(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025699
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ベルト速度計測システム
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130747
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新居 俊男
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸介
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027EA01
3F027FA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、ベルトの速度を直接計測することができるベルト速度計測システムを提供することを課題とする。
【解決手段】プーリに巻きかけられて周回するベルトと、前記ベルトに設けられた1つのRFIDタグ、又は前記ベルトの長さ方向に所定の間隔を空けて設けられた複数のRFIDタグと、前記RFIDタグと通信してタグ情報を取得する読取装置と、前記ベルトの周長又は前記間隔に関する長さ情報を記憶する記憶装置と、前記ベルトの速度を算出する処理装置とを備え、前記読取装置は、前記RFIDタグとの通信時点に関する時間情報を前記処理装置に送信するように構成され、前記処理装置は、前記長さ情報と前記時間情報とに基づいて前記ベルトの速度を算出するように構成されている、ベルト速度計測システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに巻きかけられて周回するベルトと、
前記ベルトに設けられた1つのRFIDタグ、又は前記ベルトの長さ方向に所定の間隔を空けて設けられた複数のRFIDタグと、
前記RFIDタグと通信してタグ情報を取得する読取装置と、
前記ベルトの周長又は前記間隔に関する長さ情報を記憶する記憶装置と、
前記ベルトの速度を算出する処理装置と、を備え、
前記読取装置は、前記RFIDタグとの通信時点に関する時間情報を前記処理装置に送信するように構成され、
前記処理装置は、前記長さ情報と前記時間情報とに基づいて前記ベルトの速度を算出するように構成されている、ベルト速度計測システム。
【請求項2】
前記複数のRFIDタグは、固有の識別コードを有し、
前記記憶装置は、前記識別コードと前記長さ情報とを関連付けて記憶している、請求項1に記載のベルト速度計測システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記読取装置から任意の時点で送信されたRFIDタグの任意識別コードが直前に前記読取装置から送信された直前識別コードと前記ベルトにおいて隣り合わないRFIDタグの識別コードであると判断した場合、前記直前識別コード及び前記任意識別コードのそれぞれに対応するRFIDタグの長さ情報及び時間情報に基づいて前記ベルトの速度を算出する、請求項2に記載のベルト速度計測システム。
【請求項4】
前記ベルトは、テークアッププーリに巻きかけられており、
前記記憶装置における前記長さ情報は、前記テークアッププーリによる前記ベルトの伸びに応じて修正されるように構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベルト速度計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト速度計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置におけるコンベヤベルトや伝動装置における伝動ベルトの速度を計測することが行われている。ベルトの速度は、装置が正常に作動しているかを見極めるための指標として用いられ得る。
【0003】
よく知られた計測方法としては、特許文献1にも記載のように、ベルトを駆動させるための駆動プーリの回転数をベルトの速度に換算する方法が挙げられる。
【0004】
また、特許文献2に記載されているように、磁気センサを用いる方法が知られている。具体的に、特許文献2では、ベルトの長さ方向に所定の間隔をあけてベルトに埋設された複数の磁石部材と、磁石部材の磁界を検出する磁気センサとを用い、磁石部材の間隔及び各磁石部材が磁気センサに検出される時間の差に基づいて、ベルトの速度を計測することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-60556号公報
