2025-25788 車両用駆動装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025025788

(43)【公開日】2025-02-21

(54)【発明の名称】車両用駆動装置

(51)【国際特許分類】

   F16H 57/04 20100101AFI20250214BHJP

   F16D 13/74 20060101ALI20250214BHJP

   F16D 13/60 20060101ALI20250214BHJP

   F16D 25/0638 20060101ALI20250214BHJP

【ＦＩ】

F16H57/04 J

F16H57/04 L

F16D13/74 A

F16D13/60 T

F16D25/0638

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023130913

(22)【出願日】2023-08-10

(71)【出願人】

【識別番号】000000011

【氏名又は名称】株式会社アイシン

(71)【出願人】

【識別番号】000005326

【氏名又は名称】本田技研工業株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】519314766

【氏名又は名称】株式会社ＢｌｕＥ Ｎｅｘｕｓ

(74)【代理人】

【識別番号】110001818

【氏名又は名称】弁理士法人Ｒ＆Ｃ

(72)【発明者】

【氏名】榊原 航

【テーマコード（参考）】

3J056

3J057

3J063

【Ｆターム（参考）】

3J056AA60

3J056AA62

3J056BC00

3J056BE23

3J056CA04

3J056CA05

3J056CA12

3J056GA02

3J056GA12

3J057AA04

3J057BB04

3J057CA01

3J057DA20

3J057EE05

3J057HH02

3J057JJ01

3J063AA02

3J063AA04

3J063AB02

3J063AC01

3J063BA11

3J063CD13

3J063XD03

3J063XD23

3J063XD32

3J063XD42

3J063XD44

3J063XD56

3J063XD62

3J063XD75

3J063XF14

3J063XF15

(57)【要約】

【課題】電動走行モードにおいても、係合装置の摩擦係合部材を適切に潤滑可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置は、入力部材と出力部材との間の動力伝達を行う第１伝達系と、回転電機と出力部材との間の動力伝達を行う第２伝達系と、第１伝達系の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置と、第１伝達系における係合装置よりも入力部材側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプと、第２伝達系を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプと、第２オイルポンプが吐出する油を係合装置に供給する供給油路１０と、を備え、係合装置は、摩擦係合部材を径方向Ｒの外側から覆うドラム部材２を備え、供給油路１０は、ドラム部材２に対して径方向Ｒの外側から油を供給する供給口１０ａを備え、ドラム部材２の外周面に形成された複数の凹部２１の少なくとも１つに、ドラム部材２を径方向Ｒに貫通する油孔２ａが形成されている。
【選択図】図５

【特許請求の範囲】

【請求項1】

内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う第１伝達系と、
前記回転電機と前記出力部材との間の動力伝達を行う第２伝達系と、
前記第１伝達系の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置と、
前記第１伝達系における前記係合装置よりも前記入力部材側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプと、
前記第２伝達系を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプと、
前記第２オイルポンプが吐出する油を前記係合装置に供給する供給油路と、を備え、
前記係合装置は、それぞれが板状に形成された複数の摩擦係合部材と、複数の前記摩擦係合部材を径方向の外側から覆う筒状のドラム部材と、を備え、
前記供給油路は、前記ドラム部材に対して前記径方向の外側から油を供給する供給口を備え、
前記ドラム部材の外周面には、前記径方向の内側に窪むように形成された複数の凹部が、周方向に分散して配置され、
複数の前記凹部の少なくとも１つに、前記ドラム部材を前記径方向に貫通する油孔が形成されている、車両用駆動装置。

【請求項2】

前記ドラム部材の内周面には、前記径方向の内側に突出するように形成され、複数の前記摩擦係合部材の一部が係合するための複数の凸部が、前記周方向に分散して配置され、
複数の前記凹部のそれぞれは、前記径方向に沿う径方向視で、複数の前記凸部のそれぞれと重複するように配置されている、請求項１に記載の車両用駆動装置。

【請求項3】

複数の前記摩擦係合部材は、前記ドラム部材の回転軸心に沿う軸方向に並ぶように配置され、
複数の前記油孔は、前記周方向に隣接する前記油孔の前記軸方向の位置が互いに異なるように配置されている、請求項１又は２に記載の車両用駆動装置。

【請求項4】

第２回転電機としての前記回転電機とは異なる第１回転電機と、
前記第１伝達系を介して前記入力部材からの駆動力が伝達されると共に、前記第２伝達系を介して前記第２回転電機からの駆動力が伝達される、前記出力部材としての差動入力ギヤと、
前記差動入力ギヤに伝達された駆動力を一対の前記車輪に分配する差動歯車機構と、を更に備え、
前記第１回転電機は、前記第１伝達系における前記係合装置よりも前記入力部材側の部分に駆動連結され、
前記第２オイルポンプは、前記差動入力ギヤにより駆動される、請求項１又は２に記載の車両用駆動装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、入力部材と出力部材との間の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置と、オイルポンプと、を備えた車両用駆動装置に関する。

【背景技術】

【0002】

このような車両用駆動装置では、係合装置の状態によっては当該係合装置における一対の摩擦係合部材に差回転が発生し得るため、それらの潤滑が必要である。

【0003】

下記の特許文献１には、摩擦式の係合装置（５６）の摩擦係合部材（７２）に油を供給するための供給油路（６８）が開示されている。そのため、このような供給油路（６８）を上記の車両用駆動装置に適用して、係合装置の摩擦係合部材を潤滑する構成とすることが考えられる。なお、背景技術の説明において括弧内に示す符号は、特許文献１のものである。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特表２００９－５４４９０３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、例えば、内燃機関を停止させ、回転電機の駆動力により車輪を駆動する動作モード（所謂、電動走行モード）とした場合、内燃機関の駆動力を利用してオイルポンプを駆動できないため、係合装置の摩擦係合部材に油を供給することが難しい。

