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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025671
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】混合変調レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20250214BHJP
   H01S 5/12 20210101ALI20250214BHJP
   G02F 1/035 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
H01S5/026 616
H01S5/12
H01S5/026 618
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130691
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】小林 亘
(72)【発明者】
【氏名】進藤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】八坂 洋
(72)【発明者】
【氏名】横田 信英
【テーマコード(参考)】
2K102
5F173
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB01
2K102DB04
2K102DB08
2K102DC08
2K102EB01
2K102EB02
2K102EB20
2K102EB29
5F173AB13
5F173AB14
5F173AD12
5F173AD19
5F173AH30
5F173AR35
(57)【要約】
【課題】出力変調光の周波数揺らぎを抑制してより容易に周波数応答特性の最適化ができるようにする。
【解決手段】レーザ部101からの光出力は、合分波構造103により第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとに分波され、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bを伝搬し、各々で変調される。第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bを伝搬してきた光は、素子端面の反射部104で反射され、合分波構造103へ入力され、レーザ部101の活性層による光導波路へと帰還される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路構造を備える分布帰還型レーザからなるレーザ部と、
注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する第1変調光導波路と、
注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する第2変調光導波路と、
前記レーザ部からの光出力を前記第1変調光導波路と前記第2変調光導波路とに分波し、前記第1変調光導波路から前記レーザ部への光出力および前記第2変調光導波路から前記レーザ部への光出力を合波する合分波構造と、
前記第1変調光導波路および前記第2変調光導波路の端部に設けられた反射部と
を備える混合変調レーザ。
【請求項2】
請求項1記載の混合変調レーザにおいて、
前記合分波構造は、多モード干渉型光合分波器から構成されている混合変調レーザ。
【請求項3】
請求項1記載の混合変調レーザにおいて、
前記合分波構造は、Y分岐光導波路から構成されている混合変調レーザ。
【請求項4】
請求項1記載の混合変調レーザにおいて、
前記合分波構造は、方向性結合器から構成されている混合変調レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合変調レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
直接変調型の半導体レーザは、インターネット技術の爆発的な進展に伴って、超大容量の光信号を処理することが不可欠となったデータセンターなどに用いられる低コストな高速光信号発生器として不可欠な光源装置である。直接変調半導体レーザの応答帯域は、その緩和振動周波数で制限を受けるため、高速化には応答帯域の増加が必要である。緩和振動周波数frは、半導体レーザの利得定数Ag、キャリア寿命時間τs、および光子寿命時間τpを用いて、以下の式で表される。
【0003】
【数1】
【0004】
このため、半導体レーザの応答速度向上に向けて、活性層を構成する材料の改良による利得定数の増加や共振器長の短尺化による光子寿命時間の低減に主眼が置かれてきた。しかし、利得定数は物性定数のため飛躍的な改善は難しく、また共振器長を短くすることは素子の発熱の問題で制限を受けるため、その応答帯域は40GHz程度に留まっていた(非特許文献1)。
【0005】
上述した緩和振動周波数による帯域制限を打破する技術として、光子と光子の共鳴現象(光子-光子共鳴、Photon-Photon Resonance;PPR)を用いたレーザが提案されている(非特許文献2、非特許文献3)。このレーザは、半導体レーザに外部共振器を設け、設けた外部共振器からの遅延時間を与えられた帰還光とレーザ発振光とのPPRによって、応答特性に第2の共鳴状の感度改善領域を出現させ、帯域拡大を実現している。当該技術を用いることで、108GHzの3dB帯域を実現した報告がある(非特許文献4)。
【0006】
上記の光子共鳴効果を用いた高速直接変調レーザでは、図9に示すように半導体レーザの直接変調時の応答感度が高変調周波数領域で変調周波数の自乗に反比例して急激に低減する(図9)。このため、光子共鳴効果による第2の共鳴状の感度改善領域を低変調周波数領域に設定すれば帯域拡大には貢献できる(図10に示す一点鎖線。図中の矢印は帯域拡大量を表す)。しかしながら、これを高い変調周波数領域に設定すると、中間周波数領域に細い点線で示した規格化感度が-3dBとなる値よりも応答感度が劣化する領域が発生し(図10に示す実線)、十分な帯域拡大が実現できない。
