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特開2025-25828コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置
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  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図1
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図2
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図3
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  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図11
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図12
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図13
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図14
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  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図16
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図17
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図18
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図19
  • 特開-コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置 図20
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025828
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130982
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】315014567
【氏名又は名称】島工業HD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155DA01
2D155GA00
2D155GB01
2D155GB13
(57)【要約】
【課題】補強部材とヒンジ孔を有するヒンジ板とを高精度に位置決めできるようにすること。
【解決手段】補強部材は断面アングル状をなしている。その補強部材の側面にはヒンジ孔16を有するヒンジ板17が固定される。補強部材を基準板40に対して位置決めした状態で、基準板40の側面にヒンジ板17を重ねる。そして、基準板40の基準孔38とヒンジ板17のヒンジ孔16に基準ピン41を挿入する。基準ピン41の外周には、基準孔38に対してヒンジ孔16の芯合わせをするための斜面47が形成される。基準孔38に対してヒンジ孔16を芯合わせした状態で、補強部材に対してヒンジ板17を溶接する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置に用いられる板状の基材と、その基材の側面に固定されるとともに、ヒンジ孔を有するヒンジ板とを治具を用いて位置決めして前記基材とヒンジ板とを固定するヒンジ板の固定方法において、
前記治具に設けられた基準部材の基準孔に対して前記基材を位置決めし、その状態で、前記ヒンジ板を前記基準部材の側面に重ねて、前記ヒンジ孔及び前記基準孔に基準ピンを挿入し、前記基準ピンの外周に形成された斜面を前記ヒンジ孔の周縁に係合させることによって、前記ヒンジ板を前記基準孔に対して位置決めし、次いで、前記基材に前記ヒンジ板の外周を溶接するコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項2】
前記基材は前記コンクリート型枠装置に用いる板材の側面に固定される請求項1に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項3】