【0006】

そこで、電動走行モードにおいても、係合装置の摩擦係合部材を適切に潤滑可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う第１伝達系と、
前記回転電機と前記出力部材との間の動力伝達を行う第２伝達系と、
前記第１伝達系の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置と、
前記第１伝達系における前記係合装置よりも前記入力部材側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプと、
前記第２伝達系を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプと、
前記第２オイルポンプが吐出する油を前記係合装置に供給する供給油路と、を備え、
前記係合装置は、それぞれが板状に形成された複数の摩擦係合部材と、複数の前記摩擦係合部材を径方向の外側から覆う筒状のドラム部材と、を備え、
前記供給油路は、前記ドラム部材に対して前記径方向の外側から油を供給する供給口を備え、
前記ドラム部材の外周面には、前記径方向の内側に窪むように形成された複数の凹部が、周方向に分散して配置され、
複数の前記凹部の少なくとも１つに、前記ドラム部材を前記径方向に貫通する油孔が形成されている点にある。

【0008】

上記の車両用駆動装置では、例えば、内燃機関を停止させ、第２伝達系を伝わる回転電機の駆動力により車輪を駆動する動作モードである電動走行モードでは、係合装置の摩擦係合部材に差回転が発生するため、摩擦係合部材の潤滑が必要となる。しかしながら、電動走行モードでは、第１伝達系を伝わる内燃機関の駆動力により、第１オイルポンプを駆動することができない。一方で、電動走行モードであっても、第２伝達系を伝わる回転電機の駆動力により、第２オイルポンプを駆動することができる。これにより、第２オイルポンプが吐出する油を、供給油路を介してドラム部材の外周面に供給することができる。そして、ドラム部材の外周面に供給された油は、複数の凹部に溜まり、それらの凹部の少なくとも１つに形成された油孔を通って、ドラム部材の内側に配置された摩擦係合部材に供給される。したがって、本特徴構成によれば、電動走行モードにおいても、係合装置の摩擦係合部材を適切に潤滑することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図

【図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図

【図3】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図の一部拡大図

【図4】実施形態に係る車両用駆動装置の構成要素の位置関係を示す図

【図5】ドラム部材及び供給油路の構成を示す図

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下では、実施形態に係る車両用駆動装置１００について、図面を参照して説明する。図１及び図２に示すように、車両用駆動装置１００は、入力部材Ｉと、出力部材Ｏと、第２回転電機ＭＧ２と、第１伝達系ＴＳ１と、第２伝達系ＴＳ２と、係合装置ＣＬと、第１オイルポンプＯＰ１と、第２オイルポンプＯＰ２と、を備えている。

【0011】

入力部材Ｉは、内燃機関ＥＧに駆動連結されている。内燃機関ＥＧは、車輪Ｗ（図２参照）の駆動力源として機能する。内燃機関ＥＧは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機（ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等）である。

【0012】

ここで、本願において「駆動連結」とは、２つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該２つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該２つの回転要素が１つ又は２つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。

【0013】

第２回転電機ＭＧ２は、車輪Ｗの駆動力源として機能する「回転電機」である。第２回転電機ＭＧ２は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ（電動機）としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ（発電機）としての機能とを有している。

【0014】

出力部材Ｏは、車輪Ｗに駆動連結されている。第１伝達系ＴＳ１は、入力部材Ｉと出力部材Ｏとの間の動力伝達を行うように構成されている。第２伝達系ＴＳ２は、第２回転電機ＭＧ２と出力部材Ｏとの間の動力伝達を行うように構成されている。係合装置ＣＬは、第１伝達系ＴＳ１の動力伝達を断接する摩擦式のクラッチである。第１オイルポンプＯＰ１は、第１伝達系ＴＳ１における係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプである。第２オイルポンプＯＰ２は、第２伝達系ＴＳ２を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプである。

【0015】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第１回転電機ＭＧ１と、差動入力ギヤＧｄと、差動歯車機構ＤＦと、ケース９と、を更に備えている。

【0016】

第１回転電機ＭＧ１は、第２回転電機ＭＧ２とは異なる回転電機である。第１回転電機ＭＧ１も、第２回転電機ＭＧ２と同様に、電力の供給を受けて動力を発生するモータ（電動機）としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ（発電機）としての機能とを有している。

【0017】

差動入力ギヤＧｄは、第１伝達系ＴＳ１を介して入力部材Ｉからの駆動力が伝達されると共に、第２伝達系ＴＳ２を介して第２回転電機ＭＧ２からの駆動力が伝達されるギヤである。つまり、差動入力ギヤＧｄは、出力部材Ｏとして機能する。

【0018】

差動歯車機構ＤＦは、差動入力ギヤＧｄに伝達された駆動力を一対の車輪Ｗに分配するように構成されている。

【0019】

本実施形態では、車両用駆動装置１００が備える複数の回転部材の回転軸心として、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６が存在する。第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６は、互いに平行に配置されている。

【0020】

以下の説明では、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６のそれぞれに沿う方向を「軸方向Ｌ」とする。そして、軸方向Ｌの一方側を「軸方向第１側Ｌ１」とし、軸方向Ｌの他方側を「軸方向第２側Ｌ２」とする。また、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６のそれぞれに直交する方向を、対応する軸心を基準とした「径方向Ｒ」とする。なお、どの軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向Ｒ」と記す場合がある。

