(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002557
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】包装材、包装袋、及びパッケージ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241226BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D65/40 D
B32B27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102809
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394014423
【氏名又は名称】三慶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】石川 善朗
(72)【発明者】
【氏名】合田 学剛
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB52
3E086CA01
3E086CA28
4F100AA01C
4F100AA01D
4F100AA17C
4F100AA19A
4F100AA20C
4F100AA20D
4F100AA21C
4F100AA21D
4F100AA37C
4F100AA37D
4F100AC05C
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4F100EH66A
4F100EH66C
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4F100JK06
4F100JL09
4F100JL10C
4F100JL10D
4F100JL12D
4F100JN02E
(57)【要約】
【課題】
包装袋中に亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容した場合に、包装袋における接着剤層の劣化を抑制することができる包装材を提供すること。
【解決手段】
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であって、基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、以下の(1)又は(2)の少なくとも一方を満たす、包装材。
(1)シーラント層が無機顔料を含む。
(2)シーラント層と接着剤層との間に無機顔料を含む層を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であって、
基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、
以下の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、包装材。
(1)前記シーラント層が無機顔料を含む。
(2)前記シーラント層と前記接着剤層との間に無機顔料を含む層を有する。
【請求項2】
前記無機顔料が、黒色顔料及び白色顔料の少なくとも一種である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記無機顔料が、シリカ、酸化チタン、カーボンブラック及び層状鉱物からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
前記無機顔料を含む前記シーラント層又は前記無機顔料を含む層が、UV領域において遮光性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項5】
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であって、
基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、
前記基材フィルムと前記接着剤層との間、及び前記シーラント層と前記接着剤層との間の少なくとも一方に無機酸化物を含む層を有する、包装材。
【請求項6】
前記無機酸化物を含む層が、無機酸化物の蒸着層である、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
前記無機酸化物がシリカである、請求項5又は6に記載の包装材。
【請求項8】
前記基材フィルムと前記接着剤層との間に遮光層を更に備える、請求項5又は6に記載に記載の包装材。
【請求項9】
前記シーラント層が多層である、請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項10】
亜塩素酸水を収容する包装袋を形成するための、請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項11】
前記接着剤層が、ポリウレタン系接着剤を含む、請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項12】
