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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025670
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】カトラリー
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/00 20060101AFI20250214BHJP
   A47G 21/02 20060101ALI20250214BHJP
   A47G 21/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A47G21/00 V
A47G21/00 T
A47G21/02 Z
A47G21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130688
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523306254
【氏名又は名称】染谷精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】染谷 勝利
【テーマコード(参考)】
3B115
【Fターム(参考)】
3B115AA03
3B115AA22
3B115AA23
3B115BA02
3B115BA10
3B115BA12
3B115DA00
3B115DA04
3B115DA09
3B115DA13
3B115DA15
3B115DA17
(57)【要約】
【課題】減廃棄物、廃棄物の脱プラスチックを達成でき、使い捨て部分の廃棄操作がしやすいカトラリーを提供する。
【解決手段】
ヘッド部及びヘッド部に連接するネック部を有する使い捨て部と、ネック部を介して使い捨て部が連結される繰り返し利用されるハンドル部と、を備え、前記使い捨て部が、シート材がプレス加工により圧縮成形され、前記ネック部が断面湾曲形状に成形され、前記ハンドル部が、細長形状の下側基部とこの下側基部を被覆する上側カバー部とを備え、前記下側基部の先端側に、ネック部の一部が載嵌される受け部を有し、上側カバー部は、前記下側基部の長手方向に沿って少なくとも前記受け部が露出される位置までスライド可能とされ、前記上側カバー部を下側基部の後端側にスライド移動させて露出された受け部にネック部を嵌めた後、上側カバー部をネック部上に位置せしめることで、使い捨て部とハンドル部とが連結されるカトラリーによって解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物に触れるヘッド部及びヘッド部に連接するネック部を有する使い捨て部と、
ネック部を介して使い捨て部が連結される繰り返し利用されるハンドル部と、を備え、
前記使い捨て部は、パルプ繊維を抄紙したシート材がプレス加工により圧縮成形され、少なくとも前記ネック部が断面湾曲形状に成形され、
前記ハンドル部は、細長形状の下側基部とこの下側基部を被覆する上側カバー部とを備え、前記下側基部の先端側に、ネック部の一部が載嵌される受け部を有し、上側カバー部は、前記下側基部の長手方向に沿って少なくとも前記受け部が露出される位置までスライド可能とされ、
前記上側カバー部を下側基部の後端側にスライド移動させて露出された受け部にネック部を嵌めた後、上側カバー部をネック部上に位置せしめることで、使い捨て部とハンドル部とが連結される、
ことを特徴とするカトラリー。
【請求項2】
ネック部に孔を有し、受け部に凸部を有し、前記凸部に前記孔を挿通しつつネック部が受け部に載嵌される、請求項1記載のカトラリー。
【請求項3】
上側カバー部の先端部に、受け部に向かって突出し、前記ネック部の湾曲面に沿う円弧縁を有する凸片が設けられている、請求項1又は2記載のカトラリー。
【請求項4】
使い捨て部とハンドル部とが連結された状態において、下側基部の先端縁が、上側カバー部の凸片よりヘッド部側に位置する、請求項3記載のカトラリー。
【請求項5】
使い捨て部は、密度が1.0g/cm以上である、請求項1記載のカトラリー。
【請求項6】
ネック部は、幅に対する断面の曲率半径の割合が、1:0.4~1:0.8である、請求項1記載のカトラリー。
【請求項7】
使い捨て部にシロキサン化合物が含有されている、請求項1記載のカトラリー。
【請求項8】
使い捨て部は、パルプ繊維として針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプを合わせて90~100質量%含み、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの配合割合が、5:95~30:70である、請求項1記載のカトラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプーン、フォーク等のカトラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設におけるフードコート、ファストフードショップ、持ち帰り弁当店、航空機内など飲食提供サービス、フードデリバリーやケータリングイベント等の種々の飲食提供の場において、一回又は数回程度の使用の後の廃棄することが想定されている使い捨てのカトラリーが用いられている。このような使い捨てのカトラリーは、利便性を実現するとともに、多くが無料提供を前提とされているため低コストであることが求められる。
【0003】
このため、使い捨てではない金属製等の高級なカトラリーと同様の形状に成形しやすく、しかも安価で軽量なプラスチック性のものが多く使用されている(特許文献1参照)。
【0004】
他方で、近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業等の特定業種において、提供されるフォーク、スプーン、ナイフといったカトラリーが指定されており、カトラリーにおける脱プラスチック化の要望が高まっている。
【0005】
カトラリーをプラスチックに代えてプラスチック以外の天然素材とする技術は、下記特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示される。
【0006】
特許文献2の技術は、シート形状の素材を折り畳み接着することで食物を収納する容器部を形成するものであるため、予めシート形状となった素材を調達及び加工することで製造することができるという利点がある。しかしながら、モールド成形されたプラスチック製のカトラリーまたは非使い捨てではない金属製のカトラリーのような曲線的な意匠を有するものではないため、口腔内に入れた際等の感覚など使用感がプラスチック製または金属製のカトラリーとは異なる。
【0007】
他方で、特許文献3や特許文献4の技術は、パルプモールド技術によって、口に入れる部分等が金属製のカトラリーのような曲線的な意匠を有するものとなっており、表面も滑らかで口腔内に入れた際等の感覚など使用感がプラスチック製のカトラリーに近くなっている。
【0008】
しかしながら、特許文献3や特許文献4のパルプモールド技術は、スラリー状の湿潤パルプを直接に成形する技術であるため、製造するには湿潤パルプを取り扱う設備が必用であり、シート素材から製造できる特許文献2の技術よりも、製造するための工程や管理が煩雑となる。また、パルプモールド技術は、湿潤パルプを成形するため成形物の高密度化や耐水性を高めることが難しい。
【0009】
ところで、カトラリーにおいては、下記特許文献5や特許文献6に示されるように、意匠性や使いやすさを高めるために、食物に触れる先端部分と把手するための柄の部分の素材を異素材として、それらを組み合わせたり、連結して一体化したりすることが旧来から行われている。
【0010】