【0021】

図１に示すように、ケース９は、第１収容室ＣＭ１と、第２収容室ＣＭ２と、を備えている。第１収容室ＣＭ１は、入力部材Ｉ、出力部材Ｏ、第１伝達系ＴＳ１、第２伝達系ＴＳ２、差動歯車機構ＤＦ、係合装置ＣＬ、第１オイルポンプＯＰ１、及び第２オイルポンプＯＰ２が収容される空間である。第２収容室ＣＭ２は、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２が収容される空間である。本実施形態では、第１収容室ＣＭ１が、第２収容室ＣＭ２に対して軸方向第２側Ｌ２に配置されている。

【0022】

ケース９は、第１ケース部９１と、第２ケース部９２と、第３ケース部９３と、を備えている。第１ケース部９１と第２ケース部９２とは、互いに接合されて第１収容室ＣＭ１を形成する。第１ケース部９１と第３ケース部９３とは、互いに接合されて第２収容室ＣＭ２を形成する。本実施形態では、第２ケース部９２が第１ケース部９１に対して軸方向第２側Ｌ２から接合されている。そして、第１ケース部９１と第２ケース部９２との軸方向Ｌの間に、第１収容室ＣＭ１が形成されている。また、第３ケース部９３が第１ケース部９１に対して軸方向第１側Ｌ１から接合されている。そして、第１ケース部９１と第３ケース部９３との軸方向Ｌの間に、第２収容室ＣＭ２が形成されている。

【0023】

第１ケース部９１は、隔壁部９１１と、第１側壁部９１２と、を備えている。隔壁部９１１及び第１側壁部９１２のそれぞれは、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。隔壁部９１１は、第１伝達系ＴＳ１及び第２伝達系ＴＳ２を軸方向第１側Ｌ１から覆うと共に、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２を軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。このように、隔壁部９１１は、第１収容室ＣＭ１と第２収容室ＣＭ２とを軸方向Ｌに隔てるように形成されている。第１側壁部９１２は、差動歯車機構ＤＦを軸方向第１側Ｌ１から覆うように配置されている。

【0024】

第２ケース部９２は、第２側壁部９２１と、第３側壁部９２２と、を備えている。第２側壁部９２１及び第３側壁部９２２のそれぞれは、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。第２側壁部９２１は、第１伝達系ＴＳ１及び第２伝達系ＴＳ２を軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。第３側壁部９２２は、差動歯車機構ＤＦを軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。

【0025】

第３ケース部９３は、第４側壁部９３１を備えている。第４側壁部９３１は、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。第４側壁部９３１は、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２を軸方向第１側Ｌ１から覆うように配置されている。

【0026】

入力部材Ｉは、第１軸心Ｘ１上に配置されている。本実施形態では、入力部材Ｉは、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。そして、入力部材Ｉは、第２側壁部９２１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。また、入力部材Ｉは、入力軸受Ｂ１１を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0027】

第１回転電機ＭＧ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。第１回転電機ＭＧ１は、第１ステータＳＴ１と、第１ロータＲＴ１と、を備えている。

【0028】

第１ステータＳＴ１は、円筒状の第１ステータコアＳＣ１を備えている。第１ステータコアＳＣ１は、ケース９（ここでは、第１ケース部９１）に固定されている。

【0029】

第１ロータＲＴ１は、円筒状の第１ロータコアＲＣ１を備えている。第１ロータコアＲＣ１は、第１ステータコアＳＣ１に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第１ロータコアＲＣ１は、第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。

【0030】

第１ロータ軸ＲＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、第１ロータ軸ＲＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する筒状に形成されている。また、本実施形態では、第１ロータ軸ＲＳ１は、隔壁部９１１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。そして、第１ロータ軸ＲＳ１は、第１ロータ軸受Ｂ２１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、第１ロータ軸ＲＳ１は、第２ロータ軸受Ｂ２２を介して、第４側壁部９３１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0031】

本実施形態では、第１回転電機ＭＧ１は、インナロータ型の回転電機である。そのため、第１ロータコアＲＣ１が、第１ステータコアＳＣ１に対して径方向Ｒの内側に配置されている。また、第１ロータ軸ＲＳ１が、第１ロータコアＲＣ１に対して径方向Ｒの内側に配置されている。

【0032】

また、本実施形態では、第１回転電機ＭＧ１は、回転界磁型の回転電機である。そのため、第１ステータコアＳＣ１には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、第１ステータコアＳＣ１に対して軸方向Ｌの両側に突出した第１コイルエンド部ＣＥ１が形成されるように、第１ステータコアＳＣ１に巻装されている。また、第１ロータコアＲＣ１には、永久磁石が設けられている。

【0033】

第２回転電機ＭＧ２は、第３軸心Ｘ３上に配置されている。第２回転電機ＭＧ２は、第２ステータＳＴ２と、第２ロータＲＴ２と、を備えている。

【0034】

第２ステータＳＴ２は、円筒状の第２ステータコアＳＣ２を備えている。第２ステータコアＳＣ２は、ケース９（ここでは、第１ケース部９１）に固定されている。

【0035】

第２ロータＲＴ２は、円筒状の第２ロータコアＲＣ２を備えている。第２ロータコアＲＣ２は、第２ステータコアＳＣ２に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第２ロータコアＲＣ２は、第２ロータ軸ＲＳ２と一体的に回転するように連結されている。

