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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025575
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
F16K31/06 305J
F16K31/06 305L
F16K31/06 305C
F16K31/06 305K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130446
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 正至
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB24
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE34
3H106EE48
3H106GA17
3H106GB01
3H106GB08
3H106GB16
3H106GC14
(57)【要約】
【課題】プランジャに対する吸引子の吸引力が小さくても、開弁時の流量を大きく確保できるようにする。
【解決手段】電磁弁10は、第1流路51及び第2流路52が形成され、第1流路51と第2流路52の間に主弁座42を有する主弁室40が設けられた弁本体22と、主弁室40の軸方向における第2流路52と反対側に取り付けられた吸引子24と、主弁室40に設けられ、軸方向に移動して主弁座42に当接又は離間する主弁体26と、磁化された吸引子24に吸引される第1プランジャ31と、磁化された第1プランジャ31に吸引され、主弁体26を動作させる第2プランジャ32と、第1プランジャ31に設けられ、第1プランジャ31が吸引子24に吸引されたときに第2プランジャ32に対し主弁体26から離れる方向に衝撃を加えるキック部34と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路及び第2流路が形成され、前記第1流路と前記第2流路の間に主弁座を有する主弁室が設けられた弁本体と、
前記主弁室の軸方向における前記第2流路と反対側に取り付けられた吸引子と、
前記主弁室に設けられ、前記軸方向に移動して前記主弁座に当接又は離間する主弁体と、
磁化された前記吸引子に吸引される第1プランジャと、
磁化された前記第1プランジャに吸引され、前記主弁体を動作させる第2プランジャと、
前記第1プランジャに設けられ、前記第1プランジャが前記吸引子に吸引されたときに前記第2プランジャに対し前記主弁体から離れる方向に衝撃を加えるキック部と、
を有する電磁弁。
【請求項2】
前記主弁体と前記第2プランジャの間にパイロット弁室が設けられ、
前記主弁体のうち前記パイロット弁室に面する部分には、パイロット弁座と、前記パイロット弁室と前記第2流路とを連通させるパイロットポートが設けられ、
前記第1プランジャと前記第2プランジャの間に、前記第2プランジャを前記パイロット弁室側に付勢する圧縮ばねが設けられ、
前記第2プランジャは、前記パイロット弁座に対して当接又は離間して、前記パイロットポートを開閉する請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記キック部は、前記第2プランジャの周囲を囲むと共に、開弁時に軸方向の先端が前記主弁体に当接するように形成され、
前記キック部には、前記パイロット弁室における前記キック部の内側と外側とに連通する連通部が設けられている請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記吸引子を磁化させる磁界を発生させる電磁コイルをさらに備える、
請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
流入口及び流出口を有する流路ブロックに取り付けて使用されるカートリッジ式とされ、
前記流路ブロックへの取付け状態で、前記第1流路が前記流入口に連通し、第2流路が前記流出口に連通する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
キック動作を行う電磁弁において、吸引子によるプランジャの吸引時に該プランジャのキック動作によりパイロット弁体をパイロットポートから離間させるパイロット式の電磁弁が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-137094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸引子がプランジャを吸引しないとき弁が閉じるノーマルクローズ型の電磁弁においては、弁口径が大きいほど必要な開口面積が多くなり、主弁体及びプランジャのリフト量が大きくなる。また、閉弁時にプランジャに作用する差圧による荷重も大きくなり、開弁時にプランジャをリフトさせるためには吸引子の吸引力を高めることが求められる。
