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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025809
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】チューブステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20250214BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130952
(22)【出願日】2023-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売先一覧表記載の施設への販売、令和4年8月24日~令和5年7月31日(初回販売日) 〔刊行物等〕 自社製品カタログへの掲載、令和4年10月4日(発行日) 〔刊行物等〕 自社ウェブサイトへの掲載、https://www.jll.co.jp/medical/regulus.html(掲載アドレス)、令和4年10月26日(掲載日) 〔刊行物等〕 自社ウェブサイトへの掲載、https://jllplus.jp/product/ge/tubestent/regulus/(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/jll_wp/wp-content/uploads/2023/01/ge_regulus_ca001.pdf(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/report/regulus_3/(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/jll_wp/wp-content/uploads/2023/07/ge_regulus_03.pdf(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/report/regulus_2/(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/jll_wp/wp-content/uploads/2023/07/ge_regulus_re002.pdf(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/report/regulus_1-2/(掲載アドレス)、https://jllplus.jp/jll_wp/wp-content/uploads/2023/03/ge_regulus_re001.pdf(掲載アドレス)、令和5年6月1日(掲載日) 〔刊行物等〕 JDDW2022 FUKUOKAでの展示、令和4年10月27日~令和4年10月30日(開催日) 〔刊行物等〕 第105回 日本消化器内視鏡学会総会での展示、令和5年5月25日~令和5年5月27日(開催日)
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
(72)【発明者】
【氏名】神山 洋輝
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267AA45
4C267AA56
4C267BB05
4C267BB08
4C267BB10
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB40
4C267BB63
4C267BB70
4C267CC22
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG34
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】チューブステントデリバリーシステム1の操作性を向上させる。
【解決手段】チューブステントデリバリーシステム1は、PTFEを含む材料で構成される被膜50を有するガイドワイヤGWが通されるインナーカテーテル2と、インナーカテーテル2が通されるアウターカテーテル4と、インナーカテーテル2が通されアウターカテーテル4よりもインナーカテーテル2の先端側に配置されるチューブステント6とを備える。インナーカテーテル2は、POを含む材料で構成される。チューブステント6は、PTFEを含む材料で構成されインナーカテーテル2と対向する内層30と、内層30を覆う外層32とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ルーメンを有するインナーカテーテルであって、前記第1ルーメンにポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成される被膜を有するガイドワイヤが通されるインナーカテーテルと、
前記インナーカテーテルが通される第2ルーメンを有するアウターカテーテルと、
前記インナーカテーテルが通される第3ルーメンを有し、前記アウターカテーテルよりも前記インナーカテーテルの先端側に配置されるチューブステントと、を備え、
前記インナーカテーテルは、オレフィン系樹脂を含む材料で構成され、
前記チューブステントは、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成されて前記インナーカテーテルと対向する内層と、前記内層を覆う外層と、を有する、
チューブステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記インナーカテーテルは、支持点間距離を30mmとした2つの支持点の間に、温度24℃、押込速度10mm/分、押込量3mmでプローブを押し当てる3点曲げ試験により測定した3点曲げ強さが2.5N以上である、
請求項1に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記アウターカテーテルは、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成される、
請求項1または2に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記外層は、ポリウレタンを含む材料で構成される、
請求項1または2に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステントとしての残留チューブを胆管の狭窄部に留置するための留置チューブガイド装置(チューブステントデリバリーシステム)が開示されている。この留置チューブガイド装置は、留置チューブと、留置チューブを移動させるためのプッシャチューブと、留置チューブおよびプッシャチューブ内に挿通されるガイドカテーテルとを備えていた。そして、留置チューブおよびプッシャチューブを搭載したガイドカテーテルがガイドワイヤに沿って胆管の狭窄部に導かれ、プッシャチューブによって留置チューブが押し出されることで留置チューブが狭窄部に留置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/092782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブステントデリバリーシステムでは、ガイドワイヤに沿ってデリバリーシステムを体内に挿入する際や留置チューブを狭窄部に留置する際等に、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、留置チューブおよびプッシャチューブがそれぞれ他のいずれかの部材に対して摺動する。このため、各部材の摺動性を高めてチューブステントデリバリーシステムの操作性を向上させることが望まれる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、チューブステントデリバリーシステムの操作性を向上させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、チューブステントデリバリーシステムである。このデリバリーシステムは、第1ルーメンを有するインナーカテーテルであって、第1ルーメンにポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成される被膜を有するガイドワイヤが通されるインナーカテーテルと、インナーカテーテルが通される第2ルーメンを有するアウターカテーテルと、インナーカテーテルが通される第3ルーメンを有し、アウターカテーテルよりもインナーカテーテルの先端側に配置されるチューブステントと、を備える。インナーカテーテルは、オレフィン系樹脂を含む材料で構成される。チューブステントは、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成されてインナーカテーテルと対向する内層と、内層を覆う外層と、を有する。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、チューブステントデリバリーシステムの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るチューブステントデリバリーシステムの側面図である。
図2図2(A)は、インナーカテーテルの側面図である。図2(B)は、図2(A)のA-A線に沿った断面図である。
図3図3(A)は、アウターカテーテルの側面図である。図3(B)は、図3(A)のB-B線に沿った断面図である。
図4図4(A)は、チューブステントの側面図である。図4(B)は、図4(A)のC-C線に沿った断面図である。
図5】チューブステントの使用状態を示す模式図である。
図6】チューブステントデリバリーシステムおよびガイドワイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係るチューブステントデリバリーシステム1の側面図である。チューブステントデリバリーシステム1(以下では適宜、「デリバリーシステム1」と略称する)は、インナーカテーテル2と、アウターカテーテル4と、チューブステント6とを備える。インナーカテーテル2およびアウターカテーテル4がデリバリーデバイスを構成し、デリバリー対象であるチューブステント6がデリバリーデバイスに組み付けられて、デリバリーシステム1が構成される。
【0012】
デリバリーシステム1は、一端側が体内に挿入され、他端側が体外に配置される。以下では適宜、デリバリーシステム1の体内に挿入される側を「先端側」といい、体外に配置される側を「基端側」という。また、デリバリーシステム1を構成する各部材についても、デリバリーシステム1の先端側と同じ側をその部材の「先端側」といい、デリバリーシステム1の基端側と同じ側をその部材の「基端側」という。
【0013】
インナーカテーテル2、アウターカテーテル4およびチューブステント6は、それぞれシングルルーメン構造を有する管状部材である。なお、本実施の形態のチューブステント6は、外部からの入力がない状態で基端側が屈曲しており(図4(A)参照)、チューブステント6に挿通されたインナーカテーテル2もチューブステント6の屈曲に併せて屈曲する。しかしながら、図1では便宜的に、チューブステント6およびインナーカテーテル2が直線状に延びた状態を示している。
