(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025484
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】保護フィルム剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20250214BHJP
B65H 3/32 20060101ALI20250214BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B65H41/00 B
B65H3/32
B25J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130285
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 旭弘
【テーマコード(参考)】
3C707
3F108
3F343
【Fターム(参考)】
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV10
3C707FS01
3C707FT02
3C707HS12
3F108JA02
3F343FA07
3F343GA01
3F343HA17
3F343HA18
3F343HA31
3F343HD04
3F343JC12
(57)【要約】
【課題】 製品の外面に貼付した放熱シートから保護フィルムを円滑に剥離する保護フィルム剥離装置と保護フィルム剥離方法を提供する。
【解決手段】 6軸ロボットのアーム先端にチャック爪と吸着パッドを備えている。6軸ロボットの基台近傍の設備台に、台紙、放熱シート、保護フィルムの3層構造体を搬送する。駆動シリンダの駆動により、矢部材51を軸移動し、三層構造体1の放熱シート2の端面角部200を押し潰す。放熱シートの押し潰された窪み201に形成した保護フィルムの掴み代400をチャック爪で把持する。吸着パッドにより台紙3から放熱シート2及び保護フィルム4を切り出し、ケースの外面に貼付する。その後、チャック爪を放熱シートのシート面に沿って対角線方向に水平移動する。これにより、放熱シートの貼付面と反対面の表層の保護フィルムを円滑に剥離することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱シート(2)の一面(21)に台紙(3)、他面(22)に保護フィルム(4)が貼付される三層構造体(1)から前記台紙を剥がし、前記放熱シートの前記一面を製品(9)に貼付し、前記放熱シートの前記他面から前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置であって、
前記三層構造体の前記放熱シートの角部を押し潰す矢部材(51)と、
前記放熱シートの押し潰された窪み(201)に形成した前記保護フィルムの掴み代(400)を把持する把持手段(30)と、
前記三層構造体から前記台紙を剥がし、前記製品の外面に前記放熱シート及び前記保護フィルムを貼付する吸着手段(12)と、
前記製品に貼付された前記放熱シートに対し前記把持手段を相対移動し、前記保護フィルムを剥離するアクチュエータ(5)と、を備える保護フィルム剥離装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記製品に貼付された前記放熱シートから前記保護フィルムを剥離するとき、前記掴み代の相対移動に伴い湾曲する前記保護フィルムのもつ撓み力により前記放熱シートを前記製品の外面(91)に押し付ける力が作用するように、前記製品に貼付された前記放熱シートに対し前記把持手段を移動する、請求項1記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項3】
前記矢部材は、軸移動するとき前記放熱シートの前記角部に接触可能な第1テーパ面(54)と、前記台紙との干渉を防ぐ第2テーパ面(55)とを有する請求項2記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項4】
放熱シートの一面に台紙、他面に保護フィルムが貼付される三層構造体から台紙を剥がし、放熱シートの前記一面を製品に貼付し、放熱シートの前記他面から保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離方法であって、
前記三層構造体の前記放熱シートの角部を押し潰す工程と、
押し潰された前記放熱シートの窪みに形成した前記保護フィルムの掴み代(400)を把持する工程と、
前記三層構造体の前記台紙を剥がし、前記製品の外面に前記放熱シート及び前記保護フィルムを貼付する工程と、
