(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025692
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20250214BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01F7/18 B
H01F7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130732
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一雄
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB08
5E048AB10
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】ソレノイドのプランジャの位置検出のための演算処理を簡素化できる位置検出装置を提供する。
【解決手段】本発明は、励磁用のコイル11に電流16を流すことで可動磁極としてのプランジャ12を固定磁極13に吸着させ、前記コイル11に流れる電流16を止めることで前記プランジャ12を固定磁極13から離脱させるソレノイド100と、前記コイル11の一方端末11a及び他方端末11bが電気的に接続され、前記コイル11に電流16,17を流す駆動回路51と、前記駆動回路51を制御する駆動制御部52と、前記コイル11に発生する逆起電力を検出する逆起電力検出部53と、前記逆起電力検出部53に基づいて前記プランジャ12の位置を検出する位置検出部54を有する位置検出装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁用のコイルに電流を流すことで可動磁極としてのプランジャを固定磁極に吸着させ、前記コイルに流れる電流を止めることで前記プランジャを固定磁極から離脱させるソレノイド100と、
前記コイルの一方端末及び他方端末が電気的に接続され、前記コイルに電流を流す駆動回路と、
前記駆動回路を制御する駆動制御部と、
前記コイルに発生する逆起電力を検出する逆起電力検出部と、
前記逆起電力検出部に基づいて前記プランジャの位置を検出する位置検出部と、
を有し、
前記駆動制御部は、前記コイルに第1の電圧を印加して電流を流すことで前記プランジャを前記固定磁極に吸着させた状態を維持しながら、前記第1の電圧の印加を第1の期間停止するように前記駆動回路を制御する機能(x)を有し、
前記位置検出部は、前記第1の期間の開始時に前記コイルに発生する逆起電力を前記逆起電力検出部により検出することで前記コイルの他方端末にプラスの電圧が発生し、前記他方端末のプラスの電圧が前記第1の期間の終わりに向けて低下する際に第1の基準電圧と比較され2値化される第1のパルス波形を計測し、前記第1のパルス波形におけるパルス幅が第1の閾値幅より長いと前記プランジャが吸着位置にあると検出し、前記パルス幅が前記第1の閾値より短いと前記プランジャが離脱位置にあると検出する機能を有し、
前記駆動制御部は、前記コイルに電流を流さないことで前記プランジャを前記固定磁極から離脱させた状態を維持しながら、前記吸着させた状態を維持する際に前記コイルに流す電流とは逆方向の電流を、第2の電圧を第2の期間印加して流すように制御する機能(y)を有し、
前記位置検出部は、前記第2の期間の終了時に前記コイルに発生する逆起電力を前記逆起電力検出部により検出することで前記コイルの他方端末に0Vの電圧が発生し、前記他方端末の0Vの電圧が前記第2の期間の終了時から徐々にプラスに上昇する際に第2の基準電圧と比較され2値化される第2のパルス波形を計測し、前記第2のパルス波形におけるパルス幅が第2の閾値幅より短いと前記プランジャが離脱位置にあると検出し、前記パルス幅が前記第2の閾値幅より長いと前記プランジャが吸着位置にあると検出する機能を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動回路はHブリッジ回路を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記逆起電力検出部はコンパレータを有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、
前記機能(x)は、
前記コイルの一方端末から他方端末に電流が流れるように前記コイルに第1の電圧を印加する機能(a)と、
前記機能(a)の前記第1の電圧の印加を停止する機能(b)と、
前記機能(a)により前記第1の電圧を印加して前記コイルに前記電流を流すことにより、前記プランジャを前記固定磁極に吸着させながら前記機能(b)により前記第1の電圧の印加を停止した後に前記第1の期間経過時に前記機能(a)により前記第1の電圧を前記コイルに印加する機能(c)と、を有し、
