特開 2025-25790 車両用駆動装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025025790

(43)【公開日】2025-02-21

(54)【発明の名称】車両用駆動装置

(51)【国際特許分類】

   F16H 57/04 20100101AFI20250214BHJP

【ＦＩ】

F16H57/04 J

F16H57/04 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023130915

(22)【出願日】2023-08-10

(71)【出願人】

【識別番号】000000011

【氏名又は名称】株式会社アイシン

(71)【出願人】

【識別番号】000005326

【氏名又は名称】本田技研工業株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】519314766

【氏名又は名称】株式会社ＢｌｕＥ Ｎｅｘｕｓ

(74)【代理人】

【識別番号】110001818

【氏名又は名称】弁理士法人Ｒ＆Ｃ

(72)【発明者】

【氏名】野口 晃

(72)【発明者】

【氏名】本田 裕弥

【テーマコード（参考）】

3J063

【Ｆターム（参考）】

3J063AA01

3J063AB02

3J063AC01

3J063BA11

3J063BB02

3J063BB41

3J063BB42

3J063CD45

3J063XD03

3J063XD23

3J063XD32

3J063XD41

3J063XD48

3J063XD54

3J063XD56

3J063XD62

3J063XD72

3J063XD73

(57)【要約】

【課題】ケースの大きさに制限がある場合であっても、ストレーナ及び油圧制御装置のそれぞれの配置スペースを確保し易い車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】オイルポンプに吸引される油をろ過するストレーナ１は、油圧制御装置２との油の受け渡しのための接続口である第１接続口１ａを備え、油圧制御装置２は、第１接続口１ａに接続される第２接続口２ａを備え、ケース９は、第１ケース部９１と、当該第１ケース部９１に接合される第２ケース部９２と、を備え、ストレーナ１は、第１接続口１ａが接合方向第２側Ｊ２を向く姿勢で第１ケース部９１に固定され、油圧制御装置２は、第２接続口２ａが接合方向第１側Ｊ１を向く姿勢で第２ケース部９２に固定され、第１ケース部９１と第２ケース部９２とが接合された状態で、第１接続口１ａと第２接続口２ａとがシール部材１０を介して接続されている。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

駆動力源に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプと、
前記オイルポンプに吸引される油をろ過するストレーナと、
前記オイルポンプから吐出された油の制御を行う制御弁を備えた油圧制御装置と、
前記動力伝達機構、前記オイルポンプ、前記ストレーナ、前記油圧制御装置、及び油を収容する収容室を備えたケースと、を備え、
前記ストレーナは、前記油圧制御装置との油の受け渡しのための接続口である第１接続口を備え、
前記油圧制御装置は、前記第１接続口に接続される第２接続口を備え、
前記ケースは、第１ケース部と、前記第１ケース部に接合されて前記第１ケース部と共に前記収容室を形成する第２ケース部と、を備え、
前記第１ケース部と前記第２ケース部とが互いに接合される方向を接合方向とし、前記接合方向における前記第２ケース部に対して前記第１ケース部が配置される側を接合方向第１側とし、前記接合方向第１側とは反対側を接合方向第２側として、
前記ストレーナは、前記第１接続口が前記接合方向第２側を向く姿勢で前記第１ケース部に固定され、
前記油圧制御装置は、前記第２接続口が前記接合方向第１側を向く姿勢で前記第２ケース部に固定され、
前記第１ケース部と前記第２ケース部とが接合された状態で、前記第１接続口と前記第２接続口とがシール部材を介して接続されている、車両用駆動装置。

【請求項2】

前記動力伝達機構における動力伝達を断接する係合装置を更に備え、
前記オイルポンプは、前記動力伝達機構における前記係合装置よりも前記入力部材側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプと、前記動力伝達機構における前記係合装置よりも前記出力部材側の部分を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプと、を含み、
前記第２オイルポンプは、前記収容室に収容されるように、前記第１ケース部に固定され、
前記ストレーナは、前記収容室における前記第２オイルポンプに対して前記接合方向第１側の空間に配置されている、請求項１に記載の車両用駆動装置。

【請求項3】

前記第２オイルポンプが吐出する油を前記係合装置に供給する供給油路の少なくとも一部を構成する油路構成部材を更に備え、
前記油路構成部材が、前記第１ケース部に固定されていると共に、前記第２オイルポンプに取り付けられている、請求項２に記載の車両用駆動装置。

【請求項4】

前記出力部材の回転軸心に直交する方向を径方向として、
前記出力部材は、前記径方向に沿う径方向視で、前記第１ケース部と重複するように配置された出力ギヤであり、
前記第２オイルポンプは、前記出力ギヤに噛み合うポンプ駆動ギヤの回転によって駆動されるように構成されている、請求項２又は３に記載の車両用駆動装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、それらの間の動力伝達を行う動力伝達機構と、当該動力伝達機構を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプと、当該オイルポンプに吸引される油をろ過するストレーナと、オイルポンプから吐出された油の制御を行う制御弁を備えた油圧制御装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。

【背景技術】

【0002】

このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献１に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献１における符号を括弧内に引用する。