【0005】
しかしながら、プランジャのリフト量が大きいと、吸引子とプランジャとの間の隙間が大きくなるため、プランジャに対する吸引子の吸引力が小さくなるという背反がある。
【0006】
本発明は、プランジャに対する吸引子の吸引力が小さくても、開弁時の流量を大きく確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る電磁弁は、第1流路及び第2流路が形成され、前記第1流路と前記第2流路の間に主弁座を有する主弁室が設けられた弁本体と、前記主弁室の軸方向における前記第2流路と反対側に取り付けられた吸引子と、前記主弁室に設けられ、前記軸方向に移動して前記主弁座に当接又は離間する主弁体と、磁化された前記吸引子に吸引される第1プランジャと、磁化された前記第1プランジャに吸引され、前記主弁体を動作させる第2プランジャと、前記第1プランジャに設けられ、前記第1プランジャが前記吸引子に吸引されたときに前記第2プランジャに対し前記主弁体から離れる方向に衝撃を加えるキック部と、を有する。
【0008】
この電磁弁では、磁化された吸引子に第1プランジャが吸引されてリフトする。第1プランジャに作用する吸引力は、第1プランジャが吸引子に近づくことで高まる。第1プランジャがリフトすると、第1プランジャに設けられたキック部が第2プランジャに対し主弁体から離れる方向に衝撃を加える。この衝撃力と、磁化された第1プランジャの吸引により、第2プランジャがリフトする。これにより、主弁体が主弁座から離間して開弁する。
【0009】
プランジャが第1プランジャと第2プランジャに分割されているので、閉弁時の差圧荷重は第2プランジャに作用し、第1プランジャには作用していない。したがって、開弁時の流量を大きく確保するため第1プランジャのリフト量が大きく、吸引子から第1プランジャに作用する吸引力が小さい場合でも、第1プランジャを容易にリフトさせることができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る電磁弁において、前記主弁体と前記第2プランジャの間にパイロット弁室が設けられ、前記主弁体のうち前記パイロット弁室に面する部分には、パイロット弁座と、前記パイロット弁室と前記第2流路とを連通させるパイロットポートが設けられ、前記第1プランジャと前記第2プランジャの間に、前記第2プランジャを前記パイロット弁室側に付勢する圧縮ばねが設けられ、前記第2プランジャは、前記パイロット弁座に対して当接又は離間して、前記パイロットポートを開閉する。
【0011】
この電磁弁は、主弁体がパイロットポート及びパイロット弁座を有しており、第2プランジャがパイロット弁座に対して当接又は離間して、パイロットポートを開閉することで、主弁体を動作させる。具体的には、磁化された吸引子により第1プランジャが吸引され、第1プランジャによる吸引及びキック部から入力される衝撃により、第2プランジャが第1プランジャと第2プランジャの間に設けられた圧縮ばねの付勢力に抗してパイロット弁座から離間する。このとき、パイロット弁室の圧力がパイロットポートを通じて第2流路へ抜けることで低下し、主弁室の圧力がパイロット弁室よりも高まる。これにより、主弁体が主弁座から離間し、開弁する。
【0012】
吸引子による第1プランジャの吸引が停止すると、第1プランジャによる第2プランジャの吸引も停止し、圧縮ばねの付勢力により第2プランジャがパイロット弁座に当接する。これにより、パイロットポートが塞がれるので、パイロット弁室の圧力が高まり、主弁体が主弁座に当接して閉弁する。
【0013】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る電磁弁において、前記キック部は、前記第2プランジャの周囲を囲むと共に、開弁時に軸方向の先端が前記主弁体に当接するように形成され、前記キック部には、前記パイロット弁室における前記キック部の内側と外側とに連通する連通部が設けられている。
【0014】
この電磁弁では、開弁時に主弁体がキック部の先端に当接することで、それ以上の主弁体の移動が制限される。つまり、キック部の先端により主弁体の開度の上限を設定できる。また、第2プランジャの周囲を囲むキック部には連通部が設けられているので、主弁体がキック部の先端に当接しても、パイロット弁室におけるキック部の内側と外側との連通状態が維持される。つまり、パイロットポートが開かれた状態が維持されるので、パイロット弁室の圧力の上昇が抑制され、開弁状態が維持される。