請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の包装材から形成された、包装袋。
【請求項13】
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品が請求項12に記載の包装袋内に収容されている、パッケージ。
【請求項14】
包装袋であって、当該包装袋中に200mg/L以上の遊離塩素濃度を有する亜塩素酸水を収容して40℃で3週間保存したとき、包装袋中の亜塩素酸水の遊離塩素濃度が100mg/L以上である、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装材、包装袋、及びパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、食品、医療品、薬剤など、様々な製品を内包するために使用されている。内包される製品の性状としては、固形物、液状物、半固形物等、様々であり、その性質も様々である。包装袋を形成するための一般的な包装材は多層フィルムであり、基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備えたものがよく知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、亜塩素酸水は、殺菌料等として頻繁に使用される薬剤であり、通常、高濃度の水溶液として販売されている。使用時には、亜塩素酸水の入った容器から、適量を取り出し、任意に濃度を調整する等して使用するため、使用時に操作が煩雑となる。そこで、本発明者らが使用に適した濃度の亜塩素酸水を、適当な量で包装袋に小分けすることに想到し、そのようなパッケージを作製したところ、従来の包装袋では、包装袋における各層を接着するための接着剤層が亜塩素酸水により劣化するということが判明した。接着剤が劣化すると、包装袋を構成する積層フィルムの各層がはがれ、適切に内容物を保管できなくなる。また、亜塩素酸水の作用で接着剤が膨潤すると包装袋の外観が悪化する。
【0005】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、包装袋中に亜塩素酸水を収容した場合に、包装袋における接着剤層の劣化を抑制することができる包装材を提供することを目的とする。また、本開示は、そのような包装材から形成された包装袋、及び当該包装袋を含むパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の実施形態[1]~[14]を含む。
[1]
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であって、
基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、
以下の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、包装材。
(1)前記シーラント層が無機顔料を含む。
(2)前記シーラント層と前記接着剤層との間に無機顔料を含む層を有する。
[2]
前記無機顔料が、黒色顔料及び白色顔料の少なくとも一種である、[1]の包装材。
[3]
前記無機顔料が、シリカ、酸化チタン、カーボンブラック及び層状鉱物からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]の包装材。
[4]
前記無機顔料を含む前記シーラント層又は前記無機顔料を含む層が、UV領域において遮光性である、[1]~[3]のいずれか一つの包装材。
[5]
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であって、
基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、
前記基材フィルムと前記接着剤層との間、及び前記シーラント層と前記接着剤層との間の少なくとも一方に無機酸化物を含む層を有する、包装材。
[6]
前記無機酸化物を含む層が、無機酸化物の蒸着層である、[5]の包装材。
[7]
前記無機酸化物がシリカである、[5]又は[6]の包装材。
[8]
前記シーラント層と前記接着剤層との間に遮光層を更に備える、[5]~[7]のいずれか一つの包装材。
[9]
前記シーラント層が多層である、[1]~[8]のいずれか一つの包装材。
[10]
亜塩素酸水を収容する包装袋を形成するための、[1]~[9]のいずれか一つの包装材。
[11]
前記接着剤層が、ポリウレタン系接着剤を含む、[1]~[10]のいずれか一つの包装材。
[12]
[1]~[11]のいずれか一つの包装材から形成された、包装袋。
[13]
亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品が[12]に記載の包装袋内に収容されている、パッケージ。
[14]