【0003】

特許文献１の車両用駆動装置（１）では、ストレーナ（８７ａ）から吸引された油が油圧制御装置（８６）に流れるように、ストレーナ（８７ａ）と油圧制御装置（８６）とが互いに接続されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００１－１８７５３５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１の車両用駆動装置（１）では、油圧制御装置（８６）がケース（４０）に固定され、ストレーナ（８７ａ）が油圧制御装置（８６）に固定されている（特許文献１の段落００５１参照）。このような構成では、ケース（４０）内に、ストレーナ（８７ａ）と油圧制御装置（８６）との双方を配置できる連続的な広いスペースが必要になる。そのため、ケース（４０）の大型化、延いては車両用駆動装置（１）の大型化を招いていた。

【0006】

そこで、ケースの大きさに制限がある場合であっても、ストレーナ及び油圧制御装置のそれぞれの配置スペースを確保し易い車両用駆動装置の実現が望まれる。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
駆動力源に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプと、
前記オイルポンプに吸引される油をろ過するストレーナと、
前記オイルポンプから吐出された油の制御を行う制御弁を備えた油圧制御装置と、
前記動力伝達機構、前記オイルポンプ、前記ストレーナ、前記油圧制御装置、及び油を収容する収容室を備えたケースと、を備え、
前記ストレーナは、前記油圧制御装置との油の受け渡しのための接続口である第１接続口を備え、
前記油圧制御装置は、前記第１接続口に接続される第２接続口を備え、
前記ケースは、第１ケース部と、前記第１ケース部に接合されて前記第１ケース部と共に前記収容室を形成する第２ケース部と、を備え、
前記第１ケース部と前記第２ケース部とが互いに接合される方向を接合方向とし、前記接合方向における前記第２ケース部に対して前記第１ケース部が配置される側を接合方向第１側とし、前記接合方向第１側とは反対側を接合方向第２側として、
前記ストレーナは、前記第１接続口が前記接合方向第２側を向く姿勢で前記第１ケース部に固定され、
前記油圧制御装置は、前記第２接続口が前記接合方向第１側を向く姿勢で前記第２ケース部に固定され、
前記第１ケース部と前記第２ケース部とが接合された状態で、前記第１接続口と前記第２接続口とがシール部材を介して接続されている点にある。

【0008】

この特徴構成によれば、ケースが、第１ケース部と、当該第１ケース部に接合される第２ケース部とを備えている。そして、ストレーナと油圧制御装置とが、それぞれ、第１ケース部と第２ケース部とに分かれて固定されている。これにより、ケースの大きさに制限がある場合であっても、ストレーナ及び油圧制御装置のそれぞれの配置スペースを確保し易い。
また、本特徴構成によれば、第１接続口が接合方向第２側を向く姿勢でストレーナが固定された第１ケース部と、第２接続口が前記接合方向第１側を向く姿勢で油圧制御装置が固定された第２ケース部とを接合することで、第１接続口と第２接続口とをシール部材を介して接続することができる。これにより、第１接続口と第２接続口とを接続すると共に、第１ケース部と第２ケース部とを接合する工程の簡素化を図り易い。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図

【図2】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿うスケルトン図

【図3】実施形態に係る車両用駆動装置の構成要素の位置関係を示す図

【図4】ストレーナの第１接続口と油圧制御装置の第２接続口とが接続された状態を示す断面図

【図5】ストレーナと第２オイルポンプとの位置関係を示す斜視図

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下では、実施形態に係る車両用駆動装置１００について、図面を参照して説明する。図１及び図２に示すように、車両用駆動装置１００は、入力部材Ｉと、出力部材Ｏと、動力伝達機構ＴＳと、オイルポンプＯＰと、ケース９と、を備えている。

【0011】

入力部材Ｉは、駆動力源Ｓに駆動連結されている。本実施形態では、駆動力源Ｓは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機（ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等）としての内燃機関ＥＧである。

【0012】

ここで、本願において「駆動連結」とは、２つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該２つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該２つの回転要素が１つ又は２つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。

【0013】

出力部材Ｏは、車輪Ｗ（図２参照）に駆動連結されている。動力伝達機構ＴＳは、入力部材Ｉと出力部材Ｏとの間の動力伝達を行うように構成されている。オイルポンプＯＰは、動力伝達機構ＴＳを伝わる駆動力により駆動されるように構成されている。

【0014】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第１回転電機ＭＧ１と、第２回転電機ＭＧ２と、係合装置ＣＬと、差動歯車機構ＤＦと、を更に備えている。

【0015】

第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２のそれぞれは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ（電動機）としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ（発電機）としての機能とを有している。

【0016】

係合装置ＣＬは、動力伝達機構ＴＳにおける動力伝達を断接する摩擦式のクラッチである。差動歯車機構ＤＦは、出力部材Ｏに伝達された駆動力を一対の車輪Ｗに分配するように構成されている。

【0017】

本実施形態では、オイルポンプＯＰは、動力伝達機構ＴＳにおける係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプＯＰ１と、動力伝達機構ＴＳにおける係合装置ＣＬよりも出力部材Ｏ側の部分を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプＯＰ２と、を含む。

【0018】

本実施形態では、車両用駆動装置１００が備える複数の回転部材の回転軸心として、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６が存在する。第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６は、互いに平行に配置されている。

【0019】

以下の説明では、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６のそれぞれに沿う方向を「軸方向Ｌ」とする。そして、軸方向Ｌの一方側を「軸方向第１側Ｌ１」とし、軸方向Ｌの他方側を「軸方向第２側Ｌ２」とする。また、第１軸心Ｘ１～第６軸心Ｘ６のそれぞれに直交する方向を、対応する軸心を基準とした「径方向Ｒ」とする。なお、どの軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向Ｒ」と記す場合がある。

