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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025488
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】移動量制限装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20250214BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20250214BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20250214BHJP
   F16D 125/36 20120101ALN20250214BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20250214BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16D65/18
F16D121:24
F16D125:36
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130291
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 学
【テーマコード(参考)】
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA57
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA61
3J058CC15
3J058CC52
3J058FA24
3J062AA41
3J062AB21
3J062CD22
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】ブレーキ部によるねじ軸の制動を解除するための構造を容易に形成することが可能な移動量制限装置を提供する。
【解決手段】この移動量制限装置100は、第1移動部材13と、第1移動部材13とともに軸方向に直線移動する第2移動部材14とを含む直線移動機構1と、第1移動部材13が軸方向の一方の移動制限位置Lpに移動したことに基づいて、当接する第2移動部材14によりねじ11の回転を停止させる制動力を発生させるブレーキ部2とを備える。第1移動部材13および第2移動部材14の各々の対向面136(145)には、制動の際に当接した第2移動部材14にブレーキ部2から伝達される力を利用してブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、軸方向に交差する傾斜方向に延びる傾斜面133(143)が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからの駆動力により回転するねじ軸と、前記ねじ軸の回転中心軸線の軸方向に沿って延びるガイド部と、前記ねじ軸に係合するねじ溝を有し、前記ねじ軸の回転により前記軸方向に直線移動する第1移動部材と、前記ガイド部に係合し、前記ねじ軸の回転により前記第1移動部材とともに前記軸方向に直線移動する第2移動部材とを含む直線移動機構と、
前記第1移動部材が前記軸方向の一方の移動制限位置に移動したことに基づいて、当接する前記第2移動部材により前記ねじ軸の回転を停止させる制動力を発生させるブレーキ部とを備え、
前記第1移動部材および前記第2移動部材の各々の前記軸方向に対向する対向面には、制動の際に当接した前記第2移動部材に前記ブレーキ部から伝達される力を利用して前記ブレーキ部による前記ねじ軸の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、前記軸方向に交差する傾斜方向に延びる傾斜面が形成されている、移動量制限装置。
【請求項2】
前記第1移動部材および前記第2移動部材は、前記傾斜方向に直交する方向において、球を介して前記傾斜面同士が互いに点接触するボールランプ部か、または、前記傾斜面同士が互いに面接触するジョークラッチ部を有する、請求項1に記載の移動量制限装置。
【請求項3】
前記第1移動部材および前記第2移動部材は、前記球を収容するために前記軸方向において対向する前記傾斜面を1組以上有する前記ボールランプ部か、または、前記傾斜方向に直交する方向において対向する前記傾斜面を1組以上有する前記ジョークラッチ部を有する、請求項2に記載の移動量制限装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記回転中心軸線の周方向に沿って前記ねじ軸の周囲に等角度間隔で配置されている、請求項1に記載の移動量制限装置。
【請求項5】
前記第1移動部材が前記移動制限位置に移動して前記第2移動部材が前記ブレーキ部に当接した際に弾性変形する付勢部材をさらに備え、
前記付勢部材からの付勢力と、前記軸方向の他方に向かって前記第1移動部材を移動させる際に前記モータから前記ねじ軸に伝達されるモータトルクとにより、前記第1移動部材の前記傾斜面を、前記第2移動部材の前記傾斜面に対して前記回転中心軸線回りの周方向に相対的に回転させることによって、前記ブレーキ部による前記回転停止状態を解除するように構成されている、請求項1に記載の移動量制限装置。
【請求項6】
前記モータトルクと、前記軸方向の他方に向かう前記付勢部材の前記付勢力を前記傾斜面により前記周方向のトルクに変換した変換トルクとを加えたトルクは、前記ブレーキ部において前記付勢部材の前記付勢力により生じるブレーキトルクよりも大きい、請求項5に記載の移動量制限装置。
【請求項7】
前記直線移動機構は、前記移動制限位置において前記第1移動部材と係合する係合部をさらに含み、
前記第1移動部材は、前記回転停止状態から解除される際、前記係合部により前記ねじ軸と一体的に回転するとともに、前記第2移動部材は、前記回転停止状態から解除される際、前記ガイド部により前記周方向の回転が制限されている、請求項5に記載の移動量制限装置。
【請求項8】