【0007】
この問題を解決する技術として、図11に示すように、レーザ領域331と変調領域332とを備える混合変調レーザが提案されている(非特許文献5)。この混合変調レーザは、例えばn型の化合物半導体からなる基板301の上にレーザ領域331および変調領域332が形成され、レーザ領域331は、レーザ用の活性層302を備え、共振器内に形成された回折格子303によって単一波長で発振する。
【0008】
変調領域332は、光損失変調用の活性層304を備える。また、活性層302、活性層304の上には、p型の化合物半導体からなる半導体層305が形成され、レーザ領域331、変調領域332の各々に、電極308,電極309が形成されている。また、変調領域332の端面には、反射膜306が形成され、変調領域332を外部共振器としている。活性層302への注入電流変調と同時に、外部共振器としても作用する変調領域332の活性層304への注入電流を変調し、変調領域332における光損失を変調している。
【0009】
変調領域332における変調では、高変調周波数領域の応答感度の劣化は変調周波数に反比例し、一般的な半導体レーザの応答特性に比べて劣化が少ない。このため、非特許文献5の混合変調レーザでは、その応答特性は図12に示す実線のように高変調周波数領域で緩やかに低減する特性を実現でき、帯域拡大が実現できる(図12に示す矢印)。この混合変調レーザでは、変調領域332が外部共振器構造としても作用するので、光子共鳴効果による第2の共鳴状の感度改善領域を出現させることができ、当該レーザ構成を導入することで、図13の実線に示すような応答特性を有し、矢印で示したように帯域拡大を実現した超高速な直接変調可能な半導体レーザが実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】K. Nakahara et al., "112-Gb/s PAM-4 Uncooled (25°C to 85°C) Directly Modulation of 1.3-μm InGaAlAs-MQW DFB BH Lasers with Record High Bandwidth", 45th European Conference on Optical Communication , DOI: 10.1049/cp.2019.1025, ISBN:978-1-83953-185-9, 2019.
【非特許文献2】M. Radziunas et al., "Improving the Modulation Bandwidth in Semiconductor Lasers by Passive Feedback", IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, vol. 13, no. 1, pp. 136-142, 2007.
【非特許文献3】T. Uusitalo et al., "Analysis of the photon-photon resonance influence on the direct modulation bandwidth of dual-longitudinal-mode distributed feedback lasers", Optical and Quantum Electronics volume, vol. 49, Article number: 46, 2017.
【非特許文献4】S. Yamaoka et al., "239.3-Gbit/s NET RATE PAM-4 TRANSMISSION USING DIRECTLY MODULATED MEMBRANE LASERS ON HIGH-THERMAL-CONDUCTIVITY SiC", 45th European Conference on Optical Communication, DOI: 10.1049/cp.2019.1022, ISBN:978-1-83953-185-9, 2019.
【非特許文献5】M. Kanno et al., "Measurement of Intrinsic Modulation Bandwidth of Hybrid Modulation Laser", IEEE Photonics Technology Letters, vol. 32, no. 13, pp. 839-842, 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、非特許文献5に示した混合変調レーザでは、変調領域が逆バイアス電圧印加によるバンド端波長の長波長化(フランツケルディシュ効果や量子閉じ込めシュタルク効果)を用いた電界吸収型光導波路による光損失変調を原理として用いている。このため、逆バイアス電圧を印加することで図14に示すように透過光強度を低減するように光損失を増大できる。
【0012】
しかし、図15に示すように、逆バイアス電圧の印加により、光損失と同時にチャープパラメータも変化する。チャープパラメータ(α)は、光強度と位相変動を結びつけるパラメータであり、位相変動量Δφは光強度I、光強度変動量ΔIを用いてΔφ=α・ΔI/(2I)と表される。このため、変調領域の光損失を変調すると、強度変動を通して位相も同時に変化してしまい、出力変調光の周波数揺らぎに影響を与え、混合変調レーザのレーザ光が伝搬される光ファイバの伝送特性に大きな影響を及ぼすことが問題であった。
【0013】
さらに、図16に示すように、変調領域からの帰還光とレーザ領域での発振光との位相差(Δφ)が、混合変調レーザの周波数応答特性に影響を及ぼすため、その帰還光位相を最適状態に制御する必要があるが、非特許文献5の混合変調レーザでは、位相調整領域がなく、レーザチップ温度や注入電流量および変調領域へのバイアス電圧を調整して最適動作条件とする必要があったが、バイアス電圧が周波数応答特性にも影響するため、調整が煩雑であった。