【0020】

図１及び図３に示すように、ケース９は、第１収容室ＣＭ１を備えている。第１収容室ＣＭ１は、動力伝達機構ＴＳ及びオイルポンプＯＰを収容している。本実施形態では、第１収容室ＣＭ１は、入力部材Ｉ、出力部材Ｏ、係合装置ＣＬ（図１参照）、及び差動歯車機構ＤＦ（図１参照）を更に収容している。

【0021】

図１に示すように、本実施形態では、ケース９は、第２収容室ＣＭ２を更に備えている。第２収容室ＣＭ２は、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２を収容している。第２収容室ＣＭ２は、第１収容室ＣＭ１に対して軸方向第１側Ｌ１に配置されている。

【0022】

ケース９は、第１ケース部９１と、第２ケース部９２と、を備えている。第２ケース部９２は、第１ケース部９１に接合されて第１ケース部９１と共に第１収容室ＣＭ１を形成する。本実施形態では、第２ケース部９２が第１ケース部９１に対して軸方向第２側Ｌ２から接合されている。そして、第１ケース部９１と第２ケース部９２との軸方向Ｌの間に、第１収容室ＣＭ１が形成されている。

【0023】

本実施形態では、ケース９は、第３ケース部９３を更に備えている。第３ケース部９３は、第１ケース部９１に接合されて第１ケース部９１と共に第２収容室ＣＭ２を形成する。本実施形態では、第３ケース部９３が第１ケース部９１に対して軸方向第１側Ｌ１から接合されている。そして、第１ケース部９１と第３ケース部９３との軸方向Ｌの間に、第２収容室ＣＭ２が形成されている。

【0024】

第１ケース部９１は、隔壁部９１１と、第１側壁部９１２と、を備えている。隔壁部９１１及び第１側壁部９１２のそれぞれは、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。隔壁部９１１は、動力伝達機構ＴＳを軸方向第１側Ｌ１から覆うと共に、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２を軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。このように、隔壁部９１１は、第１収容室ＣＭ１と第２収容室ＣＭ２とを軸方向Ｌに隔てるように形成されている。第１側壁部９１２は、差動歯車機構ＤＦを軸方向第１側Ｌ１から覆うように配置されている。

【0025】

第２ケース部９２は、第２側壁部９２１と、第３側壁部９２２と、を備えている。第２側壁部９２１及び第３側壁部９２２のそれぞれは、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。第２側壁部９２１は、動力伝達機構ＴＳを軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。第３側壁部９２２は、差動歯車機構ＤＦを軸方向第２側Ｌ２から覆うように配置されている。

【0026】

第３ケース部９３は、第４側壁部９３１を備えている。第４側壁部９３１は、径方向Ｒに沿って延在するように形成されている。第４側壁部９３１は、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２を軸方向第１側Ｌ１から覆うように配置されている。

【0027】

図１に示すように、入力部材Ｉは、第１軸心Ｘ１上に配置されている。本実施形態では、入力部材Ｉは、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。そして、入力部材Ｉは、第２側壁部９２１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。また、入力部材Ｉは、入力軸受Ｂ１１を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0028】

第１回転電機ＭＧ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。第１回転電機ＭＧ１は、第１ステータＳＴ１と、第１ロータＲＴ１と、を備えている。

【0029】

第１ステータＳＴ１は、円筒状の第１ステータコアＳＣ１を備えている。第１ステータコアＳＣ１は、ケース９（ここでは、第１ケース部９１）に固定されている。

【0030】

第１ロータＲＴ１は、円筒状の第１ロータコアＲＣ１を備えている。第１ロータコアＲＣ１は、第１ステータコアＳＣ１に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第１ロータコアＲＣ１は、第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。

【0031】

第１ロータ軸ＲＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、第１ロータ軸ＲＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する筒状に形成されている。また、本実施形態では、第１ロータ軸ＲＳ１は、隔壁部９１１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。そして、第１ロータ軸ＲＳ１は、第１ロータ軸受Ｂ２１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、第１ロータ軸ＲＳ１は、第２ロータ軸受Ｂ２２を介して、第４側壁部９３１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0032】

本実施形態では、第１回転電機ＭＧ１は、インナロータ型の回転電機である。そのため、第１ロータコアＲＣ１が、第１ステータコアＳＣ１に対して径方向Ｒの内側に配置されている。また、第１ロータ軸ＲＳ１が、第１ロータコアＲＣ１に対して径方向Ｒの内側に配置されている。

【0033】

また、本実施形態では、第１回転電機ＭＧ１は、回転界磁型の回転電機である。そのため、第１ステータコアＳＣ１には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、第１ステータコアＳＣ１に対して軸方向Ｌの両側に突出した第１コイルエンド部ＣＥ１が形成されるように、第１ステータコアＳＣ１に巻装されている。また、第１ロータコアＲＣ１には、永久磁石が設けられている。

【0034】

第２回転電機ＭＧ２は、第３軸心Ｘ３上に配置されている。第２回転電機ＭＧ２は、第２ステータＳＴ２と、第２ロータＲＴ２と、を備えている。

【0035】

第２ステータＳＴ２は、円筒状の第２ステータコアＳＣ２を備えている。第２ステータコアＳＣ２は、ケース９（ここでは、第１ケース部９１）に固定されている。

【0036】

第２ロータＲＴ２は、円筒状の第２ロータコアＲＣ２を備えている。第２ロータコアＲＣ２は、第２ステータコアＳＣ２に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第２ロータコアＲＣ２は、第２ロータ軸ＲＳ２と一体的に回転するように連結されている。

