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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002571
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用カラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20241226BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01N30/60 G
G01N30/60 B
G01N30/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102832
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】390030188
【氏名又は名称】ジーエルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100063842
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118119
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 大典
(72)【発明者】
【氏名】田原 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】平松 由香
(72)【発明者】
【氏名】菊池 くるみ
(72)【発明者】
【氏名】松山 勇太
(57)【要約】
【課題】クロマトグラフィー分析において、クロマトグラム上で溶出の時間にかかわらず、対称性のよいピークを得ると共に、理論段数を高くすることを目的とする。
【解決手段】カラム出口側に、流量制御板又は流量制御溝を備えたジョイントで構成される流量制御機構が設置されているクロマトグラフィー用カラム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム内の出口側に流量制御機構を備えていることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項2】
カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備えていることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項3】
カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の入口側空間容積が、前記カラム内の出口側空間容積よりも小さいことを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項4】
カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の出口側空間容積と、前記カラム内の入口側空間容積の合算空間容積が、システム空間容積の10分の1未満であることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項5】
カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の入口側空間容積が、前記カラム内の出口側空間容積よりも小さく、前記入口側空間容積と前記出口側空間容積の合算空間容積が、システム空間容積の10分の1未満であることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項6】
前記流量制御機構は、流量制御板又は流量制御溝を備えたジョイントを備えて構成されていることを特徴とする請求項1から5のうち何れか1項に記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項7】
前記クロマトグラフィー用カラムが、液体クロマトグラフィー用分取カラム、液体クロマトグラフィー用セミミクロカラム、液体クロマトグラフィー用分析カラム、超臨界クロマトグラフィー用分取カラム、超臨界クロマトグラフィー用セミミクロカラム、又は、超臨界クロマトグラフィー用分析カラムから選択されるカラムであることを特徴とする請求項1から5のうち何れか1項に記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項8】
請求項1から5のうち何れか1項に記載のクロマトグラフィー用カラムを備えたことを特徴とするクロマトグラフ。
【請求項9】
請求項6に記載のクロマトグラフィー用カラムを備えたことを特徴とするクロマトグラフ。
【請求項10】
前記クロマトグラフは液体クロマトグラフ又は超臨界クロマトグラフであることを特徴とする請求項8に記載のクロマトグラフ。
【請求項11】
前記クロマトグラフは液体クロマトグラフ又は超臨界クロマトグラフであることを特徴とする請求項9に記載のクロマトグラフ。
【請求項12】
請求項1から5のうち何れか1項に記載のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をすることを特徴とするクロマトグラフィー分析方法。
【請求項13】
請求項6に記載のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をすることを特徴とするクロマトグラフィー分析方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィーは液体クロマトグラフィー又は超臨界クロマトグラフィーであることを特徴とする請求項12に記載のクロマトグラフィー分析方法。
【請求項15】
前記クロマトグラフィーは液体クロマトグラフィー又は超臨界クロマトグラフィーであることを特徴とする請求項13に記載のクロマトグラフィー分析方法。
【請求項16】
請求項1から5のうち何れか1項に記載のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をすることを特徴とするクロマトグラムのピーク形状の改善方法。
【請求項17】
請求項6に記載のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をすることを特徴とするクロマトグラムのピーク形状の改善方法。
【請求項18】
前記ピーク形状の改善がピークの裾テーリングの抑制であることを特徴とする請求項16に記載のクロマトグラムのピーク形状の改善方法。
【請求項19】
前記ピーク形状の改善がピークの裾テーリングの抑制であることを特徴とする請求項17に記載のクロマトグラムのピーク形状の改善方法。
【請求項20】
カラム内の出口側に流量制御機構を設置することを特徴とするクロマトグラフィー用カラムの製造方法。
【請求項21】
カラム内の出口側に流量制御機構を設置すると共に、カラム内の入口側に拡散機構を設置することを特徴とするクロマトグラフィー用カラムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用カラムに関し、詳しくは、クロマトグラフィー用カラムのカラム内出入口部分の構成に関し、特に、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィーに用いるカラムのカラム内出入口部分の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーは、混合物である試料をクロマトグラフに注入し、気体、液体、超臨界流体である移動相に合流させて、充填剤等の固定相を内在するカラムに流し入れ、固定相との相互作用によって、成分毎に分離、検出する分析法である。このようなクロマトグラフィーは、化学工業、食品、環境、医薬等の分野において、試料に含まれる特定の成分の量を知るために広く使用されている。
【0003】
