(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025514
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】デバイスとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/10 20230101AFI20250214BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20250214BHJP
H10N 60/01 20230101ALI20250214BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H10N60/10 K
H01L21/90 N ZAA
H10N60/01 W
H01L23/12 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130333
(22)【出願日】2023-08-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】多田 あゆ香
【テーマコード(参考)】
4M113
5F033
【Fターム(参考)】
4M113AA02
4M113AA12
4M113AA22
4M113AC06
4M113AC45
4M113AC50
4M113AD51
4M113CA12
4M113CA13
4M113CA14
4M113CA16
4M113CA17
5F033GG00
5F033GG01
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5F033HH07
5F033HH08
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5F033JJ33
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5F033MM30
5F033NN05
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5F033QQ08
5F033QQ13
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5F033QQ19
5F033RR30
5F033VV00
5F033VV07
5F033XX23
(57)【要約】
【課題】エアブリッジを備えたチップをフリップチップ実装可能とする。
【解決手段】チップの第1の面において、犠牲層の上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、前記エアブリッジの下部以外の前記犠牲層を除去する工程と、前記エアブリッジの下部に前記犠牲層が残された状態の前記チップを、前記第1の面を基板に対向させて実装した後、前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層を除去する工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に少なくとも1つのエアブリッジを含むチップと、
前記チップを実装した基板と、
を備え、
前記チップは、前記第1の面を前記基板に対向して実装されている、デバイス。
【請求項2】
前記エアブリッジは、高さ方向に前記基板から空隙を介して離間している、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記エアブリッジは、少なくとも一部が前記基板に当接している、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記チップは、前記第1の面において、
一の方向に延在される導体の長手方向両側にそれぞれ間隙を介して配設された第1のグランド導体と第2のグランド導体を、前記導体を跨いで、電気的に接続する前記エアブリッジ、及び/又は、
第2の導体を跨ぎ、前記第2の導体と空隙を隔てて第1の導体を交差させる前記エアブリッジ、
を備える、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記チップの前記第1の面と前記基板とはバンプで接合される、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記チップは、前記第1の面に超伝導量子回路を備え、
前記エアブリッジは超伝導部材からなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
チップの第1の面において、犠牲層の上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、前記エアブリッジの下部以外の前記犠牲層を除去する工程と、
前記エアブリッジの下に前記犠牲層が残された状態の前記チップを、前記第1の面を基板に対向させて実装した後、前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層を除去する工程と、
を含む、デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層の除去のためのガス及び/又は溶剤の経路として、前記チップと前記基板間の間隙に加えて、前記基板に設けられた貫通ビア、切り欠き、空洞の少なくともいずれかを用いる、請求項7記載のデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記チップを前記第1の面を基板に対向させて実装した状態で、