前記機能(y)は、
前記コイルに前記逆方向の電流が流れるように前記コイルに前記第2の電圧を印加する機能(d)と、
前記機能(d)の前記第2の電圧の印加を停止する機能(e)と、
前記コイルに前記電流を流さないことで前記プランジャを前記固定磁極から離脱させながら前記機能(d)により前記第2の電圧を前記コイルに印加した後に前記第2の期間経過時に前記機能(e)により前記第2の電圧の印加を停止する機能(f)と、を有することを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドにおけるプランジャの位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドは、励磁用のコイルに電流を流すことでプランジャを固定磁極に吸着させ、コイルに流れる電流を止めることでプランジャを固定磁極から離脱させるような構成である。このようなソレノイドには様々な用途がある。例えば、自動販売機内のコインメック、安全装置やセキュリティなどのロック機能として多く使用されている。 また複合機やプリンターの給紙装置の部品としても使用されている。
【0003】
一方、ソレノイドの使用時にプランジャが正確な位置にあるかについて検出できることが求められる。特許文献1にはプランジャ位置検出装置が開示されている。
【0004】
しかし、上記のプランジャ位置検出装置では、アナログの信号処理が複雑だったり、回路サイズが大きくなり、コストが高くなる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の種々の態様は、ソレノイドのプランジャの位置検出のための演算処理を簡素化できる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0008】
[1]励磁用のコイルに電流を流すことで可動磁極としてのプランジャを固定磁極に吸着させ、前記コイルに流れる電流を止めることで前記プランジャを固定磁極から離脱させるソレノイドと、
前記コイルの一方端末及び他方端末が電気的に接続され、前記コイルに電流を流す駆動回路と、
前記駆動回路を制御する駆動制御部と、
前記コイルに発生する逆起電力を検出する逆起電力検出部と、
前記逆起電力検出部に基づいて前記プランジャの位置を検出する位置検出部と、
を有し、
前記駆動制御部は、前記コイルに第1の電圧を印加して電流を流すことで前記プランジャを前記固定磁極に吸着させた状態を維持しながら、前記第1の電圧の印加を第1の期間停止するように前記駆動回路を制御する機能(x)を有し、
前記位置検出部は、前記第1の期間の開始時に前記コイルに発生する逆起電力を前記逆起電力検出部により検出することで前記コイルの他方端末にプラスの電圧が発生し、前記他方端末のプラスの電圧が前記第1の期間の終わりに向けて低下する際に第1の基準電圧と比較され2値化される第1のパルス波形を計測し、前記第1のパルス波形におけるパルス幅が第1の閾値幅より長いと前記プランジャが吸着位置にあると検出し、前記パルス幅が前記第1の閾値より短いと前記プランジャが離脱位置にあると検出する機能を有し、
前記駆動制御部は、前記コイルに電流を流さないことで前記プランジャを前記固定磁極から離脱させた状態を維持しながら、前記吸着させた状態を維持する際に前記コイルに流す電流とは逆方向の電流を、第2の電圧を第2の期間印加して流すように制御する機能(y)を有し、
前記位置検出部は、前記第2の期間の終了時に前記コイルに発生する逆起電力を前記逆起電力検出部により検出することで前記コイルの他方端末に0Vの電圧が発生し、前記他方端末の0Vの電圧が前記第2の期間の終了時から徐々にプラスに上昇する際に第2の基準電圧と比較され2値化される第2のパルス波形を計測し、前記第2のパルス波形におけるパルス幅が第2の閾値幅より短いと前記プランジャが離脱位置にあると検出し、前記パルス幅が前記第2の閾値幅より長いと前記プランジャが吸着位置にあると検出する機能を有することを特徴とする位置検出装置。
【0009】
本発明の一態様に係る上記[1]の位置検出装置によれば、駆動制御部は、コイルに第1の電圧を印加して電流を流すことでプランジャを固定磁極に吸着させた状態を維持しながら、第1の電圧の印加を第1の期間停止するように駆動回路を制御する機能(x)を有する。つまり、コイルの一方端末から他方端末に電流が流れるようにコイルに第1の電圧を印加した後、第1の電圧の印加を停止することで第1の期間の開始時にコイルに逆起電力が発生する。この逆起電力を逆起電力検出部により検出することでコイルの他方端末にプラスの電圧が発生し、前記この他方端末のプラスの電圧が第1の期間の終わりに向けて低下する際に第1の基準電圧と比較され2値化される第1のパルス波形を計測し、第1のパルス波形におけるパルス幅が第1の閾値幅より長いとプランジャが吸着位置にあると検出し、パルス幅が第1の閾値幅より短いとプランジャが離脱位置にあると検出する機能を位置検出部が有する。
