(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025719
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20250214BHJP
【FI】
C02F1/00 S
C02F1/00 B
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130780
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝彦
(57)【要約】
【課題】純水製造設備及び除害排水処理設備を備えており、除害排水と原水とを熱交換器で熱交換させる純水製造装置において、該熱交換器での熱交換を制御することにより、水処理システム全体での消費電力低減を実現することができる水処理システム及び水処理方法を提供する。
【解決手段】原水槽からの原水を処理して純水を製造する純水製造設備と、排ガス処理設備からの除害排水を処理して排ガス処理設備水として回収再利用するための除害排水処理設備とを有する水処理システム。除害排水を降温させる熱交換器22と原水槽2とが、循環配管で接続されている。この循環配管に、熱交換器22を迂回するバイパス配管16が設けられている。原水槽2から前処理装置4に送水される原水温度が所定値以下となるように、三方弁13によってバイパス配管16への原水の流れを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水槽からの原水を処理して純水を製造する純水製造設備と、
排ガス処理設備からの排水(以下、除害排水という。)を処理して排ガス処理設備水として回収再利用するための除害排水処理設備と
を有する水処理システムであって、
該除害排水処理設備は、除害排水を前記原水槽からの原水と熱交換させて降温させる熱交換器を有し、
該熱交換器と該原水槽とが、該原水槽内の原水を該熱交換器に低温流体として循環供給するよう循環配管で接続されており、
該原水槽又は該原水槽から原水を前記純水製造設備に供給する配管の原水温度を検出する温度センサ(T1)と、
該温度センサ(T1)の検出温度が所定値以下となるように該熱交換器への原水供給量を制御する制御手段と
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記熱交換器への原水供給量を制御する前記制御手段は、前記熱交換器を迂回するように設けられたバイパス配管と、該バイパス配管への原水通水を制御する手段とを有する請求項1の水処理システム。
【請求項3】
前記循環配管に原水の循環送水用のポンプが設けられており、
前記熱交換器への原水供給量を制御する前記制御手段は、該ポンプの送水量を制御するものである請求項1の水処理システム。
【請求項4】
前記除害排水処理設備は、前記熱交換器で降温した除害排水を降温させるための、冷却塔からの冷却水を低温流体とする熱交換器(A)と、該熱交換器(A)からの除害排水を降温させるための、冷凍機からの冷水を低温流体とする熱交換器(B)とを有する請求項1の水処理システム。
【請求項5】
原水と除害排水とを熱交換させる前記熱交換器から前記熱交換器(A)に供給される除害排水の温度を検出する温度センサ(T2)が設けられており、
前記制御手段は、該温度センサ(T2)の検出温度が目標温度となるように該熱交換器(A)への原水供給量を制御する請求項4の純水製造装置。
【請求項6】
原水槽からの原水を処理して純水を製造する純水製造設備と、
排ガス処理設備からの排水(以下、除害排水という。)を処理して排ガス処理設備水として回収再利用するための除害排水処理設備と
を有する水処理システムによって除害排水を処理すると共に純水を製造する水処理方法において、
該除害排水処理設備は、除害排水を前記原水槽からの原水と熱交換させて降温させる熱交換器を有し、
該熱交換器と該原水槽とが、該原水槽に貯留されている原水を該熱交換器の低温流体として循環供給するよう循環配管で接続されており、
該原水槽又は該原水槽から原水を前記純水製造設備に供給する配管の原水温度を温度センサ(T1)で検出し、
該温度センサ(T1)の検出温度が所定値以下となるように前記熱交換器への原水供給量を制御する水処理方法。
【請求項7】
前記熱交換器を迂回するようにバイパス配管が設けられており、該バイパス配管への原水通水を制御することにより、前記温度センサ(T1)の検出温度を所定値以下とする請求項6の水処理方法。
【請求項8】
前記循環配管に原水の循環送水用のポンプが設けられており、