前記エアブリッジは、高さ方向に前記基板から空隙を介して離間しているか、又は、少なくとも一部が前記基板に当接している、請求項7記載のデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記犠牲層は、フォトレジストからなる、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子回路は、超伝導金属を用いて作成されたインダクタとキャパシタ、及び、ジョセフソン接合を一つ以上含むループを有するSQUID(Super Quantum Interference Device)から構成される超伝導共振器を基本素子とする。ジョセフソン接合は、薄い絶縁膜を超伝導体で挟んだトンネル接合であり、非線形インダクタとして振る舞う。SQUIDに対して制御ライン(ポンプライン)に(直流又はマイクロ波電流)を流しSQUIDループを貫く磁束を変調することで超伝導共振器の共振周波数を変化させることができる。超伝導量子回路において、並置された一対のグランド面で信号線路を間に挟んだ構成のコプレーナ線路(コプレーナ導波路:coplanar waveguide)が用いられる。1つの超伝導量子回路チップ内にSQUIDが複数配設される構成が用いられる。例えばジョセフソンパラメトリック発振器(Josephson Parametric Oscillator, JPO)等、SQUIDを含む量子ビットをチップ内に配設する構成等である。このような構成において、一つのSQUIDに印加する磁場が、当該SQUIDだけではなく他のSQUIDにも印加されてしまう、というクロストークが問題となる。
【0003】
例えば特許文献1、2には、基板上の配線層(超伝導導体層)において、コプレーナ導波路の信号線の両側のグランド面を超伝導体で接続するエアブリッジを配置する構造が開示されている。特許文献1によれば、超伝導エアブリッジはグランド面のエッジに沿って現れる電荷分布に起因すると考えられるクロストークを低減する。特許文献2には、基板上にパタン形成された導電層の2つの部分を接続する金属製(導電性)エアブリッジなどの懸架式導電性構造を製作する方法として、構造を支持するための二酸化ケイ素などの中間層誘電体(interlayer dielectric: ILD)を用いて金属製ブリッジを形成し、その後、中間層誘電体を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6437607号公報
【特許文献2】特表2020-532866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、エアブリッジを備えたチップをフリップチップ実装可能としたデバイスの製造方法とデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のデバイスの製造方法は、チップの第1の面において、犠牲層の上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、前記エアブリッジの下部以外の前記犠牲層を除去する工程と、前記エアブリッジの下に前記犠牲層が残された状態の前記チップを、前記第1の面を基板に対向させて実装した後、前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0007】
本開示の一側面のデバイスは、第1の面に少なくとも1つのエアブリッジを含むチップと、前記チップを実装した基板と、を備え、前記チップは、前記第1の面を前記基板に対向して実装されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、エアブリッジを備えたチップを基板にフリップチップ実装可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)乃至(E)は一形態の製造工程を模式的に示す図である。
【
図2】(F)乃至(H)は一形態の製造工程を模式的に示す図である。
【
図4】超伝導回路装置(デバイス)の一形態を模式的に示す図である。
【
図6】超伝導回路装置(デバイス)の別の形態を模式的に示す図である。
【
図7】(A)乃至(C)は一形態の変形例を模式的に示す図である。
【
図8】エアブリッジを備えた超伝導回路の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図9】エアブリッジを備えた超伝導回路の構成の別の一例を模式的に示す図である。
【
図10】エアブリッジの一例を模式的に示す図である。
【
図11】表面活性化接合の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
エアブリッジは、一般に、基板上における空気を絶縁体とした立体的配線構造として用いられる。
図10に模式的に示すように、基板11上の導体12Cの上方を跨いで第1の導体12Aと第2の導体12Bを接続するエアブリッジ30は、第1の導体12Aと第2の導体12B上にそれぞれ延設されたコンタクト部(台座)13A、13Bと、コンタクト部13A、13Bから互いに接近する方向に立ち上がる橋脚部13C、13Dと、両端が橋脚部13C、13Dに支持される橋桁部13Eからなる。エアブリッジ30のコンタクト部13A、13B、橋脚部13C、13D、橋桁部13Eは、例えば、一つの導電層(導電膜)から一体で形成される(
