(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025498
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】プリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/06 20060101AFI20250214BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20250214BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20250214BHJP
B29B 11/14 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B29C49/06
B65D1/02 220
B65D1/00 120
B29B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130312
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛久
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 量哉
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【テーマコード(参考)】
3E033
4F201
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA18
3E033CA20
3E033DA03
3E033DB01
3E033DC03
3E033EA05
3E033FA03
3E033GA02
4F201AG07
4F201AH55
4F201AR12
4F201BA03
4F201BC02
4F201BD06
4F201BM05
4F201BM12
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA02
4F208LA08
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG14
4F208LG16
4F208LG29
4F208LG30
4F208LH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラスチックボトルの肩部上部において高いブロー成形性を実現でき、かつプリフォームを安定して搬送することが可能なプリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法を提供する。
【解決手段】プリフォーム10の胴部20は大径部21と、縮径部22と、小径部23とを有する。大径部21の厚みT
1の平均値≦小径部23の厚みT
4の平均値となっており、胴部20の薄肉部20Aは縮径部22に存在する、プリフォーム10とする。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部とを備え、
前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部から前記小径部に向けて縮径する縮径部とを有し、
前記大径部の厚みをT1とし、
前記小径部の厚みをT4とした場合、
T1の平均値≦T4の平均値となっており、かつ
前記胴部のうち最も厚みの薄い薄肉部は前記縮径部に存在する、プリフォーム。
【請求項2】
前記薄肉部は前記縮径部のうち前記大径部側領域に存在する、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記薄肉部の長さは、前記縮径部の長さに対して10%~60%となっている、請求項1または2記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記縮径部の厚みをT2とした場合、
T2の平均値≦T4の平均値となっている、請求項1または2記載のプリフォーム。
【請求項5】
前記小径部の外径:前記プリフォームの全長=0.26~0.30となっている、請求項1または2記載のプリフォーム。
【請求項6】
プラスチックボトルの製造方法において、
請求項1または2記載のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを加熱する工程と、
前記プリフォームを二軸延伸ブロー成形する工程と、を備えた、プラスチックボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば射出成形法により作製したポリエチレンテレフタレート製プリフォームを二軸延伸ブロー成形し、プラスチックボトルを作製することが行われている。また、近年、ボトルに使用されるプラスチック材料の使用量を減らし、プラスチックボトルを軽量化することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプリフォームの厚みを均一に薄くした場合、ブロー成形によりプラスチックボトルを作製した際に、プラスチックボトルの口部と胴部との間の肩部、とりわけ肩部上部において、ブロー成形時にプラスチック部材が十分に伸びきらず、精度良く成形することが困難となる場合がある。
【0005】
一方、プラスチックボトルのサポートリング直下の部分は、プリフォームの搬送時にグリッパにより把持される部分であるため、ある程度の厚みを有する必要がある。
【0006】
本開示は、プラスチックボトルの口部と胴部との間の肩部、とりわけ肩部上部において高いブロー成形性を実現でき、かつプリフォームを安定して搬送することが可能なプリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[6]に関する。
【0008】
[1]口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部とを備え、前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部から前記小径部に向けて縮径する縮径部とを有し、前記大径部の厚みをT1とし、前記小径部の厚みをT4とした場合、T1の平均値≦T4の平均値となっており、かつ前記胴部のうち最も厚みの薄い薄肉部は前記縮径部に存在する、プリフォーム。
【0009】
[2]前記薄肉部は前記縮径部のうち前記大径部側領域に存在する、[1]に記載のプリフォーム。
【0010】
[3]前記薄肉部の長さは、前記縮径部の長さに対して10%~60%となっている、[1]又は[2]に記載のプリフォーム。
【0011】
[4]前記縮径部の厚みをT2とした場合、T2の平均値≦T4の平均値となっている、[1]又は[2]に記載のプリフォーム。
【0012】
[5]前記小径部の外径:前記プリフォームの全長=0.26~0.30となっている、[1]又は[2]に記載のプリフォーム。
【0013】
[6]プラスチックボトルの製造方法であって、[1]乃至[2]のいずれか一つに記載のプリフォームを準備する工程と、前記プリフォームを加熱する工程と、前記プリフォームを二軸延伸ブロー成形する工程と、を備えた、プラスチックボトルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本実施の形態によれば、プラスチックボトルの口部と胴部との間の肩部、とりわけ肩部上部において、精度良くブロー成形することができ、かつプリフォームを安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態によるプリフォームを示す正面図。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施の形態によるプリフォームを示す垂直断面図(プリフォームの中心軸を通る断面図)。
【
図2B】
図2Bは、第2の実施の形態によるプリフォームを示す垂直断面図(プリフォームの中心軸を通る断面図)。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態によるプリフォームにより作製されるプラスチックボトルを示す正面図。
【
図4】
図4(a)-(e)は、第1の実施の形態によるプラスチックボトルの製造方法を示す図。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態および第2の実施の形態におけるプリフォームの肉厚分布を示す図。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施の形態および第2の実施の形態におけるプリフォームの肉厚分布を示す図表。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施の形態および第2の実施の形態におけるプリフォームの質量および寸法を示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して第1の実施の形態について説明する。
図1、
図2A及び
図3乃至
図6は第1の実施の形態を示す図である。
【0017】
本明細書中、「上方」及び「下方」とは、それぞれプリフォーム10の口部11を鉛直方向上方に向け、プリフォーム10の底部30を鉛直方向下方に向けた状態(
図1及び
図2A)における上方及び下方のことをいう。本明細書中、プリフォーム10の「中心軸CL」とは、プリフォーム10の口部11の内面を構成する円筒の中心軸をいう。
【0018】
本明細書中、「高さ方向」とは、プリフォーム10の中心軸CLに沿う方向をいい、「半径方向」とは、プリフォーム10の中心軸CLに対して直交する方向をいう。「周方向」とは、プリフォーム10の中心軸CLを中心とする円の円周方向をいう。「水平断面」とは、プリフォーム10の中心軸CLに対して直交する平面で切断した断面をいう。「垂直断面」とは、プリフォーム10の中心軸CLを含む平面で切断した断面をいう。