前記板材は、前記コンクリート型枠装置のスキンプレートであり、前記基材は前記スキンプレートを補強する補強部材であり、前記ヒンジ板は、隣接する他のスキンプレート側の前記補強部材とヒンジ軸を介して連結されるものである請求項2に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項4】
前記基準部材の側面に1枚の前記ヒンジ板を重ねるとともに、前記基準孔の内周のネジに基準ピンの一端部の雄ネジを螺合する請求項3に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項5】
前記基準部材の両側面にそれぞれ前記ヒンジ板を沿わせるとともに、2つのピンとして分割形成された前記基準ピンのうちの一方のピンにおける内周のネジに対して他方のピンの雄ネジを螺合する請求項4に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項6】
前記基準部材を第1部材と第2部材とによって構成し、前記ヒンジ板の溶接後に、前記第2部材を移動させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間の斜面を利用したカム作用によって前記基準部材の厚さを薄くする請求項5に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法。
【請求項7】
トンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置において、
装置台と、
その装置台上に設けられた治具とを備えており、
前記治具は、
同装置台の上面と直角をなす面上に位置する位置決め面と、
前記位置決め面の上方においてその装置台の上面に対して直角をなす側面を有するとともに、前記装置台の上面に対して平行な軸線上に位置する基準孔を有する基準部材と、
前記基準孔に挿入される基準ピンとを有し、
その基準ピンの外周には、前記基準部材の側面に重ねられたヒンジ板のヒンジ孔の周縁に係合可能にした斜面を形成したコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定用の治具装置。
【請求項8】
前記基準部材の前記基準孔はその内周に雌ネジを有しており、前記基準ピンは前記雌ネジに螺合される雄ネジを有している請求項7に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定用の治具装置。
【請求項9】
前記基準ピンは、雄ネジを有する第1ピンと、前記雄ネジと螺合される雌ネジを有する第2ピンとを有し、前記第1ピン及び第2ピンに前記斜面を形成した請求項7に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定用の治具装置。
【請求項10】
前記基準部材は、第1部材と、その第1部材の側面に沿って移動可能に配置された第2部材とを有するとともに、前記第1部材及び前記第2部材の対接面には斜面を形成し、前記第2部材の移動による前記斜面のカム作用によって前記基準部材の厚さが変わるようにした請求項9に記載のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定用の治具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置において、ヒンジ孔を有するヒンジ板を基材に固定するようにしたヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2に示すように、トンネルTの内周の覆工コンクリートCはコンクリート型枠装置(以下、単に型枠装置という)11によって形成される。この型枠装置11は、複数のフォームを連結した鋼製のフォームユニット12を有しており、覆工コンクリートCはこのフォームユニット12によって成形される。フォームユニット12は、全体としてほぼアーチカーブの形状をなしている。フォームユニット12は、頂部に位置する天フォーム12a,その両端下部の側フォーム12b,さらにその下部のインバートフォーム12cよりなる。
【0003】