上記の使い捨てのカトラリーや天然素材を用いたカトラリーにおいても、下記特許文献7、特許文献8、特許文献9に示されるように、食物に触れる先端部分と把手するための柄の部分の素材を異素材とし、それらを組み合わせたり、連結して一体化したりしたものが知られている。
【0011】
特許文献7の技術は、インスタント食品等に付随する小型のスプーン等に連結する継ぎ足し柄が開示されている。この技術は、使い捨ての小型スプーン等を使いやすくするものであり、先端部分は、使い捨てではない金属製等の高級なカトラリーと同様の形状のものではないため、口腔内に入れた際等の感覚など使用感が、飲食提供の場において提供されている従来のプラスチック製のカトラリーとは大きく異なる。
【0012】
特許文献8の技術は、食物に触れる先端部分をプラスチック製とし、把手するための柄の部分を紙素材として、口腔内に入れた際等の感覚などは従来のプラスチック製の使い捨て製品と同様としつつ、プラスチック使用料を低減させたものとなっている。
【0013】
特許文献9の技術は、特許文献8の技術とは逆に食物に触れる先端部分を紙製とし、把手するための柄の部分をプラスチック素材としたものである。柄の部分を再利用することができ、プラスチック廃棄物とコストを削減させたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2017-524498号公報
【特許文献2】特開2012-249963号公報
【特許文献3】特開2021-29926号公報
【特許文献4】特開2021-29924号公報
【特許文献5】実公昭50-000052号公報
【特許文献6】特実3031371号公報
【特許文献7】実開昭60-029563号公報
【特許文献8】特実3241113号公報
【特許文献9】特開2023-050731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のとおり特許文献2、特許文献3、特許文献4の技術は、主原料を天然素材とし、脱プラスチックの点で優れるものの従来のプラスチック製の使い捨てカトラリーと同様の意匠性や使用感等を十分に達成できるものではない。また、特許文献8の技術は、先端部分が従来のプラスチック製の使い捨てカトラリーと同様の意匠性や使用感となるものの、そのプラスチック製の先端部分も廃棄される部分となりため、脱プラスチックといえるものとはなっていない。
【0016】
特許文献9の技術は、柄の部分に対して先端部分から突出する短尺柄部を差し込んで連結したり、短尺柄部を上下の部材で挟みこんで挟持するようにして連結する。したがって、使用後に先端部分を柄体が取り外す際に、汚れた先端部分を掴む等の必要がある。従来のプラスチック製の使い捨てカトラリーは、使用後の汚れた先端部分に触れることなく、そのままゴミ箱等に放り込むことができるが、特許文献9の技術は、廃棄の際の柄体と先端部分の分離に煩雑な操作を要してしまう。
【0017】
また、特許文献9の技術は、先端部分と柄の部分を連結するさいに、先端部分から突出する短尺柄部を湾曲変形させたり、短尺柄部に対して凸部を厚み方向に強く食い込ませるようにする等、短尺柄部を変形させる場合があり、その場合、短尺柄部を変形させる際や変形後に、変形部分が意図せずに脆弱となり、先端部分が折れるおそれがある。また、連結に当たって湾曲変形された短尺柄部が、取り外しの際に湾曲が戻って汚れた先端部分が意図せず落下してしまうおそれがある。
【0018】
そこで、本発明の主たる課題は、繰り返し利用できるハンドル部に対して主原料を天然素材とする使い捨て部分を連結して使用するカトラリーであり、脱プラスチックと廃棄物の削減とコストの削減を達成でき、従来のプラスチック成型の使い捨てカトラリーと同様の使用感とすることができ、さらに、使い捨て部分をシート材から製造することが可能で製造が容易であり、耐水性も十分であり、しかも、使い捨て部分を廃棄する際の操作性に優れる、カトラリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決した第一の手段は、
食物に触れるヘッド部及びヘッド部に連接するネック部を有する使い捨て部と、
ネック部を介して使い捨て部が連結される繰り返し利用されるハンドル部と、を備え、
前記使い捨て部は、パルプ繊維を抄紙したシート材がプレス加工により圧縮成形され、少なくとも前記ネック部が断面湾曲形状に成形され、
前記ハンドル部は、細長形状の下側基部とこの下側基部を被覆する上側カバー部とを備え、前記下側基部の先端側に、ネック部の一部が載嵌される受け部を有し、上側カバー部は、前記下側基部の長手方向に沿って少なくとも前記受け部が露出される位置までスライド可能とされ、
前記上側カバー部を下側基部の後端側にスライド移動させて露出された受け部にネック部を嵌めた後、上側カバー部をネック部上に位置せしめることで、使い捨て部とハンドル部とが連結される、
ことを特徴とするカトラリーである。
【0020】
第二の手段は、
ネック部に孔を有し、受け部に凸部を有し、前記凸部に前記孔を挿通しつつネック部が受け部に載嵌される、上記第一の手段に係るカトラリーである。
【0021】
第三の手段は、
上側カバー部の先端部に、受け部に向かって突出し、前記ネック部の湾曲面に沿う円弧縁を有する凸片が設けられている、上記第一又は第二の手段に係るカトラリーである。
【0022】
第四の手段は、
使い捨て部とハンドル部とが連結された状態において、下側基部の先端縁が、上側カバー部の凸片よりヘッド部側に位置する、上記第三の手段に係るカトラリーである。
【0023】
第五の手段は、
使い捨て部は、密度が1.0g/cm以上である、上記第一の手段に係るカトラリーである。
【0024】
第六の手段は、
ネック部は、幅に対する断面の曲率半径の割合が、1:0.4~1:0.8である、上記第一の手段に係るカトラリーである。
【0025】
第七の手段は、
使い捨て部にシロキサン化合物が含有されている、上記第一の手段に係るカトラリーである。
【0026】
第八の手段は、
使い捨て部は、パルプ繊維として針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプを合わせて90~100質量%含み、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの配合割合が、5:95~30:70である、上記第一の手段に係るカトラリーである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、繰り返し利用できるハンドル部に対して主原料を天然素材とする使い捨て部分を連結して使用するカトラリーであり、脱プラスチックと廃棄物の削減とコストの削減を達成でき、従来のプラスチック成型の使い捨てカトラリーと同様の使用感とすることができ、さらに、使い捨て部分をシート材から製造することが可能で製造が容易であり、耐水性も十分であり、しかも、使い捨て部分を廃棄する際の操作性に優れる、カトラリーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るカトラリーを説明するための斜視図である。
図2】本実施形態に係る他のカトラリーを説明するための斜視図である。
図3】本実施形態に係る使い捨て部の斜視図である。
図4】本実施形態に係る他の使い捨て部の上面図である。
図5】本実施形態に係るハンドル部の斜視図である。
図6】本実施形態に係るハンドル部の他の斜視図である。
図7】本実施形態に係る下側基部の上面図である。
図8】本実施形態に係る下側基部の側面図である。
図9】本実施形態に係る下側基部の正面図である。
図10】本実施形態に係る受け部に使い捨て部を載嵌した状態を示す斜視図である。
図11】本実施形態に係る上側カバー部を下方から見た斜視図である。
図12】本実施形態に係る上側カバー部の正面図である。
図13】本実施形態に係る使い捨て部とハンドル部の連結態様を示す斜視図である。
図14】本実施形態に係るカトラリーの曲げ強度の測定方法を説明するための図である。
図15】本実施形態に係る多層紙の断面の模式図である。
