IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NSKステアリング&コントロール株式会社の特許一覧

特開2025-25485ラック軸およびステアリングギヤユニット
<>
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図1
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図2
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図3
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図4
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図5
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図6
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図7
  • 特開-ラック軸およびステアリングギヤユニット 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025485
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ラック軸およびステアリングギヤユニット
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20250214BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B62D3/12 501B
F16H19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130286
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋斗
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA07
3J062AB05
3J062AC07
3J062BA16
3J062BA27
3J062CA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐久性を確保しやすいラック軸、およびステアリングギヤユニットを提供する。
【解決手段】ラック部15は、外周面の円周方向1箇所位置に設けられた複数のラック歯17と、外周面のうち径方向に関して複数のラック歯17が設けられた部分と略反対側に位置する部分に設けられ、かつ、使用時にラックガイドと接触する被押圧面19a、19bと、外周面のうち、複数のラック歯17が設けられた部分および被押圧面19a、19bから円周方向に外れた部分であって、使用時に複数のラック歯17が設けられた部分および/または被押圧面19a、19bよりも上側に位置する部分に設けられた保油凹部20とを有する。保油凹部20は、少なくとも一部がラックガイドと径方向に対向する部分から外れた部分に開口している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一部にラック部を備え、
前記ラック部は、
外周面の円周方向1箇所位置に設けられた複数のラック歯と、
前記外周面のうち径方向に関して前記複数のラック歯が設けられた部分と略反対側に位置する部分に設けられ、かつ、使用時にラックガイドと接触する被押圧面と、
前記外周面のうち、前記複数のラック歯が設けられた部分および前記被押圧面から円周方向に外れた部分であって、使用時に前記複数のラック歯が設けられた部分および/または前記被押圧面よりも上側に位置する部分に設けられた保油凹部と
を有し、
前記保油凹部は、少なくとも一部が前記ラックガイドと径方向に対向する部分から外れた部分に開口している、
ラック軸。
【請求項2】
前記保油凹部の一部が、前記ラックガイドと径方向に対向する部分に開口するように設けられている、請求項1に記載のラック軸。
【請求項3】
前記ラック部は、前記外周面のうち、使用時に全体が前記ラックガイドと径方向に対向する部分に開口する補助保油凹部を有する、請求項1に記載のラック軸。
【請求項4】
前記ラック部は、前記外周面のうち、中心軸を含み、かつ、前記複数のラック歯の歯先面に直交する仮想平面に関して対称な位置に、疑似保油凹部を有する、請求項1に記載のラック軸。
【請求項5】
外周面の円周方向1箇所位置に複数のラック歯が設けられたラック部を有するラック軸と、
外周面に、前記複数のラック歯と噛合する複数のピニオン歯を有するピニオン軸と、
前記ピニオン軸との間で前記ラック軸を挟むように配置され、前記ラック軸を前記ピニオン軸に向けて押圧するラックガイドと、
を備え、
前記ラック軸が、請求項1~4のいずれかに記載のラック軸により構成されている、ステアリングギヤユニット。
【請求項6】
前記ラック軸と前記ラックガイドとの接触部が、前記保油凹部よりも下側に位置している、請求項5に記載のステアリングギヤユニット。
【請求項7】
前記複数のラック歯と前記複数のピニオン歯との噛合部が、前記保油凹部よりも下側に位置している、請求項5に記載のステアリングギヤユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラック軸、および、該ラック軸を備えるステアリングギヤユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操作する(回転させる)と、ステアリングホイールの回転は、ステアリングシャフトや中間シャフトを介して、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤユニットのピニオン軸に伝達される。ピニオン軸が回転することにより、ステアリングギヤユニットのラック軸が車両の幅方向に変位すると、1対のタイロッドが押し引きされて、操舵輪に舵角が付与される。
