(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025471
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】巻回装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20250214BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20250214BHJP
H01G 13/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01G13/02 D
H01G13/02 C
H01G13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130263
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】八木 崇典
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐介
【テーマコード(参考)】
5E082
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082LL04
5E082LL05
5E082LL06
5H028AA05
5H028BB07
5H028BB17
5H028CC05
5H028CC08
5H028CC12
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL08
5H029CJ04
5H029CJ07
5H029CJ30
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】移送ローラの外周面に対するタブの衝突をより確実に防止することができ、タブの折れを効果的に防ぐことができる巻回装置を提供する。
【解決手段】巻回装置は回転可能な巻芯を備えており、タブ4b,5bを有する電極シート4,5は、加減速されつつ巻芯に供給される。巻回装置は、外周面に電極シート4,5が掛けられ、電極シート4,5の搬送経路を定める回転可能な移送ローラ711と、移送ローラ711の回転軸方向に沿った該移送ローラ711の位置を調節可能な位置調節部712とを有する。位置調節部712により、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節することで、電極シート4,5における谷部4c,5cが、移送ローラ711の外周面の幅方向端縁部711eからはみ出すように設定される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な巻芯を備え、
表面に活物質を有する電極本体部、及び、該電極本体部の幅方向端縁部から突出するとともに該電極本体部の長手方向に沿って間隔をあけて設けられる複数のタブを備えてなる帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとを前記巻芯に供給しつつ該巻芯を回転させることで、前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記電極シートは、加減速されつつ前記巻芯に供給されるように構成されており、
外周面に前記電極シートが掛けられ、前記電極シートの搬送経路を定める回転可能な移送ローラと、
前記移送ローラの回転軸方向に沿った該移送ローラの位置を調節可能な位置調節手段とを有し、
前記位置調節手段により、前記移送ローラと該移送ローラに掛けられる前記電極シートとの相対位置関係を調節することで、前記電極本体部の幅方向端縁部であって複数の前記タブ間に位置する部位である谷部が、前記移送ローラの外周面の幅方向端縁部からはみ出すように設定されていることを特徴とする巻回装置。
【請求項2】
前記移送ローラに掛けられる前記電極シートの幅方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された位置に基づき、前記巻芯による前記電極シートの巻取り中に該電極シートの幅方向への位置ずれを補正する補正手段とを備え、
前記位置検出手段及び前記補正手段によって、前記移送ローラの外周面の幅方向端縁部から前記谷部がはみ出す状態を維持可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項3】
前記移送ローラは、前記電極シートの搬送方向に沿った該移送ローラの直上流位置にて水平方向又は斜め水平方向に搬送される前記電極シートが掛けられるものであることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項4】
前記タブは、表面に活物質を有する帯状の電極シート材料に対し切断処理を施すことで形成されたものであり、
前記谷部は、前記切断処理によって形成された切断面によって構成されており、
前記巻芯は、前記谷部が前記切断面により構成された前記電極シートの巻回に用いられることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項5】
前記移送ローラは、前記回転軸方向に沿った一方の端部であって、前記タブが配置される側とは反対側の端部のみにおいて片持ち状態で支持されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項6】
前記位置調節手段は、
前記回転軸方向に延びる棒状の軸部と、
前記軸部が挿通された状態で前記移送ローラに取付けられ、前記軸部に対し前記移送ローラを自由回転可能な状態で支持するベアリングと、
前記軸部に沿った前記ベアリングのスライド移動を規制した状態、又は、該スライド移動の規制を解除した状態に切換可能なセットカラーとを備え、
前記軸部に沿って前記ベアリングをスライド移動させることで、前記移送ローラと該移送ローラに掛けられる前記電極シートとの相対位置関係を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池に用いられる巻回素子は、正極活物質が塗布された正電極シートと、負極活物質が塗布された負電極シートとが、絶縁素材からなるセパレータシートを介して重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。
【0003】
電極シートとしては、表面に活物質を有する電極本体部と、該電極本体部の幅方向端縁部から突出するタブとを有するものが知られている。タブは、電極本体部の長手方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。