【0019】
図1及び
図2Aにより第1の実施の形態によるプリフォームの概要について説明する。
【0020】
図1に示すプリフォーム10は、開口部15を有する口部11と、口部11に連結された胴部20と、胴部20に連結された底部30とを備えている。胴部20は、大径部21と、小径部23と、縮径部22とを有する。大径部21は、口部11側に位置する。小径部23は、底部30側に位置する。縮径部22は、大径部21と小径部23との間に位置する。縮径部22は、大径部21側から小径部23側に向けて縮径する。胴部20及び底部30のうち最も厚みの薄い部分は、底部30の最下部31であることが好ましい。底部30の最下部31の厚みをT
7とし、胴部20の小径部23の厚みをT
4としたとき、T
7は約0.8×T
4の平均値となっている。なお、本実施の形態において、プリフォーム10の胴部20の所定部位の厚みは、中心軸CLに対して垂直な方向に沿って測定したときの当該部位の外面と内面との間の距離をいう。この場合、プリフォーム10の胴部20の厚みは全自動測定器(株式会社エビック社製、プリフォーム自動厚み測定装置、EH―8000)を用いて測定する。また、底部30の厚みは、外面の法線方向に沿った外面と内面との間の距離をいう。
【0021】
口部11は、円筒状の口部本体12と、口部本体12の外周に設けられたねじ部13と、ねじ部13の下方に設けられたサポートリング14と、を有している。この口部本体12は、外径D1と内径D2とを有している。
【0022】
口部本体12の外径D1は、18mm以上としても良く、20mm以上としても良く、22mm以上としても良い。口部本体12の外径D1は、33mm以下としても良く、30mm以下としても良く、27mm以下としても良い。口部本体12の内径D2は、15mm以上としても良く、17mm以上としても良く、20mm以上としても良い。口部本体12の内径D2は、29mm以下としても良く、26mm以下としても良く、24mm以下としても良い。
【0023】
口部11の高さ方向の長さL1は、例えば14mm以上としても良く、16mm以上としても良く、18mm以上としても良い。口部11の高さ方向の長さL1は、28mm以下としても良く、25mm以下としても良く、23mm以下としても良い。
【0024】
ねじ部13は、プリフォーム10を二軸延伸ブロー成形してプラスチックボトル40(
図3参照)を作製した後、図示しないキャップを螺合するためのものである。また、サポートリング14は、口部11の下部に設けられており、全周にわたって円環状に突設されている。サポートリング14の下方には、胴部20が連結されている。
【0025】
上述したように、胴部20は、大径部21と、小径部23と、縮径部22とを有する。
【0026】
大径部21は、サポートリング14の下部に連結されている。大径部21は、外面21aと内面21bとを有する。大径部21の高さ方向の長さL2は、例えば2.2mm以上としても良く、2.5mm以上としても良く、2.9mm以上としても良い。大径部21の高さ方向の長さL2は、4.5mm以下としても良く、4.1mm以下としても良く、3.8mm以下としても良い。
【0027】
大径部21は、全体として略円筒形状であり、外径D3と内径D4とを有している。大径部21の外径D3は、18mm以上としても良く、20.5mm以上としても良く、23mm以上としても良い。大径部21の外径D3は、34mm以下としても良く、31mm以下としても良く、28mm以下としても良い。大径部21の外径D3は、上述した口部本体12の外径D1よりも大きくても良く、口部本体12の外径D1と同一であっても良い。
【0028】
大径部21の内径D4は、上述した口部本体12の内径D2と同一であっても良い。大径部21の内径D4は、15mm以上としても良く、17mm以上としても良く、20mm以上としても良い。大径部21の内径D4は、29mm以下としても良く、26mm以下としても良く、24mm以下としても良い。大径部21は厚みT1を有する。この大径部21の厚みT1は、1.4mm以上としても良く、1.6mm以上としても良く、1.8mm以上としても良い。大径部21の厚みT1は、2.6mm以下としても良く、2.4mm以下としても良く、2.2mm以下としても良い。
【0029】
縮径部22は、大径部21の下部に連結されており、大径部21側から小径部23側に向けて徐々に縮径する形状からなっている。縮径部22は、略円錐台形の筒状であり、外面22aと内面22bとを有する。大径部21と縮径部22との境界には、第3境界部28が存在する。第3境界部28は、垂直断面において、大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとのなす角度、及び、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第3境界部28とは、垂直断面(
図2A)において、大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所、及び、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所をいう。大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとのなす角度が大きく変化する箇所と、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第3境界部28は、これらの箇所のうち、より口部11に近い方の箇所をいう。
【0030】
縮径部22の高さ方向の長さL3は、例えば6.7mm以上としても良く、7.4mm以上としても良く、8.0mm以上としても良い。縮径部22の高さ方向の長さL3は、11.0mm以下としても良く、10.3mm以下としても良く、9.6mm以下としても良い。縮径部22の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状であっても良い。縮径部22の外面22aは、高さ方向に沿って変化する外径D5を有し、縮径部22の内面22bは、高さ方向に沿って変化する内径D6を有している。縮径部22の外径D5及び内径D6は、それぞれ大径部21側から小径部23側に向けて徐々に細くなっている。
【0031】
縮径部22の外面22a及び内面22bは、それぞれプリフォーム10の中心軸CLに対して傾斜している。垂直断面において、縮径部22の外面22aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ1は、6°以上としても良く、8°以上としても良く、10°以上としても良い。縮径部22の外面22aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ1は、22°以下としても良く、20°以下としても良く、18°以下としても良い。縮径部22の内面22bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ2は、6°以上としても良く、8°以上としても良く、10°以上としても良い。縮径部22の内面22bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ2は、22°以下としても良く、20°以下としても良く、18°以下としても良い。角度θ1は、角度θ2と同一であっても良い。
【0032】
縮径部22は厚みT2を有するが、この縮径部22の厚みT2について後述する。第2境界部27における縮径部22の厚みT3は、第3境界部28における縮径部22の厚みT1よりも薄くても良く、厚くても良く、同一でも良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の厚みT3は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の厚みT3は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。
【0033】
第2境界部27における縮径部22及び小径部23の外径D7は、15mm以上としても良く、18mm以上としても良く、20mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の外径D7は、27mm以下としても良く、25mm以下としても良く、24mm以下としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の内径D8は、15mm以上としても良く、16mm以上としても良く、17mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の内径D8は、24mm以下としても良く、22mm以下としても良く、20mm以下としても良い。
【0034】
小径部23は、縮径部22の下部に連結されており、外面23aと内面23bとを有する。縮径部22と小径部23の境界には、第2境界部27が存在する。第2境界部27は、垂直断面において、縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとのなす角度、及び、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第2境界部27とは、垂直断面(
図2)において、縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所、及び、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所をいう。縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとのなす角度が大きく変化する箇所と、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第2境界部27は、これらのうち、より底部30に近い方の箇所をいう。
【0035】