航空機の前記モータに接続されるシャフトの回転量を制限する、請求項1に記載の移動量制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動量制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動量制限装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ねじ駆動装置(移動量制限装置)が開示されている。このねじ駆動装置は、直線移動機構と、ブレーキ部とを備えている。直線移動機構は、モータと、被駆動ねじ軸と、移動ナット組立体とを含んでいる。被駆動ねじ軸は、モータから伝達されるモータトルクにより回転する。移動ナット組立体は、被駆動ねじ軸の回転に伴って、直線移動するように構成されている。ブレーキ部は、直線移動する移動ナット組立体が移動制限位置に到達した際、被駆動ねじ軸の回転を制動させるように構成されている。
【0004】
上記特許文献1の移動ナット組立体は、内方ナット部分と、外方ナット部分と、連結ピンとを含んでいる。内方ナット部分の内周面には、被駆動ねじ軸に係合する内側ねじ溝が形成されている。内方ナット部分の外周面には、外方ナット部分に係合する外側ねじ溝が形成されている。外方ナット部分の内周面には、内方ナット部分の外周面の外側ねじ溝に係合するねじ溝が形成されている。連結ピンは、内方ナット部分と外方ナット部分とを連結している。
【0005】
上記特許文献1の内方ナット部分の内側ねじ溝は、移動ナット組立体とブレーキ部とが移動制限位置において当接した際にかかる荷重により被駆動ねじ軸に強固に締めこまれるように、細かなピッチで形成されている。これにより、移動ナット組立体とブレーキ部とが当接した状態が保持されるので、移動ナット組立体から伝達される荷重によりブレーキ部が被駆動ねじ軸の回転を制動する。
【0006】
ここで、上記特許文献1の内方ナット部分の外側ねじ溝および外方ナット部分のねじ溝の各々は、内方ナット部分の内側ねじ溝よりも広いピッチで形成されている。これにより、内方ナット部分の内側ねじ溝が被駆動ねじ軸に強固に締めこまれた状態でも、外方ナット部分の内周面のねじ溝に沿って、内方ナット部分が被駆動ねじ軸と一体的に回転する。
【0007】
ここで、上記特許文献1のねじ駆動装置では、内方ナット部分が被駆動ねじ軸と一体的に回転すると、連結ピンも内方ナット部分とともに一体的に回転する。そして、連結ピンは、外側ナット部分との隙間の分だけ回転して外側ナット部分に周方向に当接する。この際、周方向に当接したことにより外側ナット部分から連結ピンを介して内方ナット部分に周方向の反力が伝達される。この周方向の反力を利用して、内方ナット部分の内側ねじ溝の被駆動ねじ軸に対する締めこみの解除が行われる。これにより、移動ナット組立体とブレーキ部とが当接した状態が解除されるので、ブレーキ部による被駆動ねじ軸の制動が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭57-36459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のねじ駆動装置では、ブレーキ部による被駆動ねじ軸の制動が解除するために、内方ナット部分の外周面および外方ナット部分の内周面という比較的面積が小さく、かつ、加工を行いにくい部分に、ねじ溝を形成しなくてはならない。このため、上記特許文献1のねじ駆動装置では、ブレーキ部による被駆動ねじ軸(ねじ軸)の制動を解除(回転停止状態を解除)するための構造を形成することに手間がかかるという問題点がある。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ブレーキ部によるねじ軸の回転停止状態を解除するための構造を容易に形成することが可能な移動量制限装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における移動量制限装置は、モータからの駆動力により回転するねじ軸と、ねじ軸の回転中心軸線の軸方向に沿って延びるガイド部と、ねじ軸に係合するねじ溝を有し、ねじ軸の回転により軸方向に直線移動する第1移動部材と、ガイド部に係合し、ねじ軸の回転により第1移動部材とともに軸方向に直線移動する第2移動部材とを含む直線移動機構と、第1移動部材が軸方向の一方の移動制限位置に移動したことに基づいて、当接する第2移動部材によりねじ軸の回転を停止させる制動力を発生させるブレーキ部とを備え、第1移動部材および第2移動部材の各々の軸方向に対向する対向面には、制動の際に当接した第2移動部材にブレーキ部から伝達される力を利用してブレーキ部によるねじ軸の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、軸方向に交差する傾斜方向に延びる傾斜面が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
上記一の局面における移動量制限装置において、第1移動部材および第2移動部材の各々の軸方向に対向する対向面には、制動の際に当接した第2移動部材にブレーキ部から伝達される力を利用してブレーキ部によるねじ軸の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、軸方向に交差する傾斜方向に延びる傾斜面が形成されている。これにより、傾斜面が、第1移動部材および第2移動部材の各々の対向面という比較的面積を確保しやすく、かつ、加工を行いやすい部分に形成されている。また、傾斜面は、ねじ構造のような比較的小さな傾斜面を多数形成する構造でもない。その結果、移動量制限装置において、ブレーキ部による被駆動ねじ軸の制動を解除するための構造(傾斜面)を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の航空機の航空機システムの一部を示した模式図である。
図2】第1実施形態の移動量制限装置を示した断面図である。
図3】第1実施形態の移動量制限装置の第1移動部材、球および第2移動部材の模式的な分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】第1実施形態の移動量制限装置において第2移動部材がブレーキ部に当接した状態を示した断面図である。
図6】第1実施形態の移動量制限装置において第2移動部材が第1付勢部材をさらに圧縮した状態を示した断面図である。
