(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025561
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】アルミニウムスクラップの再生方法および再生装置
(51)【国際特許分類】
C22B 21/06 20060101AFI20250214BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20250214BHJP
C22B 9/10 20060101ALI20250214BHJP
C22B 9/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C22B21/06
C22B7/00 F
C22B9/10
C22B9/02
C22B9/10 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130421
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴博
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K001EA04
4K001EA05
4K001KA08
(57)【要約】
【課題】不純物の濃度を十分に低減させることが可能なアルミニウムスクラップの再生方法およびアルミニウムスクラップの再生装置を提供する。
【解決手段】アルミニウムスクラップの再生装置10は、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩Sが収容されている溶解炉11と、溶融塩S中に管状部12aが配置されている漏斗状容器12と、漏斗状容器12にアルミニウムスクラップの溶融物Mを投入する投入部と、漏斗状容器12に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物Mを、不純物Iが晶出した後、晶出した不純物Iが溶融塩S中に落下するように、冷却する冷却部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法であって、
前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分の溶融物と、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物を含む前記溶融塩と、を相分離させる、アルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項2】
前記溶融塩中に管状部が配置されている漏斗状容器に、前記アルミニウムスクラップの溶融物を投入する工程と、
前記漏斗状容器に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を冷却して、前記不純物を晶出させた後、前記晶出した不純物を前記溶融塩中に落下させる工程と、を含む、請求項1に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項3】
前記アルミニウムスクラップの溶融物を冷却して、前記不純物を晶出させた後、凝固させて、凝固物を得る工程と、
前記溶融塩中に前記凝固物を投入する工程と、
前記溶融塩中に投入された凝固物を加熱して、前記アルミニウムを含む成分を溶融させ、前記溶融塩上に浮上させる工程と、を含む、請求項1に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項4】
前記溶融塩上に、アルミニウム溶湯を配置する工程と、
前記アルミニウム溶湯中に前記アルミニウムスクラップを投入する工程と、
前記アルミニウム溶湯中に投入されたアルミニウムスクラップを加熱して、前記アルミニウムを含む成分を溶融させるとともに、前記不純物を前記溶融塩中に落下させる工程と、を含む、請求項1に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項5】
前記溶融塩は、比重が2.50以上3.60以下である、請求項1または2に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項6】
前記溶融塩は、Cs、Ba、Rb、SrおよびAgからなる群より選択される一種以上の元素を含む、請求項1または2に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【請求項7】
アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩が収容されている溶解炉と、
前記溶融塩中に管状部が配置されている漏斗状容器と、
前記漏斗状容器にアルミニウムスクラップの溶融物を投入する投入部と、
前記漏斗状容器に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が晶出した後、前記晶出した不純物が前記溶融塩中に落下するように、冷却する冷却部と、を備える、アルミニウムスクラップの再生装置。
【請求項8】
アルミニウムスクラップの溶融物を、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が晶出した後、凝固して、凝固物が得られるように、冷却する冷却部と、
アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩が収容されている溶解炉と、
前記溶融塩中に前記凝固物を投入する投入部と、を備え、
前記溶解炉は、前記溶融塩中に投入された凝固物を、前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融し、前記溶融塩上に浮上するように、加熱する、アルミニウムスクラップの再生装置。
【請求項9】
アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩およびアルミニウム溶湯が底部から順次収容されている溶解炉と、
