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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025503
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】建設業務支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20250214BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20250214BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130321
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】519200285
【氏名又は名称】dxAEC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 昌英
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】松田 耕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 潤一
(72)【発明者】
【氏名】檜山 和則
(72)【発明者】
【氏名】片倉 潤也
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA09
5L049AA09
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援して作業効率の向上を図る。
【解決手段】建設プロジェクトに関する建設業務を支援するための建設業務支援システムにおいて、過去の建設プロジェクトを行った際に取得したプロジェクト実績情報を用いて、建設業務について支援する建設業務支援処理を実行可能な建設業務支援装置100が備えられ、新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、建設業務支援装置100が、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援する建設業務支援処理を実行可能に構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設プロジェクトに関する建設業務を支援するための建設業務支援システムにおいて、
過去の建設プロジェクトを行った際に取得したプロジェクト実績情報を用いて、建設業務について支援する建設業務支援処理を実行可能な建設業務支援装置が備えられ、
新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、前記建設業務支援装置が、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援する建設業務支援処理を実行可能に構成されている建設業務支援システム。
【請求項2】
前記建設業務支援装置は、
建設プロジェクトのプロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行うプロジェクトデータベース作成部と、
そのプロジェクトデータベース作成部にて作成されたプロジェクトデータベースを入力データとして、そのプロジェクトデータベースに演算処理を加えて、プロジェクトを実行するために必要となるプロジェクト実行データベースを作成するプロジェクト実行データベース作成処理を行うプロジェクト実行部と、
前記プロジェクトデータベース作成部におけるプロジェクトデータベースの作成と、前記プロジェクト実行部におけるプロジェクト実行データベースの作成とに必要な情報を含むデータベースを蓄積するデータベース群と、
前記プロジェクトデータベース作成部にて作成されたプロジェクトデータベースと、前記プロジェクト実行部にて作成されたプロジェクト実行データベースとを蓄積し、それら蓄積したデータベースのデータ分析処理を行うデータベース分析部と、
前記プロジェクトデータベース作成部と前記プロジェクト実行部と前記データベース群と前記データベース分析部との間での情報の授受を行って各部を連携させる情報連携部とが備えられ、
前記情報連携部は、前記データベース分析部によるデータベース分析処理により得られた分析結果情報を前記データベース群に送り、分析結果情報に関する分析結果情報データベースに蓄積させる分析結果蓄積処理を実行可能に構成され、
過去の建設プロジェクトにて建設業務を行った場合に、前記建設業務支援装置が、前記プロジェクトデータベース作成部によるプロジェクトデータベース作成処理、前記プロジェクト実行部によるプロジェクト実行データベース作成処理、前記データベース分析部によるデータ分析処理、及び、前記情報連携部による分析結果蓄積処理を行うことで、作成されたプロジェクトデータベースと作成されたプロジェクト実行データベースと前記データベース群に蓄積される分析結果情報データベースとを前記プロジェクト実績情報として取得しており、
新規の建設プロジェクトにて建設業務を行う場合に、前記建設業務支援装置は、前記建設業務支援処理として、前記情報連携部が、分析結果情報データベースに蓄積された分析結果情報を前記データベース群から前記プロジェクトデータベース作成部に送って分析結果情報を回帰させる第1回帰処理を行い、前記プロジェクトデータベース作成部が、その分析結果情報を用いて、プロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行う第1支援処理を実行可能に構成されている請求項1に記載の建設業務支援システム。
【請求項3】
前記建設業務支援装置は、建設ライフサイクルが時間軸上で分割された複数のフェーズの夫々において、前記プロジェクトデータベース作成部によるプロジェクトデータベース作成処理、前記プロジェクト実行部によるプロジェクト実行データベース作成処理、前記データベース分析部によるデータ分析処理、及び、前記情報連携部による分析結果蓄積処理の夫々の処理が実行可能に構成され、
複数のフェーズのうちの特定フェーズにおいて前記建設業務支援装置が前記第1支援処理を行う場合に、前記第1回帰処理として、前記情報連携部が、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズにて取得された分析結果情報を、前記データベース群から前記プロジェクトデータベース作成部に送って、フェーズを跨ぐ状態で分析結果情報を回帰自在に構成されている請求項2に記載の建設業務支援システム。
【請求項4】
意思決定を含む建設業務を行う場合には、前記第1支援処理において、前記プロジェクトデータベース作成部が、前記分析結果情報に基づいて、意思決定を支援する推奨処理を行うように構成されている請求項2又は3に記載の建設業務支援システム。
【請求項5】
前記プロジェクトデータベース作成部は、前記プロジェクトデータベース作成処理において、作成するプロジェクトデータベースと前記データベース群との間でのデータの紐付け処理を行い、
前記プロジェクト実行部は、前記プロジェクト実行データベース作成処理において、前記プロジェクトデータベース作成部によるデータの紐付け処理にて紐付けられたデータを用いて、プロジェクト実行データベースを作成する第2支援処理を前記建設業務支援処理として実行可能に構成されている請求項2又は3に記載の建設業務支援システム。
【請求項6】
前記プロジェクトデータベース作成部は、前記プロジェクトデータベース作成処理において、建設ライフサイクルが時間軸上で分割された複数のフェーズに亘る状態で、作成するプロジェクトデータベースと前記データベース群との間でのデータの紐付け処理を行う請求項2又は3に記載の建設業務支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設プロジェクトに関する建設業務を支援するための建設業務支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の建設業務支援システムとして、例えば、新たな建物を建設する新規の建設プロジェクトにおいて、設計対象となる新規の建物の室を設計する設計業務を支援する設計支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の設計支援装置では、既に設計が完了した建物である実績建物の用途と実績建物の室の用途と実績建物の室の設計条件とを組み合わせた実績情報を取得し、その実績情報の中から、設計対象の建物の用途と設計対象の建物の室の用途とに対応する設計条件を抽出して、その抽出した設計条件を設計対象の建物の室の設計条件として表示部に表示させるように出力している。
【0004】
ユーザである建築設計者は、表示部に表示された設計条件を参考にしながら、設計対象の建物の室の設計条件を決定していくことができるので、一から設計作業を行うよりも、設計業務を効率よく進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7077512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新規の建設プロジェクトを実行するにあたり、建設業の商慣行上、建設ライフサイクルを時間軸上で複数に分割して、フェーズ別に分業化して建設プロジェクトを管理することが広く行われている。ここで、「建設ライフサイクル」を、建物を作る意志の発生から建物の消滅に至るまでの期間とすることができ、その建設ライフサイクルを、例えば、「企画・開発期間」、「基本計画期間」、「基本設計期間」、「詳細設計期間」、「着工準備期間」、「施工期間」、「施設維持管理期間」等の複数のフェーズに分割している。
