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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025474
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 64/60 20250101AFI20250214BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20250214BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250214BHJP
【FI】
H01L21/28 301S
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130266
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 啓道
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB20
4M104BB22
4M104BB23
4M104BB24
4M104BB25
4M104BB26
4M104BB28
4M104CC01
4M104DD43
4M104DD84
4M104FF17
4M104FF18
4M104GG09
4M104HH04
4M104HH13
(57)【要約】
【課題】 層間絶縁層の表面と半導体基板の表面に跨る範囲に好適にバリアメタルを形成する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、被覆部と開口部に跨る範囲に半導体基板と層間絶縁層に接するシリコン含有層を形成する工程と、被覆部と開口部に跨る範囲に金属層を形成する工程と、熱処理によって金属層とシリコン含有層を反応させることによってシリサイド層を形成する工程と、被覆部と開口部に跨る範囲にシリサイド層の表面に接するバリアメタル層を形成する工程を有する。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
シリコンを含有する半導体によって構成された半導体基板と前記半導体基板の表面を覆う層間絶縁層とを有するウエハであって、前記層間絶縁層が露出している被覆部と前記半導体基板の前記表面が露出している開口部とが設けられている前記ウエハを準備する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記半導体基板と前記層間絶縁層に接するシリコン含有層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリコン含有層に接する金属層を形成する工程と、
熱処理によって前記金属層と前記シリコン含有層を反応させることによって、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に分布するとともに前記開口部内において前記半導体基板に接するシリサイド層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリサイド層に接するバリアメタル層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記バリアメタル層に接する電極層を形成する工程、
を有する製造方法。
【請求項2】
前記シリサイド層を形成する前記工程において、前記シリサイド層の表面に未反応の前記金属層が残存し、
前記バリアメタル層を形成する工程の前に、未反応の前記金属層を除去する工程をさらに有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハの前記半導体基板が、前記開口部に露出するとともに前記シリサイド層に対してオーミック接触可能な不純物濃度を有する高濃度層を有し、
前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さが前記高濃度層の厚さより薄い、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属層を形成する前記工程では、前記開口部内に形成される前記金属層の厚さが前記開口部内の前記シリコン含有層の厚さ以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハにおいて、前記開口部と前記被覆部の境界に段差が設けられている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記層間絶縁層が、前記半導体基板の前記表面から突出しており、
前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記層間絶縁層の側面に形成される前記シリコン含有層の厚さが、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さよりも薄い、
