(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025658
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】脈波測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20250214BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250214BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/02 310V
A61B5/11 100
A01K29/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130651
(22)【出願日】2023-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年6月24日 第65回脈波解析研究会講演予稿集6ページ 2023年6月24日 第65回脈波解析研究会 一般演題口頭発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】723003878
【氏名又は名称】石黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】石黒 隆
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA20
4C017AB04
4C017AC20
4C017BC11
4C017EE01
4C017FF15
4C017FF30
4C038VA04
4C038VB40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】これまで、測定が困難であった、検査に協力的でない、ペットなどの動物の動脈硬化を、非侵襲で容易に診断することを可能になる。
【解決手段】ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等を、心弾図検出用のセンサを装着したハンモックに下げ、脈波検出用センサと組合せて、大動脈を含む脈波伝搬速度を、容易に、しかも非侵襲で測定する手段を提供するものである。本発明によれば、ペットの高齢化が進む中で、増加の傾向がある、心血管疾患を早期に見つけることができるようになり、大切なペットの動脈硬化症の早期発見という、動物病院の顧客のニーズに応えることができるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部が触れる付近に、振動を検出できる、第1のセンサを組み込んだ、ハンモックに被検体を下げることで、心弾図を検出する、心弾図測定方法。
【請求項2】
請求項1の心弾図測定方法に、脈波検出用の第2の振動検出センサを追加し、第1のセンサの心弾図との時間差を測定。大動脈弁と脈波発生点の血管長を、求めた時間差で割ることで、脈波伝播速度を求める、脈波伝播速度測定方法。
【請求項3】
脈波検出用の第2の振動検出センサを、被検体の尾の根本に巻くことを特徴とする、請求項2の脈波伝播速度測定方法。
【請求項4】
脈波検出用の第2の振動検出センサを、請求項1記載のハンモックの股関節付近に組み込むことを特徴とする、請求項2の脈波伝播速度測定方法。
【請求項5】
第1のセンサの心弾図と、第2のセンサ脈波のピークペアの時間差を測定するにあたり、手動で、ピークペアを選定することを特徴とした、請求項2の脈波伝播速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波測定方法及び生体情報測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物(ペット)の飼育頭数・平均寿命は、ともに、年を追うごとに伸びており、特に、平均寿命は、ここ10年で犬猫ともに1歳程度長くなっている。しかも、このコロナ禍で、頭数と寿命の伸びは増大している。
【0003】
このような、ペットの高齢化は、運動不足と相まって、様々な疾患件数増加の原因となっている。なかでも、これまで、犬猫では少なかった、心血管疾患の原因となる、動脈硬化病変数も増加してきているため、動物病院においては、大切なペットの動脈硬化症の早期発見ニーズが増えてきている。
【0004】
ヒトでは、脈波伝搬速度(Brachial-Ankle Pulse Wave Velocity、baPWV)が、動脈硬化の指標として、広く用いられているが、ペットでは、体型も多様であるため、体長からの血管長の推定が簡単ではなく、baPWVはペットには適していない。
【0005】
また、無麻酔下では、PWV計測の際、体動を止めることが困難であることが多く、測定結果に、アーチファクトが混入してしまう。また、動き回るペットに検査用のセンサを取り付けることは容易ではない。
【0006】
さらに、脈波の検出にしばしば使われている、光電脈波センサは、体毛除去が必要となってしまうため、ペットにはあまり向いていない。
【0007】
また、いわゆる、ペットだけではなく、動物園等で飼育されている動物など、検査に協力的でない、動物、あるいは、未熟児や小児等の動脈硬化を、非侵襲で容易に診断する手段はほとんど提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
先述の通り、検査に協力的でない、ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等の動脈硬化を、非侵襲で容易に診断する手段に関する先行技術文献は少ない。ここでは、ヒトで多用されている、baPWVのベースとなる特許と、ネコの脈波検査装置に関する発明を掲載する。
【0009】
特開2002-301034
PWV(baPWV)のベースとなる発明である。上腕と足首にカフを巻いて、脈波の到達時間差を測定する。ソフトウエア的なノイズ対策が織り込まれているが、基本的に、被験者が、測定に協力的であるという前提の検査方法である。
【0010】
特表2022-552988