包装袋であって、200mg/L以上の遊離塩素濃度を有する亜塩素酸水を封入して40℃で3週間保存したとき、包装袋中の亜塩素酸水の遊離塩素濃度が100mg/L以上である、包装袋。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、包装袋中に亜塩素酸水を収容した場合に、包装袋における接着剤層の劣化を抑制することができる包装材を提供することができる。また、本開示によれば、そのような包装材から形成された包装袋、及び当該包装袋を含むパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る包装材の断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る包装材の断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る包装材の断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る包装袋を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る包装材(積層体)は、亜塩素酸水を収容する包装袋を形成するための包装材であり、基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす。(1)及び(2)の層は接着剤層への遊離塩素の侵入を防ぐことができると考えられる。
(1)シーラント層が無機顔料を含む。
(2)シーラント層と接着剤層との間に無機顔料を含む層を有する。
【0010】
基材フィルムは、可撓性フィルムであってよい。基材フィルムとしては、フィルム状の熱可塑性ポリマーの一方又は双方を備えていてよい。可撓性フィルムとしては、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、配向ポリアミド(OPA)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖低密度ポリエチエレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムが挙げられる。基材フィルムとしては、例えば、PETフィルムにシリカ等が蒸着された蒸着フィルム(透明蒸着フィルム)であってもよい。基材フィルムの厚みは5~150μmであってよく、15~90μmであってよく、20~80μmであってもよい。
【0011】
接着剤層としては、特に限定されず、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤等が挙げられる。ポリウレタン系接着剤としては、ポリイソシアネートとポリオールとを含む組成物の硬化物を含む接着剤が挙げられる。ポリオールは、ポリエステルポリオールであってよい。ポリウレタン系接着剤を形成するための組成物は、更にエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0012】
シーラント層は、熱融着性を有する層である。そのような層としては、例えば、熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。シーラント層の厚みは5~150μmであってよく、15~90μmであってよく、20~80μmであってもよい。
【0013】
図1に本実施形態に係る包装材(積層体)10の断面図を示す。
図1において、包装材10は、基材フィルム1と、接着剤層2と、シーラント層3とをこの順に備える。
図1の包装材において、シーラント層3は、上記熱可塑性樹脂と共に無機顔料を含む。このような包装材10は、基材フィルム1にドライラミネート法等により接着剤組成物の層(接着剤層2)を形成し、シーラント層3を当該接着剤層上に積層することにより得ることができる。
【0014】
シーラント層3が無機顔料を含む場合、シーラント層3は、上記熱可塑性樹脂に無機顔料を練り込んだ材料により形成されていてもよい。このような材料としては、例えば、白色顔料を練り込んだLLDPE、黒色顔料を練り込んだLLDPE等が挙げられる。
【0015】
無機顔料としては、特に限定されないが、黒色顔料及び白色顔料の少なくとも一種であると好ましい。白色顔料としては、シリカ、酸化チタン等が挙げられる。黒色顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。他にも無機顔料としては、マイカ等の層状鉱物が挙げられる。無機顔料は1種以上を使用してよい。
【0016】
シーラント層は、多層フィルムであってよい。そのような多層フィルムとしては、無機顔料及び熱可塑性樹脂を含む層を2層以上積層したもの、無機顔料及び熱可塑性樹脂を含む層の一層以上と、無機顔料を含まず、熱可塑性樹脂を含む層の一層以上とを積層したものが挙げられる。無機顔料及び熱可塑性樹脂を含む層を2層以上積層したものとしては、例えば、白色顔料を練り込んだLLDPE及び黒色顔料を練り込んだLLDPEを白-黒-白の順に積層したものが挙げられる。
【0017】
図2に本実施形態の包装材の他の例の断面図を示す。包装材20は、基材フィルム1と、接着剤層2と、無機顔料を含む層(無機顔料の層)5と、シーラント層4とをこの順に備える。このような包装材20は、基材フィルム1にドライラミネート法等により接着剤組成物の層(接着剤層2)を形成し、無機顔料を含む層5を表面に形成したシーラント層4を当該接着剤層2上に積層することにより得ることができる。