該ポンプの送水量を制御することにより、前記温度センサ(T1)の検出温度を所定値以下とする請求項6の水処理方法。
【請求項9】
前記除害排水処理設備は、前記熱交換器で降温した除害排水を降温させるための、冷却塔からの冷却水を低温流体とする熱交換器(A)と、
該熱交換器(A)からの除害排水を降温させるための、冷凍機からの冷水を低温流体とする熱交換器(B)と、
前記原水を低温熱源流体とする熱交換器から前記熱交換器(A)に供給される除害排水の温度を検出する温度センサ(T2)とを備えており、
該温度センサ(T2)の検出温度が目標温度となるように、該熱交換器(A)への原水供給量を制御する水処理方法であって、
該目標温度を高い温度に変更することによって前記熱交換器(A)への原水供給量を減少させ、
該目標温度を低い温度に変更することによって前記熱交換器(A)への原水供給量を増加させる
請求項7の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置と除害排水処理設備とを用いた水処理システム及び水処理方法に関する。除害排水処理設備は、PFCs等を含んだガスを除害燃焼等により処理するための排ガス処理設備(除害装置)からの排水を処理する設備である。
【0002】
なお、PFCs(Perfluorocompounds)とは、CF4、C2F6、C4F8、SF6、WF6などのペルフルオロ化合物のことであるが、本明細書ではこれらペルフルオロ化合物のほか、CH2F2、Cl2、BCl3、F2、HF、SiH4、NH3、PH3、TEOS(テトラエトキシシラン)、TRIS(トリエトキシシラン)、TiCl4など、デポジション、エッチング、クリーニングの各工程で用いられる、すべての有害、可燃、地球温暖化ガスを表わす。
【背景技術】
【0003】
従来、半導体洗浄用水として用いられている超純水は、前処理システム、一次純水システム及びサブシステムから構成される超純水製造装置で原水(工業用水、市水、井水等)を処理することにより製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
凝集装置、加圧浮上(沈殿)装置、濾過装置等よりなる前処理システムでは、原水中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行う。逆浸透(RO)膜分離装置、脱気装置及びイオン交換装置(混床式、2床3塔式又は4床5塔式)を備える一次純水システムでは原水中のイオンや有機成分の除去を行う。なお、RO膜分離装置では、塩類除去のほかにイオン性、コロイド性の全有機酸素(TOC)を除去する。イオン交換装置では、塩類除去のほかにイオン交換樹脂によって吸着又はイオン交換されるTOC成分を除去する。脱気装置(窒素脱気又は真空脱気)では溶存酸素の除去を行う。
【0005】
熱交換器、低圧紫外線(UV)酸化装置、混床式イオン交換装置及び限外濾過(UF)膜分離装置を備えるサブシステム(二次純水システム)では、水の純度をより一層高め超純水にする。なお、低圧UV酸化装置では、低圧UVランプより出される波長185nmの紫外線によりTOCを有機酸さらにはCO2まで分解する。分解された有機酸及びCO2は後段のイオン交換樹脂で除去される。UF膜分離装置では、微小粒子が除去されイオン交換樹脂の流出粒子も除去される。
【0006】
半導体等の製造プロセスでは、ペルフルオロ化合物などの上記PFCsが多量に使用されている。ペルフルオロ化合物ガスを用いる工場では、これを無害化する除害装置と称される排ガス処理設備を設置している(特許文献2)。除害装置では、燃焼、電気加熱、プラズマなどを用いて、ペルフルオロ化合物を燃焼(酸化)又は熱分解反応により、フッ素(F2)を脱離させた後、当該装置に組み込まれた水スクラバーで排ガスを洗浄し、ガス中のF2を吸収除去する。
【0007】
スクラバー排水は、HFのほかに、ペルフルオロ化合物分子の有機骨格に由来する有機性炭化水素化合物(TOC成分)を含有する。そこで、スクラバー排水は、生物処理装置などの有機物分解手段を備えた除害排水処理設備に導かれて処理される。
【0008】
除害排水の温度は一般的には35~45℃程度の比較的高温度である。特許文献3には、この高温度の除害排水と純水製造装置の低温の原水とを熱交換器で熱交換させ、該原水を昇温させると共に、除害排水を降温させ、降温した除害排水を除害排水処理設備に送水して処理することが記載されている。
【0009】