把持した前記保護フィルムの前記掴み代を、前記製品に貼付された前記放熱シートのシート面に沿って移動し、前記保護フィルムを剥離する工程と、を含む保護フィルム剥離方法。
【請求項5】
前記押し潰す工程の後工程において、前記台紙から前記放熱シート及び前記保護フィルムを切り出す工程を含む請求項4記載の保護フィルム剥離方法。
【請求項6】
前記放熱シートが押し潰される位置は前記放熱シートの端面角部(200)である請求項4記載の保護フィルム剥離方法。
【請求項7】
前記保護フィルムを剥離する工程は、前記保護フィルムを湾曲して生ずる撓み力を利用して前記保護フィルムを剥離する請求項4記載の保護フィルム剥離方法。
【請求項8】
前記保護フィルムを剥離する工程は、前記製品に貼付されている前記放熱シートを前記製品の外面に押し付ける工程と、前記放熱シートから前記保護フィルムを剥離する工程とを同時に行う請求項4記載の保護フィルム剥離方法。
【請求項9】
前記保護フィルムを剥離する工程において、前記放熱シートに対し前記保護フィルムの把持部を移動するとき、前記製品の外面に直交する方向に前記製品上の前記放熱シートを保護フィルムが押す押し力を作用させる請求項4記載の保護フィルム剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟体ワークにおける保護フィルム剥離装置及び保護フィルム剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台紙から剥がしたラベルを製品に貼り付け、ラベルの表層の保護フィルムを剥がす技術が知られている。例えば台紙から切り出したラベルに相当する放熱シートを製品に貼付けた後、放熱シートの表層から保護フィルムを剥がす工程をとっていた。
【0003】
特許文献1には、保護フィルムの剥離ミスや破れがない保護フィルムの剥離方法および剥離装置を開示している。ここには、プリント配線板の製造において、基板上の絶縁層から保護フィルムを剥離する保護フィルムの剥離方法であって、保護フィルムの一端部の絶縁層に対する密着力を下げる端部きっかけ工程と、保護フィルムの密着力を下げた一端部を起こす起こし工程と、起こした一端部から保護フィルムの3辺の端面を絶縁層からはがす端面分離工程と、3辺の端面がはがされた保護フィルムを絶縁層からはがす剥離工程と、を含む剥離方法が開示されている。
この保護フィルムを剥離する工程は、基板の絶縁層を挟んだ表層の保護フィルムにきっかけロッドの下方向の押付と面方向の外力とで保護フィルムの端部に浮きを入れ、保護フィルムの浮上り部分に押し付けた粘着テープをめくることで浮上り部分を起こし、保護フィルムの端部と基板上の絶縁層との間にリムーバを走らせて保護フィルムを絶縁層から分離するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の保護フィルム剥離装置によると、保護フィルムそのものに外傷を加え、保護フィルムの端部に浮き上がった部分に粘着テープを使用し、吸着パッドを用いることなしに、保護フィルムと絶縁層の隙間にリムーバを挿入して保護フィルムを剥離している。
一般に、上記の基板に相当する製品に絶縁層に相当する放熱シートを貼付した後に放熱シートの貼付面の反対面から保護フィルムを剥離しようとすると、保護フィルムと一緒に放熱シートを製品から持ち上げてしまうという課題がある。
また、製品に放熱シートを貼付した後に、ヘラを使った手作業により保護フィルムを剥がす工程を実施すると、工程が煩雑となり、製品に貼付した放熱シートから保護フィルムを剥離する作業の所要時間が長時間になるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品の外面に貼付した放熱シートから保護フィルムを円滑に剥離する保護フィルム剥離装置と保護フィルム剥離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保護フィルム剥離装置は、放熱シート(2)の一面(21)に台紙(3)、他面(22)に保護フィルム(4)が貼付される三層構造体(1)から前記台紙を剥がし、前記放熱シートの前記一面を製品(9)に貼付し、前記放熱シートの前記他面から前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置であって、
前記三層構造体の放熱シートの角部を押し潰す矢部材(51)と、
放熱シートの押し潰された窪み(201)に形成した保護フィルムの掴み代(400)を把持する把持手段(30)と、
前記三層構造体から台紙を剥がし、製品の外面に放熱シート及び保護フィルムを貼付する吸着手段(12)と、
