(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002553
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】香炉及び香炉の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 35/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A47G35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102802
(22)【出願日】2023-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和5年2月14日にMakuakeにて公開 (2)令和5年3月2日~12日に福岡アトツギストアにて公開 (3)令和5年3月10日にISSIN THE FINAL 2022-2023にて公開 (4)令和4年11月24日にISSIN CRATEDコースの中間デモデイにて公開 (5)令和4年12月26日に自社ホームページにて公開 (6)令和5年3月13日にウェブマガジンSAKIDORIにて公開 (7)令和5年1月25日にRKB毎日放送のタダイマにて公開 (8)令和5年2月14日に西日本新聞朝刊にて公開 (9)令和5年2月16日に西日本新聞ニュースリリースにて公開 (10)令和5年2月10日に福岡県ニュースリリースにて公開 (11)令和5年2月27日に福岡県ニュースリリースにて公開 (12)令和5年2月7日~14日にFacebookにて公開 (13)令和5年2月7日~3月15日にInstagramにて公開 (14)令和5年2月9日~5月19日にTwitterにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】523240442
【氏名又は名称】株式会社村田木型製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】加来 由香里
(57)【要約】
【課題】外部から香材の燃焼進捗を把握できる機能を有しつつ、形状の自由度を向上する香炉を提供する。
【解決手段】本発明の香炉は、内部空間に香材を配置し、複数の香煙用孔から香煙を放出する横長形状の香炉であって、前記香炉は、香炉台と、前記香炉台に被冠される蓋体と、を備え、前記蓋体が前記香炉台に被冠されて形成される前記内部空間を有し、前記複数の香煙用孔は、前記蓋体の上面部に長手方向に沿って形成され、前記香炉の内部空間において、前記蓋体の上面部の天井面には、前記複数のそれぞれの香煙用孔の間に集煙壁が設けられ、当該集煙壁は、香煙を集煙するように傾斜した傾斜部を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に香材を配置し、複数の香煙用孔から香煙を放出する横長形状の香炉であって、
前記香炉は、香炉台と、前記香炉台に被冠される蓋体と、を備え、
前記蓋体が前記香炉台に被冠されて形成される前記内部空間を有し、
前記複数の香煙用孔は、前記蓋体の上面部に長手方向に沿って形成され、
前記香炉の内部空間において、前記蓋体の上面部の天井面には、前記複数のそれぞれの香煙用孔の間に集煙壁が設けられ、当該集煙壁は、香煙を集煙するように傾斜した傾斜部を有することを特徴とする香炉。
【請求項2】
前記傾斜部が、前記香煙用孔に連設された請求項1に記載の香炉。
【請求項3】
香炉の短手方向断面形状が、長方形である請求項1に記載の香炉。
【請求項4】
香炉の端面部に、前記香材を略水平に保持する香材保持孔が設けられた請求項1に記載の香炉。
【請求項5】
香炉の底面部に、灰収集部を有する請求項1に記載の香炉。
【請求項6】
前記香炉台及び前記蓋体が難燃性である請求項1に記載の香炉。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の香炉の製造方法であって、
鋳造によって前記蓋体及び/又は前記香炉台を製造する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間に香材を配置し、複数の香煙用孔から香煙を放出する香炉と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香材を加熱し、香気成分を発散させる器として、一般に香炉が用いられる。典型的には、香炉は仏具として認識されることが多いが、香材からの煙や香りを楽しむための香炉も数多く存在する。特に後者の香炉は、お香を焚くという嗜好性が高い行為に対して、様々な機能や形態を有するものが存在している。