【0037】

第２ロータ軸ＲＳ２は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、第２ロータ軸ＲＳ２は、隔壁部９１１を軸方向Ｌに貫通するように配置されている。また、第２ロータ軸ＲＳ２は、第２ロータコアＲＣ２と一体的に回転するように連結された第１軸部材ＲＳ２１と、当該第１軸部材ＲＳ２１と一体的に回転するように連結された第２軸部材ＲＳ２２と、を備えている。本実施形態では、第１軸部材ＲＳ２１は、第３ロータ軸受Ｂ３１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、第１軸部材ＲＳ２１は、第４ロータ軸受Ｂ３２を介して、第４側壁部９３１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、第２軸部材ＲＳ２２は、第５ロータ軸受Ｂ３３を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、第２軸部材ＲＳ２２は、第６ロータ軸受Ｂ３４を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0038】

本実施形態では、第２回転電機ＭＧ２は、インナロータ型の回転電機である。そのため、第２ロータコアＲＣ２が、第２ステータコアＳＣ２に対して径方向Ｒの内側に配置されている。また、第２ロータ軸ＲＳ２が、第２ロータコアＲＣ２に対して径方向Ｒの内側に配置されている。

【0039】

また、本実施形態では、第２回転電機ＭＧ２は、回転界磁型の回転電機である。そのため、第２ステータコアＳＣ２には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、第２ステータコアＳＣ２に対して軸方向Ｌの両側に突出した第２コイルエンド部ＣＥ２が形成されるように、第２ステータコアＳＣ２に巻装されている。また、第２ロータコアＲＣ２には、永久磁石が設けられている。

【0040】

差動歯車機構ＤＦは、第４軸心Ｘ４上に配置されている。差動歯車機構ＤＦは、差動ケースＤＣと、一対のピニオンギヤＰＧと、一対のサイドギヤＳＧと、を備えている。

【0041】

差動ケースＤＣは、一対のピニオンギヤＰＧ及び一対のサイドギヤＳＧを収容している。差動ケースＤＣは、第４軸心Ｘ４を中心として回転するように構成されている。本実施形態では、差動ケースＤＣは、第１差動軸受Ｂ４１を介して、第１側壁部９１２により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。また、差動ケースＤＣは、第２差動軸受Ｂ４２を介して、第３側壁部９２２により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0042】

一対のピニオンギヤＰＧは、第４軸心Ｘ４を基準とした径方向Ｒに間隔を空けて、互いに対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤＰＧは、差動ケースＤＣに固定されたピニオンシャフトＰＳに回転自在に支持されている。より詳細には、一対のピニオンギヤＰＧのそれぞれは、その軸心を中心として回転（自転）自在、かつ、第４軸心Ｘ４を中心として回転（公転）自在に構成されている。

【0043】

一対のサイドギヤＳＧは、ピニオンシャフトＰＳに対して軸方向Ｌの両側に分かれて配置されている。一対のサイドギヤＳＧは、一対のピニオンギヤＰＧに噛み合っている。一対のサイドギヤＳＧは、第４軸心Ｘ４を中心として回転するように構成されている。一対のサイドギヤＳＧのそれぞれは、車輪Ｗに駆動連結されたドライブシャフトＤＳと一体的に回転するように連結されている。

【0044】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第１入力ギヤＧｉ１と、第２入力ギヤＧｉ２と、第１カウンタギヤＧｃ１と、第２カウンタギヤＧｃ２と、第１ロータギヤＧｒ１と、第２ロータギヤＧｒ２と、出力ギヤＧｄと、を更に備えている。

【0045】

第１入力ギヤＧｉ１は、入力部材Ｉと一体的に回転するように連結されている。第１入力ギヤＧｉ１は、係合装置ＣＬを介して第２入力ギヤＧｉ２に連結されている。第１入力ギヤＧｉ１、第２入力ギヤＧｉ２、及び係合装置ＣＬは、第１軸心Ｘ１上に配置されている。本実施形態では、軸方向第１側Ｌ１から軸方向第２側Ｌ２に向けて、第１入力ギヤＧｉ１、係合装置ＣＬ、及び第２入力ギヤＧｉ２が記載の順に配置されている。

【0046】

本実施形態では、第１入力ギヤＧｉ１は、第１入力ギヤ軸受Ｂ５１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの内側から回転自在に支持されている。また、第２入力ギヤＧｉ２は、入力部材Ｉに対して径方向Ｒの外側に配置されている。そして、第２入力ギヤＧｉ２と入力部材Ｉとが、第２入力ギヤ軸受Ｂ５２により互いに相対回転自在に支持されている。

【0047】

第１カウンタギヤＧｃ１は、第２入力ギヤＧｉ２に噛み合っている。第２カウンタギヤＧｃ２は、出力ギヤＧｄに噛み合っている。第１カウンタギヤＧｃ１及び第２カウンタギヤＧｃ２は、第５軸心Ｘ５上に配置されている。本実施形態では、第２カウンタギヤＧｃ２は、第１カウンタギヤＧｃ１よりも小径に形成されている。また、第２カウンタギヤＧｃ２は、第１カウンタギヤＧｃ１よりも軸方向第１側Ｌ１に配置されている。

