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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002570
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】個食用米飯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241226BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241226BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L7/10 A
A23L5/10 F
B65D1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102831
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】598060981
【氏名又は名称】エースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】佐古 圭弘
【テーマコード(参考)】
3E033
4B023
4B035
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA22
3E033EA07
4B023LE15
4B023LP08
4B023LP18
4B023LP19
4B035LC01
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE11
4B035LG34
4B035LP03
4B035LP45
4B035LP46
4B035LT02
4B035LT14
4B035LT16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】茶わんや丼を模したかさ高容器を用いてもおいしい米飯を炊き上げることができる個食用米飯の製造方法を提供する。
【解決手段】米及び水を上面が開放された個食炊飯用容器内に供給する供給工程と、米及び水が供給された個食炊飯用容器を水蒸気によって炊き上げる炊き上げ工程と、炊き上げられた米を内部に収容する個食炊飯用容器の上部開口をシール密封する密封工程とを備えており、個食炊飯用容器は、底面部と、底面部の周囲から立設する側壁部とを備えており、側壁部の高さは、30mm以上100mmであり、底面部には、凹凸構造を有する底面凹凸部が形成され、側壁部には、凹凸構造を有する側壁凹凸部が形成されており、底面部の表面積は、底面凹凸部を有しない場合の表面積の1.2倍以上1.4倍以下であり、側壁部の表面積は、側壁凹凸部を有しない場合の表面積の1.15倍以上1.35倍以下であることを特徴とする個食用米飯の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米及び水を上面が開放された個食炊飯用容器内に供給する供給工程と、
米及び水が供給された前記個食炊飯用容器を水蒸気によって炊き上げる炊き上げ工程と、
炊き上げられた米を内部に収容する前記個食炊飯用容器の上部開口をシール密封する密封工程とを備えており、
前記個食炊飯用容器は、底面部と、前記底面部の周囲から立設する側壁部とを備えており、
前記側壁部の高さは、30mm以上100mm以下であり、
前記底面部には、凹凸構造を有する底面凹凸部が形成され、前記側壁部には、凹凸構造を有する側壁凹凸部が形成されており、
前記底面部の表面積は、前記底面凹凸部を有しない場合の表面積の1.2倍以上1.4倍以下であり、
前記側壁部の表面積は、前記側壁凹凸部を有しない場合の表面積の1.15倍以上1.35倍以下であることを特徴とする個食用米飯の製造方法。
【請求項2】
前記個食炊飯用容器の底面部の幅寸法は、60mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の個食用米飯の製造方法。
【請求項3】
前記底面凹凸部は、前記底面部全域に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の個食用米飯の製造方法。
【請求項4】
