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特開2025-25754積層体、化粧シート、及び熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025754
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】積層体、化粧シート、及び熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20250214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B32B27/20
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130855
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】河田 はるか
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】江原 涼子
(72)【発明者】
【氏名】尾薗 圭一
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK27A
4F100AK42A
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100AK62A
4F100AK69A
4F100AP00A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10B
4F100CA00B
4F100CA30B
4F100DD01
4F100DD01B
4F100DE01B
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ65D
4F100GB08
4F100GB48
4F100GB81
4F100HB00C
4F100HB31
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100JA05
4F100JB12B
4F100JB13B
4F100JB14B
4F100JK06D
4F100JK07
4F100JK07B
4F100JK09
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JK16
4F100JK16B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 化粧シートに適用可能な、触感に特徴を有する化粧シート、及びそれに使用する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供する。
【解決手段】 基材と、基材上に設けられた樹脂層を有する積層体であって、前記樹脂層が、(1)~(4)を満たす積層体、化粧シート、及び熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
(1)樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値であるRaが2.5μm以下、Rzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に設けられた樹脂層を有する積層体であって、前記樹脂層が、(1)~(4)を満たすことを特徴とする積層体。
(1)樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【請求項2】
前記樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有するポリオールとイソシアネートを含有する熱硬化型組成物の樹脂層を、熱により皮膜化させた層である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する(メタ)アクリルモノマーを含有する活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂層を活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤であって、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層が、(2)~(4)を満たすことを特徴とする熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の積層体を使用した化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触感に特徴を有する積層体、化粧シート、及びそれに使用する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品に新しい価値を付加する感性価値への関心が高まり、多くの産業において感性価値創造の取り組みが活発になっている。製品に付加する価値として、接触知覚における手触り、肌触りの良さが重要な要件として注目されている。
触感を要求される用途の一つに、内装建材に使用される化粧シートがある。触感に特徴を有する化粧シートとしては、本物の木目等に近い触感を付与した木目調化粧シートの他、最近では、滑らかな触感を目的としてポリマー系滑剤と、有機粒子系滑剤とを含有する表面樹脂層を有した化粧シートや(例えば特許文献1参照)、熱可塑性樹脂層を含み、表面に凹凸模様を備え、JIS B0601:2001に準拠した算術平均高さをRa、要素の平均長さをRSmとしたときに、前記凹凸模様の表面の表面の算術平均粗さRaが15μm以上、25μm以下であり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さRSmが400μm以下である化粧シート(例えば特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-10419号公報
