IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光学ユニット 図1
  • 特開-光学ユニット 図2
  • 特開-光学ユニット 図3
  • 特開-光学ユニット 図4
  • 特開-光学ユニット 図5
  • 特開-光学ユニット 図6
  • 特開-光学ユニット 図7
  • 特開-光学ユニット 図8
  • 特開-光学ユニット 図9
  • 特開-光学ユニット 図10
  • 特開-光学ユニット 図11
  • 特開-光学ユニット 図12
  • 特開-光学ユニット 図13
  • 特開-光学ユニット 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025848
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20250214BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20250214BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131018
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA04
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA14
2K005CA22
2K005CA40
2K005CA44
2K005CA53
2K005CA60
5C122DA09
5C122EA59
5C122GE05
(57)【要約】
【課題】固定体に対する可動体の可動負荷を増加させることなく共振を抑制する。
【解決手段】光学モジュール12を備える可動体14と、固定体16と、ジンバル機構200と、を備え、ジンバル機構200は、脚部27として第1脚部27aと第2脚部27bとを有し、支持部20として固定体16に固定され第1脚部27aを回転可能な状態で支持する第1支持部20aと可動体14に固定され第2脚部27bを回転可能な状態で支持する第2支持部20bとを有し、脚部27と支持部20との対向範囲Rにおいて脚部27に係合部203が設けられるとともに支持部20に被係合部202が設けられ、光軸方向における対向範囲Rとオーバーラップする位置Pにダンパー部材Dの少なくとも一部が配置される光学ユニット10。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学モジュールを備える可動体と、
前記可動体を光軸方向と交差する交差方向のうちの少なくとも1方向を回転軸として回転可能な状態で保持する固定体と、
光軸方向に面する平板部と前記平板部から光軸方向に沿って延びる複数の脚部とを有する回転部材と、前記脚部と係合し前記脚部を回転可能な状態で支持する支持部と、を有するジンバル機構と、
を備え、
前記ジンバル機構は、
前記脚部として、第1脚部と第2脚部とを有し、
前記支持部として、前記固定体に固定され前記第1脚部を回転可能な状態で支持する第1支持部と、前記可動体に固定され前記第2脚部を回転可能な状態で支持する第2支持部と、を有し、
前記脚部と前記支持部とが対向する対向範囲において前記脚部に係合部が設けられるとともに前記支持部に前記係合部と係合する被係合部が設けられ、
光軸方向における前記対向範囲とオーバーラップする位置にダンパー部材の少なくとも一部が配置されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ユニットにおいて、
前記係合部は、凸部または凹部を有し、
前記被係合部は、前記係合部の凸部または凹部と係合する凹部または凸部を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の光学ユニットにおいて、
前記脚部は、前記係合部の凸部または凹部が一体的に形成されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項4】
請求項2に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持部は、前記被係合部の凹部または凸部が一体的に形成されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記ジンバル機構は、前記係合部の凸部または凹部と前記被係合部の凹部または凸部との間に前記ダンパー部材が配置されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記係合部の凸部または凹部、並びに、前記被係合部の凹部または凸部は、球面状であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記ダンパー部材は、ゲル状物質であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の光学ユニットにおいて、