【0018】
無機顔料を含む層5としては、特に限定されず、無機顔料を含むインキを塗布することにより形成した層、無機顔料を蒸着した層などであってよい。無機顔料としては、特に限定されないが、黒色顔料及び白色顔料の少なくとも一種であると好ましい。白色顔料としては、シリカ、酸化チタン等が挙げられる。黒色顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。白色顔料及び黒色顔料はそれぞれ1種以上を使用してよい。なお、本明細書において無機顔料を含む層はヒートシール性の層ではなくてよく、無機顔料を含むシーラント層を含まなくてよい。
【0019】
無機顔料を含むインキとしては、無機顔料と、溶剤とを含むインキであってよい。
【0020】
包装材20においてシーラント層4は、無機顔料を含まなくてもよいが、含んでいてもよい。シーラント層4が無機顔料を含む場合、シーラント層4は、上述のシーラント層3として例示した層であってよい。
【0021】
包装材において、無機顔料を含むシーラント層又は無機顔料を含む層が紫外線(UV)領域において遮光性であると好ましい。亜塩素酸水に含まれる亜塩素酸は、UV照射により分解しやすいため、無機顔料を含むシーラント層又は無機顔料を含む層が紫外線領域において遮光性であることにより亜塩素酸水に含まれる亜塩素酸の分解を抑制できる。
【0022】
本実施形態の包装袋は、上記包装材のシーラント層同士を向かい合わせ、ヒートシールすることにより形成することができる。
図4に、本実施形態の包装袋の一例を示す。
図4の包装袋110は、2枚の包装材60及び62を向かい合わせて配置し、3片をヒートシールして形成されたものである。包装袋110は、3片のヒートシールされた部分に囲まれた収容部102を有する。収容部には、亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容することができる。収容部に亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容した後、包装袋の開口部をヒートシール等により封じ、包装袋内に亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容するパッケージを製造することができる。
【0023】
本明細書において亜塩素酸水は、以下の反応により製造された水溶液である。
まず、塩素酸又は塩素酸塩を溶解させた水溶液を用意する。当該水溶液は、塩化ナトリウムを溶解させた水溶液に塩酸を加え、酸性条件下で、無隔膜電解槽内で電解する(下記A式)、又は塩素酸塩水溶液に、硫酸を加えて強酸性にすることにより塩素酸を生成させる(下記B式)ことによって得られる。次に、過酸化水素水、を加えて還元反応させることによって得られる亜塩素酸(HClO2)を水溶液中に生じさせる(下記C式及びD式)ことで亜塩素酸水が得られる。塩素酸塩としては、塩素酸ナトリウムであってよい。B式の反応を行う際には、塩素酸水溶液のpHが2.3~3.4の範囲内に維持されるように硫酸を加えてよい。
A式:NaCl+3H2O+6e-→NaClO3+3H2↑
B式:2NaClO3+H2SO4→2HClO3+Na2SO4↓
C式:2HClO3+H2O2→2ClO2+2H2O+O2↑
D式:2ClO2+H2O2→2HClO2+O2↑
【0024】
亜塩素酸水には、長時間にわたり亜塩素酸(HClO2)を安定的に維持することを目的として、無機酸、無機酸塩、有機酸及び有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を配合してよい。無機酸としては、炭酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等が挙げられる。また、無機酸塩としては、炭酸塩(炭酸水素塩を含む)、水酸化塩、リン酸塩、ホウ酸塩が挙げられる。具体的には、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。水酸化塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。有機酸としては、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸等が挙げられる。また、有機酸塩では、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
亜塩素酸水のpHは、3.2~7.0であってよい。
【0026】
亜塩素酸水を含む物品としては、例えば、多孔質基材、又は繊維基材等の基材に亜塩素酸水を含浸させたものが挙げられる。基材の材質としては例えば、シート、フィルム、パッチ、ブラシ、不織布、ペーパー、布、脱脂綿、スポンジ等が挙げられる。基材は、これらの材質のうち複数の材質を含んでいてよい。
【0027】
(第2の実施形態)
