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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025762
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/38 20060101AFI20250214BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F16L55/38
G01M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130868
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000219358
【氏名又は名称】東亜グラウト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 充広
(72)【発明者】
【氏名】川邉 翔平
(72)【発明者】
【氏名】金氏 眞
(72)【発明者】
【氏名】足利 英昭
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067CC02
2G067DD27
(57)【要約】
【課題】圧力を持った液体が流通する管路内を移動する過程で姿勢が変化した場合でも、変化した姿勢を修正することができる移動体を提供することにある。
【解決手段】管路2内を流れる圧力を持った液体3の比重と略等しい比重を有し且つ太さ寸法よりも長さ寸法が大きい細長状に形成され、管路内を流れる液体と共に該管路の中心軸に沿って移動する移動体1は、長手方向の一方の端部側の液体に対する流体抵抗と、他方の端部側の液体に対する流体抵抗と、が異なるように形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内を流れる圧力を持った液体の比重と略等しい比重を有し且つ太さ寸法よりも長さ寸法が大きい細長状に形成され、管路内を流れる液体と共に該管路の中心軸に沿って移動する移動体であって、
長手方向の一方の端部側の液体に対する流体抵抗と、他方の端部側の液体に対する流体抵抗と、が異なるように形成されていることを特徴とする移動体。
【請求項2】
長手方向の何れか一方の端部側の外面に液体に対する抵抗体が配置されることで、該抵抗体が配置された端部側の液体に対する流体抵抗と該抵抗体が配置されることのない端部側の液体に対する流体抵抗が異なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載した移動体。
【請求項3】
前記細長状に形成された移動体が管路内を液体と共に移動する際に、該移動体に対し、移動方向上流側に位置すべき端部と下流側に位置すべき端部が設定されている場合、移動体の移動方向上流側の端部側の液体に対する流体抵抗が、移動方向下流側の端部側の液体に対する流体抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載した移動体。
【請求項4】
前記細長状に形成された移動体の移動方向上流側の端部側の外面に液体に対する抵抗体が配置されており、該抵抗体は、
前記移動体の外面に取り付けられる取付部と、該取付部から前記移動体の移動方向上流側に向けて形成された複数の短冊片と、を有して構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載した移動体。
【請求項5】
長手方向の何れか一方の端部側の外周面が異なる表面粗さを有することで、表面粗さが大きい端部側の液体に対する流体抵抗と表面粗さの小さい端部側の液体に対する流体抵抗が異なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載した移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を持った液体が流通する管路の内部を液体と共に移動する移動体に関し、特に移動する過程で姿勢が変化した場合であっても変化した姿勢を修正することができる移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中には上水道や工業用水或いは農業用水を含む種々の圧力を持った液体が流通する管路が敷設されている。このような管路は、規格サイズの管を配列すると共に、流通する液体に対応させた構造を持った継手を介して管どうしを液密性を確保して接続して構成されている。例えば、工業用水用や農業用水用の管路の場合、コンクリート管の管端どうしをパッキンを介して接続することで水密性を確保している。また、上水道用の管路の場合には、鋳鉄管の管端どうしをパッキンを介してボルト締結することで水密性を確保している。