そして、クロマトグラフィー用カラムに充填された充填剤等で構成される固定相と試料成分間での相互作用を再現良く生じさせるためには、混合物である試料をカラム内の固定相に均一に導入する必要がある。
【0004】
ここで、液体クロマトグラフィーにおいては、注入された分析対象試料溶液は、移動相の送液ラインに合流して配管を通して、液体クロマトグラフィー用カラムに導入される。そして、カラム前の配管内での試料の拡散が大きいと、カラムへの注入時に試料が前後に広がってしまうために、細くて短い配管が用いられている。しかし、このような構成であると、配管がカラム断面に対して細くなり、試料がカラムの中心に導入され、カラム内で、カラムの中心部分の試料が先に進み、カラムの外側ほど遅れて進むことになる。そして、試料はそのままカラム内を移動しながらより広がっていくので、極端に遅れる場合には、クロマトグラムのピークがスプリットしたり、テーリングしたりピーク形状が悪くなる。そのため、本来であれば、試料がカラム内を、カラム断面、言い換えれば、送液方向に直行する方向の断面の同一平面上に位置して進むことが望ましい。
【0005】
そのため、従来から高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラムは、カラム内の入口側に、ジョイントとフィルターの間に空間、所謂ざぐりを設けて、試料がカラムの断面方向へ均一に広がり、同時に前進するように構成している。
【0006】
しかし、ざぐりを形成した場合であっても、カラム入口側に接続された配管内径に対して、カラム内径が大きい分取カラム等の場合、特に多量の試料をカラム内に導入すると、試料がカラムの断面方向へ完全には均一に広がることが出来ずに、試料が送液方向に不均一に分布することとなり、カラム断面の中心部の成分濃度が高くなり、又、中心部から離れて外側になるほど、移動の速度が遅くなり、カラムの断面の中心部の試料が先に進んでいってしまう。カラム内では充填剤が最密充填されているので、配管内に比べて試料バンドの広がりは抑えられるが、カラムへの注入直後に生じた中心部の試料が先に進んでいる状態は改善されずに、そのままカラム出口から溶出される。そのため、カラムの断面の中心部の試料が先に溶出し、周りの部分の試料は遅れて溶出するので、クロマトグラムのピーク形状は、大きくテーリングし、次のピークと重なる部分が生じる恐れもあり、又、極端に遅れる場合には、ピークが割れてしまうこともあった。
【0007】
しかし、クロマトグラフィーの目的は成分毎の分離であるので、出来る限り対称性の良いピークが得られることが求められる。
【0008】
そのため、ざぐり以外にも、試料をカラム断面に均一に広げるための様々な技術が提案されている。例えば、カラムの入口側の中心部分に、ボールを設けて、中心部分の移動を制限する方法、カラムの入口側に邪魔板を設けて、試料を断面方向に拡散する方法、カラムの入口側に透過拡散板を設ける方法、カラムの入口側に多孔質体と拡散板を組み合わせて設置し、流れを制限しながら試料を拡散させる方法、カラムの入口側に設けた多段の空間を通して徐々に広げる方法、カラムの入口側に開口部又は複数の小孔を備えた2枚の円板を積層して拡散機構を構成する方法、カラムの入口側に、フィルターに薄膜を形成させて、中心の流れを制限して試料を外周方向に広げる方法等が提案されている。
【0009】
特に、拡散が遅い液体を移動相とする比較的カラム内径が大きい液体クロマトグラフィー用分取カラムでは、注入された混合物である試料を、カラムの断面方向に、均一に拡散させるために、分散板を入口側のナット又はジョイントとフィルター間に設けることが行われている。尚、入口側の分散板の設置に加えて、断面方向に拡散した試料を集めて溶出させるために、出口側にも同じ分散板が設置される構成も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭62-71560
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の技術は、基本的には、カラムへの試料導入側における構成、技術であり、その構成をカラム内の入口側であって、カラム内の固定相の上流側である入口部に設けることが必要となる。具体的には、カラム内の入口部には、ざぐり、邪魔板、分散板、拡散板、多段構造体等の拡散機構を設置することになるので、カラム内の入口部に、大きな空間が生じてしまい、所謂デッドボリュームが生じてしまう。クロマトグラム上で溶出の遅いピークは、カラム内の入口側のデッドボリュームの影響を受け難いので、対称性のよいピークが得られるが、溶出の早いピークでは、カラム内の入口側のデッドボリュームの影響により、試料バンドが広がり、ピーク形状が悪くなり、テーリングし、理論段数が低下するという問題点があった。
【0012】
そのため、従来では、大口径の液体クロマトグラフィー用分取カラムや精製カラムの使用時には、クロマトグラム上で溶出の早いピークのピーク形状は諦めていた。又、大口径のカラムは、1回あたりの分析時間の早い、ファーストLC用カラム(ファーストカラム)には使用することが出来なかった。
【0013】
このように、カラムへの導入試料をカラムの断面方向に均一に導入することと、カラム内での試料バンドの広がりを抑制することは相反することであった。
【0014】
一方、分析の高速化、高分離化、試料の微量化により、カラム内での試料バンドの広がりを小さくし、クロマトグラムのピークをシャープにする要求が高まっている。尚、カラム内での試料バンドの広がりは、以下の式、σcol2jointi 2filteri 2sp 2pspace 2jointo 2filtero 2のように、入口ジョイント内拡散、入口フィルター内拡散、固定相内拡散、固定相間空間内拡散(充填剤間空間内拡散)、出口ジョイント内拡散、出口フィルター内拡散を合算したものになる。
【0015】
そこで、本発明は、クロマトグラフィー分析において、導入試料をカラム内で断面方向に拡散させて均一に導入すると共に、カラム内での試料バンドの広がりを抑制することを目的とする。
【0016】
又、クロマトグラフィー分析において、クロマトグラム上で溶出の時間にかかわらず、対称性のよいピークを得ると共に、理論段数を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上のような課題を解決するための手段としての本発明は、カラム内の出口側、詳しくはカラム内の固定相の下流側である出口部に流量制御機構が設けられたカラムである。
【0018】
具体的には、カラム内の出口側に流量制御機構を備えているクロマトグラフィー用カラムである。
【0019】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備えているクロマトグラフィー用カラムである。
【0020】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の入口側空間容積が、前記カラム内の出口側空間容積よりも小さいクロマトグラフィー用カラムである。
【0021】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の出口側空間容積と、前記カラム内の入口側空間容積の合算空間容積が、システム空間容積の10分の1未満であるクロマトグラフィー用カラムである。
【0022】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に、前記カラム内の入口側に拡散機構を備え、前記カラム内の入口側空間容積が、前記カラム内の出口側空間容積よりも小さく、前記入口側空間容積と前記出口側空間容積の合算空間容積が、システム空間容積の10分の1未満であるクロマトグラフィー用カラムである。
【0023】
又、上記のクロマトグラフィー用カラムにおいて、前記流量制御機構は、流量制御板又は流量制御溝を備えたジョイントを備えて構成されているクロマトグラフィー用カラムである。
【0024】
又、上記のクロマトグラフィー用カラムが、液体クロマトグラフィー用分取カラム、液体クロマトグラフィー用セミミクロカラム、液体クロマトグラフィー用分析カラム、超臨界クロマトグラフィー用分取カラム、超臨界クロマトグラフィー用セミミクロカラム、又は、超臨界クロマトグラフィー用分析カラムから選択されるカラムであるクロマトグラフィー用カラムである。