本実施形態の包装材(積層体)は、亜塩素酸水又は亜塩素酸水を含む物品を収容する包装袋を形成するための包装材であり、基材フィルムと、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備え、基材フィルムと接着剤層との間、及びシーラント層と前記接着剤層との間の少なくとも一方に無機酸化物を含む層を有する。本実施形態の包装材は、無機酸化物を含む層を有することで亜塩素酸の接着剤層への侵入を防ぐことができると考えられる。
【0028】
図3に本実施形態に係る包装材(積層体)の断面図を示す。
図3において、包装材30は、基材フィルム1と、接着剤層2と、無機酸化物を含む層6と、シーラント層4とをこの順に備える。
【0029】
本実施形態において、基材フィルム、接着剤層、及びシーラント層の材料としては、第1の実施形態において例示したものが挙げられる。シーラント層4は、無機顔料を含まなくてもよいが、含んでいてもよい。シーラント層4が無機顔料を含む場合、シーラント層4は、上述のシーラント層3として例示した層であってよい。シーラント層4は多層であってもよい。本実施形態の包装材は、無機酸化物を含む層と共に、第1実施形態の(1)無機顔料を含むシーラント層、及び(2)シーラント層と接着剤層との間の無機顔料を含む層の少なくとも一方を有していてもよい。このような層構成を有する包装材としては、例えば、基材フィルムと、無機酸化物を含む層と、接着剤層と、無機顔料を含むシーラント層とをこの順に有するもの、及び基材フィルムと、無機酸化物を含む層と、接着剤層と、無機顔料を含む層と、シーラント層(シーラント層は、無機顔料を含んでいてよい。)とをこの順に有するものであってよい。
【0030】
無機酸化物を含む層6は、無機酸化物の蒸着層、無機酸化物を含むインキから形成した層、無機酸化物を樹脂に練り込んだ層、無機酸化物を含む熱硬化性樹脂を硬化した層などであってよい。無機酸化物は、無機顔料であってもよいが、透光性の材料であってもよい。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ等)、アルミナなどが挙げられる。
【0031】
本実施形態の包装材を用いて第1の実施形態と同様に、包装袋及びパッケージを製造することができる。
【0032】
本実施形態の包装材は、遮光層を有していると好ましい。遮光層としては、UV領域において遮光性を有する層であると好ましい。遮光層を有することにより、亜塩素酸水に含まれる亜塩素酸の分解を抑制することができる。遮光層は、包装袋としたときにシーラント層よりも外側に位置するように包装材内で配置されていればよく、基材フィルムよりも外側、基材フィルムと接着剤層の間、接着剤層と無機酸化物を含む層の間のいずれに配置してもよい。
【0033】
本開示の一実施形態に係る包装袋は、当該包装袋中に200mg/L以上の遊離塩素濃度を有する亜塩素酸水を封入して40℃で3週間保存したとき、包装袋中の亜塩素酸水の遊離塩素濃度が100mg/L以上であってよい。このような包装袋は、上述の第1及び第2の実施形態に係る包装袋であってよい。亜塩素酸水における遊離塩素濃度は、封入する前に測定しておき、測定後速やかに包装袋中に封入する。遊離塩素濃度は、JIS K 0102 33.4(ジエチル-p-フェニレンジアンモニウム(DPD)吸光光度法)、又はこれに準拠した方法により測定することができる。3週間保存した後の遊離塩素濃度(保存後の遊離塩素濃度)は、包装袋から亜塩素酸水を取り出して測定する。包装袋は、例えば、10cm×10cmの三方袋であってよく、封入時には、四方がヒートシールされていてよい。
【0034】
保存後の遊離塩素濃度は、150mg/L以上であってよく、200mg/L以上であってよい。包装袋は、例えば、10cm×10cmの三方袋であってよく、封入時には、四方がヒートシールされていてよい。なお、包装袋に封入した時点の亜塩素酸水の遊離塩素濃度(初期の遊離塩素濃度)は、200~300mg/Lであってよい。
【0035】
第1及び第2の実施形態に係る包装袋の200~700nmの波長の光に対する透過率は、0.9%以下であってよく、0.8%以下であってよく、0.7%以下であってよく、0.6%以下であってよい。また、包装袋は、200~700nmの波長の光に対する透過率が0.9%以下である遮光層を有していてよい。遮光層の200~700nmの波長の光に対する透過率は、0.8%以下であってよく、0.7%以下であってよく、0.6%以下であってよい。
【実施例0036】
(実施例1)
主剤として脂肪族ポリエステルポリオール(三井化学株式会社製、商品名:タケラックA626)、硬化剤としてポリイソシアネート(三井化学株式会社製、商品名:タケネートA50)、溶剤として酢酸エチルを配合して接着剤組成物を調製した。当該接着剤組成物を基材フィルムとしてPETフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラーP60、厚さ12μm)上に、ドライラミネート装置を用いて塗布し、接着剤層を形成した。次に、シーラント層として接着剤層上に白(酸化チタン)-黒(カーボンブラック)-白(酸化チタン)の順に顔料を練り込んだLLDPE(厚さ:50μm)が積層された多層フィルム(株式会社武田産業製、商品名:WBW-R)を積層し、40℃で3日間養生して積層体(包装材)を得た。