【0015】
第4の態様は、第1~第3の態様の何れか1態様に係る電磁弁において、前記吸引子を磁化させる磁界を発生させる電磁コイルをさらに備える。
【0016】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る電磁弁において、流入口及び流出口を有する流路ブロックに取り付けて使用されるカートリッジ式とされ、前記流路ブロックへの取付け状態で、前記第1流路が前記流入口に連通し、第2流路が前記流出口に連通する。
【0017】
この電磁弁は、任意の流路ブロックに取り付けて使用されるカートリッジ式とされているので、汎用性が高い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プランジャに対する吸引子の吸引力が小さくても、開弁時の流量を大きく確保できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る電磁弁を示す断面図である。
図2】電磁弁の閉弁状態を示す拡大断面図である。
図3】第2プランジャがパイロット弁座から離間した状態を示す断面図である。
図4】主弁体が主弁座から離間した開弁状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る電磁弁の閉弁状態を示す拡大断面図である。
図6】第1プランジャが吸引子に吸引されて、キック部が第2プランジャに下部に当接した状態を示す断面図である。
図7】第2プランジャがパイロット弁座から離間した状態を示す断面図である。
図8】主弁体が主弁座から離間した開弁状態を示す断面図である。
図9】本発明の特徴的構成を直動式の電磁弁に適用した構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0021】
[第1実施形態]
図1図2において、本実施形態に係る電磁弁10は、例えば自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いられるパイロットキック式の電磁弁である。また、本実施形態に係る電磁弁10は、電磁コイル18が通電されていない場合に閉弁状態となる、いわゆるノーマルクローズ型の電磁弁である。また、電磁弁10は、流入口12及び流出口14を有する流路ブロック16に取り付けて使用されるカートリッジ式の電磁弁である。この電磁弁10は、弁本体22と、吸引子24と、主弁体26と、第1プランジャ31と、第2プランジャ32と、キック部34と、を有している。電磁弁10は、吸引子24を磁化させる磁界を発生させる電磁コイル18を更に備えていてもよい。
【0022】
(弁本体)
弁本体22は、流路ブロック16に挿入可能な筒状に構成されており、軸方向に貫通孔22Aが形成されている。弁本体22には、第1流路51及び第2流路52が形成されている。第2流路52は、貫通孔22Aの一端(図1の下端)に相当する。第1流路51は、弁本体22の外周に開口し、貫通孔22Aに連通している。つまり、第1流路51と第2流路52とは互いに連通している。弁本体22において、第1流路51と第2流路52の間には、主弁座42を有する主弁室40が設けられている。
【0023】
第1流路51は、流路ブロック16への取付け状態で流入口12に連通する流路であり、周方向に均等に例えば4箇所形成されている。これは、電磁弁10を流路ブロック16に螺合させる構成の場合でも、第1流路51の少なくとも何れかが流路ブロック16の流入口12の位置に配置され、流入口12から第1流路51に流体が流入するようにするためである。弁本体22の外周には、例えば2本のOリング28が取り付けられている。第1流路51は、弁本体22の軸方向において、2本のOリング28の間に形成されている。
【0024】
第2流路52は、貫通孔22Aにプランジャ(第1プランジャ31及び第2プランジャ32)と反対側の端部(図1では下端部)に位置する開口部であり、電磁弁10が流路ブロック16に挿入されて取り付けられた状態で、流路ブロック16の流出口14に連通するようになっている。
【0025】
弁本体22の外周には、流路ブロック16に螺合する雄ねじ部22Bが設けられている。弁本体22におけるプランジャ(第1プランジャ31及び第2プランジャ32)側の端部(図1では上端部)の内周には、後述するパイプホルダ30が螺合する雌ねじ部22Dが設けられている。
【0026】
(吸引子)