小径部23の高さ方向の長さL4は、例えば23mm以上としても良く、27mm以上としても良く、30mm以上としても良い。小径部23の高さ方向の長さL4は、49mm以下としても良く、45mm以下としても良く、41mm以下としても良い。小径部23の外面23a及び内面23bは、それぞれプリフォーム10の中心軸CLに対して傾斜している。垂直断面において、小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3は、0°超としても良く、0.1°以上としても良く、0.2°以上としても良い。小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3は、5°以下としても良く、1°以下としても良く、0.7°以下としても良い。小径部23の外面23aが傾斜する角度θ3は、プリフォーム10を作製する際に、プリフォーム10を射出成形金型から抜きやすくするために設けられている角度(いわゆる抜き勾配)であっても良い。小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4は、0°超としても良く、0.1°以上としても良く、0.2°以上としても良い。小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4は、5°以下としても良く、1°以下としても良く、0.7°以下としても良い。角度θ4は、角度θ3と同一であっても良い。
【0036】
小径部23の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状である。小径部23の外面23aは、高さ方向に沿って変化する外径D9を有している。小径部23の内面23bは、高さ方向に沿って変化する内径D10を有している。小径部23の外径D9及び内径D10は、それぞれ縮径部22側から底部30側に向けて徐々に細くなっている。なお、垂直断面において、小径部23の外面23aは全体として直線状であるが、小径部23の外面23aの一部が曲線状であっても良い。同様に、垂直断面において、小径部23の内面23bは全体として直線状であるが、小径部23の内面23bの一部が曲線状であっても良い。
【0037】
小径部23の厚みT4は、縮径部22(第2境界部27)側から底部30(第1境界部26)側まで均一となっている。言い換えれば、小径部23の厚みT4と、第2境界部27における厚みT3と、第1境界部26における厚みT5とは、互いに同一である(T3=T4=T5)。小径部23の厚みT4(=T3=T5)は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。小径部23の厚みT4(=T3=T5)は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。
【0038】
第1境界部26における小径部23の外径D11は、15mm以上としても良く、18mm以上としても良く、20mm以上としても良い。第1境界部26における小径部23の外径D11は、27mm以下としても良く、25mm以下としても良く、24mm以下としても良い。第1境界部26における小径部23の内径D12は、例えば15mm以上としても良く、16mm以上としても良く、17mm以上としても良い。第1境界部26における小径部23の内径D12は、24mm以下としても良く、22mm以下としても良く、20mm以下としても良い。
【0039】
底部30は、小径部23の下部に連結されており、外面30aと内面30bとを有する。小径部23と底部30の境界には、第1境界部26が存在する。第1境界部26は、垂直断面において、小径部23の内面23bと底部30の内面30bとのなす角度、及び、小径部23の外面23aと底部30の外面30aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第1境界部26とは、垂直断面(
図2A)において、小径部23の内面23bから底部30の内面30bに向かう途中で、曲率半径が最初に100mm以下となる箇所、及び、小径部23の外面23aから底部30の外面30aに向かう途中で、曲率半径が最初に100mm以下となる箇所をいう。小径部23の内面23bと底部30の内面30bとのなす角度が大きく変化する箇所と、小径部23の外面23aと底部30の外面30aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第1境界部26は、これらのうち、より口部11に近い方の箇所をいう。
【0040】
底部30の高さ方向の長さL5は、例えば5mm以上としても良く、6mm以上としても良く、7mm以上としても良い。底部30の高さ方向の長さL5は、11mm以下としても良く、10mm以下としても良く、9mm以下としても良い。底部30は、全体として略半球形状である。垂直断面において、底部30の外面30aは全体として半円形状であるが、底部30の外面30aが非円弧の部分を含む曲線形状であっても良い。同様に、垂直断面において、底部30の内面30bは全体として半円形状であるが、底部30の内面30bの一部が非円弧の部分を含む曲線形状であっても良い。垂直断面において、底部30の外面30aを構成する半円の中心O1は中心軸CLに存在する。また、底部30の内面30bを構成する半円の中心O2は中心軸CLに存在する。底部30の内面30bを構成する半円の中心O2は、底部30の外面30aを構成する半円の中心O1と同一の位置に存在しても良い。また、底部30の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状である。
【0041】
底部30の外面30aを構成する半円の曲率半径R1は、8mm以上としても良く、9mm以上としても良く、10mm以上としても良い。底部30の外面30aを構成する半円の曲率半径R1は、15mm以下としても良く、13mm以下としても良く、12mm以下としても良い。底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2は、7mm以上としても良く、7.5mm以上としても良く、8mm以上としても良い。底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2は、11mm以下としても良く、10.5mm以下としても良く、10mm以下としても良い。
【0042】
曲率半径R2に対する曲率半径R1の比(R1/R2)は、1.0超としても良く、1.1以上としても良く、1.2以上としても良い。曲率半径R2に対する曲率半径R1の比(R1/R2)は、1.9以下としても良く、1.5以下としても良く、1.3以下としても良い。上記比を1.9以下とすることにより、底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2が小さくなりすぎず、小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4が大きくなりすぎて射出成形法によってプリフォーム10を作製しにくくなることを抑制できる。上記比を1.0超とすることにより、底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2が大きくなりすぎず、第1境界部26における小径部23の厚みT5を確保し、射出成形法によってプリフォーム10を作製しにくくなることを抑制できる。
【0043】
底部30の厚みT6は、胴部20(第1境界部26)側から底部30の最下部31(底部30と中心軸CLとが交わる部分)に向けて徐々に薄くなっている。すなわち第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、最下部31における底部30の厚みT7よりも厚い。第1境界部26における厚みT5は、底部30の中で最も厚い。
【0044】
第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。最下部31における底部30の厚みT7は、1.2mm以上としても良く、1.4mm以上としても良く、1.5mm以上としても良い。最下部31における底部30の厚みT7は、2.4mm以下としても良く、2.2mm以下としても良く、2.0mm以下としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T5)は、0.5以上としても良く、0.6以上としても良く、0.7以上としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T5)は、1.0以下としても良く、0.9以下としても良く、0.85以下としても良い。
【0045】
本実施の形態において、大径部21の厚みT1に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T1)は、0.80以上としても良く、0.82以上としても良く、0.83以上としても良い。大径部21の厚みT1に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T1)は、1.05以下としても良く、0.95以下としても良く、0.93以下としても良い。上記割合T7/T1が0.80以上となることにより、後述するプラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記割合T7/T1が1.05以下となることにより、プラスチックボトル40の成形時に延伸されにくいプリフォーム10の底部30の厚みを薄くすることで、同じ重量のプリフォーム10でも延伸される胴部42やヒール部49に厚みを持たせることが可能となる。これによってプリフォーム10の軽量化が可能になる。
【0046】