製品に貼付された放熱シートに対し前記把持手段を相対移動し、前記保護フィルムを剥離するアクチュエータ(5)と、を備える。
【0008】
本発明の保護フィルム剥離装置によれば、台紙、放熱シート、保護フィルムの三層構造体のうち、台紙を剥がした放熱シートを製品に貼り付けた後、その放熱シートの貼付面と反対面の表層の保護フィルムを円滑に剥離することができる。
【0009】
三層構造体の放熱シートと保護フィルムが重なっている状態で、放熱シートと保護フィルムの端面角部で、放熱シートの端面角部を矢部材が押し潰すと、放熱シートが許容範囲内で変形して形成した凹部に保護フィルムの掴み代を形成する。この保護フィルムの掴み代が把持手段に把持された後、吸着手段が台紙を剥がし、製品の外面に放熱シート及び保護フィルムを貼付する。貼付後、アクチュエータの作動により把持手段が放熱シートに対し相対移動すると、放熱シートから保護フィルムを剥離する。
【0010】
一般に、製品と放熱シート間の粘着力は、放熱シートと保護フィルム間の粘着力よりも小さい。
しかし、保護フィルムを剥離しようとするとき、放熱シートに対し保護フィルムの把持部を相対移動するから、そのとき保護フィルムの変形で生じる湾曲による撓み力が放熱シートを押す力として作用する。これにより、保護フィルムを剥離するとき、放熱シートを製品から持ち上げてしまう(引き剥がしてしまう)ことを防止する。
【0011】
したがって、把持手段による保護フィルムの把持と、アクチュエータの動作による把持部(掴み代相当)の放熱シートに対する相対移動とにより、製品に放熱シートを押さえつけながら保護フィルムを剥離する。このとき、放熱シートから保護フィルムを剥がそうとする力に対して放熱シートとケースとの接合力が大きいから、製品から放熱シートを剥離することなしに、保護フィルムを放熱シートから剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態による貼付から剥離までの工程図。
【
図2】本発明の第一実施形態による放熱シートの構成図。
【
図3】本発明の第一実施形態による押し潰し工程を示す工程図。
【
図4】本発明の第一実施形態による保護フィルム剥離動作を示す工程図。
【
図5】本発明の第一実施形態による装置のレイアウトを示す概略構成図。
【
図6】本発明の第一実施形態による装置の部分斜視図。
【
図7】本発明の第一実施形態による装置の概略正面図。
【
図8】本発明の第一実施形態による装置の部分斜視図。
【
図9】本発明の第一実施形態による装置の矢部品を示す斜視図。
【
図10】本発明の第一実施形態による装置の矢部品を示す正面図。
【
図14】本発明の第一実施形態による工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態によるモータ装置を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について
図1から
図14に基づいて説明する。
まず、製品の外面に放熱シートを貼り付ける放熱シート貼付装置及び貼付方法について説明する。
【0015】
本実施形態で用いる放熱シートは、
図1Aに示すように、三層構造体1の中間体として用意される。三層構造体1は、軟体ワークであり、放熱シート2の一方の外面21に台紙3が貼られ、他方の外面22に保護フィルム4が貼付されている。
【0016】
図2は、本実施形態で用いる放熱シートの形状を示している。
図2Aは放熱シートの正面図、
図2Bは平面図を示す。放熱シート2は、弾性を有し、薄肉の方形状のものである。軟質シートから構成される。
製品の外面に放熱シートを貼り付ける方法の基本となる工程は、
図1に示す
図1A、
図1B、
図1Cの順序に、実施される。
【0017】
図1Aに示す三層構造体1は、台紙3に貼られた放熱シート2の外面22に保護フィルム4が被されている。
図1Aに示す状態の三層構造体1は、保護フィルム4の貼られた放熱シート2から台紙3が剥がされ、台紙3の剥がされた放熱シート2の外面21が製品例えばケース9の外面(被貼付面)91に貼付されると、
図1Bに示す状態になる。
【0018】
ここに、
図1Bに示す状態において、ケース9の外面91と放熱シート2の外面21間の粘着力は、放熱シート2の外面22と保護フィルム4間の粘着力よりも小さい。
図1Bに示す状態で放熱シート2の外面22から保護フィルム4を剥離すると、
図1Cに示す状態になる。ここに、本実施形態の保護フィルム剥離装置及び保護フィルム剥離方法により、ケース9と放熱シート2の貼付状態を保持し、ケース9に貼付する放熱シート2の外面22から保護フィルム4を剥離する。
【0019】
次に、本実施形態の保護フィルム剥離装置を備えている放熱シート貼付装置について、
図3から
図14に基づいて、説明する。
