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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025558
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20250214BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250214BHJP
   B65H 26/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B41J29/38 204
G03G21/00 388
B65H26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130417
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰生
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
3F105
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ04
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS06
2C061BB02
2C061BB08
2C061BB10
2C061BB11
2C061CH01
2C061CH03
2C061HH03
2C061HJ03
2C061HJ07
2C061HJ10
2C061HK06
2C061HK07
2C061HK11
2C061HV13
2C061LL04
2C061LL09
2H270LA39
2H270LC02
2H270LC22
2H270NB26
2H270NC07
2H270ZC03
2H270ZC04
3F105AA01
3F105AB02
3F105BA33
3F105DA23
3F105DA63
3F105DB01
3F105DC11
(57)【要約】
【課題】ロール体の実際の残量が算出された残量よりも短くなることを抑制する。
【解決手段】複合機は、CPU、ROM及びRAMを含む制御装置を備えている。CPUは、記録指令を受信した後、RAMに記憶されたロール紙の残量Aを、記録処理におけるロール紙の搬送量Bを差し引いた値に更新する(S7:更新処理)。また、CPUは、搬送異常が生じた場合(S8:YES)、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片の長さL2を取得し(S15:取得処理)、その後、RAMに記憶された残量Aを、S15において取得された長さL2を差し引いた値に補正する(S16:補正処理)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール体から巻き解かれたシート状媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送されるシート状媒体に画像を記録する記録部と、
記憶部と、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、
記録指令に基づいて、前記搬送部にシート状媒体を搬送させかつ前記記録部に画像を記録させる記録処理と、
前記記憶部に記憶された前記ロール体の残量を、前記記録処理におけるシート状媒体の搬送量を差し引いた値に更新する更新処理と、
前記搬送部による搬送の異常の有無を判断する第1判断処理と、
前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記異常を解除するために切り取られたシート状媒体である媒体片の長さを取得する取得処理と、
前記取得処理の後、前記記憶部に記憶された前記残量を、前記取得処理において取得された前記長さを差し引いた値に補正する補正処理と、
を実行可能であることを特徴とする、画像記録装置。
【請求項2】
読取部と、
報知部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記取得処理の前に、前記媒体片を前記読取部に読み取らせることを前記報知部に報知させる第1報知処理を実行し、
前記第1報知処理の後かつ前記取得処理の前に、前記読取部に前記媒体片を読み取らせる読取処理を実行し、
前記取得処理において、前記読取処理で読み取られた読取結果に基づいて前記長さを取得することを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記読取部は、フラットベッドスキャナ部と、ADFスキャナ部と、を含み、
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記第1報知処理の前に、前記記録処理において前記異常が有ると判断されるまでの前記搬送量が所定量未満であるか否かを判断する第2判断処理を実行し、