請求項5に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、ウエハの表面にバリアメタルを形成する技術が開示されている。ウエハは、半導体基板と半導体基板の表面に設けられた層間絶縁層を有している。層間絶縁層にはコンタクトホールが設けられており、コンタクトホール内において半導体基板が露出している。コンタクトホール内とコンタクトホール外に跨る範囲にバリアメタルが形成される。すなわち、コンタクトホール内の半導体基板の表面と層間絶縁層の表面を覆うようにバリアメタルが形成される。特許文献1の技術では、層間絶縁層の側面と半導体基板の表面との境界部においてアンダーカットの発生を防止することで、その境界部におけるバリアメタルの形成不良を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-297828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、特許文献1の技術では、アンダーカット(すなわち、半導体基板の形状)に起因するバリアメタルの形成不良を防止する。他方、層間絶縁層の表面と半導体基板の表面に跨ってバリアメタルを形成する場合には、層間絶縁層と半導体基板の境界部において、下地材料の相違に起因するバリアメタルの形成不良が発生する場合がある。すなわち、バリアメタルを成長させるときには、下地材料によってバリアメタルの結晶性と面方向が変化する。このため、層間絶縁層の表面に成長するバリアメタルと半導体基板の表面に成長するバリアメタルとの間で結晶性と面方向に差が生じ、これらの境界部においてバリアメタルが形成不良となり易い。本明細書では、層間絶縁層の表面と半導体基板の表面に跨る範囲に好適にバリアメタルを形成する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、ウエハ準備工程、シリコン含有層形成工程、金属層形成工程、シリサイド層形成工程、バリアメタル形成工程、及び、電極層形成工程を有する。ウエハ準備工程では、シリコンを含有する半導体によって構成された半導体基板と前記半導体基板の表面を覆う層間絶縁層とを有するウエハであって、前記層間絶縁層が露出している被覆部と前記半導体基板の前記表面が露出している開口部とが設けられている前記ウエハを準備する。シリコン含有層形成工程では、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記半導体基板と前記層間絶縁層に接するシリコン含有層を形成する。金属層形成工程では、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリコン含有層に接する金属層を形成する。シリサイド層形成工程では、熱処理によって前記金属層と前記シリコン含有層を反応させることによって、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に分布するとともに前記開口部内において前記半導体基板に接するシリサイド層を形成する。バリアメタル形成工程では、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリサイド層に接するバリアメタル層を形成する。電極層形成工程では、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記バリアメタル層に接する電極層を形成する。
【0006】
なお、「シリコンを含有する半導体」は、元素としてシリコンを含有する半導体である。例えば、「シリコンを含有する半導体」は、シリコン単体であってもよいし、シリコン化合物によって構成された半導体であってもよい。
【0007】
また、「シリコン含有層」は、元素としてシリコンを含有する材料によって構成された層である。例えば、「シリコン含有層」は、単結晶シリコンであってもよいし、ポリシリコンであってもよいし、アモルファスシリコンであってもよいし、シリコン化合物であってもよい。
【0008】
この製造方法では、バリアメタルを形成するより前に、半導体基板と層間絶縁層に接するシリコン含有層を形成する。次に、シリコン含有層の表面に金属層を形成する。次に、熱処理によってシリコン含有層と金属層を反応させ、被覆部と開口部に跨る範囲にシリサイド層を形成する。次に、シリサイド層の表面にバリアメタル層を形成する。被覆部と開口部のいずれでも下地材料がシリサイド層であるので、被覆部と開口部に跨る範囲に好適にバリアメタル層を形成できる。このため、被覆部と開口部の境界(すなわち、半導体基板と層間絶縁層の境界を覆う部分)におけるバリアメタルの形成不良が防止される。したがって、バリアメタルの表面に電極層を形成した後に、電極層と半導体基板との間、及び、電極層と層間絶縁層との間での材料の相互拡散が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半導体装置の断面図。
図2】実施形態の製造方法の説明図。
図3】実施形態の製造方法の説明図。
図4】実施形態の製造方法の説明図。
図5】実施形態の製造方法の説明図。
図6】シリコン含有層が残存する場合の断面図。
図7】実施形態の製造方法の説明図。
図8】実施形態の製造方法の説明図。
図9】比較例の製造方法の説明図。
図10】実施形態の製造方法の説明図。
図11】第1変形例の説明図。
図12】第2変形例の説明図。
図13】第3変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記シリサイド層を形成する前記工程において、前記シリサイド層の表面に未反応の前記金属層が残存してもよい。前記製造方法は、前記バリアメタル層を形成する工程の前に、未反応の前記金属層を除去する工程をさらに有していてもよい。
【0011】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハの前記半導体基板が、前記開口部に露出するとともに前記シリサイド層に対してオーミック接触可能な不純物濃度を有する高濃度層を有してもよい。前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さが前記高濃度層の厚さより薄くてもよい。
【0012】
この構成によれば、シリサイド化反応によって高濃度層が厚さ方向全体に亘って侵食されることを防止できる。
【0013】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記金属層を形成する前記工程では、前記開口部内に形成される前記金属層の厚さが前記開口部内の前記シリコン含有層の厚さ以上であってもよい。