吸引子24は、主弁室40の軸方向(弁本体22の軸方向)における第2流路52と反対側に取り付けられている。具体的には、吸引子24は、磁性ステンレス等の軟磁性体であり、パイプ38の一端側(図1では上端側)に例えば嵌合している。パイプ38の他端側(図1では下端側)は、パイプホルダ30に支持されている。
【0027】
(パイプホルダ)
【0028】
パイプホルダ30は、パイプ38を支持する部材であり、弁本体22の貫通孔22Aにおける主弁座42と反対側に設けられている。パイプホルダ30の中心軸は、貫通孔22Aの中心軸と一致している。パイプホルダ30の外周には、弁本体22の雌ねじ部22Dと螺合する雄ねじ部30Dが設けられている。雄ねじ部22Dと雌ねじ部30Dを螺合させることで、パイプホルダ30が弁本体22に取り付けられている。また、パイプホルダ30と弁本体22の間には、Oリング64が取り付けられている。このOリング64により、パイプホルダ30と弁本体22の間がシールされている。
【0029】
主弁体26と第2プランジャ32の間の、例えば弁本体22、パイプホルダ30及び主弁体26で囲まれた部分には、主弁室40と連通し、パイロット弁座62を有するパイロット弁室60が設けられている。パイロット弁室60では、第2プランジャ32が軸方向に移動可能に配置される。
【0030】
(電磁コイル)
電磁コイル18は、巻き線を有して構成され、ハウジング48の上板48Uと下板48Lとの間に挟み込まれるように配置されている。また、電磁コイル18は、巻線に電流が流れた場合に吸引子24、第1プランジャ31及び第2プランジャ32等を磁化させる。ハウジング48と電磁コイル18にはパイプ38が通されており、ハウジング48の上板48Uが、例えばねじ44により吸引子24に締結されている。これにより、ハウジング48と電磁コイル18がパイプ38に固定されている。電磁コイル18には、電力供給のためのコネクタ46が設けられている。
【0031】
(主弁体)
主弁体26は、パイロット式の弁体であり、主弁座42と共に弁70を構成する。この主弁体26は、主弁室40に設けられ、軸方向に移動して主弁座42に当接又は離間する。具体的には、主弁体26は、弁本体22の内側に配置され、弁本体22の内壁に対し軸方向に摺動可能に配置されている。主弁体26の側壁には、主弁体26と弁本体22の内壁との間に生じる隙間の面積を調整するピストンリング54が取り付けられている。主弁体26には、軸方向の一方側と他方側に通じる通路26A(均圧孔)が形成されている。通路26Aは、パイロット弁室60と主弁室40とを連通させている。
【0032】
主弁体26のうちパイロット弁室60に面する部分には、パイロット弁座62と、パイロットポート26Bが設けられている。パイロットポート26Bは、パイロット弁座62の径方向内側でパイロット弁室60と第2流路52とを連通させる。
【0033】
主弁体26のうち、主弁座42と軸方向に対向する部分には、弁パッキン56が取り付けられている。弁パッキン56が主弁座42に密着したときに、弁70が閉じられる。また、主弁体26と弁本体22の間(図1において主弁体26の下側)には、圧縮ばね58が設けられている。圧縮ばね58は、主弁体26を主弁座42から離れる方向(図1の上側)に付勢しており、開弁時に主弁体26が移動し易くしている。
【0034】
(第1プランジャ)
第1プランジャ31は、磁化された吸引子24に吸引される軟磁性体の部材である。具体的には、第1プランジャ31は、パイプ38内において軸方向に摺動可能に配置されている。吸引子24と第1プランジャ31の間には、圧縮ばね50が設けられている。圧縮ばね50は、第1プランジャ31を第2プランジャ32側(図1の下側)に付勢している。第1プランジャ31と吸引子24は、初期吸引力を高めるために、互いに対向する例えばテーパ面をそれぞれ有している。
【0035】
(第2プランジャ)
第2プランジャ32は、磁化された第1プランジャ31に吸引され、主弁体26を動作させるための軟磁性体の部材である。第2プランジャ32は、パイロット弁座62に対して当接又は離間して、パイロットポート26Bを開閉する。つまり、第2プランジャ32とパイロット弁座62を用いてパイロット弁80が構成されている。
【0036】
第2プランジャ32の主弁体26側の端部(図1では下端部)には、パイロット弁パッキン36が取り付けられている。パイロット弁パッキン36がパイロット弁座62に密着したときに、パイロット弁80が閉じられる。
【0037】
第1プランジャ31と第2プランジャ32は、初期吸引力を高めるために、互いに対向する例えばテーパ面をそれぞれ有している。第1プランジャ31と第2プランジャ32の間には、圧縮ばね66が設けられている。圧縮ばね66は、第2プランジャ32を第1プランジャ31から離す方向(図1の下側)に付勢している。
【0038】
(キック部)