【0037】
得られた包装材を、互いのシーラント層が向かい合うように二枚重ね、3片をヒートシールして10cm×10cmの三方袋を作製した。三方袋中に20mlの亜塩素酸水を封入し、亜塩素酸水を含むパッケージを作製した。
【0038】
(遊離塩素濃度の測定)
三方袋に封入する直前の亜塩素酸水、及びパッケージを40℃で3週間保存した後にパッケージから取り出した亜塩素酸水における遊離塩素濃度をJIS K 0102 33.4の方法で測定した。三方袋に封入する直前の亜塩素酸水における遊離塩素濃度は223mg/Lであった。測定は、各2つのサンプルについて行い、その平均値を算出した。3週間保存後の結果を表1に示す。
【0039】
(ラミネート強度の測定)
パッケージを40℃で3週間保存した後にJIS K 6854の方法により、包装袋を構成する積層体のラミネート強度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
40℃で3週間保存した後にパッケージを目視し、接着剤に膨潤が見られたものをB、見られなかったものをAとした。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
基材フィルムをGL-ARH(凸版印刷株式会社製、厚さ:12μm、PET基材上にアルミナ蒸着層を有するフィルム)に変更したこと以外は、実施例1と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、GL-ARHは、蒸着層が接着剤層側を向くように配置された。
【0042】
(実施例3)
基材フィルムをGL-ARHに変更し、シーラント層を乳白LL(出光ユニテック株式会社製、ユニクレストMS‐530CW、厚さ:50μm、白色顔料として酸化チタンが含まれる)に変更したこと以外は、実施例1と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、GL-ARHは、蒸着層が接着剤層側を向くように配置された。
【0043】
(実施例4)
基材フィルムをGL-AECF(凸版印刷株式会社製、PET基材上にアルミナ蒸着層を有するフィルム)に変更し、シーラント層をLLDPE(フタムラ化学株式会社製、LL-XMTN、厚さ:50μm)に変更し、シーラント層の接着剤層側の面に白インキ(サカタインクス株式会社製、ベルカラー120R白、白色顔料として酸化チタンが含まれる)を2回塗布して形成した層を設けたこと以外は、実施例1と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、GL-AECFは、蒸着層が接着剤層側を向くように配置された。
【0044】
(実施例5)
白インキを2回塗布して形成した層に代えて、シーラント層の接着剤層側の面に黒インキ(東洋インキ株式会社製、リオグラン墨、黒色顔料としてカーボンブラックが含まれる)を塗布して形成した層を設け、当該層上に白インキ(ベルカラー120R白)を塗布して形成した層を設けたこと以外は、実施例4と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、GL-AECFは、蒸着層が接着剤層側を向くように配置された。
【0045】
(比較例1)
シーラント層を無機顔料を含まないLLDPEに変更したこと以外は、実施例1と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
基材フィルムをGL-AECFに変更したこと以外は、比較例1と同様にパッケージを作製し、各種測定を行った。なお、GL-AECFは、蒸着層が接着剤層側を向くように配置された。結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
表1から明らかなように、実施例1~5のパッケージでは、40℃で3週間保存した後の亜塩素酸水中の遊離塩素濃度の低下が小さかった。また、実施例1~5のパッケージでは、いずれもラミネート強度の測定中に基材フィルムが破れるほどのラミネート強度を維持していた。
【0049】
一方、比較例1のパッケージでは、40℃で3週間保存した後の亜塩素酸水の遊離塩素濃度が著しく低下しており、殺菌剤として使用できる水準ではなかった。また、接着剤層が亜塩素酸により劣化しており、接着剤層の膨潤が見られ、ラミネート強度も大幅に低下していた。また、比較例2のパッケージでは、40℃で3週間保存した後の亜塩素酸水の遊離塩素濃度は維持されているものの、接着剤層が亜塩素酸により劣化しており、接着剤層の膨潤が見られた。
【0050】
実施例2及び3について、保存期間を延長して遊離塩素濃度及びラミネート強度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0051】
1…基材フィルム、2…接着剤層、3、4…シーラント層、5…無機顔料を含む層、6…無機酸化物を含む層、10、20、30、60、62…包装材(積層体)、110…包装袋、102…収容部。