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2025-25649アンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025649
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】アンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20250214BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130628
(22)【出願日】2023-08-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度 総務省「電波資源拡大のための研究開発 ~100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発~」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】桑原 俊秀
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB05
5J021AB06
5J021JA07
5J045AA01
5J045AB05
5J045DA11
5J045HA03
5J045HA04
(57)【要約】
【課題】小型化の実現が可能なアンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置を提供すること。
【解決手段】本開示にかかるアンテナは、半導体基板と、半導体基板の主面上に形成された第1配線層と、第1配線層に積層された絶縁膜からなる絶縁層と、絶縁層に積層された第2配線層と、を備え、半導体基板の主面のうち第1領域の一部を覆うように、第1配線層に形成された第1グランドパタンと、上面視して、第1グランドパタンの外周辺の一部と外周辺の一部が重なるように、且つ、第1グランドパタンと重なる部分が集積回路から延在する第1信号配線に電気的に接続されるように、第2配線層に形成された第2グランドパタンと、を有し、第1グランドパタンと第2グランドパタンとは、上面視したときの第1グランドパタンと第2グランドパタンとの重複領域から、半導体基板の端部領域に進むほど、乖離するように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の主面上に形成された第1配線層と、
前記第1配線層に積層された絶縁膜からなる絶縁層と、
前記絶縁層に積層された第2配線層と、
を少なくとも備えたアンテナであって、
前記半導体基板の主面のうち第1領域の一部を覆うように、前記第1配線層に形成された第1グランドパタンと、
上面視して、前記第1グランドパタンの外周辺の一部と外周辺の一部が重なるように、且つ、前記第1グランドパタンと重なる部分が集積回路から延在する第1信号配線に電気的に接続されるように、前記第2配線層に形成された第2グランドパタンと、
を有し、
前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとは、上面視したときの前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとの重複領域から、前記半導体基板の端部領域に進むほど、乖離するように形成されている、
アンテナ。
【請求項2】
前記半導体基板の主面には、前記集積回路の形成領域と前記第1領域との間に第2領域がさらに設けられ、
前記第2領域を覆うように、前記第1配線層に形成された第3グランドパタンと、
前記第1信号配線と、上面視して前記第1グランドパタンと重なる前記第2グランドパタンの部分と、を接続するように、前記第2配線層に形成された第2信号配線と、
をさらに備えた、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域との境界部分において、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとを電気的に接続するビアをさらに備えた、
請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
上面視して、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとの間には空隙が形成されている、
請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記空隙の、前記第2信号配線と前記第2グランドパタンとの接続点から、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとの接続点まで、の長さが、無線信号の1/4波長である、