キック部34は、第1プランジャ31に設けられ、第1プランジャ31が吸引子24に吸引されたときに第2プランジャ32に対し主弁体26から離れる方向に衝撃を加える部位である。キック部34は、第2プランジャ32の周囲を囲む例えば筒状部34Aと、引掛け部34Bとを有している。軸方向における筒状部34Aの一端(図1では上端)は、第1プランジャ31に固定されている。筒状部34Aの内径は、第2プランジャ32の外径よりもわずかに大きい。これにより、第2プランジャ32が筒状部34Aの内側で軸方向に移動可能となっている。
【0039】
引掛け部34Bは、筒状部34Aの他端(図1では下端)に設けられ、径方向内側に張り出した部分である。引掛け部34Bは、例えば環状に形成され、主弁体26側と第2プランジャ32側が連通している。引掛け部34Bの内径は、パイロット弁座62の外径よりも大きく、筒状部34Aの内径よりも小さい。これにより、閉弁時には第2プランジャ32がパイロット弁座62に当接することができる。また、第1プランジャ31が吸引子24に吸引されたときに、キック部34における鈎状の下端34Aにより第2プランジャ32を引っ掛け、第2プランジャ32に対し第1プランジャ31への衝撃を付与できる。
【0040】
図2において、閉弁時と開弁時の間での第1プランジャ31の最大の軸方向移動量をリフト量L1とし、主弁体26の最大の軸方向移動量をリフト量L2とする。リフト量L1は、吸引子24と第1プランジャ31の間の軸方向の最小隙間に相当する。また、リフト量L2は、主弁体26とパイプホルダ30との間の軸方向の最小隙間に相当する。本実施形態では、L1>L2とされている。つまり、図1図2に示される閉弁時にキック部34が主弁体26に当接していたとしても、図4に示される開弁時に、主弁体26はパイプホルダ30に当接し、キック部34に当接する位置まではリフトしないようになっている。
【0041】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る電磁弁10は、いわゆるノーマルクローズ型の電磁弁である。図3に示されるように、電磁コイル18に通電して吸引子24を磁化すると、磁化された吸引子24に第1プランジャ31が吸引されてリフトする。このとき、第1プランジャ31は、圧縮ばね50の付勢力に抗してリフトする。第1プランジャ31に作用する吸引力は、第1プランジャ31が吸引子24に近づくことで高まる。第1プランジャ31がリフトすると、第1プランジャ31に設けられたキック部34が第2プランジャ32に対し主弁体26から離れる方向に衝撃を加える。この衝撃力と、磁化された第1プランジャ31の吸引により、第2プランジャ32が圧縮ばね66の付勢力に抗してリフトし、パイロット弁座62から離間する。
【0042】
プランジャが第1プランジャ31と第2プランジャ32に分割されているので、閉弁時の差圧荷重は第2プランジャ32に作用し、第1プランジャ31には作用していない。したがって、開弁時の流量を大きく確保するため第1プランジャ31のリフト量が大きく、吸引子24から第1プランジャ31に作用する吸引力が小さい場合でも、第1プランジャ31を容易にリフトさせることができる。
【0043】
本実施形態では、主弁体26がパイロットポート26B及びパイロット弁座62を有しており、第2プランジャ32がパイロット弁座62に対して当接又は離間して、パイロットポート26Bを開閉することで、主弁体26を動作させる。具体的には、磁化された吸引子24により第1プランジャ31が吸引され、第1プランジャ31による吸引及びキック部34から入力される衝撃により、第2プランジャ32が第1プランジャ31と第2プランジャ32の間に設けられた圧縮ばね66の付勢力に抗してパイロット弁座62から離間する。このとき、パイロット弁室60の圧力がパイロットポート26Bを通じて第2流路52へ抜けることで低下し、主弁室40の圧力がパイロット弁室60よりも高まる。これにより、主弁体26が主弁座42から離間し、開弁する。このとき、圧縮ばね58の付勢力により、主弁体26のリフトが促進される。
【0044】
図2において、リフト量L1,L2について、L1>L2とされているため、主弁体26のリフト量は、パイプホルダ30に当接したところでリフト量L2に達する。つまり、主弁体26はキック部34に当接する位置まではリフトせず、主弁体26とキック部34の間が空いている。また、第2プランジャ32が第1プランジャ31に吸引されてリフトすることから、第2プランジャ32がパイロット弁座62から離れ、パイロットポート26Bが開いた状態が維持される。これにより、主弁室40からパイロット弁室60に流入した流体はパイロットポート26Bから第2流路52へ抜けて行くので、パイロット弁室60の圧力の上昇が抑制され、開弁状態が維持される。