純水製造装置のRO装置(逆浸透膜装置)や前処理装置のUF装置(限外濾過装置)等は、水温が低下すると処理流量も低下し、前処理設備で凝集する場合は凝集不良を起こす。このため、前処理設備前段で除害排水と熱交換させることが純水製造装置の運転の安定性の点からも効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-199436号公報
【特許文献2】特開2022-72981号公報
【特許文献3】特開2022-70608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
半導体工場等から排出される35~45℃程度の除害排水を除害排水処理設備で処理して除害装置等の設備用水に再利用するには、除害排水の処理設備の前段で除害排水を冷却して処理に適した温度に降温させる必要がある。
【0012】
純水製造装置にあっては、冬季になると原水(工水・市水等)の水温が低下するため、原水を加熱する必要がある。
【0013】
そこで、上記の通り、高温の除害排水と純水製造装置の低温の原水とを熱交換器で熱交換させる方法が広く採用されている。
【0014】
しかし、冬季には原水の水温が低いので、除害排水を原水で十分に冷却することが可能であるが、夏季には原水の水温が高くなり、熱交換器で除害排水を十分には冷却できなくなるので、該熱交換器の後段に、冷水(冷凍機からの冷水)を低温流体とする熱交換器を設け、冷水で除害排水を冷却するようにしている。
【0015】
このため、原水の水温が高くなると、冷却用の冷水使用量が多くなり、冷凍機の消費電力が増加する。そこで、冷凍機の消費電力を低減することを目的として、冷却塔(クーリングタワー)からの冷却水を低温流体とする熱交換器を冷水による熱交換器の前段に設置し、原水をこの冷却水で冷却できるようにしている。
【0016】
純水製造装置の前処理装置は、一般的にON/OFF運転される。そのため、除害排水の熱で原水を加熱して前処理装置に供給する従来の純水製造装置にあっては、前処理装置の稼働が停止しているときには、該熱交換器に原水が通水されず、該熱交換器で除害排水が降温しないことになる。この場合、除害排水処理設備に送水される除害排水を冷却器で冷却してから除害排水処理設備に送水する。
【0017】
このように、前処理設備はON/OFF運転が一般的であるため、除害排水と原水との熱交換が断続的になり、これを補うために後段の冷却器で除害排水を冷却するものの、除害排水の温度調整が追従できず、一時的に除害排水処理設備に送水される除害排水の温度が規定の上限温度よりも高くなるリスクがある。
【0018】
また、従来、除害排水の温度が所定温度となるように除害排水と原水との熱交換を行う場合には、夏季など原水温度が高い時でも熱交換を行って原水が設定温度よりも高くなってしまうことがあった。
【0019】
これによって後段のサブシステムで冷却に要する冷水量が増え、その結果冷凍機の消費電力が増加してしまうという問題があった。
【0020】
本発明は、純水製造設備及び除害排水処理設備を用いており、除害排水と原水とを熱交換器で熱交換させる水処理システム及び水処理方法において、該熱交換器への原水通水量を制御することにより、水処理システム全体での消費電力低減を実現することができる水処理システム及び水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の水処理システムは、原水槽からの原水を処理して純水を製造する純水製造設備と、排ガス処理設備からの排水(以下、除害排水という。)を処理して排ガス処理設備水として回収再利用するための除害排水処理設備とを有する水処理システムであって、該除害排水処理設備は、除害排水を前記原水槽からの原水と熱交換させて降温させる熱交換器を有し、該熱交換器と該原水槽とが、該原水槽内の原水を該熱交換器に低温流体として循環供給するよう循環配管で接続されており、該原水槽又は該原水槽から原水を前記純水製造設備に供給する配管の原水温度を検出する温度センサ(T1)と、該温度センサ(T1)の検出温度が所定値以下となるように該熱交換器への原水供給量を制御する制御手段とを備える。
【0022】
本発明の一態様では、前記熱交換器への原水供給量を制御する前記制御手段は、前記熱交換器を迂回するように設けられたバイパス配管と、該バイパス配管への原水通水を制御する手段とを有する。
【0023】
本発明の一態様では、前記循環配管に原水の循環送水用のポンプが設けられており、前記熱交換器への原水供給量を制御する前記制御手段は、該ポンプの送水量を制御するものである。
【0024】