図10では、エアブリッジの各部の説明のため、橋脚部13C、13D、橋桁部13E等の輪郭を直線状としているが、これらは滑らかに湾曲するアーチ形状であってもよい)。基板11上に形成された不図示の犠牲層上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、当該犠牲層を除去することでエアブリッジ30が形成される。エアブリッジ30の下は中空構造であり、物理的に脆弱である。例えば一般的な洗浄方法の一つである超音波洗浄などで簡単に壊れてしまう。このため、エアブリッジ30の犠牲層を除去した後にプロセスを実施することは難しく、基板11上にエアブリッジ30を有するチップをインターポーザ(「インターポーザ基板」ともいう)等へフリップチップ実装(チップを反転(フリップ)して実装)することは困難である。
【0011】
ここで、エアブリッジ形成のための犠牲層として酸化膜(シリコン酸化膜)を用い、エアブリッジの直下の犠牲層を残し、エアブリッジの強度を増した状態で、チップをインターポーザにフリップチップ実装することについて検討する。
【0012】
チップをインターポーザにフリップチップ実装したデバイスにおいて、チップのエアブリッジの下に残されたシリコン酸化膜(犠牲層)の除去には、例えばHF(hydrogen fluoride:フッ化水素)等が用いられる。フッ酸水溶液を用いたシリコン酸化膜(犠牲層)のエッチングでは、フッ酸(フッ化水素酸)が金属層(導電層)等に損傷を与える。例えば、量子チップの配線層に配設されるジョセフソン接合等を形成するAl(アルミニウム)膜や、超伝導配線、電極等が浸食されてしまう。特に問題となるのは、HFによって、量子チップの量子回路素子となるジョセフソン接合(Al/Al酸化膜/Al)が浸食され消失してしまうことである。また、インターポーザにおいて、配線、電極、バンプ等にAl、Cu(銅)、Ti(チタン)等を用いている場合、これらが浸食されてしまうことになる(フッ酸でAl、Cu、Tiは浸食される。例えば超伝導配線材料となるNb(ニオブ)は殆ど浸食されない。Au(金)は浸食されない)。Vapor HF(気相フッ化水素:HF水溶液を蒸発)を用いることで、金属層(導電層)の浸食を比較的抑えることができる。しかし、フッ酸水溶液から蒸発するフッ酸蒸気を用いて気相でエッチングする場合、反応生成物の付着防止だけではなく、エアブリッジの直下のシリコン酸化膜(犠牲層)を完全に除去するためには、VHFといえども、エッチング条件を強めに設定しなければならないはずであり、HFによる金属の浸食と犠牲層除去のための最適なプロセスの条件範囲(プロセスウィンドウ)をとることは難しいと予測される。したがって、エアブリッジを有する量子チップをインターポーザにフリップチップ実装した状態で、HFやVapor HFを用いてエアブリッジの下部に残されたシリコン酸化膜(犠牲層)を除去することは、難しいと考えられる。上記の課題は一つの例であるが、本開示は上記に限らず、エアブリッジを備えたチップをフリップチップ実装可能としている。
【0013】
本開示によれば、チップの第1の面において、犠牲層の上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、エアブリッジの下部以外の犠牲層を除去し、前記エアブリッジの下に該犠牲層が残された状態のチップを、第1の面を基板(基板は、インターポーザ基板であってもよく、第2のチップの基板であってもよい)に対向させて実装(フリップチップ実装)した後、エアブリッジの下に残された該犠牲層を除去する。これにより、第1の面に少なくとも1つのエアブリッジを含むチップを、前記第1の面を前記基板に対向して実装(フリップチップ実装)したデバイスを実現可能としている。以下、本開示のいくつかの形態について説明する。
【0014】
図1、
図2は、本開示の一形態において、半導体プロセスを用いて量子チップを製造する場合のエアブリッジの製造に関係する工程の一例を模式的に示した工程断面図である。なお、単に図面作成の都合で分図されている。
【0015】
図1(A)は、基板11の第1の面(表面)において配線パタンが形成された状態を模式的に示している。基板11の第1の面に、ニオブ(Nb)等の超伝導導体膜12を成膜し、露光・現像(フォトリソグラフィ)/エッチングにより、所望の配線パタンを形成する。超伝導信号配線などを構成するNb配線や、例えば斜め蒸着によるAl/Al酸化膜/Alの積層構造を有するジョセフソン接合等が作成されている。以降の工程でエアブリッジの作製が行われる。なお、以下では、基板11上の第1の面の配線層は超伝導導体膜と同じ符号12で参照される。基板11の第1の面の配線層12において、導体12C(信号導体)の両側に所定の間隔で第1の導体12Aと第2の導体12Bが設けられている。不図示のエアブリッジは、導体12C(信号導体)の上方を跨ぎ第1の導体12Aと第2の導体12Bを電気的に接続する。なお、
図1(A)における導体12C(信号導体)、第1の導体12Aと第2の導体12Bは、
図10における導体12C(信号導体)と、第1の導体12Aと第2の導体12B(エアブリッジ30で接続される)に対応させることができる。第1の導体12Aと第2の導体12Bはグランド面(ground plane)であってよい。導体12C(信号導体)の両側に間隙を介してグランド面(第1の導体12A、第2の導体12B)が配設された導波路はコプレーナ導波路(Coplanar Waveguide:CPW)を構成している。導体12C(信号導体)によって電気的に分断されたグランド面同士を、エアブリッジで接続させることは、クロストーク低減に有効である。
【0016】
基板11は、シリコンからなる。ただし、ゲルマニウムやサファイアや化合物半導体材料(IV族(GeSn等)、III-V族(GaAs,GaN,GaP,GaSb,InAs,InP,InS等)、II-VI族(ZnS,ZnSe))等の他の電子材料を用いてもよい。単結晶である方が望ましいが、多結晶やアモルファスであってもよい。
【0017】