【0036】

第２ロータ軸ＲＳ２は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、第２ロータ軸ＲＳ２は、隔壁部９１１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。また、第２ロータ軸ＲＳ２は、第２ロータコアＲＣ２と一体的に回転するように連結された第１軸部材ＲＳ２１と、当該第１軸部材ＲＳ２１と一体的に回転するように連結された第２軸部材ＲＳ２２と、を備えている。本実施形態では、第１軸部材ＲＳ２１は、第３ロータ軸受Ｂ３１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、第１軸部材ＲＳ２１は、第４ロータ軸受Ｂ３２を介して、第４側壁部９３１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、第２軸部材ＲＳ２２は、第５ロータ軸受Ｂ３３を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、第２軸部材ＲＳ２２は、第６ロータ軸受Ｂ３４を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0037】

本実施形態では、第２回転電機ＭＧ２は、インナロータ型の回転電機である。そのため、第２ロータコアＲＣ２が、第２ステータコアＳＣ２に対して径方向Ｒの内側に配置されている。また、第２ロータ軸ＲＳ２が、第２ロータコアＲＣ２に対して径方向Ｒの内側に配置されている。

【0038】

また、本実施形態では、第２回転電機ＭＧ２は、回転界磁型の回転電機である。そのため、第２ステータコアＳＣ２には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、第２ステータコアＳＣ２に対して軸方向Ｌの両側に突出した第２コイルエンド部ＣＥ２が形成されるように、第２ステータコアＳＣ２に巻装されている。また、第２ロータコアＲＣ２には、永久磁石が設けられている。

【0039】

差動歯車機構ＤＦは、第４軸心Ｘ４上に配置されている。差動歯車機構ＤＦは、差動ケースＤＣと、一対のピニオンギヤＰＧと、一対のサイドギヤＳＧと、を備えている。

【0040】

差動ケースＤＣは、一対のピニオンギヤＰＧ及び一対のサイドギヤＳＧを収容している。差動ケースＤＣは、第４軸心Ｘ４を中心として回転するように構成されている。差動ケースＤＣは、差動入力ギヤＧｄと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、差動ケースＤＣは、第１差動軸受Ｂ４１を介して、第１側壁部９１２により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、差動ケースＤＣは、第２差動軸受Ｂ４２を介して、第３側壁部９２２により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0041】

一対のピニオンギヤＰＧは、第４軸心Ｘ４を基準とした径方向Ｒに間隔を空けて、互いに対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤＰＧは、差動ケースＤＣに固定されたピニオンシャフトＰＳに回転自在に支持されている。より詳細には、一対のピニオンギヤＰＧのそれぞれは、その軸心を中心として回転（自転）自在、かつ、第４軸心Ｘ４を中心として回転（公転）自在に構成されている。

【0042】

一対のサイドギヤＳＧは、ピニオンシャフトＰＳに対して軸方向Ｌの両側に分かれて配置されている。一対のサイドギヤＳＧは、一対のピニオンギヤＰＧに噛み合っている。一対のサイドギヤＳＧは、第４軸心Ｘ４を中心として回転するように構成されている。一対のサイドギヤＳＧのそれぞれは、車輪Ｗに駆動連結されたドライブシャフトＤＳと一体的に回転するように連結されている。

【0043】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第１入力ギヤＧｉ１と、第２入力ギヤＧｉ２と、第１カウンタギヤＧｃ１と、第２カウンタギヤＧｃ２と、第１ロータギヤＧｒ１と、第２ロータギヤＧｒ２と、を更に備えている。

【0044】

第１入力ギヤＧｉ１は、入力部材Ｉと一体的に回転するように連結されている。第１入力ギヤＧｉ１は、係合装置ＣＬを介して第２入力ギヤＧｉ２に連結されている。第１入力ギヤＧｉ１、第２入力ギヤＧｉ２、及び係合装置ＣＬは、第１軸心Ｘ１上に配置されている。本実施形態では、軸方向第１側Ｌ１から軸方向第２側Ｌ２に向けて、第１入力ギヤＧｉ１、係合装置ＣＬ、及び第２入力ギヤＧｉ２が記載の順に配置されている。

【0045】

本実施形態では、第１入力ギヤＧｉ１は、第１入力ギヤ軸受Ｂ５１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの内側から回転自在に支持されている。また、第２入力ギヤＧｉ２は、入力部材Ｉに対して径方向Ｒの外側に配置されている。そして、第２入力ギヤＧｉ２と入力部材Ｉとが、第２入力ギヤ軸受Ｂ５２により互いに相対回転自在に支持されている。

【0046】

第１カウンタギヤＧｃ１は、第２入力ギヤＧｉ２に噛み合っている。第２カウンタギヤＧｃ２は、差動入力ギヤＧｄに噛み合っている。第１カウンタギヤＧｃ１及び第２カウンタギヤＧｃ２は、第５軸心Ｘ５上に配置されている。本実施形態では、第２カウンタギヤＧｃ２は、第１カウンタギヤＧｃ１よりも小径に形成されている。また、第２カウンタギヤＧｃ２は、第１カウンタギヤＧｃ１よりも軸方向第１側Ｌ１に配置されている。

【0047】

第１カウンタギヤＧｃ１と第２カウンタギヤＧｃ２とは、カウンタ軸ＣＳを介して、互いに一体的に回転するように連結されている。カウンタ軸ＣＳは、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、カウンタ軸ＣＳは、第１カウンタ軸受Ｂ７１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、カウンタ軸ＣＳは、第２カウンタ軸受Ｂ７２を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0048】