これに加え、駆動制御部は、コイルに電流を流さないことでプランジャを固定磁極から離脱させた状態を維持しながら、上記の吸着させた状態を維持する際にコイルに流す電流とは逆方向の電流を、第2の電圧を第2の期間印加して流すように制御する機能(y)を有する。つまり、第2の期間の終了時にコイルに逆起電力が発生する。この逆起電力を逆起電力検出部により検出することでコイルの他方端末に0Vの電圧が発生し、この他方端末の0Vの電圧が第2の期間の終了時から徐々にプラスに上昇する際に第2の基準電圧と比較され2値化される第2のパルス波形を計測し、この第2のパルス波形におけるパルス幅が第2の閾値幅より短いとプランジャが離脱位置にあると検出し、パルス幅が第2の閾値幅より長いとプランジャが吸着位置にあると検出する機能を位置検出部が有する。
上述したように駆動電流の方向を変えることにより、プランジャの吸着状態と離脱状態のいずれもコイルの1つの同じ端末(他方端末)の電圧を利用してプランジャの位置検出が行われる。このため、簡素化した信号処理によりプランジャの位置を検出することができる。
【0010】
[2]上記[1]において、
前記駆動回路はHブリッジ回路を有することを特徴とする位置検出装置。
【0011】
[3]上記[1]において、
前記逆起電力検出部はコンパレータを有することを特徴とする位置検出装置。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記機能(x)は、
前記コイルの一方端末から他方端末に電流が流れるように前記コイルに第1の電圧を印加する機能(a)と、
前記機能(a)の前記第1の電圧の印加を停止する機能(b)と、
前記機能(a)により前記第1の電圧を印加して前記コイルに前記電流を流すことにより、前記プランジャを前記固定磁極に吸着させながら前記機能(b)により前記第1の電圧の印加を停止した後に前記第1の期間経過時に前記機能(a)により前記第1の電圧を前記コイルに印加する機能(c)と、を有し、
前記機能(y)は、
前記コイルに前記逆方向の電流が流れるように前記コイルに前記第2の電圧を印加する機能(d)と、
前記機能(d)の前記第2の電圧の印加を停止する機能(e)と、
前記コイルに前記電流を流さないことで前記プランジャを前記固定磁極から離脱させながら前記機能(d)により前記第2の電圧を前記コイルに印加した後に前記第2の期間経過時に前記機能(e)により前記第2の電圧の印加を停止する機能(f)と、を有することを特徴とする位置検出装置。
【0013】
[5]上記[2]において、
前記Hブリッジ回路は、
電源と、
前記電源のプラス端子に電気的に接続された第1のスイッチング素子の一方端と、
前記コイルの一方端末に電気的に接続された前記第1のスイッチング素子の他方端及び第2のスイッチング素子の一方端と、
前記第1のスイッチング素子の一方端及び前記電源のプラス端子に電気的に接続された第3のスイッチング素子の一方端と、
前記コイルの前記他方端末に電気的に接続された前記第3のスイッチング素子の他方端及び第4のスイッチング素子の一方端と、
前記電源のマイナス端子に電気的に接続された前記第2のスイッチング素子の他方端及び前記第4のスイッチング素子の他方端と、を有し、
前記駆動制御部が前記第1のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子の各々をオンにし、且つ前記第2のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子の各々をオフにするように制御した場合に前記第1の電流が流れ、
前記駆動制御部が前記第1のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子の各々をオフにし、前記第2のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子の各々をオンにするように制御した場合に前記第2の電流が流れることを特徴とする位置検出装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の種々の態様によれば、ソレノイドのプランジャの位置検出のための演算処理を簡素化できる位置検出装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一態様に係る位置検出装置を説明するためのブロック図であり、位置検出装置がソレノイドのコイルに電気的に接続された状態を示す模式図である。
【