図7】第1実施形態の移動量制限装置において第2移動部材が第1付勢部材をさらに圧縮した状態において係合部からボールランプ部に伝達するトルクを示した断面図である。
図8】第1実施形態の移動量制限装置においてボールランプ部により回転停止状態を解除した状態を示した断面図である。
図9図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図9のX-X線に沿った断面図である。
図11】第2実施形態の航空機の航空機システムの一部を示した模式図である。
図12】第2実施形態の移動量制限装置における図10の部分に相当する部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、図1図10を参照して、本発明の第1実施形態による移動量制限装置100の構成について説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1において、移動量制限装置100は、航空機Arの舵面500(たとえば、スラットなど)の移動を制限する装置として航空機システム1000に設けられている。
【0017】
ここで、航空機Arの進行方向をX方向とし、X方向のうち前進方向をX1方向とし、X方向のうち後進方向をX2方向とする。航空機Arの左右方向をY方向とし、Y方向のうち右方向をY1方向とし、Y方向のうち左方向をY2方向とする。航空機Arの上下方向をZ方向とし、Z方向のうち上方向をZ1方向とし、Z方向のうち下方向をZ2方向とする。
【0018】
航空機システム1000は、移動量制限装置100と、モータ200と、一対の第1シャフト300と、一対の第2シャフト400と、複数(4つ)の舵面500と、複数(8つ)のアクチュエータ600と、制御装置700とを備えている。なお、第1シャフト300は、特許請求の範囲の「シャフト」の一例である。また、舵面500は、1~3、または、5つ以上であってもよい。また、アクチュエータ600は、左右一対で対称であれば、2つ、4つ、6つ、または、10つ以上であってもよい。
【0019】
移動量制限装置100は、モータ200と、一対の第1シャフト300のY1方向側の第1シャフト300との接続部分に配置されている。なお、移動量制限装置100の詳細な構成は後に詳細に説明する。
【0020】
モータ200は、一対の第1シャフト300および一対の第2シャフト400を同期させて一体的に回転させる駆動力を発生させる駆動源である。モータ200は、一対の第1シャフト300に連結されている。モータ200は、減速機構(図示せず)などで必要に応じて変速される。モータ200は、航空機Arの胴体部分に配置されている。
【0021】
一対の第1シャフト300の一方は、Y1方向に沿って延びているとともに、一対の第2シャフト400の一方に連結されている。一対の第2シャフト400の一方は、複数のアクチュエータ600の各々において分割されるとともに、複数のアクチュエータ600の各々において連結された状態で延びている。
【0022】
一対の第1シャフト300の他方は、Y2方向に沿って延びているとともに、一対の第2シャフト400の他方に連結されている。一対の第2シャフト400の他方は、複数のアクチュエータ600の各々において分割されるとともに、複数のアクチュエータ600の各々において連結された状態で延びている。
【0023】
複数(4つ)の舵面500の各々は、揚力を調整するための、風を受ける面を有している。複数のアクチュエータ600は、モータ200により回転する一対の第1シャフト300および一対の第2シャフト400から伝達される駆動力により舵面500を移動させるとともに、舵面500の移動位置を保持するように構成されている。複数のアクチュエータ600の各々は、図示は省略するが、減速機構、回転角度センサおよびブレーキ機構などを有している。複数のアクチュエータ600は、一例として、2つずつ1つの舵面500に接続されている。
【0024】
制御装置700は、フライトコントロールコンピュータである。制御装置700は、モータ200、および、アクチュエータ600の各々に電気的に接続されている。制御装置700は、モータ200、および、アクチュエータ600の各々を制御し、舵面500が所定の動作をするように構成されている。
【0025】
(移動量制限装置)
移動量制限装置100は、航空機Arのモータ200に接続される第1シャフト300の回転量を制限するように構成されている。すなわち、移動量制限装置100は、モータ200による第1シャフト300のオーバーランを防止する装置である。
【0026】
図2に示すように、移動量制限装置100は、直線移動機構1と、ブレーキ部2と、第1付勢部材3とを含んでいる。なお、第1付勢部材3は、特許請求の範囲の「付勢部材」の一例である。
【0027】
(直線移動機構)
直線移動機構1は、モータ200から伝達されるモータトルクMtにより直線的な移動を実現する機構である。具体的には、直線移動機構1は、ねじ11と、ガイド部12と、第1移動部材13と、第2移動部材14と、係合部15と、第2付勢部材16とを含んでいる。なお、ねじ11は、特許請求の範囲の「ねじ軸」の一例である。また、移動量制限装置100では、ねじ11ではなく、ボールねじなどの他の態様のねじ軸を用いてもよい。
【0028】
ここで、ねじ11の回転中心軸線C回りの周方向をR方向とし、R方向のうちの一方向をR1方向とし、R方向のうちの他方向をR2方向とする。回転中心軸線Cの延びる方向に直交する径方向をD方向とし、D方向のうちの外側をD1方向とし、D方向のうちの内側をD2方向とする。
【0029】
ねじ11は、モータ200からの駆動力によりR1方向およびR2方向の各々に回転するとともに、第1シャフト300をR1方向およびR2方向の各々に回転させるように構成されている。ねじ11のY2方向側の端部は、モータ200の減速機構などに接続されている。ねじ11のY1方向側の端部は、第1シャフト300に接続されている。
【0030】
ねじ11は、スプライン溝111と、ねじ溝112とを有している。
【0031】
スプライン溝111は、Y方向に沿って延びる溝である。スプライン溝111は、ねじ11におけるY2方向側に形成されている。スプライン溝111には、ブレーキ部2の後述するねじ軸側制動部材21が、Y1方向およびY2方向の各々に直線移動するとともに、R1方向およびR2方向に回転するように、R方向において係合されている。