第１ロータギヤＧｒ１は、第１入力ギヤＧｉ１に噛み合っている。第１ロータギヤＧｒ１は、第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。第１ロータギヤＧｒ１及び第１ロータ軸ＲＳ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。このように、第１回転電機ＭＧ１は、第１伝達系ＴＳ１における係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分に駆動連結されている。

【0049】

本実施形態では、第１ロータギヤＧｒ１は、第１ロータギヤ軸受Ｂ６１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの内側から回転自在に支持されている。更に、第１ロータギヤＧｒ１は、第２ロータギヤ軸受Ｂ６２を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0050】

第２ロータギヤＧｒ２は、第１カウンタギヤＧｃ１に噛み合っている。第２ロータギヤＧｒ２は、第２ロータ軸ＲＳ２と一体的に回転するように連結されている。第２ロータギヤＧｒ２及び第２ロータ軸ＲＳ２は、第３軸心Ｘ３上に配置されている。本実施形態では、第２ロータギヤＧｒ２は、第２ロータ軸ＲＳ２の第２軸部材ＲＳ２２と一体的に回転するように連結されている。

【0051】

本実施形態では、第１入力ギヤＧｉ１、第２入力ギヤＧｉ２、第１カウンタギヤＧｃ１、及び第２カウンタギヤＧｃ２が、第１伝達系ＴＳ１として機能する。また、第２ロータギヤＧｒ２、第１カウンタギヤＧｃ１、及び第２カウンタギヤＧｃ２が、第２伝達系ＴＳ２として機能する。

【0052】

図１及び図２に示すように、第１オイルポンプＯＰ１は、第１ポンプロータＰＲ１を備えている。第１ポンプロータＰＲ１は、連結軸ＰＳ１を介して第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。連結軸ＰＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。第１ポンプロータＰＲ１及び連結軸ＰＳ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。

【0053】

図２に示すように、第２オイルポンプＯＰ２は、第２ポンプロータＰＲ２を備えている。第２ポンプロータＰＲ２は、ポンプ駆動ギヤＧｐと一体的に回転するように連結されている。ポンプ駆動ギヤＧｐは、差動入力ギヤＧｄに噛み合っている。このように、第２オイルポンプＯＰ２は、差動入力ギヤＧｄにより駆動される。第２ポンプロータＰＲ２及びポンプ駆動ギヤＧｐは、第６軸心Ｘ６上に配置されている。

【0054】

図３に示すように、係合装置ＣＬは、複数の摩擦係合部材１を備えている。複数の摩擦係合部材１のそれぞれは、板状に形成されている。複数の摩擦係合部材１は、軸方向Ｌに並ぶように配置されている。本実施形態では、複数の摩擦係合部材１は、複数の第１部材１１と、複数の第２部材１２と、を含む。第１部材１１と第２部材１２とは、互いに軸方向Ｌに対向するように、軸方向Ｌに沿って交互に配置されている。

【0055】

係合装置ＣＬは、第１部材１１と第２部材１２との係合圧に応じて、係合の状態（係合状態／解放状態）を制御可能に構成されている。係合装置ＣＬにおいて、係合状態は、「直結係合状態」と「スリップ係合状態」とを含む。直結係合状態は、第１部材１１と第２部材１２とが差回転なく係合している状態である。また、スリップ係合状態は、第１部材１１と第２部材１２とが差回転を有して係合している状態である。

【0056】

係合装置ＣＬは、ドラム部材２を備えている。ドラム部材２は、複数の摩擦係合部材１を径方向Ｒの外側から覆う筒状の部材である。本実施形態では、ドラム部材２は、第１軸心Ｘ１を軸心とする筒状に形成されている。そして、ドラム部材２は、複数の第１部材１１がドラム部材２に対して相対回転不能であって軸方向Ｌに移動自在となるように、複数の第１部材１１の外周部を支持している。

【0057】

また、本実施形態では、ドラム部材２は、第１入力ギヤＧｉ１と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、ドラム部材２は、第１入力ギヤＧｉ１から軸方向第２側Ｌ２に突出するように、第１入力ギヤＧｉ１に固定されている。

【0058】

本実施形態では、係合装置ＣＬは、ハブ部材３と、ピストン４と、を更に備えている。

【0059】

ハブ部材３は、複数の摩擦係合部材１を径方向Ｒの内側から覆う筒状の部材である。本実施形態では、ハブ部材３は、第１軸心Ｘ１を軸心とする筒状に形成されている。そして、ハブ部材３は、複数の第２部材１２がハブ部材３に対して相対回転不能であって軸方向Ｌに移動自在となるように、複数の第２部材１２の内周部を支持している。

【0060】

また、本実施形態では、ハブ部材３は、第２入力ギヤＧｉ２と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、ハブ部材３は、第２入力ギヤＧｉ２から軸方向第１側Ｌ１に突出するように、第２入力ギヤＧｉ２と一体的に形成されている。

【0061】

ピストン４は、複数の摩擦係合部材１を軸方向Ｌに押圧する部材である。本実施形態では、ピストン４は、複数の摩擦係合部材１に対して軸方向第１側Ｌ１に配置されている。そして、ピストン４は、ドラム部材２に対して相対回転不能であって軸方向Ｌに移動自在となるように、ドラム部材２により径方向Ｒの外側から支持されている。