【0003】
ステアリングギヤユニットは、外周面の円周方向1箇所位置に、複数のラック歯を等間隔に設けてなるラック部を有するラック軸と、外周面に、前記複数のラック歯と噛合する複数のピニオン歯を有するピニオン軸とを備える。
【0004】
ステアリングギヤユニットでは、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部で動力伝達を行う際に、ラック軸とピニオン軸とに互いに離れる方向の力が作用する。
【0005】
前記ラック軸は、長尺部材であり、軸方向両側部分のみがハウジングに対して支持されているため、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部で動力伝達を行う際には、ラック部がピニオン軸から離れる方向に弾性的に撓み変形しやすい。このため、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部でのバックラッシュが増大して、耳障りな歯打ち音が発生しやすい。
【0006】
特開2019-218967号公報には、ラック軸を挟んでピニオン軸と反対側にラックガイドを配置し、該ラックガイドによりラック軸をピニオン軸に向けて弾性的に押圧する、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤユニットが開示されている。特開2019-218967号公報に記載のステアリングギヤユニットによれば、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部で動力伝達を行う際にも、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部でのバックラッシュの発生を低減することができ、歯打ち音の発生を防止することができる。
【0007】
ステアリングギヤユニットでは、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部、および、ラックガイドとラック軸との接触部のそれぞれが、グリースにより潤滑されている。
【0008】
特開2019-218967号公報に記載のステアリングギヤユニットでは、ラック軸のうち、ラック歯が設けられた部分の径方向反対側に位置する部分に、グリースを保持するための凹部が設けられている。これにより、グリースをラックガイドとラック軸との接触部に長期間にわたり供給することができて、ステアリングギヤユニットの耐久性を確保しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-218967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2019-218967号公報に記載のステアリングギヤユニットでは、ラックガイドとラック軸との接触部のうち、重力の作用方向に関して凹部よりも上側に位置する部分には、凹部内に保持されたグリースが供給されにくく、当該部分の潤滑状態を長期にわたり良好に維持することが難しい。このため、ステアリングギヤユニットの耐久性の確保が難しくなる可能性がある。
【0011】
本開示は、耐久性を確保しやすいラック軸、およびステアリングギヤユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様のラック軸は、軸方向一部にラック部を備える。
【0013】
前記ラック部は、
外周面の円周方向1箇所位置に設けられた複数のラック歯と、
前記外周面のうち径方向に関して前記複数のラック歯が設けられた部分と略反対側に位置する部分に設けられ、かつ、使用時にラックガイドと接触する被押圧面と、
前記外周面のうち、前記複数のラック歯が設けられた部分および前記被押圧面から円周方向に外れた部分であって、前記複数のラック歯が設けられた部分および/または前記被押圧面よりも上側に位置する部分に設けられた保油凹部と
を有する。
【0014】
特に、本開示の一態様のラック軸では、前記保油凹部は、少なくとも一部が前記ラックガイドと径方向に対向する部分から外れた部分に開口している。
【0015】
本開示の一態様のラック軸では、前記保油凹部の一部が、前記ラックガイドと径方向に対向する部分に開口するように設けられることができる。
【0016】
本開示の一態様のラック軸では、前記ラック部は、前記外周面のうち、使用時に全体が前記ラックガイドと径方向に対向する部分に開口する補助保油凹部を有することができる。
【0017】
本開示の一態様のラック軸では、前記ラック部は、前記外周面のうち、中心軸を含み、かつ、前記複数のラック歯の歯先面に直交する仮想平面に関して対称な位置に、疑似保油凹部を有することができる。
【0018】
本開示の一態様のステアリングギヤユニットは、
外周面の円周方向1箇所位置に複数のラック歯が設けられたラック部を有するラック軸と、
外周面に、前記複数のラック歯と噛合する複数のピニオン歯を有するピニオン軸と、
前記ピニオン軸との間で前記ラック軸を挟むように配置され、前記ラック軸を前記ピニオン軸に向けて押圧するラックガイドと、
を備える。
【0019】
特に、本開示の一態様のステアリングギヤユニットでは、前記ラック軸が、本開示の一態様のラック軸により構成されている。
【0020】