図16】本実施形態に係るカトラリーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次いで、本発明の実施形態を図1図16を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるわけではない。
【0030】
本実施形態に係るカトラリー1は、一回又は数回程度の使用の後の廃棄されることが想定される使い捨て部10と、洗浄や消毒などをして繰り返し利用することが想定されるハンドル部20とを備えている。使い捨て部10は、主に食物に触れるヘッド部11とヘッド部11に連接するネック部12とを備えており、ハンドル部20にはネック部12を介して連結される。ハンドル部20は、主に把手や操作を行うための部分である。なお、本実施形態のカトラリー1の説明において、ヘッド部11側に向かう方向を先端方向、ハンドル部20側に向かう方向を後端方向として述べることがある。また、カトラリー1の使用時に上を向く側を上方、下を向く方向を下方として述べることがある。
【0031】
本実施形態に係るカトラリー1は、特に図1に示すスプーンの形態、図2に示すフォークの形態が含まれ、使い捨て部10のヘッド部11の形状は、具体的なカトラリー1の用途及び機能によって変更され得る。例えば、図1に示すスプーンの形態であれば、図3に示すスプーンのヘッド部の形状とし図2に示すフォークの形態であれば、図4に示すフォークのヘッド部の形状とする。本実施形態のカトラリー1としては、その他に、ナイフ、蓮華、マドラー、穴あきスプーン等が含まれ得る。これらも用途及び機能に応じたヘッド部11の形状とする。
【0032】
一方、本実施形態に係るカトラリー1のネック部12は、ヘッド部11に連接し、ヘッド部11を介して飲食物を口腔内に入れた際に、口を閉じやすくしたり、飲食物の特に液体がハンドル部20側に垂れないようにしたりすべく、ヘッド部11よりも幅狭に形成される。ヘッド部11よりも幅狭のネック部12を設けることで、カトラリー1としての利便性が高まる。また、このネック部12は、下方側が凸となる断面湾曲形状とされ、ヘッド部11よりも幅狭でありながら強度が高められている。この湾曲断面形状によって、特にヘッド部11に飲食物を載せたり、ヘッド部11で飲食物を掬ったり刺したりしても折れない強度とすることができる。図示の形態のネック部12は、好ましく略半円筒形状とされ、特に下方側が凸となる断面湾曲形状となっているが、必ずしもこの形状に限定されない。
【0033】
他方で、本実施形態に係るカトラリー1の使い捨て部10は、パルプ繊維を抄紙したシート材をプレス加工により圧縮成形したものであり、特に、少なくともネック部12は、上記のとおり下方側が凸となる断面湾曲形状に成形されている。すなわち、使い捨て部10は、スプーン、フォーク等に応じたヘッド部11から断面湾曲形状のネック部12に対応する形状に予め成形した金型を、シート材に対して厚み方向から押し付けることで、その金型形状をシート材に転写するように圧縮成形されたものとなっている。もちろん、プレス加工後に適宜に型抜き、カット等によって所望の形状に整えられたものであってよい。なお、本実施形態のカトラリー1の使い捨て部10は、シート材が複数枚積層された状態でプレス加工されて成形されたものであってもよい。但し、層間での剥離のおそれがないため、一枚のシート材のみをプレス加工して成形したもののほうが望ましい。
【0034】
ここで、従来のパルプモールド技術は、金属成形における鋳造技術のように、パルプ繊維を含む流動原料を型押して圧縮により膠着させて成形するため、成形物を複雑な形状に成形しやすい一方、高密度化が難しく、また、成形物が、繊維配向性を有さないため、コシが弱く折れや割れが発生しやすくなることがあるという問題があった。本実施形態のカトラリー1の使い捨て部10は、パルプモールド技術等の流動原料を型押するのではなく、金属成形における鍛造技術のように、一度乾燥されて水素結合を構築し、さらに繊維配向性も定まっているシート材をさらに厚み方向にプレス加工することで圧縮成形するため、高密度に圧密化され、薄いながらもプラスチック性のような適度な粘りやしなりを有し、使用に十分な高い強度を有するものとなっている。また、この圧縮成形によってネック部12を断面湾曲形状とすることで、ネック部12をヘッド部11よりも幅狭で細く形成しても十分に折れ難い強度とすることができる。このようにプレス加工による圧縮成形は、従来のパルプモールド技術によるものに比べて、表面を滑らかにしつつ、厚みを薄くしながら強度を高めることができるため、特にネック部を断面湾曲形状とすることと相まって、ネック部が細く、かつ、滑らかな曲線や曲面で形成された金属製のカトラリーと同様の形状に成形することができ、使用時の口当たりにも優れるものとなる。さらに、製造時に流動性のパルプスラリーを必要とせず、製造しやすいという利点がある。
【0035】
また、本実施形態のカトラリー1は、使用後に廃棄する使い捨て部10と、繰り返し利用するハンドル部20とで構成されるため、カトラリー全体を廃棄する形態の使い捨てカトラリーと比較して廃棄物の量が低減される。そして、使い捨て部10がプラスチックではなく、パルプ繊維を抄紙したシート材で形成されているため、廃棄物の脱プラスチックをも達成することができる。なお、脱プラスチック達成の点から、本実施形態に係るカトラリー1は、非生分解性の樹脂によるプラスチックラミネートが施されていないのが望ましく、特には、非生分解性の樹脂であるか生分解性の樹脂であるかに関わらずプラスチックラミネートが施されていないのが望ましい。また、本実施形態のカトラリー1は、使い捨て部10が、パルプ繊維の集合体であるため使用時に歯で噛むなどしても口腔内で破砕することがなく使用時の安全性を十分なものとすることができる。
【0036】
他方で、本実施形態のカトラリー1のハンドル部20は、図6図11に示されるように、細長形状の下側基部21とこの下側基部21を被覆する細長形状の上側カバー部22とで構成されている。ハンドル部20の具体的な全体形状は必ずしも限定されない。本発明の効果を妨げない範囲で、把手や操作を行いやすい、公知のカトラリーのハンドル部の形状とすることができる。
【0037】
下側基部21は、特徴的に、先端側に、前記使い捨て部10のネック部12の全部又は一部が載嵌される受け部31が設けられている。本実施形態のカトラリー1は、この受け部31に、使い捨て部10のネック部12が、凸となる側が下方側となるようにして載せ嵌める。そして受け部31に嵌るネック部12の上に、上側カバー部22が位置されることで、使い捨て部10とハンドル部20とが連結される。下側基部21及び受け部31の形状は、必ずしも限定されない。下側基部21としては、例えば、図6図9に示すように、上部開放の半円筒形の底部21Bと、この底部21Bの側縁から上方に向かって延出する下側縁部21Eを有し、長手方向に直交する方向の断面が断面略コ字型となる形状とすることができる。また、特に受け部31は、上部開放でネック部12の湾曲部分の凸側面の一部又は全部が合致する形状であればよく、例えば、長手方向に直交する方向の断面が湾曲形状をなす上部開放の半円筒型の形状、ネック部12の湾曲部分の凸側面と合致する部分を一部に有する形状などが挙げられる。図示の形態の受け部31は、断面が湾曲形状をなす半円筒型とされているとともに、その底側部分に長手方向に沿って一対の受け部リブ31R,31Rが延在する形状とされ、一対の受け部リブ31R,31Rの上にネック部12が載りつつ前記半円筒型部分の上縁(図中符号31Tで示す)間又はその近傍の間にネック部12が嵌るように構成されている。
【0038】