【0025】
又、上記のクロマトグラフィー用カラムを備えたことを特徴とするクロマトグラフである。
【0026】
又、上記のクロマトグラフは液体クロマトグラフ又は超臨界クロマトグラフであるクロマトグラフである。
【0027】
又、上記のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をするクロマトグラフィー分析方法である。
【0028】
又、上記クロマトグラフィーは液体クロマトグラフィー又は超臨界クロマトグラフィーであるクロマトグラフィー分析方法である。
【0029】
又、上記のクロマトグラフィー用カラムを用いてクロマトグラフィー分析をするクロマトグラムのピーク形状の改善方法である。
【0030】
又、上記ピーク形状の改善がピークの裾テーリングの抑制であるクロマトグラムのピーク形状の改善方法である。
【0031】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を設置するクロマトグラフィー用カラムの製造方法である。
【0032】
又、カラム内の出口側に流量制御機構を設置すると共に、カラム内の入口側に拡散機構を設置するクロマトグラフィー用カラムの製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
以上のような本発明によれば、カラムの出口側、詳しくはカラムの下流側の出口部に流量制御機構を設けることにより、カラム内、特にカラム内の中心部分の流量、流速を制御、抑制することで、中心に導入された試料も、断面方向に、均一に移動させると共に、カラム内での試料バンドの広がりを抑制することが可能となり、そして、クロマトグラム上で溶出の早いピークでも対称性の良いカラムを得ることが可能となり、溶出の早い成分でもテーリングの無い対称性のよいシャープなピークが得られ、分離分析の精度を高めることが出来るようになった。
【0034】
又、カラムの出口側、詳しくは出口部に流量制御機構を設けることにより、カラム内で試料が固定相に均一に流れるようになり、カラムの入口側に拡散板や分散板等の分散機構を設置しなくても、クロマトグラムでシャープな対称性の良いピークが得られるようになった。又、カラムの入口側に拡散板や分散板等の分散機構を設置しないことにより、デッドボリュームが減少するので、特に溶出の早い成分でも、クロマトグラムで対称性の良いピークが得られ、高分離が出来るようになった。更に、カラムの入口側のデッドボリュームが無くなり、デッドボリュームの影響を受けやすい微粒子による高速分析カラムや液体よりも拡散し易くデッドボリュームの影響を受けやすくなる超臨界クロマトグラフィー用カラム、内径の細いセミミクロカラム、ガスクロマトグラフィー用カラム等としても使用出来るようになった。
【0035】
又、カラムの入口側の拡散板や分散板等の分散機構によるデッドボリュームを、出口側に設置した流量制御機構の空間容積より小さくすることにより、カラム全体に対する試料バンドの広がりを抑えることが可能となった。更に、カラムの入口側に分散機構を設置することにより、移動相と混じりの悪い試料液や試料液を多量注入する場合でも、クロマトグラム上で対称性の良いピークを得ると共に、理論段数を高くすることが可能になった。
【0036】
又、インジェクターから検出器セルまでの空間ボリューム(以下、「システム空間容積」ともいう。)に対して、カラムの入口側空間容積と出口側空間容積の合算容積を10分の1未満にすることで、クロマトグラムのピーク形状に顕著に影響を与えることが無くなった。システム空間容積は、インジェクター内部空間容積、配管ジョイント内部空間容積、カラム内部空間容積、検出器セル内空間容積の合計の容積であり、一般的に固定相である充填剤に保持されない成分の保持時間に流速を乗じたV0(ホールドアップボリューム)を代用することが出来る。尚、カラム内部空間容積は、カラムの入口側空間容積と出口側空間容積を含み、入口ジョイント内、入口フィルター内、固定相内、固定相間空間内、出口フィルター内、出口ジョイント内の各空間内容積から成る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明一実施例断面図
図2】本発明一実施例分解斜視図
図3】流量制御板を備えた本発明一実施例部分図
図4】流量制御溝を備えたジョイントを備えた本発明一実施例部分図
図5】本発明他実施例断面図
図6】本発明他実施例分解斜視図
図7】本発明他実施例分解斜視図
図8】本発明他実施例断面図
図9】本発明他実施例分解斜視図
図10】本発明他実施例断面図
図11】本発明他実施例分解斜視図
図12】流量制御板の実施例正面図
図13】本発明実施例1のクロマトグラム
図14】本発明実施例1のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図15】本発明実施例2のクロマトグラム
図16】本発明実施例2のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図17】本発明実施例3のクロマトグラム
図18】本発明実施例3のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図19】本発明実施例3の理論段数をプロットしたグラフ図
図20】本発明実施例4のクロマトグラム
図21】本発明実施例4のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図22】本発明実施例4の理論段数をプロットしたグラフ図
図23】本発明実施例5のクロマトグラム
図24】本発明実施例5のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図25】本発明実施例5の理論段数をプロットしたグラフ図
図26】本発明実施例6のクロマトグラム
図27】本発明実施例7のクロマトグラム
図28】本発明実施例7のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図29】本発明実施例7の理論段数をプロットしたグラフ図
図30】本発明実施例8のクロマトグラム
図31】本発明実施例8のピーク対称性をプロットしたグラフ図
図32】本発明実施例8の理論段数をプロットしたグラフ図
図33】本発明実施例9のクロマトグラム
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のクロマトグラフィー用カラムは、カラム内の出口側、詳しくはカラム内の固定相の下流側である出口部に流量制御機構を備えている。以下本発明の実施の形態を図を参照して説明する。尚、カラム内の出口側とは、カラム内の固定相より下流側を意味し、カラム内の入口側とは、カラム内の固定相より上流側を意味する。
【0039】
本発明のクロマトグラフィー用カラム(以下単に「カラム」ともいう。)1は、図1及び図2に示すように、カラム1内の出口部22に、カラム1内、特にカラム1内の中心部分の、試料を含む移動相の流量、流速を制御、抑制するための流量制御機構3が設置されている。又、本発明のクロマトグラフィー用カラムは、図10及び図11に示すように、カラム15内の出口部22に流量制御機構3が設置され、カラム15内の入口側であって、カラム15内の固定相の上流側である入口部21には試料をカラム15の断面方向に、均一に拡散させるための拡散機構4が設置されている。
【0040】
従って、本発明のカラムは、図1及び図2に示すように、カラム1内の出口部22のみに流量制御機構3が設置される一方、カラム1内の入口部21には拡散機構が設置されていない構成と、図10及び図11に示すように、カラム11内の入口部21に拡散機構4が設置されると共に出口部22に流量制御機構3が設置されている構成とがある。
【0041】
