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2025-25554鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の製造方法
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  • -鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025554
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B66C1/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130404
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】植松 健斗
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA03
3F004HB02
(57)【要約】
【課題】過剰に吸着した鋼板のみを効率よく切り離すことができる鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の製造の作業効率を向上できる鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板の吊上方法は、磁極3と電磁石コイル2とを有するリフティングマグネット1を用いて積み重ねられた複数枚の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板を吊上対象20として吊り上げることを含む。鋼板の吊上方法は、吊上工程と、吊り上げた鋼板の枚数を判定する判定工程と、吊り上げた鋼板の枚数が目標枚数より多いと判定した場合に目標枚数よりも多い過剰な鋼板を切り離す吊上枚数調整工程とを含む。吊上枚数調整工程は、鋼板を吊り上げた状態における磁束密度に対する、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させているときの磁束密度の低下量が切離検知閾値以上となるまで電磁石コイル2に印加する電圧を減少させることを含む。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極と、前記磁極を励磁するための電圧を制御可能に構成される電磁石コイルとを有するリフティングマグネットを用いて、積み重ねられた複数枚の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げる、鋼板の吊上方法であって、
前記リフティングマグネットが上昇し始める前の状態における前記磁極の磁束密度である第1磁束密度が、前記磁極が前記吊上対象を吊り上げるために必要な目標磁束密度になるように、前記電磁石コイルに電圧を印加し、前記リフティングマグネットを上昇させることによって前記吊上対象を吊り上げる吊上工程と、
前記吊上工程で吊り上げた前記鋼板の枚数を判定する判定工程と、
前記判定工程において、吊り上げた鋼板の枚数が目標枚数より多いと判定した場合に、目標枚数よりも多い過剰な鋼板を切り離すように、前記鋼板を吊り上げた状態における前記磁極の磁束密度である第2磁束密度に対する、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させているときの前記磁極の磁束密度である第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上となるまで前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させる吊上枚数調整工程と
を含む、鋼板の吊上方法。
【請求項2】
前記吊上工程において、前記第1磁束密度と前記目標磁束密度との差分が吊上制御閾値以下になるように前記電磁石コイルに印加する電圧を制御する、請求項1に記載の鋼板の吊上方法。
【請求項3】
前記判定工程において、吊り上げた鋼板の枚数を前記第2磁束密度に基づいて判定する、請求項1に記載の鋼板の吊上方法。
【請求項4】
前記吊上枚数調整工程において、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になった後に、前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の鋼板の吊上方法。
【請求項5】
前記吊上枚数調整工程において、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になったと判定したときから待機時間が経過した後に前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させ、
前記待機時間は、0.1秒以上かつ2.0秒以下の範囲内の時間である、請求項4に記載の鋼板の吊上方法。
【請求項6】
前記吊上工程において、前記目標磁束密度を、前記吊上対象としての少なくとも1枚の鋼板のそれぞれの板厚及び飽和磁束密度と、前記磁極の寸法とに基づいて算出する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の鋼板の吊上方法。
【請求項7】
積み重ねられた複数枚の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げる、鋼板の吊上装置であって、
磁極と、前記磁極を励磁するための電圧を制御可能に構成される電磁石コイルとを有するリフティングマグネットと、
前記電磁石コイルに電圧を印加する電圧印加装置と、
前記磁極の磁束密度を測定する磁束センサと、
前記電磁石コイルに印加する電圧を制御する制御装置と
を備え、
前記磁束センサは、前記磁極に前記吊上対象が吸着し、かつ、前記リフティングマグネットが上昇し始める前の状態における前記磁極の磁束密度を第1磁束密度として測定し、
前記制御装置は、前記第1磁束密度が、前記磁極が前記吊上対象を吊り上げるために必要な目標磁束密度になるように、前記電磁石コイルに電圧を印加し、前記リフティングマグネットを上昇させることによって前記吊上対象を吊り上げ、
前記磁束センサは、前記鋼板を吊り上げた状態における前記磁極の磁束密度を第2磁束密度として測定し、
前記制御装置は、吊り上げた前記鋼板の枚数が目標枚数より多いと判定した場合に、目標枚数よりも多い過剰な鋼板を切り離すように、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させ、
前記磁束センサは、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させているときの前記磁極の磁束密度を第3磁束密度として測定し、
前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上となるまで前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させる、