他方で、本実施形態のカトラリー1は、図3図4等に示すように、使い捨て部10のネック部12に貫通孔12Hが設けられており、その一方で図6図7等に示すように、前記受け部31に凸部31Pが設けられており、図10に示すように、前記凸部31Pに対して前記貫通孔12Hを挿通しつつネック部12が受け部31に載嵌されるように構成されているのが望ましい。特に、凸部31Pの外周縁と貫通孔12Hの内周縁とが合致するように構成され、凸部31Pが貫通孔12Hに嵌合されるように構成されているのが望ましい。このように凸部31Pに対して貫通孔12Hを挿通しつつネック部12が受け部31に載嵌されるように構成されていると、受け部31に対して使い捨て部10を載嵌させる際の位置決めが容易となるとともに、貫通孔12H及び凸部31Pの係合によって使い捨て部10が先端方向に移動し難くなり、使い捨て部10がハンドル部20から先端方向に抜け難くなる。なお、図示の形態では、凸部31P及び貫通孔12Hがそれぞれ一つの形態であるが、凸部31P及び貫通孔12Hはそれぞれ一つに限定されない。また、凸部31P及び貫通孔12Hの大きさ及び形状も限定されない。
【0039】
ここで、本実施形態のカトラリー1では、ネック部12が実質的に変形されずに、そのままの形状で載嵌されるように構成されている。例えば、ネック部12を受け部31に載嵌する際に、ネック部12の湾曲の曲率が大きくなるように変形されない。このようにネック部12の形状が実質的に変形されずに受け部31に載せ嵌めるように構成されていることで、受け部31に対して強い力でネック部12を押し付けることなく、過度の力を要せずに受け部31に対してネック部12を嵌めやすく、また、容易に受け部31からネック部12を外すことが可能となる。また、変形によるネック部12の折れや強度変化を防止できる。さらに、単に載せるだけではなく、受け部にネック部が嵌るためネック部を受け部に取り付ける際にヘッド部の重みで落ちることも防止できる。なお、本発明に係る使い捨て部10は、パルプ繊維を抄紙したシート材を圧縮成形して形成されるため、製造上の誤差や周囲の湿度や温度によって成形後から経時的に若干の変形が生ずることがある。例えば、経時的な変形によってネック部の湾曲部が開くように変形することがある。このような製造上の誤差や素材の性質に起因する経時的な変形によって、受け部31の形状とネック部12の形状が一致するように設計されていても、受け部31にネック部12を嵌める際に、意図しない若干の変形がされてしまうことがある。したがって、ネック部12と受け部31との嵌合性に関し、上記の実質的に変形しないとは、このような製造上の誤差や経時的な変形によって生ずる、載嵌時の変形は、実質的には変形されていないとする意味である。
【0040】
他方で、本実施形態の上側カバー部22は、特に図5図6に示すように、前記下側基部21の長手方向に沿って少なくとも前記受け部31が露出される位置まで、下側基部21の後端側に向かってスライド可能とされている。下側基部21に対する上側カバー部22のスライド長は限定されない。下側基部21から分離されるまでスライド可能とされていてもよい。上側カバー部22の形状は、必ずしも限定されない。本発明の効果を妨げない範囲で、適宜の形状とすることができる。例えば、図示のように、上面がほぼ平面の上部22Tと、上部22Tの側縁から下方に向かって延在する上側縁部22E,22Eを有し、長手方向に直交する方向の断面が略コ字型をなす形状とすることができる。
【0041】
本実施形態における下側基部21と上側カバー部22のスライド機構は、必ずしも限定されない。公知のスライド機構を採用できる。好ましくは、片手で上側カバー部22をスライド移動できる機構であるのが望ましい。図示の形態では、下側基部21の底部21Bの両縁部に長手方向に沿う直線状のガイド溝21G,21Gが形成されているとともに、上側カバー部22の上側縁部22E,22Eの下縁部に前記ガイド溝21G,21Gに係合するガイドリブ22R,22Rが設けられており、このガイドリブ22Rが前記ガイド溝21Gに沿って移動可能とされるスライド機構によって、上側カバー部が下側基部に対してスライド移動されるように構成されている。また、このガイドリブ22Rがガイド溝21Gに係合することで上側カバー部22が下側基部21の上方に抜けることがないように構成されている。この形態では、例えば、親指と人差し指によって上側カバー部22の上部22Tと下側基部21の底部21Bとを挟み持ち互いに先後端方向にずらすように操作させるだけで、上側カバー部22をスライド移動させ、受け部31の露出と被覆とを行うことができる。
【0042】
本実施形態のカトラリーは、特に図13(A)に示すように上側カバー部22を下側基部21の後端方向(図中X方向)にスライド移動させ、下側基部21の先端部に位置する受け部31を露出させた状態として、その受け部に、図13(B)、(C)に示すように、使い捨て部のネック部をヘッド部が下側基部の先端より突出するようにして載嵌する。そして、図13(D)に示すように、上側カバー部22を下側基部21の先端方向(図中X’方向)に向かってスライド移動させ、ネック部12が嵌った状態の受け部31の上に位置せしめ、ネック部12を下側基部21と上側カバー部22との間に位置せしめることで、使い捨て部10とハンドル部20とを連結する。
【0043】
本実施形態のカトラリー1において、使い捨て部10とハンドル部20との重なり部分、すなわち、ネック部12の受け部31に嵌る部分の長手方向長さ(図16に示すL7の範囲)は、必ずしも限定されないが、10mm以上であるのが望ましい。好ましくは20mm以上である。この範囲であれば、使い捨て部10とハンドル部20とを安定的に連結しやすい。なお、上限値は必ずしも限定されないが、廃棄物の削減の点から30~50mmとするのが望ましい。
【0044】
他方で、この実施形態のカトラリー1は、使い捨て部10とハンドル部20とが連結された状態で、使用者に使用される。使用後には、上側カバー部22を、再度、下側基部21の後側にスライド移動させ、下側基部21の先端部に位置する受け部31を露出させて、使い捨て部10をハンドル部20より取り外す。この取り外しの際、この本実施形態のカトラリー1では、ネック部12が受け部31に対して載嵌されているだけであるため、例えば、受け部31が下方に向くようにハンドル部20をひっくり返した状態とすることで落下させることができる。例えば、受け部31を下方に向くようにハンドル部20をひっくり返しただけで自由落下したり、受け部31の背面部分やネック部12の一部を指等で軽く叩いたり、ハンドル部20を振る等の操作をするだけ等の簡易な操作で受け部31からネック部12を外すことができるため、使用後の使い捨て部10に触れることなくハンドル部20からゴミ箱等に廃棄する操作を行うことができる。したがって、例えば、片手のみの操作でハンドル部20から使い捨て部10を取り外しやすい。但し、本実施形態のカトラリー1は、必ずしもハンドル部20から片手で使い捨て部を取り外せるものに限定されない。本実施形態のカトラリー1は、使い捨て部10をハンドル部20から両手で外すように操作してもよい。
【0045】
本実施形態のカトラリー1は、上記のとおり簡易な操作で使い捨て部10を廃棄することができ、特に、ハンドル部20のみの操作や片手のみの操作でも使い捨て部の廃棄操作を完了させるものとすることができる。したがって、例えば、使用者の唾液等が付着する使い捨て部に接触することなく他人がハンドル部20の操作のみで使い捨て部をゴミ箱等に投入することができる。また、患者や高齢者等で手の力が弱いものでも簡易に使い捨て操作をしやすいものとすることができる。さらに、先天的に後天的に或いは骨折等によって一時的に身体の動きに制約がある者、特に一方の手のみが利用できる等においても、使い捨て部10の廃棄操作がしやすいものとすることができる。よって、本実施形態のカトラリー1は、感染症患者の療養施設、病院、介護施設、老人ホーム等において、特に有用に利用することができる。
【0046】