【0007】
このように、建設ライフサイクルにおいて分割された複数のフェーズを順次進めていく場合に、複数のフェーズの夫々において多数多様な建設業務が発生する。例えば、人による意思決定を含む建設業務が存在する。この意思決定を含む建設業務は、特許文献1に記載の設計業務が含まれているが、他にも多数の建設業務が存在する。例えば、建設プロジェクトの「企画・開発期間」や「基本計画期間」等のフェーズの初期段階では、建物のデザインを決定したり、工事予算を算定する等の建設業務がある。「詳細設計期間」等のフェーズでは、建物を構成する各部位の材料、仕様、数量等を決定する等の建設業務がある。「施工期間」等のフェーズでは、工法の種類を決定する等の建設業務がある。
【0008】
意思決定を含む建設業務では、顧客の要望や建物の条件等の多種多様な条件を考慮して、多種多様の選択肢の中から選択する作業を行わなければならず、複雑で難解な作業となっている。特許文献1では、設計業務を効果的に支援することができるものの、建設ライフサイクルの全体でみると、ごくわずかの建設業務を支援できるに過ぎず、もっと多くの建設業務について支援することが求められている。
【0009】
また、建設ライフサイクルにおいて分割された複数のフェーズを順次進めていく場合には、意思決定を含む建設業務だけでなく、他の種類の建設業務も多数発生し、それらの建設業務についても手間のかかる作業となっているので、これらの建設業務についても支援することが求められている。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援して作業効率の向上を図ることができる建設業務支援システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、建設プロジェクトに関する建設業務を支援するための建設業務支援システムにおいて、
過去の建設プロジェクトを行った際に取得したプロジェクト実績情報を用いて、建設業務について支援する建設業務支援処理を実行可能な建設業務支援装置が備えられ、
新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、前記建設業務支援装置が、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援する建設業務支援処理を実行可能に構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、建設業務支援装置は、複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援する建設業務支援処理を実行可能であるので、建設ライフサイクルの全体において、建設業務を行う場合には、プロジェクト実績情報を用いて、その建設業務を支援することができる。これにより、新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、時間軸上で分割された複数のフェーズを有する建設ライフサイクルの全体に亘って、建設業務を支援して作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記建設業務支援装置は、
建設プロジェクトのプロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行うプロジェクトデータベース作成部と、
そのプロジェクトデータベース作成部にて作成されたプロジェクトデータベースを入力データとして、そのプロジェクトデータベースに演算処理を加えて、プロジェクトを実行するために必要となるプロジェクト実行データベースを作成するプロジェクト実行データベース作成処理を行うプロジェクト実行部と、
前記プロジェクトデータベース作成部におけるプロジェクトデータベースの作成と、前記プロジェクト実行部におけるプロジェクト実行データベースの作成とに必要な情報を含むデータベースを蓄積するデータベース群と、
前記プロジェクトデータベース作成部にて作成されたプロジェクトデータベースと、前記プロジェクト実行部にて作成されたプロジェクト実行データベースとを蓄積し、それら蓄積したデータベースのデータ分析処理を行うデータベース分析部と、
前記プロジェクトデータベース作成部と前記プロジェクト実行部と前記データベース群と前記データベース分析部との間での情報の授受を行って各部を連携させる情報連携部とが備えられ、
前記情報連携部は、前記データベース分析部によるデータベース分析処理により得られた分析結果情報を前記データベース群に送り、分析結果情報に関する分析結果情報データベースに蓄積させる分析結果蓄積処理を実行可能に構成され、
過去の建設プロジェクトにて建設業務を行った場合に、前記建設業務支援装置が、前記プロジェクトデータベース作成部によるプロジェクトデータベース作成処理、前記プロジェクト実行部によるプロジェクト実行データベース作成処理、前記データベース分析部によるデータ分析処理、及び、前記情報連携部による分析結果蓄積処理を行うことで、作成されたプロジェクトデータベースと作成されたプロジェクト実行データベースと前記データベース群に蓄積される分析結果情報データベースとを前記プロジェクト実績情報として取得しており、
新規の建設プロジェクトにて建設業務を行う場合に、前記建設業務支援装置は、前記建設業務支援処理として、前記情報連携部が、分析結果情報データベースに蓄積された分析結果情報を前記データベース群から前記プロジェクトデータベース作成部に送って分析結果情報を回帰させる第1回帰処理を行い、前記プロジェクトデータベース作成部が、その分析結果情報を用いて、プロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行う第1支援処理を実行可能に構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、過去の建設プロジェクトにて建設業務を行った場合に、プロジェクトデータベース作成部がプロジェクトデータベース作成処理を行い、プロジェクト実行部がプロジェクト実行データベース作成処理を行うことで、過去の建設プロジェクトに応じたプロジェクトデータベースとプロジェクト実行データベースとをデータベース分析部にて蓄積することができる。ここで、例えば、プロジェクトデータベースは、建物を構成する施設の機能や面積から、建設に必要な材料や設備、構造材とその仕様と数量等を、部位別等の方法で記述したデータの集合体であって、施設や材料の配置や形状や位置の集合体であるBIMモデルと連携されて従来の設計図書を代替する機能を果たすものであり、プロジェクト実行データベースは、プロジェクトを実行するために必要となる計算書等である。
【0015】
データベース分析部がデータ分析処理を行い、情報連携部が分析結果蓄積処理を行うことで、これまでプロジェクト関係者に属人的に蓄積された経験値やノウハウは、蓄積されたプロジェクトデータベースやプロジェクト実行データベースから、インサイト・データとして分析結果情報を取得して、その分析結果情報に関する分析結果情報データベースをデータベース群に蓄積している。
【0016】
このようにして、過去の建設プロジェクトにて建設業務を行った場合に、その過去の建設プロジェクトに応じたプロジェクトデータベースとプロジェクト実行データベースとがデータベース分析部に蓄積され、その過去の建設プロジェクトから得られるインサイト・データとしての分析結果情報がデータベース群の分析結果情報データベースに蓄積される。
【0017】
新規の建設プロジェクトにおいて、プロジェクトデータベースを作成する建設業務を行う場合に、建設業務支援装置は、情報連携部による第1回帰処理とプロジェクトデータベース作成部によるプロジェクトデータベース作成処理とを行う第1支援処理を行うことで、過去の建設プロジェクトに応じたプロジェクトデータベースやプロジェクト実行データベースだけでなく、インサイト・データとしての分析結果情報を参照しながら、プロジェクトデータベースを作成することができる。これにより、プロジェクトデータベースとして、インサイト・データを活用した有効なプロジェクトデータベースを作成できるとともに、そのプロジェクトデータベースの作成作業自体も簡易なものとなる。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、前記建設業務支援装置は、建設ライフサイクルが時間軸上で分割された複数のフェーズの夫々において、前記プロジェクトデータベース作成部によるプロジェクトデータベース作成処理、前記プロジェクト実行部によるプロジェクト実行データベース作成処理、前記データベース分析部によるデータ分析処理、及び、前記情報連携部による分析結果蓄積処理の夫々の処理が実行可能に構成され、
複数のフェーズのうちの特定フェーズにおいて前記建設業務支援装置が前記第1支援処理を行う場合に、前記第1回帰処理として、前記情報連携部が、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズにて取得された分析結果情報を、前記データベース群から前記プロジェクトデータベース作成部に送って、フェーズを跨ぐ状態で分析結果情報を回帰自在に構成されている点にある。
【0019】