【0048】

第１カウンタギヤＧｃ１と第２カウンタギヤＧｃ２とは、カウンタ軸ＣＳを介して、互いに一体的に回転するように連結されている。カウンタ軸ＣＳは、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。本実施形態では、カウンタ軸ＣＳは、第１カウンタ軸受Ｂ７１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。更に、カウンタ軸ＣＳは、第２カウンタ軸受Ｂ７２を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0049】

第１ロータギヤＧｒ１は、第１入力ギヤＧｉ１に噛み合っている。第１ロータギヤＧｒ１は、第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。第１ロータギヤＧｒ１及び第１ロータ軸ＲＳ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。本実施形態では、第１ロータギヤＧｒ１は、第１ロータギヤ軸受Ｂ６１を介して、隔壁部９１１により径方向Ｒの内側から回転自在に支持されている。更に、第１ロータギヤＧｒ１は、第２ロータギヤ軸受Ｂ６２を介して、第２側壁部９２１により径方向Ｒの外側から回転自在に支持されている。

【0050】

第２ロータギヤＧｒ２は、第１カウンタギヤＧｃ１に噛み合っている。第２ロータギヤＧｒ２は、第２ロータ軸ＲＳ２と一体的に回転するように連結されている。第２ロータギヤＧｒ２及び第２ロータ軸ＲＳ２は、第３軸心Ｘ３上に配置されている。本実施形態では、第２ロータギヤＧｒ２は、第２ロータ軸ＲＳ２の第２軸部材ＲＳ２２と一体的に回転するように連結されている。

【0051】

出力ギヤＧｄは、径方向Ｒに沿う径方向視で、第１ケース部９１と重複するように配置されている。本実施形態では、出力ギヤＧｄは、出力部材Ｏとして機能する。また、出力ギヤＧｄは、差動ケースＤＣと一体的に回転するように連結されている。ここで、２つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が２つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。

【0052】

本実施形態では、第１入力ギヤＧｉ１、第２入力ギヤＧｉ２、第１カウンタギヤＧｃ１、及び第２カウンタギヤＧｃ２が、動力伝達機構ＴＳとして機能する。

【0053】

図１及び図２に示すように、第１オイルポンプＯＰ１は、第１ポンプロータＰＲ１を備えている。第１ポンプロータＰＲ１は、連結軸ＰＳ１を介して第１ロータ軸ＲＳ１と一体的に回転するように連結されている。連結軸ＰＳ１は、軸方向Ｌに沿って延在する軸部材である。第１ポンプロータＰＲ１及び連結軸ＰＳ１は、第２軸心Ｘ２上に配置されている。

【0054】

図２に示すように、第２オイルポンプＯＰ２は、第２ポンプロータＰＲ２を備えている。第２ポンプロータＰＲ２は、ポンプ駆動ギヤＧｐと一体的に回転するように連結されている。ポンプ駆動ギヤＧｐは、出力ギヤＧｄに噛み合っている。第２オイルポンプＯＰ２は、出力ギヤＧｄの回転によって駆動されるように構成されている。第２ポンプロータＰＲ２及びポンプ駆動ギヤＧｐは、第６軸心Ｘ６上に配置されている。

【0055】

図３に示すように、第２オイルポンプＯＰ２は、第１収容室ＣＭ１に収容されるように、第１ケース部９１に固定されている。本実施形態では、第２オイルポンプＯＰ２は、ボルト等の第３締結部材Ｆ３により、第１ケース部９１の隔壁部９１１に軸方向第２側Ｌ２から固定されている。

【0056】

以下の説明では、車両用駆動装置１００を搭載した車両が水平面上に位置している状態において、鉛直方向に沿う方向を「上下方向Ｖ」とする。そして、鉛直方向の上側を「上側Ｖ１」とし、鉛直方向の下側を「下側Ｖ２」とする。また、車両用駆動装置１００を搭載した車両が水平面上に位置している状態において、水平方向に沿う方向であって軸方向Ｌに直交する方向を「前後方向Ｄ」とする。そして、前後方向Ｄの一方側を「前側Ｄ１」とし、前後方向Ｄの他方側を「後側Ｄ２」とする。なお、上下方向Ｖ及び前後方向Ｄのそれぞれは、径方向Ｒにおける特定の一方向に一致する。

【0057】

本実施形態では、第１軸心Ｘ１、第２軸心Ｘ２、及び第６軸心Ｘ６が、第３軸心Ｘ３、第５軸心Ｘ５、及び第４軸心Ｘ４に対して後側Ｄ２に配置されている。そして、第２軸心Ｘ２に対して上側Ｖ１に第１軸心Ｘ１が配置されていると共に、第２軸心Ｘ２に対して下側Ｖ２に第６軸心Ｘ６が配置されている。また、第５軸心Ｘ５に対して上側Ｖ１に第３軸心Ｘ３が配置されていると共に、第５軸心Ｘ５に対して下側Ｖ２に第４軸心Ｘ４が配置されている。

【0058】

図４に示すように、車両用駆動装置１００は、第１ストレーナ１と、油圧制御装置２と、を備えている。第１ストレーナ１は、オイルポンプＯＰ（ここでは、第１オイルポンプＯＰ１）に吸引される油をろ過するように構成されている。油圧制御装置２は、オイルポンプＯＰ（ここでは、第１オイルポンプＯＰ１）から吐出された油の制御を行う制御弁（図示を省略）を備えた装置である。第１ストレーナ１及び油圧制御装置２は、第１収容室ＣＭ１に収容されている。