他方で、本実施形態のハンドル部20は、受け部31にネック部12を載嵌した状態で上側カバー部22を先端方向にスライドさせてネック部12の上に位置せしめた際に、上側カバー部22の受け部31に対面する部分の一部又は全部が、使い捨て部10に対して面一で接触するか、1mm以下のごくわずかに隙間をもって位置されるように構成されているのが望ましい。図示の形態では、上側カバー部22の上部22Tの受け部31に対面する面の両側縁部22e,22eが、ネック部12の縁12e,12eの一部又は全部に愛して面一か1mm以下の極僅な隙間をもって位置する構成されている。また、図示はしないが、上側カバー部22の上部の受け部31に対面する部分を、受け部31側に向かって凸となるネック部12の形状と略一致するように半円筒型に成形し、受け部31と上側カバー部22とが面一又はそれらの間隙が1mm以下となるようにしてもよい。このように上側カバー部22の受け部31に対面する側の面の全部又は一部が、ネック部12に接触するか極僅な隙間をもって位置されるように構成されていると、ネック部12が上下方向に動き難くなり、連結時に使い捨て部10がハンドル部20に対してがたつき難く連結され、使用時に使い捨て部10がハンドル部20に対してぐらつかないため好ましい。
【0047】
さらに、図示の形態のカトラリー1では、より好ましい形態として、上側カバー部22の先端部に、受け部31側に向かって突出し、ネック部12の湾曲面に沿う形状の円弧縁を有する凸片22Pが設けられている。この凸片22Pは、上側カバー部22を受け部31の上に位置せしめた際に、凸片22Pの円弧縁と受け部31との間が面一又はわずかな間隙となるようになっている。この実施形態のカトラリー1では、ハンドル部20の先端部において凸片22Pとネック部12とが近接するため、よりハンドル部20に対する使い捨て部10のぐらつきが防止される。それとともに、凸片22Pが蓋体となりヘッド部11からハンドル部20側に向かう飲食物等由来の液体や食べこぼし等がネック部12の後端側に伝わらなくなり、ハンドル部20内に意図しない飲食物の滓や液体が入り込むことが防止される。
【0048】
本実施形態のカトラリー1では、さらにより好ましい形態として、図5図7に示すように、上記凸片22Pを設けるとともに、使い捨て部10とハンドル部20とが連結された状態において、下側基部21の先端縁21Tが、上側カバー部22の凸片22Pよりヘッド部11側に位置するように構成されている。特に、この先端縁21Tは、図示のように、ヘッド部11側に向かって凸となる円弧形状をなしているのが望ましい。上側カバー部22の先端よりも下側基部21の先端が先端方向に凸円弧形状に突出し、この突出部分がネック部12を支えることができるようになるため、ネック部12の特に上側カバー部22の凸片22Pと受け部とで挟まれる部分で折れ難くなるとともに、操作性が良好となる。また、円弧形状であると、より折れ難くまた口唇に触れた際の違和感を低減でき、カトラリー1として使用しやすいものとなる。
【0049】
さらに、本実施の形態のカトラリー1は、より好ましい形態として、図11に示されるように、上側カバー部22から下側基部21側に向かって突出し、ネック部12の湾曲形状部分に入り込む凸部22Cを有しているのが望ましい。図示の形態のカトラリーでは、前記凸片22Pから後端側に向かって、上側カバー部22から下側基部21側に向かって突出するリブ22C,22Cを二本有しており、上側カバー部22をネック部12上に位置せしめた際に、ネック部12の湾曲形状部分内に位置されるようになっている。このリブのような凸部22C,22Cとネック部12との間も面一か1mm以下の間隙となるように構成されているのが望ましい。ネック部12がよりハンドル部20に対してがたつき難くなり使用感がより向上する。なお、リブや凸部22C,22Cは二本に限らず一本又は三本以上とすることができる。
【0050】
他方で、本実施形態のカトラリー1は、特に、受け部31に対してネック部12を嵌めた際に、使い捨て部10が先端方向に向かって上り傾斜となるように所定角度で連結され、ヘッド部11の先端がハンドル部20の上面22Tよりも上方に位置するように構成されているのが望ましい。ハンドル部20に対してどの程度の角度で連結されるかは必ずしも限定されないが、ヘッド部11の先端が、ハンドル部20の上部22Tよりも1~30mm程度上方となる角度で連結するのが望ましい。このように構成されていると、ヘッド部11の操作がより容易となる。
【0051】
下側基部21及び上側カバー部22の素材は、限定されないが、洗浄や消毒に耐え、繰り返し利用できる素材とされる。例えば、金属素材、木、プラスチック素材などが例示できる。好ましくは、プラスチック素材であり、より好ましくは、食物繊維、木材繊維、パルプ繊維を含むバイオプラスチックである。プラスチック素材は、安価で意図した形状に成形しやく、耐洗浄性、耐消毒性に優れるものを選択しやすい。また、バイオプラスチック素材であれば、カトラリー全体として、樹脂の利用を低減できプラスチック利用量をより低減でき、環境負荷をより低減させることができる。
【0052】
ここで、本実施形態のカトラリー1におけるネック部12の曲げ強度は、その形状やカトラリーの用途によって必要な曲げ強度が異なるため、必ずしも限定されないが、複合材料試験機(10kN)形式5966型及びその相当機によって測定される2点曲げ荷重試験における強度が、曲げ撓み15mm時における曲げ荷重が0.5N以上であるのが望ましい。なお、この2点曲げ試験では、図14に示すように、支持台80Aにカトラリー1のハンドル部20を固定し、カトラリー1のヘッド部11の中央部を押し込み位置として測定する。例えば、図14に示すようにカトラリー1がスプーンの形態であれば、椀形状の底部位置を押し込み位置とする。カトラリー後端から支持台端までの保持長さL20は、カトラリー1の種類や形状により限定されないが、カトラリー全長の25~30%の長さとればよい。但し、少なくともハンドル部20の先端が支持台80Aの線端80tより先となるようにセットする。測定は小負荷用500Nとし、押し込み速度は40mm/min、圧子81は先端半円のものとする。測定試料は、スプーン、フォークであれば正面側を上側に向けてセットする。一般に、カレースプーン、テーブルスプーン一杯分は15~30g程度であり、本測定方法によって、曲げ撓み15mm時における曲げ荷重が0.5N以上であれば、カトラリー1の一般的な操作法をもって使用するに十分な特に好ましい強度を有しているといえる。さらに、本実施形態のカトラリーは、曲げ撓み30mm時に2N以上であるのが望ましい。比較的大きなテーブルスプーンのような形状としても、高い撓りを有し、使用時に折れたり破損したりするおそれが各段に低く安全性が高いものとなる。
【0053】
他方で、本実施形態のカトラリー1は、必ずしも限定されないが、耐水性能が3分以上、より好ましくは5分以上あるのが望ましい。ここで、耐水性は、水に完全浸漬しても各層が分離せず、また、水解しなければよい。但し、より好ましくは、5分浸漬時においても、上記の2点曲げ荷重試験における強度、つまり曲げ撓み15mm時における曲げ荷重が0.5N以上が維持されているのが特に望ましい。
【0054】
さらに、本実施形態に係る使い捨て部10は、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性及び表面の滑らかさが高いものとなる。使い捨て部は、食物に触れたり、口腔内の水分と接触したりしやすく、また、口腔内や唇と接触する可能性が高いヘッド部11及び操作時に捻じれや力が加わりやすいネック部12で構成されているため、シロキサン化合物含有による剛度、強度、耐水性及び表面の滑らかさの向上によってカトラリー1としての利用のしやすさが各段に向上する。
【0055】
ここで、シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、使い捨て部10は、食物と触れたり、口腔内に入れたりする可能性があるため、生体に対して毒性が無いか、低いものとする。また、使い捨て部10に、シロキサン化合物を含有させるには、使い捨て部10に対してシロキサン化合物を塗工する態様のほか、成形前のシート材に対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱しつつプレス加工するようにしてもよい。また、使い捨て部10を適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品にドブ漬けするようにしてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになる。