前記側壁凹凸部は、前記側壁部全域に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の個食用米飯の製造方法。
【請求項5】
前記底面凹凸部は、前記底面部の内側に向けて突出する複数の底面凸部を備えており、
前記底面部の外側面には、前記各底面凸部に対応する位置に、前記底面部の内側面に向けてくぼむ底面凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の個食用米飯の製造方法。
【請求項6】
前記側壁凹凸部は、前記側壁部の外側に向けて突出する複数の側壁凸部を備えており、
前記側壁部の内側面には、前記各側壁凸部に対応する位置に、前記側壁部の外側面に向けてくぼむ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の個食用米飯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個食用米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、米飯をトレー形容器に収容した個食用米飯包装食品が知られている(特許文献1)。また、このような個食用米飯包装食品を製造する方法としては、例えば、特許文献2に開示されているように、トレー形容器に所定量の米及び水を投入し、容器内の内容物を加熱して炊飯し、その後、容器を密封する方法が知られている。
【0003】
このようなトレー形容器に米飯を収容した個食用米飯包装食品は、長期保存を目的として80%程度(完全に炊き上げが終了している状態ではなくまだ芯が残っている状態)の炊飯率で製造されており、当該個食用米飯包装食品を購入した購入者は、喫食する際に、100%炊飯率状態(完全に炊き上げが終了し、喫食可能な状態)とするために、電子レンジで加熱し、或いは、煮沸加熱して容器内の米飯を再加熱した後、密封用の蓋シール(フィルム)を取り去って喫食する。喫食時には、トレー形容器から直接、箸やスプーン等によって米飯を取り出す場合もあり、また、茶わんや丼の上でトレー形容器を逆向きにし、茶わんや丼内に米飯を落下させたのち喫食する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-20865号公報
【特許文献2】特開2013-165670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のトレー形容器を用いた個食用米飯包装食品は、長期保存が可能で、また、その高さが2cm程度と低く形成されているものであり、保管する場合も数多く積み重ねることができて保管場所が省スペースとなることから有用なものではあるが、トレー形容器から直接米飯を取り出すような食べ方は、茶わんや丼に米飯をよそった食べ方とは異なり、とても味気ないものであり、食事をする楽しみが大幅に減少してしまうという問題があった。また、茶わんや丼に移し替えて喫食する場合、移し替えに手間を要するという問題もあった。
【0006】
そこで、トレー形容器の代わりに、茶わんや丼を模したかさ高容器を用い、当該容器内に所定量の米及び水を投入し、容器内の内容物を加熱して炊飯することで個食用米飯包装食品を製造し、購入者が、米飯の移し替えを不要とし、かつ、茶わんや丼と似た形状を有する容器を用いて喫食できるようにすることを試みたが、容器の深さが大きくなることに起因して、容器内部の米の加熱状況が不均一になり、一粒一粒の米の内部までしっかりと均一に加熱して炊き上げることが難しく、おいしい米飯とはならないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、茶わんや丼を模したかさ高容器を用いてもおいしい米飯を炊き上げることができる個食用米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、米及び水を上面が開放された個食炊飯用容器内に供給する供給工程と、米及び水が供給された前記個食炊飯用容器を水蒸気によって炊き上げる炊き上げ工程と、炊き上げられた米を内部に収容する前記個食炊飯用容器の上部開口をシール密封する密封工程とを備えており、前記個食炊飯用容器は、底面部と、前記底面部の周囲から立設する側壁部とを備えており、前記側壁部の高さは、30mm以上100mmであり、前記底面部には、凹凸構造を有する底面凹凸部が形成され、前記側壁部には、凹凸構造を有する側壁凹凸部が形成されており、前記底面部の表面積は、前記底面凹凸部を有しない場合の表面積の1.2倍以上1.4倍以下であり、前記側壁部の表面積は、前記側壁凹凸部を有しない場合の表面積の1.15倍以上1.35倍以下であることを特徴とする個食用米飯の製造方法により達成される。