これらのフォーム12a,12b,12cは、図3図6に示す構成を備えている。すなわち、各フォーム12a,12b,12cは、それぞれ覆工コンクリートCの成形面を構成するスキンプレート14を外周側に有する。そして、スキンプレート14の内周側である裏面両端部にはそれぞれフォーム12a,12b,12c全体の補強のために断面アングル状に折り曲げられた補強部材13が固定されている。スキンプレート14の裏面側の両幅端部には側板15が固定されている。補強部材13の左右両端部の2箇所には、それぞれヒンジ孔16を有するヒンジ板17,18が溶接によって固定されている。そして、ヒンジ孔16を通るヒンジ軸19によって、隣接するフォーム12a,12b,12cが回転可能に連結される。相互に連結されるフォーム12a,12b,12cの一端側のヒンジ板17は左右位置にそれぞれ1枚ずつ、他端側のヒンジ板18は左右位置にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1枚のヒンジ板17は、2枚のヒンジ板18間に挟入される。ヒンジ板17,18は、左右両端部に設けられるだけではなく、補強部材13の左右長さが長い場合は、左右両端部に加えて、左右方向の中間位置に設けられることもある。
【0004】
図3及び図4に示すように、フォーム12a,12b,12cのスキンプレート14の上向きの端部は補強部材13の幅端部から突出する。スキンプレート14の下向きの端部は補強部材13の幅端部から後退している。そして、覆工コンクリートCを成形するためのフォームユニット12の構築状態において、隣接されたフォーム12a,12b,12cのスキンプレート14の幅端部の端面は突き合わせの当接状態となる。このとき、隣接するフォーム12a,12b,12cのスキンプレート14の表面であるコンクリート成形面が突き合わせ部において連続する曲面を形成するように連続するとともに、両スキンプレート14の端部間は補強部材13によって閉塞される。このため、隣接するスキンプレート14の突き合わせ部において覆工コンクリートCに対して段差等が形成されることなく、覆工コンクリートCが平滑に形成されるようにしている。
【0005】
しかしながら、補強部材13には歪みや湾曲が生じたり、補強部材13の屈曲部の折曲げ精度が不均一であったりすることがある。このような場合、補強部材13に固定されたヒンジ板17,18の位置精度を保つことができないことが多い。ヒンジ板17,18の位置精度が不良の状態で、ヒンジ孔16にヒンジ軸19を通すと、スキンプレート14の成形面が同一面で連続しないという結果を招くことが多い。このような場合には、覆工コンクリートCの成形面に段差等が生じたりして、その成形面の仕上げ品質が低下する。
【0006】
特許文献1には、以上の問題点を解消しようとする技術が開示されている。
この特許文献1においては、図示しない治具に対して補強部材13が位置決めされる。また治具の基準孔に挿入された基準ピンにヒンジ板17,18のヒンジ孔16を外嵌するようにしている。つまり、治具の基準孔に対して挿入された基準ピンにヒンジ板17,18のヒンジ孔16を合わせることによって、前記基準孔に対するヒンジ板17,18の位置精度が保持される。そして、その位置精度が保持されたヒンジ板17,18を、基準孔に対して位置決めされた補強部材13に対して溶接固定する。なお、ヒンジ板17,18は、基準ピンに支持された状態において、その外周の端縁が補強部材13に対してわずかの隙間を介して対向するようになっており、溶接の溶加材は、その隙間を埋めるように設けられる。
【0007】
特許文献1においては、以上のようにしてヒンジ孔16と補強部材13との間の位置関係が基準孔を基準として高精度に保たれるとしている。その結果、補強部材13に固定されたスキンプレート14がヒンジ孔16に対して定位置に配置されることが可能になる。このため、隣接するフォームユニット12のスキンプレート14間に段差等が生じることがなくなるので、スキンプレート14の成形面が同一面で連続されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-75501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1の従来の技術においては、以下の問題が生じる。すなわち、ヒンジ板17,18に対して所定の形状のヒンジ孔16を高精度に形成することは難しい。このため、基準ピンと各ヒンジ孔16との間に様々な大きさの隙間が形成されることになる。そして、基準ピンとヒンジ孔16との位置合わせ時に、不揃いの隙間分だけヒンジ板17,18が自重によって基準ピンに対して下方に位置することが多い。つまり、ヒンジ板17,18は、不揃いの隙間分だけ様々に位置ずれした状態で位置決めされて、補強部材13に溶接される。
【0010】