【0062】

車両用駆動装置１００は、動作モードとして、電動走行モードを備えている。電動走行モードは、内燃機関ＥＧを停止させ、第２伝達系ＴＳ２を伝わる第２回転電機ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードである。電動走行モードでは、内燃機関ＥＧが停止しており、第１伝達系ＴＳ１に内燃機関ＥＧの駆動力が伝達されないため、第１オイルポンプＯＰ１は駆動されない。一方で、電動走行モードであっても、第２伝達系ＴＳ２には第２回転電機ＭＧ２の駆動力が伝達されるため、第２オイルポンプＯＰ２が駆動される。

【0063】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、動作モードとして、シリーズハイブリッドモードと、パラレルハイブリッドモードと、を更に備えている。シリーズハイブリッドモードは、係合装置ＣＬを解放状態として、内燃機関ＥＧの駆動力を第１回転電機ＭＧ１に伝達して発電を行いつつ、第２回転電機ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードである。パラレルハイブリッドモードは、係合装置ＣＬを係合状態として、内燃機関ＥＧ及び第２回転電機ＭＧ２の双方の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードである。

【0064】

図４及び図５に示すように、車両用駆動装置１００は、供給油路１０を備えている。供給油路１０は、第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を係合装置ＣＬに供給する油路である。本実施形態では、供給油路１０は、内部を油が流動する管部材により構成されている。なお、図４及び図５における黒塗り矢印は、供給油路１０から係合装置ＣＬに供給される油の流れを示している。

【0065】

なお、以下の説明では、車両用駆動装置１００を搭載した車両が水平面上に位置している状態において、鉛直方向に沿う方向を「上下方向Ｖ」とする。そして、鉛直方向の上側を「上側Ｖ１」とし、鉛直方向の下側を「下側Ｖ２」とする。また、車両用駆動装置１００を搭載した車両が水平面上に位置している状態において、水平方向に沿う方向であって軸方向Ｌに直交する方向を「前後方向Ｄ」とする。そして、前後方向Ｄの一方側を「前側Ｄ１」とし、前後方向Ｄの他方側を「後側Ｄ２」とする。なお、上下方向Ｖ及び前後方向Ｄのそれぞれは、径方向Ｒにおける特定の一方向に一致する。

【0066】

図４に示すように、本実施形態では、第１軸心Ｘ１、第２軸心Ｘ２、及び第６軸心Ｘ６が、第３軸心Ｘ３、第５軸心Ｘ５、及び第４軸心Ｘ４に対して後側Ｄ２に配置されている。そして、第２軸心Ｘ２に対して上側Ｖ１に第１軸心Ｘ１が配置されていると共に、第２軸心Ｘ２に対して下側Ｖ２に第６軸心Ｘ６が配置されている。また、第５軸心Ｘ５に対して上側Ｖ１に第３軸心Ｘ３が配置されていると共に、第５軸心Ｘ５に対して下側Ｖ２に第４軸心Ｘ４が配置されている。

【0067】

本実施形態では、供給油路１０は、第２オイルポンプＯＰ２から、第４軸心Ｘ４に対して下側Ｖ２を通るように前側Ｄ１に延在している。そして、供給油路１０は、第４軸心Ｘ４に対して下側Ｖ２から、第４軸心Ｘ４、第５軸心Ｘ５、及び第３軸心Ｘ３に対して前側Ｄ１を通るように上側Ｖ１に延在している。更に、供給油路１０は、第３軸心Ｘ３に対して前側Ｄ１から、第３軸心Ｘ３に対して上側Ｖ１を通って、ドラム部材２に対して上側Ｖ１まで延在している。

【0068】

図５に示すように、供給油路１０は、ドラム部材２に対して径方向Ｒの外側から油を供給する供給口１０ａを備えている。本実施形態では、供給口１０ａは、ドラム部材２に対して上側Ｖ１であって、上下方向Ｖに沿う上下方向視でドラム部材２と重複する位置に配置されている。そのため、本実施形態では、供給油路１０の油が、供給口１０ａからドラム部材２の外周面上に滴下される。ここで、２つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が２つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。

【0069】

ドラム部材２の外周面には、径方向Ｒの内側に窪むように形成された複数の凹部２１が、周方向Ｃに分散して配置されている。本実施形態では、複数の凹部２１は、ドラム部材２における周方向Ｃの全域に亘って、等間隔で配置されている。ここで、周方向Ｃは、ドラム部材２の回転軸心（ここでは、第１軸心Ｘ１）を中心とする円周に沿う方向である。

【0070】

複数の凹部２１の少なくとも１つに、ドラム部材２を径方向Ｒに貫通する油孔２ａが形成されている。本実施形態では、１つの凹部２１に１つの油孔２ａが位置するように、全ての凹部２１に油孔２ａが形成されている。また、本実施形態では、複数の油孔２ａは、周方向Ｃに隣接する油孔２ａの軸方向Ｌの位置が互いに異なるように配置されている。

【0071】

第２オイルポンプＯＰ２は、ケース９内に貯留された油を吸引して吐出する。第２オイルポンプＯＰ２から吐出された油は、供給油路１０を介してドラム部材２の外周面に供給される。そして、ドラム部材２の外周面に供給された油は、凹部２１に溜まり、当該凹部２１に形成された油孔２ａを通って、ドラム部材２に対して径方向Ｒの内側に配置された摩擦係合部材１に供給される。本実施形態では、摩擦係合部材１に供給された油の少なくとも一部は、第２入力ギヤ軸受Ｂ５２に供給される。

【0072】

本実施形態では、ドラム部材２の内周面には、径方向Ｒの内側に突出するように形成された複数の凸部２２が周方向Ｃに分散して配置されている。図３に示すように、複数の凸部２２は、複数の摩擦係合部材１の一部（ここでは、第１部材１１）が係合可能に構成されている。