胴部20と底部30との高さ方向の合計長さ(すなわちプリフォーム10のうち、サポートリング14よりも下の部分の高さ方向の長さ)は、L6であり、この合計長さL6は、上述した長さL2、L3、L4、及びL5の合計である(L6=L2+L3+L4+L5)。上記合計長さL6は、44.0mm以上としても良く、51.0mm以上としても良く、52.0mm以上としても良い。上記合計長さL6は、63.0mm以下としても良く、58.0mm以下としても良く、56.5mm以下としても良い。上記合計長さL6が44.0mm以上となることにより、後述するプラスチックボトル40を成形するときの縦方向の延伸倍率が大きくなりすぎず、過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記合計長さL6が63.0mm以下となることにより、プリフォーム10の質量を一定とした場合、合計長さL6を抑える分、胴部20の厚みが薄くなりにくい。このため、プラスチックボトル40を成形するときに胴部42が白化することを抑えられる。また、プリフォーム10の合計長さL6が長すぎないことにより、縦延伸が小さくなったり、縦延伸しなくなったりすることを抑制できる。このため、プラスチックボトル40が容量100mL程度の背の低い小型ボトルであったとしても、成形しやすい。
【0047】
プリフォーム10の全長は、L7であり、この全長L7は、上述した合計長さL6と長さL1との合計である(L7=L1+L6)。プリフォーム10の全長L7は、58mm以上としても良く、65mm以上としても良く、70mm以上としても良い。プリフォーム10の全長L7は、90mm以下としても良く、85mm以下としても良く、80mm以下としても良い。
【0048】
プリフォーム10の口部11の質量をW1とし、胴部20及び底部30の合計質量をW2とする。このとき、口部11の質量W1に対する、胴部20及び底部30の合計質量W2の割合(W2/W1)は、1.80以上としても良く、1.95以上としても良く、2.10以上としても良い。口部11の質量W1に対する、胴部20及び底部30の合計質量W2の割合(W2/W1)は、2.70以下としても良く、2.55以下としても良く、2.40以下としても良い。上記割合W2/W1が1.80以上となることにより、胴部20及び底部30の樹脂量が過度に少なくならない。このため、後述するプラスチックボトル40を成形するときの縦方向に過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記割合W2/W1が2.70以下となることにより、プリフォーム10の質量が重くなりすぎることを抑制できる。
【0049】
口部11の質量W1は、3.4g以上としても良く、3.9g以上としても良く、4.4g以上としても良い。口部11の質量W1は、6.8g以下としても良く、5.9g以下としても良く、5.4g以下としても良い。胴部20及び底部30の合計質量W2は、7.5g以上としても良く、8.2g以上としても良く、9.0g以上としても良い。胴部20及び底部30の合計質量W2は、12.2g以下としても良く、11.4g以下としても良く、10.7g以下としても良い。プリフォーム10の全質量(W1+W2)は、11.5g以上としても良く、12.5g以上としても良く、13.5g以上としても良い。プリフォーム10の全質量(W1+W2)は、16.5g以下としても良く、16.0g以下としても良く、15.5g以下としても良い。
【0050】
上述のように、プリフォーム10の胴部20のうち、大径部21は厚みT1を有し、縮径部22は厚みT2を有し、小径部23は厚みT4を有する。
【0051】
本実施の形態において、大径部21の厚みT1、縮径部22の厚みT2、小径部23の厚みT4は以下のような関係にある。
【0052】
大径部21の厚みT1の平均値≦小径部23の厚みT4の平均値。
またプリフォーム10の胴部20は大径部21と、縮径部22と、小径部23とからなるが、胴部20の最も厚みの薄い薄肉部20Aは縮径部22に存在する。
【0053】
このように胴部20の最も厚みが薄い薄肉部20Aが縮径部22に存在するため、本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0054】
すなわち、本実施の形態によるプリフォーム10に対してブロー成形を施すことによりプラスチックボトル40が得られる(
図3参照)。この際、プリフォーム10の縮径部22がプラスチックボトル40の肩部48に略対応する。この場合、ブロー成形時にプリフォーム10の縮径部22が十分に伸びきらないと、ブロー成形時に肩部48の上部48aに関し、プリフォーム10の伸びが不十分となり、成形性が悪化することが考えられる。
【0055】
他方、プリフォーム10のサポートリング14の直下に形成された大径部21は、ブロー成形工程においてプリフォーム10を搬送させるために図示しないグリッパに把持される部分であって、所望の外径をもたないと、グリッパがプリフォーム10に確実に係合できないことが考えられる。
【0056】
また大径部21はグリッパに把持される部分であるから、所望の厚みも有する必要がある。
【0057】
そこで本実施の形態においては、サポートリング14の直下に設けられた大径部21に近接する縮径部22に、胴部20の中で最も厚みが薄い薄肉部20Aを設けた。このことにより、プリフォーム10を用いたブロー成形工程中に、プリフォーム10を問題なく把持することができる。またブロー成形工程において薄肉部20Aを確実に引き伸ばすことができ、これによりブロー成形によってプラスチックボトル40の肩部48、とりわけ肩部48の上部48aを精度良く成形することができる。
【0058】
また、大径部21の厚みT1の平均値≦小径部23の厚みT4の平均値となっているため、小径部23によりプラスチックボトル40の大部分を占める胴部42を確実に成形することができる。
【0059】
また縮径部22に薄肉部20Aを設けることにより、ブロー成形中に縮径部22を伸ばしてプラスチックボトル40の肩部48、とりわけ肩部48の上部48aを精度良く成形することができる。
【0060】
次にプリフォーム10の材料について述べる。プリフォーム10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましく、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えばPLA(ポリ乳酸)を用いることも可能である。あるいは、上述した各種樹脂をブレンドした樹脂を用いても良い。また、プリフォーム10は、2層以上の多層成形プリフォームとして形成することもできる。すなわち射出成形により、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性を有する樹脂(中間層)として3層以上からなるプリフォーム10として形成しても良い。
【0061】
またプリフォーム10は、バージンポリエステル又はケミカルリサイクルポリエステル(以下、単にバージンポリエステル等とも記す)を含んでいても良い。ここで、本明細書中、「バージンポリエステル」とは、リサイクル処理が施されていないポリエステル、すなわち、未使用のポリエステルのことをいう。また、本明細書中、「ケミカルリサイクルポリエステル」とは、ポリエステル容器をモノマーレベルまで分解して、再度重合することにより得られたポリエステルのことをいう。
【0062】
プリフォーム10がバージンポリエステル等を含む場合、バージンポリエステル等の含有量は、プリフォーム10に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。
【0063】
プリフォーム10がバージンポリエステルを含んでいる場合、バージンポリエステルは、アンチモン触媒ポリエステル、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステル及びゲルマニウム触媒ポリエステルから選択されてもよい。本明細書において、例えば、アンチモン触媒ポリエステルとは、ポリエステルの製造時に、重合触媒として、アンチモン触媒が用いられたポリエステルを意味する。したがって、上記列挙したポリエステルは、重合触媒として、それぞれの触媒が用いられたポリエステルを意味する。
【0064】
アンチモン触媒としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、トリフェニルアンチモン、アンチモングリコールなどが挙げられる。
【0065】
マンガン触媒としては、例えば、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩、水酸化マンガンなどが挙げられる。
【0066】
チタン触媒としては、例えば、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートテトラマー、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、酢酸チタン、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸-水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン-塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム及びチタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0067】
アルミニウム触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)及びエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0068】
リチウム触媒としては、例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム及びフェニルリチウムなどが挙げられる。
【0069】