【0009】
また、上記個食用米飯の製造方法に関し、前記個食炊飯用容器の底面部の幅寸法は、60mm以上であることが好ましい。
【0010】
また、前記底面凹凸部は、前記底面部全域に形成されることが好ましい。また、側壁凹凸部は、前記側壁部全域に形成されることが好ましい。
【0011】
また、前記底面凹凸部は、前記底面部の内側に向けて突出する複数の底面凸部を備えており、前記底面部の外側面には、前記各底面凸部に対応する位置に、前記底面部の内側面に向けてくぼむ底面凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記側壁凹凸部は、前記側壁部の外側に向けて突出する複数の側壁凸部を備えており、前記側壁部の内側面には、前記各側壁凸部に対応する位置に、前記側壁部の外側面に向けてくぼむ凹部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般的に米飯をよそう際に使用されるお椀や丼と同等の高さを有する個食炊飯用容器に用いて個食用米飯を製造した場合であっても、おいしく炊き上げられた米飯を製造可能な個食用米飯の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る個食用米飯の製造方法を説明するためのブロック図である。
図2】本発明に係る個食用米飯の製造方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
図3】本発明の個食用米飯の製造方法において好適に使用される個食炊飯用容器の斜視画像です。
図4図3に示す個食炊飯用容器の平面画像である。
図5図3に示す個食炊飯用容器の側面画像である。
図6図3に示す個食炊飯用容器の底面画像である。
図7図3に示す個食炊飯用容器の底面詳細平面図である。
図8図3に示す個食炊飯用容器の底面に関する要部拡大断面図である。
図9図3に示す個食炊飯用容器の側壁部に関する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る個食用米飯の製造方法について添付図面を参照して説明する。本発明に係る個食用米飯の製造方法は、図1のブロック図に示すように、洗米工程S1と、供給工程S2と、炊き上げ工程S3と、密封工程S4と、殺菌工程S5とを備えている。
【0016】
洗米工程S1は、米を洗米する工程である。洗米方法の具体的構成は特に限定されないが、例えば、米の一粒一粒の表面が十分に洗米に使う水と接する様に洗い、且つ表面が傷を受けないように優しく洗うという手法により米を洗米することが好ましい。米の表面が崩れると米の屑となって流れだしてしまい無駄に捨ててしまうこととなり、また、表面付近の細胞を潰してしまうと、米が飯になる時の膨らみが悪くなり、表面のネバネバが増えて食味も悪くなるからである。上記のような洗米を可能にするために流量が多すぎない程度の流水で洗米することが好ましい。また、洗米の前半では流量が多すぎない流水で洗米し、その後、容器に湯水を溜めて行う洗米を数回繰り返してもよい。また、例えば、一度溜めた湯にザルに入れた米を漬けて軽く手等で2~3回廻して溜めた湯をすぐ捨て、その後は、手等を使わず流水しながらザルを動かすだけとして、むやみに米を手等によってかき混ぜないようにして洗米を行うようにしてもよい。
【0017】
また、洗米工程S1において、例えば、30℃以上80℃以下の温水によって米を洗米するようにしてもよい。このような温度の温水を用いて洗米を行う場合、短時間で米に水を吸水させることができる。また、上記温度範囲の温水によって洗米を行う場合、1分以上10分以下の時間、洗米することが好ましい。また、洗米工程が終了した段階での米の水分率は、18%以上28%以下の範囲となるように温水による洗米を行うことが好ましい。
【0018】