【0073】

図３及び図５に示すように、本実施形態では、複数の凹部２１のそれぞれは、径方向Ｒに沿う径方向視で、複数の凸部２２のそれぞれと重複するように配置されている。つまり、本実施形態では、複数の摩擦係合部材１の一部が係合するための複数の凸部２２を、ドラム部材２の内周面に形成することにより、当該複数の凸部２２に対応させて、ドラム部材２の外周面に複数の凹部２１を形成している。

【0074】

図示の例では、複数の凸部２２は、軸方向Ｌに延在する複数のスプライン歯である。そして、複数の第１部材１１の外周部には、複数の凸部２２に係合する複数のスプライン歯が、軸方向Ｌに延在するように周方向Ｃに分散して形成されている。こうして、複数の凸部２２と、複数の第１部材１１の外周部に形成された複数のスプライン歯とが互いに係合することにより、複数の第１部材１１がドラム部材２に対して相対回転不能であって軸方向Ｌに移動自在にドラム部材２に支持される。

【0075】

本実施形態では、第２オイルポンプＯＰ２から吐出された油は、上述したドラム部材２に加えて、図示せぬ油路を通って、第２差動軸受Ｂ４２、第２カウンタ軸受Ｂ７２、第１カウンタ軸受Ｂ７１、第６ロータ軸受Ｂ３４、及び第５ロータ軸受Ｂ３３にも供給される（図１参照）。

【0076】

また、本実施形態では、第１オイルポンプＯＰ１が駆動すると、ケース９内に貯留された油がストレーナＳＲ（図４参照）から吸入され、第１オイルポンプＯＰ１から吐出される。第１オイルポンプＯＰ１から吐出された油は、当該油を冷却するオイルクーラ（図示を省略）を経て、第１回転電機ＭＧ１の第１コイルエンド部ＣＥ１、及び第２回転電機ＭＧ２の第２コイルエンド部ＣＥ２に供給される。なお、ストレーナＳＲは、第１オイルポンプＯＰ１の駆動時に、ケース９内に貯留された油を吸入し、当該油に含まれる異物を除去する濾過器である。

【0077】

また、第１オイルポンプＯＰ１から吐出された油は、オイルクーラを経て、第２ロータ軸受Ｂ２２、及び第１ロータ軸ＲＳ１の内部に供給される。そして、第１ロータ軸ＲＳ１の内部に供給された油は、第１ロータ軸ＲＳ１を径方向Ｒに貫通する貫通孔を通って、第１ロータコアＲＣ１に供給される。

【0078】

また、第１オイルポンプＯＰ１から吐出された油は、第１入力ギヤ軸受Ｂ５１、及び入力部材Ｉの内部に形成された油路に供給される。そして、入力部材Ｉの内部に形成された油路に供給された油は、径方向Ｒの内側から複数の摩擦係合部材１に供給されると共に、第２入力ギヤ軸受Ｂ５２及び入力軸受Ｂ１１に供給される。また、第１オイルポンプＯＰ１から吐出された油は、係合装置ＣＬの作動油圧室（ピストン４を駆動するための油圧室）にも供給される。

【0079】

また、第１オイルポンプＯＰ１から吐出された油は、第２ロータギヤ軸受Ｂ６２、第１ロータギヤ軸受Ｂ６１、及び第１ロータ軸受Ｂ２１に供給される。

【0080】

以上のように、車両用駆動装置１００は、
内燃機関ＥＧに駆動連結される入力部材Ｉと、
車輪Ｗに駆動連結される出力部材Ｏと、
車輪Ｗの駆動力源として機能する回転電機としての第２回転電機ＭＧ２と、
入力部材Ｉと出力部材Ｏとの間の動力伝達を行う第１伝達系ＴＳ１と、
第２回転電機ＭＧ２と出力部材Ｏとの間の動力伝達を行う第２伝達系ＴＳ２と、
第１伝達系ＴＳ１の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置ＣＬと、
第１伝達系ＴＳ１における係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプＯＰ１と、
第２伝達系ＴＳ２を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプＯＰ２と、
第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を係合装置ＣＬに供給する供給油路１０と、を備え、
係合装置ＣＬは、それぞれが板状に形成された複数の摩擦係合部材１と、当該複数の摩擦係合部材１を径方向Ｒの外側から覆う筒状のドラム部材２と、を備え、
供給油路１０は、ドラム部材２に対して径方向Ｒの外側から油を供給する供給口１０ａを備え、
ドラム部材２の外周面には、径方向Ｒの内側に窪むように形成された複数の凹部２１が、周方向Ｃに分散して配置され、
複数の凹部２１の少なくとも１つに、ドラム部材２を径方向Ｒに貫通する油孔２ａが形成されている。

【0081】

本構成のような車両用駆動装置１００では、例えば、内燃機関ＥＧを停止させ、第２伝達系ＴＳ２を伝わる第２回転電機ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードである電動走行モードでは、係合装置ＣＬの摩擦係合部材１に差回転が発生するため、摩擦係合部材１の潤滑が必要となる。しかしながら、電動走行モードでは、第１伝達系ＴＳ１を伝わる内燃機関ＥＧの駆動力により、第１オイルポンプＯＰ１を駆動することができない。一方で、電動走行モードであっても、第２伝達系ＴＳ２を伝わる第２回転電機ＭＧ２の駆動力により、第２オイルポンプＯＰ２を駆動することができる。これにより、第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を、供給油路１０を介してドラム部材２の外周面に供給することができる。そして、ドラム部材２の外周面に供給された油は、複数の凹部２１に溜まり、それらの凹部２１の少なくとも１つに形成された油孔２ａを通って、ドラム部材２の内側に配置された摩擦係合部材１に供給される。したがって、本構成によれば、電動走行モードにおいても、係合装置ＣＬの摩擦係合部材１を適切に潤滑することができる。