本開示の一態様のステアリングギヤユニットでは、前記ラック軸と前記ラックガイドとの接触部は、前記保油凹部よりも下側に位置することができる。
【0021】
本開示の一態様のステアリングギヤユニットでは、前記複数のラック歯と前記複数のピニオン歯との噛合部は、前記保油凹部よりも下側に位置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一態様のラック軸およびステアリングギヤユニットによれば、複数のラック歯と複数のピニオン歯との噛合部またはラックガイドとラック軸との接触部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができて、耐久性を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示の実施の形態の第1例のステアリングギヤユニットを組み込んだ電動パワーステアリング装置を示す模式図である。
図2図2は、第1例のステアリングギヤユニットの要部拡大断面図である。
図3図3は、ラック軸、ピニオン軸、およびラックガイドを模式的に示す断面図である。
図4図4は、本開示の実施の形態の第2例についての図3に相当する図である。
図5図5は、本開示の実施の形態の第3例についての図3に相当する図である。
図6図6は、本開示の実施の形態の第4例についての図3に相当する図である。
図7図7は、本開示の実施の形態の第5例についての図3に相当する図である。
図8図8は、本開示の実施の形態の第6例についての図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例として、本開示の一実施形態のラック軸を、デュアルピニオン式電動パワーステアリングシステムを備えるステアリング装置のステアリングギヤユニットに適用した例を、図1図3により説明する。
【0025】
ただし、本開示の一実施形態のラック軸は、デュアルピニオン式の電動パワーステアリングシステムを備えるステアリング装置を構成するステアリングギヤユニットのラック軸に限定されるものではなく、ピニオンアシスト式もしくはコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置を備えるステアリング装置を構成するステアリングギヤユニットのラック軸、または、電動パワーステアリング装置を備えていないステアリング装置を構成するステアリングギヤユニットのラック軸などに適用することもできる。
【0026】
以下の説明において、前後方向、上下方向、および左右方向は、ステアリング装置1が組み込まれた車両を水平な平坦面に載置した状態での車両の前後方向、上下方向、および左右方向を意味する。また、左右方向は、ラック軸10の軸方向と一致する。
【0027】
ステアリング装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリングシャフト3と、ステアリングコラム4と、2つの自在継手5a、5bと、中間シャフト6と、ステアリングギヤユニット7とを備える。
【0028】
ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト3の後側の端部に支持固定されている。
【0029】
ステアリングシャフト3は、車体に支持されたステアリングコラム4の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト3の前側の端部は、後側の自在継手5aと、中間シャフト6と、前側の自在継手5bとを介して、ステアリングギヤユニット7の操舵側ピニオン軸11にトルク伝達可能に接続されている。
【0030】
運転者がステアリングホイール2を回転させると、ステアリングホイール2の回転は、ステアリングシャフト3と2つの自在継手5a、5bと中間シャフト6とを介して、操舵側ピニオン軸11に伝達される。操舵側ピニオン軸11の回転は、該操舵側ピニオン軸11と噛合する、ステアリングギヤユニット7のラック軸10の直線運動に変換される。ラック軸10が直線運動すると、該ラック軸10の軸方向両側の端部に接続された1対のタイロッド8が押し引きされ、1対の操舵輪9にステアリングホイール2の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0031】
ステアリングギヤユニット7は、ラック軸10と、操舵側ピニオン軸11と、操舵側ラックガイド12と、アシスト側ピニオン軸13と、アシスト側ラックガイドとを備える。
【0032】
ラック軸10は、軸方向一方側(図1の右側)部分に、ラック部に相当する操舵側ラック部15を有し、かつ、軸方向他方側(図1の左側)部分にアシスト側ラック部16を有する。
【0033】
操舵側ラック部15の外周面の円周方向1箇所位置には、複数の操舵側ラック歯17が軸方向に関して等間隔または不等間隔に設けられている。本例では、複数の操舵側ラック歯17は、操舵側ラック部15の外周面のうち、前側かつ上側に位置する部分に設けられている。
【0034】
アシスト側ラック部16の外周面の円周方向1箇所位置には、複数のアシスト側ラック歯18が軸方向に関して等間隔または不等間隔に設けられている。本例では、複数のアシスト側ラック歯18は、アシスト側ラック部16の外周面のうち、前側かつ下側に位置する部分に設けられている。
【0035】
ただし、複数の操舵側ラック歯と複数のアシスト側ラック歯とのそれぞれは、任意の円周方向位置に形成することができる。複数の操舵側ラック歯の円周方向位置と、複数のアシスト側ラック歯の円周方向位置とを一致させることもできる。
【0036】