請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
アレイ状に配置された複数のアンテナ素子を備え、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれは、請求項1に記載のアンテナである、
アレイアンテナ。
【請求項7】
請求項1に記載のアンテナと、
前記半導体基板上に形成された集積回路と、
を備えた、半導体チップ。
【請求項8】
プリント基板と、
プリント基板上に形成されたグランド層と、
前記グランド層において、前記プリント基板の端部からはみ出すようにして設けられた、請求項7に記載の半導体チップと、
を備えた無線装置。
【請求項9】
請求項6に記載のアレイアンテナと、
前記半導体基板上に形成された集積回路と、
を備えた、半導体チップ。
【請求項10】
プリント基板と、
プリント基板上に形成されたグランド層と、
前記グランド層において、前記プリント基板の端部からはみ出すようにして設けられた、請求項9に記載の半導体チップと、
を備えた無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やサブテラヘルツ波を用いて大容量通信を行うのに用いられるアンテナは、高周波通信の実現のため、構造上の大きさが小さくなるように設計される必要があるが、アンテナの小型化には限界があり、実装が困難になりつつある。また、チップから信号線路を通じてアンテナに給電される際の電力損失も無線信号の周波数が高くなるにつれて大きくなる。このような問題に対する解決策は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、半導体チップ上にアンテナが形成されている。それにより、アンテナのさらなる小型化が可能になり、電力損失の低減も可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/078061号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたアンテナの構造に限られず、引き続き、ミリ波やサブテラヘルツ波を用いて大容量通信を行うのに用いられるアンテナの小型化が求められている。
【0006】
本開示の目的の一つは、上述した課題を解決するアンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様にかかるアンテナは、半導体基板と、前記半導体基板の主面上に形成された第1配線層と、前記第1配線層に積層された絶縁膜からなる絶縁層と、前記絶縁層に積層された第2配線層と、を少なくとも備えたアンテナであって、前記半導体基板の主面のうち第1領域の一部を覆うように、前記第1配線層に形成された第1グランドパタンと、上面視して、前記第1グランドパタンの外周辺の一部と外周辺の一部が重なるように、且つ、前記第1グランドパタンと重なる部分が集積回路から延在する第1信号配線に電気的に接続されるように、前記第2配線層に形成された第2グランドパタンと、を有し、前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとは、上面視したときの前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとの重複領域から、前記半導体基板の端部領域に進むほど、乖離するように形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化の実現が可能なアンテナ、アレイアンテナ、半導体チップ、及び、無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示にかかるアンテナが搭載された半導体チップの構成例を示す上面図である。
図2】本開示にかかるアンテナのうちマイクロストリップ線路が形成される領域のより詳細な構成例を示す上面図及び断面図である。
図3】本開示にかかるアンテナのうちスロット線路が形成される領域のより詳細な構成例を示す上面図及び断面図である。
図4】本開示にかかるアンテナの変形例が搭載された半導体チップの構成例を示す上面図である。
図5】本開示にかかる半導体チップが適用された無線装置の構成例を示す上面図である。
図6】本開示にかかる半導体チップが適用された無線装置の構成例を示す側面図である。
図7】本開示にかかるアンテナの電界強度の3D解析結果を示す図である。
図8】本開示にかかるアンテナの、プリント基板に取り付けられた状態での電界強度の解析結果を示す図である。
図9】本開示にかかるアンテナの、プリント基板に取り付けられていない状態での電界強度の解析結果を示す図である。
図10】本開示にかかるアンテナが搭載された半導体チップの構成例を示す上面図である。
図11】本開示にかかる半導体チップが適用された無線装置の構成例を示す上面図である。