鋼板の吊上装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1磁束密度と前記目標磁束密度との差分が吊上制御閾値以下になるように前記電磁石コイルに印加する電圧を制御する、請求項7に記載の鋼板の吊上装置。
【請求項9】
前記制御装置は、吊り上げた鋼板の枚数を前記第2磁束密度に基づいて判定する、請求項7に記載の鋼板の吊上装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になった後に、前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させる、請求項7から9までのいずれか一項に記載の鋼板の吊上装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になったと判定したときから待機時間が経過した後に前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させ、
前記待機時間は、0.1秒以上かつ2.0秒以下の範囲内の時間である、請求項10に記載の鋼板の吊上装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記目標磁束密度を、前記吊上対象としての少なくとも1枚の鋼板のそれぞれの板厚及び飽和磁束密度と、前記磁極の寸法とに基づいて算出する、請求項7から9までのいずれか一項に記載の鋼板の吊上装置。
【請求項13】
請求項7から9までのいずれか一項に記載の鋼板の吊上装置を用いて少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げて搬送する工程を含む鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、吊り上げた鋼板を搬送する工程を含む鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の厚板工場は、大きく分けて、塊状の鋼板を所望の厚みまで圧延する圧延設備(圧延工程)と、出荷サイズへの切り出し、端部のバリ取り、表面疵の手入れ、又は、内部疵の検査等を行う精整設備(精整工程)と、出荷待ちの鋼板を保管する製品倉庫とを含む。精整工程の仕掛り品の鋼板、又は、製品倉庫で出荷待ちの鋼板は、置き場所の制約上、数枚~十数枚積み重ねた状態で保管されている。積み重ねた状態で保管されている鋼板は、配置替え又は出荷の際に、クレーンに取り付けた電磁石式のリフティングマグネットを使用して移動対象の1枚~数枚の鋼板を吊り上げることによって移動される。
【0003】
所定枚数の鋼板を吊り上げて移動するために、リフティングマグネットのコイルに印加する電流と吸着している鋼板の合計の厚さとの関係に基づいてコイルに印加する電流を制御する方法(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-295889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法において、磁束の浸透深さを変化させるために、コイルの電流を制御することによって出力磁束量が制御される。ここで、製鉄所の厚板工場で一般に用いられているリフティングマグネットのコイルは、100mm以上の板厚の大きな鋼板を吊上げるために、大量の磁束を鋼板に印加できるように設計されている。そのようなコイルによって板厚10mm以下の薄い鋼板の薄い鋼板の吊り枚数を制御する場合、コイルへの印加電圧の少しの誤差等によって磁束密度が過剰となることがある。磁束密度が過剰となった場合、リフティングマグネットへの鋼板の吸着枚数が目標吊上枚数より多くなる。つまり、リフティングマグネットが鋼板を過剰に吸着する。吊り枚数を制御するために、過剰に吸着した鋼板を切り離して吊り枚数を調整する作業が必要になる。
【0006】
特許文献1の方法において、吊り枚数を制御するために、あらかじめ設定した時間だけ電源を遮断して過剰に吸着した鋼板を切り離している。しかしながら、コイルと鋼板との吸着面の状態又は鋼板の組成等によって電源遮断時の磁束密度の低下速度が変化する。したがって、最適な電源遮断時間を設定することが困難である。このため、1度の切り離し作業で過剰な鋼板を切り離すことができなかったり、逆に過剰な鋼板以外の鋼板が一緒に切り離されてしまったりすることがある。
【0007】
本開示は、上記事実に鑑み、過剰に吸着した鋼板のみを効率よく切り離すことができる鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の製造の作業効率を向上できる鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上方法は、
磁極と、前記磁極を励磁するための電圧を制御可能に構成される電磁石コイルとを有するリフティングマグネットを用いて、積み重ねられた複数枚の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げる、鋼板の吊上方法であって、
前記リフティングマグネットが上昇し始める前の状態における前記磁極の磁束密度である第1磁束密度が、前記磁極が前記吊上対象を吊り上げるために必要な目標磁束密度になるように、前記電磁石コイルに電圧を印加し、前記リフティングマグネットを上昇させることによって前記吊上対象を吊り上げる吊上工程と、
前記吊上工程で吊り上げた前記鋼板の枚数を判定する判定工程と、
前記判定工程において、吊り上げた鋼板の枚数が目標枚数より多いと判定した場合に、目標枚数よりも多い過剰な鋼板を切り離すように、前記鋼板を吊り上げた状態における前記磁極の磁束密度である第2磁束密度に対する、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させているときの前記磁極の磁束密度である第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上となるまで前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させる吊上枚数調整工程と
を含む。
【0009】
(2)本開示の一実施形態として、上記(1)の鋼板の吊上方法の前記吊上工程において、前記第1磁束密度と前記目標磁束密度との差分が吊上制御閾値以下になるように前記電磁石コイルに印加する電圧を制御してよい。
【0010】
(3)本開示の一実施形態として、上記(1)又は(2)の鋼板の吊上方法の前記判定工程において、吊り上げた鋼板の枚数を前記第2磁束密度に基づいて判定してよい。
【0011】
(4)本開示の一実施形態として、上記(1)から(3)までのいずれか1つの鋼板の吊上方法の前記吊上枚数調整工程において、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になった後に、前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させてよい。