【特許文献2】特開2018-47973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は、ベルトの速度を間接的に計測する方法に分類される。一方、特許文献2の方法は、ベルトの速度を直接的に計測する方法に分類される。このうち、直接的に計測されたベルトの速度は、装置が正常に作動しているかを判断するための有用な指標となり得る。具体的に、摩擦伝動では、ベルトが走行する際、プーリを介して張り側と緩み側との張力差が生じることとなる。この張力差によってベルトには弾性すべり(クリープ)が生じるため、ベルトの速度は厳密にはプーリの回転速度に対応しないものなる。すなわち、プーリの回転速度から換算して算出されたベルトの速度は、実際のベルトの速度に対してずれが生じる。よって、ベルトの速度をできるだけ正確に知るためには、ベルト自体の速度を計測することが好ましいと言える。
【0007】
さらに具体的な課題として、搬送装置におけるコンベヤベルトの速度は、所望の搬送量を達成するための目安となるため、正確な数値の把握が望まれる。また、コンベヤベルトの速度が低下していることを把握できれば、過積載とならないよう搬送量を調節し、装置への過負荷を抑制することができる。
【0008】
次に、特許文献2で用いられている磁気センサは、磁石部材と近接している場合には磁石部材の磁界を検出することはできるが、磁石部材から離れすぎると検出が困難となる場合がある。このため、磁気センサは、大きさ等の多様な仕様が想定される搬送装置や伝動装置には適用しにくいという問題を有する。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、ベルトの速度を直接計測することができ搬送装置や伝動装置等の多くの装置に適用可能なベルト速度計測システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のベルト速度計測システムは、
プーリに巻きかけられて周回するベルトと、
前記ベルトに設けられた1つのRFIDタグ、又は前記ベルトの長さ方向に所定の間隔を空けて設けられた複数のRFIDタグと、
前記RFIDタグと通信してタグ情報を取得する読取装置と、
前記ベルトの周長又は前記間隔に関する長さ情報を記憶する記憶装置と、
前記ベルトの速度を算出する処理装置と、を備え、
前記読取装置は、前記RFIDタグとの通信時点に関する時間情報を前記処理装置に送信するように構成され、
前記処理装置は、前記長さ情報と前記時間情報とに基づいて前記ベルトの速度を算出するように構成されている。
【0011】
上記態様によれば、処理装置がベルトに設けられたRFIDタグを基準としたベルトの長さ情報と、読取装置とRFIDタグとの通信時点に関する時間情報とに基づきベルトの速度を算出するため、直接的なベルトの速度を得ることができる。また、RFIDタグが発信する電波は、該RFIDタグに対して近接した位置に配された読取装置に受信されるとともに、より離れた位置に配された読取装置にも受信され得る。よって、上記態様は、多くの装置に適用可能なものとなる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るベルト速度計測システムは、
前記複数のRFIDタグは、固有の識別コードを有し、
前記記憶装置は、前記識別コードと前記長さ情報とを関連付けて記憶している。
【0013】
上記態様によれば、記憶装置において各RFIDタグの固有の識別コードと長さ情報とが関連付けられているため、いずれかのRFIDタグにおいて検出ミスが生じたかを把握することができる。そして、かかる検出ミスの把握によって、処理装置が検出ミスに起因する時間情報のロスを考慮し得るため、比較的正確なベルトの速度の算出に寄与し得る。
【0014】
また、本発明の一態様に係るベルト速度計測システムは、
前記処理装置は、前記読取装置から任意の時点で送信されたRFIDタグの任意識別コードが直前に前記読取装置から送信された直前識別コードが前記ベルトにおいて隣り合わないRFIDタグの識別コードであると判断した場合、前記直前識別コード及び前記任意識別コードのそれぞれに対応するRFIDタグの長さ情報及び時間情報に基づいて前記ベルトの速度を算出する。
【0015】
上記態様は、直前識別コードを有するRFIDタグと任意識別コードを有するRFIDタグとの間に配置されたRFIDタグにおいて検出ミスが生じた場合には、直前識別コード及び任意識別コードのそれぞれに対応する長さ情報及び時間情報に基づいてベルトの速度を算出し、算出したベルトの速度が実際の速度に対してできるだけ乖離しないことを図るものである。よって、上記態様によれば、比較的正確なベルトの速度を算出することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係るベルト速度計測システムは、