図12】本開示にかかるアンテナの電界強度の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本開示にかかるアンテナ10が搭載された半導体チップ1の構成例を示す上面図である。図2は、アンテナ10のうちマイクロストリップ線路が形成される領域1aのより詳細な構成例を示す上面図及び断面図である。図2の上図は、領域1aの上面図を示し、図2の下図は、領域1aの上面図のII-II部分の断面図を示している。なお、図2の上面図では、絶縁層M2に形成された絶縁膜103aは省略されている。図3は、アンテナ10のうちスロット線路が形成される領域1bのより詳細な構成例を示す上面図及び断面図である。図3の上図は、領域1bの上面図を示し、図3の下図は、領域1bの上面図のIII-III部分の断面図を示している。なお、図3の上面図では、絶縁層M2に形成された絶縁膜103bは省略されている。
【0011】
図1図3に示すように、半導体チップ1は、半導体基板101と、半導体基板101の主面上に形成された第1配線層M1と、第1配線層M1に積層された絶縁層M2と、絶縁層M2に積層された第2配線層M3と、を少なくとも備える。本実施の形態では、半導体基板101の主面上に3個の層M1~M3が設けられた場合を例に説明するが、それには限定されず、4個以上の層が設けられてもよい。
【0012】
半導体基板101は、シリコンやガリウムヒ素などの半導体物質によって形成されている。第1配線層M1は、グランドパタンが形成される層である。グランドパタンとは、グランドに接続された所定の形状を有する銅などの金属膜のことである。絶縁層M2は、絶縁膜が形成される層である。第2配線層M3は、主に信号配線が形成される層である。第2配線層M3には、後述するスロット線路を形成するグランドパタンも形成される。
【0013】
半導体基板101の主面には、集積回路90が配置される領域1cと、マイクロストリップ線路が形成される領域(第2領域)1aと、スロット線路が形成される領域(第1領域)1bと、が設けられている。アンテナ10は、領域1aに形成されるマイクロストリップ線路と、領域1bに形成されるスロット線路と、によって構成されている。
【0014】
続いて、図1及び図2を用いて、マイクロストリップ線路が形成される領域1aの構造について説明する。領域1aにおいて、第1配線層M1には、半導体基板101の主面のうち領域1aの主面の全体を覆うようにして、グランドパタン(第3グランドパタン)102aが形成されている。絶縁層M2には、グランドパタン102aを覆うようにして絶縁膜103aが形成されている。第2配線層M3には、集積回路90が配置される領域1cから、スロット線路が形成される領域1b、にかけて延在する信号配線104aが形成されている。領域1aに形成された信号配線104aは、集積回路90の信号配線SL1から受け取った無線信号を、領域1bに形成されたスロット線路に伝送する、マイクロストリップ線路としての役割を果たす。
【0015】
次に、図1及び図3を用いて、スロット線路が形成される領域1bの構造について説明する。領域1bにおいて、第1配線層M1には、半導体基板101の主面のうち領域1bの主面の一部を覆うようにして、グランドパタン(第1グランドパタン)102bが形成されている。絶縁層M2には、グランドパタン102bを含む領域1bの主面の全体を覆うようにして絶縁膜103bが形成されている。第2配線層M3には、上面視(z軸方向に見て)、グランドパタン102bの外周辺の一部と外周辺の一部とが重なるように、且つ、グランドパタン102bと重なる部分が領域1aの信号配線104aと電気的に接続されるように、グランドパタン(第2グランドパタン)104bが形成されている。グランドパタン102bとグランドパタン104bとの間に形成された空隙SL2は、領域1aの信号配線104aから受け取った無線信号を伝送するスロット線路としての役割を果たす。
【0016】
また、図1を参照すると、領域1aの第1配線層M1に形成されたグランドパタン102aと、領域1bの第2配線層M3に形成されたグランドパタン104bとは、領域1aと領域1bとの境界線P2付近において、ビア112によって電気的に接続されている。また、上面視して、信号配線104aとグランドパタン104bとの接続点X1と、グランドパタン102aとグランドパタン104bとの接続点(ビア112の形成領域)と、の間には、空隙111が設けられている。この空隙111のx軸方向の長さは、例えば無線信号の1/4波長である。
【0017】
ここで、グランドパタン102bとグランドパタン104bとは、上面視したときのグランドパタン102bとグランドパタン104bとの重複部分から、半導体基板101のチップ端部E1の領域に進むほど、乖離するように形成されている。換言すると、グランドパタン102bとグランドパタン104bとは、半導体チップ1の中央部から端部領域に進むほど、空隙SL2が大きくなるように(グランドパタン102b,104bの外周辺同士のx軸方向の間隔L1が長くなるように)形成されている。それにより、スロット線路に給電が行われると、空隙SL2に電界が生じ、半導体チップの垂直方向(z軸方向)に磁界が生じるため、当該スロット線路はアンテナとして機能することができる。つまり、領域1bに形成されたスロット線路は、領域1aに形成された信号配線104aから受け取った無線信号を伝送する伝送線路として機能するだけでなく、当該無線信号をチップ端部E1から外部空間に放射するアンテナとしても機能する。
