(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025481
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】タイヤ評価装置及びタイヤ評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20250214BHJP
G01M 9/04 20060101ALI20250214BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G01M17/02
G01M9/04
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130281
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩人
【テーマコード(参考)】
2G023
3D131
【Fターム(参考)】
2G023AA01
2G023AB24
2G023AC01
2G023AC03
2G023AD03
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】タイヤの空力特性を定量的に評価できるタイヤ評価装置を提供する。
【解決手段】
タイヤ評価装置1は、風洞10と、風洞10内でタイヤTをタイヤ軸線O1が水平方向に延びる状態で支持可能であって、車輪21aを有しており、車輪21aを転動させることによって水平方向のうちタイヤ軸線O1に直交するX方向に移動可能な、台車20と、風洞10において台車20に支持されるタイヤTに対してX方向に平行に風を送り込み、風洞10内に気流Fを発生させる、送風装置3と、気流FによってタイヤTが台車20と共に移動するときの変位を、入力としてタイヤTに生じるX方向の荷重を測定する、荷重センサ40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風洞と、
前記風洞内でタイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びる状態で支持可能であって、車輪を有しており、車輪を転動させることによって水平方向のうち前記タイヤ軸線に直交する第1方向に移動可能な、台車と
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させる、送風装置と、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定する、荷重センサと
を備えたタイヤ評価装置。
【請求項2】
前記車輪の転動を前記第1方向にガイドするガイド部材をさらに備えている、
請求項1に記載のタイヤ評価装置。
【請求項3】
前記荷重センサは、接触により荷重が入力される接触子を有しており、
前記接触子は前記台車に対して前記第1方向に対向している、
請求項1又は2に記載のタイヤ評価装置。
【請求項4】
前記荷重センサは、前記第1方向において前記台車に対して前記気流の下流側に位置している、
請求項1又は2に記載のタイヤ評価装置。
【請求項5】
風洞内に配置されており車輪の転動時に第1方向に移動可能な台車に、タイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びた状態で支持し、
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させて、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定し、
前記測定された荷重に基づいてタイヤの空力特性を評価する、
タイヤ評価方法。
【請求項6】
レール上で前記車輪を転動させることによって前記台車の移動方向を前記第1方向のみに規制する、
請求項5に記載のタイヤ評価方法。
【請求項7】
前記台車を被測定対象として、前記荷重を測定する、
請求項5又は6に記載のタイヤ評価方法。
【請求項8】
前記タイヤは、ホイールに組み付けられることなく、前記台車に支持されている、
請求項5又は6に記載のタイヤ評価方法。
【請求項9】
前記タイヤは、径方向内側端にホイールに組み付けられる内径部を有する、円環体であって、
前記タイヤは、前記内径部の径方向内側の開口が覆われている、
請求項8に記載のタイヤ評価方法。
【請求項10】
前記タイヤは、スリップ角及び/又はキャンバ角が付された状態で、前記台車に支持されている、
請求項5又は6に記載のタイヤ評価方法。
【請求項11】
前記測定された荷重から前記台車の車輪に作用する摩擦力が除いた荷重に基づいて、タイヤ空力特性を評価する、