前記第2判断処理において前記搬送量が前記所定量未満であると判断された場合、前記第1報知処理において、前記媒体片を前記フラットベッドスキャナ部に読み取らせることを前記報知部に報知させることを特徴とする、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記読取部は、フラットベッドスキャナ部と、ADFスキャナ部と、を含み、
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記第1報知処理の前に、前記記録処理において前記異常が有ると判断されるまでの前記搬送量が所定量以上でありかつシート状媒体の平坦性が所定値未満である、という条件が満たされるか否かを判断する第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記条件が満たされると判断された場合、前記第1報知処理において、前記媒体片を切断して得られた複数の切断片のそれぞれを前記フラットベッドスキャナ部に読み取らせることを前記報知部に報知させることを特徴とする、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記読取部は、フラットベッドスキャナ部と、ADFスキャナ部と、を含み、
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記第1報知処理の前に、前記記録処理において前記異常が有ると判断されるまでの前記搬送量が所定量以上でありかつシート状媒体の平坦性が所定値以上である、という条件が満たされるか否かを判断する第4判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記条件が満たされると判断された場合、前記第1報知処理において、前記媒体片を前記ADFスキャナ部に読み取らせることを前記報知部に報知させることを特徴とする、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項6】
報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記記録処理において使用されるシート状媒体の長さを決定する決定処理と、
前記決定処理において決定されたシート状媒体の長さが前記記憶部に記憶された前記残量よりも長い場合、前記記録処理の前に、前記残量が不足していることを前記報知部に報知させる第2報知処理と、
をさらに実行可能であることを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記搬送部は、シート状媒体を挟持しつつ回転するローラ対を含み、
前記制御部は、前記更新処理において、前記ローラ対の回転量に基づいて前記搬送量を導出することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール体から巻き解かれたシート状媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙(シート状媒体)がロール状に巻かれたロール紙(ロール体)が新たにセットされた時に、ロール紙の全長を残量として設定し、当該残量から給紙長検出手段によって検出されたロール紙の給紙長を減算することにより算出されたロール紙の残量が、原稿の長さよりも短い場合、画像形成動作(記録処理)を禁止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-106406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジャム等による用紙の搬送異常が生じた場合に、当該異常を解除するために用紙の一部をユーザが切断すると、実際の残量が算出された残量よりも短くなる。実際の残量が算出された残量よりも短いと、記録処理の途中で用紙が足りなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ロール体の実際の残量が算出された残量よりも短くなることを抑制できる画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像記録装置は、ロール体から巻き解かれたシート状媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送されるシート状媒体に画像を記録する記録部と、記憶部と、制御部と、を備えており、前記制御部は、記録指令に基づいて、前記搬送部にシート状媒体を搬送させかつ前記記録部に画像を記録させる記録処理と、前記記憶部に記憶された前記ロール体の残量を、前記記録処理におけるシート状媒体の搬送量を差し引いた値に更新する更新処理と、前記搬送部による搬送の異常の有無を判断する第1判断処理と、前記第1判断処理において前記異常が有ると判断された場合、前記異常を解除するために切り取られたシート状媒体である媒体片の長さを取得する取得処理と、前記取得処理の後、前記記憶部に記憶された前記残量を、前記取得処理において取得された前記長さを差し引いた値に補正する補正処理と、を実行可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送異常が生じた場合に取得処理及び補正処理が行われることで、ロール体の実際の残量が算出された残量よりも短くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る複合機の斜視図である。