図2】プランジャが固定磁極から離脱した状態のソレノイドを示す模式図である。
【
図3】
図1に示す駆動制御部から駆動回路に送信する駆動信号のタイミングチャートである。
【
図4】コイルに流す駆動電流のタイミングチャートである。
【
図5】
図1に示すコイルの一方端末11aから他方端末11bに
図4に示す吸着保持の駆動電流を流すために、コイルに印加する第1の電圧V
1のタイミングチャートを含む図である。
【
図6】
図2に示すプランジャの固定磁極からの離脱のために
図4に示すコイルに流す駆動電流を停止しながら、吸着駆動とは逆方向の電流を間欠的に流すためにコイルに印加する第2の電圧V
3のタイミングチャートを含む図である。
【
図7】
図1に示す逆起電力検出部が有するコンパレータを示す図である。
【
図8】(A)、(B)は、
図1に示す駆動回路の一例としてのHブリッジ回路である。
【
図9】
図1に示す駆動回路の一例としてのHブリッジ回路である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係る位置検出装置を説明するためのブロック図であり、位置検出装置がソレノイドのコイル11に電気的に接続された状態を示す模式図である。
図1は、可動磁極としてのプランジャ12が固定磁極13に吸着された状態のソレノイドを示している。
図2は、プランジャ12が固定磁極13から離脱した状態のソレノイドを示す模式図である。
【0018】
ソレノイド100は、
図1に示すように励磁用のコイル11に駆動電流16を流すことで可動磁極としてのプランジャ12を固定磁極13に吸着させ、コイル11に流れる駆動電流16を止めることで
図2に示すようにプランジャ12を固定磁極13から離脱させるように構成されている。詳細には、棒状のプランジャ12及びそのプランジャ12の外側に巻かれたコイル11がケース10内に配置され、ケース10におけるプランジャ12の先端側には固定磁極13が配置されている。プランジャ12の基端側には復帰ばね21を取り付ける復帰ばね取付板22が形成されている。復帰ばね21は、プランジャ12の基端側のケース10の端部と復帰ばね取付板22との間に配置されている。
図1に示すように、コイル11に駆動電流を流して磁化させたプランジャ12が固定磁極13に吸着されると、復帰ばね21が縮んだ状態となる。
図2に示すようにコイル11に流す駆動電流を停止して磁化していないプランジャ12が固定磁極13に吸着される力を失うと復帰ばね21が伸びる力によってプランジャ12が固定磁極13から離脱され、復帰ばね21が伸びた状態となり、プランジャ12が固定磁極13から離脱する。
【0019】
図1に示す位置検出装置は駆動回路51を有し、この駆動回路51はコイル11の一方端末11a及び他方端末11bが電気的に接続されている。駆動回路51からコイル11に駆動電流16,17を流すことができる。この駆動回路51は駆動制御部52に電気的に接続されており、駆動制御部52によって駆動回路51の動作を制御する。また、位置検出装置は逆起電力検出部53を有し、逆起電力検出部53によりコイル11に発生する逆起電力を検出することができる。逆起電力検出部53は位置検出部54に電気的に接続されており、位置検出部54は逆起電力検出部53で検出された逆起電力に基づいてプランジャ12の位置を検出することができる。
【0020】
駆動制御部52は、コイル11に
図5に示す第1の電圧V
1を印加して
図1及び
図4に示す駆動電流16を流すことでプランジャ12を固定磁極13に吸着させた状態を維持しながら、第1の電圧V
1の印加を
図5に示す第1の期間T
1停止するように駆動回路51を制御する機能(x)を有する。つまり、機能(x)は、プランジャ12を固定磁極13に吸着させる吸着駆動を行い、吸着後、吸着保持できる程度に吸着駆動を短時間休止する機能である。
【0021】
ここでの第1の期間T
1は、その期間T
1だけ第1の電圧V
1の印加を停止してもプランジャ12が固定磁極13に吸着された状態を維持できる期間である。なお、
図4は、コイル11に流す駆動電流のタイミングチャートである。プランジャ12を固定磁極13に吸着させる吸着駆動のときは
図1に示す矢印の方向に駆動電流16を流し、吸着保持のときは駆動電流16を停止する第1の期間T
1を間欠的に設けている。
図5は、
図1に示すコイル11の一方端末11aから他方端末11bに
図4に示す吸着保持の駆動電流を流すために、コイル11に印加する第1の電圧V
1のタイミングチャートを含む図である。
【0022】
駆動回路51は、例えば