その結果、ヒンジ孔に挿入されたヒンジ軸19が規定の位置から外れることがある。図7(a)及び同図(c)に示すように、ヒンジ軸19が規定の位置から外れると、隣接するフォーム12a,12b,12cのスキンプレート14の端部間に段差や隙間が生じる。このような状況になると、例えば、図7(a)に2点鎖線で示すように、スキンプレート14の端部どうしが圧接して、その端部が跳ね上がるように突出する。あるいは、図7(c)に示すように、スキンプレート14の端部間に隙間が生じる。このため、図7(b)及び同図(d)に示すように、隣接するスキンプレート14の端部間の部分において覆工コンクリートCの表面に段差Caや突出したスジCbが付く可能性が高くなる。よって、平滑であることを求められる覆工コンクリートCの成形における仕上げ品質の低下を招く。
【0011】
ところで、図8に示すように、覆工コンクリートCの成形後は、フォームユニット12を成形位置から脱型する必要がある。この脱型においては、側フォーム12b及びインバートフォーム12cがヒンジ軸19を中心にして内側に退避回動されるとともに、フォームユニット12全体が下降される。この場合、コンクリート成形面に図7(b)及び同図(d)に示す段差CaやスジCbが形成されていると、フォームユニット12の下降により、段差CaやスジCbが特に天フォーム12aのスキンプレート14の端部によって掻き取られる。そうすると、掻き取られた段差CaやスジCbの部分を含めて、その下側に連続するコンクリート成形面が剥離される。その結果、覆工コンクリートCの成形面に段差CaやスジCbより大きな瑕疵が生じて、覆工コンクリートCの仕上がり品質が大きく低下することになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法においては、トンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置に用いられる板状の基材と、その基材の側面に固定されるとともに、ヒンジ孔を有するヒンジ板とを治具を用いて位置決めして前記基材とヒンジ板とを固定するヒンジ板の固定方法において、前記治具に設けられた基準部材の基準孔に対して前記基材を位置決めし、その状態で、前記ヒンジ板を前記基準部材の側面に重ねて、前記ヒンジ孔及び基準孔に基準ピンを挿入し、前記基準ピンの外周に形成された斜面を前記ヒンジ孔の周縁に係合させることによって、前記ヒンジ板を前記基準孔に対して位置決めし、次いで、前記基材に前記ヒンジ板の外周を溶接することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定用の治具装置においては、トンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置において、装置台と、その装置台上に設けられた治具とを備えており、前記治具は、同装置台の上面と直角をなす面上に位置する位置決め面と、前記位置決め面の上方においてその装置台の上面に対して直角をなす側面を有するとともに、前記装置台の上面に対して平行な軸線上に位置する基準孔を有する基準部材と、前記基準孔に挿入される基準ピンとを有し、その基準ピンの外周には、前記基準部材の側面に重ねられたヒンジ板のヒンジ孔の周縁に係合可能にした斜面を形成したことを特徴とする。
【0014】
従って、本発明においては、斜面の作用によって、ヒンジ板のヒンジ孔が治具の基準孔に対して芯合わせされた状態で位置決めされる。このため、基材を基準孔に対して位置決めしておけば、ヒンジ孔と基材とを正確に位置決めできる。本発明においては、基材がコンクリート型枠装置の例えばスキンプレートを有するフォームの補強用の補強部材として用いられる。この場合であって、隣接するフォームをヒンジ孔においてヒンジ軸で連結する場合、ヒンジ孔と補強部材との位置関係が正確であるため、隣接するスキンプレートをそれらの間に隙間や段差が生じることなく接合させることができる。このため、スキンプレートによって覆工コンクリートを高い仕上げ品質で仕上げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トンネルの覆工コンクリートを成形する場合、その仕上げ品質を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンクリート型枠装置の使用状態を示す断面図。
図2】コンクリート型枠装置の側面図。
図3】フォーム間を連結するヒンジ部分の断面図。
図4】同じくフォーム間を連結するヒンジ部分の分解断面図。
図5】ヒンジ板の部分を示すフォームの一部斜視図。
図6】別のヒンジ板の部分を示すフォームの一部斜視図。