【0004】
また、巻回素子を製造するための巻回装置としては、回転可能な巻芯と、該巻芯に対し電極シートやセパレータシートを供給する供給機構とを備えたものが知られている。このような巻回装置には、電極シート等が掛けられる自由回転可能な移送ローラが設けられており、該移送ローラは、電極シート等の搬送経路を定める役割を有している。
【0005】
ところで、タブを有する電極シートが移送ローラを通過する際に、タブの折れが発生することがある。このようなタブの折れに対応すべく、移送ローラにおける電極シートの入口に相当する位置に、変形防止部材を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。変形防止部材は、移送ローラにおける幅方向一端側の外周面から離隔した状態で設けられる。そして、変形防止部材及び移送ローラ間にタブが案内されることで、タブの折れ防止が図られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本件発明者が鋭意検討したところ、タブの折れを発生させる要因として、次の要因を突き止めた。
【0008】
すなわち、電極シートを巻回する際において、電極シートは常に一定速度で搬送される訳ではなく、加減速されつつ搬送される。このような電極シートの加減速に伴い、電極シートに振動や共振などが生じ、ひいては電極シートの厚さ方向に沿ったタブの振れ動きが生じる。そして、振れ動いているタブが移送ローラの外周面に衝突することで、タブの跳ね上がりが生じ、その結果、タブの折れが発生するのである。
【0009】
この点、上記特許文献1に記載の技術は、タブが移送ローラの外周面に衝突して跳ね上げられるという問題を何ら解決することができない。それどころか、跳ね上げられたタブが変形防止部材に激突して、タブの変形や破損を生じさせることすらあり得る。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移送ローラの外周面に対するタブの衝突をより確実に防止することができ、タブの折れを効果的に防ぐことができる巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.回転可能な巻芯を備え、
表面に活物質を有する電極本体部、及び、該電極本体部の幅方向端縁部から突出するとともに該電極本体部の長手方向に沿って間隔をあけて設けられる複数のタブを備えてなる帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとを前記巻芯に供給しつつ該巻芯を回転させることで、前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記電極シートは、加減速されつつ前記巻芯に供給されるように構成されており、
外周面に前記電極シートが掛けられ、前記電極シートの搬送経路を定める回転可能な移送ローラと、
前記移送ローラの回転軸方向に沿った該移送ローラの位置を調節可能な位置調節手段とを有し、
前記位置調節手段により、前記移送ローラと該移送ローラに掛けられる前記電極シートとの相対位置関係を調節することで、前記電極本体部の幅方向端縁部であって複数の前記タブ間に位置する部位である谷部が、前記移送ローラの外周面の幅方向端縁部からはみ出すように設定されていることを特徴とする巻回装置。
【0013】
上記手段1によれば、電極シートは、加減速されつつ巻芯に供給される。従って、電極シートの加速や減速に伴い生じる振動や共振などによるタブの振れ動きが生じ、その結果、移送ローラの外周面にタブが衝突することによるタブの折れが発生し得る。
【0014】
この点、上記手段1によれば、巻回装置は、移送ローラの回転軸方向に沿った該移送ローラの位置を調節可能な位置調節手段を有している。そして、この位置調節手段を用いて、移送ローラ及び電極シートの相対位置関係を調節することにより、電極本体部の幅方向端縁部であって複数のタブ間に位置する部位である谷部が、移送ローラの外周面の幅方向端縁部からはみ出すように設定されている。すなわち、移送ローラの回転軸と直交する方向から移送ローラを見たとき、移送ローラに掛けられた電極シートのタブ全体が、移送ローラの外周面から外れた位置に存在するように設定されている。従って、タブの振れ動きが生じたとしても、該タブが移送ローラの外周面に衝突することをより確実に防止できる。その結果、移送ローラの外周面との衝突に起因するタブの跳ね上がりを抑えることができ、ひいては、タブの折れを効果的に防止することができる。
【0015】
また、移送ローラの外周面に対するタブの衝突が防止されるから、タブの折れ防止が図られることと相俟って、タブを、より損傷の少ない良い状態で維持することができる。従って、得られる巻回素子の品質向上を図ることができる。
【0016】
さらに、位置調節手段を設けることによって、幅等の異なる各種電極シートに対応することが可能となるため、利便性を高めることができる。
【0017】
手段2.前記移送ローラに掛けられる前記電極シートの幅方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された位置に基づき、前記巻芯による前記電極シートの巻取り中に該電極シートの幅方向への位置ずれを補正する補正手段とを備え、
前記位置検出手段及び前記補正手段によって、前記移送ローラの外周面の幅方向端縁部から前記谷部がはみ出す状態を維持可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0018】
上記手段2によれば、位置検出手段や補正手段によって、移送ローラの外周面の幅方向端縁部から谷部がはみ出す状態を維持することができる。従って、移送ローラの外周面に対するタブの衝突を一層確実に防止することができる。これにより、タブの折れ防止効果をより高めることができるとともに、タブの状態をより良いものとすることができる。
【0019】
手段3.前記移送ローラは、前記電極シートの搬送方向に沿った該移送ローラの直上流位置にて水平方向又は斜め水平方向に搬送される前記電極シートが掛けられるものであることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0020】
上記手段3によれば、移送ローラの直上流位置において、電極シートは水平方向又は斜め水平方向に搬送されている。従って、移送ローラの直上流位置にて、電極シートのタブが垂れやすくなり、ひいては移送ローラの外周面に対するタブの衝突がより生じやすくなるおそれがある。
【0021】