前記固定体は、前記第1支持部を収容する第1ポケット構造を有し、
前記ゲル状物質は、前記第1ポケット構造内に配置されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項9】
請求項7に記載の光学ユニットにおいて、
前記可動体は、前記第2支持部を収容する第2ポケット構造を有し、
前記ゲル状物質は、前記第2ポケット構造内に配置されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記ダンパー部材は、シート状の弾性部材であることを特徴とする光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可動体と、固定体と、可動体を固定体に対して移動可能に支持するジンバル機構と、を備える様々な光学ユニットが使用されている。例えば、特許文献1には、可動体と固定体とジンバル機構とを備え、さらに、ジンバル機構の下部に可動体を原点位置に復帰させるゲル状ダンパー部材を備える光学ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の光学ユニットのような、従来の、可動体と固定体とジンバル機構とを備える光学ユニットにおいては、固定体に対して可動体を可動させた際にジンバル機構のバネ定数と可動体の質量とに応じた共振が発生し、固定体に対する可動体の移動量が大きくなる場合があった。特許文献1の光学ユニットは、ジンバル機構の下部にゲル状ダンパー部材を備えることで、好適に可動体を原点位置に復帰させることが可能であるが、共振を抑制する構成とはなっていない。なお、共振を抑制するためにジンバル機構のバネ定数を大きくするなどの手段が考えられるが、ジンバル機構のバネ定数を大きくすると固定体に対する可動体の可動負荷を増加させてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学ユニットは、光学モジュールを備える可動体と、前記可動体を光軸方向と交差する交差方向のうちの少なくとも1方向を回転軸として回転可能な状態で保持する固定体と、光軸方向に面する平板部と前記平板部から光軸方向に沿って延びる複数の脚部とを有する回転部材と、前記脚部と係合し前記脚部を回転可能な状態で支持する支持部と、を有するジンバル機構と、を備え、前記ジンバル機構は、前記脚部として、第1脚部と第2脚部とを有し、前記支持部として、前記固定体に固定され前記第1脚部を回転可能な状態で支持する第1支持部と、前記可動体に固定され前記第2脚部を回転可能な状態で支持する第2支持部と、を有し、前記脚部と前記支持部とが対向する対向範囲において前記脚部に係合部が設けられるとともに前記支持部に前記係合部と係合する被係合部が設けられ、光軸方向における前記対向範囲とオーバーラップする位置にダンパー部材の少なくとも一部が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学ユニットは、固定体に対する可動体の可動負荷を増加させることなく共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例1に係る光学ユニットの平面図である。
図2】本発明の実施例1に係る光学ユニットの斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る光学ユニットの分解斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の一部及びその周辺を表す斜視図である。
図5】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の斜視図である。
図6】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の一部を表す斜視図である。
図7】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の回転部材の斜視図である。
図8】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の支持部の斜視図である。
図9】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の一部を表す分解斜視図である。
図10】本発明の実施例1に係る光学ユニットのジンバル機構の一部を表す側面断面図である。
図11】本発明の実施例1に係る光学ユニットなどで固定体に対して可動体を移動する際の周波数と増幅値との関係を表すグラフである。
図12】本発明の実施例2に係る光学ユニットのジンバル機構の支持部の斜視図である。
図13】本発明の実施例2に係る光学ユニットのジンバル機構の一部及びその周辺の固定体の一部を表す側面断面図である。