【0018】
このように、本開示にかかるアンテナ10は、半導体チップ1上に、スロット線路の空隙部分がチップ中央部からチップ端部に至るまでに徐々に大きくなるように形成されている。それにより、アンテナ10は、ミリ波やサブテラヘルツ波を用いた大容量通信が可能な小型の無線装置を実現することができる。さらに、アンテナ10は、半導体チップ1の外部に設けられる場合と比較して、伝送路を短くすることができるため、電力損失を低減することができ、且つ、部品点数を削減することができる。
【0019】
本実施の形態では、アンテナ10が、半導体チップ1の領域1aに形成されたマイクロストリップ線路と、半導体チップ1の領域1bに形成されたスロット線路と、によって構成された場合を例に説明したが、それには限定されない。アンテナ10は、集積回路90からの無線信号を外部空間に放射することが可能であるならば、例えば、図4に示すように、半導体チップ1の領域1bに形成されたスロット線路のみによって構成されていてもよい。
【0020】
(半導体チップ1が適用された無線装置100の例)
図5は、半導体チップ1が適用された無線装置100の構成例を示す上面図である。また、図6は、半導体チップ1が適用された無線装置100の構成例を示す側面図である。
【0021】
半導体チップ1が誘電体によって構成されているため、半導体チップ1に形成されたアンテナ10によって生成される電磁界のパタンは、チップの鉛直上方向(z軸プラス方向)と鉛直下方向(z軸マイナス方向)とで非対称になりやすい。半導体基板101の厚みが大きい場合にも、半導体チップ1に形成されたアンテナ10によって生成される電磁界のパタンは、チップの鉛直上方向と鉛直下方向とで非対称になりやすい。半導体基板101の厚みや動作周波数にも依存するが、基本的には誘電率の高い半導体基板101側(チップの下方向)に電磁波が偏りやすいため、アンテナ10からの電磁波の放射方向はチップ端部E1の前方(y軸プラス方向)に向かない可能性がある。
【0022】
そこで、無線装置100では、半導体チップ1が、プリント基板30に形成されたグランド層40上に設けられている。それにより、グランド層40が電磁波の反射材としての役割を果たすため、半導体チップ1上に設けられたアンテナ10は、所望の向きに無線信号を放射することができる。
【0023】
さらに、無線装置100では、半導体チップ1が、プリント基板30の端部からはみ出すようにして配置されている。半導体チップ1のはみ出し量を調整することによって、アンテナ10によって生成される電磁界のパタンを所望のパタンに調整することができる。
【0024】
例えば、半導体基板101の厚みが大きいほど、半導体基板101側(チップの鉛直下方向)に電磁波が偏りやすいため、はみ出し量を小さくすることが好ましい。それに対し、半導体基板101の厚みが小さいほど、半導体基板101側への電磁波の偏りが小さくなるため、はみ出し量を大きくすることが好ましい。
【0025】
また、例えば、動作周波数が大きいほど、電磁波の偏りの影響を受けやすくなるため、はみ出し量を小さくすることが好ましい。それに対し、動作周波数が小さいほど、電磁波の偏りの影響を受けにくくなるため、はみ出し量を大きくすることが好ましい。
【0026】
図7は、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ1のアンテナ10の電界強度の3D解析結果を示す図である。図8は、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ1のアンテナ10の電界強度の解析結果をチップ上面及びチップ側面から見た図である。また、図9は、プリント基板30に取り付けられていない半導体チップ1のアンテナ10の電界強度の解析結果をチップ上面及びチップ側面から見た図である。図7図9の例では、設計周波数が150GHzであり、半導体チップ1の半導体基板101の厚みが200umである。図8及び図9の実線部分はアンテナ10から放射される電界の強度を表している。また、図8及び図9の中心から外周にかけて記された目盛りは、アンテナゲイン(利得)を表している。
【0027】
まず、図9に示すように、プリント基板30に取り付けられていない半導体チップ1のアンテナ10によって生成される電磁界のパタンは、チップ端部E1の前方(y軸プラス方向)において、チップの鉛直上方向(z軸プラス方向)と鉛直下方向(z軸マイナス方向)とで対称性を有していない。つまり、プリント基板30に取り付けられていない半導体チップ1のアンテナ10は、所望の向きに無線信号を放射することができない可能性がある。但し、半導体基板101の厚みが小さければ、半導体基板101側への電磁波の偏りが小さくなるため、プリント基板30に取り付けられていない半導体チップ1のアンテナ10でも、所望の向きに無線信号を放射することができる。