この点、上記手段1を採用することで、上記手段3のようなタブの垂れが生じやすい条件であったとしても、移送ローラに対するタブの衝突をより確実に防止することができる。換言すれば、移送ローラが、その直上流位置にて水平方向又は斜め水平方向に搬送される電極シートが掛けられるものである場合に、上記手段1が特に有効に機能すると言える。
【0022】
手段4.前記タブは、表面に活物質を有する帯状の電極シート材料に対し切断処理を施すことで形成されたものであり、
前記谷部は、前記切断処理によって形成された切断面によって構成されており、
前記巻芯は、前記谷部が前記切断面により構成された前記電極シートの巻回に用いられることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0023】
上記手段4によれば、タブは、電極シート材料に対しレーザや金型等を用いた切断処理を施すことで形成されており、谷部は、切断処理によって形成された切断面により構成されている。従って、谷部は、荒れた状態(バリなどを有する状態)となりやすい。
【0024】
この点、上記手段1を採用することで、谷部が荒れた状態であっても、その荒れた部分(例えばバリ等)が移送ローラの外周面に乗り上げることをより確実に防止できる。これにより、移送ローラの外周面に荒れた部分が乗り上げることに起因するタブの折れをより確実に防止でき、その結果、タブの折れ防止効果を一層高めることができる。
【0025】
また、移送ローラの外周面に対し荒れた部分が乗り上げることを防止するために、谷部(切断面)に対し、荒れた部分を除去するための処理を施さずに済む。これにより、巻回素子の製造に係るコストの低下などを図ることができる。
【0026】
手段5.前記移送ローラは、前記回転軸方向に沿った一方の端部であって、前記タブが配置される側とは反対側の端部のみにおいて片持ち状態で支持されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0027】
上記手段5によれば、移送ローラは、タブが配置される側とは反対側の端部のみにおいて片持ち状態で支持されている。従って、移送ローラにおけるタブが配置される側において、該移送ローラを支持する部位が存在しないこととなり、ひいては、該部位に対しタブが衝突するといった事態が生じないこととなる。これにより、移送ローラの外周面に対するタブの衝突のみならず、移送ローラを支持する部位に対するタブの衝突についてもより確実に防ぐことができる。その結果、タブの折れ防止をより一層効果的に図ることができる。
【0028】
手段6.前記位置調節手段は、
前記回転軸方向に延びる棒状の軸部と、
前記軸部が挿通された状態で前記移送ローラに取付けられ、前記軸部に対し前記移送ローラを自由回転可能な状態で支持するベアリングと、
前記軸部に沿った前記ベアリングのスライド移動を規制した状態、又は、該スライド移動の規制を解除した状態に切換可能なセットカラーとを備え、
前記軸部に沿って前記ベアリングをスライド移動させることで、前記移送ローラと該移送ローラに掛けられる前記電極シートとの相対位置関係を調節可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0029】
上記手段6によれば、比較的簡素な構成によって位置調節手段を実現することができる。従って、巻回装置の製造・メンテナンス等に係るコストの低減や装置の小型化などを図ることができる。
【0030】
また、上記手段6によれば、移送ローラを連続的(アナログ的)にスライド移動させることができる。従って、電極シート及び移送ローラの相対位置関係を細かく調節することが可能となり、ひいては該相対位置関係をより適切に設定することができる。
【0031】
尚、上記各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記手段2に係る技術事項に対し、上記手段5に係る技術事項などを組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】電池素子の概略構成を示す斜視模式図である。
【
図2】正電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
【
図3】負電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
【
図4】正電極シート材料に切断処理を施すことで、正電極シートのタブが形成されることを示す平面模式図である。
【
図5】負電極シート材料に切断処理を施すことで、負電極シートのタブが形成されることを示す平面模式図である。
【
図10】電極シートの谷部と移送ローラの外周面の幅方向端縁部との位置関係を示すための平面模式図である。
【
図12】巻芯の隙間にセパレータシートを配置した際の巻回部の概略構成図である。
【
図13】セパレータシートを切断する際の巻回部の概略構成図である。
【
図14】電極シート等の巻回終了時における巻回部の概略構成図である。
【
図15】別の実施形態における位置調節機構を示すためのローラ装置などの斜視模式図である。
【
図17】別の実施形態における位置調節機構を示すためのローラ装置の斜視模式図である。
【
図18】別の実施形態における移送ローラを示すためのローラ装置の一部破断正面図である。
【
図19】別の実施形態における移送ローラを示すためのローラ装置の一部破断正面図である。
【
図20】別の実施形態において、片持ち状態で支持される移送ローラを示すためのローラ装置などの斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。本実施形態では、正電極シート4及び負電極シート5がそれぞれ「電極シート」に相当する。尚、2枚のセパレータシート2,3に代えて、折返された1枚のセパレータシートを用いてもよい。また、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2~5」と称することがある。
【0035】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0036】
各電極シート4,5は、薄板状の金属シートからなり、正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられている。各電極シート4,5は、比較的薄肉(例えば、5~50μm又は10~30μmの厚さ)とされている。
【0037】
加えて、
図2,3に示すように、各電極シート4,5は、電極本体部4a,5a及びタブ4b,5bを備えている。
【0038】