図14】本発明の実施例2に係る光学ユニットのジンバル機構の一部及びその周辺の可動体の一部を表す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
【0009】
[実施例1]
最初に、本発明の実施例1に係る光学ユニットについて図1から図11を用いて説明する。なお、図2において、符号Lが付された一点鎖線は光軸を示し、符号L1が付された一点鎖線は光軸と交差する第1軸線を示し、符号L2が付された一点鎖線は光軸L及び第1軸線L1と交差する第2軸線L2を示している。また、各図において、Z軸方向は光軸方向であり、X軸方向は光軸と交差する方向、言い換えるとヨーイングの軸方向であり、Y軸方向は光軸と交差する方向、言い換えるとピッチングの軸方向である。
【0010】
<光学ユニットの全体構成の概略>
図1から図3を参照して、本実施例に係る光学ユニット10の構成について説明する。光学ユニット10は、光学モジュール12を備える可動体14と、Y軸方向を回転軸とする方向(ピッチング方向)及びX軸方向を回転軸とする方向(ヨーイング方向)に変位可能な状態で可動体14を保持する固定体16と、を備えている。また、可動体14をピッチング方向及びヨーイング方向に駆動する回転駆動機構18を備えている。さらに、光学ユニット10は、固定体16に対して可動体14をピッチング方向及びヨーイング方向に回転可能に支持する支持部20と、脚部27が複数設けられた平板部25を有する回転部材21と、を備えており、支持部20と回転部材21とでジンバル機構200を構成している。回転部材21は、脚部27として、第1軸線L1の両端部から光軸方向に沿って延設される第1脚部27aと、第2軸線L2の両端部から光軸方向に沿って延設される第2脚部27bと、を平板部25に有している。
【0011】
<光学モジュール>
本実施例において、光学モジュール12は略矩形筐体状に形成されており、例えばカメラ付携帯電話機やタブレット型PC等に搭載される薄型カメラ等として用いられる。光学モジュール12は、被写体側にレンズ12aを備え、矩形筐体状のハウジング12bの内部に撮像を行うための光学機器等が内蔵されている。本実施例における光学ユニット10は、一例として、光学モジュール12に生じたピッチングの振れ(Y軸方向を回転軸とする回動方向の振れ)及びヨーイングの振れ(X軸方向を回転軸とする回動方向の振れ)の補正を行うアクチュエーターを内蔵し、ピッチングの振れの補正及びヨーイングの振れの補正が可能な構成となっている。
【0012】
なお、本実施例において、光学ユニット10は、ピッチングの振れ及びヨーイングの振れの補正が可能な構成としたが、このような構成に限定されない。例えば、ピッチングの振れ及びヨーイングの振れのいずれか一方のみの補正が可能な構成でもよい。
【0013】
<撮像素子>
図3で表されるように、光学モジュール12は、被写体側とは反対側に撮像素子50を備えている。そして、撮像素子50には、第1フレキシブル配線基板51aが接続されている。ここで、本実施例の撮像素子50は、不図示の接続部を有し、該接続部に第1フレキシブル配線基板51aが接続されている。
【0014】
<可動体>
図1から図3において、可動体14は、光学モジュール12と、ホルダ枠22と、磁石24A及び24Bとを備えている。ホルダ枠22は、光学モジュール12のレンズ12aが設けられる前面(被写体側の面)と、反対側の後面を除く、残りの4面を取り囲むように設けられる矩形枠状の部材として構成されている。本実施例のホルダ枠22は、一例として光学モジュール12を着脱可能に構成されている。ホルダ枠22において固定体16と対向する2面を利用して、ピッチング及びヨーイングの補正用の磁石24A及び24Bがこれらの外面に取り付けられている。なお、図3においては、磁石24A及び24Bの設けられる位置が分かり易いようにホルダ枠22とは離れた位置にある状態で磁石24A及び24Bを表しているが、磁石24A及び24Bはホルダ枠22に取り付けられている。
【0015】
<固定体>
図1から図3において、固定体16は、固定枠28と、コイル32A及び32Bと、を備えている。本実施例において、固定枠28は、可動体14を被写体側で囲う第1前面カバー部28aと、ホルダ枠22の4面を囲う側面カバー部28bと、被写体側に設けられ第1フレキシブル配線基板51aを載置する第2前面カバー部28cと、被写体側とは反対側を覆う後面カバー部28dと、から構成されている。なお、図3においては、コイル32A及び32Bの磁石24A及び24Bに対する位置が分かり易いように側面カバー部28bとは離れた位置にある状態でコイル32A及び32Bを表しているが、コイル32A及び32Bは側面カバー部28bに取り付けられている。コイル32A及び32Bは、第2フレキシブル配線基板51bと接続されている。
【0016】