【0003】
例えば、特許文献1には、筒形状香炉本体に、複数の通空部が筒形状方向に沿って構成された香炉が開示されている。このような構成によると、香材の燃焼位置に対応した通空部から香煙が放出されるため、香煙が放出される通空部の位置から、香材の燃焼のおおよその進捗を外部から把握できる機能が備わっている。
【0004】
また、特許文献2には、横長形状の内部に長手方向に沿って複数の境界壁が設けられ、各境界壁間の天井部分に香煙用孔が形成されている香炉が開示されている。このような構成によると、香材の燃焼位置に対応した香煙用孔から香煙が放出されるため、香材の燃焼の進捗を外部から把握できる機能を有する。加えて、境界壁によって香炉内部での香煙の拡散が抑制され、香煙が放出される香煙用孔が限定されるため、香材の燃焼の進捗をより正確に把握できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-193022号公報
【特許文献2】特開平10-137109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した香炉は、いずれも香炉の短手方向断面の上部が尖頭形状に形成されている。一般に、煙(香煙を含む)は、上昇しながら拡散する性質を有するが、これらの香炉は、尖頭形状をとることにより、香材から立ち昇る香煙を尖頭形状に沿って導き、香煙の拡散を抑えつつ、香煙を集煙して香煙の濃度を高め(集煙効果)、香炉の外部に放出される香煙の視認性を向上させている。
しかしながら、上述した香炉は、精度よく香材の燃焼進捗を把握するために、香炉の形状が尖頭形状に制限され、多様な形状の香炉を提供することができないという課題があった。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、外部から香材の燃焼進捗を把握できる機能を有しつつ、形状の自由度を向上する香炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 内部空間に香材を配置し、複数の香煙用孔から香煙を放出する横長形状の香炉であって、前記香炉は、香炉台と、前記香炉台に被冠される蓋体と、を備え、前記蓋体が前記香炉台に被冠されて形成される前記内部空間を有し、前記複数の香煙用孔は、前記蓋体の上面部に長手方向に沿って形成され、前記香炉の内部空間において、前記蓋体の上面部の天井面には、前記複数のそれぞれの香煙用孔の間に集煙壁が設けられ、当該集煙壁は、香煙を集煙するように傾斜した傾斜部を有する香炉。
<2> 前記傾斜部が、前記香煙用孔に連設された<1>に記載の香炉。
<3> 香炉の短手方向断面形状が、長方形である<1>又は<2>に記載の香炉。
<4> 香炉の端面部に、前記香材を略水平に保持する香材保持孔が設けられた<1>から<3>のいずれかに記載の香炉。
<5> 香炉の底面部に灰収集部を有する<1>から<4>のいずれかに記載の香炉。
<6> 前記香炉台及び前記蓋体が難燃性である<1>から<5>のいずれかに記載の香炉。
<7> <1>から<6>のいずれかに記載の香炉の製造方法であって、鋳造によって前記蓋体及び前記香炉台を製造する製造方法。
【0010】
すなわち、本発明の香炉は、内部空間に香材を配置し、複数の香煙用孔から香煙を放出する横長形状の香炉であって、前記香炉は、香炉台と、前記香炉台に被冠される蓋体と、を備え、前記蓋体が前記香炉台に被冠されて形成される内部空間を有し、前記の複数の香煙用孔は、前記蓋体の上面部に長手方向に沿って形成され、前記香炉の内部空間において、前記蓋体の上面部の天井面には、前記複数のそれぞれの香煙用孔の間に集煙壁が設けられ、当該集煙壁は、香煙を集煙するように傾斜した傾斜部を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によると、横長形状の香炉の長手方向に沿って香炉の内部空間に香材が配置され、香材の燃焼時に香煙が生じる。香材から生じる香煙は、香炉の上面部に長手方向に沿って形成され香炉の内部空間と外部を連通する複数の香煙用孔から、香炉の外部に放出される。香材は燃焼の進捗に応じて香煙の発生する位置が移動するが、香煙の発生する位置の移動に伴い、香煙が放出される香煙用孔が切り替わる。そのため、香煙が放出される香煙用孔の位置によって、香材の燃焼の進捗を把握することができる。
【0012】
その際、香煙を集煙するために香炉を尖頭形状にせずとも、香煙は、蓋体の上面部の天井面に設けられた集煙壁の傾斜部に沿って上昇しながら、香炉の内部空間において集煙することができる(集煙効果)。集煙された香煙は、香煙用孔が放出される際、視認性が向上する。すなわち、本発明の香炉は、尖頭形状にせずとも香煙の外部放出時の視認性を高めることができ、尖頭形状以外の形状にすることが可能となる。