本例では、アシスト側ラック歯18の歯幅が、操舵側ラック歯17の歯幅よりも大きくなっている。ただし、アシスト側ラック歯の歯幅と操舵側ラック歯の歯幅とを同じにすることもできる。
【0037】
操舵側ラック部15は、外周面のうち、径方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分と略反対側に位置する部分に、操舵側被押圧面19a、19bを有する。また、アシスト側ラック部16は、外周面のうち、径方向に関して複数のアシスト側ラック歯18が形成された部分と略反対側に位置する部分に、アシスト側被押圧面を有する。
【0038】
本例では、操舵側被押圧面19a、19bは、円周方向に離隔して配置された2つの部分円筒面状の操舵側被押圧面19a、19bにより構成されている。本例では、2つの操舵側被押圧面19a、19bは、同一の仮想円筒面上に存在する。
【0039】
ただし、操舵側被押圧面は、1つの操舵側被押圧面により構成することもできる。
【0040】
操舵側ラック部15は、外周面のうち、複数の操舵側ラック歯17が設けられた部分および操舵側被押圧面19a、19bから円周方向に外れた部分であって、使用時に操舵側被押圧面19a、19bよりも上側に位置する部分に開口する保油凹部20を有する。本例では、保油凹部20全体が、使用時に被押圧面19a、19bよりも上側に位置する部分に開口している。
【0041】
具体的には、保油凹部20は、操舵側ラック部15の外周面のうち、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分と上側の操舵側被押圧面19aとの間部分に設けられている。
【0042】
保油凹部20は、少なくとも一部が操舵側ラックガイド12と径方向に対向する部分から外れた部分に開口している。本例では、保油凹部20全体が、操舵側ラックガイド12と径方向に対向する部分から外れた部分に開口している。
【0043】
具体的には、保油凹部20は、操舵側ラックガイド12と径方向に対向する部分から、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分に近い側にわずかに外れた部分に設けられている。
【0044】
本例では、保油凹部20は、操舵側ラック部15の軸方向全長にわたって伸長し、かつ、略矩形の断面形状を有する凹溝により構成されている。
【0045】
また、本例では、保油凹部20の円周方向両側の内側面のうちの下側、すなわち操舵側被押圧面19aに近い側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部21が設けられている。これに対し、保油凹部20の円周方向両側の内側面のうちの上側、すなわち操舵側ラック歯17が形成された部分に近い側の内側面の径方向外側の端部は、断面直角の角部により構成されている。
【0046】
なお、保油凹部は、ラック部の外周面の軸方向の複数箇所、好ましくは等間隔複数箇所に断続的に設けることもできる。また、保油凹部の断面形状は、特に限定されるものではなく、半円形、略三角形などの任意の形状とすることができる。
【0047】
操舵側ラック部15は、外周面のうち、ラック軸10の中心軸O10を含み、複数の操舵側ラック歯17の歯先面に直交する仮想平面αに関して保油凹部20と対称な位置に、疑似保油凹部22を有する。
【0048】
なお、ラック軸10の中心軸O10は、操舵側ラック部15およびアシスト側ラック部16から軸方向に外れた部分であって、ラック軸10のうちで円形の断面形状を有する部分の中心軸である。本例では、ラック軸10の中心軸O10は、操舵側被押圧面19a、19bの曲率中心に一致する。
【0049】
本例では、疑似保油凹部22は、操舵側ラック部15の外周面のうち、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分と下側の操舵側被押圧面19bとの間部分であって、操舵側ラックガイド12と対向する部分から、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分に近い側にわずかに外れた部分に設けられている。
【0050】
疑似保油凹部22は、仮想平面αに関して保油凹部20と対称な形状を有する。
【0051】
具体的には、疑似保油凹部22は、操舵側ラック部15の軸方向全長にわたって伸長し、かつ、略矩形の断面形状を有する凹溝により構成されている。疑似保油凹部22の円周方向両側の内側面のうちの下側、すなわち操舵側被押圧面19bに近い側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部23が設けられている。これに対し、疑似保油凹部22の円周方向両側の内側面のうちの上側、すなわち操舵側ラック歯17が形成された部分に近い側の内側面の径方向外側の端部は、断面直角の角部により構成されている。
【0052】
保油凹部20および疑似保油凹部22は、ラック軸10の外形形状を鍛造加工により成形する際に同時に成形される。
【0053】
ラック軸10は、自身の中心軸O10を左右方向に向け、かつ、軸方向両側の端部を、ハウジング24の左右方向両側の開口から突出させるようにして、ハウジング24の内側に軸方向の直線運動を可能に支持されている。なお、ハウジング24は、車体に対して支持固定されている。
【0054】
操舵側ピニオン軸11は、軸方向中間部外周面に、複数の操舵側ラック歯17と噛合する複数の操舵側ピニオン歯25を有する。複数の操舵側ラック歯17と複数の操舵側ピニオン歯25との噛合部は、グリースにより潤滑されている。
【0055】