【0056】
ここで、本実施形態の使い捨て部10は、シート材をプレス加工して成形されたものであるが、そのプレス圧力及びプレス速度は、シート材やカトラリーの種類や形状に応じて適宜変更することができ、必ずしも限定されない。但し、シート材を厚み方向に圧密化して、十分な強度を発現させるためには、好ましくは、60トン以上のプレス圧、より好ましくは80トン以上のプレス圧、特に好ましくは100トン以上のプレス圧でシート材を圧縮して形成するのが望ましい。上限はシート材の破断等が生じない範囲で設計すればよいが、パルプ繊維を抄紙したシート材であることを考慮すれば200トン程度が上限である。また、本実施形態の使い捨て部10の成形において、このような高いプレス加工圧とする場合、特に、一部をプレス加工して成形するよりも、全体をプレス加工して成形するほうが製造の容易さ、及び強度の面で望ましいものとなる。なお、本実施形態の使い捨て部は、一枚のシート材の全体をプレス加工して圧縮成形したものに対して、プレス加工していない他の部材を部分的に接着や圧着して一体化してもよい。また、プレス加工を行うにあたっては、プレス加工とともに加熱してもよく、シート材を変形しやすくするために湿潤させてもよい。上記シロキサン化合物を含む溶液やシロキサン化合物の前駆体となる物質を含む溶液を湿潤剤としてもよい。また、加熱する際の加熱温度等は、必ずしも限定されるものではない。
【0057】
本実施形態の使い捨て部10の好ましい坪量は、坪量が700g/m以上、より好ましくは850g/m以上、特に好ましくは950g/m以上である。坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値である。本実施形態のカトラリー1の好ましい密度は、0.70g/cm以上、好ましくは、0.98g/cm以上、特に好ましくは、1.1g/cmである。特に、プレス加工部分における密度は、好ましくは1.0g/cm以上、特に好ましくは、1.2g/cmである。密度は、(坪量)/(紙厚)で算出される。本実施形態の使い捨て部10は、この密度であれば十分に高い密度といえる。特に上記の坪量であるとともに、この密度であれば、適度な質量で圧密化されており、薄いながらもプラスチック性のような適度な粘りやしなりを有し、使用に十分な高い強度となる。厚みは必ずしも限定されないが、プレス加工された部分における厚みは、シート一層分あたり1.5mm以下、好ましくは、1.35m以下、特に好ましくは1.0mm以下である。紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0058】
使い捨て部10を構成するパルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。但し、使い捨て部10は、食物に触れたり、口腔内に入れる用途に用いられたりするため、好ましくは、バージンパルプ100%であり古紙パルプを含有していないのが望ましい。また、バージンパルプであり、加工後の製品の外観及び強度を両立しやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。繊維長の短い広葉樹クラフトパルプの配合割合を多くすることで、プレス加工によって圧密化されやすく強度を発現させやすく、また、表面の質感を高めやすい。さらに、漂白パルプであり白色度が高く、清潔感及び硬質感のある意匠性を有するカトラリー1となることから、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0059】
本実施形態に係るパルプ繊維を抄紙したシート材は、乾式抄紙した紙、湿式抄紙した紙が挙げられる。好ましくは、パルプスラリーを湿式抄紙により製造した縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)を有する紙である。このような紙は、繊維配向性を有するため強度を高めやすい。また、特に、このような繊維配向性を有するシート材をプレス加工した使い捨て部では、必ずしも限定されないが、ヘッド部11側からネック部12側に至る長尺方向が、紙の縦方向(MD方向)と一致するようになっているのが望ましい。紙の縦方向(MD方向)と長尺方向とを一致させることで、ハンドル部20をもってヘッド部11を操作した際に折れ難く撓りやすいカトラリー1となる。
【0060】
本実施形態に係るシート材として、特に好ましいものは、3以上の紙層を有する多層紙50である。特に単なるボール紙ではなく高密度の多層紙が望ましい。使い捨て部10は、シート材をこの高密度の多層紙50とするとともに、シロキサン化合物が含有されたものとするのが特に好ましい。ここで、図15に示すように、多層紙50は、複数の紙層51,52が積層されているため単層の紙よりも厚み方向に圧密化した際に強度を高めやすい。また、多層紙50は、各層の特性を変えることができ、高密度ながら弾性を確保しやすく、耐水性も付与しやすい。例えば、耐水性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層51に柔軟な中層52を組み合わせることで、耐水性、強靭性や耐久性に優れるようになる。そして、本実施形態に係る使い捨て部では、シート材を厚み方向、つまり多層紙50における層積層方向からプレス加工により圧縮成形するため、多層紙50における各層の特性が維持されやすい。このため、プラスチック製の使い捨てカトラリー1と同様の形状、例えば、図1及び図3に示すスプーンや図2及び図4に示すフォークのような、幅狭のネック部12を介してヘッド部11とハンドル部20とを連結する構造としても、十分な強度を発現させやすい。特にネック部12の撓りを発現しやすく、プラスチック製の使い捨てカトラリー1と同様の使用感を有するものとしやすい。なお、多層紙50は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙50は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー等が例示できる。
【0061】
本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向及び横方向の引張強度が、ともに50kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、プレス非加工部分及びプレス加工による成形後においても十分な強度を確保しやすい。
【0062】
また、本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛直度が縦方向で125mN・m以上、好ましくは150mN・m以上であり、横方向で40mN・m以上であり、好ましくは60mN・m以上であるのが望ましい。この多層紙50であれば、十分な剛性及び強度とでき、プレス非加工部分及びプレス加工による成形後においても十分な強度を確保しやすい。
【0063】
さらに、多層紙50は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m以上、好ましくは450kN/m以上であるのが望ましい。プレス加工による成形性に優れるとともに、プレス加工前後におけるトムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって製造しやすい。
【0064】