【0012】
(5)本開示の一実施形態として、上記(4)の鋼板の吊上方法の前記吊上枚数調整工程において、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になったと判定したときから待機時間が経過した後に前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させてよい。前記待機時間は、0.1秒以上かつ2.0秒以下の範囲内の時間であってよい。
【0013】
(6)本開示の一実施形態として、上記(1)から(5)までのいずれか1つの鋼板の吊上方法の前記吊上工程において、前記目標磁束密度を、前記吊上対象としての少なくとも1枚の鋼板のそれぞれの板厚及び飽和磁束密度と、前記磁極の寸法とに基づいて算出してよい。
【0014】
(7)本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上装置は、
積み重ねられた複数枚の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げる、鋼板の吊上装置であって、
磁極と、前記磁極を励磁するための電圧を制御可能に構成される電磁石コイルとを有するリフティングマグネットと、
前記電磁石コイルに電圧を印加する電圧印加装置と、
前記磁極の磁束密度を測定する磁束センサと、
前記電磁石コイルに印加する電圧を制御する制御装置と
を備え、
前記磁束センサは、前記磁極に前記吊上対象が吸着し、かつ、前記リフティングマグネットが上昇し始める前の状態における前記磁極の磁束密度を第1磁束密度として測定し、
前記制御装置は、前記第1磁束密度が、前記磁極が前記吊上対象を吊り上げるために必要な目標磁束密度になるように、前記電磁石コイルに電圧を印加し、前記リフティングマグネットを上昇させることによって前記吊上対象を吊り上げ、
前記磁束センサは、前記鋼板を吊り上げた状態における前記磁極の磁束密度を第2磁束密度として測定し、
前記制御装置は、吊り上げた前記鋼板の枚数が目標枚数より多いと判定した場合に、目標枚数よりも多い過剰な鋼板を切り離すように、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させ、
前記磁束センサは、前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させているときの前記磁極の磁束密度を第3磁束密度として測定し、
前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上となるまで前記電磁石コイルに印加する電圧を減少させる。
【0015】
(8)本開示の一実施形態として、上記(7)の鋼板の吊上装置において、前記制御装置は、前記第1磁束密度と前記目標磁束密度との差分が吊上制御閾値以下になるように前記電磁石コイルに印加する電圧を制御してよい。
【0016】
(9)本開示の一実施形態として、上記(7)又は(8)の鋼板の吊上装置において、前記制御装置は、吊り上げた鋼板の枚数を前記第2磁束密度に基づいて判定してよい。
【0017】
(10)本開示の一実施形態として、上記(7)から(9)までのいずれか1つの鋼板の吊上装置において、前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になった後に、前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させてよい。
【0018】
(11)本開示の一実施形態として、上記(10)の鋼板の吊上装置において、前記制御装置は、前記第2磁束密度に対する前記第3磁束密度の低下量が切離検知閾値以上になったと判定したときから待機時間が経過した後に前記電磁石コイルに印加する電圧を増加させてよい。前記待機時間は、0.1秒以上かつ2.0秒以下の範囲内の時間であってよい。
【0019】
(12)本開示の一実施形態として、上記(7)から(11)までのいずれか1つの鋼板の吊上装置において、前記制御装置は、前記目標磁束密度を、前記吊上対象としての少なくとも1枚の鋼板のそれぞれの板厚及び飽和磁束密度と、前記磁極の寸法とに基づいて算出してよい。
【0020】
(13)本開示の一実施形態に係る鋼板の製造方法は、上記(7)から(12)までのいずれか1つの鋼板の吊上装置を用いて少なくとも1枚の鋼板を吊上対象として吊り上げて搬送する工程を含む。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、過剰に吸着した鋼板のみを効率よく切り離すことができる鋼板の吊上方法及び吊上装置、並びに、鋼板の生産効率を向上できる鋼板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示に係る鋼板の吊上装置の構成例を示すブロック図である。
図2】リフティングマグネットの構成例を示す断面図である。
図3】複数枚の鋼板をリフティングマグネットで吸着するときの各鋼板における磁束の大きさを説明する断面図である。
図4A】本開示に係る鋼板の吊上方法において吊上枚数が適切である場合又は少ない場合の手順例を示すフローチャートである。
図4B】本開示に係る鋼板の吊上方法において吊上枚数が多い場合の手順例を示すフローチャートである。
図5】本開示に係る吊上方法においてコイル電圧を減少させて過剰に吸着した鋼板を切り離したときの磁束密度の変化を示すグラフである。
図6】本開示に係る吊上方法においてコイル電圧を減少させて過剰に吸着した鋼板を切り離した後でコイル電圧を再び増加させることによって吊上枚数を制御したときの磁束密度の変化を示すグラフである。
図7】比較例に係る吊上方法によって過剰に吸着した鋼板を切り離すときの磁束密度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示に係る鋼板の吊上装置、鋼板の吊上方法、及び、鋼板の製造方法の実施形態が図面に基づいて説明される。各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
(実施形態)
以下説明する本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上装置10(図1参照)は、吊上対象20(図3参照)である鋼板をリフティングマグネット1(図1等参照)で吸着する。鋼板の吊上装置10は、クレーン8(図1参照)でリフティングマグネット1を上昇させることによってリフティングマグネット1に吸着した鋼板を吊り上げる。以下、本実施形態に係る鋼板の吊上装置10の構成例及び動作例が説明される。
【0025】
<鋼板の吊上装置10の構成例>
