(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025550
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】改装建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20250214BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20250214BHJP
E06B 1/32 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B5/16
E06B1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130399
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】恐田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大東 正樹
(72)【発明者】
【氏名】筒井 淳司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】北村 真吾
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011CB01
2E011CC03
2E011JA02
2E011KA06
2E011KB03
2E011KC01
2E011KC07
2E011KD14
2E011KH01
2E239CA02
2E239CA29
2E239CA34
2E239CA55
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】金属部と樹脂部とを有する既設枠に新設枠を取り付ける改装建具において、防火性能を向上させることができる改装建具を提供すること。
【解決手段】改装建具1は、建物躯体100の開口部に取り付けられ、金属部211,221,231,241と樹脂部212,222,232,233,242とを有する既設枠21,22,23,24と、既設枠21,22,23,24の内周側に取り付けられる新設枠31,32,33,34と、既設枠21,22,23,24と新設枠31,32,33,34との間の空間に向かって発泡するように既設枠21,22,23,24に取り付けられる加熱発泡材711,712,713,721,722,731,732,741,742と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の開口部に取り付けられ、金属部と樹脂部とを有する既設枠と、
前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、
前記既設枠と前記新設枠との間の空間に向かって発泡するように前記既設枠に取り付けられる加熱発泡材と、を備える改装建具。
【請求項2】
前記金属部は、枠により構成され、
前記樹脂部は、前記金属部の前記枠の内周側に取り付けられる、請求項1に記載の改装建具。
【請求項3】
前記加熱発泡材は、前記樹脂部に取り付けられる、請求項1又は2に記載の改装建具。
【請求項4】
前記加熱発泡材は、前記金属部に取り付けられる、請求項1又は2に記載の改装建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改装建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部をリフォーム等で改装する場合に、開口部に取り付けられている既設枠の内周側に新設枠を取り付けることが行われている。例えば、特許文献1には、既設枠の内周側に新設枠を対面するように配置させた改装建具が開示されている。ここで、既設枠が、アルミニウム等の金属部に樹脂部を取り付けた複合構造であることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改装建具において、既設枠がアルミニウム等の金属部に樹脂部を取り付けた複合構造である場合、防火性能を向上させる観点から、既設枠の樹脂部の火災時の燃焼を防ぐために、既設枠から樹脂部を取り除いた後に、新設枠を取り付けることが望ましい。しかし、金属部と樹脂部とを有する既設枠から、樹脂部を取り外すことが簡単ではないことが多かった。そのため、金属部と樹脂部とを有する複合構造の既設枠に、新設枠を取り付ける改装建具において、防火性能を向上させることが望まれている。
【0005】
本開示は、金属部と樹脂部とを有する既設枠と、既設枠に取り付けられる新設枠と、を備え、防火性能を向上させることができる改装建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、建物躯体の開口部に取り付けられ、金属部と樹脂部とを有する既設枠と、前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、前記既設枠と前記新設枠との間の空間に向かって発泡するように前記既設枠に取り付けられる加熱発泡材と、を備える改装建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る改装建具を室外側から見た正面図である。
【
図4】
図2に示す改装建具の上枠部分を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】
図2に示す改装建具の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】
図3に示す改装建具の左側の縦枠部分を拡大して示す横断面図である。
【
図7】
図3に示す改装建具の右側の縦枠部分を拡大して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。本実施形態に係る改装建具1は、既設枠2が建物躯体100の開口部に取り付けられた状態で、既設枠2に新設枠3を取り付けるリフォーム用の改装建具である。
【0009】
本明細書において、見込み方向とは、改装建具1における室内外方向に沿う方向である。見付け方向とは、改装建具1における面材の面方向に沿う方向であり、見込み方向に対して直交する方向である。「見付け面」は、改装建具1における室外側及び室内側に面するそれぞれの面を意味し、「見込み面」は、改装建具1において室内外方向に延びる面を意味する。図面において、改装建具1の室外側を「室外側X1」とし、改装建具1の室内側を「室内側X2」とする。改装建具1を正面視したときの横方向を「左右」とする。改装建具1を正面視したときの改装建具1の中央部に向かう方向を「内方」とし、改装建具1の中央部から離れる方向を「外方」とする。
【0010】
本実施形態に示す改装建具1は、木質系の建物躯体100の開口部に納められた引き違い窓タイプの改装サッシである。
図1に示すように、改装建具1は、既設枠2と、新設枠3と、2枚の障子41,42と、1枚の網戸43(
図2及び
図3参照)と、を有する。既設枠2は、建物躯体100の開口部における上下左右の四周に亘って取り付けられる。新設枠3は、既設枠2の内周側における上下左右の四周に亘って取り付けられる。障子41,42及び網戸43は、新設枠3の内側に左右方向にスライド移動可能に納められる。
図1に示すように、室内側X2に配置される障子41には、クレセント錠44が取り付けられている。
図1において、網戸43は図示を省略している。
【0011】
既設枠2は、
図2及び
図3に示すように、既設上枠21、既設下枠22及び左右一対の既設縦枠23,24の4つの枠部材を矩形に四方組みすることによって形成され、改装前の建物躯体100の開口部の内側に取り付けられている。
【0012】