【0014】
この構成によれば、開口部内のシリコン含有層を厚さ方向全体にわたってシリサイド化させることができ、シリサイド層を確実に半導体基板に接触させることができる。
【0015】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハにおいて、前記開口部と前記被覆部の境界に段差が設けられていてもよい。
【0016】
このように段差が存在する場合には、バリアメタル層の形成不良が生じ易いので、本明細書に開示の技術がより有用である。
【0017】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記層間絶縁層が、前記半導体基板の前記表面から突出していてもよい。前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記層間絶縁層の側面に形成される前記シリコン含有層の厚さが、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さよりも薄くてもよい。
【0018】
この構成によれば、開口部においてボイドの発生を抑制できる。
【0019】
図1に示す半導体装置10は、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiCにより構成されている。但し、半導体基板12が、シリコンを含有する他の半導体材料(例えば、シリコン単結晶等)により構成されていてもよい。半導体基板12の下部には、ドレイン電極24が設けられている。ドレイン電極24は、半導体基板12の下面12bの全域に接している。半導体基板12の上面12aには、トレンチ14が設けられている。各トレンチ14内に、ゲート絶縁膜16とゲート電極18が設けられている。各ゲート電極18の上面は、層間絶縁層20によって覆われている。層間絶縁層20は、酸化シリコン等によって構成されている。層間絶縁層20は、半導体基板12の上面12aにおいて間隔を開けて配置されている。半導体基板12の上部には、ソース電極22が配置されている。ソース電極22は、層間絶縁層20の表面と半導体基板12の上面12aを覆っている。ソース電極22は、層間絶縁層20が設けられていない範囲で半導体基板12の上面12aに接している。ソース電極22は、層間絶縁層20によってゲート電極18から絶縁されている。
【0020】
ソース電極22は、シリサイド層22a、バリアメタル層22b、及び、電極層22cを有している。シリサイド層22aは、層間絶縁層20が設けられていない範囲で半導体基板12の上面12aに接している。また、シリサイド層22aは、層間絶縁層20の上面と側面を覆っている。バリアメタル層22bは、シリサイド層22aの表面を覆っている。電極層22cは、バリアメタル層22bの表面を覆っている。バリアメタル層22bによって、電極層22cと半導体基板12の間、及び、電極層22cと層間絶縁層20の間における材料の相互拡散が防止される。
【0021】
半導体基板12は、n型のソース層40、p型のコンタクト層42、p型のボディ層44、n型のドリフト層46、及び、n型のドレイン層48を有している。ソース層40とコンタクト層42は、半導体基板12の上面12aを含む範囲に配置されている。ソース層40は高いn型不純物濃度を有しており、ソース電極22(より詳細には、シリサイド層22a)にオーミック接触している。コンタクト層42は高いp型不純物濃度を有しており、ソース電極22(より詳細には、シリサイド層22a)にオーミック接触している。ボディ層44は、コンタクト層42よりも低いp型不純物濃度を有している。ボディ層44は、ソース層40とコンタクト層42の下部に配置されている。ドリフト層46は、ボディ層44の下部に配置されている。ドレイン層48は、ドリフト層46よりも高いn型不純物濃度を有している。ドレイン層48は、ドリフト層46の下部に配置されている。ドレイン層48は、下面12bにおいてドレイン電極24にオーミック接触している。
【0022】
次に、実施形態における半導体装置10の製造方法について説明する。なお、実施形態の製造方法は、ソース電極22の形成方法に特徴を有するので、以下ではソース電極22の形成方法について説明する。
【0023】
(ウエハ準備工程)
まず、図2に示すウエハ11を準備する。ウエハ11は、半導体基板12とゲート電極18と層間絶縁層20を有している。ゲート電極18は、トレンチ14内に配置されている。層間絶縁層20は、ゲート電極18の上面とその周辺の上面12aを覆っている。層間絶縁層20は、上面12a上において間隔を開けて配置されている。層間絶縁層20が設けられていない範囲では、上面12aが露出している。以下では、図2の状態(すなわち、ソース電極22の形成前の状態)において、層間絶縁層20が露出している領域を被覆部80といい、上面12aが露出している領域を開口部82という。半導体基板12内には、ソース層40、コンタクト層42、ボディ層44、及び、ドリフト層46が設けられている。ソース層40とコンタクト層42は、開口部82内において上面12aに露出している。ソース層40とコンタクト層42は、後工程で形成されるシリサイド層22aに対してオーミック接触可能な程度に高い不純物濃度を有している。層間絶縁層20は、半導体基板12の上面12aから上側に突出するように設けられている。したがって、層間絶縁層20の上面は、半導体基板12の上面12aよりも上側に配置されている。このため、開口部82内の上面と12aと層間絶縁層20の上面の間に段差が設けられている。すなわち、開口部82と被覆部80の境界に段差が設けられている。
【0024】
(シリコン含有層形成工程)