本構成によれば、特定フェーズにて第1支援処理を行う場合に、その特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズにて取得された分析結果情報を参照することができるので、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズでのインサイト・データ等を踏まえて、特定フェーズにおけるプロジェクトデータベースを作成することができ、効果的なプロジェクトデータベースを効率よく作成することができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、意思決定を含む建設業務を行う場合には、前記第1支援処理において、前記プロジェクトデータベース作成部が、前記分析結果情報に基づいて、意思決定を支援する推奨処理を行うように構成されている点にある。
【0021】
本構成によれば、意思決定を含む建設業務を行う場合には、推奨処理として、例えば、分析結果情報に基づいた一定の適切さを持った比率や定数を提示する処理や、複数の選択肢のから最善のものを選択するための推奨案を提示する等の処理を行うことができる。これにより、プロジェクト関係者は、効率よく且つ正確な意思決定を行うことができるので、意思決定を含む建設業務を効果的に支援することができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、前記プロジェクトデータベース作成部は、前記プロジェクトデータベース作成処理において、作成するプロジェクトデータベースと前記データベース群との間でのデータの紐付け処理を行い、
前記プロジェクト実行部は、前記プロジェクト実行データベース作成処理において、前記プロジェクトデータベース作成部によるデータの紐付け処理にて紐付けられたデータを用いて、プロジェクト実行データベースを作成する第2支援処理を前記建設業務支援処理として実行可能に構成されている点にある。
【0023】
データの紐付け処理としては、例えば、第1のデータと第2のデータとの間に共通の識別子等を持たせることにより、その識別子を用いて、第1のデータから第2のデータを呼び出すことができるようにするための処理とすることができる。これにより、プロジェクト実行部が第2支援処理を行う場合に、データの紐付け処理にて紐付けられたデータベース群のデータを簡易に呼び出すことができるとともに、その呼び出したデータを参照しながらプロジェクト実行データベースを作成することができるので、プロジェクト実行データベースを効率よく作成することができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、前記プロジェクトデータベース作成部は、前記プロジェクトデータベース作成処理において、建設ライフサイクルが時間軸上で分割された複数のフェーズに亘る状態で、作成するプロジェクトデータベースと前記データベース群との間でのデータの紐付け処理を行う点にある。
【0025】
本構成によれば、プロジェクトデータベース作成部が、複数のフェーズに亘る状態でプロジェクトデータベースとデータベース群との間でデータの紐付け処理を行うことで、複数のフェーズの夫々にて、時系列的にバラバラと発生するデータを、1つの糸で紐付けることができる。これにより、各部門、各組織で、工程が進むごとに、前工程で発生する情報を後工程で転記、確認するといった作業をこれまで行っているが、そうした作業工程の一切を省略できる、つまり半自動化、一部の自動化が実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】建設ライフサイクルにおいて時間軸上で分割された複数のフェーズを示す図
図2】建設業務支援装置の概略構成を示すブロック図
図3】複数のフェーズの夫々におけるプロジェクトデータベース作成部、プロジェクト実行部、ベータベース分析部、予測モデルでの処理を示す図
図4】第1支援処理の具体例1-1における処理や情報の流れを示す図
図5】データベースとプロジェクトデータベースとの一例を示す図
図6】プロジェクトデータベースとデータ分析処理における分析状況を示す図
図7】第1支援処理の具体例1-2における処理や情報の流れを示す図
図8】データベースとプロジェクトデータベースとの一例を示す図
図9】第1支援処理の具体例1-2における処理や情報の流れを示す図
図10】第1支援処理の具体例1-3における処理や情報の流れを示す図
図11】第1支援処理の具体例1-4における処理や情報の流れを示す図
図12】第2支援処理の具体例2-1における処理や情報の流れを示す図
図13】データの紐付け処理を示す図
図14】第2支援処理の具体例2-1におけるデータの紐付け状態を示す図
図15】複数の識別子を用いてデータの紐付け処理を行った場合のデータの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る建設業務支援システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
新たな建物を建設する新規の建設プロジェクトを実行するに当たり、図1に示すように、建設ライフサイクルを時間軸上で複数に分割して、フェーズ別に分業化して建設プロジェクトを管理することが行われている。
【0028】
ここで、「建設ライフサイクル」を、建物を作る意志の発生から建物の消滅に至るまでの期間としている。図1では、建設ライフサイクルを、例えば、「0pH 企画・開発期間」、「1pH 基本計画期間」、「2pH 基本設計期間」、「3pH 詳細設計期間」、「4pH 着工準備期間」、「5pH 施工期間」、「6pH 施設維持管理期間」等の複数のフェーズ(pH)に分割している。
【0029】
建設ライフサイクルにおいて分割された複数のフェーズの夫々において、プロジェクトを進めるための建設業務が発生する。建設プロジェクトの「企画・開発期間」や「基本計画期間」等のフェーズの初期段階では、敷地を決定したり、建物に含める施設の機能や規模の組み合わせを意思決定したり、建設事業収支計画や工事予算を算定したり、予測したりする等の建設業務が発生する。「基本設計期間」等のフェーズでは、建物の敷地への配置、各階の施設の配置、構造や設備の設計条件を検討したり、意思決定を行う。「詳細設計期間」等のフェーズでは、建物を構成する各部位の材料、仕様、数量等を決定する等の建設業務が発生する。「施工期間」等のフェーズでは、実際に建物を施工する協力会社と契約したり、材料を発注したり、工事工程を管理したりする建設業務が発生する。
【0030】
このように、建設プロジェクトを進めるための建設業務としては、建物の大きさ、配置、デザイン、使用する材料や設備や構造とその組み合わせに至るまで様々な意思決定を含む建設業務が発生するが、この意思決定を含む建設業務だけでなく、そうした意思決定を受けて、例えば、機能や性能の検討のための計算書や、数量計算書、見積計算書、工事計画書の作成、や発注指図書の作成等、他の各種の建設業務も多数発生することになる。
【0031】
そこで、図2に示すように、過去の建設プロジェクトを行った際に取得したプロジェクト実績情報を用いて、建設業務について支援する建設業務支援処理を実行可能な建設業務支援装置100が備えられている。この建設業務支援装置100は、データ、データベース及びデジタル技術を利用することで、過去の建設プロジェクトを行ったときに得られた各種の情報(経験値やノウハウ等の抽出が可能な情報群)をデータ化してプロジェクト実績情報として蓄積しており、新規の建設プロジェクトを行う場合に、建設業務に関与する各種のプロジェクト関係者に対して、建設業務支援処理を実行することで、蓄積したプロジェクト実績情報を用いた建設業務の支援を行う情報処理システムとなっている。ここで「プロジェクト関係者」とは、建築主、事業主、設計事務所、積算見積事務所、建設材料のサプライヤー、施工会社、実際に建物の工事を行う協力会社、建物使用者等を広く含めているものとする。
【0032】
建設業務支援装置100は、新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、建設ライフサイクルにおける特定のフェーズだけでなく、建設ライフサイクルの全体に亘って建設業務支援処理を実行可能としている。これにより、建設ライフサイクルの全体に亘って建設業務を適切に支援することができるので、建設ライフサイクルの全体において建設業務の業務効率の改善を図ることができ、建設ライフサイクルの全体として効果的に作業効率の向上を図ることができる。
【0033】
建設業務支援装置100は、図2に示すように、プロジェクトデータベース作成部101と、データベース群201と、プロジェクト実行部301と、データベース分析部401と、プロジェクトデータベース作成部101とプロジェクト実行部301とデータベース群201とデータベース分析部401との間での情報の授受を行って各部を連携させる情報連携部501とが備えられている。
【0034】
(プロジェクトデータベース作成部)
プロジェクトデータベース作成部101は、建設プロジェクトのプロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行うものである。プロジェクトデータベースは、BIMモデルとセットになって、従来の設計図書に相当する情報を集積したものである。例えば、プロジェクトデータベースは、建物を構成する施設の機能や面積から、建設に必要な材料や設備、構造材とその仕様と数量等を、部位別等の方法で記述したデータの集合体である。施設や材料の配置や形状や位置の集合体であるBIMモデルとプロジェクトデータベースをリンクさせたデジタルツインを構成することで、従来の設計図書を代替する機能を果たす。