前記ベルトは、テークアッププーリに巻きかけられており、
前記記憶装置における前記長さ情報は、前記テークアッププーリによる前記ベルトの伸びに応じて修正されるように構成されている。
【0017】
かかる構成によれば、長さ情報がテークアッププーリによるベルトの伸びに応じて修正されるため、より正確なベルトの速度を算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、ベルトの速度を直接測定することができるベルト速度計測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係るベルト速度計測システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るベルト速度計測システムについて、搬送装置におけるコンベヤベルトの速度を計測する態様を例示することによって説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のベルト速度計測システム1は、コンベヤベルト10と、コンベヤベルト10を周回させる複数のプーリ20と、コンベヤベルト10の長さ方向に所定の間隔Lを空けて設けられた複数のRFIDタグ30と、各RFIDタグ30と通信してタグ情報を取得する読取装置40と、コンベヤベルト10の周長又はRFIDタグ30の数の分だけ形成される間隔Lに関する長さ情報を記憶する記憶装置50と、コンベヤベルト10の速度を算出する処理装置60とを備えている。
【0022】
本実施形態のコンベヤベルト10は、1又は複数の帯状のベルト部材が接合されて無帯状とされている。コンベヤベルト10は、各ベルト部材の接合によって形成された1又は複数の接合部を有する。また、コンベヤベルト10は、プーリ20に巻きかけられた状態においてプーリ20に当接される内周面と、該内周面とは反対側の外周面たる搬送面とを有する。コンベヤベルト10は、芯体層と、前記芯体層を前記内周面側から覆う第1ゴム層と、前記芯体層を前記外周面側から覆う第2ゴム層とを有する。
【0023】
前記芯体層は、帆布又は心線で構成されている。前記帆布は、繊維製であることが好ましい。前記心線は、化学繊維や炭素繊維等の繊維製であってもよく、スチールコード等の金属製であってもよい。
【0024】
前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層は、ゴム組成物によって構成されている。前記ゴム組成物のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、シリコンゴム(SR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(ACR)、フッ素ゴム(FR)等が挙げられる。前記ゴム組成物は、1種のみのゴム成分を含んでいてもよく、複数種のゴム成分を含んでいてもよい。
【0025】
前記ゴム組成物は、ゴム成分以外の成分を含有していてもよい。かかる成分としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の難燃剤、硫黄、有機過酸化物等の架橋剤、酸化亜鉛等の加硫促進剤、ジオクチルアジペート等の可塑剤、パラフィンオイル等の硬さ調整剤、ベンズイミダゾール系化合物等の老化防止剤、ステアリン酸等の滑剤等が挙げられる。
【0026】
本実施形態の複数のプーリ20は、モータに接続された駆動プーリ21と、コンベヤベルト10を介して伝わる駆動プーリ21の動力によって回転する従動プーリ22と、コンベヤベルト10に張力を与えるためのテークアッププーリ23とを含む。
【0027】
テークアッププーリ23は、コンベヤベルト10に長さ方向に引き伸ばす張力を与えてコンベヤベルト10のたるみを減らすように構成されている。具体的に、テークアッププーリ23は、コンベヤベルト10のプーリ20への巻きかけ時(例えばベルト交換直後)又は巻きかけ時から慣らし運転終了時(使用初期)たる第1の時点からある程度の使用時間が経過した第2の時点にかけてコンベヤベルト10にたるみが生じないように、所定の張力をコンベヤベルト10に与えるように構成されている。コンベヤベルト10は、巻きかけ時から使用経過にわたって周長が変化し得る。詳しくは、まず、コンベヤベルト10の前記巻きかけ時の周長は、慣らし運転にともなう初期伸びが加わった第1の時点(使用初期)の周長に変化する。次に、前記第1の時点における第1の周長は、前記第1の時点から前記第2の時点にわたる使用経過にともなう伸びが加わった(前記第1の周長よりも長い)第2の周長に変化する。以下では、前記第1の周長と前記第2の周長との差をDとする。差Dは、前記第1の時点におけるテークアッププーリ23の軸の位置に対する前記第2の時点におけるテークアッププーリ23の軸の位置の変化量に基づいて求められる。より具体的には、差Dは、前記第1の時点におけるテークアッププーリ23の軸の位置に対する前記第2の時点におけるテークアッププーリ23の軸の移動距離dの2倍である。