本発明の一態様では、前記除害排水処理設備は、前記熱交換器で降温した除害排水を降温させるための、冷却塔からの冷却水を低温流体とする熱交換器(A)と、該熱交換器(A)からの除害排水を降温させるための、冷凍機からの冷水を低温流体とする熱交換器(B)とを有する。
【0025】
本発明の一態様では、原水と除害排水とを熱交換させる前記熱交換器から前記熱交換器(A)に供給される除害排水の温度を検出する温度センサ(T2)が設けられており、前記制御手段は、該温度センサ(T2)の検出温度が目標温度となるように該熱交換器(A)への原水供給量を制御する。
【0026】
本発明の水処理方法は、原水槽からの原水を処理して純水を製造する純水製造設備と、
排ガス処理設備からの排水(以下、除害排水という。)を処理して排ガス処理設備水として回収再利用するための除害排水処理設備とを有する水処理システムによって除害排水を処理すると共に純水を製造する水処理方法において、該除害排水処理設備は、除害排水を前記原水槽からの原水と熱交換させて降温させる熱交換器を有し、該熱交換器と該原水槽とが、該原水槽に貯留されている原水を該熱交換器の低温流体として循環供給するよう循環配管で接続されており、該原水槽又は該原水槽から原水を前記純水製造設備に供給する配管の原水温度を温度センサ(T1)で検出し、該温度センサ(T1)の検出温度が所定値以下となるように前記熱交換器への原水供給量を制御する。
【0027】
本発明の水処理方法の一態様は、前記熱交換器を迂回するようにバイパス配管が設けられており、該バイパス配管への原水通水を制御することにより、前記温度センサ(T1)の検出温度を所定値以下とする。
【0028】
本発明の水処理方法の一態様は、前記循環配管に原水の循環送水用のポンプが設けられており、該ポンプの送水量を制御することにより、前記温度センサ(T1)の検出温度を所定値以下とする。
【0029】
本発明の水処理方法の一態様は、前記除害排水処理設備は、前記熱交換器で降温した除害排水を降温させるための、冷却塔からの冷却水を低温流体とする熱交換器(A)と、該熱交換器(A)からの除害排水を降温させるための、冷凍機からの冷水を低温流体とする熱交換器(B)と、前記原水を低温熱源流体とする熱交換器から前記熱交換器(A)に供給される除害排水の温度を検出する温度センサ(T2)とを備えており、該温度センサ(T2)の検出温度が目標温度となるように、該熱交換器(A)への原水供給量を制御する水処理方法であって、該目標温度を高い温度に変更することによって前記熱交換器(A)への原水供給量を減少させ、該目標温度を低い温度に変更することによって前記熱交換器(A)への原水供給量を増加させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、純水製造設備に供給される原水の温度が過度に上昇することが防止され、また水処理システム全体での消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態に係る水処理システムの構成図である。
【
図2】別の実施の形態に係る水処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1は第1の実施の形態に係る水処理システムの構成図である。
【0033】
超純水を製造するための、工業用水、市水などよりなる原水は、原水配管1から原水槽2に導入される。原水槽2内の原水は、後述の熱交換器22によって加熱される。前述の通り、純水製造装置のRO(逆浸透膜装置)や前処理装置のUF(限外濾過装置)等は、水温が低下すると、処理流量が低下し、前処理設備で凝集処理する場合は凝集不良を起こしたりする。このため、前処理装置4の前段で原水を加熱して昇温させておくことが純水製造装置の運転の安定性の点からも効果的である。
【0034】
前処理装置4は、凝集装置、加圧浮上(沈殿)装置、濾過装置等を備えており、原水中の懸濁物質やコロイド物質が除去されて前処理水となる。この前処理水は、一次純水装置5に導入される。
【0035】
一次純水装置5は、この実施の形態では脱炭酸塔5a、脱炭酸水を貯える貯槽(図示略)、該貯槽からの脱炭酸水を加熱するための蒸気式熱交換器5b、熱交換器5bで加熱された脱炭酸水が通過する保安フィルタ(図示略)、該保安フィルタを通過した水が通水されるRO装置5c、RO装置5cからの透過水(脱塩水)を貯える脱塩水槽(図示略)等を備えている。蒸気式熱交換器5bの高温流体流路には、ボイラからの蒸気が供給される。
【0036】