図1及び図2に示すように、カラム1の出口部22は、カラム1内の出口側であって、下流側のフィルター52より下流側で下流側のジョイント62の出口孔621より上流側の部分、即ち、下流側のフィルター52と下流側のジョイント62の出口孔621間の部分で構成することが出来、カラム1の入口部21は、カラム1内の入口側であって、上流側のフィルター51より上流側で上流側のジョイント61の入口孔611より下流側の部分、即ち、上流側のフィルター51と上流側のジョイント61の入口孔611間の部分で構成することが出来る。
【0042】
カラム1内の出口部の流量制御機構3の構成は、特に限定されないが、クロマトグラムの各ピークの対称性は1.5未満であればよく、好ましくは1.25以下がよく、理論段数は、充填剤種に応じて、基準値を満たせば良く、例えば、ODSシリカゲル充填カラムでは、3μm、5μmの粒子に対して、それぞれ15万段/m、68000段/m以上の理論段数が得られればよい。
【0043】
流量制御機構3がカラム1内の出口部22に設置されて、カラム1内、特にカラム1内の中心部分の流量、流速を制御、抑制することにより、カラム1の固定相の上流部分において、試料の流れ方向の拡散は、断面のどの部分に対しても均一となり、カラム断面のどの部分でも均一の流量が得られるようになり、試料が均一にカラムベッド(充填剤で構成される層)に導かれることになる。そのため、クロマトグラム上で溶出の早いピークでもテーリングの無い、シャープなピークが得られる。
【0044】
流量制御機構の構造は、カラムのフィルター種、ジョイント構造等に応じて構成することが出来、これに限定されないが、流量制御機構は、図3に示すように、ジョイント62の底面620に設置される流量制御板31、又は、図4に示すように、底面630に流量制御溝32を備えたジョイント63で構成することが出来る。又、拡散機構はざぐり、邪魔板、透過拡散板、多孔質体と拡散板の組み合わせ、カラム内の入口側の多段空間、開口部又は複数の小孔を備えた2枚の円板の積層、分散板、拡散板等の公知の構成、部材を用いて構成することが出来る。
【0045】
ここで、カラム1は、ナット71,72、液体を導入するためのジョイント61,62、充填剤を止めるためのフィルター51,52、管本体70、流量制御機構3を備えて構成されており、ジョイント61,62は、ナット71,72と分離して構成されたナット分離型を使用しているが、図5及び図6に示すように、カラム12は、ジョイントがナットと一体的に構成されているナット一体型ジョイント710,720等を使用することが出来る。
【0046】
次に、本発明のクロマトグラフィー用カラムの構成を具体的に説明する。カラム1は、カラム1内の出口部22のみに流量制御機構3を備える構成で、図1及び図2に示すように、上流側のナット71、上流側のジョイント61、上流側のフィルター51、管本体70、下流側のフィルター52、下流側のジョイント62、下流側のフィルター52と下流側のジョイント62間、即ち出口部22に設置される流量制御用機構3としての流量制御板31、下流側のナット72を備えて構成されている。尚、上流側のジョイント61にはざぐり等の拡散機構は設けられていない。
【0047】
又、カラム12は、カラム12内の出口部22のみに流量制御機構3を備える構成で、図5及び図6に示すように、上流側のナット一体型ジョイント710、上流側のフィルター51、管本体70、下流側のフィルター52、流量制御機構3を備えた下流側のナット一体型ジョイント720を備えて構成されている。下流側のナット一体型ジョイント720の底面630には流量制御機構3としての流量制御溝32が構成されている。尚、上流側のナット一体型ジョイント710にはざぐり等の拡散機構は設けられていない。
【0048】
又、カラム13は、カラム13内の出口部22のみに流量制御機構を備える構成で、図7に示すように、図5及び図6に示すカラム12の、流量制御溝32が構成されたナット一体型ジョイントを替えた構成で、上流側のナット一体型ジョイント710、上流側のフィルター51、管本体70、下流側のフィルター52、下流側のナット一体型ジョイント720、下流側のフィルター52と下流側のナット一体型ジョイント720間に設置される流量制御機構3としての流量制御板31を備えて構成されている。尚、上流側のナット一体型ジョイント710にはざぐり等の拡散機構は設けられていない。
【0049】
更に、カラム14は、図8及び図9に示すように、図1及び図2に示すカラム1の、下流側のジョイント62及び流量制御板31に替えて、図4に示すような流量制御機構3としての流量制御溝32を備えたジョイント63を設置して構成されている。
【0050】
又、カラム15は、カラム15内の出口部22に流量制御機構3を備えると共に、入口部21に拡散機構4を備える構成で、図10及び図11に示すように、上流側のナット71、上流側のジョイント61、上流側のフィルター51、上流側のジョイント61と上流側のフィルター51間、即ち入口部21に設置される拡散機構4としての拡散板41、管本体70、下流側のフィルター52、下流側のジョイント62、下流側のフィルター52と下流側のジョイント62間、即ち出口部22に設置される流量制御機構3としての流量制御板31、下流側のナット72を備えて構成されている。
【0051】
尚、図示はしないが、図10及び図11に示すカラム15の分離されたナット及びジョイントに替えて、ナット一体型ジョイントで構成することとしてもよい。更に、図示はしないが、図10及び図11に示すカラム15のジョイント及び流量制御板に替えて、底面に流量制御溝が構成されたジョイントで構成することとしてもよい。更に、図示はしないが、図10及び図11に示すカラム15のナット、ジョイント及び流量制御板に替えて、底面に流量制御溝が構成されたナット一体型ジョイントで構成することとしてもよい。又、図示はしないが、拡散板に替えて、或いは拡散板と共にざぐりを設けた構成としてもよい。
【0052】
流量制御板31は、カラム1内の下流方向への流れを制御、抑制すると共に流れを出口へ誘導する板体であり、図3によく示すように、円形の板体の中央部に、下流側のジョイント62の出口孔621と連通する貫通孔310を有すると共に、貫通孔310に連通する流路311が、貫通孔310から外方に放射状に構成されている。流路311は板体を貫通する構成とするが、板体の上流側面に形成された板体を貫通しない溝で構成してもよい。又、図示はしないが、下流側のジョイントの出口孔と連通する貫通孔は板体の中央部以外に、1個又は2個以上設ける構成としてもよい。流量制御溝32を備えた下流側のジョイント63は、カラム内の下流方向への流れを制御、抑制すると共に流れを出口へ誘導するジョイントであり、図4によく示すように、ジョイント63の底面630には、出口孔621に連通する流路としての溝32が、出口孔621から外方に放射状に形成されている。
【0053】
一方、拡散板41は、試料をカラムの断面方向に拡散させるためのプレートである。
【0054】
流量制御板31は、下流側のジョイント62の底面620に設置するが、ざぐりが構成されているジョイントを用いる場合には、ざぐりに嵌め込んで設置し、ざぐりをなくすと共に流量制御機構を設置することが出来る。流量制御板の厚さは特に限定されないが、0.1~10mmとすることが出来る。
【0055】
流量制御機構3において、流量制御板31の流路311の構成は、ジョイント62の出口孔621と連通する貫通孔310に連通すれば特に限定されず、又、流量制御溝32の構成は、ジョイント63の出口孔621に連通すれば特に限定されない。流量制御板31で説明すると、図12に示すように、中央から放射状に枝分かれした形状が好ましく、又、対称であることが好ましい。又、流路は、図12(a)に示すように、曲線状でもよく、図12(b)や図12(c)に示すように、直線状でもよい。又、図12(a)や図12(b)に示すように、1本の流路から2本に枝分かれしてもよく、図12(c)に示すように、3本以上に枝分かれしてもよい。
【0056】
又、流量制御機構は、図示はしないが、流量制御板を複数枚組み合わせた構成、流量制御板と流量制御溝を備えたジョイントを組み合わせた構成としてもよい。
【0057】