【0035】
プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベース作成処理を行うことで、例えば、顧客の求める建物用途、立地、機能、性能等の条件から、それに合致するまたは推定される設計条件やデザイン等の要件や仕様、その他のデータをデータベース群201から呼び出し、設計者やデザイナー等のプロジェクト関係者が、その呼び出したデータ等を用いて、新規の建設プロジェクトに使用する材料等を選択し、その選択情報等をデータ化したものを新規のプロジェクトデータベースとして作成している。
【0036】
プロジェクトデータベース作成部101は、各種の情報を入力自在な第1入力装置102と、その第1入力装置102の入力情報を要件情報として、その要件情報に応じた材料、仕様や数量等を予測する処理等を行う予測モデル103と、その予測データ等からプロジェクト関係者により選択された選択情報等をデータ化してプロジェクトデータベースを構築する第1処理装置104と、その第1処理装置104にて構築されたプロジェクトデータベースを保存するプロジェクトデータベース部105とが備えられている。プロジェクトデータベース作成部101は、予測モデル103の予測処理等と第1処理装置104のデータ化処理等とを行うことで、プロジェクトデータベース生成処理を行っている。
【0037】
(プロジェクト実行部)
プロジェクト実行部301は、プロジェクトデータベース作成部101にて作成されたプロジェクトデータベースを入力情報として、そのプロジェクトデータベースに演算処理等を加えて、プロジェクトを実行するために必要となるプロジェクト実行データベースを作成するプロジェクト実行データベース作成処理を行うものである。
【0038】
プロジェクト実行データベースは、プロジェクトデータベースを入力情報として、プロジェクトを実行するために必要な計算書等であり、この計算書としては、例えば、工事計画書、性能計算書、数量計算書、見積計算書、原価分解書、調達・購買計画書、発注指図書、工事指図書等が該当する。
【0039】
プロジェクト実行部301は、プロジェクト実行データベース作成処理を行う第2処理装置302と、その第2処理装置302にて作成されたプロジェクト実行データベースを出力する第1出力装置303と、作成されたプロジェクト実行データベースを保存するプロジェクト実行データベース部304とが備えられている。
【0040】
(データベース群)
データベース群201は、プロジェクトデータベース作成部101におけるプロジェクトデータベースの作成と、プロジェクト実行部301におけるプロジェクト実行データベースの作成とに必要な情報を含むデータベースを蓄積するものである。
【0041】
データベースとしては、例えば、計画データベース(A~H)とマーケットデータベース(J~M)とに大きく2つに分けられている。計画データベースとしては、例えば、建築主・顧客データベース、企業の資源のデータベース、建物の施設機能のデータベース、建築材料のデータベース、BIMモデル(建物の配置、位置、形状等に関するデータベース)、施工計画や施工管理のためのデータベース、品質管理のデータベースに加え、データベース分析部401の分析結果情報データベース等が含まれている。マーケットデータベースとしては、例えば、敷地情報データベース、法令データベース、メーカー製品データベース、協力会社のデータベース等が含まれている。
【0042】
データベース群201は、データベースを生成するための各種の情報を入力自在な第2入力装置202と、各種のデータベースが蓄積して保存されているデータベース部203とが備えられている。
【0043】
(データベース分析部)
データベース分析部401は、プロジェクトデータベース作成部101にて作成されたプロジェクトデータベース群と、プロジェクト実行部301にて作成されたプロジェクト実行データベース群とを全て蓄積し、それら蓄積したデータベース群のデータ分析処理を行うものである。これまでプロジェクト関係者に属人的に蓄積された経験値やノウハウは、データベース分析部401にてデータ分析処理を行うことで、蓄積されたプロジェクトデータベース群やプロジェクト実行データベース群から、インサイト・データとして分析結果情報を取得することができる。
【0044】
データベース分析部401は、プロジェクトデータベース群とプロジェクト実行データベース群とを蓄積するデータベース蓄積部402と、データ分析処理を行う第3処理装置403と、その第3処理装置403がデータ分析処理を行う際に用いられる機械学習部404と、第3処理装置403のデータ分析処理による分析結果情報を出力自在な第2出力装置405とが備えられている。
【0045】
(情報連携部)
情報連携部501は、プロジェクトデータベース作成部101とプロジェクト実行部301とデータベース群201とデータベース分析部401との間での情報の授受を行って各部を連携させるものである。例えば、プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベース作成処理を行う場合に、情報連携部501が、データベース群201に蓄積されたデータのうち、呼び出し対象となるデータをプロジェクトデータベース作成部101の予測モデル103に呼び出すことで、そのデータを活用しながら、プロジェクトデータベースを作成することができる。プロジェクト実行部301にてプロジェクト実行データベース作成処理を行う場合にも、情報連携部501が、データベース群201に蓄積されたデータのうち、呼び出し対象となるデータをプロジェクト実行部301の第2処理装置302に呼び出すことで、そのデータを活用しながら、プロジェクト実行データベースを作成することができる。
【0046】
情報連携部501は、データベース分析部401によるデータベース分析処理により得られた分析結果情報をデータベース群201に送り、分析結果情報に関する分析結果情報データベースに蓄積させる分析結果蓄積処理を実行可能に構成されている。分析結果情報データベースは、図2において、データベースHとなっており、情報連携部501にて分析結果蓄積処理を行うことで、このデータベースHには、インサイト・データとして分析結果情報が蓄積されている。過去のプロジェクト情報から得られた情報を、新規のプロジェクト情報の作成の予測のために使用するので、この部分を回帰回路と呼んでいる。
【0047】
このように、建設業務支援装置100は、プロジェクトデータベース作成部101によるプロジェクトデータベース作成処理、プロジェクト実行部301によるプロジェクト実行データベース作成処理、データベース分析部401によるデータ分析処理、及び、情報連携部501による分析結果蓄積処理等の各処理を実行可能としている。
【0048】
建設業務支援装置100は、図3に示すように、建設ライフサイクルにおける複数のフェーズの夫々において、プロジェクトデータベース作成部101によるプロジェクトデータベース作成処理、プロジェクト実行部301によるプロジェクト実行データベース作成処理、データベース分析部401によるデータ分析処理、及び、情報連携部501による分析結果蓄積処理の夫々の処理が実行可能に構成されている。
【0049】
図3では、複数のフェーズの夫々において、プロジェクトデータベース作成部101、プロジェクト実行部301、及び、データベース分析部401等が、データベース群201に支援されながら、各処理を行うので、どのフェーズでの処理であるのかを区別するために、プロジェクトデータベース作成部「0ph」-101として、符号の前にどのフェーズでの処理であるのかを示している。
【0050】
以下、プロジェクトデータベース作成部101、プロジェクト実行部301、及び、データベース分析部401等について、どのフェーズでの処理であるのかを区別する場合には、同様に、符号の前にどのフェーズでの処理であるのかを示すこととする。
【0051】
例えば、図3に示すように、「0ph 企画・開発期間」において、プロジェクトデータベース作成部0ph-101が0pH用のプロジェクトデータベース作成処理を行うことで、1pH用のプロジェクトデータベースを作成することができる。その作成された0pH用のプロジェクトデータベースを用いて、プロジェクト実行部0ph-301が0pH用のプロジェクト実行データベース作成処理を行うことで、0pH用のプロジェクト実行データベースを作成することができる。作成された0pH用のプロジェクトデータベースや0pH用のプロジェクト実行データベースを用いて、データベース分析部0ph-401がデータ分析処理を行うことで、分析結果情報を取得することができる。その分析結果情報を用いて、情報連携部501が分析結果蓄積処理を行うことで、分析結果情報データベース0ph-203(図2において、データベース部203のデータベースHに相当する)に分析結果情報を蓄積していくことができる。ちなみに、分析結果情報は、第2出力装置405から出力されるので、図3では、分析結果情報を「0ph-405」等のように、第2出力装置405の符号を用いて示している。このプロジェクトデータベース作成部101によるプロジェクトデータベース作成から、プロジェクト実行部301によるプロジェクト実行データベース作成を経て、データベース分析部401によるデータ分析の分析結果情報を、データベース群201に格納し、その結果をもってプロジェクトデータベース作成部101によるプロジェクトデータベース作成に情報を回帰させる、ひとつながりの流れを「一巡の処理」と呼ぶことにする。
【0052】