既設枠2の室内側X2には額縁部材101が配置される。額縁部材101は、建物躯体100の開口部の内周面における上下左右の四周に亘って取り付けられ、既設枠2の室内側X2の端面2aから室内側に向けて延びている。四方組みされた既設枠2と建物躯体100の室外側X1に設けられる外壁材102との隙間は、バックアップ材103及びシーリング材104によって四周に亘って目止めされている。
【0013】
既設上枠21は、
図2及び
図4に示すように、建物躯体100の開口部の上部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設上枠21は、既設上枠本体である金属枠体211(金属部)の枠の内周側の内側表面に、樹脂カバー材212,213(樹脂部)を取り付けた複合構造を有する。そのため、断熱性及び防露性に優れる。金属枠体211は、既設上枠21の室外側X1に配置される。樹脂カバー材212,213は、金属枠体211の室内側X2の部分に取り付けられる。
【0014】
既設上枠21の金属枠体211は、アルミニウム等の金属製の押出形材の枠からなる。金属枠体211は、見込み方向に延びる上面延在板21aと、上面延在板21aからそれぞれ下方に向けて突出する既設障子用の一対のガイドレール211a、211bと、既設網戸用のガイドレール211cと、上面延在板21aの室内側X2の端部に形成される室内側端部21bと、上面延在板21aの見込み方向の途中から上方に突出して延びる上方延出板21dと、を有する。室内側端部21bは、室内側X2の最も端部において、下方突出部21cが下方に向けて突出して形成されている。
【0015】
樹脂カバー材212は、既設上枠21における一対のガイドレール211a、211bの間に配置される。樹脂カバー材212は、見込み方向に延びて形成される。樹脂カバー材212は、
図1に示す位置に配置された障子42の上側の位置において既設上枠21が延びる方向に延びている。
【0016】
樹脂カバー材213は、障子41の上側において既設上枠21が延びる方向の全長に亘って延びている。樹脂カバー材213は、樹脂カバー部2131と、樹脂製のアングル部2132と、を有する。樹脂カバー部2131は、既設上枠21におけるガイドレール211aの室内側X2の部分を含んで構成され、ガイドレール211aの室内側X2の面から金属枠体211の室内側X2の室内側端部21bの内側表面にかけて設けられている。アングル部2132は、樹脂カバー部2131の室内側X2の端部に設けられ、金属枠体211の室内側端部21bよりも室内側X2に突出する。
【0017】
アングル部2132の下端に形成される室内側突出板2132aは、既設上枠21の室内側X2の端部において、見込み方向に延びて形成され、額縁部材101の室外側X1の端部の下面に沿って配置される。既設上枠21は、建物躯体100の開口部の上方において、室内側X2の端部が、アングル部2132の下端の室内側突出板2132aを介して、建物躯体100の額縁部材101に固定されていると共に、上方延出板21dにおいて建物躯体100に固定されている。
【0018】
図4に示すように、既設上枠21のガイドレール211bの室内側X2の面には、加熱発泡材711が取り付けられており、既設上枠21のガイドレール211aの室内側X2の面に配置された樹脂カバー材213の室内側X2の面には、加熱発泡材712が取り付けられており、樹脂カバー材213のアングル部2132の室内側突出板2132aの下面には、既設上枠21のガイドレール211a、211b及びアングル部2132の室内側突出板2132aには、加熱発泡材713が取り付けられている。
【0019】
加熱発泡材711は、既設上枠21の金属枠体211のガイドレール211bの室内側X2の面(見付け面)に、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡するように取り付けられている。加熱発泡材711は、所定の厚さで形成されると共に、上下方向に幅を有し、既設上枠21の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0020】
加熱発泡材711は、既設上枠21の金属枠体211のガイドレール211bの室内側X2の面(見込み面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材711により既設上枠21と新設上枠31との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設上枠21と新設上枠31との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0021】
加熱発泡材712は、既設上枠21のガイドレール211aの室内側X2の面に配置された樹脂カバー材213の室内側X2の面(見付け面)に、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡するように取り付けられている。加熱発泡材712は、所定の厚さで形成されると共に、上下方向に幅を有し、既設上枠21の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0022】
加熱発泡材712は、既設上枠21のガイドレール211aの室内側X2の面に配置された樹脂カバー材213の室内側X2の面(見付け面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材712により既設上枠21と新設上枠31との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設上枠21と新設上枠31との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0023】
加熱発泡材713は、既設上枠21の室内側X2に設けられた樹脂カバー材213のアングル部2132の室内側突出板2132aの下面(見込み面)に、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡するように取り付けられている。加熱発泡材713は、所定の厚さで形成されると共に、見込み方向に幅を有し、既設上枠21の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0024】
加熱発泡材713は、既設上枠21の室内側X2に設けられた樹脂カバー材213のアングル部2132の室内側突出板2132aの下面(見込み面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材713により既設上枠21と新設上枠31との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設上枠21と新設上枠31との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0025】
既設下枠22は、
図2及び
図5に示すように、建物躯体100の開口部の下部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設下枠22は、既設下枠本体である金属枠体221(金属部)の枠の内周側の内側表面に、樹脂カバー材222(カバー部)を取り付けた複合構造を有する。そのため、断熱性及び防露性に優れる。金属枠体221は、既設下枠22の室外側X1に配置される。樹脂カバー材222は、金属枠体221の室内側X2の部分に取り付けられる。
【0026】
既設下枠22の金属枠体221は、アルミニウム等の金属製の押出形材の枠からなる。金属枠体221は、段差状に形成される。金属枠体221は、室内側X2に設けられる上段部22aと、上段部22aの室外側X1の下方に段差22bを介して設けられる中段部22cと、中段部22cの室外側X1の下方に段差中段部22d1を有する段差22dを介して設けられる下段部22eと、上段部22aの室内側X2の端部から上方に立ち上がる室内側端部22fと、上方に向けて突出する既設障子用の一対のガイドレール221a、221bと、既設網戸用のガイドレール221cと、上段部22aの室内側X2の端部から下方に延びる下方延出壁部22hと、中段部22cの下部において中段部22cと段差22dの一部とを含んで構成され中空部を有する中空枠部22iと、中空枠部22iの室内側X2の端部から下方に突出して延びる下方延出板22jと、を有する。