図2図1の複合機のプリンタ部を示す概略図である。
図3図1の複合機のスキャナ部を示す概略図である。
図4図1の複合機の電気的構成を示すブロック図である。
図5図1の複合機のCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図6図5のS15(取得処理)における長さL2の取得方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<複合機の全体構成>
図1に示す複合機100は、本発明に係る「画像記録装置」の一実施形態である。複合機100は、筐体100aと、プリンタ部50と、スキャナ部60と、ディスプレイ71と、操作パネル72と、を備えている。複合機100は、さらに、図2に示すように、筐体100aの内部に、複合機100の各部を制御する制御装置9を備えている。
【0010】
<プリンタ部>
プリンタ部50は、図2に示すように、給紙トレイ1と、排紙トレイ2と、搬送部3と、切断部4と、ヘッド5と、を含む。
【0011】
給紙トレイ1は、筐体100aに対して前後方向に移動可能であり、筐体100aに装着された装着位置(図1及び図2参照)と、装着位置よりも前方の、筐体100aから引き出された引出位置(図示略)と、を取り得る。
【0012】
給紙トレイ1は、ロール体Rを収容可能な収容部10を有する。ロール体Rは、円筒状の芯部材Rcの外周面に長尺のロール紙(本発明の「シート状媒体」)Rpがロール状に巻回されたものである。ロール体Rは、芯部材Rcの軸Rxが左右方向に延びた状態で、収容部10に収容される。
【0013】
収容部10の底部には、搬送部3を構成する2つのローラ11,12が配置されている。2つのローラ11,12は、左右方向に延びる軸を中心として回転可能である。ロール体Rは、収容部10に収容されたとき、その下側部分の外周面が2つのローラ11,12に支持される。
【0014】
排紙トレイ2は、給紙トレイ1の上方に位置し、筐体100aに対して固定されている。
【0015】
搬送部3、切断部4及びヘッド5は、筐体100a内に収容されている。
【0016】
搬送部3は、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpを給紙トレイ1から排紙トレイ2に向けて搬送方向に搬送するものであり、上記2つのローラ11,12と、給送ローラ31と、ローラ対32~34と、ガイド35と、を有する。ローラ対32~34は、それぞれ、駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラと、を含む。搬送部3において、給送ローラ31は給送モータ2M(図4参照)の駆動により回転し、ローラ対32~34の駆動ローラは搬送モータ3M(図4参照)の駆動により回転する。
【0017】
給送ローラ31は、アーム31aの先端に回転可能に支持されている。アーム31aは、給送ローラ31を支持する先端と、軸31xが設けられた基端と、を有する。軸31xは、筐体100aに支持されている。アーム31aは、軸31xを中心として筐体100aに対して揺動可能である。アーム31aは、給送ローラ31が給紙トレイ1の底壁1aに接触する方向に、バネ等により付勢されている。
【0018】
ガイド35は、搬送方向においてローラ対32とローラ対33との間に配置されている。ガイド35は、ロール紙Rpの搬送経路を挟む一対の部材を有する。
【0019】
ロール体Rが収容部10に収容された状態において給送モータ2M(図4参照)が駆動されると、給送ローラ31が回転することにより、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpが後方に向かって送り出される。これに伴い、ロール体Rが矢印方向に回転することで、ローラ11,12が回転する。当該ロール紙Rpは、給送ローラ31によって給紙トレイ1の上方に送り出され、さらに搬送モータ3M(図4参照)が駆動されてローラ対32~34がロール紙Rpを挟持しつつ回転することで、排紙トレイ2へと搬送される。
【0020】
切断部4は、搬送方向において給送ローラ31とローラ対32との間に配置されている。切断部4は、左右方向に延びる固定刃4aと、固定刃4aと接触する位置に配置された円盤状の回転刃4bと、を含む。回転刃4bは、切断モータ4M(図4参照)の駆動により、左右方向に移動する。これにより、ロール紙Rpが左右方向に切断される。
【0021】
ヘッド5は、本発明の「記録部」に該当する。ヘッド5は、搬送方向においてローラ対33とローラ対34との間に配置されており、下面に開口した複数のノズル(図示略)を有する。ヘッド5は、シリアル式であり、キャリッジモータ5M(図4参照)の駆動により左右方向に移動する。搬送部3によって搬送されるロール紙Rpがヘッド5の下方を通過するときに、キャリッジモータ5M(図4参照)の駆動によりヘッド5が左右方向に移動しつつ、ドライバIC5D(図4参照)の駆動によりノズルからインクが吐出されることで、ロール紙Rpに画像が記録される。