【0032】
ねじ溝112は、Y方向に対して交差する方向に傾斜した溝である。ねじ溝112は、ねじ11におけるY1方向側に形成されている。ねじ溝112には、第1移動部材13が、Y1方向およびY2方向の各々に直線移動するように、Y方向において係合されている。
【0033】
スプライン溝111とねじ溝112との間のR方向に沿った外周面には、係合部15が形成されている。
【0034】
ガイド部12は、ねじ11の回転による第1移動部材13および第2移動部材14のY1方向およびY2方向の各々の移動をガイドする。ガイド部12は、Y方向(ねじ11の回転中心軸線Cの軸方向)に沿って延びるガイド溝121を有している。ガイド溝121は、ガイド部12のD2方向側の内面に形成されている。ガイド溝121には、第2移動部材14が、Y1方向およびY2方向の各々に直線移動するとともに、R1方向およびR2方向に回転しないように、R方向において係合されている。
【0035】
(第1移動部材および第2移動部材)
第1移動部材13は、ねじ11の回転によりY1方向およびY2方向の各々に直線移動するように構成されている。
【0036】
具体的には、図3に示すように、第1移動部材13は、本体部131と、ねじ溝132と、複数(3つ)の傾斜面133と、係合部134と、球135とを有している。なお、傾斜面133は、1つ、2つ、または、4つ以上設けられてもよい。
【0037】
図3および図4に示すように、本体部131は、円筒形状を有している。ねじ溝132は、ねじ11に係合する溝である。ねじ溝132は、ねじ11のねじ溝112に合わせてY方向に交差する方向に傾斜している。
【0038】
複数の傾斜面133の各々は、球135を内部に保持するための円錐形状の空間を構成する面である。複数の傾斜面133の各々は、球135にY1方向側から当接する面である。
【0039】
係合部134は、係合部15にR方向において互いに係合するように構成されている。球135は、第1移動部材13と第2移動部材14とにより保持されている。
【0040】
図2に示すように、第2移動部材14は、ねじ11の回転により第1移動部材13とともにY1方向およびY2方向の各々(軸方向)に直線移動するように構成されている。このような第2移動部材14は、上記したように、ガイド部12に係合している。
【0041】
具体的には、第2移動部材14は、本体部141と、スプライン溝142と、複数(3組)の傾斜面143と、取付部144とを有している。なお、傾斜面143は、1組、2組、または、4組以上設けられてもよい。
【0042】
図3および図4に示すように、本体部141は、円筒形状を有している。スプライン溝142は、ガイド溝121にR方向において係合する溝である。スプライン溝142は、ガイド溝121に合わせてY方向に延びている。
【0043】
複数の傾斜面143の各々は、球135を内部に保持するための円錐形状の空間を構成する面である。複数の傾斜面143の各々は、球135にY2方向側から当接する面である。
【0044】
図2に示すように、取付部144は、第1移動部材13のY1方向側の部分を、Y1方向側から覆うように突出している。取付部144は、第2付勢部材16を第2移動部材14に取り付けるための部分である。
【0045】
(係合部および第2付勢部材)
係合部15は、移動制限位置Lp(図5を参照)において第1移動部材13の係合部134と係合するように構成されている。係合部15と係合部134とは、係合するドグストップを構成している。これにより、第1移動部材13は、係合部15と係合部134とが係合している場合、ねじ11と一体的にR1方向およびR2方向の各々に回転する。
【0046】
第2付勢部材16は、圧縮バネにより構成されている。第2付勢部材16は、第2移動部材14に対する第1移動部材13のY方向における相対的な位置を保持するために、第1移動部材13を第2移動部材14側に付勢している。これにより、第1移動部材13と第2移動部材14との相対的な位置は、第1移動部材13の複数の傾斜面133の各々と、第2移動部材14の複数の傾斜面143とにより球135を内部に保持されるような位置に維持されている。
【0047】
(ブレーキ部)
図5に示すように、ブレーキ部2は、第1移動部材13がY方向の移動制限位置Lpに移動したことに基づいて、当接する第2移動部材14によりねじ11の回転を停止させる制動力を発生させるように構成されている。
【0048】
具体的には、ブレーキ部2は、ねじ軸側制動部材21と、ガイド部側制動部材22とを有している。ねじ軸側制動部材21は、ねじ11のスプライン溝111にY1方向およびY2方向の各々に移動するように取り付けられている。ガイド部側制動部材22は、ガイド部12のガイド溝121にY1方向およびY2方向の各々に移動するように複数取り付けられている。ねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22の各々は、Y1方向側から視て、環状に形成されている。ねじ軸側制動部材21は、2つのガイド部側制動部材22同士の間に配置されている。これにより、ガイド部側制動部材22が第2移動部材14とともにY2方向側に移動した際、ねじ軸側制動部材21がガイド部側制動部材22に挟持されることにより、ねじ軸側制動部材21とガイド部側制動部材22との間に発生する摩擦力によって、ねじ11の回転を制動させる制動力が発生する。このため、第1移動部材13のY2方向への移動が停止するので、第1移動部材13のY2方向への移動が移動制限位置Lpにおいて制限される。
【0049】
ここで、ねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22の各々は、互いに当接することにより制動力を発生させる、D方向に沿った平面状制動面を有している。平面状制動面は、ねじ軸側制動部材21がガイド部側制動部材22に挟持される際、ねじ軸側制動部材21とガイド部側制動部材22とが接触する面である。
【0050】
(第1付勢部材)
第1付勢部材3は、圧縮バネにより構成されている。第1付勢部材3は、第1移動部材13が移動制限位置Lpに移動して第2移動部材14がブレーキ部2に当接した際に弾性変形するように構成されている。
【0051】