【0027】
ガイドレール221aは、上段部22aの見込み方向の途中に設けられる。ガイドレール221bは、中段部22cと下段部22eとの境の段差22dの室内側X2の端部における上部に設けられる。ガイドレール221cは、既設下枠22の最も室外側X1において、下段部22eの室外側X1の端部に設けられる。既設下枠22の高さは、最も室内側X2のガイドレール221aから最も室外側X1のガイドレール221cにかけて、次第に低くなるように形成されている。
【0028】
樹脂カバー材222は、障子41の下側において既設下枠22が延びる方向の全長に亘って延びている。樹脂カバー材222は、樹脂カバー部2221と、樹脂製のアングル部2222と、を有する。樹脂カバー部2221は、既設下枠22におけるガイドレール221aの室内側X2の上段部22aの上面から金属枠体221の室内側X2の室内側端部22fの内側表面にかけて設けられている。アングル部2222は、樹脂カバー部2231の室内側X2の端部に設けられ、金属枠体221の室内側端部22fよりも室内側X2に突出する。
【0029】
アングル部2222の上端に形成される室内側突出板2222aは、見込み方向に延びて形成され、額縁部材101の室外側X1の端部の上面に沿って配置される。既設下枠22は、建物躯体100の開口部の上方において、室内側X2の端部が、アングル部2222の上端の室内側突出板2222aを介して、建物躯体100の額縁部材101に固定されていると共に、下方延出板22jにおいて建物躯体100に固定されている。
【0030】
図5に示すように、既設下枠22のガイドレール221aの室内側X2の面には、加熱発泡材721が取り付けられており、樹脂カバー材222のアングル部2222の室内側突出板2222aの上面には、加熱発泡材722が取り付けられている。
【0031】
加熱発泡材721は、既設下枠22の金属枠体221のガイドレール221aの室内側X2の面(見付け面)に、既設下枠22と新設下枠32との間の空間に向かって発泡するように取り付けられている。加熱発泡材721は、所定の厚さで形成されると共に、上下方向に幅を有し、既設下枠22の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0032】
加熱発泡材721は、既設下枠22の金属枠体221のガイドレール221aの室内側X2の面(見付け面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設下枠22と新設下枠32との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材721により既設下枠22と新設下枠32との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設下枠22と新設下枠32との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設下枠22と新設下枠32との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0033】
加熱発泡材722は、既設下枠22の室内側X2に設けられた樹脂部のアングル部2222の室内側突出板2222aの上面(見込み面)に取り付けられている。加熱発泡材722は、所定の厚さで形成されると共に、見込み方向に幅を有し、既設下枠22の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0034】
加熱発泡材722は、既設下枠22の室内側X2に設けられた樹脂カバー材222のアングル部2222の室内側突出板2222aの上面(見込み面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設上枠21と新設上枠31との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材722により既設下枠22と新設下枠32との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設下枠22と新設下枠32との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設下枠22と新設下枠32との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0035】
既設縦枠23,24は、
図3、
図6及び
図7に示すように、建物躯体100の開口部の左右方向の両端部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設縦枠23,24は、既設縦枠本体である金属枠体231,241(金属部)の枠の内周側の内側表面に、樹脂カバー材232,233,242(樹脂部)を取り付けた複合構造を有する。そのため、断熱性及び防露性に優れる。金属枠体231,241は、既設縦枠23,24の室外側X1に配置される。樹脂カバー材232,233,242は、金属枠体231,241の室内側X2の部分に取り付けられる。
【0036】
既設縦枠23,24の金属枠体231,241は、アルミニウム等の金属製の押出形材の枠からなる。金属枠体231,241は、見込み方向に延びる側部延在板23a,24aと、側部延在板23a,24aの室外側X1の端部から左右方向の外方に突出する外方突出片23b,24bと、側部延在板23a,24aの室内側X2の端部から左右方向の内方に立ち上がる室内側端部23c,24cと、側部延在板23a,24aの見込み方向の途中から左右方向の外方に突出して延びる外方延出板23e,24eと、を有する。
【0037】
図6及び
図7に示すように、樹脂カバー材232,242は、既設縦枠23が延びる方向の全長に亘って延びている。樹脂カバー材232,242は、樹脂カバー部2321,2421と、樹脂製のアングル部2322,2422と、を有する。
【0038】
樹脂カバー部2321,2421は、既設縦枠23,24における側部延在板23a,24aの室内側X2の端部の左右方向の内方の内側面から金属枠体231,241の室内側X2の室内側端部23c,24cの内側表面にかけて設けられている。アングル部2322,2422は、樹脂カバー部2321,2421の室内側X2の端部に設けられ、金属枠体231,241の室内側端部23c,24cよりも室内側X2に突出する。
【0039】
アングル部2322,2422の左右方向の内方の端部に形成される室内側突出板2322a,2422aは、既設縦枠23,24の室内側X2の端部において、見込み方向に延びて形成され、額縁部材101の左右方向の内方の内側面に沿って配置される。既設縦枠23,24は、建物躯体100の開口部の側方において、室内側X2の端部が、アングル部2322,2422の左右方向の内方の端部の室内側突出板2322a,2422aを介して、建物躯体100の額縁部材101に固定されていると共に、外方延出板23e,24eにおいて建物躯体100に固定されている。
【0040】
樹脂カバー材233は、
図6に示すように、左側の新設縦枠33にのみ設けられ、既設縦枠23における側部延在板23aの見込み方向の中央付近から室内側X2の端部まで見込み方向に延びて形成され、側部延在板23aの左右方向の内方の内側面を覆っている。樹脂カバー部2321の室内側X2の端部は、樹脂カバー材232の樹脂カバー部2321に当接している。
【0041】