請求項5又は6に記載のタイヤ評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、風洞内で保持されたタイヤに対して送風装置により空気流を送り込み、タイヤ周辺の空気流の流れを煙により可視化する、タイヤ評価装置及びタイヤ評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-52979号公報
【特許文献2】特開2019-52980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法では、タイヤ周辺の空気流の流れを可視化するものであり、可視化された画像では主観的な評価になりやすい。
【0005】
本発明は、タイヤの空力特性を定量的に評価できる、タイヤ評価装置及びタイヤ評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
風洞と、
前記風洞内でタイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びる状態で支持可能であって、車輪を有しており、車輪を転動させることによって水平方向のうち前記タイヤ軸線に直交する第1方向に移動可能な、台車と
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させる、送風装置と、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定する、荷重センサと
を備えたタイヤ評価装置を提供する。
【0007】
本発明の一態様によれば、風洞内で生じた気流によってタイヤの空力特性に基づいてタイヤに作用する荷重を荷重センサによって定量的に測定できる。しかも、台車の車輪を転動させることによる台車の変位を入力とするものであり、タイヤを転動させることを要しないので、装置が簡略化される。
【0008】
また、本発明の他の態様は、
風洞内に配置されており車輪の転動時に第1方向に移動可能な台車に、タイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びた状態で支持し、
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させて、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定し、
前記測定された荷重に基づいてタイヤの空力特性を評価する、
タイヤ評価方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様によれば、風洞内で生じた気流によってタイヤの空力特性に基づいてタイヤに作用する荷重を定量的に測定できる。しかも、台車の車輪を転動させることによる台車の変位を入力とするものであり、タイヤを転動させることを要しないので簡便に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ評価装置の概略構成を示す側面図。
【
図2】
図1の矢印A方向から見た、タイヤ評価装置の平面図。
【
図3】
図1のIII-III線に沿ったタイヤ評価装置の縦断面図。
【
図4】測定時に接触子に台車が当接した状態を示す
図1と同様の側面図。
【
図5】タイヤにキャンバ角を付して測定する状態を示す
図3と同様の縦断面図。
【
図6】タイヤにスリップ角を付して測定する状態を示す
図2と同様の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るタイヤ評価装置1の側面図を示している。
図2は
図1のA矢視におけるタイヤ評価装置1の平面図を示している。
図3は
図1のIII-III線に沿ったタイヤ評価装置1の縦断面図を示している。
図1に示されるように、タイヤ評価装置1は、風洞10、風洞10内においてタイヤTを支持する台車20、風洞10に風を送り込む送風装置3、送風装置3が発生させた気流Fによりタイヤに作用する荷重を測定する荷重センサ40、台車20の移動を案内するレール7(ガイド部材)、煙発生装置30、及び撮影装置5を備えている。
【0013】
風洞10は、上下方向の下端を画定する底壁11と、上下方向の上端を画定する頂壁12と、幅方向の両端を画定する一対の側壁13とを有している。風洞10の内部には、底壁11、頂壁12及び一対の側壁13によって水平方向に延びる内部空間14が画定されている。以下の説明では、タイヤ評価装置1及び各部品の各方向について、風洞10が延びる方向をX方向と称し、風洞10の幅方向をY方向と称し、風洞10の上下方向をZ方向と称する。
【0014】
送風装置3は、本実施形態では、風洞10のX方向の一端側(