【0059】

本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第２ストレーナ４（図３参照）を更に備えている。第２ストレーナ４は、第２オイルポンプＯＰ２に吸引される油をろ過するように構成されている。第２ストレーナ４は、第１収容室ＣＭ１に収容されている。このような構成とは異なり、車両用駆動装置１００が第２ストレーナ４を備えず、第１ストレーナ１が、第２オイルポンプＯＰ２に吸引される油をろ過するように構成されていても良い。本実施形態では、第１ストレーナ１が「ストレーナ」に相当する。

【0060】

以下の説明では、第１ケース部９１と第２ケース部９２とが互いに接合される方向を「接合方向Ｊ」とする。そして、接合方向Ｊにおける第２ケース部９２に対して第１ケース部９１が配置される側を「接合方向第１側Ｊ１」とし、接合方向第１側Ｊ１とは反対側を「接合方向第２側Ｊ２」とする。本実施形態では、軸方向Ｌが接合方向Ｊに対応している。そして、軸方向第１側Ｌ１が接合方向第１側Ｊ１に対応し、軸方向第２側Ｌ２が接合方向第２側Ｊ２に対応している。

【0061】

第１ストレーナ１は、油圧制御装置２との油の受け渡しのための接続口である第１接続口１ａを備えている。第１ストレーナ１は、第１接続口１ａが接合方向第２側Ｊ２を向く姿勢で、第１ケース部９１に固定されている。本実施形態では、第１ストレーナ１は、ボルト等の第１締結部材Ｆ１により、第１ケース部９１の隔壁部９１１に接合方向第２側Ｊ２から固定されている。

【0062】

油圧制御装置２は、第１接続口１ａに接続される第２接続口２ａを備えている。油圧制御装置２は、第２接続口２ａが接合方向第１側Ｊ１を向く姿勢で、第２ケース部９２に固定されている。本実施形態では、油圧制御装置２は、上記の制御弁に連通する油路が設けられたバルブボディ２１を備えている。そして、バルブボディ２１が、ボルト等の第２締結部材Ｆ２により、第２ケース部９２の第３側壁部９２２に接合方向第１側Ｊ１から固定されている。

【0063】

第１ストレーナ１の第１接続口１ａと、油圧制御装置２の第２接続口２ａとは、第１ケース部９１と第２ケース部９２とが接合された状態で、シール部材１０を介して互いに接続されている。シール部材１０は、第１接続口１ａと第２接続口２ａとの対向面を油密状に封止する部材である。シール部材１０は、例えば、ゴム、エラストマ、樹脂等により構成されている。本実施形態では、シール部材１０は、第１ストレーナ１における第１接続口１ａを構成する部分に形成された溝部に取り付けられている。

【0064】

第１オイルポンプＯＰ１の駆動時には、ケース９内に貯留された油は、第１ストレーナ１、第１接続口１ａと第２接続口２ａとの接続部、バルブボディ２１内の油路、第１オイルポンプＯＰ１の吸入口、及び第１オイルポンプＯＰ１の吐出口を記載の順に流動して、油圧制御装置２に供給される。そして、油圧制御装置２の制御弁による制御後の油圧が、係合装置ＣＬの作動油圧室（ピストンを駆動するための油圧室）に供給される。本実施形態では、第１オイルポンプＯＰ１が吐出した油は、第１回転電機ＭＧ１及び第２回転電機ＭＧ２の冷却や各部の潤滑にも用いられる。

【0065】

以上のように、車両用駆動装置１００は、
駆動力源Ｓに駆動連結される入力部材Ｉと、
車輪Ｗに駆動連結される出力部材Ｏと、
入力部材Ｉと出力部材Ｏとの間の動力伝達を行う動力伝達機構ＴＳと、
動力伝達機構ＴＳを伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプＯＰと、
オイルポンプＯＰに吸引される油をろ過する第１ストレーナ１と、
オイルポンプＯＰから吐出された油の制御を行う制御弁を備えた油圧制御装置２と、
動力伝達機構ＴＳ、オイルポンプＯＰ、第１ストレーナ１、油圧制御装置２、及び油を収容する第１収容室ＣＭ１を備えたケース９と、を備え、
第１ストレーナ１は、油圧制御装置２との油の受け渡しのための接続口である第１接続口１ａを備え、
油圧制御装置２は、第１接続口１ａに接続される第２接続口２ａを備え、
ケース９は、第１ケース部９１と、当該第１ケース部９１に接合されて第１ケース部９１と共に第１収容室ＣＭ１を形成する第２ケース部９２と、を備え、
第１ケース部９１と第２ケース部９２とが互いに接合される方向を接合方向Ｊとし、接合方向Ｊにおける第２ケース部９２に対して第１ケース部９１が配置される側を接合方向第１側Ｊ１とし、接合方向第１側Ｊ１とは反対側を接合方向第２側Ｊ２として、
第１ストレーナ１は、第１接続口１ａが接合方向第２側Ｊ２を向く姿勢で第１ケース部９１に固定され、
油圧制御装置２は、第２接続口２ａが接合方向第１側Ｊ１を向く姿勢で第２ケース部９２に固定され、
第１ケース部９１と第２ケース部９２とが接合された状態で、第１接続口１ａと第２接続口２ａとがシール部材１０を介して接続されている。