流量制御板及び流量制御溝を備えたジョイントの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のHPLCに用いる溶離液耐性のある樹脂やステンレス、チタンなどの腐食性が少ない金属など、従来からHPLCによく用いられている材質が好ましい。又、金属製の場合は、表面不活性化処理などを施してもよい。又、入口側に設置する流量制御板及び流量制御溝を備えたジョイントの材質は、耐圧のあるPEEKや金属等が好ましい。
【0058】
流量制御板及び流量制御溝を備えたジョイントの作製方法は、エッチング加工、レーザー加工、旋盤加工等製品として採用することが出来る現実的な方法であれば、限定されない。
【0059】
流量制御板及び流量制御溝を備えたジョイントの接液表面をきれいにするために、脱脂処理、超音波洗浄処理、減圧乾燥などを行うことが好ましい。油脂の残存や、加工残渣が表面に残存すると、試料がその部分に吸着するからである。又、角などのバリも吸着要因となるので、面取りをすることが好ましく、必要に応じて、0.5以上のC面取り加工を施すことがより好ましい。
【0060】
HPLC分析において、試料成分の溶解液は、初期移動相が推奨されており、試料を初期移動相で溶解した場合や、溶媒含む試料の注入量がシステム空間容積の1%程度以下の少ない注入量の場合では、出口側のみに流量制御機構を設けてカラム内の流量制御を行うだけで十分である。しかし、試料が初期移動相と混ざりが悪い場合や溶媒含む試料の注入量がシステム空間容積の1%以上と注入量が多い場合では、注入された試料を十分に初期移動相と混ぜ合わせてから、カラムベッド(充填剤で構成される層)に導入する必要が生じる。そのために、出口側での流量制御に加えて、試料溶液と移動相を良く混ぜるために、カラム入口側に、拡散機構を設置することとしてもよい。
【0061】
尚、カラム内の出口側に流量制御機構を備えると共に入口側に拡散機構を備える構成等の場合、カラム内の入口側の入口側空間容積が、カラム内の出口側の出口側空間容積より大きいと、入口側空間容積による拡散の影響で、出口側に設置された流量制御機構の効果が弱められ、入口側空間容積のほうが小さい場合と比較して、ピーク形状が悪くなるので、入口側空間容積が出口側空間容積よりも小さいことが好ましい。更に、バラツキ誤差を考慮すると、入口側空間容積は、出口側空間容積の80%以下であることがより好ましい。ここで、入口側空間容積は、カラム内の入口側における入口側オリフィスから充填剤を固定するためのフィルターまでの合計容積、即ち、入口側オリフィスの空間部の容積、ざぐりや拡散板等の拡散機構の空間部の容積及び上流側フィルターの空間部の容積を含む合計容積であり、出口側空間容積は、カラム内の出口側における充填剤を固定するための下流側フィルターから出口側オリフィスまでの合計容積、即ち、下流側フィルターの空間部の容積、流量制御機構の空間部の容積、ざぐり等の空間部の容積及び出口側オリフィスの空間部の容積を含む合計容積である。尚、入口側オリフィスの空間部又は出口側オリフィスの空間部は、入口孔611又は出口孔621の空間に配管接続のためのオシネやフェラル等が挿入された際の残りの空間である。
【0062】
又、入口側空間容積と出口側空間容積の合計空間容積は、システム空間容積の10%未満にすることが好ましい。システム空間容積に占める合計空間容積の割合が増えると、その容積に比例して、ピーク幅が広がり、理論段数が下がってしまい、分離度が悪くなり、定量に影響してしまうからであり、更に、定量のバラツキを、好ましい10%未満に抑えるためには、システム空間容積に占める合計空間容積の割合を10%未満にする必要があるためである。
【0063】
近年、分析時間の短縮が出来ることから、粒子径の小さい充填剤をショートカラムに充填したファーストカラムの需要が急速に増加している。しかし、カラムの入口側に分散板等の分散機構を設置する方法は、分析時間が短いファーストカラムには適用できない。一方、本発明の出口側のみに流量制御機構を設ける構成は、カラムの入口側に空間が生じないので、ファーストカラムに最適である。
【0064】
又、内径10mm以上の断面積の大きいカラムは、試料が断面方向に均一に流れにくいため、多量に入れられる試料成分の影響や注入毎の圧力ショックの影響を受けて、ピーク形状が悪くなり、理論段数が悪くなることが多い。特に、ショートカラムでは、カラムが劣化し易くなる。しかし、本発明を用いると、カラム断面に対して均一に試料成分が導入されるので、注入量や圧力ショックの入口ベッドへの影響は少なくなる。
【0065】
尚、本発明のクロマトグラフィー用カラムは、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィー用分取カラム、液体クロマトグラフィー用セミミクロカラム、液体クロマトグラフィー用分析カラム、超臨界クロマトグラフィー用分取カラム、超臨界クロマトグラフィー用セミミクロカラム、超臨界クロマトグラフィー用分析カラムとして用いることが出来る。
【0066】
又、図示はしないが、本発明のクロマトグラフィー用カラムを備えてクロマトグラフを構成することが出来る。そして、本発明のクロマトグラフィー用カラムを備えたクロマトグラフは、これらに限定されないが、液体クロマトグラフ又は超臨界クロマトグラフであってもよい。
【0067】
又、本発明のクロマトグラフィー用カラムを用いて、公知の方法、装置を用いてクロマトグラフィー分析をすることが出来る。そして、本発明のクロマトグラフィー用カラムを用いたクロマトグラフィー分析は、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィー又は超臨界クロマトグラフィーであってもよい。このような本発明のクロマトグラフィー用カラムを用いたクロマトグラフィー分析は、クロマトグラムのピーク形状の改善方法、ピークの裾テーリングの抑制方法として用いることが出来る。
【0068】
本発明のクロマトグラフィー用カラムは、公知のカラムの製造方法を用いると共に、図1及び2に示すように、カラム1内の出口側に流量制御機構3を設置して、又は図10及び11に示すように、カラム15内の出口側に流量制御機構3を設置すると共に、カラム15内の入口側に拡散機構4を設置して製造することが出来る。
【実施例0069】
ODSゲル(ODS A 充填剤 表面積450m/g 細孔径10nm カーボン量15%)を、内径20mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填したHPLCカラムを用いてHPLC分析を行った。実施例1として、出口側にのみ流量制御機構3としての流量制御板31を備えた、図1及び図2に示す、出口側流量制御機構3(31)を備えたカラム1(システム空間容積:43.8mL)と、比較例1として、入口側にざぐり等の拡散機構を備えず、出口側に流量制御機構を設けないカラム(システムシステム空間容積:42.4mL)とをクロマトグラムの結果で評価比較した。
【0070】
HPLC分析条件は、
移動相 65%アセトニトリル
流量 20mL/min
カラム温度 40℃
検出 UV254nmで、
試料 ピーク1 ウラシル、ピーク2 アセトフェノン、ピーク3 ベンゼン、ピーク4 トルエン、ピーク5 ナフタレンの混合試料
試料注入量 120μL
【0071】
結果のクロマトグラムを図13に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図14に示す。ピーク対称性は、1.00が左右対称ピークとなり、理想で、1.5未満であれば、一般的に使用できるカラムと考えられる。比較例1では、図13(b)及び図14に示すように、保持時間の早いピークほど、ピーク対称性が大きくなり、テーリングしていることがわかる。実際のクロマトグラムでも、従来カラムの2本目のピークの裾テーリングが確認できる。一方、本発明の実施例1では、出口側に流量制御機構を設置するだけで、図13(a)及び図14に示すように、1本目のピーク対称性が、1.78から1.19に、2本目のピーク対称性が、1.59から1.10に改善されており、本発明の方法では、実際のクロマトグラム上でも、2本目のピーク裾のテーリングが無くなり、大きく改善されている。本発明の実施例1のカラムでは、出口側に、流量制御機構を設けることで、カラムのシステム空間容積が、1.4mL増えているが、入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積はシステム空間容積に対して、6%であり、10%未満の問題のない範囲であることが分かる。