電極本体部4a,5aは、セパレータシート2,3と略同一の幅を有しており、電極本体部4a,5aの表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4の電極本体部4aには、正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている(
図2,3等では、活物質の塗布部分を散点模様で示す)。負電極シート5の電極本体部5aには、負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。尚、
図2,3では、電極本体部4a,5aの一部(例えば幅方向端縁部)に活物質を塗布しない構成を示しているが、電極本体部4a,5aの全域に活物質を塗布する構成としてもよい。
【0039】
タブ4b,5bは、電極本体部4a,5aの幅方向端縁部から突出するとともに、該電極本体部4a,5aの長手方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。本実施形態において、正電極シート4のタブ4bは、電極本体部4aの幅方向一端縁から突出し、負電極シート5のタブ5bは、電極本体部5aの幅方向他端縁から突出している。尚、両タブ4b,5bが、電極本体部4a,5aにおける同じ側の端縁部から突出するように構成してもよい。
【0040】
また、
図4,5に示すように、正電極シート4のタブ4bは、表面に正極活物質を有する帯状の正電極シート材料4xに対し、レーザや金型等による切断処理を施す(例えば、
図4における二点鎖線にて正電極シート材料4xを切断する)ことにより形成されている。同様に、負電極シート5のタブ5bは、表面に負極活物質を有する負電極シート材料5xに対し切断処理を施すことで形成されている。そのため、電極シート4,5の長手方向に沿って延びる電極本体部4a,5bの幅方向端縁部であって、複数のタブ4b,5b間に位置する谷部4c,5cは、前記切断処理によって形成された切断面によって構成されている。切断面によって構成された谷部4c,5cは、バリ等が存在し、荒れた状態となっていることがある。本実施形態では、正電極シート材料4x及び負電極シート材料5xがそれぞれ「電極シート材料」に相当する。
【0041】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、タブ4b,5bがそれぞれまとめられる。また、必要に応じて、まとめられたタブ4b,5bがそれぞれ溶接される。そして、まとめられたタブ4bを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられたタブ5bを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0042】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。
図6に示すように、巻回装置10は、各種シート2~5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、制御装置91とを備えている。尚、巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種機構は、制御装置91により動作制御される。
【0043】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。
【0044】
正電極シート供給機構31は、ローラ装置71、位置関係維持機構72、シート挿入機構73、シート切断カッタ74、テンション付与機構75及びバッファ機構76を備えている。
【0045】
ローラ装置71は、外周面に正電極シート4が掛けられ、正電極シート4の搬送経路を定めるための移送ローラ711などを有する装置である。ローラ装置71(移送ローラ711)は、正電極シート4の搬送経路に沿って複数設けられている。ローラ装置71の構成については後に詳しく説明する。
【0046】
位置関係維持機構72は、正電極シート4の搬送経路に沿った移送ローラ711の直上流位置に設けられており、移送ローラ711の外周面とこれに掛けられる正電極シート4との位置関係を適切な状態で維持するためのものである。位置関係維持機構72の構成についても後に説明する。
【0047】
シート挿入機構73は、正電極シート4を把持しつつ巻回部11へ供給するためのものである。
【0048】
シート切断カッタ74は、正電極シート4を切断するためのものである。正電極シート4の切断は、シート挿入機構73により正電極シート4を把持した状態で行われる。また、シート切断カッタ74は、正電極シート4の搬送経路から離隔可能であり、シート挿入機構73による正電極シート4の供給を阻害しないようになっている。
【0049】
テンション付与機構75は、正電極シート4に張力を付与するためのものであり、複数のローラ(例えばダンサローラ等)を備えている。これらローラの動作が制御装置91によって制御されることで、テンション付与機構75から正電極シート4に付与される張力が調節可能となっている。本実施形態では、テンション付与機構75によって、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。尚、正電極シート4に対する相対位置関係の点で、テンション付与機構75を構成するローラを、移送ローラ711と同様の構成としてもよい。
【0050】
バッファ機構76は、例えば、一対の従動ローラ及び両ローラ間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラを有するものであり、正電極シート4を一時的に貯留するためのものである。尚、正電極シート4に対する相対位置関係の点で、バッファ機構76を構成するローラを、移送ローラ711と同様の構成としてもよい。
【0051】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。
【0052】
また、負電極シート原反42から巻回部11にかけての負電極シート5の搬送路の途中には、正電極シート4の搬送路と同様に、ローラ装置71、位置関係維持機構72、シート挿入機構73、シート切断カッタ74、テンション付与機構75及びバッファ機構76などが設けられている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送路に設けられたものと同様である。
【0053】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0054】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構75を備えている。これは、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。