【0020】
(ロボット)
保護フィルム剥離装置は、
図5、
図6及び
図7に示すように、基台6に対し所望の位置に先端の基部8が移動可能なロボットアーム7を有する6軸ロボット5を備えている。この6軸ロボット5の基部8に保護フィルム剥離装置の装置本体10が連結される。装置本体10は、基台6に対しロボット制御により3次元の任意の位置に移動可能であり、当該位置にて傾斜角度を任意に変更可能である。
【0021】
基台6に対して6軸ロボット5の動作によって三次元の任意の位置に装置本体10が移動可能になっている。6軸ロボット5はアクチュエータに相当する。アクチュエータによって任意の位置に移動可能な装置本体10は、吸着パッド13に後述する三層構造体1から放熱シート2と保護フィルム4を吸引可能な吸着手段12と、保護フィルム4の掴み代400(把持部)を把持可能な把持手段に相当するチャック爪30とをフレーム14で連結して備えている。
【0022】
(設備台上の三層構造体)
6軸ロボット5の基台6の近傍の設備台49に、
図5に示すように、台紙3、放熱シート2、保護フィルム4からなる三層構造体1が搬送される。
設備台49に載せられる三層構造体1は、
図8に示すように、レール47、48上に固定されるガイド24と25によって両縁が案内されている。本実施形態に示す三層構造体1は、長手方向に延びる台紙3上に、複数個の方形状の放熱シート2を同長手方向に貼付しており、各放熱シート2の上に複数個の方形状の保護フィルム4を重ね合わさるように貼付している。
【0023】
図8において、設備台49に載る台紙3が露出している個所は、台紙3から放熱シート2及び保護フィルム4を後述する吸着パッド13により剥がした後(切り出した後)の状態を示している。台紙3の下端300は図示しないアクチュエータにより下方向に引っ張られている。
【0024】
(矢装置)
設備台49のガイド24に隣接した位置に矢装置40を備えている。
矢装置40は、三層構造体1の放熱シート2の角部を押し潰す矢部材51と、矢印52の軸方向に矢部材51を進退する駆動シリンダ50とを備える。
【0025】
矢部材51は、
図9から
図13に示すように、シャフト53を有し、シャフト53の先端に、放熱シート2の端面角部200を押し潰す第1テーパ面に相当する第1傾斜面54と、保護フィルム4との干渉を回避する第2テーパ面に相当する第2傾斜面55とを有する。第1傾斜面54は、放熱シート2の端面角部200に接触可能な面である。
【0026】
押し潰し動作時、
図3A、
図3B、
図3Cの順に、矢部材51が放熱シート2の端面角部200に向かって進入し、退出する。
図8に示すように、駆動シリンダ50の駆動により矢部材51を
図3Bに示す矢印進入方向へ進入すると、台紙3と保護フィルム4の間の放熱シート2の端面角部200に第1傾斜面54を当接し、端面角部200を押し潰す(
図3B参照)。シート面方向に放熱シートを圧縮して放熱シートの端面角部200を押し潰す。押し潰し後に矢部材51を矢印退出方向へ退出すると、台紙3と保護フィルム4の間の放熱シート角部に窪み201(凹部相当)を形成する(
図3C参照)。この窪み201は、台紙3と保護フィルム4の間で、放熱シート2の押し潰された面に隣接する箇所に窪んでできた凹部になる。これにより、保護フィルム4の角部に保護フィルムの露出する露出部を形成し、この露出部がチャック爪30による掴み代400を形成する。
【0027】
(把持手段と吸着手段)
図5、
図6及び
図7に示すように、貼付剥離部18の把持手段に相当するチャック爪30は、フレーム14に固定される固定側チャック爪31と、固定側チャック爪31に対し可動する駆動側チャック爪32とを備える。放熱シート2の押し潰された面で形成された窪み201に隣接する箇所に窪んでできた保護フィルム4の掴み代400を、
図4Aに示すように、固定側チャック爪31の上面310と駆動側チャック爪32の下面320とで把持する。
把持後に、吸着手段12の吸着パッド13が放熱シート2及び保護フィルム4を吸引し、台紙3から放熱シート2及び保護フィルム4を剥がし、製品に相当するケース9の外面91に放熱シート2の外面21を押し付け貼付する。
【0028】
吸着手段12は、
図6及び
図7に示すように、チャック爪30に隣接して設けている。フレーム14に対し昇降運動するロッド11の先端に吸着パッド13を設けており、吸着パッド13が保護フィルム4を押したとき吸着パッド内に密閉される内部空間のエアを吸引することで保護フィルム4及び放熱シート2を持ち上げ、搬送し、ケース9の外面91に放熱シート2の外面21を貼付する。吸引を解除すると、保護フィルム4及び放熱シート2から吸着パッド13を離間する構成になっている。
【0029】