このように、建設ライフサイクルにおいて、「0ph 企画・開発期間」だけでなく、「1ph 基本計画期間」~「6ph 施設維持管理期間」の夫々のフェーズにおいて、建設業務支援装置100が、上述の「一巡の処理」を行いながら、建設プロジェクトが進められることになる。
【0053】
そこで、過去の建設プロジェクトにて建設業務を行った場合に、建設業務支援装置100が上述の各フェーズごとに分割された一巡の処理を行うことで、作成されるプロジェクトデータベースと作成されるプロジェクト実行データベースとデータベース群201に蓄積される分析結果情報データベースHとを、過去の建設プロジェクトに関するプロジェクト実績情報として取得して蓄積している。
【0054】
新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、建設ライフサイクルにおける複数のフェーズの夫々において建設業務を行う場合に、建設業務支援装置100が、過去の建設プロジェクトに関するプロジェクト実績情報を用いて建設業務を支援する建設業務支援処理として、上述の「一巡の処理」を行いながら、第1支援処理を実行可能に構成されている。
【0055】
第1支援処理では、情報連携部501が、図4の太線矢印にて示すように、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報をデータベース群201からプロジェクトデータベース作成部101の予測モデル103に送って分析結果情報を回帰させる第1回帰処理を行い、プロジェクトデータベース作成部101が、その分析結果情報を用いて、プロジェクトデータベースを作成するプロジェクトデータベース作成処理を行っている。これにより、情報連携部501が、分析結果情報データベースであるデータベースHから、プロジェクトデータベース作成部101の予測モデル103に分析結果情報を呼び出しているので、予測モデル103では、その分析結果情報を用いて効果的な予測を行うことができ、プロジェクトデータベースを効率よく作成することができる。
【0056】
この第1支援処理では、図4に示すように、情報連携部501が第1回帰処理を行うことで、分析結果情報データベース(データベースH)から予測モデル103に分析結果情報を回帰しているが、情報連携部501は、図3に示すように、第1回帰処理として、同一のフェーズにおいて分析結果情報を回帰するだけでなく、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズにて取得された分析結果情報を、分析結果情報データベース(データベース群201のデータベースH)から予測モデル103に送って、フェーズを跨ぐ状態で分析結果情報を回帰自在に構成されている。
【0057】
例えば、図3に示すように、情報連携部501は、「2ph 基本設計期間」における分析結果情報データベース2ph-203に蓄積されている分析結果情報を、「0ph 企画・開発期間」における予測モデル0ph-103と「1ph 基本計画期間」における予測モデル1ph-103とに回帰させることができる。情報連携部501は、「5ph 施工期間」における分析結果情報データベース5ph-203に蓄積されている分析結果情報を、「0ph 企画・開発期間」における予測モデル0ph-103と「1ph 基本計画期間」における予測モデル1ph-103と「2ph 基本設計期間」における予測モデル2ph-103と「3ph 詳細設計期間」における予測モデル3ph-103と「4ph 着工準備期間」における予測モデル4ph-103とに回帰させることができる。
【0058】
このように、情報連携部501は、フェーズを跨ぐ状態で分析結果情報を回帰させているので、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズにて取得された分析結果情報を参照して、特定フェーズよりも時間軸上で後のフェーズに必要な情報等を見通しながら、予測モデル103にて予測等の処理を効果的に行うことができ、過去の実績情報からのデータ分析結果を生かせる範囲内での最適化されたプロジェクトデータベースを効率よく作成することができる。
【0059】
プロジェクトデータベース作成部101では、予測モデル103にて予測等の処理を行っているが、第1処理装置104において、図13に示すように、作成するプロジェクトデータベースとデータベース群201との間でのデータの紐付け処理を行っている。図13では、例えば、「2ph 基本設計期間」において生成するプロジェクトデータベースの一部分を右側に示しており、そのプロジェクトデータベースの紐付け対象となる材料データベースDから登録するアイテムデータを左側に示している。この場合には、第1処理装置104が、プロジェクトデータベースに対して、材料データベースDにて該当する「大便器A」と同一のID番号を入力するか、または、「大便器A」のアイテムデータを指定して登録を指定することで、材料データベースDにおける大便器Aとプロジェクトデータベースにおける大便器Aとを紐付けしている。
【0060】
プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベースを作成する際に、このようなデータの紐付け処理が行われるので、建設業務支援装置100が、建設業務支援処理として、第1支援処理に加えて、データの紐付け処理を利用した第2支援処理を実行可能に構成されている。
【0061】
第2支援処理では、プロジェクト実行部301が、図12の点線矢印にて示すように、プロジェクト実行データベース作成処理において、プロジェクトデータベース作成部101によるデータの紐付け処理にて紐付けられたデータを用いて、プロジェクト実行データベースを作成している。
【0062】
第2支援処理では、データの紐付け処理にて紐付けされたアイテムデータがデータベースDからプロジェクト実行部301の第2処理装置302に呼び出される。第2処理装置302は、プロジェクトデータベース部105に保存されたプロジェクトデータベースを入力情報として、紐付けされたアイテムデータを呼び出すため、プロジェクト実行データベースを作成する際には最初から紐付けされたアイテムデータの集合体としての建築材料群のリストから作業の開始が可能となる。
【0063】
以上の如く、建設業務支援装置100が、建設業務支援処理として、第1支援処理と第2支援処理とを実行することができるが、これら第1支援処理と第2支援処理とを建設ライフサイクルの全体に亘って行っている。これにより、プロジェクト関係者は、建設ライフサイクルの特定フェーズにおける特定の情報が、前のフェーズのどの情報から発生したものか、また、後のフェーズのどの情報を発生させるのか、を特定することができる。つまり、フェーズ間を跨いだ情報の関連付けが、半ば自動化されることとなる。また、これによって、各種の建設業務を省いて行うことができ、建設ライフサイクル全体としての作業効率の向上を効果的に図ることができる。
【0064】
ここで、分析結果情報を用いた建設業務支援処理として、図4に示す第1支援処理を例示したが、この第1支援処理に加えて、プロジェクト実行データベースを作成する際に、分析結果情報を用いて支援する第3支援処理を行うこともできる。
【0065】
この第3支援処理では、図2に示すように、情報連携部501が、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報をデータベース群201からプロジェクト実行部301の第2処理装置302に送って分析結果情報を回帰させる第2回帰処理を行い、プロジェクト実行部301が、その分析結果情報を用いて、プロジェクト実行データベースを作成するプロジェクト実行データベース作成処理を行うようにしている。
【0066】
以下、第1支援処理及び第2支援処理について、プロジェクトデータベース作成部101、プロジェクト実行部301、データベース分析部401、情報連携部501、データベース群201での各処理での動きや、どのようなデータを扱うか等の具体例を挙げながら説明を加える。
【0067】
〔第1支援処理の具体例1-1〕
第1支援処理の具体例1-1として、図4図6に基づいて、企画段階での施設規模を予測する場合について説明する。図4図6では、新規の建設プロジェクトにて病院を計画するに当たり、その病院の手術部門の面積を予測する場合を示している。
【0068】
図4において、太線の矢印にて示すように、過去に建設プロジェクトを実行するたびに、「5ph 施工期間」において、建物竣工時のプロジェクトデータベース(図5の右側を参照)を取得し、そのプロジェクトデータベースを分析した分析結果情報が分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積されている。よって、今回、新規の建設プロジェクトを進めるに当たり、「0ph 企画・開発期間」において、プロジェクト関係者は、分析結果情報データベースHに蓄積されている分析結果情報を参照しながら、施設規模(手術部門の面積)を予測することができる。
【0069】
図4に示すように、過去の建設プロジェクトの「5ph 施工期間」において、プロジェクトデータベース部5ph-105が、建物竣工時のプロジェクトデータベース(図5の右側を参照)を取得しているので、まず、プロジェクトデータベース部5ph-105が、収集対象となるプロジェクトデータベースを収集する処理を行うことが処理の起点となる(図4において、ステップ#1)。
【0070】