【特許文献2】特開2021-53996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、化粧シートに適用可能な、触感に特徴を有する化粧シート、及びそれに使用する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
引用文献1や2に記載の「滑らかな触感」は、文献1においては「滑らかさが特に高く、ソープフィニッシュ処理がなされた木材のような滑らかな触感である。」を評価A(文献1段落0110参照)としており、文献2においては「触感が滑らかであると答えた人が18人以上であった。」を評価○(文献2段落0031参照)とした、いずれも、官能的評価で判断されている。
官能評価は実際に使用する人の評価の平均値であるため有用な評価ではあるが、被験者の体調や感覚により評価値のばらつきが大きいことがある。更に、触感の表現に様々なものがあり、例えば「滑らかな」以外に、「しっとりした」「やわらかな」「すべすべした」「さらさらした」等様々な表現があるが、これを各々の被験者が統一した認識で使用できているかは不明であり、やはりばらつきが大きいという問題がある。
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、触感を、ヒトの手で計測することにより得られた動摩擦係数、面の凹凸部を表す値である平均粗さRa、及び積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率により特定することができ、特定の粒径を有する樹脂ビーズを特定量含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を有する積層体が、触感の表現のうちの「しっとりした」触感を表現できることを見出し、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
即ち本発明は、基材と、基材上に設けられた樹脂層を有する積層体であって、前記樹脂層が、(1)~(4)を満たすことを特徴とする積層体を提供する。
(1)樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【0008】
また本発明は、前記樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有するポリオールとイソシアネートを含有する熱硬化型組成物の樹脂層を、熱により皮膜化させた層である積層体を提供する。
【0009】
また本発明は、前記樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する(メタ)アクリルモノマーを含有する活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂層を活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である積層体を提供する。
【0010】
また本発明は、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤であって、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層が、(2)~(4)を満たすことを特徴とする熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供する。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均高さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【0011】
また本発明は、該積層体を使用した化粧シートをも提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体により、化粧シートに適用可能な、触感に特徴を有する化粧シート、及びそれに使用する熱又は活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(積層体)
本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられた樹脂層を有する積層体であって、前記樹脂層が、(1)~(4)を満たすことを特徴とする積層体である。
(1)樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【0014】
(基材)
本発明で使用する基材は、特に限定されず、所望の目的に応じた基材を適宜使用することができる。例えば、ポリエチレン(LLDPE:低密度ポリエチレン、HDPE:高密度ポリエチレン、MDOPE:一軸延伸ポリエチレン、OPE:二軸延伸ポリエチレン)やポリプロピレン(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂からなるフィルムやシート状の基材が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体や、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等からなるフィルムやシート状の基材が挙げられる。
またこれらの基材は、単層でもよいし複数層積層された基材であってもよい。
【0015】
フィルムやシート状の基材とするには、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等で成形する方法が挙げられる。これらの厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常40~150μm、好ましくは50~100μm程度である。
【0016】
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤のほか、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0017】