操舵側ピニオン軸11は、自身の中心軸をラック軸10の中心軸O10に対してねじれの位置に配置し、かつ、先端側の半部を、ハウジング24の操舵側ピニオン収容部26の内側に、ラジアル軸受27a、27bにより回転のみ自在に支持されている。
【0056】
本例では、ラック軸10の中心軸O10と操舵側ピニオン軸11の中心軸とに直交する方向から見た場合に、ラック軸10の中心軸O10と操舵側ピニオン軸11の中心軸とが斜交している。ただし、ラック軸の中心軸と操舵側ピニオン軸の中心軸とを直交させることもできる。
【0057】
操舵側ラックガイド12は、操舵側ピニオン軸11との間でラック軸10を挟むように配置され、ラック軸10を操舵側ピニオン軸11に向けて弾性的に押圧する。これにより、複数の操舵側ラック歯17と複数の操舵側ピニオン歯25との噛合部のバックラッシュが解消され、かつ、該噛合部でのトルク伝達に伴ってラック軸10に加わる操舵側ピニオン軸11から離れる方向の力にかかわらず、複数の操舵側ラック歯17と複数の操舵側ピニオン歯25との噛合状態を適正に維持することができる。
【0058】
操舵側ラックガイド12は、先端部に操舵側押圧面28a、28bを有する。
【0059】
本例では、操舵側押圧面28a、28bは、ラック軸10の2つの操舵側被押圧面19a、19bのそれぞれに滑り接触する2つの部分円筒面状の操舵側押圧面28a、28bにより構成されている。また、操舵側押圧面28a、28bの曲率半径は、操舵側被押圧面19a、19bの曲率半径と略同じとなっている。したがって、2つの操舵側押圧面28a、28bは、それぞれのほぼ全面が、操舵側被押圧面19a、19bに接触する。
【0060】
ただし、操舵側押圧面28a、28bの曲率半径を、操舵側被押圧面19a、19bの曲率半径よりも大きくすることもできる。
【0061】
本例では、操舵側ラックガイド12は、先端部のうち、2つの操舵側押圧面28a、28b同士の間部分に、ラック軸10の軸方向に伸長する凹溝29を有する。
【0062】
ただし、操舵側押圧面は、1つの操舵側押圧面により構成することもできる。
【0063】
本例では、操舵側ラックガイド12は、自身の中心軸を、ラック軸10の中心軸と操舵側ピニオン軸11の中心軸とに直交する方向に配置するように、ハウジング24の操舵側ガイド収容部30の内側に、軸方向の移動を可能に収容されている。
【0064】
操舵側ガイド収容部30の開口部には、カバー31が螺着されている。操舵側ラックガイド12とカバー31との間には、弾性部材32が弾性的に圧縮された状態で挟持されている。本例では、弾性部材32は、コイルばねにより構成されている。ただし、弾性部材は、板ばねなどにより構成されることもできる。
【0065】
操舵側ラックガイド12は、弾性部材32が弾性復元しようとする力に基づいて、操舵側押圧面28a、28bにより操舵側被押圧面19a、19bを押圧する。
【0066】
運転者がステアリングホイール2を回転させることに伴い、ラック軸10が直線運動する際には、ラック軸10の操舵側被押圧面19a、19bが、操舵側ラックガイド12の操舵側押圧面28a、28bに対して滑り接触する。
【0067】
なお、本例では、操舵側ラック部15の外周面のうち、2つの操舵側被押圧面19a、19bの間に存在する部分は、操舵側ラックガイド12に接触していない。
【0068】
操舵側被押圧面19a、19bと操舵側押圧面28a、28bとの滑り接触部は、グリースにより潤滑されている。
【0069】
本例では、操舵側ラック部15の外周面のうち、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分と上側の操舵側被押圧面19aとの間部分に、グリースを保持するための保油凹部20が設けられている。換言すれば、操舵側被押圧面19a、19bと操舵側押圧面28a、28bとの滑り接触部が、保油凹部20よりも下側に位置する。
【0070】
保油凹部20に保持されたグリース、特に基油は、車両の走行やステアリングホイール2の操作に伴う振動、グリースの自重などにより、図3に矢印Aで示すように、操舵側ラック部15の外周面に沿って下側に移動して、操舵側被押圧面19a、19bと操舵側押圧面28a、28bとの滑り接触部に供給される。このため、操舵側被押圧面19a、19bと操舵側押圧面28a、28bとの滑り接触部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができて、耐久性を確保しやすくできる。
【0071】
本例では、保油凹部20は、操舵側ラック部15の外周面のうち、操舵側ラックガイド12と対向する部分から、円周方向に関して複数の操舵側ラック歯17が形成された部分に近い側にわずかに外れた部分に設けられている。このため、保油凹部20を設けたことによる操舵側被押圧面19a、19bと操舵側押圧面28a、28bとの接触面積の減少を防止することができる。
【0072】
また、本例では、保油凹部20の円周方向両側の内側面のうち、下側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部21が設けられている。このため、保油凹部20から下側に向けて、グリースを送り込みやすくできる。
【0073】
本例では、操舵側ラック部15の外周面のうち、仮想平面αに関して保油凹部20と対称な位置に、該仮想平面αに関して該保油凹部20と対称な形状を有する疑似保油凹部22が設けられている。このため、ラック軸10の外形形状を鍛造加工により成形する際に、金属材料の流動を円滑にできる。
【0074】
ただし、疑似保油凹部は省略することもできる。また、保油凹部および疑似保油凹部は切削加工により形成されることもできる。
【0075】