また、第2移動部材14がブレーキ部2に当接した後、図6および図7に示すように、第1付勢部材3には、上記衝撃力だけでなく、モータ200のストールトルクと、第1シャフト300の回転が停止したことに伴う第1シャフト300などの構成品の衝撃トルクとが、押圧トルクTrpとして、ねじ11、第1移動部材13、第2移動部材14およびブレーキ部2を介して伝達される。これにより、第1付勢部材3は、さらに圧縮される。このように、第1付勢部材3は、第2移動部材14からブレーキ部2に伝達される当接した際の衝撃力だけでなく、ストールトルクを緩衝する緩衝部材である。ストールトルクとは、装置を停止した状態から駆動させるために必要とされるモータの最大トルクを示す。
【0052】
ここで、上記した説明では、Y2方向側に移動制限位置Lpが設けられている場合について説明したが、移動制限位置Lpは、Y2方向側だけでなく、Y1方向側にも設けることができる。Y1方向側およびY2方向側の各々の移動制限位置Lpのブレーキ部2を含む構造は、同じ構造が設けられていてもよいし、一方側にのみブレーキ部2を含む構造を設けて、他方側に加えられた上記衝撃力、モータ200のストールトルクおよび衝撃トルクが一方側の構造に伝達するような構造を有していてもよい。
【0053】
以下の説明では、Y2方向側の移動制限位置Lpに関してのみ説明する。
【0054】
(ボールランプ部)
ここで、図8に示すように、第1実施形態の第1移動部材13および第2移動部材14は、Y方向に対して交差する方向である傾斜方向において、球135を介して、傾斜面133および傾斜面143同士が互いに点接触するボールランプ部17を構成する。具体的には、第1移動部材13および第2移動部材14は、球135を収容するためにY方向(軸方向)において対向する傾斜面133および傾斜面143を有するボールランプ部17を構成する。ボールランプ部17では、Y方向に対向する傾斜面133および傾斜面143の組は3組設けられているが(図3を参照)、傾斜面133および傾斜面143の組は、1組、2組、または、4組以上設けられてもよい。ボールランプ部17の詳細な構造について以下に説明する。
【0055】
ボールランプ部17の傾斜面133および傾斜面143は、それぞれ、制動の際に当接した第2移動部材14にブレーキ部2から伝達される力を利用してブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態を解除するために、第1移動部材13の対向面136(図9を参照)および第2移動部材14の対向面145(図9を参照)に形成されている。第1移動部材13の対向面136と、第2移動部材14の対向面145とは、Y方向において対向する面である。
【0056】
また、傾斜面133および傾斜面143の各々は、ねじ構造ではない。すなわち、第1移動部材13と第2移動部材14とは、Y方向において、所定のピッチのねじ溝同士で係合されていない。また、第1移動部材13の傾斜面133および第2移動部材14の傾斜面143の傾斜方向の長さLe(図9を参照)は、第1付勢部材3の圧縮時に球135が外れない十分な長さを有している。すなわち、長さLeは、第1付勢部材3の圧縮時の圧縮ストローク(最大伸縮量)よりも大きい長さを有している。傾斜角度θは、一般的に45°程度であるが、解除に必要な力の釣合いに応じて容易に変更できる。
【0057】
第1移動部材13の傾斜面133および第2移動部材14の傾斜面143の各々は、R方向に沿ったねじ11の周囲に等角度間隔で配置されている(図3を参照)。
【0058】
(ボールランプ部を利用した回転停止状態の解除)
図8に示すように、移動量制限装置100では、第1付勢部材3からの付勢力Pと、モータトルクMtとにより、第1移動部材13の傾斜面133を、第2移動部材14の傾斜面143に対してR1方向(またはR2方向)に相対的に回転させることによって、ブレーキ部2による回転停止状態を解除するように構成されている。
【0059】
具体的には、モータトルクMtと、Y1方向に向かう第1付勢部材3の付勢力Pを傾斜面133および傾斜面143によりR方向のトルクに変換した変換トルクCtとを加えたトルクは、ブレーキ部2において第1付勢部材3の付勢力Pにより生じるブレーキトルクBtよりも大きい。ここで、図8では、R1方向のモータトルクMt、R1方向の変換トルクCtおよびR2方向のブレーキトルクBtを一例として示しているが、R2方向のモータトルクMt、R2方向の変換トルクCtおよびR1方向のブレーキトルクBtも想定されている。以下の説明では、R1方向のモータトルクMt、R1方向の変換トルクCtおよびR2方向のブレーキトルクBtを例示して説明する。
【0060】
モータトルクMtは、Y1方向(軸方向の他方)に向かって第1移動部材13を移動させる際にモータ200からねじ11に伝達されるトルクである。
【0061】
ブレーキトルクBtは、第1付勢部材3の付勢力Pにより付勢された状態で、第1付勢部材3と第2移動部材14とにより挟持されたねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22により生じるR1方向の摩擦力により発生するトルクである。すなわち、Bt=μB×P×rBにより算出される。ここで、μBは、ねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22の静摩擦係数である。rBは、ねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22の各々が互いに接触する有効半径である。
【0062】
次に、図9および図10を参照して、変換トルクCtについて説明する。
【0063】
変換トルクCtは、モータトルクMtと同じ方向のR2方向のトルクであり、モータトルクMtのアシスト接線力により発生するトルクである。まず、第1付勢部材3の付勢力Pが、ブレーキ部2および第2移動部材14を介して球135に伝達されるとともに、球135と第1移動部材13の傾斜面133との接点に伝達される。接点において、付勢力P/tanθによりX方向の成分である接線力Frが算出される。そして、接線力Frとねじ11の回転中心軸線CからのD方向における半径Rrampとを乗算することにより(Fr×Rramp)、R2方向の変換トルクCtが算出される。
【0064】