【0014】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、出力変調光の周波数揺らぎを抑制してより容易に周波数応答特性の最適化ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る混合変調レーザは、光導波路構造を備える分布帰還型レーザからなるレーザ部と、注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する第1変調光導波路と、注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する第2変調光導波路と、レーザ部からの光出力を第1変調光導波路と第2変調光導波路とに分波し、第1変調光導波路からレーザ部への光出力および第2変調光導波路からレーザ部への光出力を合波する合分波構造と、第1変調光導波路および第2変調光導波路の端部に設けられた反射部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ部からの光出力を第1変調光導波路と第2変調光導波路とに分波し、第1変調光導波路からレーザ部への光出力および第2変調光導波路からレーザ部への光出力を合波するので、出力変調光の周波数揺らぎを抑制してより容易に周波数応答特性の最適化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る混合変調レーザの構成を示す構成図である。
図2図2は、合分波構造103を構成する多モード干渉型光合分波器を導波する光の分布を示す分布図である。
図3図3は、第1変調光導波路102aの伝搬定数がΔβだけ変化し、第2変調光導波路102bの伝搬定数が-Δβだけ変化した場合の規格化光損失を示す特性図である。
図4図4は、第1変調光導波路102aの伝搬定数をβu=β+(1+δ)・Δβ/2だけ変化させ、第2変調光導波路102bの位相制御用光導波路の伝搬定数をβl=β-(1-δ)・Δβ/2だけ変化させた場合のレーザ部101への帰還光強度とチャープパラメータの変化を示す特性図である。
図5図5は、混合変調レーザ100の周波数応答特性を示す特性図である。
図6図6は、混合変調レーザ100の100Gb/sNRZ信号での動作時のアイ波形を示す特性図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る混合変調レーザの構成を示す構成図である。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係る混合変調レーザの構成を示す構成図である。
図9図9は、一般的な直接変調型の半導体レーザの周波数応答特性を示す特性図である。
図10図10は、光子共鳴効果を用いた半導体レーザの周波数応答特性を示す特性図である。
図11図11は、従来の混合変調レーザの構成を示す構成図である。
図12図12は、従来の混合変調レーザの周波数応答特性を示す特性図である。
図13図13は、従来の混合変調レーザの周波数応答特性を示す特性図である。
図14図14は、従来の混合変調レーザの電界吸収型光導波路による変調領域の透過光出力強度の逆バイアス電圧依存性を示す特性図である。
図15図15は、従来の混合変調レーザの電界吸収型光導波路による変調領域のチャープパラメータの逆バイアス電圧依存性を示す特性図である。
図16図16は、従来の混合変調レーザにおける、変調領域へのバイアス電圧と、変調領域からの帰還光とレーザ領域での発振光との位相差Δφとの関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る混合変調レーザについて説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る混合変調レーザ100について、図1を参照して説明する。図1は、混合変調レーザ100を平面視した状態を模式的に示している。混合変調レーザ100は、レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103を備える。レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103は、同一の基板の上にモノリシックに集積することができる。
【0020】
レーザ部101は、導波路構造を備える分布帰還型レーザであり、共振器内に形成された回折格子121によって単一波長で発振する。レーザ部101は、第1電極111により変調電流が注入され、発振するレーザを変調する。
【0021】
レーザ部101は、基板の上に形成された活性層をコアとする光導波路構造とされ、活性層が形成されている領域に回折格子121が形成されている。レーザ部101を構成する活性層は、バンド端波長が1.55μmとなるInGaAlAsからなる量子井戸層による多重量子井戸構造とすることができる。この多重量子井戸構造は、量子井戸層を5層とすることができる。レーザ部101は、導波方向の長さを150μmとし、活性層の幅(コア幅)は、1.5μmとすることができる。
【0022】
第1変調光導波路102aは、第2電極112aにより注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する。同様に、第2変調光導波路102bは、第3電極112bにより注入される電流の変調により光損失が変調するとともに屈折率が変調する。第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bの各々は、導波方向の長さを150μmとし、コア幅を1.5μmとすることができる。第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bは、第2電極112a、第3電極112bを介した逆バイアス電圧印加によって、電気光学(ポッケルス)効果を通して屈折率を制御する。