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上装置10は、リフティングマグネット1と、制御装置5と、電圧印加装置6と、クレーン8とを備える。クレーン8は、リフティングマグネット1を保持し、リフティングマグネット1を昇降させたり横行させたりするように構成される。クレーン8は、ワイヤの巻き上げによってリフティングマグネット1を上昇させるように構成されてよい。
【0026】
<<リフティングマグネット1>>
リフティングマグネット1は、図1及び図2に示されるように、電磁石コイル2と、磁極3と、ヨーク7とを備える。リフティングマグネット1は、図2に例示される、電磁石コイル2と磁極3とヨーク7とを組み合わせたユニットを複数個備えてもよい。
【0027】
電磁石コイル2は、例えばエナメル銅線を多数回巻き回して絶縁処理したリング状の励磁用コイルとして構成されてよい。電磁石コイル2において銅線が巻き回されている部分の直径は、百mm~数百mmであってよい。電磁石コイル2に対して後述する電圧印加装置6から電圧が印加されることによって、印加された電圧に応じた電流が銅線に流れる。銅線に流れる電流によって磁束が発生する。電磁石コイル2に印加される電圧が大きいほど、銅線に流れる電流が大きくなり、電磁石コイル2で発生する磁束が大きくなる。電圧印加装置6がオフの状態で電圧を印加しない場合、電磁石コイル2は磁束を発生させない。つまり、電磁石コイル2は、オンの状態とオフの状態とのいずれかの状態に制御可能に構成される。また、電磁石コイル2は、印加される電圧の大きさによって発生させる磁束の大きさを制御可能に構成される。
【0028】
電磁石コイル2の内側に磁極3が配置されている。磁極3は、電磁石コイル2の磁心として機能する。磁極3の直径は、Dで表されるとする。電磁石コイル2は、磁極3を励磁する。言い換えれば、電磁石コイル2は、磁極3を励磁するための電圧を制御可能に構成される。ヨーク7は、磁極3の上端側及び電磁石コイル2の外側に配置されている。電磁石コイル2は、ヨーク7の内側で磁極3を軸として巻き回されているとする。つまり、電磁石コイル2は、磁極3とヨーク7との間で巻き回されているとする。電磁石コイル2が巻き回されている軸の方向に見たときに、電磁石コイル2とヨーク7とは、磁極3を中心とする同心円状に配置されてよい。電磁石コイル2が巻き回されている軸の方向に見たときの磁極3、電磁石コイル2及びヨーク7の形状は、円形状、矩形状、又は、他の種々の形状であってよい。ヨーク7は、断面がU字状になるように構成されるとする。ヨーク7は、磁極3と合わせた断面がE字状になるように構成されるとする。磁極3及びヨーク7は、断面において、電磁石コイル2よりも突出しており、突出している部分の先端で鋼板を吸着する。
【0029】
磁極3及びヨーク7は、軟鋼等の軟磁性材料を含んで構成されてよい。磁極3及びヨーク7の一部又は全部が一体の部材として構成されてよい。磁極3及びヨーク7は、それぞれ別体の部材として構成され、組み合わされてもよい。磁極3とヨーク7との間において電磁石コイル2を固定するために、例えば樹脂等の非磁性材料が充填されてよい。
【0030】
リフティングマグネット1は、磁束センサ4を更に備える。磁束センサ4は、磁極3に設置されており、磁極3を通過する磁束の磁束密度を測定する。磁極3を通過する磁束の磁束密度は、磁極磁束密度とも称される。磁極磁束密度は、電磁石コイル2で生じた磁束の量と、電磁石コイル2が巻き回されている軸の方向を法線とする断面における磁極3の断面積とに基づいて定まる。
【0031】
磁束センサ4は、例えば、サーチコイル又はホール素子等を含んで構成されてよい。本実施形態において、磁束センサ4は、サーチコイルで構成されているとする。磁束センサ4の設置位置は、磁極磁束密度を測定できる位置であれば特に限定されない。本実施形態において、磁束センサ4は、磁極3の外周下端に設置されているとする。複数個の磁束センサ4が磁極3の異なる位置に設置されてもよい。
【0032】
<<電圧印加装置6>>
電圧印加装置6は、電磁石コイル2に電流を流すように電圧を印加する。電圧印加装置6は、電圧を制御可能な電圧源として構成されてよい。電圧印加装置6は、電流を制御可能な電流源で置き換えられてもよい。
【0033】
<<制御装置5>>
制御装置5は、図1に示されるように電圧印加装置6と接続され、電圧印加装置6が電磁石コイル2に印加する電圧の大きさを制御する。制御装置5は、磁束センサ4による磁極磁束密度の測定値を取得する。制御装置5は、クレーン8と接続されて、クレーン8によるリフティングマグネット1の昇降を制御可能に構成されてもよい。
【0034】
制御装置5は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサを含んで構成されてよい。制御装置5は、1つのプロセッサで構成されてよいし、複数のプロセッサで構成されてよい。制御装置5を構成するプロセッサは、後述する記憶部に格納されたプログラムを読み込んで実行することによって、鋼板の吊上装置10の機能を実現してよい。
【0035】
制御装置5は、記憶部を備えてよい。記憶部は、各種の情報又はデータ等を格納する。記憶部は、例えば制御装置5において実行されるプログラム、又は、制御装置5において実行される処理で用いられるデータ若しくは処理の結果等を格納してよい。また、記憶部は、制御装置5のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等を含んで構成されてよいがこれに限定されない。例えば、記憶部は、制御装置5として用いられるプロセッサの内部メモリとして構成されてもよいし、制御装置5からアクセス可能なハードディスクドライブ(HDD)として構成されてもよい。記憶部は、非一時的な読み取り可能媒体として構成されてもよい。記憶部は、制御装置5と一体に構成されてもよいし、制御装置5と別体として構成されてもよい。
【0036】
制御装置5は、通信部を備えてよい。通信部は、有線又は無線によって他の装置と通信するための通信インタフェースを含んで構成されてよい。通信インタフェースは、ネットワークを介して他の装置と通信可能に構成されてよい。通信部は、他の装置との間でデータを入出力する入出力ポートを含んで構成されてよい。通信部は、プロセスコンピュータ又は上位システムに対して、必要なデータ及び信号を送受信する。通信部は、有線通信規格に基づいて通信してよいし、無線通信規格に基づいて通信してもよい。例えば無線通信規格は3G、4G及び5G等のセルラーフォンの通信規格を含んでよい。また、例えば無線通信規格は、IEEE802.11及びBluetooth(登録商標)等を含んでよい。通信部は、これらの通信規格の1つ又は複数をサポートしてよい。通信部は、これらの例に限られず、種々の規格に基づいて他の装置と通信したりデータを入出力したりしてよい。通信部は、制御装置5と一体に構成されてもよいし、制御装置5と別体として構成されてもよい。
【0037】