前記アルミニウム溶湯中にアルミニウムスクラップを投入する投入部と、を備え、
前記溶解炉は、前記アルミニウム溶湯中に投入されたアルミニウムスクラップを、前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融するとともに、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が前記溶融塩中に落下するように加熱する、アルミニウムスクラップの再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムスクラップの再生方法およびアルミニウムスクラップの再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生の大幅な削減に向けた取り組みが活発化している。この実現に向けて、アルミニウムスクラップの再生方法に関する研究開発が実施されている。
【0003】
特許文献1には、FeとMnを含むFe・Mn含有材とAl合金原料とを溶解して第1溶湯を調製する調製工程と、第1溶湯からFe化合物を晶出させる晶出工程と、第1溶湯から晶出したFe化合物の少なくとも一部を除去した第2溶湯を抽出する抽出工程と、を備えたAl合金の再生方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているAl合金の再生方法では、晶出したFe化合物と接触している状態で第2溶湯を抽出するため、Fe化合物を十分に除去することができず、再生Al合金中のFe化合物の濃度を十分に低減させることができない。
【0006】
本発明は、不純物の濃度を十分に低減させることが可能なアルミニウムスクラップの再生方法およびアルミニウムスクラップの再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法であって、前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分の溶融物と、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物を含む前記溶融塩と、を相分離させる、アルミニウムスクラップの再生方法。
【0008】
(2)前記溶融塩中に管状部が配置されている漏斗状容器に、前記アルミニウムスクラップの溶融物を投入する工程と、前記漏斗状容器に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を冷却して、前記不純物を晶出させた後、前記晶出した不純物を前記溶融塩中に落下させる工程と、を含む、(1)に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【0009】
(3)前記アルミニウムスクラップの溶融物を冷却して、前記不純物を晶出させた後、凝固させて、凝固物を得る工程と、前記溶融塩中に前記凝固物を投入する工程と、前記溶融塩中に投入された凝固物を加熱して、前記アルミニウムを含む成分を溶融させ、前記溶融塩上に浮上させる工程と、を含む、(1)に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【0010】
(4)前記溶融塩上に、アルミニウム溶湯を配置する工程と、前記アルミニウム溶湯中に前記アルミニウムスクラップを投入する工程と、前記アルミニウム溶湯中に投入されたアルミニウムスクラップを加熱して、前記アルミニウムを含む成分を溶融させるとともに、前記不純物を前記溶融塩中に落下させる工程と、を含む、(1)に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【0011】
(5)前記溶融塩は、比重が2.50以上3.60以下である、(1)から(4)のいずれか一項に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【0012】
(6)前記溶融塩は、Cs、Ba、Rb、SrおよびAgからなる群より選択される一種以上の元素を含む、(1)から(5)のいずれか一項に記載のアルミニウムスクラップの再生方法。
【0013】
(7)アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩が収容されている溶解炉と、前記溶融塩中に管状部が配置されている漏斗状容器と、前記漏斗状容器にアルミニウムスクラップの溶融物を投入する投入部と、前記漏斗状容器に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が晶出した後、前記晶出した不純物が前記溶融塩中に落下するように、冷却する冷却部と、を備える、アルミニウムスクラップの再生装置。
【0014】
(8)アルミニウムスクラップの溶融物を、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が晶出した後、凝固して、凝固物が得られるように、冷却する冷却部と、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩が収容されている溶解炉と、前記溶融塩中に前記凝固物を投入する投入部と、を備え、前記溶解炉は、前記溶融塩中に投入された凝固物を、前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融し、前記溶融塩上に浮上するように、加熱する、アルミニウムスクラップの再生装置。
【0015】