アシスト側ピニオン軸13は、外周面に、複数のアシスト側ラック歯18と噛合する複数のアシスト側ピニオン歯33を有する。複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部は、グリースにより潤滑されている。
【0076】
アシスト側ピニオン軸13は、自身の中心軸をラック軸10の中心軸に対してねじれの位置に配置し、かつ、先端側の半部を、ハウジング24のアシスト側ピニオン収容部の内側に回転のみ自在に支持されている。
【0077】
本例では、ラック軸10の中心軸とアシスト側ピニオン軸13の中心軸とに直交する方向から見た場合に、ラック軸10の中心軸とアシスト側ピニオン軸13の中心軸とが直交している。ただし、ラック軸の中心軸とアシスト側ピニオン軸の中心軸とを斜交させることもできる。
【0078】
アシスト側ピニオン軸13は、減速機34を介して電動モータ35により回転駆動される。
【0079】
本例では、減速機34は、ウォーム減速機により構成されている。具体的には、減速機34は、電動モータ35の出力軸にトルクの伝達を可能に接続されたウォーム36と、該ウォーム36と噛合し、かつ、アシスト側ピニオン軸13に支持固定されたウォームホイール37とを備える。
【0080】
電動モータ35は、操舵側ピニオン軸11の周囲に設けられたトルクセンサ38によって測定される操舵側ピニオン軸11の回転方向およびトルクに基づいて駆動制御される。
【0081】
電動モータ35の出力トルクは、減速機34とアシスト側ピニオン軸13とを介して、ラック軸10に付与される。これにより、運転者がステアリングホイール2を操作するために要する力が低減される。
【0082】
アシスト側ラックガイドは、アシスト側ピニオン軸13との間でラック軸10を挟むように配置され、ラック軸10をアシスト側ピニオン軸13に向けて弾性的に押圧する。これにより、複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部のバックラッシュが解消され、かつ、該噛合部でのトルク伝達に伴ってラック軸10に加わるアシスト側ピニオン軸13から離れる方向の力にかかわらず、複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合状態を適正に維持することができる。
【0083】
アシスト側ラックガイドによりラック軸10をアシスト側ピニオン軸13に向けて弾性的に押圧する部分の構成は、操舵側ラックガイド12によりラック軸10を操舵側ピニオン軸11に向けて弾性的に押圧する部分の構成と基本的に同じである。
【0084】
アシスト側ラックガイドは、先端部に、ラック軸10のアシスト側被押圧面に滑り接触するアシスト側押圧面を有する。
【0085】
アシスト側ラックガイドは、自身の中心軸を、ラック軸10の中心軸とアシスト側ピニオン軸13の中心軸とに直交する方向に配置するように、ハウジング24のアシスト側ガイド収容部の内側に、自身の軸方向の移動を可能に収容されている。
【0086】
アシスト側ガイド収容部の開口部には、カバーが螺着されている。アシスト側ラックガイドとカバーとの間には、弾性部材が弾性的に圧縮された状態で挟持されている。
【0087】
アシスト側ラックガイドは、弾性部材が弾性復元しようとする力に基づいて、アシスト側押圧面によりアシスト側被押圧面を押圧する。
【0088】
運転者がステアリングホイール2を回転させることに伴い、ラック軸10が直線運動する際には、ラック軸10のアシスト側被押圧面が、アシスト側ラックガイドのアシスト側押圧面に対して滑り接触する。
【0089】
アシスト側被押圧面とアシスト側押圧面との滑り接触部は、グリースにより潤滑されている。
【0090】
本開示を実施する場合、グリースを保持するための保油凹部を、操舵側ラック部15の外周面に加えて、あるいは、操舵側ラック部15の外周面に代えて、アシスト側ラック部16の外周面に設けることができる。
【0091】
保油凹部に保持されたグリースは、車両の走行やステアリングホイール2の操作に伴う振動、グリースの自重などにより、アシスト側ラック部16の外周面に沿って下側に移動して、アシスト側押圧面とアシスト側被押圧面との滑り接触部、および/または、複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部に供給される。
【0092】
複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部では、電動モータ35を動力源とする比較的大きな補助トルクが伝達される場合がある。したがって、複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部からラック軸10に加わる噛み合い反力も比較的大きくなって、アシスト側押圧面とアシスト側被押圧面との接触面圧も比較的大きくなる。
【0093】
このため、アシスト側ラック部16の外周面に保油凹部を設けることで、アシスト側押圧面とアシスト側被押圧面との滑り接触部、および/または、複数のアシスト側ラック歯18と複数のアシスト側ピニオン歯33との噛合部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持できれば、ステアリングギヤユニット7の耐久性確保の効果は大きくなる。
【0094】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例について、図4を用いて説明する。
【0095】
本例では、保油凹部20aの一部が、ラックガイド39と径方向に対向する部分から外れた部分に開口しており、保油凹部20aの一部(残部)が、ラックガイド39と径方向に対向する部分に開口している。具体的には、保油凹部20aの上側部分が、ラックガイド39と径方向に対向する部分から外れた部分に開口しており、保油凹部20aの下側部分が、ラックガイド39のうちで上側の押圧面42aから上側に外れた端部と径方向に対向している。