図1において右端)に配置されており、内部空間14に空気を送り込み、風洞10のX方向の他端側(
図1において左端)に向かって気流Fを生じさせる。すなわち、送風装置3は、風洞10内において、台車20に支持されるタイヤTに対してX方向(第1方向)に風を送り込み、風洞10内にX方向の気流Fを発生させる。なお、風洞10のX方向の他端側に送風装置3を配置し、内部空間14の空気を吸引することによって風洞10内にX方向の気流Fを生じさせてもよい。
【0015】
台車20は、レール7上を転動する車輪21aを有する第1台21と、第1台21により支持されておりタイヤTが固定された第2台22とを有している。
【0016】
図2に示されるように、第1台21は4隅それぞれに車輪21aを有している。車輪21aは、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属製である。
図3に示されるように、車輪21aには軸方向の略中央部分に周方向に延びる溝21bが設けられている。溝21b内にレール7が嵌入されている。
第2台22は、送風装置3による気流FがタイヤTに生じたときに第1台21と共に一体的に移動するように、第1台21に対して移動不能に支持されている。例えば、第1台21にストッパ(不図示)を設けて、ストッパによって第2台22の第1台21に対するX方向の他端側(
図1において左側)への相対変位を防止するようにしてもよい。
【0017】
第2台22には、タイヤTがタイヤ軸線O1をY方向に向けた状態で回転不能に支持されている。本実施形態では、タイヤTの内径部T1と第2台22とのZ方向間にバンド23が巻き付けられており、バンド23によってタイヤTが第2台22に固定されている。
【0018】
図2に示されるように、レール7はY方向に一対に設けられており、それぞれX方向に平行に延びている。換言すれば、レール7は、送風装置3による気流Fの流れ方向に平行に延びている。レール7によれば、台車20は送風装置3による気流Fを受けたときにY方向への移動が規制されてX方向にのみ移動する。レール7は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属製である。
【0019】
すなわち、車輪21a及びレール7は、どちらも硬質の材料であり、両者の間の摩擦係数が低く抑えられており、気流Fに対して台車20が感度よく移動できるように構成されている。なお、車輪21aとレール7との間の摩擦係数をさらに低減するため、車輪21a及びレール7の両方又は一方にメッキを付したり潤滑油を塗布したりしてもよい。
【0020】
荷重センサ40は、X方向における荷重が入力される接触子41を有している。接触子41は、測定対象の対象物により押圧されたときのX方向の荷重を測定し電気信号として出力する。荷重センサ40は、台車20に対して気流Fの下流側において、接触子41が台車20(本実施形態では第1台21)にX方向に対向するように配置されている。本実施形態では、接触子41は、測定開始時において台車20に対して所定距離(例えば5mm)離間しており、台車20が所定距離移動した後に台車20に当接する。
【0021】
荷重センサ40としては、種々のセンサを使用でき、例えばフォースゲージ及びロードセルを使用してもよい。本実施形態では、荷重センサ40は、風洞10の底壁11と頂壁12との間にわたって延びる一対のポスト15に対して取り付けられているが、荷重センサ40の取付については、タイヤT(台車20)から入力される荷重に対して十分な支持剛性を確保できるものであれば、種々の構成を採用できる。
【0022】
煙発生装置30は、風洞10の内部空間14に張られた単一の金属細線31と、この金属細線31に通電するための通電装置32とを有している。
【0023】
本実施形態における金属細線31は、Z方向に直線状に延びるように内部空間14に張られており、上端が風洞10の頂壁12側に位置し、下端が風洞10の底壁11側に位置している。また、金属細線31は、台車20に支持されたタイヤTよりも気流Fの上流側に張られている。金属細線31には、ループ33が設けられている。ループ33のZ方向位置は、台車20の支持されたタイヤTのタイヤ軸線O1と同じである。したがって、ループ33から発生した煙は、気流Fによって、タイヤTに対してタイヤ軸線O1近傍の高さ位置に流動する。
【0024】
ループ33内には、昇温により発熱する発煙性材料34が保持されている。金属細線31は、その両端の端子31a、31bが導線35を介して通電装置32に電気的に接続されている。本実施形態における通電装置32は、金属細線31に直流電圧を印加する。通電装置32によって通電された金属細線31は抵抗熱を生じ、この抵抗熱によってループ33に保持された発煙性材料34から煙が発生する。
【0025】