図6に示すように、左側の既設縦枠23の金属枠体231において、側部延在板23aの左右方向の内方の内側面の室外側X1の部分から2つの突出板23f,23gが左右方向の内方に突出して形成されている。2つの突出板23f,23gのうち、室内側X2に配置される突出板23gの室内側X2の面には、加熱発泡材731が取り付けられている。
【0042】
図7に示すように、右側の既設縦枠24の金属枠体241において、側部延在板24aの左右方向の内方の内側面から3つの突出板24f,24g,24hが左右方向の内方に突出して形成されている。3つの突出板24f,24g,24hのうち、室内側X2に配置される突出板24hの室内側X2の面には、加熱発泡材741が取り付けられている。
【0043】
図6及び
図7に示すように、加熱発泡材731,741は、既設縦枠23,24の金属枠体231,241の突出板23g,24hの室内側X2の面(見付け面)に取り付けられている。加熱発泡材731,741は、所定の厚さで形成されると共に、左右方向に幅を有し、既設縦枠23,24の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0044】
加熱発泡材731,741は、既設縦枠23,24の金属枠体231,241の突出板23g,24hの室内側X2の面(見付け面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材731,741により既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0045】
図6及び
図7に示すように、既設縦枠23,24において、樹脂カバー材232,242のアングル部2322,2422の室内側突出板2322a,2422aには、加熱発泡材732,742が取り付けられている。
【0046】
加熱発泡材732,742は、既設縦枠23,24の室内側X2に設けられた樹脂カバー材232,242のアングル部2322,2422の室内側突出板2322a,2422aの左右方向の内方側の内側面(見込み面)に取り付けられている。加熱発泡材732,742は、所定の厚さで形成されると共に、見込み方向に幅を有し、既設縦枠23,24の長さ方向の全長に亘って延びる。
【0047】
加熱発泡材732,742は、既設縦枠23,24の室内側X2に設けられた樹脂カバー材232,242のアングル部2322,2422の室内側突出板2322a,2422aの左右方向の内方側の内側面(見込み面)に取り付けられており、火災発生時の火炎の熱により、厚さ方向に発泡するため、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間に向かって発泡する。これにより、火災発生時において、加熱発泡材722により既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間に火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0048】
本実施形態の新設枠3は、既設枠2の形状に対応するように、既設枠2に専用に形成された専用枠である。新設枠3は、
図2及び
図3に示すように、新設上枠31、新設下枠32及び左右一対の新設縦枠33,34の4つの枠部材を予め矩形に四方組みした状態で、既設枠2から額縁部材101に亘る内周側に取り付けられる。詳しくは、新設枠3は、予め四方組みした状態で建物躯体100の開口部の室内側X2から室外側X1に出した後、室内側X2に引き込むようにして、既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置される。既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置された新設枠3は、固定部材であるねじSC1,SC2,SC3,SC4によって、既設枠2よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。
【0049】
次に、新設枠3の新設上枠31、新設下枠32及び左右一対の新設縦枠33,34の構成について、個別に説明する。
【0050】
まず、新設上枠31について説明する。
【0051】
図4に示すように、新設上枠31は、既設上枠21の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設上枠31は、既設上枠21のガイドレール211cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設上枠31は、室外側枠部材311と室内側枠部材312とに見込み方向に2分割されている。室外側枠部材311及び室内側枠部材312は、いずれも金属枠部材であり、それぞれアルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。室外側枠部材311と室内側枠部材312との間には、連結部材313が配置されている。室外側枠部材311と室内側枠部材312とは、連結部材313によって一体的に連結されている。連結部材313は、樹脂等の断熱性を有する部材からなり、新設上枠31における室外側枠部材311から室内側枠部材312への熱の伝達を遮断する。
【0052】
新設上枠31は、新設枠3の内側に納められる2枚の障子41,42用の一対のガイドレール314a,314bと、新設枠3の最も室外側X1に納められる網戸43用のガイドレール314cと、を有する。ガイドレール314b,314cは、室外側枠部材311に配置され、下方に向けて突出している。ガイドレール314aは、室内側枠部材312において連結部材313に隣接して配置され、下方に向けて突出している。ガイドレール314a,314b,314cは、新設上枠31の長さ方向の全長に亘って延びている。
【0053】
図4に示すように、室外側枠部材311は、ガイドレール314bが配置される部位から連結部材313に亘って延びる断面略矩形状の中空部3111と、中空部3111の室内側X2に連続して配置される断面略矩形状の中空部3112と、を有する。
【0054】
室内側枠部材312は、連結部材313から室内側X2に向けて延びる断面略矩形状の中空部3121を有する。
【0055】
室外側枠部材311の上面311a及び室内側枠部材312の上面312aは、いずれも同一平面上に配置されており、新設上枠31の見込み方向に面一状に並んで配置されている。連結部材313は、これらの上面311a,312aよりも上方に突出していない。
【0056】
室外側枠部材311は、室外側枠部材311の上面311aよりも低い位置で室外側X1に向けて延びる室外側延出部3113を一体に有する。室外側延出部3113は、新設上枠31の室外側X1の端部に配置される。室外側延出部3113は、見込み方向において、ガイドレール314bとガイドレール314cとの間に配置される。室外側延出部3113は、見込み方向において、新設上枠31の上面に浸入した雨水を室内側X2に流入させることなく、左右方向に流す排水溝でもある。
【0057】
室外側延出部3113の最も室外側X1の部位には、見付け方向の上方に向けて延びる室外側壁部315が一体に設けられる。室外側壁部315は、室外側枠部材311及び室内側枠部材312の上面311a,312aよりもさらに上方に突出し、既設上枠21の最も室外側X1のガイドレール211cの室外側面211dに対して、室外側X1から重なるように配置されている。これにより、既設上枠21のガイドレール211cの室外側面211d(室外側部分)は、新設上枠31の室外側壁部315(室外側部)に覆われて配置される。
【0058】
室外側壁部315には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材316(カバー材)が室外側X1から着脱可能に取り付けられている。化粧材316は、室外側壁部315を覆うとともに、既設上枠21よりも見付け方向の上方に延出し、新設上枠31の室外側X1の見付け面を形成している。化粧材316は、既設上枠21と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0059】