【0096】
本例によれば、ラック軸10aの直線運動またはピニオン軸40に対する遠近動に伴い、保油凹部20aに保持されたグリースを、ラック軸10aの被押圧面41aとラックガイド39の押圧面42aとの接触部に巻き込みやすくすることができる。このため、ラック軸10aの被押圧面41a、41bとラックガイド39の押圧面42a、42bとの滑り接触部の潤滑状態の維持を図りやすくすることができる。
【0097】
第2例についてのその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同じである。
【0098】
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例について、図5を用いて説明する。
【0099】
本例では、ラック部43は、外周面のうち、全体がラックガイド39と径方向に対向する部分に開口する補助保油凹部44を有する。
【0100】
本例では、補助保油凹部44は、ラック部43の外周面のうち、径方向に関してラック歯45が形成された部分と反対側の端部に設けられている。補助保油凹部44は、ラックガイド39の先端部のうち、2つの押圧面42a、42b同士の間に設けられた凹溝46と対向する。すなわち、ラック部43の外周面のうち、補助保油凹部44が設けられた部分は、ラックガイド39の先端部と接触しない。
【0101】
補助保油凹部44は、略矩形の断面形状を有する凹溝により構成されている。また、保油凹部20の断面積よりも小さい断面積を有する。
【0102】
本例によれば、補助保油凹部44により、被押圧面41a、41bと押圧面42a、42bとの滑り接触部にグリースを保持しやすくできて、滑り接触部の潤滑状態を良好な状態に維持しやすくすることができる。
【0103】
なお、補助保油凹部44は、ラック軸10bの外形形状を鍛造加工により成形する際に同時に成形することができる。この場合、補助保油凹部44の底面を、金型からラック軸10bを取り出す際に、ノックアウトピンを突き当てる面として利用することもできる。
【0104】
第3例についてのその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同じである。
【0105】
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例について、図6を用いて説明する。
【0106】
本例では、ラック部43aは、外周面のうち、下側かつ後側に位置する部分に、複数のラック歯45を有し、かつ、外周面のうち、径方向に関して複数のラック歯45が形成された部分と略反対側に位置する部分に、2つの被押圧面41a、41bを有する。
【0107】
また、ラック部43aは、外周面のうち、複数のラック歯45が形成された部分および被押圧面41a、41bから円周方向に外れた部分であって、使用時に複数のラック歯45とピニオン軸40に設けられた複数のピニオン歯47との噛合部よりも上側に位置する部分に開口する保油凹部20bを有する。
【0108】
具体的には、保油凹部20bは、ラック部43aの外周面のうち、円周方向に関して複数のラック歯45が設けられた部分と上側の被押圧面41aとの間部分であって、複数のラック歯45が設けられた部分から、円周方向に関して上側の被押圧面41aに近い側にわずかに外れた部分に設けられている。
【0109】
また、本例では、保油凹部20bの円周方向両側の内側面のうちの下側、すなわちラック歯45に近い側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部21aが設けられている。これに対し、保油凹部20bの円周方向両側の内側面のうちの上側、すなわち上側の被押圧面41aに近い側の内側面の径方向外側の端部は、断面直角の角部により構成されている。
【0110】
ラック部43aは、外周面のうち、ラック軸10aの中心軸O10を含み、複数のラック歯45の歯先面に直交する仮想平面αに関して保油凹部20bと対称な位置に、疑似保油凹部22aを有する。
【0111】
疑似保油凹部22aは、仮想平面αに関して保油凹部20bと対称な形状を有する。
【0112】
すなわち、疑似保油凹部22aの円周方向両側の内側面のうちの下側、すなわちラック歯45に近い側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部23aが設けられている。これに対し、疑似保油凹部22aの円周方向両側の内側面のうちの上側、すなわち下側の被押圧面41bに近い側の内側面の径方向外側の端部は、断面直角の角部により構成されている。
【0113】
本例によれば、保油凹部20bに保持されたグリースは、車両の走行やステアリングホイール2の操作に伴う振動、グリースの自重などにより、図6に矢印Aで示すように、ラック部43aの外周面に沿って下側に移動して、複数のラック歯45と複数のピニオン歯47との噛合部に供給される。このため、複数のラック歯45と複数のピニオン歯47との噛合部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができて、耐久性を確保しやすい。
【0114】
第4例についてのその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同じである。
【0115】
[第5例]
本開示の実施の形態の第5例について、図7を用いて説明する。
【0116】