基材の片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0018】
また、紙、木材、革等の基材も、問題なく使用することができる。例えば紙としては、特に限定なく公知の紙基材を使用することができ、具体的には、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造される。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0019】
(樹脂層)
本発明において樹脂層とは、(1)~(4)を満たすことを特徴とする。
(1)樹脂層が、平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズを1~50質量%含有する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の樹脂層を、熱又は活性エネルギー線照射により皮膜化させた層である。
(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、最大高さRzが15μm以下である。
(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
【0020】
(樹脂ビーズ)
本発明の(1)樹脂層で使用する平均粒子径1~35μmの樹脂ビーズとしては、は特に限定なく、その材質としては、例えばウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
中でもウレタン樹脂ビーズが柔らかく柔軟性があり、柔らかい触感性が得られる事から好ましい。
【0021】
尚、樹脂ビーズの平均粒子径は、平均粒子径測定法として日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nを用いて測定した度数分布の状況から算出したものである。
【0022】
樹脂ビーズは、後述する熱又は活性エネルギー線硬化型組成物の固形分に対して1~50質量%含有する。中でも1~45質量%含有することが好ましく、1~25質量%含有することが最も好ましい。
【0023】
(熱硬化性組成物)
本発明の(1)樹脂層で使用する熱硬化性組成物は、例えば、熱硬化剤としてイソシアネート化合物やエポキシ化合物を使用し、イソシアネート基やエポキシ基と反応しうる基を有し且つバインダー樹脂となりうる、活性水素基を有する高分子化合物との組成物が挙げられる。活性水素基を有する高分子化合物としては、硬化後に3次元架橋構造を形成しうることから1種以上の官能基を一分子内に2個以上有する高分子化合物が好ましく、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基から選ばれる1種以上の官能基を一分子内に2個以上有する、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等が好ましい。
熱硬化性組成物を、化粧シートとして使用する場合に特に好ましい態様の一例としては、水酸基を一分子内に2個以上有するアクリル系樹脂が挙げられる。
【0024】
熱硬化剤としてとしては、イソシアネート化合物が好ましく、硬化後に3次元架橋構造を形成しうることから、イソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
該熱硬化性樹脂組成物の官能基と反応するイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、該ポリイソシアネートはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の一分子に2個のイソシアネート基を持つ化合物および、これらから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した一分子中にイソシアネート基を3個以上持つポリイソシアネートが挙げられる。また、これらの異なるタイプのポリイソシアネートから選ばれる1種類以上を混合した組成物を使用することができる。
【0025】
好ましくは、TDI、XDI、IPDIおよびHDIから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプである。
【0026】
前記した樹脂成分に対するイソシアネート化合物の含有量は、任意に設定できるが、一般的には水酸基/イソシアネートの当量比が1/0.5~1/3であることが多い。
【0027】
(有機溶剤)
前記熱硬化性組成物は、希釈剤として有機溶剤を含有することもできる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
【0028】
(添加剤)
前記熱硬化性組成物は、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、または可塑剤等の種々の添加剤等を使用することもできる。
【0029】
前記熱硬化性組成物を使用して樹脂層を形成する方法は特に限定なく、前記基材上に公知の塗布・印刷方法で樹脂層を形成する。塗布・印刷方式の具体的な例としては、コーティング方法としては、たとえばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0030】
前記熱硬化性組成物を使用して形成される樹脂層の膜厚に特に制限はないが、1~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、1~20μmであることが特に好ましい。前記範囲内の膜厚であれば、本願の効果を得ることができる。
【0031】
本発明で使用する熱硬化性組成物の硬化方法は特に限定されず、公知の加熱方法で硬化することができる。
【0032】
(活性エネルギー線硬化性組成物)
本発明の(1)樹脂層で使用する活性エネルギー線硬化性組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、必要に応じて光重合開始剤を含有する組成物が挙げられる。