【0045】
電磁コイル18への通電を停止して、吸引子24による第1プランジャ31の吸引が停止すると、圧縮ばね50の付勢力により第1プランジャ31が吸引子24から離れる。また、第1プランジャ31による第2プランジャ32の吸引も停止し、圧縮ばね66の付勢力により第2プランジャ32が主弁座42に当接する。これにより、パイロットポート26Bが塞がれるので、パイロット弁室60の圧力が増加すると共に均圧化されて、主弁体26が圧縮ばね58の付勢力に抗して主弁座42に当接して閉弁する。
【0046】
また、電磁弁10は、任意の流路ブロック16(図1)に取り付けて使用されるカートリッジ式とされているので、汎用性が高い。
【0047】
このように、本実施形態によれば、第1プランジャ31に対する吸引子24の吸引力が小さくても、開弁時の流量を大きく確保できる。
【0048】
[第2実施形態]
図5から図8において、本実施形態に係る電磁弁20では、キック部34に、パイロット弁室60におけるキック部34の内側と外側とに連通する連通部34Cが設けられている。この連通部34Cは、例えばキック部34の筒状部34Aに形成された孔である。なお、連通部34Cはこのような孔に限られず、キック部34の引掛け部34Bに設けられた溝や凹凸形状であってもよい。
【0049】
図6図7において、第1プランジャ31及び第2プランジャ32がリフトするまでの作用は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、図5に示される第1プランジャのリフト量L1と主弁体26のリフト量L2について、L1≦L2とされている。この場合、キック部34は、開弁時に引掛け部34Bの軸方向の先端(キック部34の下面)が主弁体26に当接する。実際には、主弁体26が移動して引掛け部34Bの下面に当接する。図8では、L1<L2の場合が示されている。この場合、主弁体26は引掛け部34Bの下面に当接するが、パイプホルダ30には当接しない。なお、L1=L2である場合には、主弁体26は引掛け部34Bの下面に当接すると共にパイプホルダ30にも当接する(図示せず)。
【0050】
本実施形態では、第1実施形態よりも、図5のリフト量L1を小さくすることが可能となり、吸引子24に発生する吸引力が大きくなる。また、開弁時に主弁体26がキック部34の先端(引掛け部34B)に当接することで、それ以上の主弁体26の移動が制限される。つまり、キック部34の先端により主弁体26の開度の上限を設定できる。また、第2プランジャ32の周囲を囲むキック部34の筒状部34Aには連通部34Cが設けられているので、主弁体26がキック部34の先端に当接しても、パイロット弁室60におけるキック部34の内側と外側との連通状態が維持される。つまり、パイロットポート26Bが開かれた状態が維持されるので、パイロット弁室60の圧力の上昇が抑制され、開弁状態が維持される。
【0051】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0053】
電磁弁10,20がパイロットキック式の電磁弁であるものとしたが、これに限られず、直動式キック動作により主弁体26を動作させる直動式であってもよい。弁本体22は、カートリッジ式に限られず、継手型の電磁弁にも適用可能である。
【0054】
本発明の特徴的構成を直動式の電磁弁100に適用した構成例を図9に示す。上述の実施形態と同様の作用効果の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。この電磁弁100は、パイロット式の弁体を備えておらず、第2プランジャ32にはパッキン90が取り付けられている。このパッキン90が上述の実施形態の主弁体26に対応する。すなわち、直動式の電磁弁100では、第2プランジャ32に取り付けられたパッキン90で主弁座42を開閉する。具体的には、パッキン90が主弁座42に当接することで弁70が閉じ、パッキン90が主弁座42から離れることで弁70が開く。開弁後、磁化された第2プランジャ32が第1プランジャ31に吸着し、開口面積(リフト)を確保する。
【符号の説明】
【0055】
10 電磁弁
12 流入口
14 流出口
16 流路ブロック
18 電磁コイル
20 電磁弁
22 弁本体
24 吸引子
26 主弁体
26B パイロットポート
31 第1プランジャ
32 第2プランジャ
34 キック部
34C 連通部
40 主弁室
42 主弁座
51 第1流路
52 第2流路
60 パイロット弁室
62 パイロット弁座
100 電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9