【0003】
地中に敷設された管路には、路面を走行する車両による振動に応じた力や地盤沈下に伴う力、地震時に於ける管路の敷設方向又は管路の敷設方向に対し交差する方向への力等の力が作用している。そして、管路に作用するこれらの力によって管の継ぎ目が離隔して隙間ができたり、長期間にわたる利用によって劣化して管壁にひび割れが生じたりすることがある。
【0004】
圧力を持った液体が流通する管路に継ぎ目の隙間や管壁のひび割れなどが生じると、流通している液体が地中に漏洩することとなり、流通する液体の性質に対応した不具合が生じる。例えば、工業用水や農業用水或いは上水の場合、これらの水は水源から集水され、また夫々の目的に応じた水処理が行われており、漏水によって処理費用の無駄が生じることとなる。また、管路からの漏水によって、該管路周囲の地盤が軟弱化したり、或いは土壌が変化する虞もある。特に、液体がオイル成分を含むような場合、環境汚染を引き起こす虞もある。
【0005】
管路に生じた漏洩箇所を補修する場合、検知した漏洩位置と実際の漏洩位置との間の距離の差が大きいと、開削すべき長さも大きくなり、補修に要する時間や手間が大きくなるため、漏洩位置を可及的に正確に検知することが必要である。このような管路に於ける漏洩の有無と位置を検知するために、特許文献1、2に記載された漏洩検知方法と装置が提案されている。これらの技術は、管路の内部を移動する移動体によって、液体を介して伝達された音を集音して記録すると共に、音を集音したときの移動体の位置を検知することで漏洩位置を検知するものである。
【0006】
特許文献1に記載された発明では、移動体は比重が管路内を流れる液体の比重と略同じにして構成されており、内部に集音マイクと録音機、ジャイロと加速度センサーが搭載されている。このため、移動体は管路の略中心に沿って移動することが可能である。そして、移動体の管路内に於ける位置は、該移動体が管路内に挿入された時点から、各センサーの測定値を解析することで検知している。
【0007】
特許文献2に記載された発明では、移動体は比重が管路内を流れる液体の比重と略同じにして構成されており、内部には二つの集音マイクが移動方向上流側と下流側に指向させて配置されている。また、移動体の移動位置を検知する構成は、前述の特許文献1と同様に移動体にジャイロと加速度センサーを搭載し管路内に挿入された時点から、各センサーの測定値を解析することで検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6919884号公報
【特許文献2】特許第7169577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液体と共に移動する移動体によって管路の漏洩位置を検知するには、管路内に於ける移動体の位置を正確に知る必要がある。そして、移動体の位置を正確に知ることによって、該移動体が移動する過程で集音した音から漏水位置を精度良く特定することができる。
【0010】
前述の特許文献1、2に記載された発明では、移動体が液体と共に管路内を移動する過程で、液体を介して伝達された音を集音して記録することができる。特に、移動体が管路を流れる液体の比重と同じ比重を有する円筒体として形成されているため、液体と略同じ速度で、常に同じ姿勢を保持して管路内を移動することができる。
【0011】
しかし、全く問題がないわけではなく、移動体が管路内を移動する過程で該移動体の長手方向の軸が管路の中心軸に対して傾斜し、この傾斜した姿勢のまま移動することがある。例えば、移動体が管路の曲がり部を通過する際に、或いは何等かの障害が存在した部位を通過する際に、移動体の一部が管壁や弁部或いは障害に接触して管路の軸に対して傾斜するように姿勢が変化してしまうことがある。特に、農業用水用の管路の場合、樹木の葉や枝、ゴミなどが混入することがあり、これらが障害となって移動体が衝突して姿勢の変化が生じることがある。この場合、移動体の移動速度が変化することとなり、液体を介して伝達された音の記録精度に影響を及ぼす虞が生じる。
【0012】
この問題は、管路に於ける漏洩を検知するための機能を有する装置類を配置した移動体にのみ関わるものではなく、例えば移動体に管路の内周面を撮影するための装置類などを配置した移動体であっても、細長状に形成され且つ液体の比重と略等しい比重を有する移動体であれば共通するものである。
【0013】