図5における左側に示すように、例えば、データベース群201のデータベースAが、顧客情報に関するデータベースであるが、過去の建設プロジェクトにおいて、企業名や病院の種別、保有病床数等を含む顧客カルテ、すでに顧客が保有する病院内の各部門区分に紐付けられた各室の室名名称や、延床面積等を含む計画建物カルテ、さらに手術部門の顧客用件等がデータベースAに蓄積されている。このデータベースAのデータとプロジェクトデータベースに含まれる各室のデータとが紐付けされているので、図6の左側に示すように、例えば、複数の病院の情報を保有したプロジェクトデータベースのうち、顧客カルテに「保有病床数」を有するプロジェクトデータベースを収集対象とし、これらのデータ分析を行う。
【0071】
収集されたプロジェクトデータベースは、図4に示すように、情報連携部501によってプロジェクトデータベース部5ph-105からデータベース分析部401のデータベース蓄積部402に送られて蓄積されている(図4において、ステップ#2)。
【0072】
データベース分析部401の第3処理装置5ph-403は、図4に示すように、データベース蓄積部402に蓄積された複数のプロジェクトデータベースPD1~PDn(図6の左側を参照)を分析するデータ分析処理を行う(図4において、ステップ#3)。
【0073】
第3処理装置5ph-403がデータ分析処理を行うに当たり、データベース蓄積部402に新規のプロジェクトデータベースが蓄積されると、機械学習部404を用いて、分析結果情報を更新する更新処理を行っている。
【0074】
この分析処理で、数多く行われる分析処理の一部を図6に示した。例えば、図6の右側に示すように、病棟病床数と手術室数との関係を示す第1分析情報(点線にて示す関係)は、どの因子が手術部門の面積を決定づける要因であるかを探索する分析であり、その第1分析情報を用いて、病棟病床数と一般手術室1室の面積との関係(点線にて示す関係)を示す第2分析情報を求めている。分析処理では、更に、第2分析情報を用いて、病棟病床数と手術室以外の部分の部門面積比率との関係(点線にて示す関係)を示す第3分析情報を求め、その第3分析情報を用いて、手術部門の面積を決定づける主因子と、目的である手術部門の面積とを関数で表現するために、病棟病床数と手術部門の面積との関係(点線にて示す関係)を示す第4分析情報を求めており、この第4分析情報を分析結果情報として取得している。このデータ分析結果情報を、本システムの予測モデル103に呼び出しが可能となるようなアルゴリズムとデータベースHに組み込むことにより、例えば病棟病床数から手術部門の面積を予測することが可能になる。
【0075】
図4に示すように、第3処理装置5ph-403がデータ分析処理を行うことで、分析結果情報を取得すると、第2出力装置405がその分析結果情報を出力するので、情報連携部501の分析結果蓄積処理により、データベース群201の分析結果情報データベース(データベースH)に分析結果情報を蓄積している(図4において、ステップ#4)。
【0076】
このようにして、過去の建設プロジェクトの「5ph 施工期間」において、ステップ#1~ステップ#4を行うことで、病棟病床数から手術部門の面積を予測するための分析結果情報を分析結果情報データベースHに蓄積している。
【0077】
新規の建設プロジェクトの「0ph 企画・開発期間」において、図4に示すように、第1入力装置102にて「病棟病床数」等の要件情報を入力すると、情報連携部501が、データベース群201から要件情報に該当するデータを予測モデル0ph-103に呼び出すとともに、情報連携部501が第1回帰処理を行うことで、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報を予測モデル0ph-103に送って分析結果情報を回帰させている(図4において、ステップ#5)。このとき、第1回帰処理では、「5ph 施工期間」にて取得された分析結果情報が、「0ph 企画・開発期間」における予測モデル0ph-103に回帰されているので、後のフェーズである「5ph 施工期間」から前のフェーズである「0ph 企画・開発期間」に複数のフェーズを跨いで分析結果情報が回帰されている。
【0078】
予測モデル0ph-103では、例えば、病棟病床数と手術部門の面積との関係(点線にて示す関係)の第4分析情報である分析結果情報(図6の右下を参照)が呼び出されているので、プロジェクト関係者は、その分析結果情報を参照しながら、新規の建設プロジェクトにおける病院の病棟病床数から手術部門の面積の第一選択肢、第一案を簡易に且つ正確に予測し、推奨することができる。
【0079】
データベース分析部401の第3処理装置403は、データベース分析処理において、右下の病棟病床数と手術部門の面積との関係(点線にて示す関係)の第4分析情報(図6の右下を参照)等のように、分析結果を意思決定に利用可能な形式としたアルゴリズムを生成している。これにより、意思決定を含む建設業務を行う場合には、そのアルゴリズムを有効に活用しながら、意思決定を行うことができ、より効果的な支援を行うことができる。
【0080】
〔第1支援処理の具体例1-2〕
第1支援処理の具体例1-2として、図7図9に基づいて、設計条件を予測する場合について説明する。図7図9では、新規の建設プロジェクトにおいて、建物用途情報や室用途情報から設計条件を予測する場合を示している。
【0081】
この具体例1-2では、特定フェーズに必要な情報を過去の、後工程のフェーズの実績情報の集積から抽出した具体例1-1とは異なり、過去の、同じフェーズにて取得した複数のプロジェトデータベース群からの分析結果情報を用いて、第1支援処理を行っている。図7に示すように、過去の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、設計情報に関するプロジェクトデータベースを取得して、そのプロジェクトデータベースを分析した分析結果情報を分析結果情報データベースHに蓄積している。新規の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、プロジェクト関係者は、分析結果情報データベースHに蓄積されている分析結果情報を参照しながら、建物用途情報や室用途情報から設計条件を予測することができる。
【0082】
図7に示すように、過去の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、プロジェクトデータベース部2ph-105が、設計情報に関するプロジェクトデータベース(図8の右側を参照)を取得しているので、プロジェクトデータベース部2ph-105が、収集対象となるプロジェクトデータベースを収集する処理を行うことが処理の起点となる(図7において、ステップ#11)。
【0083】
図8における左側に示すように、例えば、データベース群201のデータベースAが、顧客情報に関するデータベースであるが、過去の建設プロジェクトにおいて、建物用途情報を含む計画建物カルテ、室用途情報を含む顧客要件等がデータベースAに蓄積されている。このデータベースAのデータと当該顧客が実行した過去のプロジェクトデータベースのデータとが紐付けされており、図9における中央に示すように、例えば、複数の建物用途のプロジェクトデータベースについて、それぞれ、計画条件である「建物用途情報」や「室用途情報」を有するプロジェクトデータベースと、計画の結果である「室の設計条件」のプロジェクトデータベースを収集対象としている。
【0084】
収集されたプロジェクトデータベース(図9の中央を参照)は、図7に示すように、プロジェクトデータベース部2ph-105からデータベース蓄積部402に送られて蓄積されている(図7において、ステップ#12)。
【0085】
第3処理装置2ph-403は、図7に示すように、データベース蓄積部402に蓄積された複数のプロジェクトデータベースPD1~PDn(図9の中央を参照)を分析するデータ分析処理を行う(図7において、ステップ#13)。この分析処理では、例えば、図9に示すように、建築主属性情報と建物用途情報と室用途情報等、ここでは設計条件情報の発生原因となる因子の組み合わせに対して、どのような設計条件を採用されたかの原因と結果の因果関係のデータ分析を行い、どの原因情報に対し、どの結果情報が採用されたかを示す採用率相関性を分析結果情報として取得している。
【0086】
図7に示すように、第3処理装置2ph-403がデータ分析処理を行うことで、分析結果情報を取得すると、第2出力装置405がその分析結果情報を出力するので、情報連携部501の分析結果蓄積処理によりデータベース群201の分析結果情報データベース(データベースH)に分析結果情報を蓄積している(図7において、ステップ#14)。
【0087】
このようにして、過去の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、ステップ#11~ステップ#14を行うことで、建築主属性情報と建物用途情報と室用途情報とから各室の設計条件を予測するための分析結果情報を分析結果情報データベースHに蓄積している。
【0088】
新規の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、図7に示すように、第1入力装置102にて「建物用途」や「室用途」等の要件情報を入力すると、情報連携部501が、データベース群201から顧客要件情報に該当するかまたは類似性の高いデータを予測モデル2ph-103に呼び出すとともに、情報連携部501が第1回帰処理を行うことで、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報を予測モデル2ph-103に送って分析結果情報を回帰させている(図7において、ステップ#15)。
【0089】