ゲルマニウム触媒としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラプロポキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムテトラペンタキシド及びゲルマニウムテトラヘキソキシドなどが挙げられる。
【0070】
ここで、本実施の形態において、「ポリエステル」とは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物との共重合体を意味する。
【0071】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体などが挙げられる。
【0072】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0073】
ポリエステルの中でも、テレフタル酸と、エチレングリコールとの共重合体であるポリエチレンテレフタレート、又はこれに共重合モノマーが添加された改質ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0074】
また、ポリエステルは、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートであってもよく、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸化合物が化石燃料由来のテレフタル酸であり、ジオール化合物がバイオマス由来のエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレートであってもよい。このように、プリフォーム10がバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含むことにより、プラスチックボトル40の環境負荷低減性を向上できる。
【0075】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
また、プリフォーム10は、メカニカルリサイクルポリエステルを含んでいても良い。この場合、プラスチックボトル40の環境負荷低減性を向上できる。ここで、本明細書中、「メカニカルリサイクルポリエステル」とは、ポリエステル容器を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下等で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルのことをいう。メカニカルリサイクルポリエステルは、二種以上の触媒を含むものであっても良い。この場合、メカニカルリサイクルポリエステルは、例えば、アンチモン触媒ポリエステル、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステル及びゲルマニウム触媒ポリエステルのうちの二種以上を含んでも良い。
【0077】
プリフォーム10がメカニカルリサイクルポリエステルを含む場合、メカニカルリサイクルポリエステルの含有量は、プリフォーム10に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。
【0078】
本実施の形態の特性を損なわない範囲において、プリフォーム10は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)及び着色剤などが挙げられる。
【0079】
次に、
図3により、このようなプリフォーム10を二軸延伸ブロー成形することにより作製された、プラスチックボトルの一例について説明する。なお、上述したプリフォーム10を用いて作製されるプラスチックボトルは、これに限定されないことは勿論である。例えば、プラスチックボトルは、ペタロイドボトルであっても良い。また、プラスチックボトル40は、二軸延伸ブロー成形のほか、ダイレクトブロー成形等の各種成形法によって作製されても良い。
【0080】
図3において、プラスチックボトル40は、口部41と、略円筒状の胴部42と、底部43とを備えている。胴部42は、口部41の下方に連続して設けられる。底部43は、胴部42の下方に連続して設けられる。口部41と胴部42との間には、首部44が位置する。首部44と胴部42との間には、肩部48が位置している。
【0081】
口部41外周には、図示しないキャップを螺合するためのねじ部46が設けられている。ねじ部46は、上述したプリフォーム10のねじ部13に対応する。口部41外周のうちねじ部46の下方部分には、外方に突出する環状のサポートリング47が設けられている。サポートリング47は、上述したプリフォーム10のサポートリング14に対応する。
【0082】
胴部42は、上述したように略円筒状である。胴部42には、複数の水平溝45が形成されている。肩部48の水平断面は略円形状であり、肩部48の水平断面の面積は、首部44側から胴部42側へ向けて徐々に大きくなっている。
【0083】
底部43のうち半径方向外側の部分には、ヒール部49が形成されている。ヒール部49は、底部43の周方向全域にわたって環状に設けられる。ヒール部49は、概ね上述したプリフォーム10の第1境界部26に対応しており、ブロー成形の際、底部43のうち最も薄く延伸される部分である。
【0084】
このようなプラスチックボトル40のサイズは限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良い。プラスチックボトル40の満注容量は、例えば100ml以上としても良く、200ml以上としても良く、300ml以上としても良い。プラスチックボトル40の満注容量は、例えばは、600ml以下としても良く、550ml以下としても良く、530ml以下としても良い。
【0085】
また底部43のヒール部49における肉厚は、これに限定されるものではないが、例えば0.07mm以上としても良く、0.08mm以上としても良く、0.09mm以上としても良い。ヒール部49における肉厚は、例えば、0.30mm以下としても良く、0.25mm以下としても良く、0.20mm以下としても良い。ヒール部49における肉厚を0.30mm以下としたことにより、プラスチックボトル40の軽量化を図ることができる。一方、ヒール部49における肉厚を0.07mm以上としたことにより、プラスチックボトル40を自動販売機に収容したときや、プラスチックボトル40が落下したときに、底部43が飛び出して永久変形することを抑止できる。
【0086】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用(プラスチックボトルの製造方法)について述べる。
【0087】
まず
図1及び
図2に示すプリフォーム10を準備する(
図4(a))。この場合、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂製ペレットを図示しない射出成形機に投入し、このペレットが射出成形機によって加熱溶融及び加圧される。その後、ペレットは加圧された溶融プラスチックとなって、プリフォーム10に対応する内部形状を有する射出成形金型内に射出される。所定時間の経過後、射出成形金型内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム10が形成される。その後、射出成形金型を分離し、射出成形金型内から
図1及び
図2に示すプリフォーム10を取り出す。なお、プリフォーム10は、射出成形法のほか、圧縮成形法等の各種成形法によって作製されても良い。
【0088】
次に、プリフォーム10は、加熱装置51によって加熱される(
図4(b))。このとき、プリフォーム10は、口部11を下方に向けた状態で回転しながら、加熱装置51によって周方向に均等に加熱される。加熱工程におけるプリフォーム10の加熱温度は、例えば90℃乃至130℃としても良い。
【0089】
続いて、加熱装置51によって加熱されたプリフォーム10は、ブロー成形金型50に送られる(
図4(c))。
【0090】
プラスチックボトル40は、ブロー成形金型50を用いて成形される。この場合、ブロー成形金型50は互いに分割された一対の胴部金型50a、50bと、底部金型50cとを含む(
図4(c))。
図4(c)において、一対の胴部金型50a、50b間は互いに開いており、底部金型50cは上方に上がっている。この状態で一対の胴部金型50a、50b間に、プリフォーム10が挿入される。
【0091】
次に
図4(d)に示すように、底部金型50cが下がったのちに一対の胴部金型50a、50bが閉鎖され、一対の胴部金型50a、50b及び底部金型50cにより密閉されたブロー成形金型50が構成される。次にプリフォーム10内に空気が圧入され、プリフォーム10に対して二軸延伸ブロー成形が施される。
【0092】
このことにより、ブロー成形金型50内でプリフォーム10からプラスチックボトル40が得られる。この間、胴部金型50a、50bは30℃乃至80℃まで加熱され、底部金型50cは5℃乃至25℃まで冷却される。この際、ブロー成形金型50内では、プリフォーム10が膨張され、ブロー成形金型50の内面に対応する形状に賦形される。
【0093】
その後、
図4(e)に示すように、一対の胴部金型50a、50b及び底部金型50cが互いに離れ、ブロー成形金型50内からプラスチックボトル40が取出される。このようにして、
図3に示すプラスチックボトル40が得られる。
【0094】
ところで、プラスチックボトル40のヒール部49(
図3参照)は、プリフォーム10の底部30の周縁(
図1及び
図2A参照)に対応しており、ブロー成形後に薄くなりやすい部分である。すなわち、プリフォーム10の底部30の周縁は、中心軸CL方向及び半径方向の両方に対して大きく延伸されるため、プラスチックボトル40のヒール部49は他の部分よりも薄くなりやすい。この場合、ヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりするおそれがある。
【0095】