【0033】
((メタ)アクリロイル基を有する化合物)
(メタ)アクリロイル基を有する化合物はとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエタノールアクリル酸多量体エステル等が挙げられる。
【0034】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
また更に、2官能以上の(メタ)アクリレートにあたるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物 (DPHAと略する場合がある)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTAと略する場合がある)、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート等を使用してもよい。前記トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレートとしては、代表的なものとしてトリメチロールプロパンエチレンオキサイド(以後エチレンオキサイドを「EO」と称する場合がある)変性(n≒3)トリアクリレートが挙げられる。
【0037】
更に必要に応じて重合性オリゴマーや、重合性ポリマーを使用してもよい。重合性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合性ポリマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0038】
(光重合開始剤)
活性エネルギー線として紫外線等を使用する場合は光重合開始剤を使用する。光重合開始剤としては特に限定なく公知のラジカル重合タイプの光重合開始剤が用いられる。例えば1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤や、メチルベンゾイルフォルマート等のフェニルグリオキソレート系光重合開始剤や、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの光重合開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記光重合開始剤の総計の添加量は、コーティング剤全量に対し0.1~20質量%の範囲で使用されることが多い。その他、脂肪族アミン誘導体及び/又は安息香酸アミン誘導体から選ばれる3級アミン化合物を増感剤等として併用することもある。
【0039】
(添加剤)
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、または可塑剤等の種々の添加剤等を使用することもできる。
【0040】
前記活性エネルギー線硬化型組成物を使用して樹脂層を形成する方法は特に限定なく、前記基材上に公知の塗布・印刷方法で樹脂層を形成する。塗布・印刷方式の具体的な例としては、コーティング方法としては、たとえばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0041】
(硬化方法)
前記活性エネルギー線硬化型組成物を紫外線照射により硬化させる場合の紫外線としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、カーボンアーク、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源として使用することができる。この時の紫外線の積算光量に特に限定はないが、20~3000mJ/cmの範囲であることが好ましく、20~1000mJ/cmの範囲がより好ましい。
【0042】
また、前記活性エネルギー線硬化型組成物を電子線照射により硬化させる場合は、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等を用いる。照射量は特に限定はないが、10~230kGy程度が好ましく、 10~100kGy程度がより好ましい。
【0043】
前記活性エネルギー線硬化型組成物を使用して形成される樹脂層の膜厚に特に制限はないが、1~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、1~20μmであることが特に好ましい。前記範囲内の膜厚であれば、本願の効果を得ることができる。
【0044】
(樹脂層面の手の動摩擦係数)
本発明で使用する樹脂層は(2)樹脂層面の手の動摩擦係数が0.5以上である。
ここで、樹脂層面の手の動摩擦係数は、次の方法により測定された値である。
【0045】
摩擦計(テック技販社販売、触覚フォースプレートTF-2020)を用い、塗膜フィルムを摩擦計の上に起き、速度と垂直荷重を変えながら右手の手のひらで樹脂層表面をなぞるという動作を行なった際の動摩擦係数を30秒間計測する。30秒間計測した中で、垂直荷重200g、速度50mm/sにおける動摩擦係数を集めて平均化する。さらに同実験を20~50代の男性3名女性3名で実施し、合計6名の動摩擦係数を平均した結果を用いた値とする。
【0046】
本発明において、動摩擦係数は0.5以上であるが、中でも0.6以上が好ましく0.7以上が最も好ましい。一方上限は1.2が好ましく、中でも1.0以下が好ましく、0.9以下が最も好ましい。
【0047】
(平均粗さRa、最大高さRz)
本発明で使用する樹脂層は、(3)表面の凹凸部を表す値である平均粗さRaが2.5μm以下、且つ最大高さRzが15μm以下である。
ここで、平均粗さRaと最大高さRzは、次の方法により測定された値である。
【0048】
先端半径2μmの球状圧子を使った接触式粗さ計(東京精密社製、SURFCOM NEX)を用いて、走査速度0.06mm/sで樹脂層表面を走査し、JIS B0601及びJIS B0633に準拠した基準長さと低域カットオフ長を使用した粗さ曲線から平均粗さRaと最大高さRzを得る。
【0049】
