40の流路状態の切替条件が満たされたか否かを判定する(ステップS6)。切替部40の流路状態の切替条件が満たされていない場合、切替制御部86は、処理をステップS5に戻す。切替部40の流路状態の切替条件が満たされるまで、ステップS5,S6が繰り返される。
【0040】
切替部40の流路状態の切替条件が満たされた場合、切替制御部86は、切替部40の流路状態を第2の流路状態に切り替える(ステップS7)。これにより、容器20に収容された液体原料が流路部103から圧送される(
図4)。ここで、合成制御部88は、合成反応装置60を制御することにより、合成反応装置60を通過する液体原料から反応物を生成する(ステップS8)。
【0041】
その後、切替制御部87は、切替部50の流路状態の切替条件が満たされたか否かを判定する(ステップS9)。切替部50の流路状態の切替条件が満たされていない場合、容器20から圧送される液体原料は、容器10に導かれる。この場合、切替制御部86は、切替部40の流路状態の切替条件が満たされたか否かを判定する(ステップS10)。
【0042】
切替部40の流路状態の切替条件が満たされた場合、切替制御部86は、処理をステップS4に戻す。これにより、容器10から容器20への液体原料の圧送が再度実行される。この時点で、試料制御部84は、試料供給部70を制御することにより、容器10に液体原料を補充してもよいし、容器10内の液体原料に液体添加物を添加してもよい。一方、切替部40の流路状態の切替条件が満たされていない場合、切替制御部86は、処理をステップS8に戻す。
【0043】
ステップS9で切替部50の流路状態の切替条件が満たされた場合、切替制御部87は、切替部50の流路状態を第4の流路状態に切り替える(ステップS11)。これにより、ステップS5,S8で生成された反応物が、分析装置200に供給される(
図5)。分析装置200においては、供給された反応物の分析および分取が行われる。その後、処理はステップS1に戻る。これにより、同様の処理が繰り返される。合成処理は、ステップS11の実行後に終了されてもよい。
【0044】
(4)変形例
合成システム100において、液体原料は反応に適した温度に調整されていてもよい。
図8は、第1の変形例に係る合成システム100の構成を示す図である。
図8に示すように、本例に係る合成システム100は、1以上の温調部90を含む。各温調部90は、例えばヒータであってもよいし、ペルチェ素子であってもよい。
【0045】
図8の例では、容器10、容器20および流路部103に温調部90が取り付けられる。これにより、容器10に収容される液体原料、容器20に収容される液体原料および流路部103を流れる液体原料が温調部90により温調される。温調部90は、容器10、容器20および流路部103の全部に取り付けられなくてもよく、容器10、容器20および流路部103のいずれか1つに取り付けられていればよい。また、温調部90が流路部103に取り付ける場合には、反応を促進することもできる。
【0046】
また、本実施の形態において、タイマ83により計測される経過時間に基づいて切替部40の流路状態が切り替えられるが、実施の形態はこれに限定されない。
図9は、第2の変形例に係る合成システム100の構成を示す図である。
図9に示すように、本例に係る合成システム100は、液面センサ11,21をさらに含む。また、第2の変形例または後述する第3の変形例においては、制御部80はタイマ83を含まない。
【0047】
液面センサ11,21は、容器10,20にそれぞれ収容された液体原料の液面を検出する。液面センサ11,21は、例えば容器10,20にそれぞれ収容された液体原料を撮像するカメラであってもよい。この場合、液体原料の画像に基づいて、容器10,20にそれぞれ収容された液体原料の液面が検出される。
【0048】
作業者は、例えば容器10,20内の液量が所定値以下になるときの液面の高さを制御部80に設定してもよい。あるいは、容器10,20内の液量が所定値以下になるときの液面の高さが予め規定値に設定されていてもよい。これらの場合、液面センサ11,21により検出される液面の高さが設定された高さに達すると、容器10また容器20内の液量が所定値以下になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0049】
一方で、作業者は、例えば容器10,20内の液量が所定値以上になるときの液面の高さを制御部80に設定してもよい。あるいは、容器10,20内の液量が所定値以上になるときの液面の高さが予め規定値に設定されていてもよい。これらの場合、液面センサ11,21により検出される液面の高さが設定された高さに達すると、容器10また容器20内の液量が所定値以上になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0050】
図10は、第3の変形例に係る合成システム100の構成を示す図である。
図10に示すように、本例に係る合成システム100は、重量センサ12,22をさらに含む。重量センサ12,22は、容器10,20にそれぞれ収容された液体原料の重量を検出する。
【0051】
作業者は、例えば容器10,20内の液量が所定値以下になるときの液体原料の重量を制御部80に設定してもよい。あるいは、容器10,20内の液量が所定値以下になるときの液体原料の重量が予め規定値に設定されていてもよい。これらの場合、重量センサ12,22により検出される重量が設定された重量に達すると、容器10また容器20内の液量が所定値以下になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0052】
一方で、作業者は、例えば容器10,20内の液量が所定値以上になるときの液体原料の重量を制御部80に設定してもよい。あるいは、容器10,20内の液量が所定値以上になるときの液体原料の重量が予め規定値に設定されていてもよい。これらの場合、重量センサ12,22により検出される重量が設定された重量に達すると、容器10また容器20内の液量が所定値以上になったと判定され、切替部40の流路状態が切り替えられる。
【0053】
(5)効果