【0028】
前記第2の時点は、例えば、前記第1の時点から起算して3月以上経過した時点であってもよく、4月以上経過した時点であってもよく、5月以上経過した時点であってもよく、6月以上経過した時点であってもよい。
【0029】
本実施形態の各RFIDタグ30は、メモリを備え、該メモリに固有の識別コードCを記憶している。すなわち、本実施形態の各RFIDタグ30は、それぞれに異なる識別コードCを有する。本実施形態の各RFIDタグ30は、読取装置40から発信された電波を受信して、前記メモリに記憶された識別コード等の情報を信号に変換して読取装置40へ送信するように構成されている。本実施形態のRFIDタグ30は、パッシブ型である。
【0030】
各RFIDタグ30は、コンベヤベルト10の前記第2ゴム層に埋設されている。各RFIDタグ30は、コンベヤベルト10のピッチラインからの距離がほぼ一定となるように設けられている。各RFIDタグ30のピッチラインからの距離は、平均距離に対するずれが10%以内であることが好ましく、5%以内であることがより好ましい。これによって、各RFIDタグ30と読取装置40との通信時間の差を減らすことができる。さらに好ましくは、各RFIDタグ30は、ピッチライン上に設けられており、これによって、走行中に前記第2ゴム層が伸縮変形することに起因する損傷を抑制することができる。なお、RFIDタグ30とピッチラインとの距離は、RFIDタグ30の中心からピッチラインに向かって直交するように描いた線分の長さとする。
【0031】
本実施形態では、各RFIDタグ30で画定される複数の間隔Lは、互いに異なる長さとなっている。このことについて具体的に説明すると、本実施形態のようにRFIDタグ30がコンベヤベルト10に埋設される場合、現実的には、コンベヤベルト10の製造時にRFIDタグ30を等間隔で埋設したとしても、プーリ20に巻きかけられた際には各間隔Lによって伸び率が異なるため、各間隔Lの長さが異なる可能性が高くなる。また、1つの前記ベルト部材が1つの前記接合部によって無端状とされた場合、該ベルト部材の両端に位置するRFIDタグで画定される間隔Lは、その他の間隔Lに対して異なる長さとなり易い。なお、本発明は、複数の間隔Lが互いに異なる長さのものに限定されず、複数の間隔Lが等間隔であってもよい。
【0032】
RFIDタグ30としては、矩形状の基材シートと、前記基材シートの中央部に設けられたICチップと、前記ICチップから前記基材シートの両端に向かって延びる一対のアンテナとを備えたものであってもよい(以下、タイプ1)。
【0033】
また、RFIDタグ30としては、誘電体層と、前記誘電体層の表面から裏面にかけてループ状に形成された放射素子と、前記誘電体層の表面に搭載され且つ前記放射素子に接続されたICチップとを備えたものであってもよい(以下、タイプ2)。
【0034】
また、RFIDタグ30としては、誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された板状の放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えたものであってもよい(以下、タイプ3)。
【0035】
また、RFIDタグ30としては、誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成されて誘電体層の表面側からの電磁波を前記放射素子に向かって反射する金属層とを備えたものであってもよい(以下、タイプ4)。
【0036】
各RFIDタグ30は、同種のものであり、それぞれが向きを揃えてコンベヤベルト10に設けられていることが好ましい。例えば、RFIDタグ30が上記のタイプ1のものである場合、各RFIDタグ30は、それぞれのアンテナの延びる方向が揃うようにコンベヤベルト10に設けられていることが好ましい。また、RFIDタグ30が上記のタイプ2~4のものである場合、各RFIDタグ30は、それぞれの誘電体層の表面が読取装置40に向くように且つそれぞれの放射素子の延びる方向が揃うようにコンベヤベルト10に設けられていることが好ましい。
【0037】