図7】(a)はスキンプレートが突出する状態を示す断面図、(b)は覆工コンクリートに段差が生じる状態を示す断面図、(c)はスキンプレート間に隙間が生じる状態を示す断面図、(d)は覆工コンクリートに突起が生じる状態を示す断面図。
図8】フォームユニットの撤去状態を示す断面図。
図9】第1治具装置を示す斜視図。
図10】第1治具装置の治具を示す斜視図。
図11】第1治具装置の治具を示す断面図。
図12】基準ピンを示す正面図。
図13】第2治具装置を示す斜視図。
図14】第2治具装置の治具を示す斜視図。
図15】第2治具装置の基準板の分解斜視図。
図16】第2治具装置の治具の断面図。
図17】基準ピンの分解斜視図。
図18】(a)は基準板の第2板がヒンジ板の位置決め位置にある状態を示す正面図、(b)は基準板の第2板が位置決め位置から移動した状態を示す正面図、(c)は基準板の第2板がヒンジ板の位置決め位置にある状態を示す断面図、(d)は基準板の第2板が位置決め位置から移動した状態を示す断面図。
図19】スキンプレートと補強部材との位置決め状態を示す正面図。
図20】スキンプレートと別の補強部材との位置決め状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したトンネルの覆工コンクリートを形成するためのコンクリート型枠装置におけるヒンジ板の固定方法及びヒンジ板の固定用の治具装置の実施形態を図面に従って説明する。
【0018】
はじめに、断面アングル状に形成された補強部材13に対してヒンジ板17,18を位置決めするための固定用の治具装置としての第1治具装置及び第2治具装置の構成について説明する。
【0019】
〈第1治具装置の構成〉
補強部材13の両端部に対してそれぞれ1枚のヒンジ板17を位置決めするための第1治具装置31の構成について説明する。
【0020】
図9に示すように、第1治具装置31の装置台32上には板状の基材としての補強部材13がそのアングルの一辺において載置される。装置台32上の一端部位置には、位置決め部材33が固定されている。従って、位置決め部材33に補強部材13の左右方向の一端部を当てれば、その補強部材13の左右位置が決められる。位置決めされた補強部材13の両端部の近傍には、補強部材13をその一辺を下にした倒伏姿勢に保持するための保持部材34が設けられている。この保持部材34は、作業者の指示動作に従って動作する図示しないアクチュエータの作用により、補強部材13を倒伏姿勢に押圧保持する保持位置と、保持を解放する解放位置とに配置される。
【0021】
図9及び図10に示すように、装置台32の上面の間隔をおいた2箇所には治具36が配置されており、それらの治具36は、補強部材13の両端部の側面に対してそれぞれ1枚のヒンジ板17を位置決めするためのものである。治具36はベース35において装置台32に固定されている。このベース35の後側面(補強部材13側の面)は、補強部材13の幅方向の前端面を位置決めするための位置決め面35aを構成している。
【0022】
図9図11に示すように、各ベース35の上面には、1枚の支持板37が立設固定されている。その支持板37の一側面には、位置決め面35aの上方に位置する基準部材としての基準板40がボルト39によって固定されている。その基準板40には装置台32の上面と平行な軸線を有する基準孔38が透設されており、この基準孔38の内周面には雌ネジ45が形成されている。基準板40の側面は装置台32の上面と直角な面内に位置している。
【0023】
図10図12に示すように、基準孔38には基準ピン41が着脱可能に挿入される。治具36は、ベース35,支持板37,基準板40及び基準ピン41を含むものである。この基準ピン41は、一端側の大径のハンドル42,他端側の小径の雄ネジ43及びそれらの間のハンドル42より小径で雄ネジ43より大径の軸部46を有する。雄ネジ43の先端及びハンドル42の先端にはそれぞれテーパ状の斜面44,47が形成されている。基準ピン41の雄ネジ43は、前記基準板40の雌ネジ45に螺合される。斜面47は、ヒンジ孔16の周縁に係合可能である。
【0024】
〈第2治具装置の構成〉
次に、補強部材13の両端部に対してそれぞれ2枚のヒンジ板17を位置決めするための第2治具装置51の構成について説明する。
【0025】
図13図14に示すように、第2治具装置51は、第1治具装置31と同様に、一対の治具52を有するものの、治具52の構成が第1治具装置31の治具36と異なる。位置決め部材33及び保持部材34は第1治具装置31と同様な構成である。