本実施形態では、金属細線31はニクロム線である。金属細線31は単線であっても、撚線であってもよい。ループ33は、金属細線31を巻回した後に、巻回した部分の基端において金属細線31を1回だけ撚ることにより形成されている。
【0026】
本実施形態のける発煙性材料34は、発煙性液状材料としての流動パラフィンに、粘性付与材料として、粉体材料の一例である滑石を混合し、ループ33から脱落しないような粘性を付与したものである。発煙性液状材料は流動パラフィンに限定されず、同様の特性を有する材料であってもよい。粘性付与材料としての粉体材料は、滑石に限定されず、例えば窒化ホウ素(BN)の粉末を採用できる。
【0027】
撮影装置5は、風洞10の内部空間14のうち、少なくともタイヤTの周囲の領域を撮影する。つまり、撮影装置5は、発煙性材料34から生じる煙によって可視化されるタイヤTの周囲の気流を撮影する。煙によって可視化された気流Fの流線を撮影装置5により撮影し、撮影された動画及び/又は静止画によってタイヤTの周囲の空気流を評価できる。なお、タイヤTの周囲の煙に光(例えばレーザ光)を照射することによって、煙によって可視化されたタイヤTの周囲の気流Fを、撮影装置5によってより鮮明に撮影できる。
【0028】
次に、タイヤ評価装置1を使用した、タイヤ評価方法について説明する。
【0029】
まず台車20にタイヤTをタイヤ軸線O1がY方向に延びた状態で固定する。具体的には、バンド23を介してタイヤTを第2台22に固定する。ここで、タイヤTは、ホイールに組み付けられることなく台車20に支持されている。また、タイヤTは、ホイールが組み付けられる内径部T1(ビードとも称する)を有する円環体であって、内径部T1が蓋部材8によってY方向の両側から閉止されてタイヤ内部に閉空間が構成されている。なお、蓋部材8は、タイヤTの空力特性に影響を及ぼさないように、X方向から見てタイヤTに対してタイヤ軸方向の外側に位置していないことが好ましい。
【0030】
蓋部材8は、車輪21aとレール7との間に生じる摩擦力への影響を低減するため、できるだけ軽量の材料であることが好ましく、例えばプラスチック段ボール、紙段ボール、厚紙等種々の材料を使用できる。
【0031】
次に、第2台22を、第1台21上に第1台21と一体的に移動するように支持する。次に、第1台21が荷重センサ40の接触子41に対して所定距離、空けて気流Fの上流側からX方向に対向するように、台車20をレール7上に載置する。このとき、車輪21aの溝21b内にレール7が嵌入される。
【0032】
次に、送風装置3により気流FをX方向に生じさせる。気流FによってタイヤTは空気抵抗によって気流Fの下流側への力を受ける。この結果、
図4に示されるように、台車20は、タイヤTからの力を受けてX方向の下流側へ移動し、第1台21が荷重センサ40の接触子41に接触する。荷重センサ40は接触子41に入力された荷重を測定し、電気信号として出力する。荷重センサ40から出力された電気信号に基づいて、タイヤTに作用する気流Fによる荷重が推定される。
【0033】
なお、接触子41を測定開始時に第1台21に当接させてもよいが、本実施形態のように所定距離、離間させることが好ましい。すなわち、接触子41は測定開始時には第1台21に接触していない場合、台車20が静止した状態から移動し始める際の種々の抵抗が含まれ得る荷重を検出せずに、移動後の比較的安定した状態での荷重を測定できる。
【0034】
また、撮影装置5によって、タイヤTの周辺の煙によって可視化された気流Fを撮影し、撮影された動画及び/又は静止画に基づいてタイヤTの周辺の気流Fの流線を可視化して評価できる。
【0035】
本実施形態に係るタイヤ評価装置1及びタイヤ評価方法によれば、次の効果を奏する。
【0036】
(1)タイヤ評価装置1は、
風洞10と、
風洞10内でタイヤTをタイヤ軸線O1がY方向に延びる状態で支持可能であって、車輪21aを有しており、車輪21aを転動させることによって水平方向のうちタイヤ軸線O1に直交するX方向に移動可能な、台車20と
風洞10において台車20に支持されるタイヤTに対してX方向に平行に風を送り込み、風洞10内に気流Fを発生させる、送風装置3と、
気流FによってタイヤTが台車20と共に移動するときの変位を、入力としてタイヤTに生じるX方向の荷重を測定する、荷重センサ40と
を備えている。
その結果、風洞10内で生じた気流FによってタイヤTの空力特性に基づいてタイヤTに作用する荷重を荷重センサ40によって定量的に測定できる。しかも、台車20の車輪21aを転動させることによる台車20の変位を入力とするものであり、タイヤTを転動させることを要しないので、タイヤ評価装置1が簡略化される。
【0037】