そして、図8に示すように、R2方向のモータトルクMtがねじ11に加えられた場合、第1移動部材13にはモータトルクMtと変換トルクCtとが加えらえる。これにより、モータトルクMtと変換トルクCtとを加えたトルクは、ブレーキトルクBtよりも大きいので、第1移動部材13は、ブレーキトルクBtに抗してR2方向に回転した後、Y1方向に移動する。したがって、ブレーキ部2によるねじ11の制動が解除される。
【0065】
すなわち、第1移動部材13は、回転停止状態から解除される際、係合部15によりねじ11と一体的に回転する。また、第2移動部材14は、回転停止状態から解除される際、ガイド部12によりR方向の回転が制限されている。これにより、第1移動部材13は、モータトルクMtと変換トルクCtとを加えたトルクにより、ねじ11と一体的にR1方向に回転する。また、この際、ねじ軸側制動部材21およびガイド部側制動部材22の各々は、図示しないばねにより元の位置に戻る。
【0066】
(第1実施形態の効果)
第1施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、第1移動部材13および第2移動部材14の各々のY方向(軸方向)に対向する対向面136および対向面145には、制動の際に当接した第2移動部材14にブレーキ部2から伝達される力を利用してブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、Y方向(軸方向)に交差する傾斜方向に延びる傾斜面133および傾斜面143が形成されている。これにより、傾斜面133および傾斜面143が、第1移動部材13および第2移動部材14の各々の対向面136および対向面145という比較的面積を確保しやすく、かつ、加工を行いやすい部分に形成されている。また、傾斜面133および傾斜面143は、ねじ構造のような比較的小さな傾斜面を多数形成する構造でもない。この結果、移動量制限装置100において、ブレーキ部2によるねじ11の制動を解除するための構造(傾斜面133および傾斜面143)を容易に形成することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、第1移動部材13および第2移動部材14は、傾斜方向に直交する方向において、球135を介して傾斜面133および傾斜面143同士が互いに点接触するボールランプ部17を有している。これにより、ねじ11の回転停止状態を解除するための構造をボールランプ部17により実現することができるので、ねじ11の回転停止状態を解除するための構造を比較的容易に実現することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、第1移動部材13および第2移動部材14は、球135を収容するためにY方向において対向する傾斜面133および傾斜面143を1組以上有するボールランプ部17を有している。これにより、多数のねじ溝を有するねじ構造と比較して、傾斜面133および傾斜面143の各々の数の増加を抑制することができるので、ボールランプ部17の構造の複雑化を抑制することができる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、第1移動部材13および第2移動部材14は、球135を収容するために傾斜方向に直交する方向において対向する傾斜面133および傾斜面143を有するボールランプ部17を有している。これにより、傾斜面133および傾斜面143を設けるだけでよいので、ねじ溝を有するねじ構造と比較して、第1移動部材13および第2移動部材14の各々の対向面136および対向面145に傾斜面133および傾斜面143の角度を大きく設定することができる。これにより、Y1方向に向かう第1付勢部材3の付勢力PからR方向のトルクに変換した変換トルクCtを大きくし、ブレーキ部2によるねじ11の制動を確実に解除することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、傾斜面133および傾斜面143は、回転中心軸線CのR方向(周方向)に沿ってねじ軸11の周囲に等角度間隔で配置されている。これにより、ねじ11の回転に伴ってボールランプ部17の傾斜面133および傾斜面143に収容された球135において生じるモーメントを釣り合うように球135を配置することができるので、ねじ11の回転に伴ってボールランプ部17を円滑に回転させることができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、移動量制限装置100は、第1移動部材13が移動制限位置Lpに移動して第2移動部材14がブレーキ部2に当接した際に弾性変形する第1付勢部材3を備えている。第1付勢部材3からの付勢力Pと、Y方向(軸方向)の他方に向かって第1移動部材13を移動させる際にモータ200からねじ11に伝達されるモータトルクMtとにより、第1移動部材13の傾斜面133および傾斜面143を、第2移動部材14の傾斜面133および傾斜面143に対して回転中心軸線C回りのR方向(周方向)に相対的に回転させることによって、ブレーキ部2による回転停止状態を解除するように構成されている。ここで、モータ200のモータトルクMtおよび第2移動部材14との衝撃力などを合成した強めの力で第1付勢部材3が圧縮された場合、第1付勢部材3の付勢力Pが強くなるので、第1付勢部材3の付勢力Pに基づくブレーキ部2のR方向(周方向)のブレーキトルクBtが大きくなる。このような場合、モータトルクMtよりもブレーキトルクBtが大きくなってしまうことがあるが、第1付勢部材3からの付勢力Pを利用することにより、付勢力Pを利用した分だけブレーキトルクBtに抗するトルクを大きくすることができる。この結果、ブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態をより確実に解除することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、モータトルクMtと、Y方向(軸方向)の他方に向かう第1付勢部材3の付勢力Pを傾斜面133および傾斜面143によりR方向(周方向)のトルクに変換した変換トルクCtとを加えたトルクは、ブレーキ部2において第1付勢部材3の付勢力Pにより生じるブレーキトルクBtよりも大きい。