【0026】
図14及び図15に示すように、治具52は、補強部材13の両端部の側面に対してそれぞれ2枚のヒンジ板18を相互間隔をおいて位置決めするためのものである。装置台53上に固定されたベース54には、装置台53上に倒伏状態で位置する補強部材13の前端を位置決めする位置決め面54aが形成されている。ベース54には支持板57が起立固定されている。この支持板57に基準部材としての基準板55が支持固定されている。基準板55には装置台53の上面と平行な軸線を有する基準孔56が透設されている。基準板55はその両側面が装置台53の上面に対して直角に形成されている。基準板55は、ボルト59及びナット60によって支持板57に固定された第1部材としての第1板58と、その第1板58の側面に移動可能に重ねられた第2部材としての第2板62とよりなる。
【0027】
基準板55の第2板62には上下方向に延びる長孔63が形成されており、その長孔63内を通って、第1板58のネジ孔64に螺入された段付きボルト61によって第2板62が第1板58に取付けられている。長孔63は、底部63aを有しており、段付きボルト61の頭部61aがこの底部63aに係合する。このため、第2板62は長孔63の底部63aの上下長さと段付きボルト61の段部直径との差の範囲内において上下動可能である。
【0028】
第1板58及び第2板62の対接面にはそれぞれ斜面65,66が形成されており、これらの斜面65,66のカム作用により、第2板62の上下動にともなって、基準板55の厚さが変更可能である。そして、図16図18(a)及び同図(c)に示すように、第2板62が上昇して、第1板58及び第2板62の基準孔56が合致したときに、基準板55の厚さが2枚のヒンジ板18間の間隔に一致する。
【0029】
図16及び図17に示すように、治具52の基準ピン70は、第1ピン71と、第2ピン72とを分割形成して構成されている。治具52は、ベース54,支持板57,基準板55及び基準ピン70を含むものである。第1ピン71は、一端側の大径のハンドル73、他端側の小径の雄ネジ74及びそれらの間のハンドル73より小径で雄ネジ74より大径の軸部78を有する。ハンドル73、軸部78及び雄ネジ74の各先端にはそれぞれテーパ状の斜面76,83,75が形成されている。第2ピン72は、一端側の大径のハンドル77と、他端側の小径の軸部79とを有する。ハンドル77及び軸部79の各先端には、それぞれテーパ状の斜面81,80が形成されている。軸部79の軸線上には雌ネジ82が形成されている。そして、雄ネジ74と雌ネジ82とは螺合可能である。ハンドル73,77の斜面76,81はヒンジ孔16の周縁に係合可能である。
【0030】
〈ヒンジ板の位置決め方法及び固定方法〉
次に、以上のように構成された第1,第2治具装置31,51を用いて補強部材13に対してヒンジ板17,18を位置決めするとともに、固定する方法について説明する。なお、図示はしないが、第1,第2治具装置31,51の治具36,52は、補強部材13の長さや、ヒンジ板17,18の位置の相違に対応するために、左右に位置調節可能である。
【0031】
〈第1治具装置によるヒンジ板の位置決め方法〉
図9に示すように、第1治具装置31においては、補強部材13を装置台32上に載置した状態で、その一端が位置決め部材33に規制されて、補強部材13の左右方向の位置が決められる。この状態で、補強部材13の前端をベース35の位置決め面35aに当てれば、補強部材13が治具36の基準板40の基準孔38に対して位置決めされる。そして、保持部材34により補強部材13を装置台32上にクランプ固定する。
【0032】
この状態で、図9及び図11に示すように、左右それぞれ1枚のヒンジ板17を左右の治具36の支持板37の側面に沿わせて重ねるとともに、基準板40の基準孔38と、ヒンジ板17のヒンジ孔16とを対向させる。そして、基準ピン41にヒンジ孔16が外嵌されるように、基準孔38及びヒンジ孔16に基準ピン41を挿入するとともに、基準ピン41の雄ネジ43を基準孔38の雌ネジ45に螺合させる。このようにすれば、ネジの作用によって基準ピン41と基準孔38とが芯合わせされる。
【0033】