制御装置5は、鋼板の吊上装置10を用いる作業者から情報又はデータ等の入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、タッチパネル若しくはタッチセンサ、又はマウス等のポインティングデバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、物理キーを含んで構成されてもよい。入力デバイスは、マイク等の音声入力デバイスを含んで構成されてもよい。制御装置5は、外部の入力デバイスに接続可能に構成されてよい。制御装置5は、外部の入力デバイスに入力された情報又はデータを、外部の入力デバイスから取得可能に構成されてよい。
【0038】
制御装置5は、作業者に対して情報又はデータ等を出力する出力デバイスを含んで構成されてよい。出力デバイスは、例えば、画像又は文字若しくは図形等の視覚情報を出力する表示デバイスを含んでよい。表示デバイスは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ、又は、PDP(Plasma Display Panel)等を含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらのディスプレイに限られず、他の種々の方式のディスプレイを含んで構成されてよい。表示デバイスは、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。出力デバイスは、例えば、音声等の聴覚情報を出力するスピーカ等の音声出力デバイスを含んでよい。出力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んでよい。制御装置5は、外部の出力デバイスに接続可能に構成されてよい。制御装置5は、情報又はデータを、外部の出力デバイスに対して出力可能に構成されてよい。
【0039】
<鋼板の吊上装置10の動作例>
本実施形態に係る鋼板の吊上装置10は、積み重ねられた複数の鋼板の中から少なくとも1枚の鋼板をリフティングマグネット1で吸着してクレーン8でリフティングマグネット1を上昇させることによって鋼板を吊り上げる。
【0040】
<<吸着する鋼板の量の制御>>
制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧を制御することによってリフティングマグネット1によって吸着する鋼板の枚数を制御できる。鋼板を吸着して吊り上げる工程は、吊上工程とも称される。
【0041】
リフティングマグネット1が鋼板を吸着した場合、磁極3とヨーク7と吸着した鋼板とを通り、電磁石コイル2に鎖交するように磁束が通過する磁気回路が形成される。吸着した鋼板の量が多くなるほど、磁気回路の磁気抵抗が低下し、磁気回路を通過する磁束の量が多くなる。制御装置5は、磁気回路を通過する磁束の量、すなわち磁極3を通過する磁束の磁束密度に基づいて、吸着した鋼板の量を算出できる。制御装置5は、磁束センサ4から磁極磁束密度の測定値を取得し、磁極磁束密度の測定値に基づいて、吸着した鋼板の量を算出してよい。制御装置5は、吸着した鋼板の量を、複数枚の鋼板の厚みの合計として算出してよい。各鋼板の厚みが同一又は略同一である場合、制御装置5は、吸着した鋼板の量を、鋼板の枚数として算出してよい。
【0042】
制御装置5は、吸着する鋼板の枚数、又は、吸着する鋼板の合計の厚さを作業者が指定する情報を取得してよい。制御装置5は、指定された量の鋼板をリフティングマグネット1で吸着するために必要な磁極磁束密度の目標値を算出する。磁極磁束密度の目標値は、目標磁束密度とも称される。目標磁束密度は、Brと表されるとする。
【0043】
リフティングマグネット1が吸着する鋼板の合計の厚さは、鋼板に対して磁束が浸透する深さ(磁束浸透深さ)によって定まる。リフティングマグネット1は、磁束浸透深さを制御することによって吸着する鋼板の枚数を制御できる。制御装置5は、磁極磁束密度と磁束浸透深さとの関係に基づいて、目標磁束密度を決定してよい。
【0044】
制御装置5は、磁極磁束密度が目標磁束密度になるように電圧印加装置6を制御することによって、指定された量の鋼板をリフティングマグネット1で吸着する。制御装置5は、吊上対象20とする鋼板の板厚及び鋼板の飽和磁束密度に基づいて目標磁束密度を算出してよい。制御装置5は、磁極3の直径と磁束センサ4で測定した磁極磁束密度とに基づいて、磁極磁束密度が目標磁束密度になるように電磁石コイル2に印加する電圧をフィードバック制御することによって、吊り上げる鋼板の枚数を自動制御できる。
【0045】
具体的に、制御装置5は、リフティングマグネット1の磁極3の直径(D)、すなわち磁極3の寸法と、吊上対象20とするn枚の鋼板のそれぞれの板厚(t~t)と、各鋼板の飽和磁束密度(Bs~Bs)とに基づいて目標磁束密度を以下の式(1)で算出してよい。
【数1】
【0046】
ここで、磁極3の目標磁束密度は以下の理論により導かれる。図3において白抜き矢印で示されるように、リフティングマグネット1で生じた磁束は、磁極3の直下の領域141において、吊上対象20とする鋼板の上面から流入し、領域141の側面から流出する。電磁石コイル2に近い側からk番目の鋼板における磁束の流出量(Φ)は、側面積πD・tと飽和磁束密度Bsとに基づいて、Φ=πD・Bs・tで算出される。
【0047】
そうすると、電磁石コイル2に近い側からn枚の鋼板を吊上対象20とする場合、n番目の鋼板に磁束を通過させるための目標となる磁束(Φr)は、以下の式(2)で算出される。
【数2】
【0048】
さらに、磁極3の断面積(A)がA=πD/4で表されることを用いて、磁極3の目標磁束密度(Br)は、以下の式(3)で算出される。
【数3】
【0049】
制御装置5は、磁束センサ4で測定した磁極3の磁極磁束密度を取得し、磁極磁束密度と目標磁束密度との差分を算出する。ここで、鋼板を吸着するために調整中の磁極磁束密度は、第1磁束密度とも称され、Ba1で表されるとする。言い換えれば、第1磁束密度は、リフティングマグネット1が上昇し始める前の状態における磁極磁束密度である。制御装置5は、差分を|Ba1-Br|で算出できる。制御装置5は、差分が吊上制御閾値以下になるか判定する。吊上制御閾値は、B1で表されるとする。制御装置5は、差分が吊上制御閾値より大きい場合、つまり|Ba1-Br|>B1である場合、差分が吊上制御閾値以下になるように、電圧印加装置6をフィードバック制御して電磁石コイル2に印加する電圧を調整する。制御装置5は、差分が吊上制御閾値以下になった場合、つまり|Ba1-Br|≦B1になった場合、クレーン8によってリフティングマグネット1の上昇を開始してよい。
【0050】
<<吊り上げた鋼板の枚数の判定>>
制御装置5は、クレーン8によってリフティングマグネット1を上昇させることによって吊上対象の鋼板を吊り上げる。制御装置5は、鋼板の吊り上げが完了した後、磁極3の磁極磁束密度の測定値に基づいて吊り上げた鋼板の枚数を判定する。制御装置5は、鋼板が地切りされた後で吊り上げた鋼板の枚数を判定してよい。吊り上げた鋼板の枚数を判定する工程は、判定工程とも称される。
【0051】