【0014】
インナーカテーテル2には、ガイドワイヤGWが通される(図6参照)。アウターカテーテル4およびチューブステント6には、インナーカテーテル2が通される。チューブステント6は、アウターカテーテル4よりもインナーカテーテル2の先端側に配置される。また、インナーカテーテル2の基端側には、インナーカテーテル2およびアウターカテーテル4を互いに連結する、環状の接続コネクタ8が配置される。アウターカテーテル4の基端側の一部は、挿入保護チューブ10で覆われる。インナーカテーテル2とアウターカテーテル4とが接続コネクタ8で連結され、アウターカテーテル4の先端にチューブステント6の基端が接する状態で、インナーカテーテル2はチューブステント6の先端から突出している。
【0015】
図2(A)は、インナーカテーテル2の側面図である。図2(B)は、図2(A)のA-A線に沿った断面図である。インナーカテーテル2は、長さが例えば1500~3000mm程度である。インナーカテーテル2は、ガイドワイヤGWが通される第1ルーメン12を有する。第1ルーメン12は、インナーカテーテル2を構成するチューブの内側面によって区画され、当該チューブの内部空間が第1ルーメン12となっている。
【0016】
インナーカテーテル2の先端部には、X線不透過マーカー14が配置される。インナーカテーテル2の中間部には、視認マーカー16が配置される。インナーカテーテル2の基端には、インナーコネクタ18が配置される。
【0017】
図3(A)は、アウターカテーテル4の側面図である。図3(B)は、図3(A)のB-B線に沿った断面図である。アウターカテーテル4は、長さが例えば1300~2500mm程度である。アウターカテーテル4は、インナーカテーテル2が通される第2ルーメン20を有する。第2ルーメン20は、アウターカテーテル4を構成するチューブの内側面によって区画され、当該チューブの内部空間が第2ルーメン20となっている。
【0018】
アウターカテーテル4の先端部には、X線不透過マーカー22が配置される。アウターカテーテル4の基端には、アウターコネクタ24が配置される。アウターコネクタ24は基端面に凹部を有し、この凹部にインナーコネクタ18が差し込まれる。この状態で、インナーコネクタ18およびアウターコネクタ24が接続コネクタ8で互いに連結される。接続コネクタ8は、インナーカテーテル2およびアウターカテーテル4が互いに連結された状態と、互いに切り離された状態とを切り替えることができる。また、アウターカテーテル4におけるX線不透過マーカー22よりも先端側の側壁には、側孔26が配置される。
【0019】
図4(A)は、チューブステント6の側面図である。図4(B)は、図4(A)のC-C線に沿った断面図である。チューブステント6は、長さが例えば50~300mm程度である。チューブステント6は、インナーカテーテル2が通される第3ルーメン28を有する。また、チューブステント6は、インナーカテーテル2の外側面と対向する内層30と、内層30の外側面を覆う外層32とを有する。第3ルーメン28は、内層30および外層32を構成する2層チューブの内側面によって区画され、当該チューブの内部空間が第3ルーメン28となっている。
【0020】
チューブステント6は、先端側および基端側にフラップ34を有する。先端側のフラップ34は、先端がチューブステント6の側壁に連結され、基端側に向かうにつれてチューブステント6の側壁から離間するように反り立っている。基端側のフラップ34は、基端がチューブステント6の側壁に連結され、先端側に向かうにつれてチューブステント6の側壁から離間するように反り立っている。各フラップ34が設けられた位置において、チューブステント6の内外が連通し、第3ルーメン28が外部に開放されている。一例としてフラップ34は、チューブステント6の側壁を削ぎ切りすることで形成される。
【0021】
また、チューブステント6における基端側のフラップ34よりも基端側の側壁には、側孔36が配置される。図1に示すように、アウターカテーテル4の側孔26とチューブステント6の側孔36とに連結紐38が通されることで、アウターカテーテル4およびチューブステント6が互いに連結される。また、連結紐38は、インナーカテーテル2にも括り付けられている。本実施の形態のデリバリーシステム1では、一例としてインナーカテーテル2をチューブステント6から引き抜く操作によって、連結紐38によるアウターカテーテル4およびチューブステント6の連結を解除することができる。なお、アウターカテーテル4とチューブステント6とを連結する構造および連結を解除する構造は特に限定されず、公知の構造を採用することができる。
【0022】
図5は、チューブステント6の使用状態を示す模式図である。本実施の形態のデリバリーシステム1は、ドレナージを行うべくチューブステント6を体内の目的部位に搬送するために用いられる。ドレナージの例としては胆管ドレナージや膵管ドレナージが挙げられ、この場合、デリバリーシステム1はチューブステント6を胆管や膵管に搬送する。チューブステント6が切り離される前のデリバリーシステム1は、アウターカテーテル4およびチューブステント6が基端側からこの順に並び、アウターカテーテル4の第2ルーメン20とチューブステント6の第3ルーメン28とにインナーカテーテル2が通された状態にある。この状態で、インナーカテーテル2およびアウターカテーテル4は、接続コネクタ8で連結されている。また、インナーカテーテル2、アウターカテーテル4およびチューブステント6は、連結紐38で連結されている。