(9)アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩およびアルミニウム溶湯が底部から順次収容されている溶解炉と、前記アルミニウム溶湯中にアルミニウムスクラップを投入する投入部と、を備え、前記溶解炉は、前記アルミニウム溶湯中に投入されたアルミニウムスクラップを、前記アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融するとともに、前記アルミニウムスクラップに含まれる不純物が前記溶融塩中に落下するように加熱する、アルミニウムスクラップの再生装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、不純物の濃度を十分に低減させることが可能なアルミニウムスクラップの再生方法およびアルミニウムスクラップの再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1のアルミニウムスクラップの再生装置によるアルミニウムスクラップの再生方法を説明する模式図である。
【
図3】アルミニウムの液相および固相ならびに不純物の固相の比重と温度の関係の一例を示すグラフである。
【
図4】本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の他の例を示す模式図である。
【
図5】
図4のアルミニウムスクラップの再生装置によるアルミニウムスクラップの再生方法を説明する模式図である。
【
図6】本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の他の例を示す模式図である。
【
図7】
図6のアルミニウムスクラップの再生装置によるアルミニウムスクラップの再生方法を説明する模式図である。
【
図8】
図6のアルミニウムスクラップの再生装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態のアルミニウムスクラップの再生方法は、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法であって、アルミニウムスクラップに含まれるアルミニウムを含む成分の溶融物と、アルミニウムスクラップに含まれる不純物を含む溶融塩と、を相分離させる。これにより、アルミニウムを含む成分中への不純物の溶出および混入が抑制されるため、再生アルミニウム中の不純物の濃度が十分に低減する。このため、再生アルミニウムを、例えば、展伸材、鋳造材に適用することができる。また、フィルタを使用しなくても、不純物を分離することができる。
【0020】
図1に、本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の一例を示す。
【0021】
アルミニウムスクラップの再生装置10は、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩Sが収容されている溶解炉11と、溶融塩S中に管状部12aが配置されている漏斗状容器12と、漏斗状容器12にアルミニウムスクラップの溶融物Mを投入する溶融物投入部と、を備える。また、アルミニウムスクラップの再生装置10は、漏斗状容器12に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物Mを、アルミニウムスクラップの溶融物Mに含まれる不純物が晶出した後、晶出した不純物が溶融塩S中に落下するように、冷却する冷却部と、を備える。ここで、溶解炉11は、溶融塩Sが溶融するように加熱する。また、アルミニウムスクラップの溶融物Mは、自重と、溶融塩Sから受ける浮力と、が釣り合うように、漏斗状容器12に投入される。
【0022】
溶融物投入部としては、漏斗状容器12にアルミニウムスクラップの溶融物Mを投入することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の自動注湯装置が挙げられる。
【0023】
冷却部としては、漏斗状容器12に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物Mを冷却することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の空冷装置が挙げられる。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲において、冷却とは、自然冷却を含む。
【0025】
次に、アルミニウムスクラップの再生装置10を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法を説明する。
【0026】
まず、アルミニウムスクラップを700℃以上の温度(例えば、750℃)に加熱して溶融させ、アルミニウムスクラップの溶融物Mを得る。次に、溶融塩S中に管状部12aが配置されている漏斗状容器12に、アルミニウムスクラップの溶融物Mを投入した後、漏斗状容器12に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物Mを、例えば、0.7℃/分の冷却速度で冷却する。その結果、700℃以下の温度になると、不純物Iが晶出し、管状部12aで凝集する(
図2(a)参照)。このとき、不純物Iの比重が溶融塩Sの比重よりも大きいため、管状部12aと不純物Iの間に溶融塩Sが浸入する。さらに、晶出した不純物Iが増加すると、不純物の凝集体Aの自重が表面張力よりも大きくなり、管状部12aから溶融塩S中に不純物の凝集体Aが落下する(
図2(b)参照)。次に、560℃以下の温度になると、アルミニウムを含む成分としての、再生アルミニウムRが凝固する。最後に、凝固した再生アルミニウムRが収容されている漏斗状容器12を溶解炉11から取り出す。また、溶融塩S中に落下した不純物の凝集体Aを、例えば、金網を用いて、除去する。
【0027】
アルミニウムスクラップとしては、例えば、ボルトが締結または圧入されたアルミニウム部品のスクラップが挙げられる。不純物Iは、例えば、Si、Mn、Fe、Cuからなる群より選択される一種以上の元素を含む。
【0028】
なお、不純物Iが晶出しにくい場合は、アルミニウムスクラップの溶融物Mに、Fe、Mn、Cr、VおよびSiからなる群より選択される一種以上の元素を添加して、アルミニウムスクラップの溶融物Mの組成を調整してもよい。このとき、スラッジファクターを考慮してもよい。例えば、不純物として、Fe(1.0質量%)、Mn(1.6質量%)、Cr(0.25質量%)、V(0.60質量%)およびSi(7.0質量%)を含むように、アルミニウムスクラップの溶融物Mの組成を調整すると、不純物Iが700℃以下の温度で晶出する。