超伝導導体は、Nb等の超伝導材料から構成される。なお、超伝導材料としては、ニオブ(Nb)に限らず、ニオブ窒化物、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、錫(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、チタン窒化物(TiN)、タンタル(Ta)、タンタル窒化物(TaN)、及び、これらのうちの少なくともいずれかを含む超伝導特性を示す合金や、積層構造であってもよい。
【0018】
次に、
図1(B)を参照すると、
図1(A)の基板11全面に、エアブリッジ形成用にフォトレジスト14(感光性ポリイミド等)を形成(塗布)する。スピンコート等により、フォトレジスト14は、エアブリッジの高さに対応して、例えば膜厚数μm(micrometer)から十乃至数十μmまで基板全面に均一に塗布される。
【0019】
次に、
図1(C)を参照すると、エアブリッジの橋脚部13C、13D、コンタクト部13A、13B(
図10参照)を形成するため、所望のフォトマスクを用いてフォトレジスト14に対して露光・現像により、超伝導導体膜12にまで達するビア15A、15Bが形成される。パターニングされたフォトレジスト14を「犠牲層」と呼ぶ。
【0020】
次に、
図1(D)を参照すると、基板11を加熱処理して、フォトレジスト14をリフローする。不図示のリフロー装置(例えばホットプレート)にて基板11を均一に加熱し、
図1(C)の露光・現像工程でパタン形成されたフォトレジスト14(犠牲層)を加熱して軟化流動させ、フォトレジスト14の断面の輪郭形状に丸みをつけアーチ状とする。
【0021】
次に、
図2(E)を参照すると、基板11上のパタン形成されたフォトレジスト14(犠牲層)の上に、エアブリッジとなる超伝導部材13をスパッタ等で成膜する。非限定的な例として、超伝導部材13は例えばアルミニウム(Al)からなる。超伝導部材13の膜厚は、例えば数百nm(nanometer)のオーダ(1μm以下)としてもよい。
【0022】
続いて、
図2(F)を参照すると、フォトレジスト16を塗布し、所望のフォトマスクを用いてフォトレジスト16を露光・現像し、フォトレジスト16をエアブリッジの平面形状にパタン形成する(エアブリッジ形成のためのマスクが作製される)。
【0023】
図2(G)を参照すると、超伝導部材13の上に残されたフォトレジスト16をエッチングマスクとして超伝導部材13(Al)をエッチングすることにより、超伝導部材13はエアブリッジの配線にパタン形成される。すなわち、下部に残されたフォトレジスト14(犠牲層)を介して導体12Cを上から跨ぐ超伝導部材13の配線からなるブリッジが形成される。なお、超伝導部材13(Al)のエッチングの非限定的な一例として、混酸などのような酸や現像液のようなアルカリ水溶液を用いたウエットエッチング、Arイオン等によるミリング、あるいは塩素(Cl)系ガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のいずれかを用いてもよい。
図2(G)は、超伝導部材13(Al)のエッチング後の状態に対応しており、エアブリッジとなる超伝導部材13の上にフォトレジスト16が残されている。また、フォトレジスト14(犠牲層)は全て残されている。
【0024】
図2(G)の状態から、フォトレジスト16と、エアブリッジとなる超伝導部材13の下部以外のフォトレジスト14(犠牲層)を同時に除去することで、
図2(H)の状態となる。例えば、アッシングによって、表面に露出しているフォトレジスト14と16の硬化層を除去する。次に、例えば数分の有機溶剤への浸透によるフォトレジスト16とエアブリッジ30Aの下部以外のフォトレジスト14(犠牲層)を除去する。すなわち、フォトレジスト16とフォトレジスト14(犠牲層)の除去は2段階で行う。
【0025】
始めに、フォトレジスト16とエアブリッジ30Aの下部以外の表面に露出しているフォトレジスト14(犠牲層)の硬化層をアッシング等で除去する。酸素プラズマがフォトレジスト14(犠牲層)及びフォトレジスト16と反応すると、CO
2、H
2O、O
2がガスとして生成するため、気体として除去される。酸素プラズマを用いたドライアッシング(樹脂表面に高エネルギー状態の酸素プラズマを照射し樹脂を構成する炭素と結合させ、CO
2として気化、分解する)により、Alの成膜時等にフォトレジスト16とフォトレジスト14の表面に形成された硬化層(露光時、感光した部分等が硬化)を取り除く。これに続いて、有機溶剤によってフォトレジスト16とフォトレジスト14(犠牲層)を除去する。有機溶剤に浸透させる時間が所定時間内(例えば数分間)であれば、エアブリッジ30Aの下部のフォトレジスト14は溶解しきれずに残り、エアブリッジ30の下部以外の表面に露出していたフォトレジスト14(犠牲層)は除去される。この結果、
図2(H)に示すように、エアブリッジ30Aの下部のフォトレジスト14(犠牲層)が残存した状態が得られる。
【0026】
エアブリッジ30Aの下部に残っているフォトレジスト14(犠牲層)は、エアブリッジを下から支える補強部材として作用し、エアブリッジの下部が中空である場合と比べて、その機械的強度が増している。このため、この後、洗浄、組み立て等、他のプロセスを行っても、エアブリッジ30Aの下部のフォトレジスト14(犠牲層)により、エアブリッジの座屈・崩壊等は回避される。そのため、量子チップ10に対する追加の洗浄や、インターポーザへフリップチップ実装させるプロセスなどを行うことが可能となる。
【0027】
図3は、
図1乃至