本発明において、平均粗さRaは2.5μm以下であるが、中でも1.6μm以下が好ましく1.2μm以下が最も好ましい。一方下限は0.1μmが好ましく、中でも0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上が最も好ましい。
【0050】
本発明において、最大高さRzは15μm以下であるが、中でも12μm以下が好ましく10μm以下が最も好ましい。一方下限は1μmが好ましく、中でも2μm以上が好ましく、4μm以上が最も好ましい。
【0051】
(ヤング率)
本発明で使用する樹脂層は、(4)積層体の樹脂ビーズの硬さの値であるヤング率が100MPa以下である。
ここで、ヤング率は、次の方法により測定された値である。
【0052】
ナノインデンター(エリオニクス社製、ENT-2100)を用い、樹脂層表面の顕微鏡像で観測されたビーズの中心部を対象として、バーコビッチ圧子を用いて押し込み荷重10μN、押し込み時間10秒、クリープ時間10秒、除荷時間10秒で測定を行い、得られた荷重変位曲線の除荷部からOliver-Pharrの方法を用いてISO14577に準拠してビーズのヤング率を得る。
【0053】
本発明において、ヤング率は100MPa以下であるが、中でも50MPa以下が好ましい。一方下限は0.01MPaが好ましく、中でも0.1MPa以上が好ましく、1MPa以上が最も好ましい。
【0054】
(化粧シート)
本発明の積層体を使用した化粧シートは、前述の通り基材と基材上に設けられた樹脂層を有する化粧シートであってもよいし、基材上に絵柄層やプライマー層等、化粧シートに通常備えられる公知の層を有していてもよい。本発明で使用する前記樹脂層は、触感を与える層であることから、化粧シートの最表面に位置する。
【0055】
(絵柄層)
本発明で使用する基材は絵柄層を設けていてもよい。絵柄層は通常印刷により設けられる。また絵柄層は単層でもよいし、複数層を積層してもよい。さらに、ベタ印刷であってもよいし、基材の一部のみに印刷された絵柄層であってもよい。印刷による絵柄層を印刷層と称する場合もある。
絵柄層は公知の塗工・印刷方式によって基材上に印刷することができる。塗工・印刷方式としては、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング等の塗工方法、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷方法で行うことができる。
絵柄層に付与する柄としては、自由に決めてよいが、例えば、木目模様、大理石模様等の岩石の表面を模した模様、布目や布上の模様を模した布地模様、タイル模様等や、花や花の束を等間隔で並べた花模様、文字等が挙げられる。また、柄を際立たせるために、柄印刷層の下に白地等のベタ印刷層を設けてもよい。
【0056】
絵柄層を構成するインキとしては、公知のものを使用することができ、油性インキ、水性インキ、活性エネルギー線硬化型インキ等を用いることができる。また、フレキソ印刷インキやグラビア印刷インキ等のリキッド印刷インキ、平版オフセット印刷インキ、インクジェットインク等を印刷方式に応じて選択すればよい。
【0057】
(プライマー層)
基材や絵柄層や樹脂層間の密着性を良好にするために設けられるプライマー層としては、特に限定なく公知のプライマー層を設けることができる。
プライマー層の一例としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(イソシアネート硬化剤と各種ポリオールからなる2液硬化型)、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどの溶液を塗工して形成される層が挙げられる。更に前記樹脂以外に、シリカ微粉末などの充填剤、光安定剤、等の添加剤を添加されていてもよい。プライマー層はこれらの組成物を塗工して必要に応じ乾燥硬化させることで形成できる。
【0058】
(化粧材)
本発明の化粧シートを、木材、合板、繊維板、金属板等に貼り合わせることで、化粧材を得ることができる。本発明の化粧シートは、抗菌性を要求される、住宅内装材、家具、家電、事務用品、玩具、車輌内装材等にも使用でき、特に住宅内装材、家具及び家電への使用に最適である 。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
【0060】
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量、及び重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、樹脂ビーズの平均粒子径は、平均粒子径測定法として日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nを用いて測定した度数分布の状況から算出した。
【0061】
(調整方法)
(調整例1 熱硬化性組成物)
ガラス転移点温度(Tg)50℃のアクリルポリオール樹脂28質量部、根上工業社製ウレタンビーズ「JB-800」10質量部を混合し酢酸エチルで希釈を行い、撹拌機で約1時間攪拌した。塗工直前に、熱硬化剤としてコベストロ社製のイソシアネート「デスモジュールN-3300」15質量部を添加し、よく攪拌し、調整例1の熱硬化性組成物を得た。
組成原料や比を表1、表2の通り変更した以外は調整例2と同様にして、調整例1~3、比較調整例1~4の熱硬化性組成物を得た。
【0062】
(調整例4 活性エネルギー線硬化性組成物 )
MIWON社製3官能アクリレートモノマー「MiramerM3130」85質量部、光重合開始剤としてIGM Resins B.V.社製1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「Omnirad184」5質量部、根上工業社製ウレタンビーズ「JB-800」を10質量部を混合し、撹拌機で約1時間攪拌し、調整例4の活性エネルギー線硬化性組成物を作製した。