新設上枠31の最も室内側X2の部位には、新設上枠31を建物躯体100に固定するための取付部318が一体に設けられる。取付部318は、室外側枠部材311及び室内側枠部材312の上面311a,312aと平行に配置され、室内側枠部材312における室内側X2の端面の上部から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0060】
取付部318の上面には、新設上枠31の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3181が設けられる。一対の突条部3181は、取付部318の上面から僅かに上方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。
【0061】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3における新設上枠31は、既設上枠21から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。新設上枠31の室外側枠部材311は、既設上枠21の下方に配置される。新設上枠31の室内側枠部材312は、額縁部材101の下方に配置される。
【0062】
図4に示すように、新設上枠31と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材301が配置される。スペーサ部材301は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材301は、新設上枠31の長さ方向の幅が所定幅のピース状に形成され、新設上枠31の長さ方向に離れた複数箇所に配置されている。スペーサ部材301を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設上枠31の室内側枠部材312と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。
【0063】
室外側枠部材311の上面311aの室内側X2の部位、室内側枠部材312の上面312a、取付部318及び連結部材313は、スペーサ部材301に当接して重なっている。四方組みされた新設枠3における新設上枠31は、室内側X2から取付部318及びスペーサ部材301を貫通するねじSC1によって、既設上枠21よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC1は、取付部318の一対の突条部3181の間を貫通する。一対の突条部3181は、スペーサ部材301に当接し、ねじSC1の締結トルクが作用した際の取付部318の変形を抑制する。
【0064】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設上枠21と新設上枠31との間には、新設上枠31を既設上枠21に取り付けるための他の部材が介在していない。新設上枠31は、既設上枠21の内周側に直接的に上下に対面するように配置される。そのため、新設上枠31は、既設上枠21に可及的に近接して配置可能である。新設上枠31は、既設上枠21に固定されないため、既設上枠21に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC1は、既設上枠21と接触しないため、ねじSC1を介して既設上枠21と新設上枠31の室内側枠部材312との間で熱が伝達されることもない。
【0065】
新設上枠31の一対のガイドレール314a,314bの間には、樹脂製または木質由来材料製のレール間カバー3114が取り付けられる。レール間カバー3114は、新設上枠31におけるガイドレール314a,314bの間を実質的に遮蔽するように、室外側枠部材311の下面と連結部材313の下面側とに亘って配置される。
図4に示すように、レール間カバー3114は、上板部3114aと、上板部3114aの下方に略平行に配置される下板部3114bと、上板部3114a及び下板部3114bを繋ぐ複数の連結板部3114cとによって構成される二重構造を有する。レール間カバー3114は、既設上枠21側から新設上枠31に伝わる外気温度が、新設上枠31の内周側に伝達されることを抑制する。
【0066】
図4に示すように、新設上枠31の室内側枠部材312の室内側X2の端部の下部には、樹脂製または木質由来材料製のアングル部材319が取り付けられている。アングル部材319の室外側X1には、樹脂製または木質由来材料製のカバー材3191が一体に設けられている。アングル部材319には、ねじ51aによって、樹脂製の化粧カバー51が取り付けられている。
【0067】
化粧カバー51は、アングル部材319に連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。アングル部材319に固定された化粧カバー51は、アングル部材319と額縁部材101との間の新設上枠31及びスペーサ部材301を室内側X2から覆っている。ねじSC1の頭部は、化粧カバー51の内側に配置される。化粧カバー51と額縁部材101との境目は、ねじ61aによって額縁部材101に固定される断面L字状の見切り材61によって遮蔽されている。
【0068】
次に、新設下枠32について説明する。
【0069】
図5に示すように、新設下枠32は、既設下枠22の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設下枠32は、既設下枠22のガイドレール221cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設下枠32は、室外側枠部材321と室内側枠部材322とに見込み方向に2分割されている。室外側枠部材321及び室内側枠部材322は、いずれも金属枠部材であり、それぞれアルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。室外側枠部材321と室内側枠部材322との間には、連結部材323が配置されている。室外側枠部材321と室内側枠部材322とは、連結部材323によって一体的に連結されている。連結部材323は、樹脂等の断熱性を有する部材からなり、新設下枠32における室外側枠部材321から室内側枠部材322への熱の伝達を遮断する。
【0070】
新設下枠32は、新設上枠31のガイドレール314a,314b,314cに対応してそれぞれ上方に突出するガイドレール324a,324b,324cを有する。ガイドレール324a,324b,324cは、新設下枠32の長さ方向の全長に亘って延びている。最も室内側X2のガイドレール324aは、室内側枠部材322の上面における最も室外側X1に、連結部材323に隣接して配置される。ガイドレール324bは、室外側枠部材321の上面における見込み方向の中央部付近に配置される。ガイドレール324cは、室外側枠部材321の上面における最も室外側X1に配置される。
【0071】
図5に示すように、室外側枠部材321は、既設下枠22の形状に沿うように下方に向けて膨出する形状の中空部3211を有する。
【0072】
室内側枠部材322は、連結部材323から室内側X2に向けて延びる断面略矩形状の中空部3221を有する。室内側枠部材322の下面における室外側X1の部位には、上方に向けて凹んだ形状の段部3222が形成されている。室内側枠部材322の下面における室内側X2の部位には、下方に突出する2つの段差脚部3223が形成されている。
【0073】
新設下枠32の室外側X1の部位には、高さ調整部材325が取り付けられる。高さ調整部材325は、新設下枠32から下方に延び、既設下枠22のガイドレール221b,221c間の下段部22eの上面に載置される。高さ調整部材325が調整されることによって、新設下枠32の室外側X1の高さが調整される。