本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50の層数は、限定されないが、五~九層とし、中層52の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に図15に示す形態は、三層の中層52を有するものとなっている。中層52の総数が三層以上であると、多層紙50の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層52の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。
【0065】
ここで、本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50の坪量は、成形後の使い捨て部と同様に、好ましくは700g/m以上、より好ましくは850g/m以上、特に好ましくは950g/m以上である。この坪量の多層紙50であれば、厚み方向に圧密化することで十分な剛性及び強度としやすく、よりプラスチック製の使い捨てカトラリーのヘッド部やネック部と同様の使用感を有するものとしやすい。多層紙50の坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1400g/mが好ましく、1240g/mがより好ましい。また、多層紙の紙厚は、900μm以上1,500μm以下が好ましく、より好ましくは1000μm以上1,350μm以下である。この紙厚の多層紙50を1.5mm以下、好ましくは1.35mm以下、特に好ましくは1.0mm以下となるようにプレス加工すると本実施形態の使い捨て部に係る強度としやすい。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0066】
なお、本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50における表層51及び中層52の坪量は、上記のシート材全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、好ましくは、表層51の坪量としては、1層あたり60.0g/m以上250.0g/m以下、特には130~150g/mが好ましい。また、中層52全体の坪量としては、500g/m以上900g/m以下、特には650g/m以上800g/m以下が好ましい。さらに、多層紙50は、多層紙50全体の坪量に対する一対の表層51,51の合計の坪量の割合が、20.0%以上35.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層51の剛直性が高く、中層52の柔軟性が優れるからである。また、多層紙50において、一対の表層51の合計の坪量の割合を上記の範囲のものは、折れ曲がり難い特性となっている。好ましい多層紙50は、密度が、プレス加工による圧縮成形前において、好ましくは0.65~1.50g/cm、より好ましくは0.73~1.00g/cm、特に好ましくは0.76~0.96g/cmである。多層紙50の密度がこの範囲であることで、高坪量で剛性が優れつつ、折れ難く、プレス加工による成形によってより硬質さと高いコシを有するものとなりやすい。
【0067】
また、多層紙50の各層を構成する好ましいパルプ繊維は、上記の使い捨て部を構成するパルプ繊維と同様であり、必ずしも限定されないが、好ましくは、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。但し、使い捨て部は、食物に触れたり、口腔内に入れる用途に用いられたりする部分であるため、好ましくは、バージンパルプ100%であり古紙パルプを含有していないのが望ましい。また、バージンパルプであり、加工後の製品の外観及び強度を両立しやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。繊維長の短い広葉樹クラフトパルプの配合割合を多くすることで、プレス加工によって圧密化されやすく強度を発現させやすく、また、表面の質感を高めやすい。さらに、漂白パルプであり白色度が高く、清潔感及び硬質感のある意匠性を有する使い捨て部となることから、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0068】
なお、本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50は、脱プラスチックの観点から、もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される紙であるのが望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる紙が望ましい。
【0069】
この多層紙50における各層のパルプ繊維の配合は、表層51は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となり、強度に優れる使い捨て部となる。この配合の表層51ととともに、中層52は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有させると、プレス加工時に厚み方向にしっかりと圧縮成形されやすく所望の形状の使い捨て部としやすい。
【0070】
また、本実施形態に係る好ましいシート材である多層紙50は、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙50には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。
【0071】
サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0072】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。
【0073】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性を十分に向上でき、使い捨て部に特に適する多層紙となる。
【0074】
また、多層紙50は、表層51及び中層52の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層51のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層52のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。この範囲とするとで、使い捨て部に適した多層紙の層間強度などの各種紙力としやすい。
【0075】
さらに、本実施形態に係るカトラリー1のより好ましい具体的な形状について、図16を参照しながら説明する。図示のカトラリーは、テーブルスプーンの形態を例としているが、図2及び図4に示すフォークの形態でも同様とすることができる。この使い捨て部10は、ヘッド部11からハンドル部20に至る全体がシート材をプレス加工して圧縮成形されて形成されている。その食物に触れるヘッド部11は、個体、粉体又は液体等の各種形状の食物を掬うことができるよう、一般的な金属製スプーンや従来プラスチック製の使い捨てのスプーンと同様に正面側解放の椀状となっており、ヘッド部11に連接するネック部12は、正面視においてヘッド部11から曲線で滑らか連続して幅狭に形成されている。
【0076】