【0028】
それに対し、図7図8に示すように、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ1のアンテナ10によって生成される電磁界のパタンは、チップ端部E1の前方において、チップの鉛直上方向と鉛直下方向とで対称性を有している。つまり、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ1のアンテナ10は、所望の向きに無線信号を放射することができる。
【0029】
<実施の形態2>
図10は、本開示にかかるアンテナ(アレイアンテナ)20が搭載された半導体チップ2の構成例を示す上面図である。
【0030】
図10に示すように、半導体チップ2は、アンテナ20を備える。アンテナ20は、アンテナ10と同等の構造の複数のアンテナ素子10aによって構成されている。図10の例では、アンテナ20は、4個のアンテナ素子10aによって構成されている。4個のアンテナ素子10aは、一つの半導体基板上に、電磁波の放射方向が同じになるようにアレイ状に配置されている。
【0031】
また、あるアンテナ素子10aの第1配線層M1に形成されたグランドパタンと、それに隣接する別のアンテナ素子10aの第1配線層M1に形成されたグランドパタンとは、連続している(電気的に接続されている)。また、あるアンテナ素子10aの第2配線層M3に形成されたグランドパタンと、それに隣接する別のアンテナ素子10aの第1配線層M1に形成されたグランドパタンとは、ビア等によって電気的に接続されている。
【0032】
このように、本開示にかかるアンテナ20は、アンテナ10と同等の構造の複数のアンテナ素子10aをアレイ状に備えることにより、チップ端部の前方(y軸プラス方向)に、より指向性の高い無線信号を放射することができる。
【0033】
本実施の形態では、半導体チップ2が、アンテナ10と同等の構造の4個のアンテナ素子10aをアレイ状に備えた場合を例に説明したが、それには限定されない。半導体チップ2は、アンテナ10と同等の構造の2個以上のアンテナ素子10aをアレイ状に備えていればよい。
【0034】
また、本実施の形態では、複数のアンテナ素子10aが一つの半導体基板(チップ)上に設けられた場合を例に説明したが、それには限定されない。複数のアンテナ素子10aは、複数の半導体基板上に分離して設けられていてもよい。したがって、例えば、4個の半導体チップ1がアレイ状に設けられていてもよい。
【0035】
(半導体チップ2が適用された無線装置200の例)
図11は、半導体チップ2が適用された無線装置200の構成例を示す上面図である。図11にしめすように、無線装置200では、半導体チップ2が、プリント基板30に形成されたグランド層40上に設けられている。それにより、グランド層40が電磁波の反射材としての役割を果たすため、半導体チップ2上に設けられたアンテナ20は、所望の向きに無線信号を放射することができる。
【0036】
さらに、無線装置200では、半導体チップ2が、プリント基板30の端部からはみ出すようにして配置されている。半導体チップ2のはみ出し量を調整することによって、アンテナ20によって生成される電磁界のパタンを所望のパタンに調整することができる。
【0037】
図12は、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ1のアンテナ10の電界強度の解析結果をチップ上面から見た図である。図12に示すように、プリント基板30に取り付けられた半導体チップ2のアンテナ20によって生成される電磁界のパタンは、4個のアンテナ素子による空間合成によって、チップ端部の前方において、より指向性が強くなっている。
【0038】
以上のように、本開示にかかるアンテナは、半導体チップ上に、スロット線路の空隙部分がチップ中央部からチップ端部に至るまでに徐々に大きくなるように形成されている。それにより、本開示にかかるアンテナは、ミリ波やサブテラヘルツ波を用いた大容量通信が可能な小型の無線装置を実現することができる。さらに、本開示にかかるアンテナは、半導体チップの外部に設けられる場合と比較して、伝送路を短くすることができるため、電力損失を低減することができ、且つ、部品点数を削減することができる。
【0039】
また、本開示かかるアンテナが搭載された半導体チップは、プリント基板のグランド層に、当該プリント基板の端部からはみ出すようにして設けられることにより、アンテナの電磁界のパタンを所望のパタンに調整することができる。
【0040】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0041】