【0074】
新設下枠32の室外側X1の側面には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材326(カバー材)が室外側X1から着脱可能に取り付けられている。化粧材326は、高さ調整部材325を覆うとともに、既設下枠22よりも見付方向の下方に延出し、新設下枠32の見付け面を形成している。化粧材326は、既設下枠22と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0075】
新設下枠32の最も室内側X2の部位には、新設下枠32を建物躯体100に固定するための取付部327が一体に設けられる。取付部327は、室内側枠部材322における室内側X2の端面の下部から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0076】
取付部327の下面には、新設下枠32の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3271が設けられる。一対の突条部3271は、取付部327の下面から僅かに下方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。
【0077】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3において、新設下枠32は、既設下枠22から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。新設下枠32の室外側枠部材321は、既設下枠22の上方に配置される。新設下枠32の室内側枠部材322は、額縁部材101の上方に配置される。
【0078】
取付部327は、額縁部材101に当接している。四方組みされた新設枠3における新設下枠32は、室内側X2から取付部327を貫通するねじSC2によって、既設下枠22よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC2は、取付部327の一対の突条部3271の間を貫通する。一対の突条部3271は、額縁部材101に当接し、ねじSC2の締結トルクが作用した際の取付部327の変形を抑制する。
【0079】
図5に示すように、新設下枠32の室内側枠部材322の段部3222内には、下方からスペーサ部材302と連結支持板35とがねじ352bによって取り付けられ、額縁部材101との間を埋めている。
【0080】
スペーサ部材302は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材302は、新設下枠32の長さ方向の幅が所定幅のピース状に形成され、新設下枠32の長さ方向に離れた複数箇所に配置されているか、または、スペーサ部材302は、新設下枠32の長さ方向の全長に亘って配置されている。スペーサ部材302を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、段部3222の上下方向の深さ及び新設下枠32の室内側枠部材322と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。
【0081】
連結支持板35は、アルミニウム等の金属製の板材からなり、
図5に示すように、見込み方向に延びる板状に形成される。連結支持板35は、
図5に示すように、段差状に形成され、室内側枠部材322から連結部材323の下方を通って室外側枠部材321まで延びている。連結支持板35は、
図1に示すように、左右方向の長さが所定幅のピース状に形成され、改装建具1の左右方向の中央付近に配置される。
【0082】
連結支持板35が設けられている新設下枠32の長さ方向である左右方向の中央付近においては、新設下枠32の長さ方向において、新設下枠32の取付部327(
図5参照)と室内側枠部材322の下面の室内側X2の部位から下方に突出する2つの段差脚部3223(
図5参照)とは連結支持板35が配置される幅の分だけ欠損して切り欠かれている。連結支持板35は、新設下枠32の長さ方向の中央付近において、新設下枠32の取付部327(
図5参照)及び2つの段差脚部3223(
図5参照)が切り欠かれて欠損された箇所に設けられている。
【0083】
図5に示すように、連結支持板35は、見込み方向において、室外側枠部材321と室内側枠部材322とを連結する連結部材323を跨いで、室外側枠部材321と室内側枠部材322とを下方から支持した状態で接続する。連結支持板35は、室外側X1に配置される室外側上段板351と、室内側X2に配置され室外側上段板351よりも低い位置に配置される室内側下段板352と、室外側X1から室内側X2向かうに従って下り傾斜で傾斜して形成され室外側上段板351と室内側下段板352とを接続する下り傾斜接続板353と、を有する。
【0084】
室外側上段板351は、室外側X1に配置され、見込み方向に略水平に延びる。室外側上段板351は、室外側枠部材321における連結部材323に隣接する部位の下面321bの下方に配置され、室外側枠部材321における連結部材323に隣接する部位の下面321bに当接し、下方から室外側枠部材321を支持している。室外側上段板351は、室外側上段板351及び新設下枠32の室外側枠部材321の室内側X2の下部を貫通するねじ351aによって、新設下枠32の室外側枠部材321の室内側X2の下部に固定される。
【0085】
室内側下段板352は、室外側上段板351の室内側X2に下り傾斜接続板353を介して接続され、室外側上段板351よりも低い位置において、見込み方向に略水平に延びる。室内側下段板352は、新設下枠32の室内側枠部材322の室内側X2の端面よりも室内側X2に突出し、新設下枠32の取付部327の先端と同じ位置まで延出する。
【0086】
室内側下段板352は、室内側X2の部位が、室内側下段板352を斜め上方から貫通するねじ352aによって、既設下枠22よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。室内側下段板352の室内側X2の部位を固定するねじ352aは、左右方向に見た場合において、新設下枠32の取付部327を固定するねじSC2と同様の大きさのねじが使用され、ほぼ同じ位置でほぼ同様の傾斜角度で配置されている。室内側下段板352は、室外側X1の部位が、室内側下段板352、スペーサ部材302及び室内側枠部材322の段部3222を下方から貫通するねじ352bによって、室内側枠部材322の下部に固定される。
【0087】
連結支持板35は、火災発生時に、樹脂で構成された連結部材323が焼失しても、室外側枠部材321と室内側枠部材322とを接続すると共に金属製の板材で形成されているため、室外側枠部材321と室内側枠部材322との分離を抑制できる。これにより、火災発生時に、樹脂で構成された連結部材323が焼失しても、新設下枠32の強度を維持できる。
【0088】
また、連結支持板35は、室内側X2の部位において、ねじ352aによって建物躯体100に固定されており、室外側X1の部位において、新設下枠32の室内側枠部材322を下方から支持している。これにより、連結支持板35は、室内側X2の部位がねじ352aによって建物躯体100に固定されているため、室外側X1の部位において、新設下枠32の室外側枠部材321が下方に垂れ下がることを防止した状態で支持できる。