図3で表されるように、本実施例において可動体14が固定体16内に配置された状態において、磁石24Aとコイル32A、磁石24Bとコイル32B、は対向状態となる。また、本実施例において、磁石24Aとコイル32Aとの対、磁石24Bとコイル32Bとの対は、回転駆動機構18を構成している。回転駆動機構18により、可動体14のピッチング及びヨーイングの補正が行われる。なお、本実施例において、コイル32A及びコイル32Bは一例として巻線コイルとして構成されているが、コイルをパターンとして基板配線内に取り込んだパターン基板(コイル基板)としてもよい。
【0017】
また、ピッチング及びヨーイングの補正は以下のように行われる。光学ユニット10にピッチング方向とヨーイング方向の両方向又はいずれか一方向の振れが発生すると、不図示の振れ検出センサ(ジャイロスコープ)によって振れを検出し、その結果に基づいて回転駆動機構18を駆動させる。その後、磁気センサー(ホール素子)などを用いて、光学ユニット10の振れを精度よく回転駆動機構18がその振れを補正するように作用する。即ち、光学ユニット10の振れを打ち消す方向に可動体14を動かすように各コイル32A及び32Bに電流が流され、これにより振れが補正される。
【0018】
本実施例の光学ユニット10においては、可動体14を固定体16に対して、第1軸線L1と第2軸線L2を回転軸として、回転させる回転駆動機構18を備えている。第1軸線L1と第2軸線L2での回転の複合によりピッチングの軸方向及びヨーイングの軸方向に回転する。なお、本明細書における「回転」とは、360°回転することを要せず、回転方向に揺動する場合を含む意味である。
【0019】
なお、振れを補正する動作のための駆動源としては、回転駆動機構18のようなコイル32A及び32Bと、磁石24A及び24Bと、の各対により構成されるボイスコイルモーターに限定されない。他の駆動源としてステッピングモーターやピエゾ素子等を利用したものを使用することも可能である。
【0020】
次に、図4から図11を参照して、本実施例の光学ユニット10の要部であるジンバル機構200について詳細に説明する。なお、本実施例の光学ユニット10の図4から図10、並びに、後述する実施例2の光学ユニット10の図12から図14においては、第1支持部20aによる第1脚部27aの支持構成を表しているが、第2支持部20bによる第2脚部27bの支持構成も同様の構成である。
【0021】
<ジンバル機構>
ジンバル機構200は、金属製平板材料を折り曲げることによって形成されるバネ性を兼ね備えた回転部材21と、回転部材21を支持する支持部20と、を有する。回転部材21は、図5及び図7で表されるように、平板部25を有し、平板部25の四方のコーナー部から被写体側とは反対側に光軸方向に略90°折り曲げられて形成される、2つの第1脚部27aと、2つの第2脚部27bと、を備えることによって構成されている。2つの第1脚部27a及び2つの第2脚部27bのいずれにも、外側方向O(図7参照)とは反対側の内側方向に向けて凹む凹部203が設けられている。なお、第1脚部27aと第2脚部27bについては、必ずしもその全部が板状でなくてもよく、その一部のみを板状に形成してバネ性を発揮させるようにしてもよい。本実施例の回転部材21は、このような構成となっていることで、外側方向Oに向けて与圧を与えることが可能な構成となっている。
【0022】
支持部20は、可動体14を固定体16に対して、第1軸線L1と第2軸線L2を回転軸として、回動可能に支持する。図5で表されるように、支持部20としては、第1脚部27aを支持する2つの第1支持部20aと、第2脚部27bを支持する2つの第2支持部20bと、を有している。そして、第1支持部20aは固定体16の側面カバー部28bにおける矩形枠状部分の4隅のうちの対向する2か所に配置され、第2支持部20bは矩形枠状の可動体14のホルダ枠22の4隅にうちの対向する2か所に配置される。すなわち、第1支持部20aは固定体16に固定され、第2支持部20bは可動体14に固定される。なお、側面カバー部28bにおける矩形枠状部分と矩形枠状の可動体14とは4隅の位置が揃うように配置され、第1支持部20a及び第2支持部20bは該4隅に1つずつ配置される。
【0023】
なお、図5などで表されるように、本実施例のジンバル機構200は、支持部20として第1支持部20aと第2支持部20bとを有する。ここで、第1支持部20aと第2支持部20bとは同様の構成をしている。具体的には、図8などで表されるように、支持部20は、第1支持部20a及び第2支持部20bともに、側板部211と、側板部211に形成された凸部202(球体202A)と、床板部210と、突出部201と、を有している。そして、各々の支持部20においては、金属製の側板部211に形成された丸孔に金属製の球体202Aが溶接されることで凸部202が構成されている。
【0024】
<支持機構による回転部材の支持構成>