本実施の形態に係る合成システム100においては、ガス供給部30から流路部101を通して容器10にガスが供給されることにより、容器10に収容された液体原料が流路部103および合成反応装置60を通して容器20に搬送される。また、ガス供給部30から流路部102を通して容器20にガスが供給されることにより、容器20に収容された液体原料が流路部103および合成反応装置60を通して容器10に搬送される。この動作が繰り返されることにより、十分な量の反応物が生成される。
【0054】
ここで、切替部40の流路状態を切り替えることにより、容器10へのガスの供給と、容器20へのガスの供給とを容易に行うことができる。そのため、作業者は、ガス供給部30を容器10または容器20に都度接続し直す必要がない。これにより、作業者の負担を低減することができる。
【0055】
また、合成システム100は、所定の切替条件が満たされた場合に、切替部40の流路状態を切り替える制御部80を含む。そのため、作業者の負担をより低減することができる。切替条件は、容器10または容器20内の液量が所定値以下になることであってもよいし、容器10または容器20内の液量が所定値以上になることであってもよい。この場合、適切なタイミングで切替部40の流路状態を容易に切り替えることができる。
【0056】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、制御部80が切替部40,50の流路状態を切り替えるが、実施の形態はこれに限定されない。作業者が、手動により切替部40,50の流路状態を切り替えてもよい。この場合においても、作業者は、ガス供給部30を容器10または容器20に都度接続し直す必要がない。これにより、作業者の負担を低減することができる。この構成においては、制御部80は、切替制御部86,87を含まない。
【0057】
(b)上記実施の形態において、合成反応装置60は光重合反応装置であるが、実施の形態はこれに限定されない。合成反応装置60は、プラグフロー反応器等の反応器であってもよい。この場合、合成反応装置60は、自己を通過する液体原料の温度および圧力等を調整することにより、液体原料から反応物を生成する。
【0058】
(c)上記実施の形態において、試料供給部70は液体原料の補充と、液体添加物の添加とを行うが、実施の形態はこれに限定されない。試料供給部70は、液体原料の補充を行い、液体添加物の添加を行わなくてもよい。この場合、試料供給部70は、ボトル72~74および切替部75を含まない。
【0059】
また、試料供給部70は、液体添加物の添加を行い、液体原料の補充を行わなくてもよい。この場合、試料供給部70は、ボトル71を含まない。また、試料供給部70には、ボトル72~74のうち、1つのボトルのみが設けられてもよい。この場合、試料供給部70は、切替部75を含まない。
【0060】
(d)上記実施の形態において、生成された反応物が分析されるが、実施の形態はこれに限定されない。生成された反応物は、分析されなくてもよい。この場合、切替部50には、分析装置200が接続されなくてもよく、生成された反応物を回収するための分取装置が接続されてもよい。また、反応物の生成後、反応物が収容された容器10または容器20が回収される場合には、流路部103に切替部50が設けられなくてもよい。
【0061】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0062】
(第1項)一態様に係る合成システムは、
液体原料を収容可能な第1の容器に接続される第1の流路部と、
液体原料を収容可能な第2の容器に接続される第2の流路部と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを接続し、液体原料から反応物を生成する合成反応装置が接続される第3の流路部と、
ガス供給部により供給されるガスを前記第1の流路部に導く流路状態と前記ガス供給部により供給されるガスを前記第2の流路部に導く流路状態とに切り替え可能な切替部とを備えてもよい。
【0063】
この合成システムにおいては、ガス供給部から第1の流路部を通して第1の容器にガスが供給されることにより、第1の容器に収容された液体原料が第3の流路部および合成反応装置を通して第2の収容に搬送される。また、ガス供給部から第2の流路部を通して第2の容器にガスが供給されることにより、第2の容器に収容された液体原料が第3の流路部および合成反応装置を通して第1の容器に搬送される。この動作が繰り返されることにより、十分な量の反応物が生成される。
【0064】
ここで、切替部の流路状態を切り替えることにより、第1の容器へのガスの供給と、第2の容器へのガスの供給とを容易に行うことができる。そのため、作業者は、ガス供給部を第1の容器または第2の容器に都度接続し直す必要がない。これにより、作業者の負担を低減することができる。
【0065】
(第2項)第1項に記載の合成システムは、
所定の切替条件が満たされた場合に、前記切替部の流路状態を切り替える制御部をさらに備えてもよい。
【0066】
この場合、合成システムの使用者は切替部の流路状態を切り替える必要がない。これにより、使用者の負担をより低減することができる。
【0067】
(第3項)第2項に記載の合成システムにおいて、
前記切替条件は、前記第1の容器または前記第2の容器内の液量が所定値以下になることであってもよい。
【0068】
この場合、適切なタイミングで切替部の流路状態を容易に切り替えることができる。
【0069】
(第4項)第2項に記載の合成システムにおいて、
前記切替条件は、前記第1の容器または前記第2の容器内の液量が所定値以上になることであってもよい。
【0070】
この場合、適切なタイミングで切替部の流路状態を容易に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10,20…容器,11,21…液面センサ,12,22…重量センサ,30…ガス供給部,40,50,75…切替部,41~46,75a~75e…ポート,60…合成反応装置,70…試料供給部,71~74…ボトル,76…送液部,80…制御部,81…メモリ,82…CPU,83…タイマ,84…試料制御部,85…ガス制御部,86,87…切替制御部,88…合成制御部,90…温調部,100…合成システム,101~104…流路部,200…分析装置