また、洗米工程S1の後、必要に応じて米を水に浸漬する浸漬工程を実施し、米に水を吸水させるように構成してもよい。また、無洗米を使用するような場合には、洗米工程を省略してもよい。
【0019】
供給工程S2は、米及び水を上面が開放された個食炊飯用容器内に供給する工程である。個食炊飯用容器は、米(例えば、精白米、玄米、雑穀米等を含む)と水とを収容した状態で加熱することにより、米飯を炊飯可能な容器である。このような個食炊飯用容器は、例えば、合成樹脂シートを用いてプレス成形や射出成形、真空成形等により作製される。また、個食炊飯用容器1は、可撓性を備えるように構成することができる。合成樹脂シートとしては、例えば、非発泡ポリスチレン、発砲ポリスチレン、非発泡ポリプロピレン、発砲ポリプロピレン、非発泡ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可撓性プラスチックを適正な硬度と強靭性を有するようにシート状に形成したものを用いることができる。
【0020】
ここで、洗米した米を入れた個食炊飯用容器に入れる水の温度としては、例えば、2~50℃の水を入れることが好ましい。米周囲の水の急激すぎる温度上昇は、米表面の糊化の進行速度を早くさせすぎてしまうおそれがあり、糊化の進行が早すぎると米内部への水の浸透が妨げられる危険性が生じる。このような事態が生じることを防止し、最終的な炊きあがりの時に米内部への水分の浸透が十分に起こるためには、上記したように2~50℃の水を炊飯に使うことが好ましい。
【0021】
炊き上げ工程S3は、米及び水が供給された個食炊飯用容器を水蒸気によって加熱し炊き上げる工程である。水蒸気は100℃前後の蒸気であっても、また100℃以上の過熱水蒸気であっても構わない。この炊き上げ工程における加熱条件としては、例えば、97℃~105℃で15分間~30分間、好ましくは100~102℃で20分~25分間の条件を挙げることができる。このような条件で炊き上げ工程を実施することにより、米が100%炊飯率状態となる。なお、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気とは異なり、飽和水蒸気の温度(1気圧では100℃、1気圧以外の気圧では、その気圧での沸点)以上に過熱された水蒸気を意味する。過熱水蒸気は、種々の過熱器により得られる。過熱器は公知であり、過熱方法は問われない。また、炊き上げ工程S3において炊き上げられた米の炊飯倍率は、2.3以上2.6以下であることが好ましい。なお、炊飯倍率とは、生米の重量に対する炊飯の後の米飯の重量の比率を意味する。つまり、炊飯前の生米の重量を1としたときの、炊き上がったご飯の重量比を示すものである。ここで、個食用容器を水蒸気で炊き上げる時の個食用容器の周囲の湿度は80%以上、好ましくは限りなく100%であることが好ましい。これは、炊飯中の個食用容器内の水はやがて沸騰するが、周囲の湿度が高い状態であれば、気泡が激しく発生するような沸騰はしない。その結果、米への物理的な衝撃が少ないため米の細胞が維持された米粒の形の崩れが少ないご飯に仕上がることになる。
【0022】
密封工程S4は、炊き上げられた米を内部に収容する個食炊飯用容器の上部開口をシール材によってシール密封する工程である。シール材とは、個食炊飯用容器の上部開口を密封するための部材であり、通常はシート状又はフィルム状の部材である。本発明では、シール材としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。なお、プラスチックフィルムとしては、ガスバリア性を有するものを使用することが好ましい。この密封工程S4については、従来から知られている各種密封方法を採用することができるが、殺菌処理がなされたプラスチックフィルムを個食炊飯用容器の上部開口に貼付または熱融着して密封することが好ましい。
【0023】
殺菌工程S5は、シール密封された個食炊飯用容器を加熱することにより殺菌する工程である。この殺菌工程S5においては、例えば、100℃~120℃で個食炊飯用容器1を加熱することにより殺菌を行う。殺菌工程S5における殺菌方法は、特に限定されないが、例えば、シール密封された個食炊飯用容器に対して蒸気を当てて加圧加熱する方法や、殺菌チャンバ内にシール密封された個食炊飯用容器を密封して加圧加熱する方法などを好適に用いることができる。なお、上述の炊き上げ工程において十分な殺菌効果が認められる場合には、この殺菌工程を省略することもできる。