図2の製造工程により、エアブリッジ30Aが第1面の配線層12上に形成された量子チップ10をインターポーザ20に実装する例を説明する模式断面図である。実装の段階で、インターポーザ20には、基板21の第1面の配線層22上に配線パタンが形成されており、基板21の第2面の配線層23上に配線パタンが形成されており、基板21を貫通する貫通ビア24が形成されているものとする。またバンプ(金属突起)25が、インターポーザ20の第1面の配線層22、又は、量子チップ10の配線層12上に形成されているものとする。インターポーザ20の基板21は、量子チップ10の基板11がシリコンの場合、シリコンが用いられる。基板21は、シリコンを含むものに限らず、サファイアや化合物半導体材料(IV族、III-V族、II-VI族)、ガラス、セラミック等の他の電子材料を含んでもよい。第1面の配線層22と第2面の配線層23は、好ましくは、同一の超伝導材料で構成される。
図3では、簡単のため、1つの貫通ビア24が図示されているが、インターポーザ20の第1面の配線層22と第2面の配線層23の信号ラインを接続する貫通ビアや、インターポーザ20の第1面の配線層22のグランド面と第2面の配線層23のグランド面に接続する貫通ビアなど複数の貫通ビアが設けられている。なお、貫通ビア24は、ビア穴の内部が導体で充填されたビア(フィルドビア)として図示されているが、ビア穴の形状に従って一様の厚さで導体層が形成された穴あきビア(コンフォーマルビア)であってもよい。ビアは、ビア側壁にTiやTiN膜などの超伝導薄膜を有し、Cuを充填させたものであってもよい。
【0028】
図3に示すように、エアブリッジ30Aの下部にフォトレジスト14(犠牲層)が残っている状態の量子チップ10を、エアブリッジ30Aを備えた第1の面をインターポーザ20の第1面の配線層22に対向して、フリップチップ接合(flip-chip bonding: FCB)する。
【0029】
量子チップ10のインターポーザ20へのフリップチップ接合が完了した超伝導回路装置(デバイス)1を、有機溶剤(剥離液)などに浸透させて、
図3のエアブリッジ30A下部のフォトレジスト14(犠牲層)を除去する。適宜、アッシング等、フォトレジスト14(犠牲層)の除去のためのドライプロセスも行うようにしてもよい。この結果、
図4に示すように、中空構造のエアブリッジ30を備えた量子チップ10をインターポーザ20へフリップチップ実装した超伝導回路装置(デバイス)1が得られる。なお、
図4において、インターポーザ20の第2面の配線層23は、不図示のパッケージ基板等に接続するようにしてもよい。
【0030】
図3、
図4において、バンプ25は、接合する基板間隔の高さの制御に適した金属突起あり、柱状(円柱、多角柱等)、錐状(円錐台、角錐の他、円錐台、角錐台等も含み得る)、球状、矩形等の任意の形状を選定できる。バンプ25は、常伝導材料で構成して超伝導材料の積層により成型してもよい。バンプ25は、量子チップ10の第1面の配線層22側に形成してもよい。バンプ25は、インターポーザ20の第1面の配線層22に形成してもよい。バンプ25は、インターポーザ20の第1面の配線層22と同じ超伝導材料を含んでもよいし、第1面の配線層22と異なる超伝導材料を含んでもよい。
【0031】
バンプ25の高さは、インターポーザ20と量子チップ10間での無線伝送(例えば容量結合)による信号伝送等を考慮すると、例えば数μm乃至10μmのオーダであってよい。この場合、バンプ25の幅は数乃至数十μmのオーダであってよい。バンプ25はマイクロバンプとも称呼される。
【0032】
バンプ25が複数の金属層を含む構成としてもよいが、少なくとも1層は、超伝導材料を含むことが好ましい。バンプ25は、例えばCu等の常伝導部材又は二酸化シリコン(SiO2)等からなり、その表面を超伝導材料の膜が覆う構成としてもよい。
【0033】
図4に示すように、エアブリッジ30の高さは、量子チップ10とインターポーザ20の第1面の配線層22の間隔(バンプ25の高さhb)よりも低く設定されており、エアブリッジ30の橋桁(
図10の13E)は、インターポーザ20の第1面の配線層22から空隙を介して離間している。エアブリッジ30の長さは、第1の導体12Aと第2の導体12Bの間の間隔(導体12Cの幅をW、第1の導体12Aと導体12Cの間隙をS、第2の導体12Bの間隙をSとすると、W+2S)に対応した値に設定される。
【0034】
量子チップ10をインターポーザ20にフリップチップ接合する場合、例えば固相接合で行うようにしてもよい。特に制限されないが、固相接合のなかでも表面活性化接合(Surface Activated Bonding: SAB)等で接合するようにしてもよい。この場合、非限定的な一例として、
図11に示すように、例えば、インターポーザ20の第1面の配線層22側に形成されたバンプ25と、量子チップ10の配線層12の電極パッド(バンプ25に接合する電極パッド)とが対向する向きで、真空チャンバー5内に配置し、真空排気口9から不図示の真空ポンプで真空引きを行う。量子チップ10は例えば第1の固定治具(ステージ)2によって固定される。固定方法としてクランプ方式や静電チャック方式であってよい。第1の固定治具(ステージ)2によって固定される量子チップ10はウェハ状態であってもよいし、ウェハから各チップに個別化したものであってもよい。インターポーザ20(ウェハ、あるいは、ウェハから各チップに個別化されたもの)は、支持部6で支持される第2の固定治具(ステージ)3によって固定されている。固定方法としてクランプ方式や静電チャック方式であってよい。ウェハから各チップに個別化された量子チップ10やインターポーザ20は、接合前に、接続試験などのテストで良品として選抜されたものであってもよい。真空チャンバー5内の真空度としては例えば10