【0055】
次に、巻回部11の構成について説明する。
図7に示すように、巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、該巻芯13,14に対しそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90°ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回終了直前の各種シート2~5を押さえるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18とを備えている。また、巻回部11は、後述する取外しポジションP2の周辺部に、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等を有している。
【0056】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2~5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、該エンコーダから回転量に関する情報が制御装置91へと入力されるようになっている。
【0057】
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(
図7の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。
【0058】
加えて、巻芯13,14は、それぞれ回転軸と直交する断面において非円形状をなすように構成されている。本実施形態において、巻芯13,14は、自身の回転軸と直交する断面において楕円形状をなしている。巻芯13,14が断面非円形状をなしているため、巻芯13,14を一定速度で回転させたときであっても、各種シート2~5が加減速されつつ巻芯13,14へと供給されることとなる。尚、各種シート2~5の巻取開始直後には、各種シート2~5が加速されつつ巻芯13,14へと供給され、各種シート2~5の巻取終了直前には、各種シート2~5が減速されつつ巻芯13,14へと供給される。
【0059】
さらに、巻芯13(14)は、それぞれ自身の回転軸方向(
図7の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13a,13b(14a,14b)を備えている。芯片13a,13b(14a,14b)間には隙間13c(14c)が形成されている。また、巻芯13(14)における隙間13c(14c)を形成する部位には、該隙間13c(14c)に配置されたセパレータシート2,3を挟持するためのチャック機構(不図示)が設けられている。
【0060】
さらに、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2の間を旋回移動可能に構成されている。巻回ポジションP1は、各種シート2~5を巻取る際に巻芯13,14が配置されるポジションである。取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2~5(すなわち電池素子1)の取外しを行う際に巻芯13,14が配置されるポジションである。
【0061】
支持ローラ15a,15bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間で各種シート2~5を引っ掛け、支持するためのものである。
【0062】
セパレータカッタ16は、セパレータシート2,3を切断するためものである。押えローラ17は、巻き取られた各種シート2~5を押さえるためのものである。
【0063】
テープ貼付機構18は、各種シート2~5の巻回完了後に、セパレータシート2,3の終端部へと固定用テープを貼付するためのものである。
【0064】
次いで、ローラ装置71について説明する。ローラ装置71は、
図8,9に示すように、移送ローラ711、位置調節機構712及びホルダ713を備えている。本実施形態では、位置調節機構712が「位置調節手段」を構成する。
【0065】
移送ローラ711は、上記の通り、外周面に電極シート4,5が掛けられており、電極シート4,5の搬送経路を定める役割を有する。移送ローラ711は、円筒状をなしており、回転軸RAを中心として自由回転可能とされている。本実施形態において、移送ローラ711の外周面とは、特に、電極シート4,5が掛けられ該電極シート4,5と接触する面をいう。
【0066】
また、本実施形態において、移送ローラ711を有するローラ装置71が複数設けられるところ、少なくとも1の移送ローラ711は、電極シート4,5の搬送方向に沿った該移送ローラ711の直上流位置にて水平方向又は斜め水平方向に搬送される電極シート4,5が掛けられるものとなっている。この移送ローラ711の直上流位置においては、重力によるタブ4b,5bの垂れが生じやすい。
【0067】
位置調節機構712は、移送ローラ711の回転軸RA方向(
図9における太線矢印方向)に沿った該移送ローラ711の位置を調節するための機構である。位置調節機構712は、軸部7121、ベアリング7122及びセットカラー7123を備えている。
【0068】
軸部7121は、回転軸RA方向に延びる棒状をなしており、ホルダ713によって両端部が支持されている。本実施形態において、軸部7121は、ホルダ713に固定されており、回転軸RAを中心とした回転が不能に構成されている。尚、軸部7121を、回転軸RAを中心としてホルダ713に対し相対回転可能に構成してもよい。
【0069】
ベアリング7122は、軸部7121及び移送ローラ711間に設けられており、軸部7121に対し移送ローラ711を自由回転可能な状態で支持する。ベアリング7122は、その中心軸が回転軸RAと一致する状態で、回転軸RA方向における移送ローラ711の両端側に1つずつ取付けられている。各ベアリング7122は、外輪部7122a、内輪部7122b及び転動体7122cをそれぞれ備えている。
【0070】
外輪部7122aは、円環状をなしており、移送ローラ711に対し、回転軸RAを中心とした相対回転が規制された状態で取付けられている。
【0071】
内輪部7122bは、円環状をなしており、外輪部7122aの内側において該外輪部7122aと同軸に設けられている。また、内輪部7122bには軸部7121が挿通されており、軸部7121に沿ってベアリング7122や移送ローラ711をスライド移動させることが可能となっている。