具体的に、制御装置5は、鋼板を吊り上げた状態における磁極磁束密度の測定値を磁束センサ4から取得する。鋼板を吊り上げた状態における磁極磁束密度は、第2磁束密度とも称され、Ba2で表されるとする。制御装置5は、鋼板を吊り上げた状態における磁極磁束密度と、目標の吊上枚数になっているときの磁束密度との差分の絶対値を算出する。目標の吊上枚数になっているときの磁束密度は、目標吊上磁束密度とも称される。目標吊上磁束密度は、目標磁束密度の初期値と同じ値に設定されてよい。制御装置5は、差分の絶対値が吊上枚数判定閾値以下である場合、吊り上げた鋼板の枚数が指定された枚数であると判定し、そのまま鋼板を搬送する。制御装置5は、差分の絶対値が吊上枚数判定閾値より大きい場合、吊り上げた鋼板の枚数が指定された枚数に対して多い又は少ないと判定する。
【0052】
上述したように吊上枚数は制御装置5によって判定されてよいが、他の手段によって判定されてもよい。例えば、吊り上げられている鋼板の枚数を、吊上装置10を操作するオペレータ等の人間が目視して数えることによって、吊上枚数が判定されてもよい。吊り上げられている鋼板をカメラで撮影して画像処理することによって吊上枚数が判定されてもよい。吊り上げられている鋼板の重量をロードセル等の重量センサで測定し、測定した重量と目標重量との差分に基づいて吊上枚数が判定されてもよい。
【0053】
<<吊上枚数が少なかった場合>>
制御装置5は、差分の絶対値が吊上枚数判定閾値より大きく、かつ、第2磁束密度が目標吊上磁束密度より小さい場合、吊り上げた鋼板の枚数が少ないと判定する。制御装置5は、吊り上げた鋼板の枚数が少ないと判定した場合、リフティングマグネット1を下降させて鋼板を下し、目標磁束密度を増加して鋼板の吊り上げをやり直す。制御装置5は、目標磁束密度の増加量を、Ba2-Brの値に基づいて決定してよい。制御装置5は、目標磁束密度を、Br-Ba2の値を元の値に加えることによって変更してよい。制御装置5は、目標磁束密度を、Br-Ba2の値に所定係数を乗じた値を元の値に加えることによって変更してよい。所定係数は1未満の値であってもよいし1より大きい値であってもよい。
【0054】
<<吊上枚数が多かった場合>>
制御装置5は、差分の絶対値が吊上枚数判定閾値より大きく、かつ、第2磁束密度が目標吊上磁束密度より大きい場合、吊り上げた鋼板の枚数が多いと判定する。制御装置5は、吊り上げた鋼板の枚数が多いと判定した場合、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させてリフティングマグネット1に過剰に吸着されている鋼板を切り離す。過剰な鋼板を切り離して吊上枚数を調整する工程は、吊上枚数調整工程とも称される。
【0055】
制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させる間、すなわち過剰な鋼板を切り離す工程の間、磁極磁束密度の測定値を磁束センサ4から取得する。電磁石コイル2に印加する電圧を減少させているときの磁極磁束密度は、第3磁束密度とも称され、Ba3で表されるとする。
【0056】
制御装置5は、鋼板を吊り上げた状態における磁極磁束密度である第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2になるまで電磁石コイル2に印加する電圧を減少させる。具体的に、制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させながら第3磁束密度を測定し、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になったときに電磁石コイル2に印加する電圧の減少を停止する。つまり、Ba2-Ba3≧B2が満たされた場合に、電磁石コイル2に印加する電圧の減少が停止される。
【0057】
ここで、電磁石コイル2に近い側からn番目の鋼板に、以下の式(4)で表される磁束Φが通過している。
【0058】
【数4】
【0059】
電磁石コイル2に印加する電圧を減少させることによってn番目の鋼板が落下した場合、第2磁束密度に対して第3磁束密度がΦだけ低下する。そうすると、切離検知閾値B2をΦよりも小さい値に設定することによって、n番目の鋼板の切り離しが検知される。一例として、B2をΦnの10%~50%の値に設定することが好ましい。切離検知閾値B2が小さすぎる場合、切り離しが誤って検知されやすい。逆に切離検知閾値B2が大きすぎる場合、鋼板の切り離しが検知されにくい。一例として、切離検知閾値B2は、0.01T以上かつ0.20T以下の範囲内の値に設定されることが好ましく、0.05T以上かつ0.10T以下の範囲内の値に設定されることがより好ましい。
【0060】
第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になったときに電磁石コイル2に印加する電圧の減少を停止しただけの場合において、磁極磁束密度が低下しすぎることによって、切り離す対象の鋼板とともに必要以上の枚数の鋼板が切り離されることがある。
【0061】
そこで、制御装置5は、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になった後で、電磁石コイル2に印加する電圧を増加させてよい。このようにすることで、制御装置5は、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になったことによって切離対象の鋼板の切り離しを完了しつつ、電磁石コイル2に印加する電圧を増加させることによって切離対象ではない鋼板の吸着を維持できる。
【0062】
また、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になった直後に電磁石コイル2に印加する電圧を増加させた場合、リフティングマグネット1から一旦切り離した鋼板が再びリフティングマグネット1に吸着されることがある。そこで、制御装置5は、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になった後で待機時間Tが経過してから電磁石コイル2に印加する電圧を増加させてよい。待機時間Tは、一例として、0.1秒以上かつ2.0秒以下の範囲内の時間に設定されることが好ましく、0.2秒以上かつ1.0秒以下の範囲内の時間に設定されることがより好ましい。
【0063】
制御装置5は、鋼板の切り離しを検知した後で、又は、電磁石コイル2に印加する電圧を増加させた後で、磁極磁束密度の測定値を磁束センサ4から取得する。制御装置5は、磁極磁束密度の測定値に基づいて吊上枚数を判定する。制御装置5は、吊上枚数が多い場合、吊上枚数が適切になるまで、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させて鋼板を切り離す工程を繰り返す。
【0064】