-6Pa(Pascal)程度であってよい。第1の固定治具(保持部材)2は、XY並進移動機構2Aによって下側の第2の固定治具3に対してX方向とY方向への並進移動が可能とされ、Z方向移動機構7とZ軸回り回転機構8によってZ方向の移動、Z軸回りの回転による位置決めが可能とされる。活性化装置4aを用いて、量子チップ10の電極パッドの表面の吸着物や酸化物を除去して接合部を活性化させ、活性化装置4bを用いて、インターポーザ20のバンプ25の表面の吸着物や酸化物を除去して量子チップ10との接合部を活性化させる。活性化装置4a、4bとしてはAr(アルゴン)イオンや中性原子ビームなどを照射する装置を用いてもよい。
【0035】
次に、量子チップ10とインターポーザ20との位置合わせを行う。位置合わせは、第1の固定治具2の第2の固定治具3に対するX方向とY方向への並進移動とZ軸回りの回転等によって行う。真空度を維持した状態で、量子チップ10の配線層12の電極パッドと、バンプ25の接触面同士を接触させてZ方向移動機構7によって加圧する(非限定的な例として百乃至数百MPa)。その際、不図示のZ軸圧力センサによって加圧下で接触している接触面に垂直な方向の圧力を測定し加圧を制御するようにしてもよい。温度は、常温でもよいし、例えば100℃以下の低温であってもよい。展延性のあるバンプ25は量子チップ10の電極パッドの表面粗さに追従し、バンプ25と量子チップ10の電極パッドの接合界面には強固に結合する。なお、例えば、量子チップ10とインターポーザ20のそれぞれにアライメントマーク(不図示)を設けて、赤外線カメラ等による透過画像を用いて位置を調整することにより、両者の位置合わせを行うようにしてもよい。量子チップ10とインターポーザ20をウェハ状態で接合する場合、接合が完了したのちに、個別化される。
【0036】
以上のプロセスを用いることで、エアブリッジ30を備えた量子チップ10をインターポーザ20にフリップチップ実装することが可能となる。
【0037】
犠牲層のフォトレジスト14を積極的に残す目的から、エアブリッジ30の幅は例えば30μm(micrometer)以上の比較的広いものであることが望ましい。コプレーナ導波路構造の信号線に対向する各グランド面をエアブリッジで電気的に接続した場合、量子回路の動作時にグランド面に広がる電荷分布の偏りの解消には、幅広なエアブリッジの方がより有効であり、クロストーク低減効果が高まる。
【0038】
ただし、エアブリッジ30の幅が大きすぎると、エアブリッジ30の下の犠牲層の除去が困難となる。エアブリッジの製造工程において、エアブリッジとなる超伝導部材13(フォトレジスト16を用いてパタン形成される)の幅を大きくしようとすると、その下のフォトレジスト14(犠牲層)も超伝導部材13の幅に沿って長く形成されることになる。量子チップ10とインターポーザ20のフリップチップ接合後に、エアブリッジ30A(
図3)の下に残っている当該フォトレジスト14(犠牲層)を除去するときに、例えばエアブリッジ30A(
図3)の幅広の橋脚部の基部(隅)のフォトレジスト14(犠牲層)は除去され難くなり、フォトレジスト14の残滓が残り易くなる。フォトレジスト14(犠牲層)の残留物等は、超伝導量子回路素子における誘電損失の原因ともなり、歩留まりにも影響することになる。バンプ25の高さ以下というエアブリッジ30の高さの制約と設定された長さから、エアブリッジ30の中空部の面積を大幅に拡大することはできない。そこで、エアブリッジ30の中空部の面積とエアブリッジ30の下に残されたフォトレジスト14(犠牲層)の除去の観点から、エアブリッジ30の幅の上限を決定してもよい。なお、1本のコプレーナ導波路に対して対向するグランド面を接続するエアブリッジ30を複数並置するようにしてもよい。
【0039】
本開示の別の形態として、
図5に示すように、エアブリッジ30Aの少なくとも頂部がインターポーザ20と当接した構成としてもよい。エアブリッジ30Aの下部のフォトレジスト14が残されており、エアブリッジ30Aを下から支持する構成としたことで、このような実装の形態も実現可能とされる。
図5の例では、エアブリッジ30Aを構成する配線(超伝導導体)13は、橋桁部(
図10の13E)に相当する部位において所定の幅で対向するインターポーザ20の第1の配線層22と当接しているが、橋桁部の頂部等、その一部(あるいは一点)がインターポーザ20の第1の配線層22に当接する構成としてもよいことは勿論である。
図6は、
図5のエアブリッジ30Aの下部のフォトレジスト14を除去した状態(中空構造となったエアブリッジ30)を模式的に示している。
図6において、量子チップ10の信号導体12Cに間隙を介して対向配置される第1の導体12Aと第2の導体12Bはグランド面であり、コプレーナ導波路を構成している。エアブリッジ30を構成する配線(超伝導導体)13は、量子チップ10において信号導体12Cを間に挟んで分離されたグランド面(第1の導体12A)とグランド面(第2の導体12B)を電気的に接続するだけでなく、インターポーザ20の第1面の配線層22(グランド面)と当接して電気的に接続している。エアブリッジ30は、量子チップ10のグランド面(第1、第2の導体12A、12B)とインターポーザ20の第1面の配線層22のグランド面との間の接続経路を提供している。
【0040】
図7は、本開示の別の形態として、フリップチップ実装させた後に、エアブリッジ30A直下のフォトレジスト14(犠牲層)を除去するために、有機溶剤や、酸素をプラズマ化させたガスを浸透させ易くするための構成を模式的に示している。
図7(A)では、インターポーザ20の第1の面の配線層22のグランド面と第2面の配線層23のグランド面同士を接続する貫通ビア(グランドビア)を、AlやCu等のメッキ皮膜の厚さを一定にキープしたまま導体層を形成し、第1の面の配線層22から第2の面の配線層23に達する貫通穴が空いたビア(コンフォーマルビア)24Gとし、エアブリッジ30A直下のフォトレジスト14(犠牲層)を除去するにあたり、貫通ビア24Gの開口部からも、有機溶剤や酸素プラズマを透過させ易くしている。特に制限されないが、貫通ビア24(グランドビア)Gの径は十μmのオーダであってもよい。