【0023】
例えば胆管ドレナージの場合、胆管42内に挿入された状態にあるガイドワイヤGWが、インナーカテーテル2の第1ルーメン12に通される。デリバリーシステム1は、ガイドワイヤGWに沿いながら、内視鏡内を通って十二指腸40から胆管42の乳頭部44まで送られる。胆管42内には、胆汁の排出を阻害する狭窄部46が存在する。デリバリーシステム1が乳頭部44に到達すると、インナーカテーテル2が狭窄部46を通過するまで胆管42内に挿入される。そして、接続コネクタ8によるインナーカテーテル2およびアウターカテーテル4の連結が解除され、アウターカテーテル4の操作によってチューブステント6が胆管42の深部側に送り込まれる。チューブステント6は、先端側のフラップ34が狭窄部46を通過するまで胆管42内に挿入される。基端側のフラップ34は、十二指腸40内に配置される。
【0024】
チューブステント6が目的部位に配置された後、ガイドワイヤGWがインナーカテーテル2から引き抜かれる。また、インナーカテーテル2がチューブステント6から引き抜かれる。インナーカテーテル2の引き抜き操作により、連結紐38によるアウターカテーテル4とチューブステント6との連結が解除される。これにより、チューブステント6のみを胆管42内に留置して、インナーカテーテル2およびアウターカテーテル4を胆管42から引き抜くことができる。
【0025】
留置されたチューブステント6は、先端側のフラップ34が狭窄部46に引っかかることで胆管42から抜け落ちることが抑制される。また、基端側のフラップ34が乳頭部44に引っかかることで、全体が狭窄部46より深部側に進入することが抑制される。デリバリーシステム1におけるチューブステント6のデリバリー手順と、チューブステント6を目的部位に配置する仕組みとは公知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0026】
図6は、チューブステントデリバリーシステム1およびガイドワイヤGWの断面図である。図6には、デリバリーシステム1の軸方向に沿った断面を示している。
【0027】
ガイドワイヤGWは、芯線48と、芯線48の表面を覆う被膜50とを有する。芯線48は、タングステン、ステンレス鋼、ニッケルチタン等を含む生体適合性金属で構成される。被膜50は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む材料で構成される。好ましくは、被膜50はPTFEのみからなる。
【0028】
インナーカテーテル2は、オレフィン系樹脂(PO)を含む材料で構成される。POは、オレフィンモノマー由来の骨格を有するものであれば特に限定されず、単独重合体であってもよいし、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体であってもよい。POの好ましい例としては、ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);TPX(登録商標)等のポリメチルペンテン(PMP)が挙げられる。好ましくは、インナーカテーテル2はPOのみからなる。
【0029】
アウターカテーテル4を構成する材料は特に限定されないが、好ましくは、アウターカテーテル4はPTFEを含む材料で構成される。より好ましくは、アウターカテーテル4はPTFEのみからなる。
【0030】
チューブステント6の内層30は、PTFEを含む材料で構成される。好ましくは、内層30はPTFEのみからなる。チューブステント6の外層32を構成する材料は特に限定されないが、好ましくは、外層32はポリウレタン(PU)を含む材料で構成される。PUの好ましい例としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。好ましくは、外層32はPUのみからなる。内層30と外層32とは、例えば接着固定される。なお、チューブステントデリバリーシステム1は、公知の成形方法等を用いて製造することができる。
【0031】
PTFEは、摺動性(滑り性)の高い素材として知られている。一般的なガイドワイヤGWは、PTFEを含む被膜50で芯線48を覆うことで、インナーカテーテル2に対する摺動性の向上が図られている。これにより、インナーカテーテル2に対するガイドワイヤGWの挿抜しやすさ、およびガイドワイヤGWに対するインナーカテーテル2の挿抜しやすさを向上させることができる。
【0032】
また、本実施の形態のアウターカテーテル4は、PTFEを含む樹脂で構成されることで、外側面については内視鏡の内腔や人体の消化管に対する摺動性の向上が図られている。また、内側面についてはインナーカテーテル2に対する摺動性の向上が図られている。
【0033】
また、本実施の形態のチューブステント6は、PTFEを含む内層30で外層32の内側面を覆うことで、インナーカテーテル2に対する摺動性の向上が図られている。また、PTFEを含む内層30により、第3ルーメン28の壁面に胆汁や膵液が付着することを抑制でき、よってドレナージが阻害されることを抑制することができる。また、PUを含む外層32により、チューブステント6に適度な柔軟性を付与することができる。また、内視鏡の内腔や人体の消化管に対する摺動性も保たれている。
【0034】
また、PTFEを含む材料で内層30を構成し、PUを含む材料で外層32を構成することで、チューブステント6を劣化しにくくすることができる。また、相対的に硬度の低い外層32に相対的に硬度の高い内層30を積層することで、フラップ34の損傷を抑制することができる。好ましくは、内層30の厚みは外層32の厚みより薄い。これにより、内層30が外層32の変形に追従しやすくなるため、内層30が外層32から剥離することを抑制することができる。