本例では、ラック部43bは、外周面のうち、上側に位置する部分に、複数のラック歯45を有し、かつ、外周面のうち、複数のラック歯45が形成された部分と略径方向反対側に位置する下側部分に、2つの被押圧面41a、41bを有する。
【0117】
また、ラック部43bは、外周面のうちの水平方向両側の端部に、2つの保油凹部20cを有する。
【0118】
具体的には、一方の保油凹部20cは、ラック部43bの外周面のうち、円周方向に関してラック歯45が形成された部分と一方の被押圧面41aとの間部分であって、ラックガイド39と対向する部分から上側にわずかに外れた部分に設けられている。また、他方の保油凹部20cは、ラック部43bの外周面のうち、円周方向に関してラック歯45が形成された部分と他方の被押圧面41bとの間部分であって、ラックガイド39と対向する部分から上側にわずかに外れた部分に設けられている。
【0119】
また、本例では、それぞれの保油凹部20cの円周方向両側の内側面のうちの下側、すなわち被押圧面41a、41bに近い側の内側面の径方向外側の端部に、円弧形の断面形状を有する角R部21aが設けられている。これに対し、それぞれの保油凹部20cの円周方向両側の内側面のうちの上側、すなわちラック歯45に近い側の内側面の径方向外側の端部は、断面直角の角部により構成されている。
【0120】
2つの保油凹部20cに保持されたグリースは、車両の走行やステアリングホイール2の操作に伴う振動、グリースの自重などにより、図7に矢印Aで示すように、ラック部43bの外周面に沿って下側に移動して、被押圧面41a、41bと押圧面42a、42bとの滑り接触部に供給される。このため、被押圧面41a、41bと押圧面42a、42bとの滑り接触部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができて、耐久性を確保しやすい。
【0121】
第5例についてのその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同じである。
【0122】
[第6例]
本開示の実施の形態の第6例について、図8を用いて説明する。
【0123】
本例では、ラック部43cは、外周面のうち、前側に位置する部分に、複数のラック歯45を有し、かつ、外周面のうち、複数のラック歯45が形成された部分と径方向に関して略反対側に位置する後側部分に、2つの被押圧面41a、41bを有する。
【0124】
また、ラック部43cは、外周面のうち、円周方向に関して複数のラック歯45が設けられた部分と上側の被押圧面41aとの間部分であって、複数のラック歯45が設けられた部分および被押圧面41a、41bよりも上側に位置する上側の端部に、保油凹部20dを有する。
【0125】
また、本例では、保油凹部20dの円周方向両側の内側面の径方向外側の端部のそれぞれに、円弧形の断面形状を有する角R部21が設けられている。
【0126】
ラック部43cは、外周面のうち、ラック軸10bの中心軸O10を含み、複数のラック歯45の歯先面に直交する仮想平面αに関して保油凹部20dと対称な位置に、疑似保油凹部22bを有する。具体的には、疑似保油凹部22bは、ラック部43cの外周面の下側の端部に設けられている。
【0127】
疑似保油凹部22bは、仮想平面αに関して保油凹部20dと対称な形状を有する。
【0128】
すなわち、疑似保油凹部22bの円周方向両側の内側面の径方向外側の端部のそれぞれに、円弧形の断面形状を有する角R部23が設けられている。
【0129】
保油凹部20dに保持されたグリースは、車両の走行やステアリングホイール2の操作に伴う振動、グリースの自重などにより、図8に矢印AおよびAで示すように、ラック部43cの外周面に沿って下側に移動して、複数のラック歯45と複数のピニオン歯47との噛合部、および、被押圧面41a、41bと押圧面42a、42bとの滑り接触部に供給される。このため、複数のラック歯45と複数のピニオン歯47との噛合部の潤滑状態、および、被押圧面41a、41bと押圧面42a、42bとの滑り接触部の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができて、耐久性を確保しやすい。
【0130】
第6例についてのその他の部分の構成および作用効果は、第1例と同じである。
【符号の説明】
【0131】
1 ステアリング装置
2 ステアリングホイール
3 ステアリングシャフト
4 ステアリングコラム
5a、5b 自在継手
6 中間シャフト
7 ステアリングギヤユニット
8 タイロッド
9 操舵輪
10、10a、10b ラック軸
11 操舵側ピニオン軸
12 操舵側ラックガイド
13 アシスト側ピニオン軸
15 操舵側ラック部
16 アシスト側ラック部
17 操舵側ラック歯
18 アシスト側ラック歯
19a、19b 操舵側被押圧面
20、20a、20b、20c、20d 保油凹部
21、21a 角R部
22、22a、22b 疑似保油凹部
23、23a 角R部
24 ハウジング
25 操舵側ピニオン歯
26 操舵側ピニオン収容部
27a、27b ラジアル軸受
28a、28b 操舵側押圧面
29 凹溝
30 操舵側ガイド収容部
31 カバー
32 弾性部材
33 アシスト側ピニオン歯
34 減速機
35 電動モータ
36 ウォーム
37 ウォームホイール
38 トルクセンサ
39 ラックガイド
40 ピニオン軸
41a、41b 被押圧面
42a、42b 押圧面
43、43a、43b、43c ラック部
44 補助保油凹部
45 ラック歯
46 凹溝
47 ピニオン歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8