【0029】
図3に、アルミニウムの液相および固相ならびに不純物の固相の比重と温度の関係の一例を示す。ここで、不純物は、Al、Fe、Mn、Cr、VおよびSiからなり、常温において、Mn
4Al
16Si
3型の結晶構造を有していると推定される。
【0030】
溶融塩Sの比重は、2.50以上3.60以下であることが好ましく、2.70以上3.10以下であることがさらに好ましい。溶融塩Sの比重が2.50以上であると、溶融塩Sがアルミニウムスクラップの溶融物M中に移動しにくくなり、3.60以下であると、不純物の凝集体Aが溶融塩S中に落下しやすくなる。ここで、アルミニウムの液相の比重は、2.45である。
【0031】
溶融塩Sの融点は、750℃以下であることが好ましく、550℃以下であることがさらに好ましい。溶融塩Sの融点が750℃以下であると、不純物の凝集体Aが溶融塩S中に落下しやすくなる。なお、溶融塩Sの融点は、例えば、530℃以上である。
【0032】
溶融塩は、例えば、Cs、Ba、Rb、SrおよびAgからなる群より選択される一種以上の元素を含む。溶融塩Sの具体例としては、例えば、BaCl2、CaCl2およびLiClの混合物が挙げられる。
【0033】
表1に、BaCl2、CaCl2およびLiClの混合物の配合および570℃における比重の関係を示す。
【0034】
【0035】
図4に、本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の他の例を示す。
【0036】
アルミニウムスクラップの再生装置20は、円柱状金型21にアルミニウムスクラップの溶融物を投入する溶融物投入部と、円柱状金型21に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を、アルミニウムスクラップの溶融物に含まれる不純物Iが晶出した後、凝固して、凝固物Cが得られるように、冷却する冷却部を備える。また、アルミニウムスクラップの再生装置20は、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩Sが収容されている溶解炉22と、溶融塩S中に凝固物Cを投入する凝固物投入部と、を備える。ここで、溶解炉22は、溶融塩Sが溶融するように加熱した後、溶融塩S中に投入された凝固物Cを、凝固物Cに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融し、溶融塩S上に浮上するように、加熱する。
【0037】
溶融物投入部としては、円柱状金型21にアルミニウムスクラップの溶融物Mを投入することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の自動注湯装置が挙げられる。
【0038】
冷却部としては、円柱状金型21に収容されているアルミニウムスクラップの溶融物を冷却することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の空冷装置が挙げられる。
【0039】
凝固物投入部としては、溶融塩S中に凝固物Cを投入することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の自動投入装置が挙げられる。
【0040】
次に、アルミニウムスクラップの再生装置20を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法を説明する。
【0041】
まず、アルミニウムスクラップを700℃以上の温度に加熱して溶融させ、アルミニウムスクラップの溶融物を得る。次に、円柱状金型21にアルミニウムスクラップの溶融物を投入した後、円柱状金型21に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を、例えば、0.5℃/分の冷却速度で冷却する。その結果、600℃以下の温度になると、不純物Iが晶出し、円柱状金型21の底部で凝集する。次に、560℃以下の温度になると、アルミニウムスクラップの溶融物が凝固して、凝固物Cが得られる。次に、溶融塩S中に凝固物Cを投入した後、溶融塩S中に投入された凝固物Cを加熱する。その結果、560℃以上の温度になると、アルミニウムを含む成分としての、再生アルミニウムRが溶融し、溶融塩S上に浮上する(
図5参照)。このとき、不純物の凝集体Aは溶融しないため、溶解炉22の底部に残留する。最後に、溶融した再生アルミニウムRを溶解炉22の上部から出湯する。また、溶解炉22の底部に残留した不純物の凝集体Aを700℃以上の温度に加熱して溶融させた後、溶解炉22の下部から出湯する。
【0042】
図6に、本実施形態のアルミニウムスクラップの再生装置の他の例を示す。
【0043】
アルミニウムスクラップの再生装置30は、アルミニウムの液相よりも比重が大きい溶融塩Sおよびアルミニウム溶湯R1が底部から順次収容されている溶解炉31と、アルミニウム溶湯R1中にアルミニウムスクラップBを投入するスクラップ投入部と、を備える。ここで、溶解炉31は、溶融塩Sおよびアルミニウム溶湯R1が溶融するように加熱した後、アルミニウム溶湯R1中に投入されたアルミニウムスクラップBを、アルミニウムスクラップBに含まれるアルミニウムを含む成分が溶融するとともに、アルミニウムスクラップBに含まれる不純物が溶融塩S中に落下するように加熱する。
【0044】
スクラップ投入部としては、アルミニウム溶湯R1中にアルミニウムスクラップBを投入することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、公知の自動投入装置が挙げられる。
【0045】
次に、アルミニウムスクラップの再生装置30を用いて、アルミニウムスクラップを再生する方法を説明する。
【0046】