これに対して本実施の形態によれば、プリフォーム10の胴部20及び底部30のうち最も厚みの薄い部分は、底部30の最下部31であることが好ましい。また底部30の最下部31の厚みをT7とし、大径部の厚みをT1としたとき、0.80≦T7/T1≦1.05となる。また0.80≦T7/T1≦0.95となることが好ましい。0.80≦T7/T1となることにより、プリフォーム10の質量を軽くした場合でも、プラスチックボトル40のヒール部49が薄くなりすぎることがなく、ヒール部49に白化が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。とりわけ、プラスチックボトル40の質量を増加することなく、ヒール部49が薄くなることを抑制できるため、プラスチックボトル40の軽量化を阻害しない。底部30の最下部31の厚みT7と大径部の厚みT1との間で、T7/T1≦1.05という関係が成立することにより、プラスチックボトル40の成形時に延伸されにくいプリフォーム10の底部30の厚みを薄くすることで、同じ重量のプリフォーム10でも延伸される胴部42やヒール部49に厚みを持たせることが可能となる。これによってプリフォーム10の軽量化が可能になる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、口部の質量をW1とし、胴部20及び底部30の合計質量をW2としたとき、1.80≦W2/W1≦2.70となる。1.80≦W2/W1となることにより、胴部20及び底部30の樹脂量が過度に少なくならない。このため、プラスチックボトル40を成形するときの縦方向に過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。口部の質量W1と胴部20及び底部30の合計質量W2との間で、W2/W1≦2.70となることにより、プリフォーム10の質量が重くなりすぎることを抑制できる。
【0097】
さらに、本実施の形態によれば、胴部20及び底部30の合計長さをL6としたとき、44.0mm≦L6≦63.0mmとなる。44.0mm≦L6となることにより、プラスチックボトル40を成形するときの縦方向の延伸倍率が大きくなりすぎず、過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。また、L6≦63.0mmとなることにより、プリフォーム10の質量を一定とした場合、合計長さL6を抑える分、胴部20の厚みが薄くなりにくい。このため、プラスチックボトル40を成形するときに胴部42が白化することを抑えられる。また、プリフォーム10の合計長さL6が長すぎないことにより、縦延伸が小さくなったり、縦延伸しなくなったりすることを抑制できる。このため、プラスチックボトル40が容量100mL程度の背の低い小型ボトルであったとしても、成形しやすい。
【0098】
次にプリフォーム10の小径部23の外径D9とプリフォーム10の全長L7との関係について述べる。本実施の形態において、小径部23の外径D9と、プリフォーム10の全長L7とは、D9:L7=0.26~0.30となっていることが好ましい。
このように、D9:L7=0.26~0.30となっているため、プリフォーム10の小径部23の外径D9を比較的大きくし、プリフォーム10を寸胴型に形成することができる。このため、プリフォーム10を用いてブロー成形する際、プリフォーム10の胴部20の縮径部22と小径部23、および底部30が過度に横方向に延伸することを防ぐことができる。このように、プリフォーム10の胴部20の縮径部22と小径部23、および底部30が過度に横方向に延伸することがないので、ブロー成形により成形されるプラスチックボトル40の底部43に穴あき等の不具合が生じることはなく、かつプラスチックボトル40全体の座屈強度と高めることができる。また、上述のように、口部11の質量W1に対する胴部20及び底部30の合計質量W2の割合(W2/W1)を1.80以上とすることによって、プリフォーム1の過度の横方向の延伸を抑えることができる。このことと合わせて、D9:L7=0.26~0.30とすることにより、プリフォーム10の過度の横方向の延伸をより確実に抑えることができる。
【0099】
<第2の実施の形態>
次に
図1及び
図2Bにより本実施の形態によるプリフォームの概要について説明する。
【0100】
図1に示すプリフォーム10は、開口部15を有する口部11と、口部11に連結された胴部20と、胴部20に連結された底部30とを備えている。胴部20は、大径部21と、小径部23と、縮径部22とを有する。大径部21は、口部11側に位置する。小径部23は、底部30側に位置する。縮径部22は、大径部21と小径部23との間に位置する。縮径部22は、大径部21側から小径部23側に向けて縮径する。胴部20及び底部30のうち最も厚みの薄い部分は、底部30の最下部31であることが好ましい。底部30の最下部31の厚みをT
7とし、胴部20の小径部23の厚みをT
4としたとき、T
7は約0.8×T
4の平均値となっている。
【0101】
口部11は、円筒状の口部本体12と、口部本体12の外周に設けられたねじ部13と、ねじ部13の下方に設けられたサポートリング14と、を有している。この口部本体12は、外径D1と内径D2とを有している。
【0102】
口部本体12の外径D1は、18mm以上としても良く、20mm以上としても良く、22mm以上としても良い。口部本体12の外径D1は、33mm以下としても良く、30mm以下としても良く、27mm以下としても良い。口部本体12の内径D2は、15mm以上としても良く、17mm以上としても良く、20mm以上としても良い。口部本体12の内径D2は、29mm以下としても良く、26mm以下としても良く、24mm以下としても良い。
【0103】
口部11の高さ方向の長さL1は、例えば14mm以上としても良く、16mm以上としても良く、18mm以上としても良い。口部11の高さ方向の長さL1は、28mm以下としても良く、25mm以下としても良く、23mm以下としても良い。
【0104】
ねじ部13は、プリフォーム10を二軸延伸ブロー成形してプラスチックボトル40(
図3参照)を作製した後、図示しないキャップを螺合するためのものである。また、サポートリング14は、口部11の下部に設けられており、全周にわたって円環状に突設されている。サポートリング14の下方には、胴部20が連結されている。
【0105】
上述したように、胴部20は、大径部21と、小径部23と、縮径部22とを有する。
【0106】
大径部21は、サポートリング14の下部に連結されている。大径部21は、外面21aと内面21bとを有する。大径部21の高さ方向の長さL2は、例えば2.2mm以上としても良く、2.5mm以上としても良く、2.9mm以上としても良い。大径部21の高さ方向の長さL2は、4.5mm以下としても良く、4.1mm以下としても良く、3.8mm以下としても良い。
【0107】
大径部21は、全体として略円筒形状であり、外径D3と内径D4とを有している。大径部21の外径D3は、18mm以上としても良く、20.5mm以上としても良く、23mm以上としても良い。大径部21の外径D3は、34mm以下としても良く、31mm以下としても良く、28mm以下としても良い。大径部21の外径D3は、上述した口部本体12の外径D1よりも大きくても良く、口部本体12の外径D1と同一であっても良い。
【0108】
大径部21の内径D4は、上述した口部本体12の内径D2と同一であっても良い。大径部21の内径D4は、15mm以上としても良く、17mm以上としても良く、20mm以上としても良い。大径部21の内径D4は、29mm以下としても良く、26mm以下としても良く、24mm以下としても良い。大径部21は厚みT1を有する。この大径部21の厚みT1は1.4mm以上としても良く、1.6mm以上としても良く、1.8mm以上としても良い。大径部21の厚みT1は、2.6mm以下としても良く、2.4mm以下としても良く、2.2mm以下としても良い。
【0109】
縮径部22は、大径部21の下部に連結されており、大径部21側から小径部23側に向けて徐々に縮径する形状からなっている。縮径部22は、略円錐台形の筒状であり、外面22aと内面22bとを有する。大径部21と縮径部22との境界には、第3境界部28が存在する。第3境界部28は、垂直断面において、大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとのなす角度、及び、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第3境界部28とは、垂直断面(
図2B)において、大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所、及び、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所をいう。大径部21の内面21bと縮径部22の内面22bとのなす角度が大きく変化する箇所と、大径部21の外面21aと縮径部22の外面22aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第3境界部28は、これらの箇所のうち、より口部11に近い方の箇所をいう。
【0110】
縮径部22の高さ方向の長さL3は、例えば6.8mm以上としても良く、7.5mm以上としても良く、8.1mm以上としても良い。縮径部22の高さ方向の長さL3は、11.1mm以下としても良く、10.4mm以下としても良く、9.7mm以下としても良い。縮径部22の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状であっても良い。縮径部22の外面22aは、高さ方向に沿って変化する外径D5を有し、縮径部22の内面22bは、高さ方向に沿って変化する内径D6を有している。縮径部22の外径D5及び内径D6は、それぞれ大径部21側から小径部23側に向けて徐々に細くなっている。
【0111】