【0035】
本実施の形態のインナーカテーテル2は、POを含む材料で構成されている。インナーカテーテル2は、内側面がガイドワイヤGWに対して摺動し、外側面がアウターカテーテル4およびチューブステント6に対して摺動する。したがって、他部材に対する摺動性を高めるために、PTFEやPVDF等を含む材料でインナーカテーテル2を構成しようと考えるのが一般的である。
【0036】
これに対し、本発明者らは鋭意検討を実施した結果、インナーカテーテル2をPTFEやPVDFで構成した場合は、POで構成した場合に比べて、PTFEで構成されるガイドワイヤGWの被膜50、アウターカテーテル4、およびチューブステント6の内層30に対する摺動性が低下することを突き止めた。これは、PTFEやPVDFは電気陰性度が高く負に帯電しやすいのに対し、インナーカテーテル2と摺動相手との間に介在する空気は電気陰性度が低く正に帯電しやすいことに起因すると推測される。
【0037】
つまり、インナーカテーテル2がPTFEやPVDFで構成され、摺動相手がPTFEで構成されると、それぞれが両者の間に介在する空気と強く引き合うことで、結果的に互いの摺動性の低下が引き起こされる。これに対し、PTFEやPVDFよりも電気陰性度が低く耐電しにくいPOを含む材料でインナーカテーテル2を構成することで、インナーカテーテル2と空気とが引き合う力を弱めることができる。この結果、インナーカテーテル2と摺動相手との間の摺動性を高めることができる。これにより、デリバリーシステム1の操作性を向上させることができる。
【0038】
インナーカテーテル2は、胆管42に挿入された際に狭窄部46を突破できるように、適度に剛性を有することが望まれる。これに対し、本実施の形態のインナーカテーテル2は、以下の測定条件での3点曲げ試験により測定される3点曲げ強さが2.5N以上である。より好ましくは、インナーカテーテル2は当該3点曲げ強さが4.0N以上である。したがって、インナーカテーテル2を構成する材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量のPP、または高分子量のPMPを含むことが好ましい。
【0039】
3点曲げ試験の測定条件は、以下の通りである。すなわち、第1支持点と、第1支持点から30mm離れた第2支持点とでインナーカテーテル2の中間部を支持する。インナーカテーテル2の中間部は、図1に示すようにチューブステント6およびインナーカテーテル2が直線状に延びた状態において、チューブステント6の先端付近の部分であり、一例としてチューブステント6の先端と重なる部分である。温度は24℃(室温)とする。プローブは第1支持点と第2支持点との中間点に押し当てる。プローブとインナーカテーテル2との接触長さは7mmとする。押込速度は10mm/分とする。反力を検知してからの押込量は3mmとする。インナーカテーテル2をプローブで押し込む際、インナーカテーテル2が引き込まれないように第1支持点および第2支持点において固定する。
【0040】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0041】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
第1ルーメン(12)を有するインナーカテーテル(2)であって、第1ルーメン(12)にポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成される被膜(50)を有するガイドワイヤ(GW)が通されるインナーカテーテル(2)と、
インナーカテーテル(2)が通される第2ルーメン(20)を有するアウターカテーテル(4)と、
インナーカテーテル(2)が通される第3ルーメン(28)を有し、アウターカテーテル(4)よりもインナーカテーテル(2)の先端側に配置されるチューブステント(6)と、を備え、
インナーカテーテル(2)は、オレフィン系樹脂を含む材料で構成され、
チューブステント(6)は、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成されてインナーカテーテル(2)と対向する内層(30)と、内層(30)を覆う外層(32)と、を有する、
チューブステントデリバリーシステム(1)。
[第2項目]
インナーカテーテル(2)は、支持点間距離を30mmとした2つの支持点の間に、温度24℃、押込速度10mm/分、押込量3mmでプローブを押し当てる3点曲げ試験により測定した3点曲げ強さが2.5N以上である、
第1項目に記載のチューブステントデリバリーシステム(1)。
[第3項目]
アウターカテーテル(4)は、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料で構成される、
第1項目または第2項目に記載のチューブステントデリバリーシステム(1)。
[第4項目]
外層(32)は、ポリウレタンを含む材料で構成される、
第1項目乃至第3項目のいずれかに記載のチューブステントデリバリーシステム(1)。
【符号の説明】
【0042】
1 チューブステントデリバリーシステム、 2 インナーカテーテル、 4 アウターカテーテル、 6 チューブステント、 12 第1ルーメン、 20 第2ルーメン、 28 第3ルーメン、 30 内層、 32 外層、 50 被膜、 GW ガイドワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6