ネコなどの脚を有する動物の血圧測定のための検査装置に関する発明である。光電脈波センサを取付けた測定台に、前後の足裏部がセンサに当たるように、ネコを座らせ、血圧などの生体情報を測定するという装置であるが、ネコを、無麻酔下で、一定時間、おとなしく、座らせることが容易とは思えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
検査に協力的でない、ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等の動脈硬化を、非侵襲で容易に診断する手段が無い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等を、心弾図検出用のセンサを装着したハンモックに下げ、脈波検出用センサと組合せて、大動脈を含む脈波伝搬速度を、容易に、しかも非侵襲で測定する手段を提供するものである。被験体を、ハンモックに下げることで、測定の妨害となる体動の影響を最小限にすることができる。
【0013】
心弾図の検出は、胸部が、センサにハンモック上で押し付けられることによって容易に行うことができる。心臓の大動脈弁で発生した心弾図は、伝播速度が非常に高速である、肋骨部を経由して、体表面に伝播する。この時肋骨の伝播かかる時間は短く、測定上、無視できるレベルである。
【0014】
脈波検出用センサは、股関節部に取付けることが一般的だが、尾のある動物の場合は、脈波検出は、ハンモックではなく、尾の根本に、脈波検出用センサを取付けた、テープを巻き付けて、脈波を検出することも可能である。
【0015】
このようにして、大動脈弁開放で発生する心弾図ピークと、股関節で検出される大腿動脈の脈波ピーク、あるいは、尾動脈の脈波ピークのピークペアの時間差を測定し、複数のピークペアの時間差の平均値Taを求める。
【0016】
ピークペアの検出、時間差の測定、時間差の平均値Taの算出は、自作のPWV測定ソフトで行う。
【0017】
ピークペアの検出は、基本的には自動で行うが、体動の激しい動物等の場合、アーチファクトの出現確率が多いため、完全自動でピークペアを検出することが困難な場合が多い。このような場合には、自動検出した結果を、一旦削除し、マニュアルでピークペアをポイントアウトすることで、誤検出による、測定ミスを排除する機能が有効である。
【0018】
血管長Leは、首部(第7頚椎等)と股関節部、あるいは、尾の根本部との、体表面間距離Lsから、以下の式で、算出する。
Le = Ls x a・・・(1)
ここで、a は、同一種内で、レントゲンやCT、MRI等から求めた血管長の実測値(L)と体表面間距離Lsから求めた、補正係数である。
【0019】
被験体の、Lsを測定し、(1)式により、血管長Leを求める。
【0020】
ピークペアの時間差の平均値Taと、血管長Leから、脈波伝播速度PWVは、
PWV = Le / Ta・・・(2)
で求めることができる。
【0021】
ここで、述べてきたように、ハンモックに被験体を下げ、心弾図を検出し、大腿動脈脈波や尾動脈脈波と組合せて、脈波伝播速度PWVを容易に測定することができる。さらに、ハンモックに下げることと、マニュアルでピークペアをポイントすることで、検査に協力的でない、ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等の動脈硬化を、容易に、しかも、非侵襲で検査できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、これまで、測定が困難であった、検査に協力的でない、ペットなどの動物、あるいは、未熟児や小児等の動脈硬化を、非侵襲で容易に診断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明で使用するハンモックの構造の一例である。
【
図3】本発明で使用する尾動脈検出センサ用テープの一例である。
【
図5】本発明の心弾図用センサで得られる心弾図波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0025】
【0026】
実施例1では、2台の、AYA-P圧電振動センサ210を、1台の、AYA-Pコントローラ240に、専用ケーブル220で接続し、さらに、これを、PWV解析装置250に、USBケーブル230で接続した。AYA-P圧電振動センサ210としては、太陽誘電製のAYA-P06SSを、AYA-Pコントローラとしては、同じく、太陽誘電製のAYA-P05Cを、PWV解析装置250としては、市販のWindows PCに、自作のPWV解析ソフトAYA-PMultiを搭載したものを、それぞれ、使用した。
【0027】
1台の、AYA-P圧電振動センサ210を、
図2に示すように、トリミングに使われるハンモック120に、硬質スポンジ製のセンサホルダ130を介して、装着した。また、もう1台の、AYA-P圧電振動センサ210は、
図3に示すように、センサ装着用面ファスナーテープ110に両面テープで接着し、固定した。
【0028】
このハンモック120に、
図1に示すように、雑種犬(オス、5才)10を下げ、ハンガー台(表示せず)にかけた。さらに尾の根本に、センサを装着した面ファスナーテープ110を巻いた。
【0029】
2台のセンサ210、コントローラ220、PWV解析装置250を、前述の通り、接続し、心弾図と尾動脈脈波を、サンプリング周波数800Hz、同期で、PWV解析装置250に入力し、解析を行った。
【0030】
本実施例で、検査に使用した、雑種犬は、大人しく、体動も少なかったので、ピークペアの検出は、自動測定で行った。その結果、血管長319 mm、平均時間差74.6 ± 0.6 msec、PWV値は428 cm/secを得た。
実施例1と同様のセットアップで、ウサギ(メス、7才)をハンモックに下げ、心弾‐尾動脈PWVを測定し、血管長443 mm、平均時間差87.6 ± 12.4 msec、PWV値は506 cm/secを得た。この被験体の場合は、震えによる体動が酷かったため、自動測定で得られたピークに係るデータを削除後、ピークペアを、新たに、マニュアルでポイントアウトして、時間差の平均値を求めた後、PWVを算出した。