本発明の目的は、圧力を持った液体が流通する管路内を移動する移動体の姿勢が変化した場合でも、長手方向が管路の略中心で且つ軸方向と略並行な好ましい姿勢に修正することができる移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明に係る代表的な移動体は、管路内を流れる圧力を持った液体の比重と略等しい比重を有し且つ太さ寸法よりも長さ寸法が大きい細長状に形成され、管路内を流れる液体と共に該管路の中心軸に沿って移動する移動体であって、長手方向の一方の端部側の液体に対する流体抵抗と、他方の端部側の液体に対する流体抵抗と、が異なるように形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る移動体は、長手方向の一方の端部側の液体に対する流体抵抗と、他方の端部側の液体に対する流体抵抗と、が異なるように形成されている。このため、移動体の姿勢が管路の中心軸に対して傾斜するように変化した場合、長手方向が管路の略中心で且つ軸方向と略並行な好ましい姿勢に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例に係る移動体の構成を説明する模式図である。
図2】管路に於ける漏洩を検知する方法を説明する模式図である。
図3】移動体の姿勢の変化の例を説明する図である。
図4】抵抗体の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る移動体は、圧力を持った液体が流れる管路の内部に挿入され、細長状で且つ該液体と略等しい比重を有して構成されている。そして、液体が流れる管路内を液体と共に移動する過程で、該管路の中心軸に対して傾斜を生じた場合、管路の中心軸に沿った方向に修正し得るように構成されている。移動体は内部に配置された装置の機能に対応して、例えば管路に於ける漏洩を検知する装置、管路の内部を撮影する装置として構成されている。このように、移動体を異なる機能を発揮し得るように構成することが可能である。以下、これらの移動体を代表して内部に管路に於ける漏洩を検知するための装置が配置されているものとして説明する。
【0018】
移動体は、圧力を持った液体が流れる管路に於ける漏洩の有無と、漏洩が生じている場合にはその位置を検知する際に利用して有利なものである。移動体は液体の比重と略同じ比重に設定されており、管路を流通する液体と共に移動することが可能である。そして、管路の内部を液体と共に移動する過程で、液体を介して伝達された音を集音して時刻と共に記録し得るように構成されている。
【0019】
移動体は、細長状に形成された長手方向の重さが平衡を保持し得るように、内部に於ける装置類が配置されている。また、移動体の重心は、長手方向の中心で、断面に於ける中心よりも僅かに下方にずれた位置に設定されている。このように構成された移動体は、長手方向が管路の中心軸と並行して移動し、移動する過程で断面中心を中心とした回転をすることがなく、常に断面内の重心が断面中心よりも下方にある位置で安定して移動することが可能である。
【0020】
圧力を持った液体は管路内を満水状態で流れるため、管路には予め設定された位置に管路内で分離された気体を排出し、或いは液体を採取するための弁栓部が設置されている。管路に於ける漏洩の有無と位置を検知する場合、検知すべき管路に設定された検知開始点となる弁栓部から移動体を挿入すると共に時刻を記録し、液体と共に移動した移動体が検知終点に到達したときに、該管路から取り出すと共に時刻を記録する。そして、これらの記録した時刻に基づいて、記録された音、移動体の位置によって、目的の管路に於ける漏洩の有無及び漏洩位置を検知することが可能である。
【0021】
移動体は管路に設置された弁栓部を通して該管路内に挿入される。このため、弁栓部を構成する管の径よりも小さい太さと、内部に音記録部材や時計、及び必要に応じて選択された複数の機能部品を収容し得る長さであって太さよりも大きい長さを有する、細長状の形状に形成されている。このような形状としては円筒体であることが好ましく、前後端の形状は球形であることが好ましい。
【0022】
移動体の寸法は、適用すべき管路の径に応じて設定することが可能であり、限定するものではない。例えば、目的の管路が上水用管路である場合、移動体を挿入又は取り出すための弁栓部を構成する管は直径が75mmであるため、移動体の外径は50mm~70mm程度、長さは収容すべき部品類の構成や寸法に対応するものの、100mm~300mm程度であることが好ましい。特に、移動体の内部に収容する機器類を、重量が低部に集中するように配置することで、管路内を移動中に生じる虞のあるローリングを少なくすることが可能である。
【0023】