【0066】

この構成によれば、ケース９が、第１ケース部９１と、当該第１ケース部９１に接合される第２ケース部９２とを備えている。そして、第１ストレーナ１と油圧制御装置２とが、それぞれ、第１ケース部９１と第２ケース部９２とに分かれて固定されている。これにより、ケース９の大きさに制限がある場合であっても、第１ストレーナ１及び油圧制御装置２のそれぞれの配置スペースを確保し易い。
また、本構成によれば、第１接続口１ａが接合方向第２側Ｊ２を向く姿勢で第１ストレーナ１が固定された第１ケース部９１と、第２接続口２ａが接合方向第１側Ｊ１を向く姿勢で油圧制御装置２が固定された第２ケース部９２とを接合することで、第１接続口１ａと第２接続口２ａとをシール部材１０を介して接続することができる。これにより、第１接続口１ａと第２接続口２ａとを接続すると共に、第１ケース部９１と第２ケース部９２とを接合する工程の簡素化を図り易い。

【0067】

図５に示すように、本実施形態では、第１ストレーナ１は、本体部１１と、吸入部１２と、固定部１３と、を備えている。

【0068】

本体部１１の内部には、第１接続口１ａに連通する空間が形成されている。本実施形態では、本体部１１は、中空の直方体状に形成されている。

【0069】

吸入部１２の内部には、本体部１１の内部に連通する空間が形成されている。吸入部１２は、ケース９の内部に形成された油貯留部に配置されている。吸入部１２は、第１オイルポンプＯＰ１の駆動に伴って、油貯留部の油を吸入するように構成されている。

【0070】

固定部１３は、第１締結部材Ｆ１により第１ケース部９１に固定されるように構成されている。本実施形態では、固定部１３は、本体部１１から突出するように形成されている。図示の例では、２つの固定部１３が配置され、それらの一方は本体部１１から上側Ｖ１に突出し、他方は本体部１１から後側Ｄ２に突出するように形成されている。

【0071】

図３に示すように、本実施形態では、第１ストレーナ１は、上下方向Ｖに沿う上下方向視で、第１ロータギヤＧｒ１と重複するように配置されている。この構成によれば、車両用駆動装置１００の前後方向Ｄの寸法を小さく抑え易い。

【0072】

また、本実施形態では、固定部１３は、第２軸心Ｘ２に対して後側Ｄ２に配置されている。つまり、本実施形態では、第１ストレーナ１は、第１収容室ＣＭ１における後側Ｄ２の端部に近い位置において、第１ケース部９１に固定されている。そして、吸入部１２が、本体部１１から前側Ｄ１に突出するように形成されている。この構成によれば、他の要素との干渉を回避するように第１ストレーナ１を第１ケース部９１に固定しつつ、吸入部１２を第１収容室ＣＭ１における前後方向Ｄの中央に寄せて配置することができる。これにより、車両用駆動装置１００を搭載した車両が前後方向Ｄに傾くことに伴う油面の変化の影響を受け難く、適切に吸入部１２から油を吸入することができる。

【0073】

図４及び図５に示すように、本実施形態では、第１ストレーナ１は、第１収容室ＣＭ１における第２オイルポンプＯＰ２に対して接合方向第１側Ｊ１の空間に配置されている。図５に示す例では、第１ストレーナ１の本体部１１が、第２オイルポンプＯＰ２に対して後側Ｄ２に配置されていると共に、第２オイルポンプＯＰ２よりも接合方向第１側Ｊ１に延出している。そして、第１ストレーナ１の吸入部１２が、第２オイルポンプＯＰ２よりも接合方向第１側Ｊ１であって、接合方向Ｊに沿う接合方向視で第２オイルポンプＯＰ２と重複する位置に配置されている。

【0074】

また、図３に示すように、本実施形態では、第２ストレーナ４は、第２オイルポンプＯＰ２の下部に固定されている。図３に示す例では、第１ストレーナ１の吸入部１２は、第２ストレーナ４よりも接合方向第１側Ｊ１であって、接合方向Ｊに沿う接合方向視で第２ストレーナ４と重複する位置に配置されている。

【0075】

このように、本実施形態では、車両用駆動装置１００は、
動力伝達機構ＴＳにおける動力伝達を断接する係合装置ＣＬを更に備え、
オイルポンプＯＰは、動力伝達機構ＴＳにおける係合装置ＣＬよりも入力部材Ｉ側の部分を伝わる駆動力により駆動される第１オイルポンプＯＰ１と、動力伝達機構ＴＳにおける係合装置ＣＬよりも出力部材Ｏ側の部分を伝わる駆動力により駆動される第２オイルポンプＯＰ２と、を含み、
第２オイルポンプＯＰ２は、第１収容室ＣＭ１に収容されるように、第１ケース部９１に固定され、
第１ストレーナ１は、第１収容室ＣＭ１における第２オイルポンプＯＰ２に対して接合方向第１側Ｊ１の空間に配置されている。

【0076】

この構成によれば、第１オイルポンプＯＰ１に加えて第２オイルポンプＯＰ２を備えた構成において、第２オイルポンプＯＰ２を第１ケース部９１に固定しつつ、第１収容室ＣＭ１における第２オイルポンプＯＰ２に対して接合方向第１側Ｊ１の空間を利用して第１ストレーナ１を配置することができる。これにより、車両用駆動装置１００の大型化を抑制しつつ、第１ストレーナ１の配置スペースを確保することができる。

【0077】

図３に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を係合装置ＣＬに供給する供給油路Ｐの少なくとも一部を構成する油路構成部材３を更に備えている。本実施形態では、第２オイルポンプＯＰ２から係合装置ＣＬに供給された油によって、係合装置ＣＬが潤滑される。