上述してきたように制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧を減少させることによって過剰に吊り上げられている鋼板を切り離す。制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧の減少速度を制御してよい。電圧の減少速度は、単位時間当たりに電圧を減少させる値として算出される。電圧の減少速度は遅くてもよいし速くてもよい。電圧を減少させたときにコイルに逆電流が発生することによって、磁極磁束密度の低下が電圧の減少にすぐに追従しない。したがって、電圧の減少速度が速い場合でも必要以上の枚数の鋼板が切り離されることは起こらない。制御装置5は、電磁石コイル2に印加する電圧を瞬間的にゼロに減少させてもよい。
【0065】
<<フローチャートの例>>
制御装置5は、図4A及び図4Bに例示されるフローチャートの手順を含む鋼板の吊上方法を実行してよい。鋼板の吊上方法は、制御装置5に含まれるプロセッサに実行させる鋼板の吊上プログラムとして実現されてもよい。鋼板の吊上プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0066】
制御装置5は、吊り上げるように指定された鋼板の枚数に応じた目標磁束密度(Br)を設定する(図4AのステップS1)。制御装置5は、目標磁束密度に基づいて電磁石コイル2に印加する電圧を決定する。電磁石コイル2に印加する電圧は、コイル電圧とも称される。制御装置5は、電圧印加装置6を制御してコイル電圧を電磁石コイル2に印加する(ステップS2)。制御装置5は、磁束センサ4によって磁極磁束密度(Ba1)を測定する(ステップS3)。
【0067】
制御装置5は、磁極磁束密度と目標磁束密度との差分が吊上制御閾値以下であるか判定する(ステップS4)。つまり、制御装置5は、|Ba1-Br|≦B1となっているか判定する。制御装置5は、差分が吊上制御閾値以下となっていない場合(ステップS4:NO)、つまり差分が吊上制御閾値より大きくなっている場合、ステップS2の手順に戻り、コイル電圧を決定し直す。
【0068】
制御装置5は、差分が吊上制御閾値以下となっている場合(ステップS4:YES)、吊り上げるように指定された枚数の鋼板を吸着していると判定してクレーン8によってリフティングマグネット1を上昇させる(ステップS5)。制御装置5は、磁束センサ4によって、リフティングマグネット1が上昇し始めた後における磁極磁束密度である第2磁束密度(Ba2)を測定する(ステップS6)。
【0069】
制御装置5は、第2磁束密度に基づいて吊上枚数が適切であるかを判定する(ステップS7)。制御装置5は、吊上枚数が適切であると判定した場合(ステップS7:適切)、図4A及び図4Bのフローチャートの手順の実行を終了し、吊り上げている鋼板を搬送する。
【0070】
制御装置5は、吊上枚数が少ないと判定した場合(ステップS7:少ない)、リフティングマグネット1を下降させる(ステップS8)。制御装置5は、リフティングマグネット1を下降させて鋼板を下した後で、目標磁束密度を増加させる(ステップS9)。制御装置5は、目標磁束密度を増加させた後、ステップS2の手順に戻ってコイル電圧を決定し直す。
【0071】
制御装置5は、吊上枚数が多いと判定した場合(ステップS7:多い)、コイル電圧を減少させる(図4BのステップS10)。制御装置5は、コイル電圧を減少させているときの磁極磁束密度である第3磁束密度(Ba3)を測定する(ステップS11)。
【0072】
制御装置5は、第2磁束密度に対する第3磁束密度の低下量が切離検知閾値B2以上になったか判定する(ステップS12)。つまり、制御装置5は、Ba2-Ba3≧B2が満たされたか判定する。制御装置5は、Ba2-Ba3<B2である場合、つまりBa2-Ba3≧B2が満たされていない場合(ステップS12:NO)、ステップS10の手順に戻って更にコイル電圧を減少させる。
【0073】
制御装置5は、Ba2-Ba3≧B2が満たされた場合(ステップS12:YES)、待機時間Tだけ待機する(ステップS13)。制御装置5は、待機後にコイル電圧を増加させる(ステップS14)。制御装置5は、磁極磁束密度を測定し、吊上枚数が適切であるかを判定する(ステップS15)。制御装置5は、吊上枚数が多い場合(ステップS15:多い)、ステップS10の手順に戻ってコイル電圧を更に減少させる。制御装置5は、吊上枚数が適切である場合(ステップS15:適切)、図4A及び図4Bのフローチャートの手順の実行を終了し、吊り上げている鋼板を搬送する。
【0074】
制御装置5は、上述してきた手順で鋼板を吊り上げた後で、クレーン8の横行によって鋼板を搬送する際に、鋼板の落下防止のためにコイル電圧を更に増加させてもよい。制御装置5は、クレーン8の横行によって鋼板を搬送する際に、コイル電圧を印加可能な最大値にまで増加させてもよい。
【0075】
制御装置5は、図4Bのフローチャートの手順において、ステップS13の待機手順を実行しなくてもよい。制御装置5は、ステップS14のコイル電圧の増加手順を実行せずにコイル電圧の減少を停止するだけでもよい。
【0076】
図4AのフローチャートのステップS7、又は、図4BのフローチャートのステップS15の吊上枚数の判定手順は、制御装置5によって実行されてもよいし、人間によって実行されてもよいし、カメラを含む画像処理装置等の他の手段によって実行されてもよい。図4AのフローチャートのステップS2のコイル電圧の印加手順は、人間の操作によって実行されてもよい。図4AのフローチャートのステップS5のリフティングマグネット1の上昇手順又はステップS8のリフティングマグネット1の下降手順は、人間の操作によって実行されてもよい。図4BのフローチャートのステップS10のコイル電圧の減少手順は、人間の操作によって実行されてもよい。
【0077】
<鋼板の製造方法>
鋼板の吊上装置10は、鋼板の製造における鋼板の搬送工程で用いられてよい。一実施形態として、上述してきた実施形態に係る鋼板の吊上装置10を用いて少なくとも1枚の鋼板を吊上対象20として吊り上げて搬送する工程を含む鋼板の製造方法が実施されてよい。
【0078】
<小括>
以上述べてきたように、本開示に係る鋼板の吊上装置10は、吊り上げた鋼板の枚数が多い場合に、鋼板を吊り上げたままの状態で過剰な鋼板のみを切り離すことができる。鋼板を一旦吊り下げてから目標枚数の鋼板を再び吊り上げ直す場合に比べて、鋼板の吊り上げ作業及び搬送作業の効率が高められる。また、鋼板の生産効率が高められる。
【0079】
(実施例)
以下、本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上装置10の実施例が説明される。
【0080】
<吊上枚数の制御の試験>
本開示の一実施形態に係る鋼板の吊上装置10及び吊上方法による鋼板の切り離し枚数の制御の精度を評価するために、以下の試験が実行された。試験で用いられたリフティングマグネット1において、磁極3の直径は150mmとされた。ヨーク7の外径は350mmとされた。ヨーク7の厚さは20mmとされた。電磁石コイル2の高さ(巻き軸に沿った方向の長さ)は150mmとされた。
【0081】