本実施形態の読取装置40は、RFIDリーダである。読取装置40は、UHF帯に属する電波を用いてRFIDタグ30の情報を含む信号を非接触で読み取るように構成されている。読取装置40は、コンベヤベルト10の外周面に向かって電波を発信するように配置されている。また、読取装置40は、コンベヤベルト10の外周面からの距離が変わらないように固定されている。そして、読取装置40は、各RFIDタグ30と通信し、それぞれの識別コードと通信時点とを対応させた情報を信号に変換し処理装置60に送信するように構成されている。
【0038】
本実施形態の記憶装置50は、コンベヤベルト10の長さ情報として、前記第1の周長(前記第1の時点での周長)を記憶している。前記第1の周長は、プーリ20に巻きかけられた状態のコンベヤベルト10の周長を実測することによって得られる値が好ましい。
【0039】
また、記憶装置50は、各RFIDタグ30の識別コードCと、前記巻きかけ時における隣り合うRFIDタグ30どうしの間隔L0及び前記第1の時点における隣り合うRFIDタグ30どうしの間隔L1とを関連付けて記憶している。より具体的に説明するために、コンベヤベルト10にm個(mは2以上の整数であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい)のRFIDタグ30が備えられていることとする。これによって、コンベヤベルト10は、m個の間隔L(間隔L0及び間隔L1)を有するものとなる。次に、コンベヤベルト10の走行方向における任意の位置のRFIDタグをn番目RFIDタグとし、n番目RFIDタグとベルト走行方向の前方側で隣り合うRFIDタグをn-1番目RFIDタグとする。また、n番目RFIDタグは識別コードCnを有するものとし、n-1番目RFIDタグは識別コードCn-1を有するものとする。さらに、前記巻きかけ時におけるn-1番目RFIDタグとn番目RFIDタグとの間隔L0をL0nとし、前記第1の時点におけるn-1番目RFIDタグとn番目RFIDタグとの間隔L1をL1nとする。これらの定義を用いると、記憶装置50は、識別コードCnと、間隔L0n及び間隔L1nとを関連付けて記憶している、と言い換えることができる。さらに、本実施形態の記憶装置50は、コンベヤベルト10の走行中に読み取られる順に識別コードを記憶している。これらのことは、下記の表1及び表2に示すテーブルとして表現され得る。
【0040】
各間隔L0及び各間隔L1は、コンベヤベルト10の設計値とされてもよい。ただし、コンベヤベルト10がプーリ20に巻きかけられた状態では各間隔L0及び各間隔L1において伸び率が異なる可能性がある。よって、間隔L0は、前記巻きかけ時のコンベヤベルト10における各RFIDタグ30の位置をRFIDリーダによって特定し、特定された各RFIDタグ30の位置に基づいて得られた値であることが好ましい。また、間隔L1は、前記慣らし運転終了時の前記第1の時点における方法と同様の方法で特定された各RFIDタグ30の位置に基づいて得られた値であることがより好ましい。さらに、前記巻きかけ時のコンベヤベルト10において、前記設計値に対して各間隔L0がどの程度伸びたかを表す伸び率E0が把握されることが好ましい。また、前記第1の時点(使用初期)のコンベヤベルト10において、前記設計値又は間隔L0に対して各間隔L1がどの程度伸びたかを表す伸び率E1が把握されることが好ましい。すなわち、記憶装置50は、識別コードCnと、間隔L0nに関する設計値に対する間隔L0nの伸び率E0nとを関連付けて記憶していることが好ましい(下記表1参照)。また、記憶装置50は、識別コードCnと、間隔L1nに関する設計値又は間隔L0nに対する間隔L1nの伸び率E1nとを関連付けて記憶していることが好ましい(下記表2参照)。
【0041】
さらに、記憶装置50は、前記巻きかけ時において任意の速度で走行するコンベヤベルト10が1周以上の任意の距離を走行するのに要する時間T0に対する、前記任意の速度で間隔L0を走行するのに要する時間t0の割合p0を記憶している。例えば、n番目RFIDタグの場合、記憶装置50は、時間T0に対する間隔L0nを走行するのに要する時間t0nの割合p0nを記憶している(下記表1参照)。また、記憶装置50は、前記第1の時点において任意の速度で走行するコンベヤベルト10が1周以上の任意の距離を走行するのに要する時間T1に対する、前記任意の速度で間隔L1を走行するのに要する時間t1の割合p1を記憶している。例えば、n番目RFIDタグの場合、記憶装置50は、時間T1に対する間隔L1nを走行するのに要する時間t1nの割合p1nを記憶している(下記表2参照)。
【0042】