各図面は、1又はそれ以上の実施形態を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴又はステップは、例えば明示的に図示または説明されていない実施形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴又はステップと組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴またはステップのすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴またはステップが省略されてもよい。いずれかの図に記載されたステップの順序は、適宜変更されてもよい。
【0042】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0043】
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板の主面上に形成された第1配線層と、
前記第1配線層に積層された絶縁膜からなる絶縁層と、
前記絶縁層に積層された第2配線層と、
を少なくとも備えたアンテナであって、
前記半導体基板の主面のうち第1領域の一部を覆うように、前記第1配線層に形成された第1グランドパタンと、
上面視して、前記第1グランドパタンの外周辺の一部と外周辺の一部が重なるように、且つ、前記第1グランドパタンと重なる部分が集積回路から延在する第1信号配線に電気的に接続されるように、前記第2配線層に形成された第2グランドパタンと、
を有し、
前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとは、上面視したときの前記第1グランドパタンと前記第2グランドパタンとの重複領域から、前記半導体基板の端部領域に進むほど、乖離するように形成されている、
アンテナ。
【0044】
(付記2)
前記半導体基板の主面には、前記集積回路の形成領域と前記第1領域との間に第2領域がさらに設けられ、
前記第2領域を覆うように、前記第1配線層に形成された第3グランドパタンと、
前記第1信号配線と、上面視して前記第1グランドパタンと重なる前記第2グランドパタンの部分と、を接続するように、前記第2配線層に形成された第2信号配線と、
をさらに備えた、
付記1に記載のアンテナ。
【0045】
(付記3)
前記第1領域と前記第2領域との境界部分において、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとを電気的に接続するビアをさらに備えた、
付記2に記載のアンテナ。
【0046】
(付記4)
上面視して、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとの間には空隙が形成されている、
付記3に記載のアンテナ。
【0047】
(付記5)
前記空隙の、前記第2信号配線と前記第2グランドパタンとの接続点から、前記第2グランドパタンと前記第3グランドパタンとの接続点まで、の長さが、無線信号の1/4波長である、
付記4に記載のアンテナ。
【0048】
(付記6)
アレイ状に配置された複数のアンテナ素子を備え、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれは、付記1に記載のアンテナである、
アレイアンテナ。
【0049】
(付記7)
付記1に記載のアンテナと、
前記半導体基板上に形成された集積回路と、
を備えた、半導体チップ。
【0050】
(付記8)
プリント基板と、
プリント基板上に形成されたグランド層と、
前記グランド層において、前記プリント基板の端部からはみ出すようにして設けられた、付記7に記載の半導体チップと、
を備えた無線装置。
【0051】
(付記9)
付記6に記載のアレイアンテナと、
前記半導体基板上に形成された集積回路と、
を備えた、半導体チップ。
【0052】
(付記10)
プリント基板と、
プリント基板上に形成されたグランド層と、
前記グランド層において、前記プリント基板の端部からはみ出すようにして設けられた、付記9に記載の半導体チップと、
を備えた無線装置。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体チップ
1a マイクロストリップ線路の形成領域
1b スロット線路の形成領域
1c 集積回路の形成領域
2 半導体チップ
10 アンテナ
10a アンテナ素子
20 アンテナ
30 プリント基板
40 グランド層
90 集積回路
100 無線装置
101 半導体基板
102a グランドパタン
102b グランドパタン
103a 絶縁膜
103b 絶縁膜
104a 信号配線
104b グランドパタン
111 空隙
112 ビア
200 無線装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12