基準孔38及びヒンジ孔16に対する基準ピン41の挿入においては、基準ピン41の先端側の斜面44がヒンジ板17のヒンジ孔16の周縁及び基準孔38の周縁に係合して、基準ピン41の挿入が案内される。基準ピン41の雄ネジ43が基準孔38の雌ネジ45に対して螺合が進むと、ヒンジ板17のヒンジ孔16の周縁に対して基準ピン41の斜面47が係合されるとともに、ヒンジ板17が斜面47によって保持される。このため、ヒンジ孔16が基準ピン41の軸部46に対して芯合わせさる。このとき、前記のように、基準ピン41が基準孔38に対して芯合わせされている。従って、ヒンジ板17のヒンジ孔16は基準ピン41を介して基準孔38に芯合わせされる。このため、ヒンジ板17は基準孔38に芯合わせされたヒンジ孔16において、同じく基準孔38に対して位置決めされた補強部材13に対して位置合わせされる。そして、この状態で、ヒンジ板17の外周を補強部材13に溶接によって固定する。
【0034】
溶接後、保持部材34によるクランプが解放されて、ヒンジ板17を有する補強部材13が装置台32上から取り上げられる。
〈第2治具装置によるヒンジ板の位置決め方法〉
図13に示すように、第2治具装置51においては、前記と同様に、装置台53上に設置された補強部材13が位置決め部材33によって左右方向における位置決めがされる。また、治具52のベース54の位置決め面54aによって前後方向における位置決めがされる。このため、補強部材13が治具52の基準板55の基準孔56に対して位置決めされる。補強部材13はこの状態で保持部材34によってクランプ固定される。次いで、図16に示すように、基準板55の両側にそれぞれ2枚のヒンジ板18が重ねられる。このとき、図18(a)及び同図(c),図16に示すように、第2板62が作業者によって上方位置に配置されることにより、第1板58及び第2板62の基準孔56が対応される。
【0035】
そして、図13及び図16に示すように、2枚のヒンジ板18のヒンジ孔16及び基準板55の基準孔56に、その両側から基準ピン70の第1ピン71及び第2ピン72が挿入されるとともに、雄ネジ74と雌ネジ82とが螺合される。なお、第1ピン71及び第2ピン72は、左右いずれから挿入されてもよい。従って、基準ピン70にヒンジ孔16が外嵌される。このとき、基準孔56と第1ピン71及び第2ピン72の軸部78,79との間の公差が小さくても、軸部78,79の先端側の斜面83,80によって軸部78,79は基準孔56内に円滑に挿入される。そして、基準ピン70と基準孔56とが芯合わせされる。
【0036】
また、第1ピン71の雄ネジ74と第2ピン72の雌ネジ82とが螺合されて、その螺合が進むと、第1ピン71及び第2ピン72の斜面76,81と各ヒンジ孔16の内縁とが係合される。そのため、2枚のヒンジ板18のヒンジ孔16が基準ピン70に対して芯合わせされるとともに、ヒンジ板18が斜面76,81によって保持される。その結果、ヒンジ板18が基準ピン70を介して基準孔56に対して位置合わせされるので、ヒンジ板18のヒンジ孔16が基準孔56に対して位置合わせされた補強部材13に対して位置決めされる。そして、この状態で、ヒンジ板18の外周が補強部材13に溶接される。
【0037】
溶接後、保持部材34によるクランプが解除されて、基準ピン70の取り外しを経て、補強部材13が装置台32上から取り上げられる。この場合、2枚のヒンジ板18を治具52から取外す際に、両ヒンジ板18が基準板55をその両側から強く把持して、基準板55からのヒンジ板18の取外しが困難になることがある。これは、補強部材13に対するヒンジ板18の溶接箇所の溶加材の量が基準板55側に多めに盛られた場合、溶加材の硬化収縮によって少なくとも一方のヒンジ板18が基準板55側に向かって傾斜しようとするためである。このような場合には、図18(b)及び同図(d)に示すように、第2板62を下方へ押すことによって移動させれば、斜面65,66のカム作用によって第2板62が第1板58側に後退して、基準板55の厚さが薄くなる。従って、ヒンジ板18を基準板55から容易に取外すことができる。
【0038】
〈補強部材とスキンプレートとの固定〉
以上のようにして、2基の補強部材13の所定位置にそれぞれ1枚のヒンジ板17,2枚のヒンジ板18が正確に取付けられる。
【0039】
次に、ヒンジ板17,18が取付けられた補強部材13を板材としてのスキンプレート14の側面(裏面)に取付けるための方法について説明する。
図19及び図20に示すように、第3治具装置91及び第4治具装置92は、前記基準ピン41,70とは異なる基準ピン93を挿入する基準孔94と、補強部材13及びスキンプレート14の端部に対する位置決め面95,96とを有する。第3治具装置91の位置決め面95,96は、スキンプレート14の端部を補強部材13の端部より突出した状態に位置決めする。第4治具装置92の位置決め面95,96は、補強部材13の端部をスキンプレート14の端部より突出した状態に位置決めする。