図5は、6軸ロボット5、放熱シートの押し潰し面を形成する矢部材51、貼付剥離部18等からなる保護フィルム剥離装置のレイアウトを示す。6軸ロボット5のロボットアーム7の先端に貼付剥離部18が設けている。貼付剥離部18は、チャック爪30、吸着手段12等を備えている。
チャック爪30と吸着手段12は、アクチュエータに相当するロボットの動作により、ケース9に対し、上下、前後、左右の3次元の任意方向に移動可能であり、ケースに対し、任意の傾斜角に回転運動可能である。
【0030】
次に、保護フィルム剥離装置の作動について、
図14に示すフローチャートを参照して説明する。
【0031】
図8に示すように、設備台49上に台紙3、放熱シート2及び保護フィルム4からなる三層構造体1を用意する(S101)。
次に、
図5、
図6及び
図7に示す6軸ロボット5に隣接する駆動シリンダ50の駆動により、
図3Aに示す台紙3上にある放熱シート2の端面角部200に近づく方向に矢装置40の矢部材51を軸移動し、放熱シート2の端面角部200に第1傾斜面54を押し潰し(
図3B参照)、保護フィルム4の掴み代400を形成する(S102)。押し潰し後に矢部材51を退出する(
図3C参照)。
【0032】
次いで、チャック爪30により保護フィルム4の掴み代400を把持し(S103)、掴み代400を把持した状態で吸着パッド13に放熱シート2及び保護フィルム4を吸着し、台紙3から吸着パッド13をリフトし(S104)、台紙3から放熱シート2及び保護フィルムを切り出す。
【0033】
次に、吸着パッド13で放熱シート2及び保護フィルム4のうちの放熱シート2の外面21をケース9の外面91に押し付け貼付する(S105)。
【0034】
ケース9への放熱シート2の貼付後、保護フィルム4の掴み代400を把持したチャック爪30を上昇させた後、チャック爪30をシート面に沿って対角線方向に水平移動することにより、放熱シート2をケース9に押さえながら保護フィルム4を放熱シート2から剥離する(S106)。
【0035】
本実施形態によれば、三層構造体1の放熱シート2と保護フィルム4の全面が重なり合っている状態で、放熱シート2の端面角部200を押し潰すことにより、非接合代(放熱シート2と保護フィルム4の重なり合わない領域)が形成されるから、この非接合代に相当する掴み代400を形成することができる。
【0036】
この保護フィルム4の掴み代400を把持し(
図4A参照)、チャック爪30がリフトし、シート面に沿って例えば対角線方向へ水平移動するとき、保護フィルム4がS字状に湾曲状に変形し、ケース9に放熱シート2を押し付ける押し付け力が作用する(
図4B参照)。
チャック爪30を放熱シート2のシート面上で対角線方向へ水平移動させることで保護フィルム4を放熱シート2に押し付けながら剥がすことできるため、ケース9と放熱シート2間の粘着力の弱さを補うことができる。
したがって、ケース9と放熱シート2の接合状態を保持しなから、放熱シート2を損傷させることなしに、保護フィルム4だけを放熱シート2から剥離することができる。また、保護フィルム4と放熱シート2とが一体となってケース9から剥がれることを回避することができる。
【0037】
一般に、製品に相当するケース9と放熱シート2間の粘着力よりも放熱シート2と保護フィルム4間の粘着力が大きいため、保護フィルム4を剥離しようとすると、ケース9に貼付する放熱シート2を一緒にケース9から持ち上げてしまう(引き剥がしてしまう)。
【0038】
しかし、本実施形態によると、ケース9の外面91に放熱シート2の上面で保護フィルムの弾性を利用しつつ、放熱シート2をケース9に押す力を作用させて保護フィルム4のみを放熱シート2から剥がす作用が働くので、放熱シートごと保護フィルム4をリフトすることを防止することができる。
【0039】
軟体ワークからその部分要素となる保護フィルムのみを剥離するとき、本発明の装置及び方法を使用することにより、製品と放熱シートの貼付を保持しつつ放熱シートから保護フィルムを損傷なしに剥離することができる。そして、作業の所要時間が短時間になる。
【0040】
本発明は、製品の外面に放熱シートを貼付する装置及び方法を説明した。この装置及び方法において、製品の外面に放熱シートを貼付した工程の後工程(最終工程)で、製品に放熱シートを貼付した状態を保持しつつ、放熱シートの表層から保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置及び方法について説明した。
【0041】
本発明に用いた三層構造体は、台紙、放熱シート、保護フィルムの三層の実施形態を示して説明したが、本発明としては、台紙に貼付される放熱シートに代わるシートは放熱機能以外の他の機能を有するシートであってもよい。