【0022】
<ディスプレイ及び操作パネル>
ディスプレイ71及び操作パネル72は、排紙トレイ2の上方において、筐体100aの前面に配置されている。ディスプレイ71は、本発明の「報知部」に該当する。
【0023】
<スキャナ部>
スキャナ部60は、本発明の「読取部」に該当する。スキャナ部60は、図3に示すように、フラットベッドスキャナ部61と、ADFスキャナ部62と、を含む。
【0024】
フラットベッドスキャナ部61は、原稿台601上に載置された用紙(媒体片)の画像を読み取るものであり、ラインセンサ600を含む。原稿台601は、筐体100aの上面に嵌め込まれたプラスチックやガラス等からなる透光板である。ラインセンサ600は、筐体100a内において原稿台601の下方に配置されている。ラインセンサ600は、フラットベッドスキャナ部61による読取処理の際、CISモータ61M(図4参照)の駆動により左右方向に移動する。
【0025】
ラインセンサ600は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)方式(等倍光学系)であり、光源、レンズ及び読取素子を有する。ラインセンサ600の光源から照射された光が、原稿台601を透過して用紙で反射され、レンズを通って読取素子に入射する。読取素子は、受けた光を電気信号に変換することで読取データを生成し、読取データを制御装置9に送信する。
【0026】
ADFスキャナ部62は、経路Tに沿って搬送される用紙(媒体片)の画像を読み取るものであり、ADF給紙トレイ621と、ADFローラ622~628と、ADF排紙トレイ629と、上記のラインセンサ600と、を含む。
【0027】
ADF給紙トレイ621上に載置された用紙は、ADFモータ62M(図4参照)の駆動によりADFローラ622~628が回転することで、経路Tに沿って搬送され、ADF排紙トレイ629に排出される。ラインセンサ600は、ADFスキャナ部62による読取処理の際、図3に示す位置に保持される。このとき、ラインセンサ600の光源から照射された光が、原稿台601を透過して用紙で反射され、レンズを通って読取素子に入射する。読取素子は、受けた光を電気信号に変換することで読取データを生成し、読取データを制御装置9に送信する。
【0028】
フラットベッドスキャナ部61による読取処理、及び、ADFスキャナ部62による読取処理のいずれにおいても、読取素子は、用紙の外形及び用紙に記録された画像を示す読取データを生成する。
【0029】
制御装置9は、図4に示すように、CPU91と、ROM92と、RAM93と、を含む。CPU91は、本発明の「制御部」に該当する。ROM92には、CPU91が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、本発明の「記憶部」に該当する。RAM93は、CPU91がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。
【0030】
図4において、搬送エンコーダ3Eは、搬送モータ3Mに取り付けられており、搬送モータ3Mの回転量を示す信号を出力する。キャリッジエンコーダ5Eは、キャリッジモータ5Mに取り付けられており、キャリッジモータ5Mの回転量を示す信号を出力する。
【0031】
<制御内容>
次いで、図5を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。
【0032】
CPU91は、先ず、PC等の外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していないと判断した場合(S1:NO)、CPU91は、S1の処理を繰り返す。
【0033】
記録指令を受信したと判断した場合(S1:YES)、CPU91は、当該記録指令に含まれる画像データに基づいて、当該記録指令に基づく記録処理において使用されるロール紙Rpの長さ(使用用紙長)L1を決定する(S2:決定処理)。
【0034】
S2の後、CPU91は、ROM92からRAM93に残量Aのデータを展開し、長さL1がRAM93に展開された残量Aよりも長いか否かを判断する(S3)。
【0035】
残量Aは、ロール紙Rpの残量である。CPU91は、新たにロール紙Rpがセットされたときに、ロール紙Rpの全長を残量AとしてRAM93に記憶させ、その後、後述のように、記録処理におけるロール紙Rpの搬送量を差し引いた値に、残量Aを更新する。
【0036】
長さL1が残量Aよりも長いと判断した場合(S3:YES)、CPU91は、ロール紙Rpの残量が不足していることをディスプレイ71に報知させる(S4:第2報知処理)。例えば、「用紙が足りない可能性があります。印刷を続行しますか?YES/NO」等のメッセージがディスプレイ71に表示される。
【0037】