【0013】
また、本発明の目的を損なわない限り、本発明の香炉の形状は任意である。
例えば、香炉の短手方向断面形状は、正方形、長方形、台形、平行四辺形、角丸四角形、円形、楕円形、三角形、又は多角形等を選択することができ、デザイン性や設計面、生産面等から最適な形状を適宜選択することができる。本発明の香炉の短手方向断面の好適な一形状は、長方形(正方形を含む)である。
また、香炉の長手方向断面形状は、筒形形状を形成する。香炉の長手方向断面の形状(外形)は、正方形、長方形、台形、平行四辺形、角丸四角形、円形、楕円形、三角形、又は多角形等を選択することができ、デザイン性や設計面、生産面等から最適な形状を適宜選択することができる。本発明の香炉の長手方向断面の好適な一形状は、長方形(正方形を含む)である。
【0014】
なお、本発明の香炉の内部空間において、前記蓋体の上面部の天井面には、前記複数のそれぞれの香煙用孔の間に、本発明に係る集煙壁が設けられる。
本発明に係る集煙壁は、香炉の内部空間において、香炉の長手方向断面形状が下向き凸状に形成され、香炉の短手方向に延在し、2つの側面部に接続して設けられる。集煙壁がこのように設けられることにより、香炉の内部空間の一部が集煙壁に囲まれ、香煙を集める集煙空間が形成される。
【0015】
なお、本発明に係る集煙壁は、集煙効果を奏する傾斜部を有するが、本発明の目的を損なわない限り、任意の形状をとることができ、また、複数の傾斜部から形成されてもよい。
【0016】
また、本発明の香炉において、本発明の目的を損なわない限り、傾斜部は香煙用孔に連設されていてもよく、連設されていなくてもよいが、傾斜部は香煙用孔に連設されていることが好ましい。
傾斜部が香煙用孔に連設されることにより、集煙空間がより狭められ、香煙の濃度をより高めることができる。また、香煙は、その濃度を高めつつ傾斜部に沿って香煙用孔へ直接的に導かれ、香煙を外部へ円滑に放出することができる。
【0017】
また、本発明の香炉は、本発明の目的を損なわない限り、任意の製造方法を用いて製造してもよいが、例えば、鋳造によって製造されてもよい。具体的には、鋳造によって、本発明の香炉に係る蓋体及び香炉台を製造してもよく、また、鋳造によって、蓋体のみ、又は香炉台のみを製造してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部から香材の燃焼進捗を把握できる機能を有しつつ、形状の自由度を向上する香炉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る香炉の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る香炉の分解参考斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(正面図)である。
【
図4】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(平面図)である。
【
図5】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(底面図)である。
【
図6】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(背面図)である。
【
図7】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(左側面図)である。
【
図8】本発明の実施形態に係る香炉の六面図(右側面図)である。
【
図9】本発明の実施形態に係る香炉のA-A断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る香炉のB-B断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る集煙壁及び香煙用孔を示す断面図(
図9の拡大図)である。
【
図12】本発明の実施形態に係る集煙壁のバリエーション図(曲線)である。
【
図13】本発明の実施形態に係る集煙壁のバリエーション図(折れ線)である。
【
図14】本発明の実施形態に係る集煙壁のバリエーション図(2つの傾斜部)である。
【
図15】本発明の実施形態に係る集煙壁のバリエーション図(傾斜部と香煙用孔が非連設)である。
【
図16】本発明の実施形態に係る集煙壁を示す図面(蓋体の右側面図)である。
【
図17】本発明の実施形態に係る香炉台の使用状態の概略図で(香材の使用初期)である。