図8(A)、(B)に示すHブリッジ回路を有する。このHブリッジ回路は電源60及びコイル11を有し、電源60のプラス端子に第1のスイッチング素子61の一方端が電気的に接続されている。コイル11の一方端末11aには第1のスイッチング素子61の他方端及び第2のスイッチング素子62の一方端が電気的に接続されている。第1のスイッチング素子61の一方端及び電源60のプラス端子には第3のスイッチング素子63の一方端が電気的に接続されている。コイル11の他方端末11bには第3のスイッチング素子63の他方端及び第4のスイッチング素子64の一方端が電気的に接続されている。電源60のマイナス端子には第2のスイッチング素子62の他方端及び第4のスイッチング素子64の他方端が電気的に接続されている。
【0023】
図1に示す駆動制御部52が第1のスイッチング素子61及び第4のスイッチング素子64の各々をオンにし、且つ第2のスイッチング素子62及び第3のスイッチング素子63の各々をオフにするように制御した場合に、駆動電流16が流れる(
図8(A)参照)。
【0024】
図1に示す駆動制御部52が第1のスイッチング素子61及び第4のスイッチング素子64の各々をオフにし、第2のスイッチング素子62及び第3のスイッチング素子63の各々をオンにするように制御した場合に、駆動電流16とは逆方向の電流17が流れる(
図8(B)参照)。このように駆動回路51としてのHブリッジ回路は駆動制御部52の指令により、コイル11に流れる電流方向を切り替えることができる(
図8(A)、(B)参照)。
【0025】
上記の機能(x)は、以下の機能(a)~(c)を有する。
・機能(a):コイル11の一方端末11aから他方端末11bに電流16が流れるようにコイル11に第1の電圧V1を印加する機能。
・機能(b):上記の機能(a)の第1の電圧V1の印加を停止する機能。
・機能(c):上記の機能(a)により第1の電圧V1を印加してコイル11に電流16を流すことにより、プランジャ11を固定磁極13に吸着させながら上記の機能(b)により第1の電圧V1の印加を停止した後に第1の期間T1経過時に上記の機能(a)により第1の電圧V1をコイル11に印加する機能。
【0026】
上記の機能(a)~(c)を以下に詳細に説明する。
まず、上記の機能(a)は、例えば、
図3に示す駆動On時の駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に第1の電圧V
1が印加され、コイル11の一方端末11aから他方端末11bに吸着駆動の電流16を流す機能である。例えば、
図8(A)に示すように、駆動制御部52が第1のスイッチング素子61及び第4のスイッチング素子64の各々をオンにし、且つ第2のスイッチング素子62及び第3のスイッチング素子63の各々をオフにするように制御することで、吸着駆動の電流16がコイル11に流れる。
【0027】
上記の機能(b)は、例えば、
図3に示す駆動Off時の駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に第1の電圧V
1の印加が停止され、上記の吸着駆動の電流16を流さないようにする機能である。例えば、
図8(A)に示すように、駆動制御部52が第1のスイッチング素子61、第2のスイッチング素子64、第3のスイッチング素子62及び第4のスイッチング素子63の各々をオフにするように制御することで、吸着駆動の電流16が流れない。
【0028】
上記の機能(c)は、例えば、
図1に示すプランジャ11を固定磁極13に吸着させながら上記の機能(b)により第1の電圧V
1の印加を停止した後に、
図3に示す第1の期間T
1経過時に駆動On時の駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に再び第1の電圧V
1が印加され、コイル11の一方端末11aから他方端末11bに吸着駆動の電流16を流す機能である。
なお、
図3は、
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51に送信する駆動信号のタイミングチャートである。
【0029】
位置検出部54は、
図5に示す第1の期間T
1の開始時(吸着駆動から駆動休止の時)にコイル11に発生する逆起電力(コイル11の両端の電圧変化)を逆起電力検出部53により検出することでコイル11の他方端末11bに
図5に示すプラスの電圧V
2が発生し、コイル11の他方端末11bのプラスの電圧V
2が第1の期間T
1の終わりに向けて低下する際に第1の基準電圧33と比較され2値化される第1のパルス波形31,32を計測し、第1のパルス波形31,32におけるパルス幅31aが第1の閾値幅35より長いとプランジャ12が吸着位置にあると検出し、パルス幅32aが第1の閾値35より短いとプランジャ12が離脱位置にあると検出する機能を有する(
図5参照)。なお、第1の閾値幅35は、離脱位置の時の検出パルス幅と吸着位置の時の検出パルス幅の中間程度とするとよい。
【0030】
上記の第1の期間T