図7及び図10などで表されるように第1脚部27aには球凹面B1が形成される凹部203が設けられ、図8及び図10などで表されるように第1支持部20aには球凸面B2が形成される凸部202が設けられ、球凹面B1と球凸面B2とが当接することにより第1脚部27aは第1支持部20aに支持されている。なお、第1脚部27aと第2脚部27bとは同様の構成であり第1支持部20aと第2支持部20bとは同様の構成であるので、第2脚部27bには球凹面B1が形成される凹部203が設けられ、第2支持部20bには球凸面B2が形成される凸部202が設けられ、球凹面B1と球凸面B2とが当接することにより第2脚部27bは第2支持部20bに支持されている。そして、2つの第1脚部27aの各々及び2つの第2脚部27bの各々は、外側方向Oに向けて与圧がかかる構成となっているので、該与圧により、各球凹面B1は対応する各々の球凸面B2に対して押圧し、第1脚部27a及び第2脚部27bは、対応する第1支持部20a及び第2支持部20bに支持される。
【0025】
また、本実施例の固定体16は第1支持部20aを固定する固定部127を有し、本実施例の可動体14は第2支持部20bを固定する固定部227を有する。固定部127と固定部227とは同様の構成をしており、図4で表されるように、光軸方向(Z軸方向)に沿って脚部27に取り付けられた支持部20を挿入して固定する構成となっている。なお、図6で表されるように、支持部20による脚部27の支持カ所のいずれにおいても、脚部27は支持部20に対して揺動方向Sに揺動可能な状態で支持されている。
【0026】
ここで、一旦まとめると、本実施例の光学ユニット10は、光学モジュール12を備える可動体14と、可動体14を光軸方向(Z軸方向)と交差する交差方向のうちの少なくとも1方向(X軸方向及びY軸方向)を回転軸として回転可能な状態で保持する固定体16と、を備えている。さらに、本実施例の光学ユニット10は、光軸方向に面する平板部25と平板部25から光軸方向に沿って延びる複数の脚部27とを有する回転部材21と、脚部27と係合し脚部27を回転可能な状態で支持する支持部20と、を有するジンバル機構200を備えている。ここで、ジンバル機構200は、脚部27として第1脚部27aと第2脚部27bとを有し、支持部20として固定体16に固定され第1脚部27aを回転可能な状態で支持する第1支持部20aと、可動体14に固定され第2脚部27bを回転可能な状態で支持する第2支持部20bと、を有している。
【0027】
そして、本実施例の光学ユニット10においては、図10で表されるように、ジンバル機構200は、脚部27と支持部20とが対向する対向範囲Rにおいて脚部27に係合部としての凹部203が設けられるとともに支持部20に係合部203と係合する被係合部としての凸部202が設けられている。さらに、図10で表されるように、光軸方向における対向範囲Rとオーバーラップする位置Pにダンパー部材Dとしての役割をするゲル状物質が配置されている。
【0028】
このように、光軸方向における対向範囲Rとオーバーラップする位置Pにダンパー部材Dの少なくとも一部が配置されていることで、固定体16に対して可動体14を移動させる際の共振を抑制することができる。また、ダンパー部材Dとして、光学ユニット10の使用形態などに合わせて粘弾性などを調整することで、固定体16に対する可動体14の可動負荷を増加させることを抑制することもできる。
【0029】
ここで、図11は、本実施例の光学ユニット10における固定体16に対して可動体14を移動する際の周波数と増幅値との関係(ゲル状物質有り)と、本実施例の光学ユニット10からゲル状物質を取り除いた比較例の光学ユニット10における固定体16に対して可動体14を移動する際の周波数と増幅値との関係(ゲル状物質無し)と、を比較して表すグラフである。図11は、理想的には、周波数を上げていくことで共振点での周波数までは一定の増幅値となり、共振点での周波数以降は増幅値が徐々に低下することを想定したグラフである。比較例の光学ユニット10においては、共振点での周波数において増幅値が大きくなる(固定体16に対する可動体14の意図しない移動量が大きくなる)が、本実施例の光学ユニット10においては、共振点での周波数においても増幅値の増大量が小さくなっている。すなわち、本実施例の光学ユニット10においては、固定体16に対して可動体14を移動させる際の共振を抑制していることが示されている。
【0030】
なお、本実施例の光学ユニット10においては、ダンパー部材Dは、ゲル状物質である。ここで、ゲル状物質とは、流動性がなく、ダンパー部材Dを配置させた際に重力の影響により一部が流動してこぼれ落ちるなどして無くならない程度の粘弾性を少なくとも有する物質を意味する。このため、流動性がある液状のオイルなどは含まない意味である。ダンパー部材Dとしてゲル状物質を使用することで、光学ユニット10の使用形態などに合わせて粘弾性などを調整しやすく、安価にダンパー部材Dを構成することができる。