【
図18】本発明の実施形態に係る香炉台の使用状態の概略図(香材の使用終期)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
【0021】
図1に本発明の実施形態に係る香炉の斜視図、
図2に本発明の実施形態に係る香炉の分解斜視図、
図3乃至
図8に本発明の実施形態に係る香炉の六面図、
図9及び
図10に本発明の実施形態に係る香炉の断面図、
図11に本発明の実施形態に係る集煙壁及び香煙用孔を示す断面図、
図12乃至
図15に本発明の実施形態に係る集煙壁のバリエーション図、
図16に本発明の実施形態に係る集煙壁を示す図面を示す。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る香炉1は、香炉台3と、香炉台3に被冠される蓋体2とから構成される。なお、本発明に係る香炉は、本発明の目的を損なわない限り、蓋体及び香炉台以外の要素を含んでもよい。
香炉台3に蓋体2が被冠されることにより、香炉1に内部空間4が形成される(
図9参照)。
【0023】
本発明の実施形態の香炉1は、
図10に示すように、短手方向断面形状が略正方形であり、また、
図1及び
図3に示すように、その外形は、横長形状で、直方体形状である。
本発明の実施形態の香炉1の長さLは16cm、高さHは5cm、奥行Dは5cmである(
図3及び
図7参照)。
【0024】
なお、本発明の香炉の外形寸法はそれぞれ任意であり、香炉のデザイン、香材の長さ、を考慮して、適宜設計してもよい。
また、本発明の実施形態の香炉の短手方向断面形状は、長方形(略正方形)であるが、本発明の香炉の形状は、本発明の目的を損なわない限り、任意であり、本発明の香炉の短手方向断面形状は、例えば、正方形、長方形、台形、平行四辺形、角丸四角形、円形、楕円形、三角形、又は多角形であってもよい。
また、本発明の実施形態の香炉の長手方向断面形状は、筒形形状を形成し、その形状(外形)は長方形であるが、本発明の香炉の外形は、本発明の目的を損なわない限り、任意であり、本発明の香炉の長手方向断面形状は、例えば、正方形、長方形、台形、平行四辺形、角丸四角形、円形、楕円形、三角形、又は多角形であってもよい。
【0025】
香炉1を構成する蓋体2及び香炉台3は、アルミニウム合金からなる。本実施形態の香炉1は、公知のアルミ鋳造方法により製造される。アルミニウム合金は難燃性であり、香炉の延焼を防ぐことができる。
なお、本発明に係る蓋体及び香炉台は、難燃性であれば、その材質は任意に選択することができ、例えば、金属、難燃性樹脂、陶器、もしくは磁器、又はこれらの任意の組合せを選択してもよい。
また、本発明に係る香炉(蓋体及び香炉台)は、本発明の効果を損なわない限り、鋳造によって製造することができる。
【0026】
図2及び
図5に示すように、本発明の実施形態に係る香炉台3は、底面部31と、前記底面部31の短辺に立設された端面部32とからなる。
【0027】
香炉台3の端面部32の中央には、香材保持孔33が設けられている(
図2及び
図8参照)。香材保持孔33は、香材5を、略水平に、すなわち、水平、又は水平に対して若干の傾斜を有する状態に、保持することができる。なお、本発明に係る香材保持孔は、本発明の目的を損なわない限り、端面部の任意の位置に設けてもよい。
【0028】
また、本発明の香炉に用いられる香材は、燃焼により香煙を生じ、香炉の内部空間に配置できるものであればよい。例えば、棒状の香材(線香)、渦巻き状の香材(蚊取り線香)、粉末状の香材等があり、好適には棒状の香材である。
【0029】
また、香材保持孔33は、香炉1の内部空間4に保持される香材5の端部が上向くように、傾斜している。香材保持孔33と水平面のなす角度は5°である(
図9、
図17参照)。
【0030】
なお、本実施形態において、香材保持孔33は端面部32を貫通した貫通孔として形成されているが、本発明に係る香材保持孔は、香材を保持できる限り、貫通孔でなくてもよい。
香材を保持した際の安定性、及び、香材の燃え残り(残渣)の除去を考慮すると、本発明に係る香材保持孔は貫通孔として形成される方が好ましい。
【0031】
香炉1は、香炉台3の底面部31に、香材の灰を集める灰収集部34を有する。
図2及び
図10に示すように、本実施形態において灰収集部34は、香炉台3の底面部31に、短手方向断面が凹形状(円弧形状)に形成されている。
【0032】
本発明の実施形態に係る蓋体2は、上面部21と、上面部21の長辺に接続される側面部22及び側面部23と、上面部21の短辺に接続される端面部24と、から構成される(
図2及び
図3参照)。
【0033】
上面部21には、香煙用孔211が、