【0024】
本発明に係る個食用米飯の製造方法は、例えば、図2の模式図に示す製造装置を用いて実施することができる。この製造装置は、個食炊飯用容器1を供給する容器供給装置91と、ベルトコンベア等の搬送装置92と、米の洗米及び洗米後の米を個食炊飯用容器1に供給するための洗米・米供給装置93と、水を個食炊飯用容器1に供給する水供給装置94と、炊飯室95と、シール装置96と、加熱殺菌装置97とを備えている。搬送装置92は、炊飯室95内を通過するように構成されている。なお、個食炊飯用容器1内に収容される炊飯米を炊き込みご飯として構成する場合には、個食炊飯用容器1が炊飯室95内に導かれる前段階で、炊き込みご飯用の具材を個食炊飯用容器1に供給可能な具材供給装置を別途設ける。
【0025】
まず、容器供給装置91の作用により、個食炊飯用容器1を一個ずつ搬送装置92の搬送面上に供給する。次いで、洗米・米供給装置93を介して洗米された所定量の米を搬送面上に供給された各個食炊飯用容器1に供給する(洗米工程S1、供給工程S2)。また、水供給装置94を介して所定量の水を搬送面上に供給された各個食炊飯用容器1に供給する(供給工程S2)。米と水とを収容した各個食炊飯用容器1は、搬送装置92によって順次炊飯室95内に導かれ、当該炊飯室95にて所定時間、過熱水蒸気によって加熱されることにより、炊飯される(炊き上げ工程S3)。なお、炊飯室95には、図示しない過熱水蒸気発生装置から供給される過熱水蒸気が供給される。
【0026】
炊飯が完了後、個食炊飯用容器1は、シール装置96に搬送され、クリーンな環境下で個食炊飯用容器1の上部開口にシール材を被せて塞いで熱溶着し、個食炊飯用容器1は密封される(密封工程S4)。その後、加熱殺菌装置97において、例えば、100℃~120℃の温度で個食炊飯用容器1を加熱することにより(殺菌工程S5)、常温で1週間程度の保存が可能な無菌包装の炊飯米入り密封容器が完成する。
【0027】
ここで、洗米した米及び水が収容される個食炊飯用容器1は、図3の斜視画像、図4の平面画像、図5の側面画像、及び図6の底面画像に示すように、底面部2と、当該底面部2の周囲(周縁)から上方に向けて立設する側壁部3と、当該側壁部3の上端部(開口部)の周囲に設けられるフランジ部4とを備えている。
【0028】
底面部2は、個食炊飯用容器1の底面を構成する部位であり、その厚みは、例えば、0.5mm以上5.0mm以下の範囲に設定することが好ましい。また、底面部2の直径(幅寸法)は、収容される米や水の量によって適宜設定することができるが、例えば、一人前用(例えば、重量150gの炊飯米)の個食炊飯用容器1を構成する場合には、例えば、60mm以上250mm以下程度の範囲として構成することができる。
【0029】
また、底面部2には、図7の底面詳細平面図や、図8の要部拡大断面図に示すように、凹凸構造を有する底面凹凸部が形成されている。この底面凹凸部は、例えば、底面部2の内側面から収容空間側に向けて突出し、所定間隔をあけて配置される複数の微小な底面凸部51の集合として形成されている。これら複数の微小な底面凸部51は、底面部2の全域に亘って分散して配列されている。また、図8に示すように、本実施形態においては、底面部2の外側面には、上述の各底面凸部51に対応する位置に、底面部2の内側面に向けてくぼむ底面凹部52が形成されている。各底面凹部52は、対応する各底面凸部51の頂部に向けてくぼむ構造を備えている。なお、底面凹凸部を形成するための各底面凸部51(各底面凹部52)の形状は特に限定されず、種々の形状として構成視することができる。また、各底面凸部51(各底面凹部52)の配置についても特に限定されず、格子状、千鳥状、ランダム状等に配列することができる。
【0030】