T0及びT1は、前記巻きかけ時又は前記第1の時点においてコンベヤベルト10を複数回(例えば10回以上)にわたって周回させ、RFIDリーダを用いて各RFIDタグ30が1周分走行するのに要する時間を測定し、これらを平均することによって得られる平均時間であってもよい。t0又はt1は、前記巻きかけ時又は前記第1の時点においてコンベヤベルト10を複数回(例えば10回以上)にわたって周回させ、RFIDリーダを用いて各間隔L0又は各間隔L1分を走行するのに要する時間を測定し、これらを平均することによって得られる平均時間であってもよい。
【0043】
本実施形態の記憶装置50は、下記の表1のテーブルのように、識別コードCと、間隔L0と、伸び率E0と、時間t0と、割合p0とを関連付けて記憶している。また、本実施形態の記憶装置50は、下記の表2のテーブルのように、識別コードCと、間隔L1と、伸び率E1と、時間t1と、割合p1とを関連付けて記憶している。
【0044】
【0045】
【0046】
本実施形態の処理装置60は、サーバに備えられている。前記サーバは、記憶装置50、読取装置40と処理装置60との通信インターフェース、及び処理装置60を制御するプログラムを備えている。前記サーバは、サーバマシンによって実現されてもよく、クラウドによって実現されてもよい。なお、記憶装置50が記憶する情報は、クラウドに記憶されていてもよい。前記通信インターフェースは、有線又は無線通信によって、ネットワークを介して読取装置40と処理装置60との情報の送受信を行うように機能する。
【0047】
本実施形態の処理装置60は、前記第2の時点において、少なくとも次の(1)~(2)に基づいてコンベヤベルト10の速度を算出するように構成されている。
(1)コンベヤベルト10の第2の周長(前記第2の時点における周長)、及び、いずれかのRFIDタグ30(例えばn番目RFIDタグ)の第1の通信時間と第2の通信時間との差
(2)前記第2の時点における隣り合うRFIDタグ30の間隔L2、及び、各RFIDタグ30の(例えばn-1番目RFIDタグとn番目RFIDタグとの)通信時間の差
【0048】
上記(1)は、1つのRFIDタグ30のみが設けられる場合と複数のRFIDタグ30が設けられる場合との両方に適用され得る。上記(2)は、複数のRFIDタグ30が設けられる場合にのみ適用され得る。
【0049】
本実施形態では、上記のように、テークアッププーリ23による差Dが生じ、これによって、前記第2の周長及び各間隔L2が変動し得る。よって、本実施形態のベルト速度計測システム1は、テークアッププーリ23の移動距離dを測定するエンコーダ(具体的にはリニアエンコーダ)を備えている。本実施形態の処理装置60は、エンコーダが出力する移動距離dに関する情報を取得し得るように構成されている。そして、前記第2の周長及び各間隔L2に関する長さ情報は、コンベヤベルト10の走行中に(すなわち、リアルタイムで)更新されることが、装置を有効に監視する上で好ましい。特に、前記第2の時点におけるコンベヤベルト10の各間隔L2は伸び率が異なる可能性があるため、各間隔L2に関する長さ情報は、このことも加味して更新されることが好ましい。移動距離dを測定するその他の方法としては、例えば、テークアッププーリ23を移動させるためのステッピングモータの回転角度に基づいて測定してもよい。
【0050】
これらの観点から、前記第2の時点においてコンベヤベルト10が長さ方向に均一に伸びたと仮定し、各割合p0又は各割合p1の大きさに応じて差Dを各間隔L2に配分してもよい。あるいは、前記巻きかけ時の伸び率E0又は前記第1の時点の伸び率E1が前記第2の時点においても反映され得るため、このことに基づき、各伸び率E0又は各伸び率E1の大きさに応じて差Dを各間隔L2に配分してもよい。
【0051】
一方、前記第2の周長は、割合p0又は割合p1の大きさに基づいて算出された各間隔L2の合計値であってもよい。また、前記第2の周長は、伸び率E0又は伸び率E1の大きさに基づいて算出された各間隔L2の合計値であってもよい。また、より簡単に、前記第2の周長は、前記第1の周長に差Dを加えた値であってもよい。
【0052】
本実施形態の処理装置60は、RFIDタグ30と読取装置40との間に検出ミスを認めた場合、検出ミスに起因する情報を補完してコンベヤベルト10の速度を算出するように構成されている。まず、処理装置60は、上記(1)の場合の検出ミスとして、n番目RFIDタグが任意のC周目で正常に検出されなかったことを判断する必要がある。すなわち、処理装置60は、C-1周目及びC周目のそれぞれの通信時点の差並びにC周目及びC+1周目のそれぞれの通信時点の差を、C-1周目及びC+1周目のそれぞれの通信時点の差であると把握してしまうことによって、計測する速度が実際の速度に対して大きく乖離しないように対処する必要がある。かかる検出ミスに対処するために、処理装置60は、例えば、n番目RFIDタグがC-1周目までに1周するのに要する平均値を算出しておき、C-1周目の通信時点から次の通信時点までの時間差が前記平均値に対して大きく(例えば1.5倍以上)乖離する場合には、C周目に検出ミスが生じたと判断する。そして、処理装置60は、C-1周目からC+1周目までの2周分の長さ並びにC-1周目及びC+1周目の通信時点の時間差に基づいてコンベヤベルト10の速度を算出する。