縮径部22の外面22a及び内面22bは、それぞれプリフォーム10の中心軸CLに対して傾斜している。垂直断面において、縮径部22の外面22aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ1は、6°以上としても良く、8°以上としても良く、10°以上としても良い。縮径部22の外面22aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ1は、22°以下としても良く、20°以下としても良く、18°以下としても良い。縮径部22の内面22bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ2は、6°以上としても良く、8°以上としても良く、10°以上としても良い。縮径部22の内面22bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ2は、22°以下としても良く、42°以下としても良く、18°以下としても良い。角度θ1は、角度θ2と同一であっても良い。
【0112】
縮径部22は厚みT2を有するが、この縮径部22の厚みT2については後述する。第2境界部27における縮径部22の厚みT3は、第3境界部28における縮径部22の厚みT1よりも薄くても良く、厚くても良く、同一でも良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の厚みT3は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の厚みT3は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。
【0113】
第2境界部27における縮径部22及び小径部23の外径D7は、15mm以上としても良く、18mm以上としても良く、20mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の外径D7は、27mm以下としても良く、25mm以下としても良く、24mm以下としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の内径D8は、15mm以上としても良く、16mm以上としても良く、17mm以上としても良い。第2境界部27における縮径部22及び小径部23の内径D8は、24mm以下としても良く、22mm以下としても良く、20mm以下としても良い。
【0114】
小径部23は、縮径部22の下部に連結されており、外面23aと内面23bとを有する。縮径部22と小径部23の境界には、第2境界部27が存在する。第2境界部27は、垂直断面において、縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとのなす角度、及び、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第2境界部27とは、垂直断面(
図2)において、縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所、及び、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとの間で、曲率半径が極小値をとる箇所をいう。縮径部22の内面22bと小径部23の内面23bとのなす角度が大きく変化する箇所と、縮径部22の外面22aと小径部23の外面23aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第2境界部27は、これらのうち、より底部30に近い方の箇所をいう。
【0115】
小径部23の高さ方向の長さL4は、例えば23mm以上としても良く、27mm以上としても良く、30mm以上としても良い。小径部23の高さ方向の長さL4は、49mm以下としても良く、45mm以下としても良く、41mm以下としても良い。小径部23の外面23a及び内面23bは、それぞれプリフォーム10の中心軸CLに対して傾斜している。垂直断面において、小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3は、0°超としても良く、0.1°以上としても良く、0.2°以上としても良い。小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3は、5°以下としても良く、1°以下としても良く、0.7°以下としても良い。小径部23の外面23aが傾斜する角度θ3は、プリフォーム10を作製する際に、プリフォーム10を射出成形金型から抜きやすくするために設けられている角度(いわゆる抜き勾配)であっても良い。小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4は、0°超としても良く、0.1°以上としても良く、0.2°以上としても良い。小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4は、5°以下としても良く、1°以下としても良く、0.7°以下としても良い。角度θ4は、角度θ3と同一であっても良い。
【0116】
小径部23の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状である。小径部23の外面23aは、高さ方向に沿って変化する外径D9を有している。小径部23の内面23bは、高さ方向に沿って変化する内径D10を有している。小径部23の外径D9及び内径D10は、それぞれ縮径部22側から底部30側に向けて徐々に細くなっている。なお、垂直断面において、小径部23の外面23aは全体として直線状であるが、小径部23の外面23aの一部が曲線状であっても良い。同様に、垂直断面において、小径部23の内面23bは全体として直線状であるが、小径部23の内面23bの一部が曲線状であっても良い。
【0117】
小径部23の厚みT4は、縮径部22(第2境界部27)側から底部30(第1境界部26)側まで均一となっている。言い換えれば、小径部23の厚みT4と、第2境界部27における厚みT3と、第1境界部26における厚みT5とは、互いに同一である(T3=T4=T5)。小径部23の厚みT4(=T3=T5)は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。小径部23の厚みT4(=T3=T5)は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。
【0118】
第1境界部26における小径部23の外径D11は、15mm以上としても良く、18mm以上としても良く、20mm以上としても良い。第1境界部26における小径部23の外径D11は、27mm以下としても良く、25mm以下としても良く、24mm以下としても良い。第1境界部26における小径部23の内径D12は、例えば15mm以上としても良く、16mm以上としても良く、17mm以上としても良い。第1境界部26における小径部23の内径D12は、24mm以下としても良く、22mm以下としても良く、20mm以下としても良い。
【0119】
底部30は、小径部23の下部に連結されており、外面30aと内面30bとを有する。小径部23と底部30の境界には、第1境界部26が存在する。第1境界部26は、垂直断面において、小径部23の内面23bと底部30の内面30bとのなす角度、及び、小径部23の外面23aと底部30の外面30aとのなす角度が大きく変化する箇所である。言い換えれば、第1境界部26とは、垂直断面(
図2B)において、小径部23の内面23bから底部30の内面30bに向かう途中で、曲率半径が最初に100mm以下となる箇所、及び、小径部23の外面23aから底部30の外面30aに向かう途中で、曲率半径が最初に100mm以下となる箇所をいう。小径部23の内面23bと底部30の内面30bとのなす角度が大きく変化する箇所と、小径部23の外面23aと底部30の外面30aとのなす角度が大きく変化する箇所とが高さ方向にずれている場合、第1境界部26は、これらのうち、より口部11に近い方の箇所をいう。
【0120】
底部30の高さ方向の長さL5は、例えば5mm以上としても良く、6mm以上としても良く、7mm以上としても良い。底部30の高さ方向の長さL5は、11mm以下としても良く、10mm以下としても良く、9mm以下としても良い。底部30は、全体として略半球形状である。垂直断面において、底部30の外面30aは全体として半円形状であるが、底部30の外面30aが非円弧の部分を含む曲線形状であっても良い。同様に、垂直断面において、底部30の内面30bは全体として半円形状であるが、底部30の内面30bの一部が非円弧の部分を含む曲線形状であっても良い。垂直断面において、底部30の外面30aを構成する半円の中心O1は中心軸CLに存在する。また、底部30の内面30bを構成する半円の中心O2は中心軸CLに存在する。底部30の内面30bを構成する半円の中心O2は、底部30の外面30aを構成する半円の中心O1と同一の位置に存在しても良い。また、底部30の水平断面は、高さ方向全体にわたって円形状である。
【0121】
底部30の外面30aを構成する半円の曲率半径R1は、8mm以上としても良く、9mm以上としても良く、10mm以上としても良い。底部30の外面30aを構成する半円の曲率半径R1は、15mm以下としても良く、13mm以下としても良く、12mm以下としても良い。底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2は、7mm以上としても良く、7.5mm以上としても良く、8mm以上としても良い。底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2は、11mm以下としても良く、10.5mm以下としても良く、7mm以下としても良い。
【0122】