また、底面凹凸部を構成する複数の底面凸部51は、図7に示すように、第1凸部51aと第2凸部51bと第3凸部51cとの集合として構成されている。第2凸部51bは、第1凸部51aよりも小さい大きさとして構成されている。また、第3凸部51cは、第2凸部51bよりも小さい大きさとして構成されている。また、複数の第1凸部51aが一の方向に沿って並ぶ第1凸部群と、複数の第2凸部51bが一の方向に沿って並ぶ第2凸部群とは、底面部の中央領域において、互いに交互に配列されている。また、第3凸部51cが形成されるエリアは、第1凸部51a及び第2凸部51bが配置されるエリア(底面部の中央領域)を取り囲む位置に設定されている。なお、第3凸部51cが形成されるエリアは、底面部2の外周近傍エリアである。また、図8に示すように、一の底面凸部51と、当該一の底面凸部51の周りに隣接配置される他の各底面凸部51との頂点間寸法Lは、生米の幅寸法に対して、0.3倍以上2.3倍以下の範囲となるように構成することが好ましい。本実施形態においては、底面凸部51の配列構造として格子状配列を採用しているので、互いに横方向及び縦方向に隣接する各底面凸部51同士の頂点間の寸法Lが、生米の幅寸法に対して、0.3倍以上2.3倍以下の範囲となるように構成することが好ましい。各底面凸部51同士の頂点間の寸法Lが、生米の幅寸法に対して、0.3倍以上2.3倍以下の範囲となるように設定することにより、一粒の生米に接触する底面部2の面積を効果的に低減させつつ、炊飯時に、底面部2と底面部2上に載置される米との間に水が存在する状況を効果的に作り出すことができるため、上述の炊飯されたご飯が底面部2の表面に付きにくくすることができるという効果、及び、食味を良くするという効果をより一層高めることができる。ここで、生米の幅寸法とは、一粒の生米の短手方向の最大幅を意味する。また、例えば、複数個(例えば、25粒、50粒、100粒等)の生米のそれぞれについて最大幅を計測し、その平均値を生米の幅寸法とすることもできる。
【0031】
また、底面部2の表面積は、底面凹凸部を有しない場合の表面積の1.2倍以上1.4倍以下(底面部の表面積の増加率が、20%以上40%以下)となるように構成されている。このような数値範囲とすることにより、炊飯時に底面部2に供給される熱を、個食炊飯用容器1に収容される米及び水に効果的に付与することが可能となる。つまり、炊飯時の伝熱量を大きくすることができるので、効率良く炊飯することが可能となる。なお、底面凹凸部を有しない場合の底面部の表面積とは、底面部の投影面積を意味する。つまり、底面部の表面積の増加率は「底面部の投影面積に対する表面積比率」を意味する。
【0032】
また、底面凹凸部が形成されることにより、炊飯時において米が水分を吸収して膨張する際に、米の表面が底面部2の表面に引っ付くことを効果的に抑制することができ、また、炊き上がり時に、炊き上がったご飯と底面部2との間に、空間部を形成することができるため、喫食時に容器からご飯を容易に取り出すことが可能となる。
【0033】
側壁部3は、個食炊飯用容器1の側面を構成する部位であり、上述のように底面部2の周囲(周縁)から上方に向けて立ち上がるように構成されている。この側壁部3は、底面部2から上方に行くに従って外方に広がるように形成されている。この側壁部3の厚みは、上記底面部2の厚みと同じ寸法として構成することが好ましい。また、側壁部3の高さは、収容される米や水の量によって適宜設定することができるが、例えば、一人前用の個食炊飯用容器1を構成する場合には、例えば、30mm以上100mm以下の範囲に設定することが好ましい。
【0034】
また、側壁部3には、図9の要部拡大断面図(図5のA-A断面での要部拡大断面に相当;断面部のみ表示)に示すように、凹凸構造を有する側壁凹凸部が形成されている。この側壁凹凸部は、例えば、側壁部外側に向けて突出する複数の微小な側壁凸部61の集合として形成されている。これら複数の微小な側壁凸部51は、側壁部3の全域に亘って配列されている。また、図9の断面図に示すように、本実施形態においては、側壁部3の内側面には、各側壁凸部61に対応する位置に、側壁部3の外側面に向けてくぼむ側壁凹部62が形成されている。各側壁凹部62は、対応する各側壁凸部61の頂部に向けてくぼむ構造を備えている。なお、図3図6に示す容器においては、高さ方向に並ぶ一列の側壁凸部51は、竹模様状となるように構成されているが、側壁凹凸部を形成するための各側壁凸部61(各側壁凹部62)の形状は特に限定されず、種々の形状として構成することができる。また、各側壁凸部61(各側壁凹部62)の配置についても特に限定されず、うろこ状、格子状、千鳥状、ランダム状等に配列することができる。
【0035】