【0023】
合分波構造103は、レーザ部101からの光出力を第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとに分波し、第1変調光導波路102aからレーザ部101への光出力および第2変調光導波路102bからレーザ部101への光出力を合波する。合分波構造103は、例えば、多モード干渉型光合分波器から構成することができる(図2)。
【0024】
合分波構造103を構成する多モード干渉型光合分波器は、幅10μm、導波方向の長さを110μmとすることができる。また、多モード干渉型光合分波器は、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bの側の出力ポート位置を、多モード干渉型光合分波器の幅方向の中央からそれぞれ±2.5μmずらした位置に設定し、入力光の光強度を2分岐する3dBカプラとすることができる。
【0025】
また、第1変調光導波路102aおよび第2変調光導波路102bの端部には、反射部104が設けられている。反射部104は、反射率90%以上の高反射コーティング膜などから構成することができる。また、レーザ部101の端面(出力端)には、反射防止膜105を備えることができる。反射防止膜105は、反射率がほぼ0%となる無反射コーティング膜などから構成することができる。
【0026】
レーザ部101からの光出力は、合分波構造103により第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとに分波され、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bを伝搬し、各々で変調される。第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bを伝搬してきた光は、素子端面の反射部104で反射され、合分波構造103へ入力され、レーザ部101の活性層による光導波路へと帰還される。合分波構造103、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bおよび反射部104により、入出力ポートを共通とした反射型マッハツェンダ変調器が構成されている。
【0027】
また、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bは、各々の長さを同じとし、その伝搬定数は同じ値を取る構成としている。
【0028】
第2電極112aと第3電極112bとへ印加する電圧を、同じ値でかつ符号の異なる構成とするプッシュプル(作動)動作とし、第1変調光導波路102aの伝搬定数がΔβだけ変化し、第2変調光導波路102bの伝搬定数が-Δβだけ変化した場合の、これらの領域の規格化光損失は、図3に示すようになる。図3において、Lは第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bの長さの2倍の値(往復長)となる。
【0029】
第2電極112a、第3電極112bに印加する電圧振幅を制御して、電圧が印加される領域の屈折率を制御してΔβLを制御することで、上述した入出力ポートを共通としたマッハツェンダ変調器の損失を制御でき、混合変調レーザ100の共振器内部損失を制御することができた。
【0030】
また、図3に示すように、電圧振幅を同一としたプッシュプル動作を行うことでレーザ部101へ帰還される光の位相を変化しない状態で帰還が行えることがわかる。さらに、プッシュプル動作時に印加電圧振幅を異なった値とし、第1変調光導波路102aの伝搬定数をβu=β+(1+δ)・Δβ/2だけ変化させ、第2変調光導波路102bの位相制御用光導波路の伝搬定数をβl=β-(1-δ)・Δβ/2だけ変化させることでレーザ部101へ帰還される光の位相を制御できる(図4)。なお、δは非対称パラメータである。この制御により、混合変調レーザ100を最適条件で動作させるために必要な帰還光位相に設定することができ、出力変調光の周波数揺らぎが制御できた。
【0031】
混合変調レーザ100の周波数応答特性を図5に示す。第1電極111および第2電極112a、第3電極112bに同時に電気信号を印加して、レーザ部101への注入電流変調と、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bの屈折率を変調することによる反射型マッハツェンダ変調器の損失変調を同時に実現している。全素子長が410μmとなっていることを反映して、120GHz近傍に光子共鳴効果による第2の感度改善ピークが観測でき、混合変調レーザ100が、140GHz以上の帯域を有する半導体レーザ光源であることが確認できた。
【0032】
第1電極111および第2電極112a、第3電極112bに、大振幅100Gb/sNRZ(non return-to-zero)信号を変調信号として印加した際の出力光アイ波形を図6に示す。図6に示すように、混合変調レーザ100は、中央のアイ開口部の消光比が3dB以上ある良好なアイ波形を得ることができた。
【0033】
ところで、レーザ部101の回折格子121は、位相シフト型回折格子とすることができる。位相シフト型回折格子としてその位相シフト量、位相シフト位置を制御しても、上述同様の特性を得ることができることは言うまでもない。また、上述では、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bの屈折率制御に関して電気光学(ポッケルス)効果を原理とした構造を示したが、電流注入を可能とする構造を導入することでキャリアプラズマ効果による屈折率制御を行える構造としても同様の効果を得ることができることも言うまでもない。
【0034】