移動体に配置された漏洩検知部材の構成は特に限定するものではなく、例えば、液体を介して伝達された音を集音記録して漏洩を検知するものや、管路の内面を撮影して漏洩を検知するものであって良い。特に、音を集音して記録する場合、液体を介して伝達された音を確実に集音することが可能なマイク、及び記録媒体であれば良い。このような、マイク、記録媒体は1組あれば良いが、管路内で発生した音は管壁などに反射して明確なピークを生じないことが多い。このため、指向性の異なる2組のマイクと、夫々のマイクに対応させた2組の記録媒体からなる2組の音記録部材を配置しておくことが好ましい。
【0024】
移動体は、長手方向の一方の端部側の液体に対する流体抵抗と、他方の端部側の液体に対する流体抵抗(以下単に、「流体抵抗」という)と、が異なるように形成されている。特に、移動体の流体抵抗を増加させる方法としては、外周部分に流体抵抗を増加させる抵抗体を取り付ける方法、或いは外周面の表面粗さを大きくする方法がある。そして、移動体の何れかの端部側に前記方法を選択的に採用することで、異なる流体抵抗を実現することが可能である。
【0025】
移動体の一方の端部側、例えば移動方向下流側(以下「前方端」ということもある)と、他方の端部側、例えば移動方向上流側(以下「後方端」ということもある)を互いに異なる流体抵抗としている。移動体の内部に配置された音記録部材や時計、及び他の機能部品が指向性を有しているような場合、移動方向上流側の端部、即ち、後方端の流体抵抗を大きくしている。
【0026】
流体抵抗を大きくするために移動体に取り付ける抵抗体の形状は特に限定するものではない。抵抗体は液体に対する抵抗を発揮し得るものであれば良く、移動体が管路内を移動する際に、頻繁に管壁に接触することがないような形状であることが好ましい。このような抵抗体としては、例えば移動体の外周面に取り付ける筒状に形成された又は吹流し状に形成された抵抗体、移動体の外周面に貼り付けた複数のテープからなる抵抗体、移動体の外端面に取り付ける羽状或いはおわん状の抵抗体などがある。
【0027】
流体抵抗を大きくするための移動体の表面粗さは、数値として限定するものではなく、粗さを大きくした端部側の流体抵抗が粗さの小さい端部側の流体抵抗よりも大きければ良い。例えば、移動体の前方端側の表面を鏡面仕上げとし、後方端側の表面を梨地仕上げとすることでも良い。
【0028】
次に本発明に係る移動体の実施例について図を用いて説明する。
【0029】
移動体1は、例えば図2に示すように、漏洩部2aが存在する管路2の内部を液体3と共に矢印方向に移動し、漏洩部2aで発生し液体3を介して伝達された音を集音して記録し得るように構成されている。そして、移動体1を管路2から取り出した後、記録した音のデータと時刻、及び移動体1の位置データとによって管路2に於ける漏洩位置を検知することが可能である。
【0030】
移動体1は、アルミニウム等の金属或いはプラスチックによって形成され、円筒状の本体1aと、半球形の外周面を有し本体1aの前方端に配置されたキャップ1bと後方端に配置されたキャップ1cとを有している。夫々のキャップ1b、1cは、図示しないパッキンを介して本体1aに装着されることで、内部に管路の漏れを検知するのに必要な機能部品類を収容する収容空間1dが形成されている。
【0031】
移動体1に形成された収容空間1dには、2組の音記録部材5が配置されている。即ち、移動体1には、前後に夫々音記録部材5を構成するマイク5a、5aと、集音した音を記録する録音機5b、5bが配置されている。特に、一方のマイク5aは移動体1の移動方向下流側の端部側に配置され、下流側に対する指向性を有している。また、他方のマイク5aは移動体1の上流側の端部側に配置され、上流側に対する指向性を有している。
【0032】
移動体1に形成された収容空間本体1dには時計6が配置されており、この時計6による時刻に対応させて集音した音の記録が行われる。
【0033】
また、収容空間1dには、移動体1の位置を検知するためのジャイロセンサー7aと、ジャイロセンサー7aから発生した信号を時計6による時刻と共に記録する記録部材7bが配置されている。また、収容空間1dには、前述したマイク5a、録音機5b、ジャイロセンサー7a、記録部材7bを制御する制御部8及び電源9が配置されている。
【0034】
前述したように、目的の管路に於ける漏洩の有無、漏洩位置を検知する場合、管路に設定された検知開始点から移動体を挿入・発射すると共に地上で発射時刻を記録し、検知終点に到達したとき取り出して地上で到達・取出時刻を記録する。そして、発射時刻、到達時刻、記録された音及び音を記録した時刻、この時刻に対応した移動体の位置を解析することで、目的の管路に於ける漏洩の有無及び漏洩位置を検知している。このため、地上で計時する時計と時計6は同期して計時し得るように構成されている。