S4の後、CPU91は、ディスプレイ71の上記表示に対応してユーザが操作パネル72に入力した情報(YES/NO)に基づいて、記録処理を続行するか否かを判断する(S5)。
【0038】
記録処理を続行しないと判断した場合(S5:NO)、CPU91は、当該プログラムを終了する。
【0039】
記録処理を続行すると判断した場合(S5:YES)、又は、長さL1が残量Aよりも長くないと判断した場合(S3:NO)、CPU91は、記録処理を開始する(S6)。
【0040】
記録処理において、CPU91は、給送モータ2M及び搬送モータ3Mを駆動させることで、ロール紙Rpをヘッド5に向けて搬送させる。さらに、CPU91は、ロール紙Rpがヘッド5に到達した後、搬送モータ3Mの駆動によりロール紙Rpを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、キャリッジモータ5Mの駆動によりヘッド5を左右方向に移動させながら、ドライバIC5Dの駆動によりノズルからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、ロール紙Rpに、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0041】
S6の後、CPU91は、当該記録処理におけるロール紙Rpの搬送量Bを差し引いた値に、残量Aを更新する(S7:更新処理)。
【0042】
搬送量Bは、搬送エンコーダ3E(図4参照)から出力された信号に基づいて導出される。当該信号は、搬送モータ3Mの回転量を示すものであり、ローラ対32~34の回転量を示すものである。
【0043】
S7の後、CPU91は、搬送部3による搬送の異常の有無を判断する(S8:第1判断処理)。例えば、CPU91は、搬送エンコーダ3Eから信号が出力されない場合、搬送に異常が有ると判断する。
【0044】
搬送に異常が有ると判断した場合(S8:YES)、CPU91は、搬送量Bが所定量Bx未満であるか否かを判断する(S9:第2判断処理)。
【0045】
搬送量Bは、記録処理において搬送に異常が有る(S8:YES)と判断されるまでに搬送されたロール紙Rpの搬送方向の長さである。所定量Bxは、給紙トレイ1からローラ対33までの搬送方向の長さである。つまり、「搬送量Bが所定量Bx未満であるか否か」は、「ロール紙Rpの先端(搬送方向の下流端)がローラ対33に到達していないか否か」を意味する。
【0046】
搬送量Bが所定量Bx未満であると判断した場合(S9:YES)、CPU91は、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片(本発明の「媒体片」)をフラットベッドスキャナ部61に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S10:第1報知処理)。例えば、「ジャムした用紙を切り取り、フラットベッドスキャナでスキャンしてください。」等のメッセージがディスプレイ71に表示される。
【0047】
搬送量Bが所定量Bx未満でないと判断した場合(S9:NO)、CPU91は、ロール紙Rpが平坦であるか(ロール紙Rpの平坦性が所定値以上であるか)否かを判断する(S11)。
【0048】
ロール紙Rpの平坦性は、キャリッジエンコーダ5Eから出力された信号に基づいて判断される。例えば、ヘッド5の直下でロール紙Rpが詰まり、左右方向に移動するヘッド5にロール紙Rpが接触することでロール紙Rpに皺が生じた場合、キャリッジエンコーダ5Eから出力された信号の値が異常値となり、ロール紙Rpの平坦性が所定値未満であると判断される。一方、キャリッジエンコーダ5Eから出力された信号の値が正常値である場合、ロール紙Rpの平坦性が所定値以上であると判断される。
【0049】
ロール紙Rpが平坦でない(ロール紙Rpの平坦性が所定値未満である)と判断した場合(S11:NO)、CPU91は、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片(本発明の「媒体片」)を切断し、得られた複数の切断片それぞれをフラットベッドスキャナ部61に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S12:第1報知処理)。例えば、「ジャムした用紙を切り取った後、短く切断し、各切断片を順次フラットベッドスキャナでスキャンしてください。」等のメッセージがディスプレイ71に表示される。
【0050】
このように、CPU91は、搬送量Bが所定量Bx以上であり(S9:NO)かつロール紙Rpの平坦性が所定値未満である(S11:NO)という条件が満たされるか否かを判断する(第3判断処理)。当該条件が満たされると判断した場合、CPU91は、上記S12を実行する。
【0051】
ロール紙Rpが平坦である(ロール紙Rpの平坦性が所定値以上である)と判断した場合(S11:YES)、CPU91は、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片(本発明の「媒体片」)をADFスキャナ部62に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S13:第1報知処理)。例えば、「ジャムした用紙を切り取り、ADFスキャナでスキャンしてください。」等のメッセージがディスプレイ71に表示される。