次に、図3に示すように、被覆部80と開口部82に跨る範囲にCVD(chemical vapor deposition)によってシリコン含有層84を形成する。本実施形態では、シリコン含有層84はポリシリコンによって構成されている。但し、シリコン含有層84は、後述するシリサイド層形成工程においてシリサイド化する材料であれば、どのような材料によって構成されていてもよい。例えば、シリコン含有層84は、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、SiC等によって構成されていてもよい。シリコン含有層84は、開口部82内で上面12a(すなわち、ソース層40とコンタクト層42)に接するように形成される。また、シリコン含有層84は、層間絶縁層20の上面と側面を覆うように形成される。シリコン含有層84は比較的高い被覆率で形成することが可能であるので、半導体基板12と層間絶縁層20の境界部にも適切にシリコン含有層84が形成される。シリコン含有層84は、層間絶縁層20の側面を覆う部分の厚さT2が開口部82内で上面12aを覆う部分の厚さT1よりも薄くなるように形成される。また、シリコン含有層84は、層間絶縁層20の側面を覆う部分の厚さT2が層間絶縁層20の上面を覆う部分の厚さT3よりも薄くなるように形成される。また、シリコン含有層84は、厚さT1がソース層40とコンタクト層42の厚さT4よりも薄くなるように形成される。
【0025】
(金属層形成工程)
次に、図4に示すように、被覆部80と開口部82に跨る範囲に金属層86を形成する。本実施形態では、金属層86はニッケルにより構成されている。但し、金属層86は、シリサイド化する金属であれば、どのような金属によって構成されていてもよい。例えば、金属層86は、チタン、クロム、コバルト、モリブデン、パラジウム、タングステン、プラチナ等によって構成されていてもよい。金属層86は、被覆部80と開口部82に跨る範囲においてシリコン含有層84の表面全体に接するように形成される。金属層86は、開口部82内に形成される金属層86の厚さT5が開口部82内のシリコン含有層84の厚さT1以上となるように形成される。
【0026】
(シリサイド層形成工程)
次に、ウエハ11を熱処理することによって、金属層86とシリコン含有層84を反応させる。これによって、図5に示すように、被覆部80と開口部82に跨る範囲にシリサイド層22aを形成する。熱処理前(すなわち、図4の状態)では開口部82内において金属層86の厚さT5がシリコン含有層84の厚さT1以上であるので、熱処理によってシリコン含有層84がその厚さ方向全体でシリサイド化する。開口部82内では、シリサイド化反応は、シリコン含有層84を介して半導体基板12の内部まで進行する。このため、図5に示すように、開口部82内では半導体基板12の上面12aの位置が下側へ移動する。但し、熱処理前(すなわち、図4の状態)ではシリコン含有層84の厚さT1がソース層40とコンタクト層42の厚さT4よりも薄いので、図5に示すようにシリサイド層22aの下部にはソース層40とコンタクト層42が残存する。開口部82内では、シリサイド層22aはソース層40とコンタクト層42に対してオーミック接触する。また、層間絶縁層20の表面にも、シリサイド層22aが形成される。熱処理前(すなわち、図4の状態)では層間絶縁層20の側面においてシリコン含有層84の厚さT2が薄いので、図5に示すように層間絶縁層20の側面に形成されるシリサイド層22aの厚さT11は、層間絶縁層20の上面上に形成されるシリサイド層22aの厚さT12及び上面12a上に形成されるシリサイド層22aの厚さT13よりも薄い。また、シリサイド層22aの表面には、未反応の金属層86(すなわち、シリサイド化しなかった金属層86)が残存する。
【0027】
なお、他の実施形態においては、シリサイド層22aの表面に未反応の金属層86が残存しなくてもよい。また、他の実施形態においては、図6に示すように、層間絶縁層20とシリサイド層22aの間に未反応のシリコン含有層84が残存してもよい。
【0028】
(金属層除去工程)
次に、図7に示すように、エッチングによって未反応の金属層86を除去する。これにより、シリサイド層22aの表面全体が露出する。なお、シリサイド層形成工程において未反応の金属層86が残存しない場合には、金属層除去工程を省略できる。
【0029】
(バリアメタル層形成工程)
次に、図8に示すように、被覆部80と開口部82に跨る範囲にバリアメタル層22bを形成する。例えば、バリアメタル層22bは、窒化チタン、モリブデン等によって構成されていてもよい。バリアメタル層22bは、被覆部80と開口部82に跨る範囲においてシリサイド層22aの表面全体に接するように形成される。
【0030】
図9は、比較例のバリアメタル層形成工程を示している。図9では、半導体基板12の上面12aにシリサイド層22aが形成されている一方で、層間絶縁層20の表面にシリサイド層22aが形成されていない。したがって、図9の場合では、開口部82内ではシリサイド層22aを下地としてバリアメタル層22bが成長し、被覆部80内では層間絶縁層20を下地としてバリアメタル層22bが成長する。シリサイド層22aを下地として成長するバリアメタル層22bと層間絶縁層20を下地としてバリアメタル層22bの間では、結晶性と面方向に差が生じる。したがって、シリサイド層22aと層間絶縁層20の境界部においてバリアメタル層22bが形成不良となり、当該境界部にバリアメタル層22bの断絶部28が形成される。特に、図9では、シリサイド層22aと層間絶縁層20の境界部に段差が設けられているので、当該境界部においてバリアメタル層22bが形成不良となり易い。
【0031】
これに対し、実施形態の製造方法では、開口部82と被覆部80に跨る範囲全体においてシリサイド層22aが露出しているので、図8に示すように開口部82と被覆部80に跨る範囲全体に好適にバリアメタル層22bを形成することができる。すなわち、開口部82と被覆部80の境界においてバリアメタル層22bの形成不良を防止できる。
【0032】