図4に示すように、蓋体2の上面部21の短手方向(
図4の上下方向)の中央に、長手方向(
図4の左右方向)に沿って等間隔で5つ設けられている。香煙用孔211の孔径は3mmである。
なお、本発明に係る香炉は、外部から香材の燃焼進捗を把握できる限り、香煙用孔の形状、数、大きさを、任意に設定することができる。
【0034】
また、側面部22には、上面部21に設けられた香煙用孔211に対応して5つの数字(香材5が保持される端面部32に近い方から、1,3,5,7,9)が付されている。香煙51が放出される香煙用孔211に対応した数字を確認することにより、香材5の残量を把握することができる(
図3参照)。
【0035】
また、側面部23には、同じ大きさで同じ形状の吸気口231が長手方向に等間隔で8つ設けられている。吸気口231を通じて、香炉1の外部から内部空間4へと空気を取り込むことができ、香材5を安定して燃焼させて香煙51を安定して発生させることができる(
図6参照)。なお、本発明に係る香炉は、香材を燃焼させて安定して香煙を生じさせることができる限り、吸気口の形状、数、大きさを、任意に設定することができる。
【0036】
図9に示すように、香炉1の内部空間4において、蓋体2の上面部21の天井面に、端面部24に近い方から、集煙壁212a,212b,212c,212d、212e及び212fが設けられている。これらの集煙壁のうち、集煙壁212b,212c,212d,及び212eは、蓋体2の上面部21に穿設されている複数の香煙用孔211の間に、それぞれ設けられている。
【0037】
また、
図11に示すように、本実施形態に係る集煙壁212は、傾斜部213を有する。本実施形態に係る集煙壁212a~212eの傾斜部213は、水平面となす角度(傾斜角)が24°であり、集煙壁212fの傾斜部213の傾斜角は47°である(
図9参照)。なお、本発明に係る傾斜部の傾斜角は、本発明の香炉の形状及び寸法、並びに香材の形状、寸法及び素材等によって、任意に設定することができるが、香煙を集煙できる限り、任意の角度をとることができる。例えば、本発明に係る傾斜部の傾斜角は、10~80°,20~60°で設定することができる。
また、
図9及び
図11に示すように、集煙壁212(集煙壁212aを除く)は垂直部214を有し、垂直部214は、水平面に対し垂直である。
【0038】
なお、傾斜部213は、香炉の長手方向断面形状において、直線で形成されているが、
図12及び
図13に示すように、傾斜部213は、集煙効果を有する限り、曲線(円弧)でも折れ線(階段状の矩形)でもよい。また、傾斜部213は、曲線、直線、折れ線、波形線、矩形、もしくは円弧、又はこれらの組合せでもよい(図示なし)。
また、
図14に示すように、集煙壁212は2つの傾斜部213から構成されてもよい。
【0039】
また、集煙壁212は、香炉1の内部空間4において、香炉の長手方向断面形状が下向き凸状に形成され、香炉の短手方向に同じ凸状で延在し、側面部22と側面部23に接続して設けられている(
図16参照)。
集煙壁212は、
図9に示すように、香炉1の内部空間4の一部を囲むことにより、集煙空間41を形成する。
【0040】
図9及び
図11に示すように、傾斜部213は、香煙用孔211に連設されている。
なお、傾斜部213は、本発明の目的を損なわない限り、
図15に示すように、香煙用孔211に連設されなくてもよい(傾斜部213は、傾斜していない水平部215に連設し、水平部215が香煙用孔211に連設してもよい)。
【0041】
また、本実施形態の垂直部214は、香煙用孔211に連設されている(
図9及び
図11参照)。
【0042】
以下、本発明の実施形態に係る香炉1の使用方法の例について説明する。
図17に、香材5の使用初期の香炉1の概略図、
図18に、香材5の使用終期の香炉1の概略図を示す。
【0043】
本発明の実施形態の香炉1を使用する際、まず、蓋体2を香炉台3から外し、香炉台3の端面部32の中央に設けられた香材保持孔33に、香材5(棒状の線香)を挿入する。続いて、香材5の先端に着火し、蓋体2を香炉台3に被冠する。
【0044】
なお、香材保持孔33に挿入された香材5は、
図17に示すように、略水平に、具体的には、傾斜角(香材保持孔33と水平面のなす角度)5°で保持される。そのため、香材5は最も高い位置(先端)で燃焼することができ、燃焼が安定する。
【0045】
香材5に着火して蓋体2を香炉台3に被冠したら、
図17に示す通り、香炉1の内部空間4において、香材5は香煙51を生じている。生じた香煙51は上昇し、集煙壁212a及び集煙壁212bの傾斜部213に沿って集煙空間41aに集煙される。