【0042】
本発明では、製品に貼付するシートを放熱シートの例について説明した。
本発明では、放熱シートから剥離するフィルムについて、保護機能以外の他の機能を有する剥離を最終工程で必要とするフィルムであってもよいし、フィルムでなく剥離を必要とする薄肉の剥離を要する被覆材であってもよい。
【0043】
本発明に用いた三層構造体は、上記実施形態のものに限られず、他の形状、材料、構造であってもよい。
【0044】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【0045】
本発明の保護フィルム剥離装置は、前記アクチュエータは、製品に貼付された放熱シートから保護フィルムを剥離するとき、前記掴み代の相対移動に伴い湾曲する保護フィルムのもつ撓み力により放熱シートを前記製品の外面(91)に押し付ける力が作用するように、製品に貼付された放熱シートに対し前記把持手段を移動する構成にしてもよい。
【0046】
本発明の保護フィルム剥離装置は、前記矢部材は、軸移動するとき前記放熱シートの前記角部に接触可能な第1テーパ面(54)と、台紙との干渉を防ぐ第2テーパ面(55)とを有する構成にしてもよい。これにより、台紙と保護フィルムの間で矢部材の進入時に矢部材が台紙の端面に引っ掛るのを回避することができる。
【0047】
本発明の保護フィルム剥離方法は、放熱シートの一面に台紙、他面に保護フィルムが貼付される三層構造体から台紙を剥がし、放熱シートの前記一面を製品に貼付し、放熱シートの前記他面から保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離方法であって、
前記三層構造体の前記放熱シートの角部を押し潰す工程と、押し潰された放熱シートの窪みに形成した保護フィルムの掴み代(400)を把持する工程と、前記三層構造体の台紙を剥がし、製品の外面に放熱シート及び保護フィルムを貼付する工程と、把持した保護フィルムの前記掴み代(把持部に相当)を、製品に貼付された放熱シートのシート面に沿って移動し、保護フィルムを剥離する工程と、を含む。これにより、保護フィルムの剥離時に放熱シートを製品の外面に押さえる外力が作用するから、放熱シートを持ち上げることなしに、保護フィルムを剥離することができる。
【0048】
本発明の保護フィルム剥離方法は、前記押し潰す工程の後工程において、台紙から放熱シート及び保護フィルムを切り出す工程を含む。これにより、保護フィルムの掴み代を把持することが容易にできるから、保護フィルムの剥離を円滑に行うことができる。
本発明の保護フィルム剥離方法は、放熱シートが押し潰される位置は放熱シートの端面角部(200)にしてもよい。これにより、保護フィルムの掴み代を形成しやすくなる。
【0049】
本発明の保護フィルム剥離方法は、前記保護フィルムを剥離する工程は、前記保護フィルムを湾曲して生ずる撓み力を利用して前記保護フィルムのみを剥離する。これにより、保護フィルムのもつ弾性を活用して放熱シートも一緒に剥離するのを防止することができる。
【0050】
本発明の保護フィルム剥離方法は、前記保護フィルムを剥離する工程は、製品に貼付されている放熱シートを製品の被貼付面(外面)に押し付ける工程と、放熱シートから保護フィルムを剥離する工程とを同時に行うことができる。これにより、放熱シートの製品への押し付け動作と、放熱シートからの保護フィルム剥離動作を同時に行うから、保護フィルムのみを損傷なしに剥離することができる。
【0051】
本発明の保護フィルム剥離方法は、前記保護フィルムを剥離する工程において、放熱シートに対し保護フィルムの把持部を移動するとき、保護フィルムの湾曲する形状から生まれる弾性力によって、製品の外面に直交する方向に製品上の放熱シートを保護フィルムが押す押し力を作用させることができる。
したがって、放熱シートを一緒に製品から持ち上げる力を打ち消す押し力が作用するから、製品と放熱シート間の粘着力よりも放熱シートと保護フィルム間の粘着力が大きい場合にも、放熱シートから保護フィルムを剥離することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 三層構造体、
2 放熱シート、
3 台紙、
4 保護フィルム、
5 6軸ロボット(アクチュエータ)、
9 ケース(製品)、
10 装置本体、
12 吸着手段、
13 吸着パッド、
30 チャック爪(把持手段)、
31 固定側チャック爪、
32 駆動側チャック爪、
40 矢装置、
49 設備台、
50 駆動シリンダ、
51 矢部材、
54 第1傾斜面(第1テーパ面)、
55 第2傾斜面(第2テーパ面)、
91 外面(被貼付面)、
201 窪み(凹部)、
400 掴み代(把持部)。