【0089】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設下枠22と新設下枠32との間には、新設下枠32を既設下枠22に取り付けるための他の部材が介在していない。新設下枠32は、既設下枠22の内周側に直接的に上下に対面するように配置される。そのため、新設下枠32は、既設下枠22に可及的に近接して配置可能である。新設下枠32は、既設下枠22に固定されないため、既設下枠22に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC2は、既設下枠22と接触しないため、ねじSC2を介して既設下枠22と新設下枠32の室内側枠部材322との間で熱が伝達されることもない。
【0090】
新設下枠32の一対のガイドレール324a,324bの間には、樹脂製または木質由来材料製のカバー材3213が取り付けられる。カバー材3213は、ガイドレール324bの室内側X2の側面を覆うとともに室内側X2に向けて延びて、室外側枠部材321の上面と連結部材323の上面側とを覆っている。
【0091】
図5に示すように、新設下枠32の室内側枠部材322には、樹脂製または木質由来材料製のアングル部材328が取り付けられている。アングル部材328の室外側X1には、樹脂製または木質由来材料製のカバー材3281が一体に設けられている。アングル部材328には、ねじ52aによって、樹脂製の化粧カバー52が取り付けられている。
【0092】
化粧カバー52は、アングル部材328に連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。アングル部材328に固定された化粧カバー52は、アングル部材328と額縁部材101との間の新設下枠32を室内側X2から覆っている。ねじSC2の頭部及びねじ352aの頭部は、化粧カバー52の内側に配置される。化粧カバー52と額縁部材101との境目は、ねじ62aによって額縁部材101に固定される断面L字状の見切り材62によって遮蔽されている。
【0093】
次に、新設縦枠33,34について説明する。左右の新設縦枠33,34は、左右対称である以外、実質的に同一の構造を有する。左右の新設縦枠33,34については、異なる構成で説明が必要な構成である場合には、個別に説明する。
【0094】
図6及び
図7に示すように、新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24の長さ方向に沿って上下方向に延びている。新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24の室外側X1の端部から額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設縦枠33,34は、金属枠部材であり、それぞれアルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。
【0095】
図6及び
図7に示すように、新設縦枠33,34は、室外側X1側に配置される断面略矩形状の中空部331,341と、室内側X2に配置される断面略矩形状の中空部332,342と、を有する。
【0096】
図6及び
図7に示すように、中空部331,341に対応する外側面331a,341a及び中空部332,342に対応する外側面332a,342aは、いずれも同一平面上に配置されており、新設縦枠33の見込み方向に面一状に並んで配置されている。
【0097】
新設縦枠33,34の最も室外側X1の部位には、見付け方向の外方に向けて延びる室外側壁部334,344が一体に設けられる。室外側壁部334,344は、中空部331,341及び中空部332,342の外側面331a,332a,341a,342aよりもさらに見付け方向の外方に突出し、既設縦枠23,24の最も室外側X1の外方突出片23b,24bの端面23x,24xに対して、室外側X1から重なるように配置されている。これにより、既設縦枠23,24の外方突出片23b,24bの端面23x,24x(室外側部分)は、新設縦枠33,34の室外側壁部334,344(室外側部)に覆われて配置される。
【0098】
室外側壁部334,344には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材335,345(カバー材)が室外側X1から着脱可能に取り付けられている。化粧材335,345は、室外側壁部334,344を覆うとともに、既設縦枠23,24よりも見付け方向の外方に延出し、新設縦枠33,34の見付け面を形成している。化粧材335,345は、既設縦枠23,24と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0099】
新設縦枠33,34の最も室内側X2の部位には、新設縦枠33,34を建物躯体100に固定するために使用される取付部336,346が一体に設けられる。取付部336,346は、新設縦枠33,34の室内側X2の端面の左右方向の外方の部分から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0100】
取付部336,346の左右方向の外方の外側面には、新設縦枠33,34の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3361,3461が設けられる。一対の突条部3361,3461は、取付部336,346の左右方向の外方の外側面から僅かに外方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。
【0101】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3における左右一対の新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。
図6及び
図7に示すように、新設縦枠33と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材303,304が配置される。スペーサ部材303,304は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材303,304は、新設縦枠33,34の長さ方向の幅が所定幅のピース状に形成され、新設縦枠33,34の長さ方向に離れた複数箇所に配置されている。スペーサ部材303,304を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設縦枠33,34と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。
【0102】
新設縦枠33,34の外側面332a,342a及び取付部336,346は、スペーサ部材303,304に当接して重なっている。四方組された新設枠3における新設縦枠33,34は、室内側X2から取付部336,346及びスペーサ部材303,304を貫通するねじSC3,SC4によって、既設縦枠23,24よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC3,SC4は、取付部336,346の一対の突条部3361,3461の間を貫通する。一対の突条部3361,3461は、スペーサ部材303,304に当接し、ねじSC3,SC4の締結トルクが作用した際の取付部336,346の変形を抑制する。
【0103】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間には、新設縦枠33,34を既設縦枠23,24に取り付けるための他の部材が介在していない。新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24の内周側に直接的に左右に対面するように配置される。そのため、新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24に可及的に近接して配置可能である。新設縦枠33,34は、既設縦枠23,24に固定されないため、既設縦枠23,24に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC3,SC4は、既設縦枠23,24と接触しないため、ねじSC3,SC4を介して既設縦枠23,24と新設縦枠33,34との間で熱が伝達されることもない。