1の開始時、即ち
図3に示す駆動OnからOff時に、コイル11の両端電圧が逆に大きく振れ、その後徐々に収束する。具体的には、
図5に示すように、コイル端末11bが逆に大きく振れ、その後徐々に収束する。コイル11に溜まったエネルギーやインダクタンスによりこの電圧の振れ方や収束の様子が異なり、プランジャ12が吸着位置にあると、エネルギーが高いため振れが大きく、インダクタンスが高いため収束が緩やかになる。また、逆起電力検出部53は
図7に示すコンパレータを有する。逆起電力によるコイル11の他方端末11bからの信号をコンパレータによって電圧変化を第1の基準電圧33と比較して2値化する。つまり、2値化信号のパルス幅を計測することにより、プランジャ12の位置を検出することができる。なお、パルス幅とは、駆動がOnからOffへの切り換わりから
図5に示すコイル端末11bの電圧が第1の基準電圧33を横切るまでのHIGHレベルのパルスの幅を意味し、このパルス幅で離脱位置か吸着位置を判定する。
【0031】
上記のように第1の期間T1だけ第1の電圧V1の印加を停止してもプランジャ12が固定磁極13に吸着された状態は維持されるはずであるが、何らかの原因でプランジャ12が固定磁極13から離脱される場合も想定される。そのような場合に、位置検出部54の上記の機能によりプランジャ12の吸着状態が保持されているか否かを検出することが可能となる。
【0032】
駆動制御部52は、
図4に示すようにコイル11に駆動電流16を流さないことで
図2に示すようにプランジャ12を固定磁極13から離脱させた状態を維持しながら、上記のプランジャ12を固定磁極13に吸着させた状態を維持する際にコイル11に流す駆動電流16とは逆方向の電流17を、
図6に示すように第2の電圧V
3を第2の期間T
2印加して流すように制御する機能(y)を有する。つまり、機能(y)は、プランジャ12を固定磁極13から離脱させた状態を保持する程度(即ち吸着方向に動かない程度に)短時間(第2の期間T
2)の吸着駆動を行う機能である。なお、逆方向の電流17は、
図1に示すようにコイル11の他方端末11bから一方端末11aに流れる電流である。
【0033】
ここでの第2の期間T
2は、その期間T
2だけ第2の電圧V
3をコイル11に印加してもプランジャ12が固定磁極13から離脱した状態を維持できる期間である。なお、
図6は、
図2に示すプランジャ12の固定磁極13からの離脱のために
図4に示すコイル11に流す駆動電流を停止しながら、吸着駆動とは逆方向の電流17を間欠的に流すためにコイル11に印加する第2の電圧V
3のタイミングチャートを含む図である。
【0034】
上記の機能(y)は、以下の機能(d)~(f)を有する。
・機能(d):コイル11に駆動電流16とは逆方向の電流17が流れるようにコイル11に第2の電圧V3を印加する機能。
・機能(e):上記の機能(d)の第2の電圧V3の印加を停止する機能。
・機能(f):コイル11に駆動電流16を流さないことでプランジャ12を固定磁極13から離脱させながら、上記の機能(d)により第2の電圧V3をコイル11に印加した後に第2の期間T2経過時に上記の機能(e)により第2の電圧V3の印加を停止する機能。
【0035】
上記の機能(d)~(f)を以下に詳細に説明する。
まず、上記の機能(d)は、例えば、
図3に示す駆動Off時の駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に印加される第2の電圧V
3が停止された後に、コイル11の他方端末11bから一方端末11aに離脱用駆動の電流17、即ち駆動電流16とは逆方向の電流17が流れるようにコイル11に第2の電圧V
3を印加する機能である。例えば、
図8(b)に示すように、駆動制御部52が第1のスイッチング素子61及び第4のスイッチング素子64の各々をオフにし、第2のスイッチング素子62及び第3のスイッチング素子63の各々をオンにするように制御することで、駆動電流16とは逆方向の電流17が流れる。
【0036】
上記の機能(e)は、例えば、
図3に示す駆動Offの駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に第2の電圧V
3の印加が停止され、上記の吸着駆動の電流17を流さないようにする機能である。例えば、
図8(B)に示すように、駆動制御部52が第1のスイッチング素子61、第2のスイッチング素子64、第3のスイッチング素子62及び第4のスイッチング素子63の各々をオフにするように制御することで、吸着駆動の電流16が流れない。
【0037】
上記の機能(f)は、例えば、
図1に示すプランジャ11を固定磁極13から離脱させながら、上記の機能(d)により第2の電圧V
3をコイル11に印加した後に、