【0052】
このように、CPU91は、搬送量Bが所定量Bx以上であり(S9:NO)かつロール紙Rpの平坦性が所定値以上である(S11:YES)という条件が満たされるか否かを判断する(第4判断処理)。当該条件が満たされると判断した場合、CPU91は、上記S13を実行する。
【0053】
S10、S12又はS13の後、かつ、S14の前に、搬送異常を解除するためにロール紙Rpが切り取られ、切り取られた用紙片が当該スキャナ部(フラットベッドスキャナ部61又はADFスキャナ部62)による読取に適した位置に配置される。
【0054】
ロール紙Rpを切り取る方法としては、給紙トレイ1を筐体100aから引き出して複合機100の外部にあるカッターで切り取る方法、筐体100a後部にあるカバー(図示略)を開けて切断部4で切り取る方法等がある。切り取られた用紙片は、給紙トレイ1又は排紙トレイ2から筐体100a外部に取り出された後、当該スキャナ部(フラットベッドスキャナ部61又はADFスキャナ部62)による読取に適した位置に配置されてよい。
【0055】
S10、S12又はS13の後、CPU91は、当該スキャナ部(フラットベッドスキャナ部61又はADFスキャナ部62)に用紙片を読み取らせる(S14:読取処理)。
【0056】
フラットベッドスキャナ部61により用紙片を読み取らせる場合、CPU91は、CISモータ61M(図4参照)の駆動によりラインセンサ600(図3参照)を左右方向に移動させ、ラインセンサ600から読取データを取得する。ADFスキャナ部62により用紙片を読み取らせる場合、CPU91は、ADFモータ62M(図4参照)の駆動によりADFローラ622~628(図3参照)を回転させることで、用紙片を経路Tに沿って搬送させ、ラインセンサ600から読取データを取得する。
【0057】
S14の後、CPU91は、S14で読み取られた読取結果(読取データ)に基づいて、用紙片の長さL2を取得する(S15:取得処理)。
【0058】
例えば、図6(a)の用紙片Pは切欠Pnを有し、図6(b),(c)の用紙片Pは皺Pwを有する。図6(a)~(c)の用紙片Pはいずれも矩形状でない。このような用紙片Pにおいて、読取データから、互いに平行でかつその間隔がロール紙Rpの幅Wに等しい2辺P1,P2を検出し、当該辺P1,P2と平行な方向の最大長さを用紙片の長さL2として取得する。
【0059】
なお、S12の後のS14で読み取られた読取結果に基づいて長さL2を取得する場合は、図6(a)~(c)の用紙片Pを切断片として、複数の切断片それぞれの辺P1,P2と平行な方向の最大長さを足し合わせた値を、長さL2として取得する。
【0060】
S15の後、CPU91は、RAM93に記憶された残量Aを、S15において取得された長さL2を差し引いた値に補正する(S16:補正処理)。S16の後、CPU91は、RAM93に記憶された残量AをROM92に格納し、当該プログラムを終了する。
【0061】
搬送に異常が無いと判断した場合(S8:NO)、CPU91は、記録処理が完了したか否かを判断する(S17)。記録処理が完了していないと判断した場合(S17:NO)、CPU91は、処理をS7に戻す。記録処理が完了したと判断した場合(S17:YES)、CPU91は、RAM93に記憶された残量AをROM92に格納し、当該プログラムを終了する。
【0062】
<効果>
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、搬送異常が生じた場合(S8:YES)、S15(取得処理)及びS16(補正処理)を行う。これにより、ロール体Rの実際の残量が算出された残量(RAM93に記憶された残量A)よりも短くなることを抑制できる。
【0063】
CPU91は、搬送異常が生じた場合(S8:YES)、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片をスキャナ部(フラットベッドスキャナ部61又はADFスキャナ部62)に読み取らせることをディスプレイ71に報知させ(S10、S12又はS13)、当該スキャナ部に用紙片を読み取らせる(S14:読取処理)。そしてCPU91は、S14(読取処理)で読み取られた読取結果に基づいて、用紙片の長さL2を取得する(S15:取得処理)。この場合、複合機100の外部にある読取部を用いて用紙片を読み取った読取結果に基づいて、長さL2を取得する場合に比べ、複合機100の外部に別途読取部を用意する必要がない。また、ユーザの入力に基づいて長さL2を取得する場合に比べ、より精確な長さL2を取得できる。
【0064】
CPU91は、搬送量Bが所定量Bx未満であると判断した場合(S9:YES)、用紙片をフラットベッドスキャナ部61に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S10:第1報知処理)。搬送量Bが小さい場合、用紙片は、長さが短く、フラットベッドスキャナ部61による読取に適している。本構成では、適切な報知が行われることで、読取結果の信頼性が向上する。