予測モデル2ph-103では、建物用途情報と室用途情報とに対してどのような設計条件を採用しているかを示す採用率相関性である分析結果情報が呼び出されているので、プロジェクト関係者は、その分析結果情報を参照しながら、例えば、採用率が高い設計条件を選択する等、新規の建設プロジェクトにおいて設計条件を簡易に且つ正確に選択することができる。
【0090】
この具体例1-2では、予測モデル2ph-103に対して、採用率相関性である分析結果情報を回帰させているので、プロジェクトデータベース作成部101が、分析結果情報に基づいて、採用率相関性を示す推奨処理を行っている。これにより、プロジェクト関係者は、これまでプロジェクト関係者に属人的に蓄積された経験値やノウハウに代替して、データ分析結果から得られたインサイト・データに基づいて、好適な設計条件を決定することができる。
【0091】
ちなみに、図7において、同一のフェーズにて取得した分析結果情報を用いて、第1支援処理を行う場合を説明したが、例えば、分析結果情報の取得については、「3ph 詳細設計期間」において、分析結果情報を取得することもできる。この場合には、図7において、「3ph 詳細設計期間」のプロジェクトデータベース部(3ph)-105及び第3処理装置(3ph)-403が処理を行うことで、分析結果情報を取得することができる。
【0092】
〔第1支援処理の具体例1-3〕
第1支援処理の具体例1-3として、図10に基づいて、基準階その他の階の階高を予測する場合を説明する。この場合は、過去の建設プロジェクトの「5ph 施工期間」において、建物竣工時等のプロジェクトデータベースを取得して、そのプロジェクトデータベースを分析した分析結果情報を分析結果情報データベースHに蓄積している。新規の建設プロジェクトの「1ph 基本計画期間」や「2ph 基本設計期間」において、プロジェクト関係者は、分析結果情報データベースHに蓄積されている分析結果情報を参照しながら、基準階その他の階の階高を予測することができ、結果として法規制制限の摘要される「最高高さ」を予測できることとなる。
【0093】
この具体例1-3では、具体例1-1や具体例1-2と比較して、プロジェクトデータベース作成部101、データベース分析部401、情報連携部501、データベース群201での各処理については同様の処理を行うので、どのようなデータを扱うのかを中心に説明する。
【0094】
図2を参照すると、プロジェクトデータベース部105が、階高に関する情報を含む各種のプロジェクトデータベース(図10の左側)を取得しているので、それらのプロジェクトデータベースは、プロジェクトデータベース部105からデータベース蓄積部402に送られて蓄積され、第3処理装置403にてデータ分析処理が行われる(図10の中央を参照)。
【0095】
基準階やその他の階の階高については、過去の建設プロジェクトにおいて、建物用途に応じて、異なる階高が選択されているという実績があるので、データ分析処理では、図10の中央に示すように、建物用途別に、基準階やその他の階の階高について、最大値、最小値、平均値等の数値が求められている。例えば、建物用途としては、集合住宅、病院、ホテル、貸オフィス等に区分けして、それらの夫々について、最大値、最小値、平均値等の数値を求めている。
【0096】
図2を参照すると、第3処理装置403がデータ分析処理を行うことで、建物用途別の階高情報(図10の中央を参照)である分析結果情報を取得すると、第2出力装置405がその分析結果情報を出力するので、情報連携部501の分析結果蓄積処理によりデータベース群201の分析結果情報データベース(データベースH)に分析結果情報を蓄積している。
【0097】
新規の建設プロジェクトの「1ph 基本計画期間」や「2ph 基本設計期間」において、図2を参照すると、第1入力装置102にて「建物用途」、「基準階とその他階」等の要件情報を入力すると、情報連携部501が、データベース群201から要件情報に該当するデータを予測モデル1pH-103、2pH-103に呼び出すとともに、情報連携部501が第1回帰処理を行うことで、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報を予測モデル1pH-103、2pH-103に送って分析結果情報を回帰させている。
【0098】
予測モデル1pH-103、2pH-103では、建物用途別の階高情報(図10の中央を参照)である分析結果情報が呼び出されているので、プロジェクト関係者は、その分析結果情報を参照しながら、例えば、建物用途に応じた階高を選択する等、新規の建設プロジェクトにおいて基準階の階高を簡易に且つ正確に決定することができる。
【0099】
図10では、第3処理装置403のデータ分析処理において、建物用途別に、基準階とその他階の階高について、最大値、最小値、平均値等の数値を求める例を図10の中央の上方側に示しているが、このデータ分析処理に代えて又は加えて、図10の中央の下方側に示すように、建物用途別に、基準階の階高について、平均値を中心に上下の範囲がどれくらいあるのかを示す分析結果情報を取得することもできる。このような分析結果情報を予測モデル1pH-103、2pH-103に回帰させることで、プロジェクト関係者は、建物用途だけでなく、その建物用途において平均値に対してどのくらいの上下の範囲があるのかを考慮しながら、基準階の階高を決定することができ、好適な階高を選択することができる。
【0100】
この具体例1-3では、予測モデル1pH-103、2pH-103に対して、建物用途別の階高情報(図10の中央を参照)である分析結果情報を回帰させているので、プロジェクトデータベース作成部101が、分析結果情報に基づいて、建物用途別の階高情報等を示す推奨処理を行っている。これにより、プロジェクト関係者は、これまでプロジェクト関係者に属人的に蓄積された経験値やノウハウに代替して、データ分析結果から得られたインサイト・データに基づいて、好適な基準階の階高を決定することができる。
【0101】
〔第1支援処理の具体例1-4〕
第1支援処理の具体例1-4として、図11に基づいて、設備の実施データベースから超概算条件を予測する場合について説明する。図11では、建築計画図がないか、設備計画が存在しない段階で排煙設備の有無と規模を予測する場合を示している。
【0102】
この場合には、具体例1-1等と異なり、図2を参照すると、過去の建設プロジェクトにおいて、プロジェクトデータベースを取得しているので、プロジェクト実行部301が、そのプロジェクトデータベースを用いてプロジェクト実行データベース作成処理を行い、プロジェクト実行データベースを取得する。データベース分析部401は、その取得したプロジェクト実行データベースを分析するデータ分析処理を行い、このデータ分析処理にて分析した分析結果情報を分析結果情報データベースHに蓄積している。新規の建設プロジェクトにおいて、プロジェクト関係者は、分析結果情報データベースHに蓄積されている分析結果情報を参照しながら、排煙設備の有無と規模を予測することができる。
【0103】
図11の左側に示すように、過去の建設プロジェクトの「2ph 基本設計期間」において、プロジェクトデータベース部2ph-105が、建築設計図等のプロジェクトデータベースを取得しており、「5ph 施工期間」において、第2処理装置5ph-302が、その建築設計図等のプロジェクトデータベースを入力として、プロジェクト実行データベース作成処理を行い、排煙ファン配置階数と配置数、排煙ダクト系統図、排煙ダクト配置図、排煙ダクト施工図又は排煙ダクト数量表等のプロジェクト実行データベースを作成している。これにより、「5ph 施工期間」におけるプロジェクト実行データベース部5ph-304が、排煙ダクト数量書、排煙ファン数量書等のプロジェクト実行データベースを取得している。
【0104】
図11の中央に示すように、「5ph 施工期間」におけるデータベース分析部5ph-401は、排煙ダクト製作図等のプロジェクト実行データベースを分析するデータ分析処理を行っている。データベース分析部5ph-401は、プロジェクトデータベースから得られる建物用途、施設規模等の情報群と、プロジェクト実行データベースから得られる排煙ダクトの数量、排煙ファンの数量の情報群を分析することで、建物用途ごとの排煙設備の設置傾向を取得し、その建物用途ごとの排煙設備の設置傾向から、例えば、プロジェクトデータベースから得られるホテルの合計客室数と排煙ダクト、排煙ファン数量との関係(実線にて示す関係)を求めて、建物用途別の排煙ダクト数量(例えば、平均値、最小値、最大値)等を求めている。このようにして、データベース分析部5ph-401は、例えば、建物用途別の排煙ダクト数量(例えば、平均値、最小値、最大値)を分析結果情報として取得している。
【0105】
図11の右側の上方側に示すように、データベース分析部5ph-401にて取得された分析結果情報は、情報連携部501の分析結果蓄積処理によりデータベース群201の分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積されている。
【0106】
図11の右側の下方側に示すように、新規の建設プロジェクトの「0ph 企画・開発期間」において、第1入力装置102にて「建物用途」、「施設規模」、「階数」、「延べ床面積」等の要件情報を入力すると、情報連携部501が、データベース群201から要件情報に該当するデータを予測モデル0ph-103に呼び出すとともに、情報連携部501が第1回帰処理を行うことで、分析結果情報データベース(データベースH)に蓄積された分析結果情報が予測モデル0ph-103に回帰されることとなる。
【0107】