【0072】
転動体7122cは、球状をなしており、外輪部7122a及び内輪部7122b間に等間隔に複数設けられている。転動体7122cが転動することで、内輪部7122bに対し外輪部7122aを円滑に回転させることができ、その結果、軸部7121に対し移送ローラ711を円滑に自由回転させることが可能となっている。
【0073】
セットカラー7123は、軸部7121に沿ったベアリング7121や移送ローラ711のスライド移動を規制した状態、又は、該スライド移動の規制を解除した状態に切換可能とするための部品である。セットカラー7123は、全体として円環状をなしており、回転軸RA方向に沿った移送ローラ711の両端側に1つずつ設けられている。
【0074】
セットカラー7123は、それぞれ半円弧状をなす一対のベース部品と、全体として円環状をなすように両ベース部品を連結するねじ部品とを備えている。そして、前記ねじ部品を締めて、一対の前記ベース部品により軸部7121を挟み込むことで、軸部7121に対しセットカラー7123が固定され、軸部7121に沿ったセットカラー7123のスライド移動が規制されるようになっている。一方、前記ねじ部品を緩めて、一対の前記ベース部品による軸部7121の挟み込みを解除させることで、軸部7121に沿ったセットカラー7123のスライド移動が可能となっている。
【0075】
本実施形態では、両セットカラー7123をベアリング7122(内輪部7122b)に接触させた状態で、前記ねじ部品を締めて軸部7121に対し該セットカラー7123を固定することにより、軸部7121に沿ったベアリング7122や移送ローラ711のスライド移動が規制される。巻回素子1の製造時などの通常時には、軸部7121に沿ったベアリング7122や移送ローラ711のスライド移動が規制される。
【0076】
一方、前記ねじ部品を緩めることにより、軸部7121に沿ってベアリング7122や移送ローラ711をスライド移動させることが可能となる。尚、軸部7121に沿ったベアリング7121や移送ローラ711のスライド移動を規制したり、該スライド移動の規制を解除したりすることが可能となる限り、セットカラー7123の構成を適宜変更してもよい。
【0077】
ホルダ713は、軸部7121の両端部を支持することで、軸部7121等を介して移送ローラ711を支持する役割を有する。本実施形態において、ホルダ713は、所定の被取付部Wに固定されており、移動不能とされている。
【0078】
上記のようにローラ装置71が構成されるところ、本実施形態では、ベアリング7122等のスライド移動規制を解除した上で、軸部7121に沿ってベアリング7122や移送ローラ711をスライド移動させることにより、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節することが可能である。そして、本実施形態では、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節することで、谷部4c,5cが、移送ローラ711の外周面の幅方向端縁部711eからはみ出すように設定されている(
図10参照)。但し、本実施形態では、電極本体部4a,5bにおけるその幅方向に沿った半分以上(より好ましくは80%以上)の部分が移送ローラ711の外周面に掛けられる状態となるように、移送ローラ711及び電極シート4,5の相対位置関係が設定されている。
【0079】
次いで、位置関係維持機構72について説明する。位置関係維持機構72は、上記の通り、移送ローラ711の外周面とこれに掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を適切な状態で維持するためのものである。本実施形態では、正電極シート供給機構31における複数の移送ローラ711のうちの1つに対応する位置関係維持機構72と、負電極シート供給機構41における複数の移送ローラ711のうちの1つに対応する位置関係維持機構72とが設けられている。勿論、各電極シート4,5の搬送経路に沿って位置関係維持機構72を複数設けてもよい。例えば、移送ローラ711ごとに位置関係維持機構72を設けてもよい。
【0080】
位置関係維持機構72は、
図6に示すように、電極シート4,5の幅方向の位置を検出するエッジセンサ721と、該エッジセンサ721により検出された位置に基づき電極シート4,5の幅方向の位置ずれを補正する補正部722と、該補正部722を動作させるための蛇行補正用アクチュエータ(不図示)とを備えている。エッジセンサ721により検出された電極シート4,5の幅方向位置に関する情報は、制御装置91へと出力される。本実施形態では、エッジセンサ721が「位置検出手段」を構成し、補正部722が「補正手段」を構成する。
【0081】
補正部722は、
図11に示すように、上下一対のローラ722a,722bを備えており、前記補正用アクチュエータによって、上側のローラ722aの上部中央のピボットセンターαを回動中心として回動可能に構成されている。制御装置91が補正用アクチュエータを制御し、補正部722が回動することで、電極シート4,5の位置ずれが補正される。その結果、移送ローラ711の外周面の幅方向端縁部711eから谷部4c,5cがはみ出す状態を維持することが可能となっている。尚、本実施形態では、補正部722によって、エッジセンサ721により検出された位置に基づき、移送ローラ711の外周面の幅方向端縁部711eから谷部4c,5cが過度にはみ出さないように電極シート4,5の幅方向の位置ずれも補正されるようになっている。
【0082】
上記のように構成された巻回装置10では、次のようにして各種シート2~5の巻回が行われる。すなわち、支持ローラ15a(15b)等にセパレータシート2,3が架け渡された状態で、巻回ポジションP1に配置された一方の巻芯13(14)をターレット12における一方のテーブルから突出させることにより、該巻芯13(14)の隙間13c(14c)にセパレータシート2,3を配置する(
図12参照)。次いで、前記チャック機構によって、隙間13c(14c)に配置されたセパレータシート2,3を挟持する。その上で、一方の巻芯13(14)を所定数だけ回転させることで、該巻芯13(14)にセパレータシート2,3を所定量だけ巻き取った状態とする。
【0083】
次いで、一方の巻芯13(14)に対し、シート挿入機構73によって電極シート4,5を順次供給する。その後、巻芯13,14に対し各種シート2~5を供給しつつ該巻芯13(14)を回転させることで、各種シート2~5を重ねつつ巻回する。各種シート2~5の巻回は、谷部4c,5cが移送ローラ711の外周面の幅方向端縁部711eからはみ出した状態で行われる。