【0035】
録音機5b、記録部材7bの構成は限定するものではなく、小型で取り扱いの容易な記録部材であることが好ましい。本実施例では、SDカードのような記録媒体と、この記録媒体を利用する記録部材を用いている。
【0036】
移動体1を構成する本体1aの後方端側(キャップ1c側)の外周面には抵抗体11が取り付けられている。この抵抗体11は、本体1aの外径と略等しい内径を有する取付部11aと、この取付部11aから液体3の流れ方向上流側に形成された複数の短冊片11bが形成されている。そして、複数の短冊片11bが本体1aのキャップ1c側から液体3の流れ方向上流側に向けて吹流し状に配置されている。
【0037】
抵抗体11の材質は特に限定するものではないが、軟質で布状のものであることが好ましい。このように、軟質な布によって構成した抵抗体11では、移動体1を管路2から取り出す際に網を利用する場合であっても、短冊片11bが網に引っかかることなく、円滑に取り出すことが可能であった。また、抵抗体11の長さも特に限定するものではないが、短冊片11bの自由端がキャップ1cの端部よりも僅かに突出していることが好ましい。
【0038】
特に、抵抗体11は移動体1の本体1aに取り付けたとき、該移動体1の液体3に対する比重に影響を与えることのない程度に軽量であることが必要である。また、短冊片11bは、円筒状の取付部11aの全周にわたって形成する必要はなく、円周の1/2程度であっても、抵抗体11としての機能を発揮することが可能である。更に、抵抗体11の長さは移動体1の長さの1/3~1/10程度であって良い。
【0039】
上記の如く構成された移動体1では、図2に示すように、長手方向が管路2の長手方向(中心軸)に沿って略並行した状態を保持して移動する。しかし、移動体1が移動する過程で、例えば管路2の曲がり部分を通過する際に、一部が管壁に接触することがある。そして、移動体1が管壁に接触した場合、該移動体1の長手方向が管路2の中心軸に対して傾斜するように姿勢が変化する。
【0040】
姿勢が変化した移動体1は図3に示すように、液体3と共に矢印a方向に移動するが、後方端側に抵抗体11が取り付けられているため、後方端側の流体抵抗が前方端側の流体抵抗よりも大きい。このため、移動体1と液体3との間に生じている速度差と、前方端側の流体抵抗と後方端側の流体抵抗の差に応じて、移動体1に後方端側を矢印b方向に回動させるような力が作用する。この結果、移動体1の後方端側が管路2の中心軸側に接近してゆき、移動体1は管路2の中心軸に沿って並行する方向の姿勢に復帰する。以降、この状態を保持して液体3と共に矢印a方向への移動を継続し、引き続き液体3を介して伝達された音を時刻と共に記録する。
【0041】
次に、移動体1に取り付ける抵抗体の他の例について説明する。図4(a)は抵抗体12の構成を説明する図であり、複数の布状の短冊片12を移動体1の後方端側に配置し、ゴム輪或いは粘着テープなどの取付片12aによって取り付けて構成されている。
【0042】
同図(b)の抵抗体13は半球状に形成された網によって構成されており、移動体1の後方端側に取り付けて管路2の内部を移動する際に、液体3が流入してもこの液体3を通過させることが可能である。網の材料としては天然繊維或いは合成繊維であることが好ましい。また、同図(c)の抵抗体14は複数の突起片14aを形成して構成されており、移動体1の後方端側の外周面に粘着テープを巻き付け、複数個所をつまんで突起片14aを形成している。
【0043】
上記した抵抗体12~14の何れであっても、前述した抵抗体11の場合と同様に、移動体1の管路の長手方向に対する姿勢が変化したとき、この変化した姿勢を復帰させることが可能である。
【0044】
本発明では、抵抗体の形状は限定するものではなく、移動体1の前方端側と後方端側に異なる流体抵抗を実現し得るものであれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の移動体は、圧力を持った液体が流通する管路であれば、水用の管路、油用の管路に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 移動体
2 管路
2a 漏洩部
3 液体
1a 本体
1b、1c キャップ
1d 収容空間
5 音記録部材
5a マイク
5b 録音機
6 標準時計
7a ジャイロセンサー
7b 記録部材
8 制御部
9 電源
11~14 抵抗体
11a 取付部
11b 短冊片
12a 取付片
14a 突起片
図1
図2
図3
図4