予測モデル103では、建物用途別の排煙ダクト数量(例えば、平均値、最小値、最大値)である分析結果情報が呼び出されているので、プロジェクト関係者は、その分析結果情報を参照しながら、建物用途に応じた排煙ダクト数量を的確に予測することができる。
【0108】
〔第2支援処理の具体例2-1〕
第2支援処理の具体例2-1として、図12図14に基づいて、プロジェクトデータベースを利用してプロジェクト実行データベースの一例である見積計算書を作成する場合について説明する。図12図14では、見積計算書を作成する場合を示している。
【0109】
図12に示すように、新規の建設プロジェクトの「3ph 詳細設計期間」において、プロジェクトデータベース部105が、トイレの設計仕様情報、数量情報等のプロジェクトデータベース(図13の右側を参照)を取得している。プロジェクト実行部301の第2処理装置302は、そのトイレの設計仕様情報、数量情報等のプロジェクトデータベース(図13の右側を参照)を入力データベースとして、図14の右側に示すように、見積書作成ツール等の演算処理を行うことで、見積計算書を作成している。
【0110】
プロジェクトデータベース作成部101の第1処理装置104は、図13に示すように、新規に作成するプロジェクトデータベースとデータベース群201の一部である建設材料のデータベースとの間でのデータの紐付け処理を行っている。図13では、例えば、「3ph 詳細設計期間」において生成するプロジェクトデータベースを右側に示しており、そのプロジェクトデータベースの紐付け対象となる材料データベースDを左側に示している。第1処理装置104が、例えば、プロジェクトデータベースに対して、材料データベースDにて該当する「大便器A」のアイテムデータには、固有のID番号をプロパティ・データとして持たせており、材料データベースDにおける大便器Aとプロジェクトデータベースにおける大便器Aとを紐付けしている。
【0111】
プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベースに含まれる大便器A等の固有のID番号を持たせたアイテムデータを登録することでプロジェクトデータベースを作成する際に、データの紐付け処理が行われているので、第2支援処理では、図14に示すように、このデータの紐付け処理を利用して、プロジェクト実行データベースである見積計算書を作成している。
【0112】
図12に示すように、第2処理装置302がプロジェクト実行データベース作成処理を行う場合に、データの紐付け処理にて紐付けされたアイテムデータが持つ材料代、工賃、運送費等を含めた単価情報P1等(図14参照)を、データベース群201のデータベースDから第2処理装置3ph-302に呼び出すことができる。第2処理装置3ph-302は、その呼び出した紐付けデータを用いて、プロジェクト実行データベースである見積計算書を作成することができる。
【0113】
例えば、図14に示すように、大便器A、ウォッシュレット、便座カバー、操作盤、跳ね上げてすり等についての見積計算書を作成する場合には、大便器Aに対して、データベースDにおける大便器その他の設計価格P1が呼び出され、見積書作成ツールによって、その見積単価P1とプロジェクトデータベースから得られる員数Q1とが掛け合わされて、大便器Aの見積価格の小計が計算されている。その他ウォッシュレット、便座カバー、操作盤、跳ね上げてすり、それ以外の全ての建設材料についても、大便器Aと同様にして、紐付けされたデータを利用して小計が計算されている。設計価格以外にも、見積原価、工事実行原価等、ほかの計算方法においても同様に識別子を利用した紐付けによって、情報の呼び出しを行い、計算を行わせることができる。
【0114】
このように、プロジェクト実行データベースの1つである見積計算書を作成する場合には、プロジェクトデータベースを作成する際のデータの紐付け処理にて紐付けされた紐付けデータを活用して、自動的に見積計算書を作成することができるので、プロジェクト関係者の作業負担を軽減して、作業効率の向上を効果的に図ることができる。
【0115】
ここで、プロジェクトデータベースを作成する際のデータの紐付け処理として、図13では、ID番号を用いた紐付け処理を例示しているが、図15に示すように、識別子を建設材料等だけでなく、時系列の管理フェーズや組織等、にも複合的にも適用するほか、まとまりを持ったかたまりとして入れ子の構造にする等の方法を用いてデータの紐付け処理を行うこともできる。
【0116】
図15では、建物の内部仕上に関するデータの構成について、複数の識別子を用いてデータの紐付け処理を行った場合を示している。図15に示すように、建設プロジェクトの情報は時系列を追って、管理フェーズ順に、管理フェーズごとに発生するために、そのデータの発生する管理フェーズごとに時系列上の発生時期を示す識別子2をデータ群に与える。例えば「1pH 基本計画期間」においては、1pHの基本計画期間フェーズで発生する室名に対して識別子1を与える。結果、「1pH 基本計画」においては、プロジェクトデータベースは発生する、識別子1をもった室と各室の面積の組み合わせとなる。「2pH 基本設計期間」に進むと、「2pH 基本設計期間」を示す識別子2に識別子1の室データは引き継がれ、そこでは、識別子1をもった各室データに、仕上材料情報を持ったアイテムデータが、識別子3によって紐付けられる。「3pH 詳細設計期間」「4pH 着工準備期間」のフェーズでは、室名やフェーズを示す識別子1、識別子2とに加えて、さらに専門化された、実際に内部仕上を実行する協力会社と対応した工事項目を示す識別子4が紐付けられる。識別子はここに述べた以外に取付部位、積算、見積、調達、サプライヤーといった、工程内に発生する組織の情報と紐付けられる。
【0117】
このように、建設プロジェクトを実行する場合に、建設プロジェクトに関する情報は、フェーズの進行に伴って(図15の左側から右側に向かう方向)、詳細化及び専門化していくので、前のフェーズの情報と一定の関連性を持ちながら、新規の情報が追加されて、情報量が増加していく。
【0118】
そこで、図15に示すように、プロジェクトデータベース作成部101は、プロジェクトデータベース作成処理において、複数の識別子を用いることで、建設ライフサイクルが時間軸上で分割された複数のフェーズに亘る状態で、作成するプロジェクトデータベースとデータベース群との間でのデータの紐付け処理を行っている。例えば、プロジェクトデータベース作成部101は、各フェーズにおいて異なる識別子を用いる形態で、複数のフェーズに亘ってデータの紐付け処理を行っている。
【0119】
このような紐付け処理を行うことで、複数のフェーズの夫々にて、時系列的にバラバラと発生するデータを、1つの糸で紐付けることができる。例えば、識別子1を用いることで、室データを発生させることができるが、その発生させた室データが後のフェーズにおいてどのようなデータが紐付けされているかが分かることになる。
【0120】
図2を参照すると、例えば、プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベース作成処理を行う場合に、紐付け処理にて紐付けされた紐付けデータを予測モデル103に呼び出すことで、プロジェクト関係者は、複数のフェーズに亘って1つの糸で紐付けされたデータを参照することができる。これにより、各部門、各組織で、工程が進むごとに、前工程で発生する情報を後工程で転記、確認するといった作業をこれまで行っているが、そうした作業工程の一切を省略できる、つまり半自動化、一部の自動化が実現する。
【0121】
そこで、建設業務支援装置100は、建設業務支援処理として、上述の第1支援処理と第2支援処理とに加えて、プロジェクトデータベース作成部101が、プロジェクトデータベース作成処理において、複数のフェーズに亘る状態でデータの紐付け処理が行われた紐付けデータを呼び出して、プロジェクトデータベースを作成する第4支援処理を実行することもできる。
【0122】
プロジェクトデータベース作成部101にてプロジェクトデータベース作成処理を行う場合について説明したが、プロジェクト実行部301にてプロジェクト実行データベース作成処理を行う場合においても、同様に、複数の識別子を用いて複数のフェーズに亘る状態でデータの紐付け処理が行われた紐付けデータを第2処理装置302に呼び出すことで、プロジェクト関係者は、複数のフェーズに亘って1つの糸で紐付けされたデータを参照しながら、プロジェクト実行データベースを作成することができる。
【0123】
よって、建設業務支援装置100は、建設業務支援処理として、上述の第1支援処理と第2支援処理とに加えて、プロジェクト実行部301が、プロジェクト実行データベース作成処理において、複数のフェーズに亘る状態でデータの紐付け処理が行われた紐付けデータを呼び出して、プロジェクト実行データベースを作成する第5支援処理を実行することもできる。
【0124】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0125】
(1)プロジェクト実行部301及びデータベース分析部401については、どのような情報処理装置を備えるかは適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
100 建設業務支援装置
101 プロジェクトデータベース作成部
201 データベース群
301 プロジェクト実行部
401 データベース分析部
501 情報連携部
図1
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