これにより、移動制限位置LpからY方向(軸方向)の他方に向かって第1移動部材13を移動させる際に、モータトルクMtと変換トルクCtとを加えたトルクをブレーキ部2に作用させることができるので、ブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態をより一層確実に解除することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、直線移動機構1は、移動制限位置Lpにおいて第1移動部材13と係合する係合部15を含んでいる。第1移動部材13は、回転停止状態から解除される際、係合部15によりねじ11と一体的に回転するとともに、第2移動部材14は、回転停止状態から解除される際、ガイド部12によりR方向(周方向)の回転が制限されている。これにより、回転停止状態から解除される際、第2移動部材14に対して、第1移動部材13およびねじ11を一体的に回転させることができるので、第1付勢部材3の付勢力Pにより回転した第1移動部材13のトルク(変換トルクCt)をねじ11に与えることができる。この結果、モータ200からモータトルクMtをさらにねじ11に与えることにより、モータトルクMtと変換トルクCtとをねじ11に与えることができるので、ブレーキ部2による回転停止状態を解除してねじ11を回転させるために十分なトルクをねじ11に与えることができる。
【0075】
また、第1実施形態では、上記のように、航空機Arのモータ200に接続される第1シャフト300の回転量を制限する。これにより、航空機Arにおいて用いられる移動量制限装置100において、ブレーキ部2によるねじ11の制動を解除するための構造(傾斜面133および傾斜面143)を容易に形成することができる。
【0076】
[第2実施形態]
図11および図12を参照して、第2実施形態による移動量制限装置800の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、移動量制限装置800が、第1移動部材813および第2移動部材814が、ジョークラッチ部817を構成している。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0077】
図11において、第2実施形態の移動量制限装置800は、航空機Arの舵面500の移動を制限する装置として航空機システム2000に設けられている。
【0078】
ここで、航空機Arの進行方向をX方向とし、X方向のうち前進方向をX1方向とし、X方向のうち後進方向をX2方向とする。航空機Arの左右方向をY方向とし、Y方向のうち右方向をY1方向とし、Y方向のうち左方向をY2方向とする。航空機Arの上下方向をZ方向とし、Z方向のうち上方向をZ1方向とし、Z方向のうち下方向をZ2方向とする。
【0079】
航空機システム2000は、移動量制限装置800と、モータ200と、一対の第1シャフト300と、一対の第2シャフト400と、複数の舵面500と、複数のアクチュエータ600と、制御装置700とを備えている。なお、第1シャフト300は、特許請求の範囲の「シャフト」の一例である。
【0080】
(移動量制限装置)
移動量制限装置800は、航空機Arのモータ200に接続される第1シャフト300の回転量を制限するように構成されている。すなわち、移動量制限装置100は、モータ200による第1シャフト300のオーバーランを防止する装置である。
【0081】
図12に示すように、移動量制限装置800は、直線移動機構801と、ブレーキ部2と、第1付勢部材3とを含んでいる。なお、第1付勢部材3は、特許請求の範囲の「付勢部材」の一例である。
【0082】
(直線移動機構)
直線移動機構801は、ねじ11(図2を参照)と、ガイド部12(図2を参照)と、第1移動部材813と、第2移動部材814と、係合部15(図2を参照)と、第2付勢部材16(図2を参照)とを含んでいる。なお、ねじ11は、特許請求の範囲の「ねじ軸」の一例である。
【0083】
ここで、ねじ11の回転中心軸線C回りの周方向をR方向とし、R方向のうちの一方向をR1方向とし、R方向のうちの他方向をR2方向とする。回転中心軸線Cの延びる方向に直交する径方向をD方向とし、D方向のうちの外側をD1方向とし、D方向のうちの内側をD2方向とする。
【0084】
(ジョークラッチ部)
ここで、図12に示すように、第2実施形態の第1移動部材813および第2移動部材814は、Y方向に対して交差する方向である傾斜方向において、傾斜面813aおよび傾斜面814a同士が互いに面接触するジョークラッチ部817を構成している。すなわち、第1移動部材813および第2移動部材814は、対向する傾斜面813aおよび傾斜面814aを1組有するジョークラッチ部817を構成している。
【0085】
なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0086】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、第1移動部材813および第2移動部材814の各々のY方向(軸方向)に対向する対向面136および対向面145には、制動の際に当接した第2移動部材814にブレーキ部2から伝達される力を利用してブレーキ部2によるねじ11の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、Y方向(軸方向)に交差する傾斜方向に延びる傾斜面813aおよび傾斜面814aが形成されている。これにより、移動量制限装置800において、ブレーキ部2によるねじ11の制動を解除するための構造(傾斜面813aおよび傾斜面814a)を容易に形成することができる。
【0088】
また、第2実施形態では、上記のように、第1移動部材813および第2移動部材814は、傾斜方向に直交する方向において、傾斜面813aおよび傾斜面814a同士が互いに面接触するジョークラッチ部817を有している。これにより、ねじ11の回転停止状態を解除するための構造をジョークラッチ部817により実現することができるので、ねじ11の回転停止状態を解除するための構造を比較的容易に実現することができる。
【0089】