ここで、本実施形態に係る集煙壁212a及び集煙壁212bの傾斜部213は、香煙用孔211aに連設されており、集煙空間41aが狭められ、香煙51をより濃縮することが可能となる。
【0046】
また、集煙された香煙51は、香煙用孔211aを通じて、香炉1の内部空間4から外部へ放出される。ここでも、集煙壁212a及び集煙壁212bの傾斜部213が香煙用孔211aに連設されていることにより、香煙51の集煙空間41aでの滞留を抑制しつつ、香煙51を香煙用孔211aに導くことができ、香煙51を外部へ円滑に放出することが可能となる。
【0047】
図17に示すように、香煙51が、香材保持孔33から最も遠い香煙用孔211aから放出されているため、香材5の燃焼進捗が初期であることを外部から把握することができる。
【0048】
その後、香材5の燃焼が進み、香材5が短くなるにしたがって、香煙51の生じる位置が移動し、香煙51が放出される香煙用孔211が切り替わる。具体的には、香煙用孔211aから、211b,211c,211d,211eへと順次切り替わる。その際、集煙壁212b,212c,212d及び212eは、いずれも同じ大きさで同じ形状であるため、香煙51が放出される香煙用孔211の切り替わりは、一定の時間間隔となる。
【0049】
香材5の燃焼が進み、香材5の燃焼進捗が終期になると、
図18に示すように、短くなった香材5から香煙51が生じて上昇する。生じた香煙51は、集煙壁212fの傾斜部213に沿って集煙空間41eに集煙され、香煙用孔211eを通じて、香炉1の内部空間4から外部へ放出される。
【0050】
ここで、本実施形態に係る集煙壁212fの傾斜部213は、香煙用孔211eに連設されており、集煙空間41eが狭められ、香煙51をより濃縮することが可能になるとともに、香煙51の集煙空間41eでの滞留を抑制しつつ、香煙51を香煙用孔211eに導き、香煙51を外部へ円滑に放出することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態に係る集煙壁212eの垂直部214は、香煙用孔211eに連設されている。そのため、集煙壁212eの垂直部214は、集煙壁212fの傾斜部213とともに、香煙51の濃縮と外部への円滑な放出に寄与する。加えて、集煙壁212eの垂直部214は、下方から上昇してくる香煙51を分断して分煙する効果も有する。
【0052】
図18に示すように、香煙51が、香材保持孔33から最も近い香煙用孔211eから放出されているため、香材5の燃焼が終期であることを外部から把握することができる。
【0053】
上述の通り、本発明の実施形態に係る香炉1は、内部空間4で生じた香煙51が放出される香煙用孔211の位置から、香材5の燃焼進捗を把握することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えば香炉の寸法、形状、材質等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想到することが可能な値を採用することができる。
【0055】
例えば、上記実施形態において、香煙用孔211は、蓋体2の上面部21の短手方向の中央に、長手方向に沿って等間隔で5つ設けられているが、本発明に係る香煙用孔の数と位置は、外部から香材の燃焼進捗が把握できる限り、任意である。また、上記実施形態において、香煙用孔211の孔径は3mmであるが、本発明に係る香煙用孔の孔径は、香煙を香炉の内部空間から外部へ放出でき、外部から燃焼進捗が把握できる限り、任意である。
【0056】
また、上記実施形態の香炉1は、側面部22,側面部23及び端面部24が蓋体2に形成され、端面部32が香炉台3に形成されているが、本発明の香炉は、全ての側面部及び端面部が、蓋体及び香炉台のいずれか一方に形成されてもよく、あるいは、各側面部及び各端面部が、蓋体及び香炉台へ、任意に形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、香炉を尖頭形状にせずとも、香煙を集煙して外部放出時に視認性を高めることができ、形状を自由に設計できる香炉を提供できるため、産業上有望である。
【符号の説明】
【0058】
1 香炉
2 蓋体
3 香炉台
4 内部空間
5 香材
21 上面部
22,23 側面部
24,32 端面部
31 底面部
33 香材保持孔
34 灰収集部
41,41a,41e 集煙空間
51 香煙
211,211a,211b,211c,211d,211e 香煙用孔
212,212a,212b,212c,212d,212e,212f 集煙壁
213 傾斜部
214 垂直部
215 水平部
231 吸気口