【実施例0072】
ODSゲル(ODS B 充填剤表面積350m/g 細孔径10nm カーボン量8%)を、内径20mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填したHPLCカラムを用いてHPLC分析を行った。実施例2-1として、出口側にのみ流量制御機構3としての流量制御板31を備えた、図1及び図2に示すカラム1(システム空間容積:40.3mL 入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積:1.34mL 合算空間容積/システム空間容積:3.3%)を用い、実施例2-2として、入口側に拡散機構4としての拡散板41を備えると共に、出口側に流量制御機構3としての流量制御板31を備えた、図10及び図11に示すカラム15(システム空間容積:40.34mL 入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積:1.38mL 合算空間容積/システム空間容積:3.4%、出口側空間容積に対する入口側空間容積比率86%)を用い、比較例2として、入口側と出口側に拡散機構としての拡散板を備えたカラム(システム空間容積 38.5mL)とをクロマトグラムの結果で評価比較した。
【0073】
HPLC分析条件は、
移動相 65%アセトニトリル
流量 20mL/min
カラム温度 40℃
検出 UV254nmで、
試料 ピーク1 ウラシル、ピーク2 アセトフェノン、ピーク3 ベンゼン、ピーク4 トルエン、ピーク5 ナフタレンの混合試料
注入量 120μL
【0074】
本発明の実施例2-1は、カラム内の入口側には拡散板を設置せず、出口に体積140μLの流量制御板を設置した本発明の新規分取カラムを用いた分析例である。本発明の実施例2-2は、カラム内の入口側に体積40μLの拡散板を設置し、さらに出口側には、実施例2-1と同じ流量制御板を設置した本発明の分取カラムを用いた分析例である。
【0075】
結果のクロマトグラムを図15に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図16に示す。溶出時間にピーク対称性をプロットした評価方法が、カラムの評価として正しく、ピーク対称性は、1.00が左右対称ピークとなり、理想で、メーカーによって異なるが、一般的には、ピーク対称性が1.5未満であれば、一般的に使用できるカラムと考えられる。本発明では、さらに良い、ピーク対称性1.25以下を目標とした。本発明の出口側に流量制御板及び入口側に拡散機構4としての拡散板を設けた実施例2-2では、図15(b)及び図16に示すように、保持時間2分のピーク対称性が1.2まで改善され、本発明の出口側にのみ流量制御板を設けた実施例2-1では、図15(a)及び図16に示すように、1.17まで改善された。
【0076】
又、比較例1では、図13(b)及び図14に示すように、一番溶出の早いピーク1の対称性は1.78であったが、比較例2では、図15(c)及び図16に示すように、対称性は1.45になり、拡散板を入口側に設置する構成でも、設置されない構成に比べればピーク対称性が良くなることは確認できた。
【0077】
又、入口側に拡散機構を設けても、入口側空間容積が出口側空間容積より小さい場合には、入口側に拡散機構を設けず、出口側のみに流量制御機構を設けた構成と同程度の性能が得られることが確認できた。又、実施例1と実施例2を比較することで、充填剤種が変わっても同じ効果が得られ、本発明は、様々なカラムを用いた液体クロマトグラフィーに採用できることが証明された。
【実施例0078】
実施例2-1と同一の、ODSゲル充填剤を充填したHPLCカラムを用い、実施例2と同一のHPLC分析条件でHPLC分析を行った。本発明の実施例3として、カラム内の出口側にのみ流量制御機構としての流量制御板を備えた、図1及び図2に示すカラム1を用い、又、比較例として、カラム1の構成から流量制御板を除去すると共に、上流側及び下流側のジョイントにざぐりを形成した構成である比較例3-1、カラム1の構成から流量制御板を除去し、上流側及び下流側のジョイントにざぐりを形成すると共に、入口側にのみ拡散板が設置された比較例3-2、カラム1の構成から流量制御板を除去し、上流側及び下流側のジョイントにざぐりを形成すると共に、入口側及び出口側の両方に拡散板が設置された比較例3-3とをクロマトグラムの結果で評価比較した。
【0079】
結果のクロマトグラムを図17に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図18、縦軸に理論段数をプロットしたグラフ図を図19に示す。ピーク対称性は、1.00が左右対称ピークとなり、理想で、1.5未満であれば、一般的に使用できるカラムと考えられる。理論段数は高い方がピークがシャープになり、5μm粒子の場合では、17000段以上(68000段/m)あれば、使用できるカラムと考えられる。
【0080】
本発明の実施例3のカラムでは、図17(a)、図18及び図19に示すように、6分未満に溶出する保持の早いピークでも、21900段以上の高理論段数が得られて、ピーク対称性も良く、1.25未満になっている。比較例3-1のカラムでは、図17(b)、図18及び図19に示すように、8~9分に溶出するピークでは、17000段以上の段数が得られており、十分な性能が得られている。しかし、7分までに溶出する、溶出の早いピークでは、理論段数が低下し、又、ピーク対称性も1.5以上になり、テーリングし、ピークの形状が悪くなっている。比較例3-2のカラムでは、図17(c)、図18及び図19に示すように、6分以降に溶出するピークでは、十分な性能が得られている。しかし、5.5分までに溶出する、溶出の早いピークでは、理論段数が低下し、又、ピーク対称性も1.5以上になり、テーリングし、ピークの形状が悪くなっている。比較例3-3のカラムでは、図17(d)、図18及び図19に示すように、比較例3-2のカラムと同性能であった。従来の入口側に設置した拡散板では、その入口側の空間容積の影響により、入口側空間内で試料の拡散が生じてしまうため、出口側の効果は打ち消されており改善が得られなかった。
【0081】
このように、比較例では、最初のピークであるウラシルは、保持されず、逆相分配しないので理論段数が得られないが、出口側に流量制御板を設置した本発明の実施例3では、成分が均一にカラム内に入れられるために、ピーク対称性は、1.5未満となり、高性能が得られた。
【実施例0082】
球状5μmODS充填剤InertSustain(登録商標) C18 、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を、内径20mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填したHPLCカラムを用いてHPLC分析を行い、クロマトグラムのピーク形状を確認した。
【0083】
実施例4-1として、カラム13の出口側にのみ流量制御機構3としての流量制御板31を備えた、図7に示す、SUS316材質の厚み0.5mmの流量制御板31をナット一体型ジョイント720に設置したカラム13、実施例4-2として、カラム12の出口側に、図5及び図6に示す、深さ0.5mmの流量制御溝32を備えたナット一体型ジョイント720を設置したカラム12を用いた。実施例4-2において、流量制御溝32の容積が61μL、下流側フィルター52と出口側オリフィスの容積が合計534μLで、出口側空間容積は595μL、これに入口側オリフィス容積、空間、上流側フィルター容積を含めた入口側空間容積を加えた合算空間容積1.129mLはシステム空間容積40.3mLの2.8%で、10%未満である。HPLC分析条件は実施例1と同一である。