【0041】
図7(B)は、インターポーザ20の第2面の配線層23側から見た、
図7(A)の貫通ビア(グランドビア)24Gの配置例を模式的に示す図である。貫通ビア(グランドビア)24Gのアレイにおいて、そのピッチは、信号波長λの20分の1程度かそれ以下としてもよい(信号周波数1GHz(giga-hertz)の波長λを3cm(centimeter)とすると、20GHzでピッチは略750μm以下)。貫通ビア(グランドビア)24Gは、量子チップ10に配設される量子ビットに対してその近傍に少なくとも1つ設けるようにしてもよい。インターポーザ20を貫通する空洞として貫通ビア(グランドビア)24Gのアレイを配置することで、有機溶剤や酸素をプラズマ化したガスを側面(量子チップ10とインターポーザ20の間の間隙)から横方向に透過させるだけでなく、インターポーザ20の第2の配線層23から縦方向に一様に透過させることを可能としており、フォトレジスト14(犠牲層)の除去の迅速化に貢献する。なお、貫通ビア(グランドビア)24Gは、規則的なアレイ配置に制限されるものでなく、任意のパタンで配置してもよいことは勿論である。
【0042】
図7(C)は、エアブリッジ30Aの下部に残されたフォトレジスト14(犠牲層)を除去するために、有機溶剤や酸素プラズマを浸透させやすくするために、インターポーザ20の四隅に切り欠き26を設けた例を示している。切り欠き26は、四隅に制限されず、インターポーザ20の未使用領域に接する辺等に設けるようにしてもよい。また、量子チップ10の配線層12に未使用領域がある場合、インターポーザ20の該未使用領域に対応する領域に基板21を貫通する空洞を備えてもよい。なお、
図7(C)には、説明のため、量子チップ10とインターポーザ20の平面形状の寸法を同一とした例が示されているが、かかる構成に制限されるものでないことは勿論である。
【0043】
エアブリッジは、損失の原因となり得る層間絶縁膜を用いない多層配線としても使用することができる。エアブリッジは空気を利用した層間絶縁膜構造ともいえ、比誘電率が1の低容量配線を形成できる。量子チップ10の配線層12のレイアウトにおいて、量子ビットや結合器への信号配線が他の信号配線と交差が生じる場合、通常、バンプでインターポーザ20側の第1面の配線層22に接続してインターポーザ20側で配線の引き回しが行われ、再びバンプで量子チップ10の配線層12側に戻す立体配線構造が用いられる。
【0044】
図8は、量子チップ10の配線層12の配線パタンの一例を模式的に説明する図である。量子チップ10は、前記したように、インターポーザ20にフリップチップ実装される。
図8では、説明のため、端子を量子チップ10の周辺に備えた構成としている。また
図8では、量子チップ10の超伝導回路に含まれる量子ビットとしてジョセフソンパラメトリック発振器(Josephson Parametric Oscillator, JPO)を用いた例が示されている。結合器CP1は、最隣接の4つのJPO1~JPO4の四体相互作用を実現する(他のJPOや結合器は省略されている)。特に制限されないが、各JPOは、四本のアームを備えた十字型の電極を備え、配線層12のグランド面に間隙17を介して囲まれている。各JPOは、ループ内にジョセフソン接合JJ1、JJ2を含むSQUIDを有する。IO(Input-Output)端子から延在されるIOライン18はコプレーナ導波路構造とされ、その端部は、JPOの電極と容量結合する結合ポートCとされる。ポンプ端子から延在されるポンプライン19はコプレーナ導波路構造とされ、その端部はJPOのSQUIDに誘導結合(磁場を印加する)する結合ポートLとされる。IOライン18は、JPOへ信号の伝送とJPOからの信号(反射信号)の伝送に用いられる。ポンプライン19はSQUIDに印加する磁場を発生するためのマイクロ波信号の伝送に用いられる。IOライン18とポンプライン19には、各ラインを上から跨ぎ、各ラインの長手方向の両側に対向配置された2つのグランド(GND)面を電気的に接続するエアブリッジ30が設けられている。結合器CP1はジョセフソン接合を備えた構成としてもよい。あるいは、結合器CP1はSQUIDを備えた構成としてもよい。この場合、結合器CP1のSQUIDにバイアス磁場を印加する直流バイアス信号を伝送する制御ラインを備えた構成としてもよい。
図6各JPOのIOライン18とポンプライン19は互いに交差しないように間隔を保ってIO端子、ポンプ端子まで延在されている。
図6において、量子チップ10におけるIOライン18とポンプライン19の配線について、配線同士を交差させる場合、一方の配線をバンプでインターポーザ20側の第1面の配線層22にまで引き延ばし、インターポーザ20側の第1面の配線層22で配線の引き回しが行われ、バンプ経由で量子チップ10の配線層12に戻す立体配線構造を用いてもよい。
【0045】
あるいは、エアブリッジを用いて信号配線を、他の信号配線と空中で交差させるようにしてもよい。例えば
図10において、第1の導体12Aと第2の導体12Bが第1の信号導体であり、導体12Cが第2の信号導体である場合、エアブリッジ30は、第2の信号導体12Cを跨いで、第1の信号導体を、空隙を隔てて第2の信号導体と交差させている。
【0046】
図9を参照すると、量子チップ10は、
図8の構成に対して、エアブリッジ30Sを用いて、量子チップ10の配線層12上での信号同士の交差を実現している。JPO1のLポートとポンプ端子を接続するポンプライン19は、エアブリッジ30SにてJPO1のCポートとIO端子を接続するIOライン18を上方から跨いでいる。JPO4のCポートとIO端子を接続するIOライン18は、エアブリッジ30SにてJPO4のLポートとポンプ端子を接続するポンプライン19を上方から跨いでいる。エアブリッジ30Sの幅は、コプレーナ導波路構造の中心導体(