試験は、飽和磁束密度が1.5TであるSS400(Structural Steel)と称される鋼板を吊上対象20として実行された。吊上対象20とする鋼板の板厚は4.5mmとされた。吊上対象20として10枚の鋼板が準備された。吊上制御閾値(B1)は0.1Tに設定された。切離検知閾値(B2)は0.1Tに設定された。待機時間Tは0.2秒に設定された。吊り上げる鋼板の目標枚数は2枚とされた。2枚の鋼板を吊り上げるための目標磁束密度(Br)は0.36Tであるが、目標枚数の2枚より多く鋼板を吊り上げるために目標磁束密度(Br)が0.54Tに設定された。
【0082】
上述した条件で設定されたパラメータが以下の表1として示される。
【0083】
【表1】
【0084】
試験は、図4A及び図4Bのフローチャートの手順に沿って10回実施された。各回の試験において、10枚の鋼板の積層順が入れ替えられた。
【0085】
上述した条件において、過剰な鋼板を切り離すために必要最小限の値だけコイル電圧を減少させた場合の試験結果が図5に示される。図5のグラフにおいて、横軸は鋼板の吊り上げを開始してからの経過時間を表す。縦軸は磁極磁束密度を表す。3枚吊りの状態において磁極磁束密度は0.54Tであった。コイル電圧を50%減少させることによって磁極磁束密度が切離検知閾値B2である0.1T以上低下した。このとき1枚の鋼板が切り離され、2枚吊りの状態になった。そして、磁極磁束密度が切離検知閾値B2以上低下したときにコイル電圧の減少を停止すると2枚目の鋼板が切り離されずに、2枚吊りの状態が維持された。2枚吊りの状態において磁極磁束密度は0.36Tに近づいていった。
【0086】
上述した条件において、コイル電圧を元の電圧の50%に減少させることによって過剰な鋼板を切り離した後にコイル電圧を再び元の電圧に増加させた場合の試験結果が図6に示される。図6のグラフにおいて、横軸は鋼板の吊り上げを開始してからの経過時間を表す。縦軸は磁極磁束密度を表す。
【0087】
3枚吊りの状態において磁極磁束密度は0.54Tであった。コイル電圧を50%減少させることによって磁極磁束密度が切離検知閾値B2である0.1T以上低下した。このとき1枚の鋼板が切り離され、2枚吊りの状態になった。そして、磁極磁束密度が切離検知閾値B2以上低下したときから待機時間Tだけ経過したときにコイル電圧を元の電圧に増加させることによって2枚目の鋼板が切り離されずに、2枚吊りの状態が維持された。2枚吊りの状態において磁極磁束密度は0.36Tに近づいていった。
【0088】
また、コイル電圧を元の電圧の50%に減少させることによって過剰な鋼板を切り離した後にコイル電圧を再び元の電圧に増加させた試験を10回実施したときの各回の結果が表2に示される。印加電圧は、試験終了時に電磁石コイル2に印加していた電圧である。実績値は、試験終了時における磁極磁束密度である。吊上枚数は、試験終了時に吊り上げられていた鋼板の枚数である。各回の試験において、鋼板の吊上枚数が2枚に制御されている。
【0089】
【表2】
【0090】
比較例に係る吊上方法として、コイル電圧を一旦ゼロに減少させることによって過剰な鋼板を切り離した後に2秒間待機してからコイル電圧を再び元の電圧に増加させた場合の試験結果が図7に示される。図7のグラフにおいて、横軸は鋼板の吊り上げを開始してからの経過時間を表す。縦軸は磁極磁束密度を表す。3枚吊りの状態において磁極磁束密度は0.54Tであった。コイル電圧をゼロに減少させることによって磁極磁束密度が切離検知閾値B2である0.1T以上低下した。このとき1枚の鋼板が切り離され、2枚吊りの状態になった。コイル電圧を元の電圧に増加させるまで2秒間待機している間に、磁極磁束密度が更に低下することもあった。磁極磁束密度が更に低下した場合、2枚目の鋼板が切り離されて1枚吊りの状態になった。
【0091】
比較例に係る試験を10回実施したときの各回の結果が表3に示される。印加電圧は、試験終了時に電磁石コイル2に印加していた電圧である。実績値は、試験終了時における磁極磁束密度である。吊上枚数は、試験終了時に吊り上げられていた鋼板の枚数である。各回の試験において、鋼板の吊上枚数は2枚に制御されることもあったが1枚になることもあった。
【0092】
【表3】
【0093】
以上述べてきた試験結果によれば、本開示に係る吊上方法は、磁極磁束密度の低下量を制御することによって、磁極磁束密度を制御していない比較例に係る吊上方法よりも、鋼板を切り離す枚数を高精度で制御できる。その結果、本開示に係る鋼板の吊上装置10及び吊上方法によれば、過剰に吸着した鋼板のみが効率よく切り離される。また、鋼板の搬送効率が向上することによって、鋼板の生産性が向上する。
【0094】
<待機時間に関する試験>
上述した吊上枚数の制御の試験において待機時間が0.2秒に設定された。ここで、待機時間が鋼板の吊上枚数の制御に及ぼす影響を確認するために、待機時間を異なる時間に変更して他のパラメータを変更しない条件で鋼板の吊上枚数の制御の試験が実施された。具体的には、待機時間を0.05秒、0.2秒、1.5秒、及び2.5秒に設定し、設定した各待機時間において鋼板の吊上枚数を2枚に制御する試験が10回実施された。待機時間を0.05秒及び0.2秒に設定して鋼板の吊上枚数を2枚に制御する試験を10回実施したときの各回の結果が表4に示される。また、待機時間を1.5秒及び2.5秒に設定して鋼板の吊上枚数を2枚に制御する試験を10回実施したときの各回の結果が表5に示される。
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
待機時間を0.2秒とした場合(表4参照)、及び、待機時間を1.5秒とした場合(表5参照)において、鋼板の吊上枚数を2枚に制御することに10回中9回成功した。つまり、待機時間を0.1秒以上かつ2.0秒以下とした場合において、鋼板の吊上枚数を2枚に制御することに10回中9回成功した。
【0098】
一方で、待機時間を0.05秒とした場合(表4参照)において、切り離した鋼板が再びくっついて吊上枚数が3枚になってしまうことがあり、鋼板の吊上枚数を2枚に制御することに10回中4回しか成功しなかった。また、待機時間を2.5秒とした場合(表5参照)において、切り離し対象ではない2枚目の鋼板が落ちて吊上枚数が1枚になってしまうことがあり、鋼板の吊上枚数を2枚に制御することに10回中3回しか成功しなかった。つまり、待機時間を0.1秒未満とした場合、又は、待機時間を2.0秒超とした場合において、鋼板の吊上枚数を2枚に制御することに成功する回数が少なくなった。
【0099】
以上述べてきた試験結果に鑑みれば、待機時間を0.1秒かつ2.0秒以下の範囲内の時間に設定することが好ましい。
【0100】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0101】
10 鋼板の吊上装置(5:制御装置、6:電圧印加装置、8:クレーン)
1 リフティングマグネット(2:電磁石コイル、3:磁極、4:磁束センサ、7:ヨーク)
20 吊上対象(141:領域)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7