【0084】
結果のクロマトグラムを図20に示す。保持係数(k)0~4に溶出する5本のピークの形状を検査した。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図21に、縦軸に理論段数をプロットしたグラフ図を図22に示す。ピーク対称性は、図20(a)に示す実施例4-1と図20(b)に示す実施例4-2の両方で1.25以下で、対称性の良いピーク形状が得られた。又、理論段数では、ODS層で分配保持されないUracilピーク(理論段数17,000段以上)を除いて、2万段以上が得られ、m当り8万段以上のシャープなピークが得られた。又、実施例4-1のSUS316材質の図12(a)に示す形状の厚み0.5mmの流量制御板に替えて、SUS316材質の図12(b)及び図12(c)に示す形状の厚み0.5mmの流量制御板をジョイントに設置して同様の条件でHPLC分析を行った結果、同様の結果となった。流量制御機構を出口側に設置することにより、カラムの性能を最大限引き出し、高性能なカラムになることが実証された。
【実施例0085】
出口側空間容積に対する入口側空間容積の変化によるクロマトグラムのピーク形状の変化を確認した。球状5μmODS充填剤InertSustain(登録商標) C18、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を、内径50mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填したHPLCカラムを用いてHPLC分析を行い、クロマトグラムのピーク形状を確認した。
【0086】
カラム14の出口側に、図8及び図9に示す、カラム14に深さ5mmの流量制御溝32を備えたジョイント63を設置して、カラム14内の出口側に流量制御機構3を設置した。カラムの入口側は、SUS316材質の拡散板を、厚みを変えて、出口側空間容積に対して、入口側空間容積の比が異なる4種のHPLCカラムを準備し、HPLC分析を行った。
【0087】
実施例5-1として、カラム14の入口側には拡散板を設置しない構成とし、実施例5-2~実施例5-4として、図9に示すカラム14の入口側に、厚み1mm(実施例5-2)、4mm(実施例5-3)、8mm(実施例5-4)の拡散板をジョイントに設置した。夫々、出口側空間容積11.0mLに対して、実施例5-1では入口側空間容積2.5mL、出口側空間容積に対する入口側空間容積比率23%(入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積はシステム空間容積の5.1%)、実施例5-2では入口側空間容積が3.3mL、出口側空間容積に対する入口側空間容積比率30%(入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積はシステム空間容積の5.5%)、実施例5-3では入口側空間容積が5.7mL、出口側空間容積に対する入口側空間容積比率52%(入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積はシステム空間容積の6.4%)、実施例5-4では入口側空間容積が8.9mL、出口側空間容積に対する入口側空間容積比率81%(入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積はシステム空間容積の7.6%)とした。又、比較例5として、カラムの出口側及び入口側に拡散板を設置した、出口側空間容積に対して 入口側空間容積が100%の従来市販のHPLCカラムを準備した。
【0088】
HPLC分析条件は、
移動相 65%アセトニトリル
流量 125mL/min
カラム温度 室温25℃
検出 UV254nmで、
試料 ピーク1 ウラシル、ピーク2 アセトフェノン、ピーク3 ベンゼン、ピーク4 トルエン、ピーク5 ナフタレンの混合試料
試料注入量 500μL
【0089】
結果のクロマトグラムを図23に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図24に、縦軸に理論段数をプロットしたグラフ図を図25に示す。本発明の実施例5-1~5-4のカラムでは、図23(a)~図23(d)、図24及び図25に示すように、ほとんど変わらない良好な結果が得られた。具体的には、本発明実施例のカラムでは、ピーク対称性が、1.2未満で対称性の良いピークになっている。又、逆相分配する4分以後のピークでは、理論段数2万段程度のシャープなピークが得られている。それに対して、比較例5では、図23(e)、図24及び図25に示すように、2本目、3本目のピークがテーリングして、ピーク高さが低いことがわかる。2分、4分、6分の溶出ピークの対称性が、それぞれ1.4、1.4、1.3となっている。
【0090】
流量制御機構を出口側及び入口側の両側に設置した本発明カラムにおいて、カラムの出口側空間容積に対して、入口側空間容積が0~81%であれば、ピーク対称性の良い、シャープなピークが得られることが実証された。
【実施例0091】
実施例5で実証した本発明カラムを用いて、移動相と混ざりが悪い試料溶媒を用いて、更に、溶媒を含む試料の注入量を増やした場合のクロマトグラムのピーク形状の確認試験を行った。球状5μmODS充填剤InertSustain(登録商標) C18 、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を、内径50mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填したHPLCカラムを用いてHPLC分析を行い、クロマトグラムのピーク形状を確認した。
【0092】
カラム14の出口側に、図4に示す形状の、深さ5mmの流量制御用の溝32を備えたジョイント63を設置して、カラム14の出口側に流量制御機構3を設置した。カラム14の入口側は、実施例6-1として、カラムの入口側には拡散板を設置しない構成とし、実施例6-2として、カラムの入口側に、SUS316材質の厚み8mmの拡散板を上流側のジョイント61に設置し、夫々、出口側空間容積に対して、入口側空間容積が、23%、81%とし、出口側空間容積に対して、入口側空間容積の比が、異なる2種のHPLCカラムを準備した。又、比較例6として、カラムの出口側及び入口側に、同一容量の拡散板をジョイントに設置し、カラムの出口側空間容積に対して、入口側空間容積を100%としたHPLCカラムを準備した。
HPLC分析条件は、
移動相 60%アセトニトリル
流量 125mL/min
カラム温度 室温25℃
検出 UV254nm
試料 ベンゼン、トルエン、ナフタレンを移動相と混ざりの悪い溶媒としてのイソプロパノールに溶解して、5mL(システム空間容積に対して2%)注入した。
【0093】
結果のクロマトグラムを図26に示す。実施例6-1の本発明のカラムでは、図26(a)に示すように、確実に分離され、更に、実施例6-2の本発明のカラムでは、図26(b)に示すように、さらに改善された。比較例6の従来カラムは、図26(c)に示すように、分離はするが、ピークは形状が悪くテーリングしている。出口側に流量制御機構を設置したカラムは、多量注入でも効果があることが確認できた。更に、入口側空間容積が出口側空間容積の81%以下となるように拡散機構を入口側に設置することで、更にピーク形状が改善されることが実証された。
【実施例0094】
カラムの入口側に拡散板などを設置すると、カラム内の空間容積が増えるが、一般的には、カラムの合算空間容積がシステム空間容積の10%未満であれば許容範囲となる。そして、近年、粒子径の小さい充填剤をショートカラムに充填したファーストカラムの需要が、分析時間の短縮ができることから、急速に増えてきている。しかし、従来の入口側に拡散板を用いる方法は、ピークの溶出時間が短いファーストカラムには適用することが出来ない。一方、本発明のカラムの出口側における流量制御は、入口側に空間が生じないので、ファーストカラムに最適であると考えられる。