【0065】
CPU91は、搬送量Bが所定量Bx以上であり(S9:NO)かつロール紙Rpの平坦性が所定値未満である(S11:NO)という条件が満たされると判断した場合、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片を切断し、得られた複数の切断片それぞれをフラットベッドスキャナ部61に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S12:第1報知処理)。搬送量Bが大きい場合、用紙片は、長さが長く、ADFスキャナ部62による読取に適しているが、平坦性が所定値未満の場合は、ADFスキャナ部62で読み取ろうとすると、ADFスキャナ部62の経路T(図3参照)においてジャムが生じ得る。このような場合は、用紙片を切断し、得られた複数の切断片のそれぞれをフラットベッドスキャナ部61に読み取らせることが好ましい。本構成では、適切な報知が行われることで、読取結果の信頼性が向上する。
【0066】
CPU91は、搬送量Bが所定量Bx以上であり(S9:NO)かつロール紙Rpの平坦性が所定値以上である(S11:YES)という条件が満たされると判断した場合、搬送異常を解除するために切り取られた用紙片をADFスキャナ部62に読み取らせることをディスプレイ71に報知させる(S13:第1報知処理)。搬送量Bが大きい場合、用紙片は、長さが長く、ADFスキャナ部62による読取に適している。また、平坦性が所定値以上の場合は、ADFスキャナ部62での読取時に、ADFスキャナ部62の経路T(図3参照)においてジャムが生じ難い。本構成では、適切な報知が行われることで、読取結果の信頼性が向上する。
【0067】
CPU91は、記録処理において使用されるロール紙Rpの長さL1が残量Aよりも長いと判断した場合(S3:YES)、ロール紙Rpの残量が不足していることをディスプレイ71に報知させる(S4:第2報知処理)。この場合、記録処理の途中でロール紙Rpが足りなくなること、ひいてはユーザの意図しない記録が行われることを抑制できる。
【0068】
CPU91は、S7(更新処理)において、搬送モータ3Mの回転量(即ち、ローラ対32~34の回転量)に基づいて搬送量Bを導出する。この場合、実効的な搬送量Bを導出できる。
【0069】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0070】
更新処理における搬送量は、ローラ対の回転量に基づいて導出されることに限定されず、記録指令の画像データ等に基づいて導出されてもよい。
【0071】
取得処理において取得される媒体片の長さは、画像記録装置の読取部が媒体片を読み取った読取結果に基づいて取得されることに限定されず、画像記録装置外の読取部が媒体片を読み取った読取結果に基づいて取得されてもよいし、或いは、ユーザの入力に基づいて取得されてもよい。
【0072】
決定処理において、上述の実施形態では画像データに基づいてシート状媒体の長さが決定されるが、これに限定されない。例えば、操作パネル72を介してユーザが入力したデータに基づいて、シート状媒体の長さが決定されてよい。
【0073】
シート状媒体の平坦性は、上述の実施形態ではキャリッジエンコーダから出力された信号に基づいて判断されるが、これに限定されない。例えば、シート状媒体が記録部に接したことで搬送異常が生じた場合は、シート状媒体の折れ曲がりが比較的少なく、シート状媒体の平坦性が高い傾向にある。そのため、センサ等によりシート状媒体が記録部に接したことが検知されることで、搬送に異常が有ると判断された場合は、平坦性が所定値以上であると判断されてよい。
【0074】
報知部は、ディスプレイに限定されず、スピーカ等であってもよい。
【0075】
シート状媒体は、紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0076】
記録部は、上述の実施形態ではシリアル式のヘッドであるが、ライン式のヘッドであってもよい。また、記録部は、液体吐出式に限定されず、レーザー方式、熱転写方式等であってもよい。
【0077】
本発明に係る画像記録装置は、複合機に限定されず、プリンタ、ファクシミリ、コピー機等の、読取部を有さない装置であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
3 搬送部
32~34 ローラ対
4 切断部
5 ヘッド(記録部)
50 プリンタ部
60 スキャナ部(読取部)
61 フラットベッドスキャナ部
62 ADFスキャナ部
7 ディスプレイ(報知部)
91 CPU(制御部)
93 RAM(記憶部)
100 複合機(画像記録装置)
P 用紙片(媒体片)
R ロール体
Rp ロール紙(シート状媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6