【0053】
上記(1)においてn番目RFIDタグが故障して通信不能となりC周目以降は正常に検出されない場合には、処理装置60は、n番目RFIDタグ以外のRFIDタグに関する長さ情報及び時間情報に基づいてコンベヤベルト10の速度を算出するように構成されることが好ましい。すなわち、表1のテーブルからn番目RFIDタグが削除されることが好ましい。
【0054】
次に、本実施形態の処理装置60は、上記(2)の場合の検出ミスとして、n番目のRFIDタグが任意の時点で正常に検出されなかったことを判断する必要がある。かかる検出ミスに対処するために、処理装置60は、例えば、読取装置40から任意の時点で送信されたn-1番目RFIDタグの識別コードCn-1が直前に読取装置40から送信された直前識別コードと前記テーブルにおいて隣り合わないことを認めた場合(例えば、直前識別コードが識別コードCn+1の場合)、n番目RFIDタグに検出ミスが生じたと判断する。そして、処理装置60は、間隔L2nと間隔L2n+1との合計間隔と、前記直前識別コード(例えば、識別コードCn+1)及び識別コードCn-1のそれぞれに対応する通信時点の時間差に基づいてコンベヤベルト10の速度を算出するように構成されている。これによって、検出ミスに起因する情報を補完することができ、比較的正確なコンベヤベルト10の速度を算出することができる。
【0055】
上記(2)においてn番目RFIDタグが故障して通信不能となった場合には、表1及び表2のテーブルは、n番目RFIDタグが削除されるとともに、n+1番目RFIDタグの間隔L0n+1又は間隔L1n+1がn-1番目RFIDタグに対する間隔L0n+1又は間隔L1n+1に修正されることが好ましい。
【0056】
処理装置60は、上記(1)の場合、RFIDタグごとのコンベヤベルト10の速度を算出し、それらを平均した速度を算出してもよい。また、処理装置60は、上記(2)の場合、コンベヤベルト10の速度を複数算出し、それらを平均した速度を算出してもよい。さらに、処理装置60は、上記(1)及び(2)で算出した速度を平均した速度を算出してもよい。
【0057】
本実施形態のベルト速度測定システム1で測定されたコンベヤベルト10の速度は、従動プーリ22の回転数を換算することによって算出されるコンベヤベルト10の速度と比較されることによって、正常な滑り率でコンベヤベルト10が走行しているかを判断するための指標として用いられ得る。
【0058】
本実施形態のベルト速度測定システム1で測定されたコンベヤベルト10の速度は、コンベヤベルト10の搬送量を正確に把握する上で有利なものとなる。
【0059】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るベルト速度計測システムは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るベルト速度計測システムは、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るベルト速度計測システムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態は、コンベヤベルト10を備える搬送装置へ適用されたものであるが、本発明はこれに限定されず、伝動ベルトを備える伝動装置に適用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、複数のRFIDタグを設ける態様を例示したが、本発明はこれに限定されず、1つのRFIDタグのみをベルトに設けてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、RFIDタグをベルトに埋設する態様を例示したが、本発明はこれに限定されず、RFIDタグをベルトの外周面等の表面に載置するように設けてもよい。また、RFIDタグをベルトの第1ゴム層に埋設し且つ読取装置をベルトの内周面に向かって電波を発信するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:ベルト速度計測システム、10:コンベヤベルト、20:プーリ、21:駆動プーリ、22:従動プーリ、23:テークアッププーリ、30:RFIDタグ、40:読取装置、50:記憶装置、60:処理装置、L:間隔、d:移動距離