該一次純水装置5からの一次純水は、サブタンク6に導入される。サブタンク6内の一次純水は、冷却用の熱交換器7に通水されて約23℃に降温した後、サブシステム8に供給される。熱交換器8の低温流体流路には冷凍機(図示略)からの冷水が通水される。熱交換器8の低温流体流路を通過して昇温した水は、冷凍機に返送される。
【0037】
サブシステム8は、熱交換器、低圧紫外線(UV)酸化装置、混床式イオン交換装置及び限外濾過(UF)膜分離装置を備えている。低圧UV酸化装置では、低圧UVランプより出される波長185nmの紫外線によりTOCを有機酸さらにはCO2まで分解する。分解された有機酸及びCO2は後段のイオン交換樹脂で除去される。UF膜分離装置では、微小粒子が除去されイオン交換樹脂の流出粒子も除去される。サブシステム8で製造された超純水はユースポイントに送水される。
【0038】
この実施の形態の純水製造装置は、除害排水処理設備を付帯している。
【0039】
前述の通り、半導体等の製造プロセスでは、ペルフルオロ化合物などの上記PFCsが多量に使用されている。PFCs含有排ガスを処理する除害装置では、燃焼、電気加熱、プラズマなどを用いて、ペルフルオロ化合物を燃焼(酸化)又は熱分解反応により、フッ素(F2)を脱離させた後、当該装置に組み込まれた水スクラバーで排ガスを洗浄し、ガス中のF2を吸収除去する。
【0040】
スクラバー排水や、上記の燃焼又は熱分解反応装置からの排水よりなる除害排水の温度は一般的には35~45℃程度である。
【0041】
除害排水は、配管21を介して熱交換器22に送水され、前記原水槽2からの原水と熱交換して降温する。次いで、配管23を介して熱交換器(A)としての熱交換器24へ送水され、冷却塔(クーリングタワー。図示略)からの冷却水と熱交換して降温する。なお、冷却塔からの冷却水の水温は、通常20~30℃程度である。
【0042】
熱交換器24で降温した除害排水は、配管25を介して熱交換器(B)としての熱交換器26に送水され、冷凍機(図示略)からの冷水と熱交換し、さらに降温して17~33℃程度の適温となり、貯槽27に導入され、貯留される。なお、冷凍機からの冷水の水温は、通常5~12℃程度である。
【0043】
貯槽27内の除害排水は、除害排水処理設備28に送水されて処理され、処理水となる。この処理水は、除害装置に送水されて再利用される。除害排水処理設備28は、例えば特許文献3に記載のものなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0044】
なお、特許文献3の除害排水処理設備では、除害排水は、pH調整槽、生物処理槽、濾過装置を経て第1熱交換器にて工業用水と熱交換して降温する。その後、MF装置、RO装置を透過した水が冷却用の第2熱交換器及び第3熱交換器を通って降温し、除害装置の水スクラバーに送水される。第2熱交換器の低温流体流路にはクーリングタワーの補給水が通水され、第3熱交換器の低温流体流路には冷凍機からの冷水が通水される。この除害排水処理設備において、熱交換器と冷却器の順番が特許文献3の通りであれば、他の機器の配置はこれ以外とされてもよい。
【0045】
熱交換器22による原水加熱機構の構成についていかに説明する。
【0046】
原水槽2内の原水は、ポンプ11、配管12、三方弁13、配管14を介して熱交換器22の低温流体流路に通水される。熱交換器22の高温流体流路に前記配管21からの35~45℃程度の除害排水が通水される。原水は、この除害排水によって加熱され、配管15を介して原水槽2に戻る。配管15に温度センサT2が設けられている。
【0047】
熱交換器22を迂回するようにバイパス配管16が設けられている。バイパス配管16の上流端は三方弁13に接続されており、下流端は配管15に接続されている。
【0048】
この実施の形態では、前処理装置4の稼働、停止に関わりなく、ポンプ11は常時作動している。
【0049】
この実施の形態では、温度センサT1,T2の検出温度データが弁制御器(図示略)に送信され、該弁制御器によって三方弁13が制御される。
【0050】
この制御は、温度センサT1の検出温度T1に基づいて、次ように行われる。すなわち、温度センサT1で検出される原水の温度T1が設定値(例えば20~25℃の間から選定された値)よりも低いときには、温度センサT2の検出温度が予め設定した目標温度t2-1(原水の温度T1の設定値と同じ程度が好ましい)となるように三方弁13を制御して、バイパス配管16への通水量と配管14への通水量を調整することで、熱交換器22への原水の通水量を制御する。
【0051】