曲率半径R2に対する曲率半径R1の比(R1/R2)は、1.0超としても良く、1.1以上としても良く、1.2以上としても良い。曲率半径R2に対する曲率半径R1の比(R1/R2)は、1.9以下としても良く、1.5以下としても良く、1.3以下としても良い。上記比を2.0以下とすることにより、底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2が小さくなりすぎず、小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4が大きくなりすぎて射出成形法によってプリフォーム10を作製しにくくなることを抑制できる。上記比を1.0超とすることにより、底部30の内面30bを構成する半円の曲率半径R2が大きくなりすぎず、第1境界部26における小径部23の厚みT5を確保し、射出成形法によってプリフォーム10を作製しにくくなることを抑制できる。
【0123】
底部30の厚みT6は、胴部20(第1境界部26)側から底部30の最下部31(底部30と中心軸CLとが交わる部分)に向けて徐々に薄くなっている。すなわち第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、最下部31における底部30の厚みT7よりも厚い。第1境界部26における厚みT5は、底部30の中で最も厚い。
【0124】
第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、1.5mm以上としても良く、1.7mm以上としても良く、1.9mm以上としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5は、3.0mm以下としても良く、2.7mm以下としても良く、2.5mm以下としても良い。最下部31における底部30の厚みT7は、1.2mm以上としても良く、1.4mm以上としても良く、1.5mm以上としても良い。最下部31における底部30の厚みT7は、2.4mm以下としても良く、2.2mm以下としても良く、2.0mm以下としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T5)は、0.5以上としても良く、0.6以上としても良く、0.7以上としても良い。第1境界部26における底部30(小径部23)の厚みT5に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T5)は、1.0以下としても良く、0.9以下としても良く、0.85以下としても良い。
【0125】
本実施の形態において、大径部21の厚みT1に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T1)は、0.80以上としても良く、0.82以上としても良く、0.83以上としても良い。大径部21の厚みT1に対する、最下部31における底部30の厚みT7の割合(T7/T1)は、1.05以下としても良く、0.95以下としても良く、0.93以下としても良い。上記割合T7/T1が0.80以上となることにより、後述するプラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記割合T7/T1が1.05以下となることにより、プラスチックボトル40の成形時に延伸されにくいプリフォーム10の底部30の厚みを薄くすることで、同じ重量のプリフォーム10でも延伸される胴部42やヒール部49に厚みを持たせることが可能となる。これによってプリフォーム10の軽量化が可能になる。
【0126】
胴部20と底部30との高さ方向の合計長さ(すなわちプリフォーム10のうち、サポートリング14よりも下の部分の高さ方向の長さ)は、L6であり、この合計長さL6は、上述した長さL2、L3、L4、及びL5の合計である(L6=L2+L3+L4+L5)。上記合計長さL6は、44.0mm以上としても良く、51.0mm以上としても良く、52.0mm以上としても良い。上記合計長さL6は、63.0mm以下としても良く、58.0mm以下としても良く、56.5mm以下としても良い。上記合計長さL6が44.0mm以上となることにより、後述するプラスチックボトル40を成形するときの縦方向の延伸倍率が大きくなりすぎず、過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記合計長さL6が63.0mm以下となることにより、プリフォーム10の質量を一定とした場合、合計長さL6を抑える分、胴部20の厚みが薄くなりにくい。このため、プラスチックボトル40を成形するときに胴部42が白化することを抑えられる。また、プリフォーム10の合計長さL6が長すぎないことにより、縦延伸が小さくなったり、縦延伸しなくなったりすることを抑制できる。このため、プラスチックボトル40が容量100mL程度の背の低い小型ボトルであったとしても、成形しやすい。
【0127】
プリフォーム10の全長は、L7であり、この全長L7は、上述した合計長さL6と長さL1との合計である(L7=L1+L6)。プリフォーム10の全長L7は、58mm以上としても良く、65mm以上としても良く、70mm以上としても良い。プリフォーム10の全長L7は、90mm以下としても良く、85mm以下としても良く、80mm以下としても良い。
【0128】
プリフォーム10の口部11の質量をW1とし、胴部20及び底部30の合計質量をW2とする。このとき、口部11の質量W1に対する、胴部20及び底部30の合計質量W2の割合(W2/W1)は、1.80以上としても良く、1.95以上としても良く、2.10以上としても良い。口部11の質量W1に対する、胴部20及び底部30の合計質量W2の割合(W2/W1)は、2.70以下としても良く、2.55以下としても良く、2.40以下としても良い。上記割合W2/W1が1.80以上となることにより、胴部20及び底部30の樹脂量が過度に少なくならない。このため、後述するプラスチックボトル40を成形するときの縦方向に過延伸状態となることを抑制できる。これにより、プラスチックボトル40のヒール部49に白化とよばれる不具合が生じたり、ヒール部49の強度が低下したりすることを抑制できる。上記割合W2/W1が2.70以下となることにより、プリフォーム10の質量が重くなりすぎることを抑制できる。
【0129】
口部11の質量W1は、3.4g以上としても良く、3.9g以上としても良く、4.4g以上としても良い。口部11の質量W1は、6.8g以下としても良く、5.9g以下としても良く、5.4g以下としても良い。胴部20及び底部30の合計質量W2は、7.5g以上としても良く、8.2g以上としても良く、9.0g以上としても良い。胴部20及び底部30の合計質量W2は、12.2g以下としても良く、11.4g以下としても良く、10.7g以下としても良い。プリフォーム10の全質量(W1+W2)は、11.5g以上としても良く、12.5g以上としても良く、13.5g以上としても良い。プリフォーム10の全質量(W1+W2)は、16.5g以下としても良く、16.0g以下としても良く、15.5g以下としても良い。
【0130】
上述のように、プリフォーム10の胴部20のうち、大径部21は厚みT1を有し、縮径部22は厚みT2を有し、小径部23は厚みT4を有する。
【0131】
本実施の形態において、大径部21の厚みT1、縮径部22の厚みT2、小径部23の厚みT4は以下のような関係にある。
【0132】
大径部21の厚みT1の平均値≦小径部23の厚みT3の平均値。
またプリフォーム10の胴部20は大径部21と、縮径部22と、小径部23とからなるが、胴部20の最も厚みの薄い薄肉部20Aは縮径部22に存在する。
【0133】
このように胴部20の最も厚みが薄い薄肉部20Aが縮径部22に存在するため、本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0134】
すなわち、本実施の形態によるプリフォーム10に対してブロー成形を施すことによりプラスチックボトル40が得られる。この際、プリフォーム10の縮径部22がプラスチックボトル40の肩部48に略対応する。この場合、ブロー成形時にプリフォーム10の縮径部22が十分に伸びきらないと、ブロー成形時に肩部48の上部48aに関し、プリフォーム10の伸びが不十分となり、成形性が悪化することが考えられる。
【0135】
他方、プリフォーム10のサポートリング14の直下に形成された大径部21は、ブロー成形工程においてプリフォーム10を搬送させるために図示しないグリッパに把持される部分であって、所望の外径をもたないと、グリッパがプリフォーム10に確実に係合できないことが考えられる。
【0136】
また大径部21はグリッパに把持される部分であるから、所望の厚みも有する必要がある。
【0137】
そこで本実施の形態においては、サポートリング14の直下に設けられた大径部21に近接する縮径部22に、胴部20の中で最も厚みが薄い薄肉部20Aを設けた。このことにより、プリフォーム10を用いたブロー成形工程中に、プリフォーム10を問題なく把持することができる。またブロー成形工程において薄肉部20Aを確実に引き伸ばすことができ、これによりブロー成形によってプラスチックボトル40の肩部48、とりわけ肩部48の上部48aを精度良く成形することができる。
【0138】
また、大径部21の厚みT1の平均値≦小径部23の厚みT4の平均値となっているため、小径部23によりプラスチックボトル40の大部分を占める胴部42を確実に成形することができる。
【0139】
また縮径部22に薄肉部20Aを設けることにより、ブロー成形中に縮径部22を伸ばしてプラスチックボトル40の肩部48、とりわけ肩部48の上部48aを精度良く成形することができる。
【実施例0140】
次に本実施の形態における具体的実施例について
図5および
図6により説明する。
【0141】
本開示において実施例1が第1の実施の形態に対応し、実施例2が第2の実施の形態に対応する。
また縮径部22に薄肉部20Aを設けることにより、ブロー成形中に縮径部22を伸ばしてプラスチックボトル40の肩部48、とりわけ肩部48の上部48aを精度良く成形することができた。