まず、アルミニウム溶湯R1中にアルミニウムスクラップBを投入した後、アルミニウム溶湯R1中に投入されたアルミニウムスクラップBを加熱する。その結果、560℃以上の温度になると、アルミニウム溶湯R1中でアルミニウムを含む成分が溶融して、再生アルミニウムRとなる。また、アルミニウムを含む成分が溶融したアルミニウムスクラップB、すなわち、不純物Iは、再生アルミニウムRよりも比重が大きいため、溶融塩S中に落下する(
図7参照)。最後に、再生アルミニウムRを溶解炉31の上部から出湯する。また、溶融塩S中に落下した不純物Iを、例えば、金網を用いて、除去する。
【0047】
図8に、アルミニウムスクラップの再生装置30の変形例を示す。
【0048】
アルミニウムスクラップの再生装置40は、溶解炉31の代わりに、アルミニウム溶湯R1が収容されている領域の面積A1が、溶融塩Sがされている領域の面積A2よりも大きく、投入口41aおよび取り出し口41bが設置されている溶解炉41が使用されている以外は、アルミニウムスクラップの再生装置30と同様である。ここで、投入口41aは、アルミニウムスクラップBを投入する領域であり、取り出し口41bは、不純物Iを取り出す領域である。また、アルミニウムスクラップの再生装置40には、投入口41aおよび取り出し口41bを区画するために、それぞれ仕切り42および43が設置されている。さらに、溶解炉41の底部には、貫通孔が形成されている容器44(例えば、金網コンテナ)が移動可能に配置されている。このため、溶融塩S中に落下した不純物Iが底部に収容されている容器44を水平方向に移動させた後、鉛直方向に移動させることにより、不純物Iを取り出すことができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
アルミニウムスクラップの再生装置30(
図6参照)を使用して、アルミニウムスクラップBを再生した。具体的には、アルミニウム溶湯R1中にアルミニウムスクラップBを投入した後、アルミニウム溶湯R1中に投入されたアルミニウムスクラップBを1時間加熱した。このとき、アルミニウムスクラップBとしては、不純物として、Feを含むビス付きアルミサッシ6kgを使用した。また、溶融塩Sおよびアルミニウム溶湯R1としては、それぞれ750℃で溶融している、BaCl
2(38mol%)、CaCl
2(44mol%)およびLiCl(18mol%)からなり、750℃における比重が2.6である溶融塩1.8kgおよび純アルミニウム2.5kgを使用した。最後に、再生アルミニウムRを溶解炉31の上部から出湯した。ここで、溶融塩の比重は、最大泡圧法による実測値である。
【0052】
[比較例1]
溶融塩Sを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、アルミニウムスクラップBを再生した。
【0053】
[不純物の濃度]
ICP発光分光分析法を使用して、再生アルミニウム中のFeの濃度を分析した。
【0054】
表2に、再生アルミニウム中のFeの濃度の分析結果を示す。
【0055】
【0056】
表2から、実施例1は、溶融塩を使用していない比較例1よりも、再生アルミニウム中のFeの濃度が低減していることがわかる。
【0057】
[アルミニウムスクラップの溶融物の作製]
アルミニウムスクラップとしての、アルミニウム合金(A356.2)を750℃に加熱して溶融させた後、Fe、Mn、Cr、VおよびSiを含む母合金を添加して、アルミニウムスクラップの溶融物Mの組成を調整した。ICP発光分光分析法を使用して、アルミニウムスクラップの溶融物Mの組成を分析したところ、Si(6.3質量%)、Fe(0.84質量%)、Mn(1.6質量%)、Cr(0.22質量%)、V(0.36質量%)およびAl(残部)であった。
【0058】
[実施例2]
アルミニウムスクラップの再生装置10(
図1参照)を使用して、アルミニウムスクラップを再生した。具体的には、溶融塩S中に管状部12aが配置されている漏斗状容器12に、自重と、溶融塩Sから受ける浮力と、が釣り合うように、アルミニウムスクラップの溶融物Mを投入した後、漏斗状容器12に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物Mを0.7℃/分の冷却速度で560℃になるまで冷却した。このとき、溶融塩Sとしては、750℃で溶融している、BaCl
2(38mol%)、CaCl
2(44mol%)およびLiCl(18mol%)からなり、750℃における比重が2.6である溶融塩3.5kgを使用した。その結果、再生アルミニウムRが凝固し、凝固した再生アルミニウムRが収容されている漏斗状容器12を溶解炉11から取り出した。このとき、溶融塩S中に不純物の凝集体Aが落下していた。再生アルミニウム中のFeの濃度を分析したところ、0.34質量%であった。このことから、再生アルミニウム中のFeの濃度が十分に低減していることがわかる。
【0059】
[実施例3]
アルミニウムスクラップの再生装置20(
図4参照)を使用して、アルミニウムスクラップを再生した。具体的には、円柱状金型21にアルミニウムスクラップの溶融物4.2kgを投入した後、円柱状金型21に投入されたアルミニウムスクラップの溶融物を0.5℃/分の冷却速度で560℃になるまで冷却した。その結果、不純物Iが晶出し、円柱状金型21の底部で凝集した。また、アルミニウムスクラップの溶融物が凝固して、凝固物Cが得られた。次に、溶融塩S中に凝固物Cを投入した後、溶融塩S中に投入された凝固物Cを加熱した。このとき、溶融塩Sとしては、650℃で溶融している、BaCl
2(38mol%)、CaCl
2(44mol%)およびLiCl(18mol%)からなり、650℃における比重が2.7である溶融塩6.0kgを使用した。その結果、再生アルミニウムRが溶融し、溶融塩S上に浮上した。このとき、不純物の凝集体Aは溶融しないため、溶解炉22の底部に残留していた。最後に、溶融した再生アルミニウムRを溶解炉22の上部から出湯した。再生アルミニウム中のFeの濃度を分析したところ、0.24質量%であった。このことから、再生アルミニウム中のFeの濃度が十分に低減していることがわかる。