(2)車輪21aの転動をX方向にガイドするレール7をさらに備えている。
その結果、台車20の移動方向を気流Fに沿ったX方向のみに規制できる。したがって、例えばタイヤTのサイドウォール又はバットレスに設けられた凹凸に起因して、気流FによってタイヤTに対して水平方向のうちX方向に交差するY方向に力が生じたとしても、台車20の移動方向がX方向のみに規制されるので、X方向に作用する荷重に基づいてタイヤTの空力特性を安定して評価できる。
【0038】
(3)荷重センサ40は、接触により荷重が入力される接触子41を有しており、
接触子41は台車20に対して第1方向に対向している。
その結果、接触子41を介して、台車20において荷重を測定でき、ゴム製であるために弾性変形し得るタイヤにおいて測定する場合に比して、精度よく荷重を測定できる。
【0039】
(4)荷重センサ40は、X方向において台車20に対して気流Fの下流側に位置している。
その結果、荷重センサ40が、気流Fの、タイヤTよりも下流側に位置するので、送風装置3からタイヤに供給される気流Fに影響を及ぼし難い。よって、タイヤTに対して気流Fを安定して供給できるので荷重を安定して測定できる。
【0040】
(5)タイヤ評価方法は、
風洞10内に配置されており車輪21aの転動時にX方向に移動可能な台車20に、タイヤTをタイヤ軸線O1がY方向に延びた状態で支持し、
風洞10において台車20に支持されるタイヤTに対してX方向に平行に風を送り込み、風洞10内に気流Fを発生させて、
気流FによってタイヤTが台車20と共に移動するときの変位を、入力としてタイヤTに生じるX方向の荷重を測定し、
測定された荷重に基づいてタイヤTの空力特性を評価する
ことを含んでいる。
その結果、風洞10内で生じた気流FによってタイヤTの空力特性に基づいてタイヤTに作用する荷重を定量的かつ簡便に測定できる。
【0041】
(6)レール7上で車輪21aを転動させることによって台車20の移動方向をX方向のみに規制する。
その結果、台車20の移動方向をX方向のみに規制できるので、X方向に作用する荷重に基づいてタイヤTの空力特性を安定して評価できる。
【0042】
(7)台車20を被測定対象として、荷重を測定する。
その結果、台車20において該荷重を測定するほうが、ゴム製であるために弾性変形し得るタイヤTにおいて測定する場合に比して、精度よく荷重を測定できる。
【0043】
(8)タイヤTは、ホイールに組み付けられることなく、台車20に支持されている。
その結果、タイヤTをホイールに組み付ける場合に比して評価対象の質量を軽減できるので、台車20に作用する摩擦力を低減できる。これによって、気流Fが低流量である低流量域においても台車20を移動させやすく、低流量域におけるタイヤTの空力特性の評価精度が向上する。
【0044】
(9)タイヤTは、径方向内側端にホイールに組み付けられる内径部T1を有する、円環体であって、
タイヤTは、内径部T1の径方向内側の開口が覆われている。
その結果、タイヤTの内側に風が巻き込まれることがないので、気流FによってタイヤTに生じる荷重が、タイヤTの外表面にのみに起因することになる。よって、タイヤTの外表面の形状の空力特性への影響を評価しやすい。
【0045】
なお、本発明に係るタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法は、上記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0046】
上記実施形態では、タイヤTをタイヤ軸線O1がY方向に延びる状態で台車20に支持するように構成したが、例えば実車に搭載された状態を模擬して、タイヤ軸線O1がZ方向に傾斜するようにキャンバ角を付したり、タイヤ軸線O1がY方向に対して交差するようにスリップ角を付したりしてもよい。
【0047】
例えば、
図5に示されるように、第2台22を第1台21に対して例えばスペーサ18を利用してY方向に傾斜させることによって、タイヤTにキャンバ角を付すことができる。また、
図6に示されるように、第2台22を第1台21に対して水平方向に所定角度回転させて載置することによって、タイヤTにスリップ角を付すことができる。すなわち、タイヤを、キャンバ角及び/又はスリップ角が付された状態で、台車20上で支持してもよい。この場合、タイヤTが実車に搭載された状態を模擬して、タイヤTの空力特性を評価できる。
【0048】