組成原料や比を表1、表2の通り変更した以外は調整例4と同様にして、調整例5の活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
表1、2中、略語は次の通りである。また粒径の単位はμmである。
【0063】
・熱硬化性樹脂:アクリルポリオール樹脂
・光硬化性樹脂:MIWON社製の3官能アクリレートモノマーMiramerM3130
・光重合開始剤:IGM Resins B.V.社製の1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「Omnirad184」
・熱硬化剤:コベストロ社製のイソシアネート デスモジュールN-3300
・ウレタンビーズ 粒径6μm :根上工業社製「JB-800」
・ウレタンビーズ 粒径32μm:根上工業社製「C-200T」
・アクリルビーズ 粒径50μm:積水化成製「MBX-50」
・シリカ 粒径10μm :東ソー・シリカ社製「AY―603」
・アクリルビーズ 粒径20μm:根上工業社製「GR‐600」
【0064】
(実施例 比較例 積層体の製造方法)
(塗工方法)
易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 A4300 厚さ100μm)に、前記調整例で得た各々硬化性組成物を、バーコーター塗工法または塗工機(グラビア平版印刷機)により塗工し、熱硬化性組成物又は活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂層を有する積層体を得た。
【0065】
(熱硬化性組成物の硬化方法)
前記熱硬化性組成物(調整例1~3、調整例H1~H4)の樹脂層を有する積層体を、恒温槽にて40℃で1日加温し硬化させ、実施例1~3、及び比較例1~4の積層体を得た。
【0066】
(活性エネルギー線硬化性組成物の硬化方法)
前記活性エネルギー線硬化性組成物(調整例4:紫外線硬化用、調整例5:電子線硬化用)の樹脂層を有する積層体に、酸素濃度5%未満の雰囲気下で、紫外線または電子線を照射し、実施例4~5の積層体を得た。
調整例4の活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂層を硬化させる紫外線照射装置は、株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーションの紫外線照射装置を使用した。また積算光量測定装置(照度計)は、株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製の紫外線積算光量計「工業用UVチェッカー UVR-N1」を使用した。
調整例5の活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂層を硬化させる電子線照射装置は、岩崎電気株式会社製の「エレクトロカーテンEC250/15/180L」を使用した。
紫外線照射量は56mJ/cm、電子線照射量は50kGyに統一した。
【0067】
得られた積層体及びそれに使用した樹脂ビーズは、下記の測定項目にて測定や評価を行った。
【0068】
(表面粗さ測定)
積層体の樹脂層表面の平均粗さRa(μm)と最大高さRz(μm)は、接触式粗さ計(東京精密社製、SURFCOM NEX)を用いて、JIS B0601及びJIS B0633に準拠して測定した。先端半径2μmの球状圧子を走査速度0.06mm/sで樹脂層表面を走査し、規格に相当した基準長さと低域カットオフ長を使用した粗さ曲線からRaとRzを得た。
【0069】
(樹脂ビーズ ヤング率測定)
ナノインデンター(エリオニクス社製、ENT-2100)を用い、ISO14577に準拠して評価した。樹脂層表面の顕微鏡像で観測された樹脂ビーズの中心部を対象として、バーコビッチ圧子を用いて押し込み荷重10μN、押し込み時間10秒、クリープ時間10秒、除荷時間10秒で測定を行い、得られた荷重変位曲線の除荷部からOliver-Pharrの方法を用いて樹脂ビーズのヤング率(MPa)を得た。
【0070】
(動摩擦係数測定)
摩擦計(テック技販社販売、触覚フォースプレートTF-2020)を用い、樹脂層表面を手で触れた際の動摩擦係数を得た。積層体を摩擦計の上に起き、速度と垂直荷重を変えながら利き手の手のひらで樹脂層表面をなぞるという動作を行なった際の動摩擦係数を30秒間計測した。30秒間計測した中で、垂直荷重200g、速度50mm/sにおける動摩擦係数を集めて平均化した。さらに同実験を20~50代の男性3名女性3名で実施し、合計6名の動摩擦係数を平均した結果を用いた。
【0071】
(しっとり感の評価)
20~50代の健康な男性5名女性5名計10名を対象として、利き手で手のひらで積層体の樹脂層表面を自由にふれてもらい、しっとり感を1点から7点の7段階評価で採点した。ここでは、7点が最もしっとり感を感じ、1点が最もしっとり感がなかった試料である。合計10名の結果を平均化した値を用いた。 5未満が不合格、5以上が合格とした。
【0072】
(耐傷性の評価)
積層体の樹脂層表面の耐傷性は、耐摩試験機(大平理化工業株式会社、ラビングテスター)にて、荷重を500gかけながらスチールウール(#0000)で10往復擦って確認した。摩擦後の塗工物表面の状態を下記の3段階評価にて採点した。
〇:目立った傷がほぼ見当たらない。
△:ひっかき傷が表面の半分以上を占める。
×:塗膜ごとはがれている。
【0073】
(密着性の評価)
積層体の樹脂層表面にニチバン社製セロテープ(登録商標)を貼りつけ、45°方向に急速に剥離させ、樹脂層の剥離状態を観察した。
剥離後の樹脂層表面の状態を下記の3段階評価にて採点した。
〇;90%以上樹脂層が残っている
△;50~90%樹脂層が残っている
×;50%以下樹脂層が残っている
【0074】
実施例の評価結果を表1、比較例の評価結果を表2に示す。また、空欄は未配合を表す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
実施例では、いずれの評価項目も合格条件を満たしている一方、比較例ではいずれかの指標が満たない結果となった。