【0084】
尚、各種シート2~5の巻取開始直後には、各種シート2~5が加速されつつ巻芯13,14へと供給される。そして、各種シート2~5の巻取開始から一定時間経過した後には巻芯13,14が一定速度で回転する状態となることで、各種シート2~5が加減速されつつ巻芯13,14へと供給される。
【0085】
その後、所定長さの各種シート2~5を巻回した段階で、一方の巻芯13(14)の回転を一時停止する。各種シート2~5を一時停止させるときには、各種シート2~5が減速されつつ巻芯13,14へと供給される。各種シート2~5の一時停止中に、シート切断カッタ74によって電極シート4,5が切断される。
【0086】
その後、ターレット12の回転により、各種シート2~5が巻回された一方の巻芯13(14)を取外しポジションP2へと移動させる。これにより、支持ローラ15a(15b)等にセパレータシート2,3が架け渡された状態となる。また、ターレット12の回転により、他方の巻芯14(13)が巻回ポジションP1へと移動する。次回の各種シート2~5の巻回は、この巻芯14(13)によって行われる。
【0087】
次に、取外しポジションP2に配置された一方の巻芯13(14)に押えローラ17を接近させ、押えローラ17により各種シート2~5を押えた上で、セパレータカッタ16によってセパレータシート2,3を切断する(
図13参照)。その後、一方の巻芯13(14)を回転させて各種シート2~5を完全に巻き取った上で、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部に前記固定用テープを貼付する。これにより、巻止め処理の施された電池素子1が得られる(
図14参照)。得られた電池素子1は、前記取外装置によって巻芯13(14)から取外される。
【0088】
以上詳述したように、本実施形態によれば、位置調節機構712を用いて、移送ローラ711及び電極シート4,5の相対位置関係を調節することにより、谷部4c,5cが移送ローラ711の幅方向端縁部711eからはみ出すように設定されている。すなわち、回転軸RAと直交する方向から移送ローラ711を見たとき、移送ローラ711に掛けられた電極シート4,5のタブ4b,5b全体が、移送ローラ711の外周面から外れた位置に存在するように設定されている。従って、電極シート4,5が加減速されつつ巻芯13,14に供給されるため、タブ4b,5bの振れ動きが生じやすい条件であっても、タブ4b,5bの振れ動きに伴う、移送ローラ711の外周面に対するタブ4b,5bの衝突をより確実に防止することができる。その結果、移送ローラ711の外周面との衝突に起因するタブ4b,5bの跳ね上がりを抑えることができ、ひいては、タブ4b,5bの折れを効果的に防止することができる。
【0089】
また、移送ローラ711の外周面に対するタブ4b,5bの衝突が防止されるから、タブ4b,5bの折れ防止が図られることと相俟って、タブ4b,5bを、より損傷の少ない良い状態で維持することができる。従って、得られる電池素子1の品質向上を図ることができる。
【0090】
さらに、位置調節機構712を設けることによって、幅等の異なる各種電極シート4,5に対応することが可能となるため、利便性を高めることができる。
【0091】
加えて、位置関係維持機構72(エッジセンサ721や補正部722)によって、移送ローラ711の幅方向端縁部711eから谷部4c,5cがはみ出す状態を維持することができる。従って、移送ローラ711の外周面に対するタブ4b,5bの衝突を一層確実に防止することができる。これにより、タブ4b,5bの折れ防止効果をより高めることができるとともに、タブ4b,5bの状態をより良いものとすることができる。
【0092】
また、本実施形態において、少なくとも1の移送ローラ711は、水平方向又は斜め水平方向に搬送される電極シート4,5が掛けられるものとなっている。従って、この移送ローラ711の直上流位置においては、重力によるタブ4b,5bの垂れが生じやすくなっており、移送ローラ711に対するタブ4b,5bの衝突がより懸念される。しかしながら、上記のように電極シート4,5及び移送ローラ711の位置関係が設定されることで、タブ4b,5bの垂れが生じやすい条件であっても、移送ローラ711に対するタブ4b,5bの衝突をより確実に防止することができる。
【0093】
さらに、本実施形態において、タブ4b,5bは、電極シート材料4x,5xに対し切断処理を施すことで形成されており、谷部4c,5cは、切断処理によって形成された切断面により構成されている。従って、谷部4c,5cが荒れた状態(バリなどを有する状態)となりやすく、移送ローラ711の外周面に荒れた部分が乗り上げることに起因するタブ4b,5bの折れがより懸念される。しかしながら、上記のように電極シート4,5及び移送ローラ711の位置関係が設定されることで、谷部4c,5cが荒れた状態であっても、その荒れた部分(例えばバリ等)が移送ローラ711の外周面に乗り上げることをより確実に防止できる。これにより、タブ4b,5bの折れ防止効果を一層高めることができる。
【0094】
また、移送ローラ711の外周面に対し荒れた部分が乗り上げることを防止するために、谷部4c,5c(切断面)に対し、荒れた部分を除去するための処理を施さずに済む。これにより、電池素子1の製造に係るコストの低下などを図ることができる。
【0095】
さらに、本実施形態によれば、位置調節機構712を比較的簡素な構成によって実現することができる。従って、巻回装置10の製造・メンテナンス等に係るコストの低減や装置の小型化などを図ることができる。
【0096】
加えて、位置調節機構712によって、移送ローラ711を連続的(アナログ的)にスライド移動させることができる。従って、電極シート4,5及び移送ローラ711の相対位置関係を細かく調節することが可能となり、ひいては該相対位置関係をより適切に設定することができる。
【0097】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0098】
(a)上記実施形態では、軸部7121に沿ってベアリング7122や移送ローラ711をスライド移動させることにより、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節することが可能に構成されている。これに対し、