【0040】
そして、第3治具装置91及び第4治具装置92を用いて、補強部材13とスキンプレート14とが位置決め状態で溶接によって固定される。このため、第3治具装置91によって、スキンプレート14の端部が補強部材13の端部から突出した構造が形成される。また、第4治具装置92によって、補強部材13の端部がスキンプレート14の端部から突出した構造が形成される。
【0041】
以上のようにして、スキンプレート14とヒンジ板17,18とをヒンジ孔16を基準として高精度な位置関係で固定できる。
このため、図3に示すように、隣接するフォーム12a,12b,12cをヒンジ孔16に挿通されるヒンジ軸19で連結した状態においては、フォーム12a,12b,12cのスキンプレート14が連続する曲面を形成する。従って、隣接するスキンプレート14を段差や隙間が形成されることなく突き合わせることができる。
【0042】
〈実施形態の効果〉
従って、本実施形態では、以下の効果がある。
(1)隣接するフォーム12a,12b,12cのスキンプレート14がヒンジ軸19を基準にした正確な位置関係で位置決めされる。従って、スキンプレート14を段差や隙間が形成されることなく連続させることができる。このため、このようなフォーム12a,12b,12cよりなるフォームユニット12によって覆工コンクリートCを成形した場合、その覆工コンクリートCの成形面に図7(b)及び同図(d)に示す段差等がついたりすることがなくなる。従って、フォームユニット12を脱型する際に、覆工コンクリートCの成形面に段差等の部分からコンクリート剥離が形成されることもない。よって、覆工コンクリートCの成形における仕上げ品質を向上できる。
【0043】
(2)第2治具装置51において、ヒンジ板18の溶接後、第2板62を下方移動させることにより、基準板55を薄くすることができる。このため、2枚のヒンジ板18が治具52を強く把持するように傾斜しても、ヒンジ板18を治具52の基準板55から容易に離脱させることができる。
【0044】
〈変更例〉
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0045】
・前記実施形態では、本発明をフォームユニット12のヒンジ連結部の部分の構成において実施できるようにしたが、他の部分において実施できるようにすること。例えば、型枠装置11の骨格を形成する部材と、その部材にヒンジ連結される足場とよりなる構造材において実施すること。この場合、例えば足場の枠がヒンジを有する基材となる。
【0046】
・前記実施形態では、第1,第2治具装置31,51の治具36,52が同装置31,51の左右両端部に設けられている。ヒンジ板17,18が補強部材13の長さ方向の中間位置に設けられる場合は、治具36,52が第1,第2治具装置31,51の両端部間の中間位置にも設けられる。
【0047】
・第2治具装置51の治具52における基準ピン70の第1ピン71と第2ピン72との連結としてネジ構造ではなく、磁石を用いること。この場合には、第1ピン71及び第2ピン72のうちの一方の先端にテーパ状の凸部を、他方にその凸部と雌雄をなすテーパ状の凹部を形成する。
【0048】
・フォームユニット12のフォーム12a,12b,12cどうしを1枚のヒンジ板17のみで連結する場合は、第1治具装置31のみで本発明を実施すること。
・フォームユニット12のフォーム12a,12b,12cどうしを2枚のヒンジ板18のみで連結する場合は、第2治具装置51のみで本発明を実施すること。
【0049】
・治具36,52のベース35,54を省略して、基準板40,55を装置台32,53に単独で立てること。
【符号の説明】
【0050】
11…コンクリート型枠装置
12…フォームユニット
12a…天フォーム
12b…側フォーム
12c…インバートフォーム
13…補強部材
14…スキンプレート
16…ヒンジ孔
17,18…ヒンジ板
19…ヒンジ軸
31…第1治具装置
32…装置台
35a…位置決め面
36,52…治具
38…基準孔
41,70…基準ピン
44…斜面
43,74…雄ネジ
45,82…雌ネジ
47,65,66,76,81…斜面
51…第2治具装置
54a…位置決め面
56…基準孔
58…第1板
62…第2板
70…基準ピン
71…第1ピン
72…第2ピン
C…覆工コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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