また、上記実施形態では、荷重センサ40によって測定した荷重に基づいてタイヤTの空力特性を評価したが、測定された荷重から、予め求めた台車20の車輪に作用する摩擦力を除いて、タイヤTの空力特性を評価してもよい。具体的には、台車20にタイヤTが支持されていない状態、つまり台車20のみの状態で、例えば送風装置3を作動させずに台車20を手でX方向に移動させるときの台車20が移動を開始するときの荷重を、最大静止摩擦力として荷重センサ40により測定し、該最大静止摩擦力を、タイヤTを台車20に支持し送風装置3を作動させた状態で測定された荷重から除去してもよい。この場合、測定される荷重から台車20の寄与分が除かれてタイヤTのみに起因して作用する荷重を推定できる。よって、タイヤTのみに起因する荷重の推定値に基づいてタイヤTの空力特性をより精度よく評価できる。
【0049】
送風装置3から発生する気流Fが、タイヤTにのみ吹き付けられるように例えば導風板(不図示)を設け、台車20には当たらないようにすることが好ましい。これによって、荷重センサ40により測定される荷重に、台車20に気流Fが作用することによる荷重が含まれることを低減でき、タイヤTの空力特性をより精度よく評価できる。
【0050】
また、上記実施形態では、台車20を、第1台21と第2台22とによって構成したが一体的に構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、レール7を車輪21aの溝21b内に嵌入させたが、これに代えて、レールに溝を設けレールの溝に車輪を嵌入させてもよく、そのた種々のガイド手段を採用してもよい。
【0052】
本発明に係るタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法は、以下の態様を提供する。
【0053】
[態様1]
風洞と、
前記風洞内でタイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びる状態で支持可能であって、車輪を有しており、車輪を転動させることによって水平方向のうち前記タイヤ軸線に直交する第1方向に移動可能な、台車と
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させる、送風装置と、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定する、荷重センサと
を備えたタイヤ評価装置。
【0054】
[態様2]
前記車輪の転動を前記第1方向にガイドするレールをさらに備えている、
態様1に記載のタイヤ評価装置。
【0055】
[態様3]
前記荷重センサは、接触により荷重が入力される接触子を有しており、
前記接触子は前記台車に対して前記第1方向に対向している、
態様1又は2に記載のタイヤ評価装置。
【0056】
[態様4]
前記荷重センサは、前記第1方向において前記台車に対して前記気流の下流側に位置している、
態様1~3のいずれか1つに記載のタイヤ評価装置。
【0057】
[態様5]
風洞内に配置されており車輪の転動時に第1方向に移動可能な台車に、タイヤをタイヤ軸線が水平方向に延びた状態で支持し、
前記風洞において前記台車に支持されるタイヤに対して前記第1方向に平行に風を送り込み、前記風洞内に気流を発生させて、
前記気流によって前記タイヤが前記台車と共に移動するときの変位を、入力として前記タイヤに生じる前記第1方向の荷重を測定し、
前記測定された荷重に基づいてタイヤの空力特性を評価する、
タイヤ評価方法。
【0058】
[態様6]
レール上で前記車輪を転動させることによって前記台車の移動方向を前記第1方向のみに規制する、
態様5に記載のタイヤ評価方法。
【0059】
[態様7]
前記台車を被測定対象として、前記荷重を測定する、
態様5又は6に記載のタイヤ評価方法。
【0060】
[態様8]
前記タイヤは、ホイールに組み付けられることなく、前記台車に支持されている、
態様5~7のいずれか1つに記載のタイヤ評価方法。
【0061】
[態様9]
前記タイヤは、径方向内側端にホイールに組み付けられる内径部を有する、円環体であって、
前記タイヤは、前記内径部の径方向内側の開口が覆われている、
態様8に記載のタイヤ評価方法。
【0062】
[態様10]
前記タイヤは、スリップ角及び/又はキャンバ角が付された状態で、前記台車に支持されている、
態様5~9のいずれか1つに記載のタイヤ評価方法。
【0063】
[態様11]
前記測定された荷重から前記台車の車輪に作用する摩擦力が除いた荷重に基づいて、タイヤ空力特性を評価する、
態様5~10のいずれか1つに記載のタイヤ評価方法。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ評価装置
3 送風装置
5 撮影装置
7 レール
8 蓋部材
10 風洞
14 内部空間
20 台車
21 第1台
21a 車輪
21b 溝
22 第2台
30 煙発生装置
40 荷重センサ
41 接触子
F 気流
O1 タイヤ軸線
T タイヤ
T1 内径部