さらに、上述では、レーザ部101と合分波構造103とを直接結合する構造としたが、両者を光導波路で結合する構造としても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、上述では、第1変調光導波路102aのΔβがプラス、第2変調光導波路102bのΔβがマイナスになる動作を説明したが、これらと逆の動作も可能であることも言うまでもない。
【0035】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る混合変調レーザ100aについて、図7を参照して説明する。混合変調レーザ100aは、レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103aを備える。レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103aは、同一の基板の上にモノリシックに集積することができる。
【0036】
レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bは、前述した実施の形態1と同様である。実施の形態2では、合分波構造103aを、Y分岐光導波路(Y分岐光導波路型光合分波器)から構成した。合分波構造103aによって、レーザ部101からの光出力を、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとへ、当分に分配することを可能とする3dBカプラ構造とした。例えば、合分波構造103aを構成するY分岐光導波路の導波方向の長さは120μmとし、光導波路のコア幅は1.5μmとすることができる。
【0037】
実施の形態2に係る混合変調レーザ100aも、実施の形態1に係る混合変調レーザ100と同様な特性を得ることができ、良好な高速変調動作特性を実現して、混合変調レーザ100aの100Gb/sNRZ信号での動作を確認することができた。
【0038】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る混合変調レーザ100bについて、図8を参照して説明する。混合変調レーザ100bは、レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103bを備える。レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102b、および合分波構造103bは、同一の基板の上にモノリシックに集積することができる。
【0039】
レーザ部101、第1変調光導波路102a、第2変調光導波路102bは、前述した実施の形態1と同様である。実施の形態3では、合分波構造103bを、方向性結合器(方向性結合器構造光合分波器)から構成した。合分波構造103bによって、レーザ部101からの光出力を、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとへ、当分に分配することを可能とする3dBカプラ構造とした。例えば、合分波構造103bを構成する方向性結合器においては、光導波路のコア幅を1.5μmとし、導波路間隔(コア間隔)を1μmとし、結合器部分の導波方向長さを140μmとすることができる。
【0040】
混合変調レーザ100bにおいて、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとの伝搬定数を一致させた場合には、反射型マッハツェンダ変調器構造からの帰還光が合分波構造103bを構成する方向性結合器の一方の光導波路へ結合してしまう。このため、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bとの初期伝搬定数差を、ΔβL=πとすることが重要となる。
【0041】
また、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bにおける変調時に、損失となる光成分が合分波構造103bを構成する方向性結合器の一方の光導波路へ結合するため、これを無反射状態で外部に取り出す必要がある。このため、合分波構造103bを構成する方向性結合器の一方の光導波路には、平面視で斜め構造の光出射導波路106を接続した。光出射導波路106は、混合変調レーザ100bの導波方向に平行な素子端面に終端している。
【0042】
混合変調レーザ100bの素子端面への光出射導波路106の入射角度を7°とすることで、残留反射率を10-4にまで低減することができた。また、光出射導波路106の出射端面に反射防止膜を設けることで、さらな反射率の低減が可能となる。出射端面に反射防止膜を設けた光出射導波路106を用いることで、第1変調光導波路102aと第2変調光導波路102bにおける損失分の光成分を、出射面での反射なしに外部へ取り出すことができる。これにより、レーザ部101への混入成分を十分に低減することに成功し、良好な高速変調動作特性を実現して、混合変調レーザ100bの100Gb/sNRZ信号での動作を確認することができた。
【0043】
以上に説明したように、本発明によれば、レーザ部からの光出力を第1変調光導波路と第2変調光導波路とに分波し、第1変調光導波路からレーザ部への光出力および第2変調光導波路からレーザ部への光出力を合波するので、出力変調光の周波数揺らぎを抑制してより容易に周波数応答特性の最適化ができるようになる。
【0044】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0045】
100…混合変調レーザ、101…レーザ部、102a…第1変調光導波路、102b…第2変調光導波路、103…合分波構造、104…反射部、105…反射防止膜、111…第1電極、112a…第2電極、112b…第3電極、121…回折格子。
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