【0095】
そこで、本発明のショートカラムへの適用を確認した。カラムの出口側に、図4に示すような形状の、深さ0.5mmの流量制御溝32を備えたジョイント63を設置した、内径20mm、長さ50mmのステンレスカラムに、充填剤InertSustain(登録商標) C18 、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を充填して、本発明の実施例7のカラムを準備した。流量制御溝32の容積が61μL、下流側のフィルターと出口側オリフィスの容積が合計400μLで、出口側空間容積は461μL、入口側空間容積は400μL、出口側空間容積と入口側空間容積の合算空間容積は0.861mLであり、システム空間容積9mLの9.6%で、10%未満である。比較例7として、出口側には流量制御機構を設けないこと以外は実施例7と同じファーストカラムを準備して、HPLC分析を行い、クロマトグラムの結果で評価比較した。
【0096】
HPLC分析条件は、
移動相 65%アセトニトリル
流量 20mL/min
カラム温度 40℃
検出 UV254nmで、
試料 ピーク1 ウラシル、ピーク2 アセトフェノン、ピーク3 ベンゼン、ピーク4 トルエン、ピーク5 ナフタレンの混合試料
注入量 120μL
【0097】
結果のクロマトグラムを図27に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図28に、縦軸に理論段数をプロットしたグラフ図を図29に示す。
【0098】
本発明実施例7のファーストカラムは、図27(a)、図28及び図29に示すように、5本のピークともピーク対称性は1.25以下になり、理論段数も、3本目ピークから5本目のピークにおいて、9万段/mが得られている。又、比較例7のカラムは、図27(b)、図28及び図29に示すように、保持が早いピークほど、ピークの裾がテーリングしているが、本発明の実施例7のカラムは、テーリングが改善されていることが確認できた。又、比較例7のカラムは、流れ方向の試料の拡散の影響で、保持係数(k)3のもっとも溶出の遅い5本目ピークでも対称性1.3となってしまった。ファーストカラムは短いため、250mmカラムに比べて、流れ方向の試料の拡散の影響が出やすく、比較例7のファーストカラムではどうしてもテーリングしてしまう。
【0099】
本発明のカラムは、長さの短いファーストカラムでも効果が得られることが確認できた。又、本発明の出口側の流量制御機構の設置は、どんなカラムサイズでも適用できることが実証された。
【実施例0100】
親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC、ヒリック)にて実験を行った。ODS等の逆相分配カラムにおいては、試料成分が入口で濃縮され、テーリングが改善されることも生じるので、濃縮が生じないヒリックモード充填剤での実証実験を行った。
【0101】
カラム1内の出口側に、図1に示すように、図12(a)に示す形状のSUS316材質の形状の厚み0.5mmの流量制御板31を下流側のジョイント62に設置して流量制御機構3を設けた内径20mm、長さ250mmのステンレスカラムに、カルバモイル基結合充填剤であるInertSustain(登録商標) Amide、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を充填して、入口側空間容積と出口側空間容積の合算空間容積がシステム空間容積の6%の本発明の実施例8のヒリックカラムを準備し、比較例8として、出口側には流量制御機構を設けないこと以外は実施例8と同じヒリックカラムを準備して、HPLC分析を行い、クロマトグラムの結果で評価比較した。尚、実施例8のカラムの筐体は、図1及び図2に示す実施例1のカラムの筐体と同一である。
【0102】
HPLC分析条件は、
移動相 95%アセトニトリル
流量 20mL/min
カラム温度 40℃
検出 UV254nm
試料 ピーク1 ベンゼン、ピーク2 フェノール、ピーク3 カフェインの混合試料
注入量 120μL
【0103】
結果のクロマトグラムを図30に示す。又、各ピークの保持時間に対して、縦軸にピーク対称性をプロットしたグラフ図を図31に、縦軸に理論段数をプロットしたグラフ図を図32に示す
【0104】
本発明の実施例8のヒリックカラムは、図30(a)、図31及び図32に示すように、ピーク対称性は1.25以下で、理論段数も8万段/mが得られており、ヒリックモードとしては十分な性能が得られていることが確認できた。比較例8のカラムは、図30(b)に示すように、全体的にテーリング気味であるが、これは、カラムの断面に対して試料が均一に流れていないのが原因と考えられる。一方、本発明の実施例8のカラムは、カラムの断面に対して試料が均一に流れるため、テーリングが改善されている。
【0105】
本発明のカラムにおいては、ヒリックモードでも十分な効果が発揮され、充填剤種や分離モードが異なっても、十分な高性能が得られることが実証された。
【実施例0106】
カラムの耐久性を検査した。カラム内の出口側に、図1に示すように、図12(a)に示す形状のSUS316材質の厚み0.5mmの流量制御板31を下流側のジョイント62に設置して流量制御機構3を設けた内径20mm、長さ50mmのステンレスカラム1に、充填剤InertSustain(登録商標) C18、粒径5μm(ジーエルサイエンス株式会社製)を充填して、実施例7と同一仕様の本発明の実施例9のカラムを準備し、比較例9として、出口側には流量制御機構を設けないこと以外は実施例9と同じカラムを準備して、最も圧力が高くなり、注入ショック影響の受けやすい50%メタノール溶離液で、流速20mL/min、室温25℃で、20mMプロピオフェノン溶液 100μLを、20分間隔で、500回注入して耐久試験を行った。そして、以下のカラム検査用条件で、HPLC分析を行い、耐久試験前後のクロマトグラムの変化を確認し評価した。
【0107】
カラム検査条件は、
移動相 65%アセトニトリル
流量 20mL/min
カラム温度 40℃
検出 UV254nmで、
試料 ピーク1 ウラシル、ピーク2 アセトフェノン、ピーク3 ベンゼン、ピーク4 トルエン、ピーク5 ナフタレンの混合試料
注入量 120μL
【0108】
本発明の実施例9のカラムでの耐久試験前後のクロマトグラム結果及び比較例9のカラムでの耐久試験前後のクロマトグラム結果を図33に示す。本発明の実施例9のカラムでは、図33(a)及び図33(b)に示すように、500回耐久試験前(図33(a))と後(図33(b))でのピーク形状は変化していない。それに対して、比較例9のカラムでは、図33(c)及び図33(d)に示すように、初期状態(図33(c))では、テーリングの少ないピークが得られているが、500回耐久試験を行った後(図33(d))はテーリングしていた。
【0109】
本発明のカラムでは、カラム断面方向に、均一に試料が導入されるので、注入ショックや注入影響も少なく、従来カラムに比べて、耐久性が高いことが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のような本発明によれば、カラム内で試料が固定相に均一に流れるようになり、クロマトグラムにおいてシャープな対称性の良いピークが得られるようになったので、物質の分析能力が向上し、様々な分野の研究並びに応用において利用が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 カラム
21 入口部
22 出口部
3 流量制御機構
31 流量制御板
32 流量制御溝
4 拡散機構
51 上流側のフィルター
52 下流側のフィルター
61 上流側のジョイント
62 下流側のジョイント
621 出口孔
70 管本体
71 上流側のナット
72 下流側のナット
図1
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