また、原水温度T1が上記設定値以上であるときには、温度センサT2の目標温度を所定温度(例えば1℃)低下させてt2-2とし、当該温度となるよう三方弁13を制御する。目標温度をt2-2としても原水温度T1が上記設定値以上であるときは、更に、温度センサT2の目標温度を低下させ、新たに設定した目標温度となるよう三方弁13を制御する。そして、原水温度T1が上記設定温度未満となるまでこの操作を繰り返し実行し、原水温度T1が上記設定値以上、上昇しないようにする。
【0052】
【0053】
この実施の形態では、三方弁13及びバイパス排水16が省略され、ポンプ11から送水されてくる原水の全量が熱交換器22に通水される。熱交換器22への原水の送水量を可変とするために、ポンプ11としてインバータ制御方式のものなど、送水量制御可能なものが用いられている。また、温度センサT1の検出温度に従ってポンプ11の吐出量(送水量)を制御するポンプ制御器(図示略)が設けられている。
【0054】
図2のその他の構成は
図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0055】
この実施の形態においても、前処理装置4の稼働、停止に関わりなく、ポンプ11は常に作動している。
【0056】
この実施の形態では、T1が設定値(例えば20~25℃の間から選定される。)よりも低いときには、ポンプ11の送水量を多くした高送水量モードとする。また、T1が該設定値以上であるときには、ポンプ11の送水量を少なくした低送水量モードとする。
【0057】
なお、高送水量モードの場合、(設定値-T1)が大きくなるほどポンプ11の送水量を多くするように制御してもよい。
【0058】
[
図2の別態様]
図2の別態様として、熱交換器22からの除害排水が流れる配管23に温度センサT3を設けると共に、この温度センサT3の検出温度が目標温度となるようにポンプ11の吐出量を制御するようにしてもよい。
【0059】
この場合、通常時、すなわち原水温度T1が設定範囲以内(TL以上TH以下。TLは例えば18~22℃の間から選定される。THは22~26℃の間から選定される。)であるときには、除害排水温度T3が目標温度となるように、ポンプ11からの熱交換器22への送水量を制御する。原水温度T1が許容下限値TLよりも低い場合には、温度センサT3の検出温度T3の目標温度を低下させ、これによって熱交換器22への原水送水量を多くするようにポンプ11の回転数を増加させる。逆に、原水温度T1が許容上限値THよりも高い場合、温度T3の目標温度を高くし、これによって熱交換器22への原水送水量が少なくなるようにポンプ11の回転数を減少させる制御が行われる。
【0060】
図1,2のいずれの実施の形態においても、夏季等における原水の過剰な加熱が防止される。そのため、サブシステム用熱交換器7で使用する冷水量が減少し、冷凍機の消費電力が節減される。
【0061】
なお、
図1の実施の形態では、原水温度が比較的高いときには、除害排水用熱交換器22への原水通水量が少なくなり、熱交換器22から配管23へ流出する除害排水温度が高くなる。この結果、熱交換器24に通水する冷却水量が増加し、冷却塔の消費電力は増加する。しかし、冷凍機に比べて冷却塔はCOP(成績係数)が高いので、システム全体としては電力を節減することができる。
【0062】
なお、サブシステムでは、純水が常温であるため、水温の近い冷却水(通常20~30℃)では純水を冷却できないので、熱交換器7により冷水で純水を冷却する。一方、除害排水の水温は35~45℃程度の高いものであるので、熱交換器24では、冷却塔からの冷却水によって除害排水を十分に降温させることができる。
【0063】
上記実施の形態は、いずれも本発明の一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、三方弁13やポンプ11を制御器で制御するものとしているが、手動にて制御してもよい。
【0064】
上記実施の形態では、温度センサT1は配管3に設置されているが、原水槽2に設置されてもよい。上記実施の形態では、一次純水装置は、蒸気式熱交換器5bのほかに脱炭酸塔、RO装置等を備えたものとなっているが、RO装置、脱気装置及びイオン交換装置等を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 原水槽
4 前処理装置
5 一次純水装置
6 サブタンク
7 熱交換器
8 サブシステム
11 ポンプ
13 三方弁
16 バイパス配管
22 熱交換器
24 熱交換器(熱交換器A)
26 熱交換器(熱交換器B)
T1,T2,T3 温度センサ