【0031】
ただし、ダンパー部材Dは、ゲル状物質に限定されない。例えば、ダンパー部材Dとしてシート状の弾性部材を使用してもよい。ダンパー部材Dとしてシート状の弾性部材を使用することで、ダンパー部材Dを所望の位置に配置しやすくなる。
【0032】
また、上記のように、本実施例の光学ユニット10では、脚部27に設けられる係合部は凹部203であり、支持部20に設けられる被係合部は凹部203と係合する凸部202である。このように、係合部が凸部または凹部を有し、被係合部が係合部の凸部または凹部と係合する凹部または凸部を有する構成とすることが好ましい。固定体16または可動体14に固定される支持部20と、回転部材21の脚部27と、をジンバル機構200のバネ圧などを利用して簡単かつ好適に係合させることができるためである。なお、本実施例では、脚部27に設けられる係合部が凹部203であり支持部20に設けられる被係合部が凸部202であるが、脚部27に設けられる係合部を凸部として支持部20に設けられる被係合部を凹部としてもよい。
【0033】
また、図9及び図10で表されるように、本実施例の光学ユニット10では、ジンバル機構200は、脚部27に設けられる係合部の凹部203と支持部20に設けられる被係合部の凸部202との間にダンパー部材Dが配置されている。このように、脚部27に設けられる係合部の凸部または凹部と支持部20に設けられる被係合部の凹部または凸部との間にダンパー部材Dが配置されることが好ましい。このような位置にダンパー部材Dが配置されることで、固定体16に対して可動体14を移動させる際の固定体16に対する可動体14の可動負荷を増加させることを特に効果的に抑制しつつ、共振を特に効果的に抑制することができるためである。
【0034】
また、図10などで表されるように、本実施例の光学ユニット10では、脚部27に設けられる係合部の凹部203と支持部20に設けられる被係合部の凸部202とは、球凹面B1と球凸面B2とにおいて当接する。このように、脚部27に設けられる係合部の凸部または凹部、並びに、支持部20に設けられる被係合部の凹部または凸部は、球面状であることが好ましい。固定体16に対して可動体14を移動させる際の固定体16に対する可動体14の可動負荷を増加させることを特に効果的に抑制することができるためである。
【0035】
[実施例2]
次に、実施例2の光学ユニット10について図12から図14を用いて説明する。ここで、図12は、実施例1の光学ユニット10における図8に対応する図である。なお、上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。本実施例の光学ユニット10は、下記での説明箇所以外は実施例1の光学ユニット10と同様の構成であり、実施例1の光学ユニット10と同様の特徴を有する。
【0036】
実施例1の光学ユニット10においては、支持部20は、平板状の側板部211に形成された丸孔に球体202Aが溶接されることで凸部202が構成されていた。一方、本実施例の光学ユニット10においては、図12から図14で表されるように、平板状の側板部211の一部を変形させて半円形の突出部202Bを形成することで凸部202が構成されている。
【0037】
別の表現をすると、本実施例の光学ユニット10では、支持部20は、被係合部である凸部202が側板部211と一体的に形成されている。このように、支持部20に設けられる被係合部の凹部または凸部が支持部20の構成部材と一体的に形成されることで、被係合部の凹部または凸部を簡単に形成することができる。なお、実施例1の光学ユニット10とともに本実施例の光学ユニット10においては、側板部211と床板部210と突出部201とが一体的に構成されている。このような構成とすることで支持部20を簡単に形成することができる。
【0038】
一方、本実施例の光学ユニット10の回転部材21は実施例1の光学ユニット10の回転部材21と同様の構成であるが、実施例1の光学ユニット10とともに本実施例の光学ユニット10においては、各々の脚部27において、係合部の凹部が脚部27と一体的に形成されている。このように、係合部の凸部または凹部が脚部27と一体的に形成されることで、係合部の凸部または凹部を簡単に形成することができる。なお、実施例1の光学ユニット10とともに本実施例の光学ユニット10においては、平板部25と脚部27とが一体的に構成されている。このような構成とすることで回転部材21を簡単に形成することができる。
【0039】
また、図13で表されるように、本実施例の光学ユニット10において、固定体16は、固定部127が第1支持部20aを収容する第1ポケット構造127aを構成しており、ダンパー部材Dとしてのゲル状物質は、第1ポケット構造127a内に配置されている。このように、ゲル状物質が第1ポケット構造127a内に配置されることで、ゲル状物質が千切れて飛散することなどを抑制することができる。なお、ポケット構造とは、部材を進退可能な開口を有し、進退方向の先端側及び進退方向と交差する方向が閉じている構造を意味する。