図3に示す第2の期間T
2経過時に上記の機能(e)により駆動Offの駆動信号を
図1に示す駆動制御部52から駆動回路51へ送信することで、駆動回路51からコイル11に第2の電圧V
3の印加が停止され、コイル11の他方端末11bから一方端末11aに流す吸着駆動の電流17を停止する機能である。
【0038】
図1に示す位置検出部54は、第2の期間T
2の終了時にコイル11に発生する逆起電力(コイル11の両端の電圧変化)を逆起電力検出部53により検出することでコイル11の他方端末11bに
図6に示す0Vの電圧が発生し、コイル11の他方端末11bの0Vの電圧が
図6に示す第2の期間T
2の終了時から徐々にプラスに上昇する際に第2の基準電圧43と比較され2値化される第2のパルス波形41,42を計測し、第2のパルス波形41,42におけるパルス幅41aが第2の閾値幅45より短いと前記プランジャ12が離脱位置にあると検出し、前記パルス幅42aが前記第2の閾値幅45より長いと前記プランジャ12が吸着位置にあると検出する機能を有する(
図6参照)。なお、第2の閾値幅45は、離脱位置の時の検出パルス幅と吸着位置の時の検出パルス幅の中間程度とするとよい。また、第2の閾値幅45は、第1の閾値幅35と異なる。
【0039】
上記の第2の期間T
2の終了時、即ち
図3に示す駆動OnからOff時に、コイル11の両端電圧が逆に大きく振れ、その後徐々に収束する。具体的には、
図6に示すように、コイル端末11aが逆に大きく振れ、その後徐々に収束する。コイル11に溜まったエネルギーやインダクタンスによりこの電圧の振れ方や収束の様子が異なり、プランジャ12が離脱位置にあると、エネルギーが低いため大きく振れ、インダクタンスが低いため収束が速くなる。つまり、逆起電力によるコイル11の他方端末11bからの信号を
図7に示すコンパレータによって電圧変化を第2の基準電圧43と比較して2値化され、2値化信号のパルス幅を計測することにより、プランジャ12の位置を検出することができる。なお、パルス幅とは、駆動がOnからOffへの切り換わりから
図6に示すコイル端末11bの電圧が第2の基準電圧43を横切るまでのHIGHレベルのパルスの幅を意味し、このパルス幅で離脱位置か吸着位置を判定する。また、第2の基準電圧43は、第1の基準電圧33と異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0040】
また、上述したように、
図2に示すプランジャ12の離脱状態を維持しながら、前述したプランジャ12を固定磁極13に吸着させる際にコイル11に流す駆動電流16とは逆方向の電流17を流す理由は、コイル両端電位差はコイル端末電圧の差分であり、駆動電流の方向を切り換えないと演算が必要となるため、詳細には、コイル両端末の電圧(コイル11の一方端末11aとコイルの他方端末11bの両方)を用いて演算を行ったり、2つの比較器を用いる等、アナログの信号処理が複雑になり、回路構成が複雑化し、回路サイズが大きくなり、製品コストが高くなるためである。別言すれば、吸着駆動の電流16とは逆方向の電流17に切り換えることで、コイル端末11bの電圧のみを用いて逆起電力の検出ができるため、アナログ回路はコンパレータのみでよく、プランジャの位置検出のための演算等の処理を簡素化することができる。
【0041】
上記のように第2の期間T2だけ第2の電圧V3をコイル11に印加してもプランジャ12が固定磁極13から離脱した状態は維持されるはずであるが、何らかの原因でプランジャ12が固定磁極13に吸着される場合も想定される。そのような場合に、位置検出部54の上記の機能によりプランジャ12の離脱状態が保持されているか否かを検出することが可能となる。
【0042】
図9は、
図8に示すHブリッジ回路の詳細を示す図である。
図9に示すHブリッジ回路は、第1のスイッチング素子61及び第3のスイッチング素子63がPチャネルMOSFETであり、第2のスイッチング素子62及び第4のスイッチング素子64がNチャネルMOSFETである。
【0043】
図1に示す駆動回路51に
図9に示すHブリッジ回路を用いても、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
11 励磁用のコイル
11a コイルの一方端末
11b コイルの他方端末
12 プランジャ
13 固定磁極
16 駆動電流
17 逆方向の電流
31,32 第1のパルス波形
31a,32a パルス幅
33 第1の基準電圧
35 第1の閾値幅
41,42 第2のパルス波形
41a,42a パルス幅
43 第2の基準電圧
45 第2の閾値幅
51 駆動回路
52 駆動制御部
53 逆起電力検出部
54 位置検出部
V1 第1の電圧
V2 プラスの電圧
V3 第2の電圧
T1 第1の期間
T2 第2の期間