図10の導体12C)の幅と同一幅とされる(例えば中心導体の線幅が10μmの場合、エアブリッジ30Sの幅も10μmとされる)。信号配線同士を立体交差させるエアブリッジ30Sも、信号配線を跨いでグランド面を接続するエアブリッジ30と同様、エアブリッジ30Sの下部にフォトレジスト(犠牲層)を残した状態でインターポーザ20にフリップチップ実装し、その後、エアブリッジ30Sの下部にフォトレジスト(犠牲層)が除去される。この形態によれば、積層した量子チップ10とインターポーザ20とによる立体配線構造に加えて、エアブリッジによるさらなる立体配線構造を実現可能とし、量子チップ10における配線、レイアウトの自由度を向上するとともに、信号交差のために、バンプを経由したインターポーザ20を経由した迂回配線を不要とするか減少可能とし、インターポーザ20の配線領域の有効活用を可能としている。
【0047】
なお、上記形態では、エアブリッジを備えた1つのチップをインターポーザ上に実装する例を説明したが、複数のチップ(少なくとも1つはエアブリッジを備える)を1つのインターポーザ上に並置して実装する構成としてもよい。また、インターポーザ上に複数のチップ(少なくとも1つはエアブリッジを備える)を垂直に積層した3次元チップに適用してもよい。さらに、下地チップ(マザーチップ)上にバンプにより別のチップ(ドーターチップ)をFace-to-Faceで積層した構成(「チップ・オン・チップ」ともいう)にも適用可能である。チップ・オン・チップの下地チップをインターポーザとした場合が、上記したフリップチップ実装の形態である。また、上記形態は、超伝導量子回路以外にも、3次元MMIC(Monolithically Integrated Microwave Integrated Circuit)等にも適用可能である。
【0048】
上記した形態は以下のように付記される(ただし、以下に制限されない)。
【0049】
(付記1)第1の面に少なくとも1つのエアブリッジを含むチップと、前記チップを実装した基板と、を備え、前記チップは、前記第1の面を前記基板に対向して実装されている、デバイス。
【0050】
(付記2)付記1のデバイスにおいて、前記エアブリッジは、高さ方向に前記基板の前記第1の面から空隙を介して離間している。
【0051】
(付記3)付記1のデバイスにおいて、前記エアブリッジは、少なくとも一部が前記基板の前記第1の面に当接している。
【0052】
(付記4)付記1乃至3のいずれかのデバイスにおいて、前記チップは、前記第1の面において、一の方向に延在される導体の長手方向両側にそれぞれ間隙を介して配設された第1のグランド導体と第2のグランド導体を、前記導体を跨いで、電気的に接続する前記エアブリッジ、及び/又は、
第2の導体を跨ぎ、前記第2の導体と空隙を隔てて第1の導体を交差させる前記エアブリッジを備える。
【0053】
(付記5)付記1乃至4のいずれかのデバイスにおいて、前記チップの前記第1の面と前記基板とはバンプで接合される。
【0054】
(付記6)付記1乃至5のいずれかのデバイスにおいて、前記チップは、前記第1の面に超伝導量子回路を備え、前記エアブリッジは、超伝導部材からなる。
【0055】
(付記7)デバイスの製造方法は、チップの第1の面において、犠牲層の上にエアブリッジとなる導電層を成膜してパタン形成した後、前記エアブリッジの下部以外の前記犠牲層を除去する工程と、
前記エアブリッジの下に前記犠牲層が残された状態の前記チップを、前記第1の面を基板に対向させて実装した後、前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0056】
(付記8)付記7のデバイスの製造方法において、前記エアブリッジの下に残された前記犠牲層の除去のためのガス及び/又は溶剤の経路として、前記チップと前記基板間の間隙に加えて、前記基板に設けられた貫通ビア、切り欠き、空洞の少なくともいずれかを用いる。
【0057】
(付記9)付記7又は8のデバイスの製造方法において、前記チップを前記第1の面を基板に対向させて実装した状態で、前記エアブリッジは、高さ方向に前記基板から空隙を介して離間しているか、又は、少なくとも一部が前記基板に当接している。
【0058】
(付記10)付記7乃至9のいずれかのデバイスの製造方法において、前記犠牲層はフォトレジストからなる。
【0059】
なお、上記の特許文献1、2の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各付記の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 超伝導回路装置(デバイス)
2 第1の固定治具(ステージ)
2A XY並進移動機構
3 第2の固定治具(ステージ)
4a、4b 活性化装置
5 真空チャンバー
6 支持部
7 Z方向移動機構
8 Z軸回り回転機構
9 真空排気口
10 量子チップ
11 基板
12 超伝導導体膜(配線層)
12A 第1の導体
12B 第2の導体
12C 信号導体
13 超伝導部材(超伝導導体膜)
13A、13B コンタクト部
13C、13D 橋脚部
13E 橋桁部
14 フォトレジスト
15A 第1のビア
15B 第2のビア
16 フォトレジスト
17 間隙
18 IOライン
19 ポンプライン
20 インターポーザ
21 基板
22 第1面の配線層
23 第2面の配線層
24、24G 貫通ビア
25 バンプ
26 切り欠き
30、30A、30S エアブリッジ