【0104】
図6及び
図7に示すように、新設縦枠33,34には、樹脂製または木質由来材料製のアングル部材338,348が取り付けられている。アングル部材338,348には、ねじ53a,54aによって、樹脂製の化粧カバー53,54が取り付けられている。
【0105】
化粧カバー53,54は、アングル部材338,348に連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。アングル部材338,348に固定された化粧カバー53,54は、アングル部材338,348と額縁部材101との間の新設縦枠33,34及びスペーサ部材303,304を室内側X2から覆っている。ねじSC3,SC4の頭部は、化粧カバー53,54の内側に配置される。化粧カバー53,54と額縁部材101との境目は、ねじ63a,64aによって額縁部材101に固定される断面L字状の見切り材63,64によって遮蔽されている。
【0106】
新設縦枠33の室内側X2の部位の内側面には、樹脂製のカバー材333が設けられる。カバー材333は、アングル部材338の室外側X1に隣接して配置され、アングル部材338から新設縦枠33の室内側X2において新設縦枠33の左右方向の内方の内側面を覆っている。
【0107】
次に、障子41,42について説明する。
【0108】
障子41,42は、
図2及び
図3に示すように、それぞれ上框411,421と、下框412,422と、左右一対の縦框413,423と、を矩形に四方組みした框体の内側に、1枚以上のガラス等からなる面材414,424を納めることによって構成される。
【0109】
図2に示すように、上框411,421は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる上框本体4111,4211と、上框本体4111,4211の室内側X2の側面をカバーする樹脂製または木質由来材料製のカバー部材4112,4212と、によって構成される。上框本体4111,4211は、新設上枠31のガイドレール314a,314bの下部に設けられる。
【0110】
図2に示すように、下框412,422は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる下框本体4121,4221と、下框本体4121,4221の室内側X2の側面をカバーする樹脂製または木質由来材料製のカバー部材4122,4222と、によって構成される。下框本体4121,4221は、新設下枠32のガイドレール324a,324bの上部に設けられる。下框本体4121,4221の内部には、戸車4123,4223が設けられ、ガイドレール324a,324b上に転動可能に載置されている。
【0111】
図3に示すように、縦框413,423は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる縦框本体4131,4231と、縦框本体4131,4231の室内側X2の側面をカバーする樹脂製または木質由来材料製のカバー部材4132,4232と、によって構成される。
【0112】
以上の本実施形態の改装建具1によれば、新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設枠2と新設枠3との間には、新設枠3を既設枠2に対して取り付けるための部材が介在しないため、新設枠3は、既設枠2に可及的に近接して配置可能である。そのため、枠部材の見付け方向の寸法が可及的にコンパクトな改装建具1を構築することができる。新設枠3は、既設枠2に固定されないため、既設枠2の歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。そのため、新設枠3の施工性が向上する。固定部材であるねじSC1,SC2,SC3,SC4は、既設枠2と接触しないため、ねじSC1,SC2,SC3,SC4を介して既設枠2と新設枠3との間で熱が伝達されることがなく、断熱性に優れる。
【0113】
本実施形態の改装建具1は、以下の効果を有する。
【0114】
本実施形態の改装建具1は、建物躯体100の開口部に取り付けられ金属枠体211,221,231,241と樹脂カバー材212,213,222,232,233,242とを有する既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)と、既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)の内周側に取り付けられる新設枠3(新設上枠31,新設縦枠33,34)と、既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)と新設枠3(新設上枠31,新設下枠32,新設縦枠33,34)との間の空間に向かって発泡するように既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)に取り付けられる加熱発泡材711,712,713,721,722,731,732,741,742と、を備える。
【0115】
これにより、火災発生時において、加熱発泡材711,712,713,721,722,731,732,741,742により既設枠2(既設上枠21,既設縦枠23,24)と新設枠3(新設上枠31,新設縦枠33,34)との間の空間を塞ぐことができる。よって、火災発生時において、既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)の樹脂カバー材212,213,222,232,233,242と新設枠3(新設上枠31,新設下枠32,新設縦枠33,34)との間の空間に室外側X1又は室内側X2から火炎の熱が流入することを抑制でき、或いは、既設枠2(既設上枠21,既設下枠22,既設縦枠23,24)の樹脂カバー材212,213,222,232,233,242と新設枠3(新設上枠31,新設下枠32,新設縦枠33,34)との間の空間から室外側X1又は室内側X2に火炎の熱が流出することを抑制することができる。
【0116】
以上、本開示の改装建具の一実施形態について説明したが、本開示の改装建具は適宜変更可能である。例えば、本開示の改装建具は、上述した2枚の障子41,42を有する者に制限されず、3枚以上の障子を有するものであってもよいし、1枚だけの障子を有する片引き窓を構成するものであってもよい。さらに、本開示の改装建具は、辷り出し窓やFIX窓、上げ下げ窓、外倒し窓、内倒し窓、あるいは開き窓を構成するものであってもよい。
【0117】
上述した実施形態においては、新設枠3を構成する新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33,34それぞれに、加熱発泡材を設けたが、これに限定されない。加熱発泡材は、新設枠を構成する上下左右の枠部材のうちの少なくともいずれか1つの枠部材に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0118】
1 改装建具、 2 既設枠、 3 新設枠、 21 既設上枠(既設枠)、 22 既設下枠(既設枠)、 23,24 既設縦枠(既設枠)、 31 新設上枠(新設枠)、 32 新設下枠(新設枠)、 33,34 新設縦枠(新設枠)、 100 建物躯体、 211 金属枠体(金属部)、 212 樹脂カバー材(樹脂部)、 213 樹脂カバー材(樹脂部)、 221 金属枠体(金属部)、222 樹脂カバー材(樹脂部)、 231,241 金属枠体(金属部)、 232,233,242 樹脂カバー材(樹脂部)、 315 室外側壁部(室外側部)、 711,712,713,721,722,731,732,741,742 加熱発泡材