【0040】
一方、図14で表されるように、本実施例の光学ユニット10において、可動体14は、固定部227が第2支持部20bを収容する第2ポケット構造227aを構成しており、ダンパー部材Dとしてのゲル状物質は、第2ポケット構造227a内に配置されている。このように、ゲル状物質が第2ポケット構造227a内に配置されることで、ゲル状物質が千切れて飛散することなどを抑制することができる。
【0041】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0042】
最後に、本発明について包括的に以下に記載する。
(1)
光学モジュールを備える可動体と、前記可動体を光軸方向と交差する交差方向のうちの少なくとも1方向を回転軸として回転可能な状態で保持する固定体と、光軸方向に面する平板部と前記平板部から光軸方向に沿って延びる複数の脚部とを有する回転部材と、前記脚部と係合し前記脚部を回転可能な状態で支持する支持部と、を有するジンバル機構と、を備え、前記ジンバル機構は、前記脚部として、第1脚部と第2脚部とを有し、前記支持部として、前記固定体に固定され前記第1脚部を回転可能な状態で支持する第1支持部と、前記可動体に固定され前記第2脚部を回転可能な状態で支持する第2支持部と、を有し、前記脚部と前記支持部とが対向する対向範囲において前記脚部に係合部が設けられるとともに前記支持部に前記係合部と係合する被係合部が設けられ、光軸方向における前記対向範囲とオーバーラップする位置にダンパー部材の少なくとも一部が配置されることを特徴とする光学ユニット。
【0043】
(2)
上記(1)に記載の光学ユニットにおいて、前記係合部は、凸部または凹部を有し、前記被係合部は、前記係合部の凸部または凹部と係合する凹部または凸部を有することを特徴とする光学ユニット。
【0044】
(3)
上記(2)に記載の光学ユニットにおいて、前記脚部は、前記係合部の凸部または凹部が一体的に形成されることを特徴とする光学ユニット。
【0045】
(4)
上記(2)または(3)に記載の光学ユニットにおいて、前記支持部は、前記被係合部の凹部または凸部が一体的に形成されることを特徴とする光学ユニット。
【0046】
(5)
上記(2)から(4)のいずれか1つに記載の光学ユニットにおいて、前記ジンバル機構は、前記係合部の凸部または凹部と前記被係合部の凹部または凸部との間に前記ダンパー部材が配置されることを特徴とする光学ユニット。
【0047】
(6)
上記(2)から(5)のいずれか1つに記載の光学ユニットにおいて、前記係合部の凸部または凹部、並びに、前記被係合部の凹部または凸部は、球面状であることを特徴とする光学ユニット。
【0048】
(7)
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の光学ユニットにおいて、前記ダンパー部材は、ゲル状物質であることを特徴とする光学ユニット。
【0049】
(8)
上記(7)に記載の光学ユニットにおいて、前記固定体は、前記第1支持部を収容する第1ポケット構造を有し、前記ゲル状物質は、前記第1ポケット構造内に配置されることを特徴とする光学ユニット。
【0050】
(9)
上記(7)または(8)に記載の光学ユニットにおいて、前記可動体は、前記第2支持部を収容する第2ポケット構造を有し、前記ゲル状物質は、前記第2ポケット構造内に配置されることを特徴とする光学ユニット。
【0051】
(10)
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の光学ユニットにおいて、前記ダンパー部材は、シート状の弾性部材であることを特徴とする光学ユニット。
【符号の説明】
【0052】
10…光学ユニット、12…光学モジュール、12a…レンズ、12b…ハウジング、14…可動体、16…固定体、18…回転駆動機構、20…支持部、20a…第1支持部、20b…第2支持部、21…回転部材、22…ホルダ枠、24A…磁石、24B…磁石、25…平板部、27…脚部、27a…第1脚部、27b…第2脚部、28…固定枠、28a…第1前面カバー部、28b…側面カバー部、28c…第2前面カバー部、28d…後面カバー部、32A…コイル、32B…コイル、50…撮像素子、51a…第1フレキシブル配線基板、51b…第2フレキシブル配線基板、127…固定部、127a…第1ポケット構造、200…ジンバル機構、201…突出部、202…凸部(被係合部)、202A…球体、202B…突出部、203…凹部(係合部)、210…床板部、211…側板部、227…固定部、227a…第2ポケット構造、B1…球凹面、B2…球凸面、D…ダンパー部材、L…光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14