また、第2実施形態では、上記のように、第1移動部材813および第2移動部材814は、傾斜方向に直交する方向において対向する傾斜面813aおよび傾斜面814aを1組有するジョークラッチ部817を有している。これにより、多数のねじ溝を有するねじ構造と比較して、傾斜面813aおよび傾斜面814aの各々の数の増加を抑制することができるので、ジョークラッチ部817の構造の複雑化を抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0091】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、移動量制限装置100(800)は、航空機Arのモータ200に接続される第1シャフト300の回転量を制限するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動量制限装置は、航空機のフラップまたは扉などに適用されてもよいし、エレベータの扉、工作機器、電動ウインチおよびホイストなどに適用されてもよい。
【0092】
また、上記第1および第2実施形態では、直線移動機構1(801)は、第2付勢部材16を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直線移動機構は、第2付勢部材を有していなくてもよい。
【0093】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(項目1)
モータ200からの駆動力により回転するねじ11と、前記ねじ11の回転中心軸線Cの軸方向(Y)に沿って延びるガイド部12と、前記ねじ11に係合するねじ溝132を有し、前記ねじ11の回転により前記軸方向(Y)に直線移動する第1移動部材13(813)と、前記ガイド部12に係合し、前記ねじ11の回転により前記第1移動部材13(813)とともに前記軸方向(Y)に直線移動する第2移動部材14(814)とを含む直線移動機構1(801)と、
前記第1移動部材13(813)が前記軸方向(Y)の一方の移動制限位置Lpに移動したことに基づいて、当接する前記第2移動部材14(814)により前記ねじ11の回転を停止させる制動力を発生させるブレーキ部2とを備え、
前記第1移動部材13(813)および前記第2移動部材14(814)の各々の前記軸方向(Y)に対向する対向面136(145)には、制動の際に当接した前記第2移動部材14(814)に前記ブレーキ部2から伝達される力を利用して前記ブレーキ部2による前記ねじ11の回転停止状態を解除するために、ねじ構造ではなく、前記軸方向(Y)に交差する傾斜方向に延びる傾斜面133(143、813a、814a)が形成されている、移動量制限装置100(800)。
【0095】
(項目2)
前記第1移動部材13(813)および前記第2移動部材14(814)は、前記傾斜方向に直交する方向において、球135を介して前記傾斜面133(143、813a、814a)同士が互いに点接触するボールランプ部17か、または、前記傾斜面133(143、813a、814a)同士が互いに面接触するジョークラッチ部817を有する、項目1に記載の移動量制限装置100(800)。
【0096】
(項目3)
前記第1移動部材13(813)および前記第2移動部材14(814)は、前記球135を収容するために前記傾斜方向に直交する方向において対向する前記傾斜面133(143、813a、814a)を1組以上有する前記ボールランプ部17か、または、前記傾斜方向に直交する方向において対向する前記傾斜面133(143、813a、814a)を1組以上有する前記ジョークラッチ部817を有する、項目3に記載の移動量制限装置100(800)。
【0097】
(項目4)
前記傾斜面133(143、813a、814a)は、前記回転中心軸線Cの周方向Rに沿って前記ねじ軸11の周囲に等角度間隔で配置されている、項目3に記載の移動量制限装置100。
【0098】
(項目5)
前記第1移動部材13(813)が前記移動制限位置Lpに移動して前記第2移動部材14(814)が前記ブレーキ部2に当接した際に弾性変形する付勢部材3をさらに備え、
前記付勢部材3からの付勢力Pと、前記軸方向(Y)の他方に向かって前記第1移動部材13(813)を移動させる際に前記モータ200から前記ねじ11に伝達されるモータトルクMtとにより、前記第1移動部材13(813)の前記傾斜面133(143、813a、814a)を、前記第2移動部材14(814)の前記傾斜面133(143、813a、814a)に対して前記回転中心軸線C回りの周方向に相対的に回転させることによって、前記ブレーキ部2による前記回転停止状態を解除するように構成されている、項目1に記載の移動量制限装置100(800)。
【0099】
(項目6)
前記モータトルクMtと、前記軸方向(Y)の他方に向かう前記付勢部材3の前記付勢力Pを前記傾斜面133(143、813a、814a)により前記周方向のトルクに変換した変換トルクCtとを加えたトルクは、前記ブレーキ部2において前記付勢部材3の前記付勢力Pにより生じるブレーキトルクBtよりも大きい、項目5に記載の移動量制限装置100(800)。
【0100】
(項目7)
前記直線移動機構1(801)は、前記移動制限位置Lpにおいて前記第1移動部材13(813)と係合する係合部15をさらに含み、
前記第1移動部材13(813)は、前記回転停止状態から解除される際、前記係合部により前記ねじ11と一体的に回転するとともに、前記第2移動部材14(814)は、前記回転停止状態から解除される際、前記ガイド部12により前記周方向の回転が制限されている、項目5に記載の移動量制限装置100(800)。
【0101】
(項目8)
航空機Arのモータ200に接続されるシャフト300の回転量を制限する、項目1に記載の移動量制限装置100(800)。
【符号の説明】
【0102】
1、801 直線移動機構
2 ブレーキ部
3 第1付勢部材(付勢部材)
11 ボールねじ(ねじ軸)
12 ガイド部
13、813 第1移動部材
14、814 第2移動部材
15 係合部
17 ボールランプ部
100、800 移動量制限装置
132 ねじ溝
133、813a 傾斜面
135 球
136 対向面
143、814a 傾斜面
145 対向面
200 モータ
300 第1シャフト(シャフト)
817 ジョークラッチ部
Ar 航空機
Bt ブレーキトルク
C 回転中心軸線
Ct 変換トルク
Lp 移動制限位置
Mt モータトルク
P 付勢力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12