他方で、ヘッド部11に連接するネック部12は、上記のとおり正面視においてヘッド部11から曲線で滑らか連続して幅狭に形成されているとともに、特に、ネック部12は、図2等に示されるように、上方側が開いた断面湾曲に成形され、図16に示すように、その幅L9に対する断面の曲率半径R1の割合が、1:0.4~1:0.8となっている。特に好ましくは、1:0.4~1:0.75である。ネック部の幅対する断面の曲率半径の割合が1:0.4~1:0.8であることで、圧縮成形した型から抜けることができつつ、強度を高めることができる。なお、一般的な金属成形では、幅に対する断面の曲率半径の割合が、1:0.5未満となると型から抜けなくなるが、本実施形態の使い捨て部は、シート材がルプ繊維を抄紙したシート材であり、湾曲面を開くように撓るため1:0.5未満とすることができる。但し、ハンドル部の特に受け部に載嵌しやすく、連結しやすくなることから、特に幅に対する断面の曲率半径の割合は、1:0.5~1:0.8であるのがより望ましい。ここで、ネック部12を断面湾曲に形成すると形成しないものと比較して、ヘッド部11を正面側又は背面側から押した際に曲げ強度が向上する。そして、特に、幅に対する断面の曲率半径の割合が、1:0.4~1:0.8とすると、使用時、例えば、スプーンで食物を掬う一般的な操作時にネック部が折れるおそれが各段に低くなる。また、使用時、例えば、フォークで食物を刺す一般的な操作時にネック部12が折れるおそれが各段に低くなる。さらに、上記の好ましい高密度の多層紙と相まってネック部を介してハンドル部20の受け部31に載嵌する形態で使い捨て部10を連結しても十分な使用強度を確保できる。
【0077】
このスプーンSとする場合におけるカトラリーの具体的な大きさは限定されないが、特に図1に示すテーブルスプーンや図2に示すテーブルフォークであれば、図16に示すように、ハンドル部20を含めた全体の長さL1としては160~200mm、ハンドル部20の長さL2としては90~130mm、ハンドル部20の幅L3は、15~25mm、使い捨て部10の長さL4としては、90~120mm、ヘッド部11の長さL5は45~60mm、ネック部12の長さL6は45~60mm、ヘッド部11の最大幅L8は35~45mm、ネック部12の幅L9は8.5~22.0mmとすることができる。この形状であれば、使い捨て部10とハンドル部20とを連結した状態として、プラスチック製の一般普及品の使い捨てのテーブルスプーンSと同様の使用感を有するものとすることができる。また、この場合における受け部31に嵌るネック部12の長L7は、20~40mmであるのが望ましい。上記の使い捨て部10のネック部12の幅L9及び受け部に嵌る長さL7が上記範囲であると特に使い捨て部10を上述の多層紙とし、さらにシロキサン化合物を含有させたものとした場合に、使用時にネック部12が極めて折れ難いものとなる。
【0078】
なお、図示の形態では、テーブルスプーンSを例にその形状や大きさを説明したが、本実施形態のカトラリーをスプーンSとする場合、これに限定されず本発明の効果を妨げない範囲また素材との関係で効果を奏する範囲で、適宜の大きさのものとすることができ、例えば、蓮華、サービススプーン、デザートスプーン、スープスプーン、フィッシュスプーン、ティースプーン、コーヒースプーン、デミタススプーン、アイスクリームスプーンの用途に適する大きさ、形状とすることができる。また、メロンスプーン、イチゴスプーン等と称される先端が二股三又に形成されたスプーンであってもよい。
【0079】
また、上記のテーブルスプーンとして例示される寸法は、図2に示すテーブルフォークでも同様の寸法とすることができる。図2におけるテーブルフォークは、ヘッド部11の上面側が解放の浅い椀状となっているとともに、食物を刺して保持できるよう先端が4つ又に別れた櫛型に形成され、ヘッド部11に連接するネック部12は、上面視においてヘッド部11から曲線で滑らか連続して幅狭に形成されている。なお、カトラリーをフォークとする場合もテーブルフォークに限定されず、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜の大きさのものとすることができ、例えば、サービスフォーク、デザートフォーク、フィッシュフォーク、サラダフォーク、フルーツフォーク、ケーキフォーク、ヒメフォークの用途に適する大きさ、形状とすることができる。
【0080】
なお、本実施形態のカトラリー1においては、使い捨て部10にプレス加工していないシート材等を積層して一体化する部分を設ける等、他の部材を付加してもよい。シート材同士の接合方法は、必ずしも限定されない。本発明の効果を妨げない範囲で、接着剤、圧着手段、カシメ手段、ハトメ手段、楔手段、ステープル手段、芯なしステープルなどとも称される係止構造による接合などの接合手段によって接合することができる。また、接合手段は、複数種類の接合手段を併用してもよい。接合のための接着剤としては、澱粉、各種変性澱粉、カルボキシメチルセルロース等の変性セルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子接着剤、アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の水系エマルジョン樹脂等を使用してもよい。澱粉、セルロース系の自然素材由来のものが、環境負荷の点で望ましい。接合のためのカシメ、ハトメを構成するリベット類やステープルの針は、プラスチック以外の木製、金属製のものとしプラスチック以外の素材のものがよい。
【0081】
ここで、本実施形態に係るカトラリー1は、例えば、商業施設におけるフードコート、ファストフードショップ、持ち帰り弁当店、航空機内の飲食提供サービス、フードデリバリーやケータリングイベント、病院、介護施設、老人ホーム等の種々の飲食提供の場において利用され得る。
【0082】
なお、本実施形態に係るカトラリー1は、使い捨て部10とハンドル部20とが連結された状態で提供される利用態様に限定されず、使い捨て部10とハンドル部20とが別に提供される利用形態であってもよい。また、使用後に使い捨て部10を誰が廃棄するかについても限定されない。具体的な使用形態例としては、例えば、(1)飲食物の提供者が、飲食物の提供時に、飲食物とともにハンドル部20のみを利用者に渡して、フロアに予め備え付けの多数の使い捨て部10が収容された容器から利用者が使い捨て部を取り、自身でハンドル部20に連結して使用し、使用後に利用者が使い捨て部10をゴミ箱等に廃棄して、ハンドル部20を飲食物の提供者に返却する利用形態が挙げられる。このような利用形態は、例えば、フードコートやケータリングイベント等において適する。また、(2)飲食物の提供者が、飲食物の提供時に、ハンドル部20に使い捨て部10が連結されたカトラリーを飲食物とともに利用者に渡し、利用者が使用後に使い捨て部10をゴミ箱等に廃棄して、ハンドル部20を返却する利用形態が挙げられる。さらに、(3)上記(1)及び(2)において、使用後に利用者が使い捨て部10を廃棄せず、使用後の使い捨て部10とハンドル部20とが連結されたカトラリー1を、飲食物の提供者に返却して、飲食物の提供者において使い捨て部10を廃棄する利用形態が挙げられる。このような使用形態は、例えば、病院、介護施設、老人ホームにおいて適する。他方で、(4)一個又は複数個の使い捨て部10を利用者が予め購入し、飲食物の提供者からハンドル部20のみを貸与され、利用者においてハンドル部20に使い捨て部10を連結して使用する利用形態が挙げられる。(5)利用者等がハンドル部20を予め購入し、飲食物の提供者が飲食物とともに配布等する使い捨て部10を連結して使用する利用形態も挙げられる。
【符号の説明】
【0083】
1…カトラリー、10…使い捨て部、11…ヘッド部、12…ネック部、12e…ネック部の縁、12H…貫通孔、20…ハンドル部、21…下側基部、21B…底部、21E…下側縁部、21G…ガイド溝、22…上側カバー部、22C…凸部(リブ)、22T…上部。22E…上側縁部、22e…側縁部、22R…ガイドリブ、22P…凸片、
31…受け部、31P…凸部、31R…受け部リブ、31T…下側縁部の上縁、21t…下側基部の先端縁、L1…カトラリーの全長、L2…ハンドル部の長さ、L3ハンドル部の幅、L4…使い捨て部の長さ、L5…ヘッド部の長さ、L6…ネック部の長さ、L7…ネック部の受け部に嵌る長さ、L8…ヘッド部の最大幅、L9ネック部の最小幅、50…多層紙、51…表層、52…中層。80A…支持台、80t…支持台の線端、81…圧子、L20…保持長さ。
図1
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