また、側壁部3の表面積は、側壁凹凸部を有しない場合の表面積の1.15倍以上1.35倍以下(表面積の増加率が、15%以上35%以下)となるように構成されている。このような数値範囲とすることにより、炊飯時に側壁部3に供給される熱を、個食炊飯用容器1に収容される米及び水に効果的に付与することが可能となる。つまり、炊飯時の伝熱量を大きくしつつ、容器内部の米の加熱状況を均一化することができ、一粒一粒の米の内部までしっかりと均一に加熱しておいしい米飯を効率良く炊飯することが可能となる。なお、側壁凹凸部を有しない場合の側壁部3の表面積とは、側壁部3の投影面積を意味する。つまり、側壁部3の表面積の増加率は「側壁部3の投影面積に対する表面積比率」を意味する。
【0036】
また、容器内部の米の加熱状況をより一層均一化するという観点から、底面凹凸部を有しない場合の表面積に対する底面部2の表面積の増加率の値は、側壁凹凸部を有しない場合の表面積3に対する側壁部の表面積の増加率の値よりも大きく設定することが好ましい。例えば、底面部2の表面積を底面凹凸部を有しない場合の表面積の1.2倍(底面部2の表面積の増加率が20%)に設定する場合には、側壁部3の表面積を、側壁凹凸部を有しない場合の表面積の1.15倍(側壁部3の表面積の増加率が15%)とするというように設定することが好ましい。
【0037】
フランジ部4は、パッケージの外装となるシール材(図示せず)が熱溶着等により貼り付けられる部位であり、側壁部3の上端部から水平方向外側に延びる面(シール部との貼着面)を有するように構成されている。フランジ部4は、平面視リング状に形成されている。このフランジ部4の厚みに関しては、上記底面部2の厚みと同じ寸法として構成することができるが、シール部を熱融着する際の破損防止を考慮して、底面部2の厚みよりも大きく設定することが好ましい。
【0038】
なお、図3図6等に示される個食炊飯用容器1は、平面視円形に形成される底面部2と、平面視略正方形状に形成されるフランジ部4と、底面部2とフランジ部4とが滑らかに接続するように形成される側壁部3とを備えるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、一般的に米飯をよそう際に使用されるお椀や丼と同一、又は類似した形状であればその形状は特に限定されない。また、例えば、底の最大幅が250mm程度の平面視楕円形状を有するカレーライス容器の形態として個食炊飯用容器1を構成してもよい。
【0039】
また、図3図6等に示される個食炊飯用容器1においては、底面凹凸部を構成する複数の凸部51は、第1凸部51aと第2凸部51bと第3凸部51cとの集合として構成されており、第1凸部51a、第2凸部51b及び第3凸部51cの大きさをそれぞれ異なるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、例えば、全ての底面凸部51が、同一の表面積を有する同形状の形態を有するように構成してもよい。
【0040】
また、図3図6等に示される個食炊飯用容器1においては、側壁部3の上端部(開口部)の周囲にフランジ部4を設けるように構成しているが、このようなフランジ部4を省略して個食炊飯用容器1を構成してもよい。このような構成を採用する場合、側壁部3の上端部がシール部との貼着面を構成する。
【0041】
また、上述の個食炊飯用容器1においては、図8に示すように、底面凸部同士(底面凹部同士)の間に、底面部2の平坦な内側表面2aが現れるように構成されているが、このような構成に限定されず、例えば、各底面凸部51(底面凹部52)をつなぎ合わせて底面部2の内側表面に平坦な部分が存在しないように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
S1 洗米工程
S2 供給工程
S3 炊き上げ工程
S4 密封工程
S5 殺菌工程
1 個食炊飯用容器
2 底面部
3 側壁部
4 フランジ部
5 底面凹凸部
51 底面凸部
52 底面凹部
51a 第1凸部
51b 第2凸部
51c 第3凸部
6 側壁凸部
61 側壁凸部
62 側壁凹部
91 容器供給装置
92 搬送装置
93 洗米・米供給装置
94 水供給装置
95 炊飯室
96 シール装置
97 加熱殺菌装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9