図15,16に示すように、回転軸RA方向に沿ってホルダ7142に対し軸部7141をスライド移動可能とすることで、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節可能に構成してもよい。すなわち、位置調節機構714として、移送ローラ711を支持する棒状の軸部7141と、回転軸RA方向に沿って軸部7141をスライド移動可能な状態で支持するホルダ7142とを備えたものを採用してもよい。
【0099】
尚、このような位置調節機構714を採用する場合には、軸部7141に対する固定又は固定解除を切換可能なセットカラー7143を用い、回転軸RA方向に沿ったホルダ7142に対する軸部7141のスライド移動を規制した状態、又は、該スライド移動の規制を解除した状態に切換可能に構成してもよい。セットカラー7143は、例えば、回転軸RA方向に沿ってホルダ7142と接触した状態で、軸部7141に固定されることにより、回転軸RA方向に沿ったホルダ7142に対する軸部7141のスライド移動を規制する。
【0100】
さらに、
図17に示すように、土台部として機能する機構基部7152に対し、ホルダ7151を回転軸RA方向にスライド移動可能とすることで、移送ローラ711と該移送ローラ711に掛けられる電極シート4,5との相対位置関係を調節可能に構成してもよい。すなわち、位置調節機構715として、(本例では軸部7153を介して)移送ローラ711を支持するホルダ7151と、回転軸RA方向に沿ってホルダ7151をスライド移動可能な状態で支持する機構基部7152とを備えたものを採用してもよい。
【0101】
尚、上述した位置調節機構712,714,715に係る技術事項を適宜組み合わせて位置調節機構を構成してもよい。従って、例えば、軸部に沿って移送ローラ711をスライド移動可能とするとともに、回転軸RA方向に沿ってホルダに対し前記軸部をスライド移動可能とすること等により、電極シート4,5及び移送ローラ711の相対位置関係を複数箇所にて調節可能な位置調節機構を構成してもよい。
【0102】
(b)上記実施形態における移送ローラ711の形状は一例であり、移送ローラ711の外周面に対するタブ4b,5bの衝突防止が可能となる限りにおいて、移送ローラ711の形状を適宜変更してもよい。従って、例えば、
図18に示すように、移送ローラ711は、外周面における幅方向端縁部711eから、回転軸RA方向における端部に向けて徐々に縮径するテーパ部711aを備えたものであってもよい。また、例えば、
図19に示すように、移送ローラ711は、外周面における幅方向端縁部711eよりも回転軸RA方向における端部側に向けて突出する、比較的小径の円柱部711bを備えたものであってもよい。従って、移送ローラ711として、回転軸RAと直交する方向から見たときに、タブ4b,5bとオーバーラップし得る部位を有するものを用いてもよい。但し、タブ4b,5bの衝突防止という点では、移送ローラ711として、回転軸RAと直交する方向から見たときに、タブ4b,5bとオーバーラップし得る部位を有しないものを用いることが好ましい。
【0103】
(c)上記実施形態において、移送ローラ711は、軸部7121により、回転軸RA方向に沿った両端部において両持ち状態で支持されている。これに対し、
図20に示すように、移送ローラ711は、軸部7153により、回転軸RA方向に沿った端部であって、タブ4b,5bが配置される側とは反対側の端部のみにおいて片持ち状態で支持されるものであってもよい。尚、この例では、軸部7153がホルダ7151によって支持されており、回転軸RA方向に沿って機構基部7152に対しホルダ7151がスライド移動可能とされることで、移送ローラ711及び電極シート4,5の相対位置関係を調節可能に構成されている。
【0104】
上記のように移送ローラ711を片持ち状態で支持することで、移送ローラ711におけるタブ4b,5bが配置される側において、該移送ローラ711を支持する部位が存在しないこととなり、ひいては、該部位に対しタブ4b,5bが衝突するといった事態が生じないこととなる。これにより、移送ローラ711の外周面に対するタブ4b,5bの衝突のみならず、移送ローラ711を支持する部位に対するタブ4b,5bの衝突についてもより確実に防ぐことができる。その結果、タブ4b,5bの折れ防止をより一層効果的に図ることができる。
【0105】
(d)上記実施形態において、タブ4b,5bは、電極シート材料4x,5xに対し切断処理を施すことで形成されたもの(いわゆる成形タブ)であるが、タブの構成はこれに限定されるものではない。従って、タブ4b,5bは、例えば、電極本体部4a,5bに対し溶接により接合されたもの(いわゆる溶接タブ)などであってもよい。但し、溶接タブは比較的厚肉とされることが多く、タブの振れ動きは比較的生じにくい。一方、成形タブは薄肉とされることが多いため、タブの振れ動きは非常に生じやすい。従って、上記実施形態における巻回装置10は、電極シート4,5が成形タブを備える場合に特に有効である。
【0106】
(e)上記実施形態において、位置関係維持機構72は、電極シート4,5の搬送経路に沿った移送ローラ711の直上流位置に設けられているが、位置関係維持機構72の配置位置を適宜変更してもよい。従って、例えば、電極シート4,5の搬送経路に沿った移送ローラ711の直下流位置に位置関係維持機構72を設けてもよい。
【0107】
(f)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成であってもよい。
【0108】
また、巻芯の外周形状は上記実施形態で挙げたものに限定されず、例えば、巻芯の外周面が、巻芯の回転軸と直交する断面において円形状や長円形状などをなしていてもよい。さらに、巻芯は、芯片間の隙間を備えないものであってもよい。加えて、巻芯の外周に設けられた筒状のコア部品に、電極シート4,5等を巻回する構成としてもよい。
【0109】
(g)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0110】
(h)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。勿論、電極シート4,5に塗布される活物質を変更してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…リチウムイオン電池素子(巻回素子)、2,3…セパレータシート、4…正電極シート(電極シート)、5…負電極シート(電極シート)、4a,5a…電極本体部、4b,5b…タブ、4c,5c…谷部、10…巻回装置、13,14…巻芯、711…移送ローラ、712,714,715…位置調節機構(位置調節手段)、721…エッジセンサ(位置検出手段)、722…補正部(補正手段)、7121…軸部、7122…ベアリング、7123…セットカラー。