(電極層形成工程)
次に、図10に示すように、被覆部80と開口部82に跨る範囲に電極層22cを形成する。電極層22cは、金属により構成されている。例えば、電極層22cは、アルミニウム、銅等によって構成されていてもよい。電極層22cは、被覆部80と開口部82に跨る範囲においてバリアメタル層22bの表面全体に接するように形成される。バリアメタル層22bに破断部が存在しないので、バリアメタル層22bによって材料の相互拡散を適切に防止でき、半導体装置10の信頼性の低下を防止することができる。また、層間絶縁層20の側面においてシリサイド層22aの厚さT11(図5参照)が薄いので、開口部82内の空間が広く、開口部82内に適切に電極層22cを成長させることができる。したがって、開口部82内においてボイドの発生を抑制できる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、層間絶縁層20が上面12aから上側に突出していた。しかしながら、図11に示すように、層間絶縁層20の上面が半導体基板12の上面12aと同一の高さに配置されていてもよい。また、図12に示すように、層間絶縁層20の上面が半導体基板12の上面12aよりも下側(すなわち、トレンチ14の内部)に配置されていてもよい。図11、12のウエハを使用する場合でも、本明細書に開示の製造方法によれば、被覆部80と開口部82との境界部上におけるバリアメタルの形成不良を防止できる。
【0034】
また、上述した実施形態では、トレンチ型ゲート電極の上部にソース電極22を製造する場合について説明した。しかしながら、図13に示すようなプレーナ型ゲート電極の上部にソース電極22を形成する場合に、本明細書に開示の製造方法を使用してもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、MOSFETの製造工程について説明したが、IGBT(insulated gat bipolar transistor)の製造工程において本明細書に開示の製造方法を使用してもよい。また、上述した実施形態では、層間絶縁層20がソース電極22とゲート電極18の間を絶縁する層間絶縁層であったが、層間絶縁層は半導体基板の表面に設けられている層間絶縁層であれば、どのような層間絶縁層であってもよい。したがって、本明細書に開示の製造方法は、スイッチング素子だけでなく、ダイオード等の他の半導体装置の製造に使用されてもよい。
【0036】
以下に、本明細書に開示の技術の構成を列記する。
(構成1)
半導体装置の製造方法であって、
シリコンを含有する半導体によって構成された半導体基板と前記半導体基板の表面を覆う層間絶縁層とを有するウエハであって、前記層間絶縁層が露出している被覆部と前記半導体基板の前記表面が露出している開口部とが設けられている前記ウエハを準備する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記半導体基板と前記層間絶縁層に接するシリコン含有層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリコン含有層に接する金属層を形成する工程と、
熱処理によって前記金属層と前記シリコン含有層を反応させることによって、前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に分布するとともに前記開口部内において前記半導体基板に接するシリサイド層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記シリサイド層に接するバリアメタル層を形成する工程と、
前記被覆部と前記開口部に跨る範囲に、前記バリアメタル層に接する電極層を形成する工程、
を有する製造方法。
(構成2)
前記シリサイド層を形成する前記工程において、前記シリサイド層の表面に未反応の前記金属層が残存し、
前記バリアメタル層を形成する工程の前に、未反応の前記金属層を除去する工程をさらに有する構成1に記載の製造方法。
(構成3)
前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハの前記半導体基板が、前記開口部に露出するとともに前記シリサイド層に対してオーミック接触可能な不純物濃度を有する高濃度層を有し、
前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さが前記高濃度層の厚さより薄い、
構成1または2に記載の製造方法。
(構成4)
前記金属層を形成する前記工程では、前記開口部内に形成される前記金属層の厚さが前記開口部内の前記シリコン含有層の厚さ以上である、構成1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成5)
前記ウエハを準備する前記工程において準備される前記ウエハにおいて、前記開口部と前記被覆部の境界に段差が設けられている、構成1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成6)
前記層間絶縁層が、前記半導体基板の前記表面から突出しており、
前記シリコン含有層を形成する前記工程では、前記層間絶縁層の側面に形成される前記シリコン含有層の厚さが、前記半導体基板の前記表面に形成される前記シリコン含有層の厚さよりも薄い、
構成5に記載の製造方法。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
12:半導体基板、20:層間絶縁層、22:ソース電極、22a:シリサイド層、22b:バリアメタル層、22c:電極層、40:ソース層、42:コンタクト層、80:被覆部、82:開口部、84:シリコン含有層、86:金属層

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