【0082】

上述したように、本実施形態では、ドラム部材２の内周面には、径方向Ｒの内側に突出するように形成され、複数の摩擦係合部材１の一部が係合するための複数の凸部２２が、周方向Ｃに分散して配置され、
複数の凹部２１のそれぞれは、径方向Ｒに沿う径方向視で、複数の凸部２２のそれぞれと重複するように配置されている。

【0083】

この構成によれば、複数の摩擦係合部材１の一部が係合するための複数の凸部２２を、ドラム部材２の内周面に形成することにより、当該複数の凸部２２に対応させて、ドラム部材２の外周面に複数の凹部２１を形成することができる。したがって、ドラムの外周面に複数の凹部２１を別途形成する必要がないため、ドラム部材２の低コスト化を図り易い。

【0084】

また、本実施形態では、複数の摩擦係合部材１は、ドラム部材２の回転軸心に沿う軸方向Ｌに並ぶように配置され、
複数の油孔２ａは、周方向Ｃに隣接する油孔２ａの軸方向Ｌの位置が互いに異なるように配置されている。

【0085】

この構成によれば、軸方向Ｌに並ぶ複数の摩擦係合部材１を均等に潤滑し易い。

【0086】

また、本実施形態では、車両用駆動装置１００は、
第２回転電機ＭＧ２とは異なる第１回転電機ＭＧ１と、
第１伝達系ＴＳ１を介して入力部材Ｉからの駆動力が伝達されると共に、第２伝達系ＴＳ２を介して第２回転電機ＭＧ２からの駆動力が伝達される、出力部材Ｏとしての差動入力ギヤＧｄと、
差動入力ギヤＧｄに伝達された駆動力を一対の車輪Ｗに分配する差動歯車機構ＤＦと、を更に備え、
第１回転電機ＭＧ１は、第１伝達系ＴＳ１における係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分に駆動連結され、
第２オイルポンプＯＰ２は、差動入力ギヤＧｄにより駆動される。

【0087】

この構成によれば、係合装置ＣＬを解放状態とした場合に、内燃機関ＥＧを停止させ、第２伝達系ＴＳ２を伝わる第２回転電機ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードである電動走行モードに加えて、内燃機関ＥＧの駆動力を第１回転電機ＭＧ１に伝達して発電を行いつつ、第２回転電機ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する動作モードであるシリーズハイブリッドモードも実現することができる。
また、本構成によれば、第２オイルポンプＯＰ２が差動入力ギヤＧｄにより駆動されるため、車輪Ｗが回転している走行状態では、動作モードに関係なく、第２オイルポンプＯＰ２から油を吐出させて各部に油を供給することができる。したがって、例えば、電動走行モードやシリーズハイブリッドモードの実行中、係合装置ＣＬの摩擦係合部材１に差回転が発生する状況でも、第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を係合装置ＣＬの摩擦係合部材１に供給し、当該摩擦係合部材１を適切に潤滑することができる。

【0088】

〔その他の実施形態〕
（１）上記の実施形態では、供給油路１０が管部材を用いて形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、供給油路１０が、管部材を用いることなく、ケース９の壁部内に形成された構成としても良い。或いは、供給油路１０が、管部材を用いて形成された部分と、ケース９の壁部内に形成された部分とを含む構成としても良い。

【0089】

（２）上記の実施形態では、供給油路１０の供給口１０ａがドラム部材２に対して上側Ｖ１に配置されており、供給口１０ａからドラム部材２の外周面上に油が滴下される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、供給油路１０の供給口１０ａが、ドラム部材２に対して前側Ｄ１及び後側Ｄ２の少なくとも一方に配置され、供給口１０ａからドラム部材２に向けて油が噴射される構成としても良い。

【0090】

（３）上記の実施形態では、複数の凹部２１がドラム部材２における周方向Ｃの全域に亘って等間隔で配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、複数の凹部２１が、ドラム部材２における周方向Ｃの一部の領域にのみ配置された構成としても良い。また、複数の凹部２１が、周方向Ｃに異なる間隔で配置された構成としても良い。

【0091】

（４）上記の実施形態では、１つの凹部２１に１つの油孔２ａが位置するように、全ての凹部２１に油孔２ａが形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、１つの凹部２１に複数の油孔２ａが形成されていても良い。また、複数の凹部２１のうちの一部にのみ、油孔２ａが形成されていても良い。

【0092】

（５）なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。

【産業上の利用可能性】

【0093】

本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、入力部材と出力部材との間の動力伝達を断接する摩擦式の係合装置と、オイルポンプと、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。

【符号の説明】

【0094】

１００：車両用駆動装置、１：摩擦係合部材、２：ドラム部材、２ａ：油孔、２１：凹部、２２：凸部、１０：供給油路、１０ａ：供給口、Ｉ：入力部材、Ｏ：出力部材、ＭＧ１：第１回転電機、ＭＧ２：第２回転電機（回転電機）、ＴＳ１：第１伝達系、ＴＳ２：第２伝達系、ＣＬ：係合装置、ＯＰ１：第１オイルポンプ、ＯＰ２：第２オイルポンプ、ＥＧ：内燃機関、Ｗ：車輪、Ｌ：軸方向、Ｒ：径方向、Ｃ：周方向

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】