【0078】

油路構成部材３は、第１ケース部９１に固定されている。油路構成部材３は、供給油路Ｐが第２オイルポンプＯＰ２の吐出口に連通するように、第２オイルポンプＯＰ２に取り付けられている。本実施形態では、油路構成部材３は、第２オイルポンプＯＰ２から、第４軸心Ｘ４に対して下側Ｖ２を通るように前側Ｄ１に延在している。そして、油路構成部材３は、第４軸心Ｘ４に対して下側Ｖ２から、第４軸心Ｘ４、第５軸心Ｘ５、及び第３軸心Ｘ３に対して前側Ｄ１を通るように上側Ｖ１に延在している。更に、油路構成部材３は、第３軸心Ｘ３に対して前側Ｄ１から、第３軸心Ｘ３に対して上側Ｖ１を通って、係合装置ＣＬに対して上側Ｖ１まで延在している。こうして、本実施形態では、供給油路Ｐにより、係合装置ＣＬに上側Ｖ１から油が供給される（図３における黒塗り矢印参照）。

【0079】

このように、本実施形態では、車両用駆動装置１００は、第２オイルポンプＯＰ２が吐出する油を係合装置ＣＬに供給する供給油路Ｐの少なくとも一部を構成する油路構成部材３を更に備え、
油路構成部材３が、第１ケース部９１に固定されていると共に、第２オイルポンプＯＰ２に取り付けられている。

【0080】

この構成によれば、互いに接続される油路構成部材３と第２オイルポンプＯＰ２との双方が、第１ケース部９１に固定されている。これにより、油路構成部材３の組み付け工程の簡素化、延いては、第１ケース部９１と第２ケース部９２とを接合する工程の簡素化を図り易い。

【0081】

本実施形態では、供給油路Ｐは、ケース９に形成された油路を含む。本実施形態では、第２オイルポンプＯＰ２から吐出された油は、ケース９に形成された油路を通って、第２差動軸受Ｂ４２、第２カウンタ軸受Ｂ７２、第１カウンタ軸受Ｂ７１、第６ロータ軸受Ｂ３４、及び第５ロータ軸受Ｂ３３に供給される（図１参照）。

【0082】

図１に示すように、本実施形態では、ポンプ駆動ギヤＧｐに噛み合う、出力部材Ｏとしての出力ギヤＧｄは、径方向Ｒに沿う径方向視で、第１ケース部９１と重複するように配置されている。

【0083】

このように、本実施形態では、出力部材Ｏの回転軸心に直交する方向を径方向Ｒとして、
出力部材Ｏは、径方向Ｒに沿う径方向視で、第１ケース部９１と重複するように配置された出力ギヤＧｄであり、
第２オイルポンプＯＰ２は、出力ギヤＧｄに噛み合うポンプ駆動ギヤＧｐの回転によって駆動されるように構成されている。

【0084】

この構成によれば、径方向Ｒに沿う径方向視で出力ギヤＧｄが重複するように配置された第１ケース部９１に、出力ギヤＧｄに噛み合うポンプ駆動ギヤＧｐの回転によって駆動される第２オイルポンプＯＰ２が固定されている。これにより、第２オイルポンプＯＰ２の組み付け工程の簡素化、延いては、第１ケース部９１と第２ケース部９２とを接合する工程の簡素化を図り易い。

【0085】

〔その他の実施形態〕
（１）上記の実施形態では、車両用駆動装置１００が内燃機関ＥＧ及び回転電機ＭＧ１，ＭＧ２の駆動力により車輪Ｗを駆動する構成、つまり、車両用駆動装置１００がハイブリッド自動車用の駆動装置である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置１００が内燃機関ＥＧの駆動力のみで車輪Ｗを駆動する構成であっても良い。或いは、駆動力源Ｓが内燃機関ＥＧではなく、回転電機である構成、つまり、車両用駆動装置１００が電気自動車用の駆動装置である構成であっても良い。

【0086】

（２）上記の実施形態では、ケース９が３つのケース部（第１ケース部９１、第２ケース部９２、第３ケース部９３）が互いに接合された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース９が２つ又は４つ以上のケース部により構成されていても良い。

【0087】

（３）なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。

【産業上の利用可能性】

【0088】

本開示に係る技術は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、それらの間の動力伝達を行う動力伝達機構と、当該動力伝達機構を伝わる駆動力により駆動されるオイルポンプと、当該オイルポンプに吸引される油をろ過するストレーナと、オイルポンプから吐出された油の制御を行う制御弁を備えた油圧制御装置と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。

【符号の説明】

【0089】

１００：車両用駆動装置、１：第１ストレーナ（ストレーナ）、１ａ：第１接続口、２：油圧制御装置、２ａ：第２接続口、３：油路構成部材、９：ケース、９１：第１ケース部、９２：第２ケース部、１０：シール部材、ＣＭ１：第１収容室（収容室）、Ｉ：入力部材、Ｏ：出力部材、ＴＳ：動力伝達機構、ＯＰ：オイルポンプ、ＯＰ１：第１オイルポンプ、ＯＰ２：第２オイルポンプ、Ｇｐ：ポンプ駆動ギヤ、ＣＬ：係合装置、Ｐ：供給油路、Ｓ：駆動力源、Ｗ：車輪、Ｊ：接合方向、Ｊ１：接合方向第１側、Ｊ２：接合方向第２側、Ｒ：径方向

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】