(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025880
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コールドヘッドシリンダの昇温補助具および昇温方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/14 20060101AFI20250214BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F25B9/14 510B
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131089
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(57)【要約】
【課題】コールドヘッドシリンダの適正な昇温に役立つコールドヘッドシリンダの昇温補助具および昇温方法を提供する。
【解決手段】コールドヘッドシリンダの昇温補助具60が提供される。昇温補助具60は、加熱器61を備え、コールドヘッドシリンダに挿入可能な本体62と、加熱器61よりも本体62の先端側に取り付けられた温度センサ63と、を備える。温度センサ63は、本体62がコールドヘッドシリンダに挿入されたとき、加熱器61よりもコールドヘッドシリンダの底面に近接するように、本体62に取り付けられていてもよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドヘッドシリンダの昇温補助具であって、
加熱器を備え、コールドヘッドシリンダに挿入可能な本体と、
前記加熱器よりも前記本体の先端側に取り付けられた温度センサと、を備えることを特徴とする昇温補助具。
【請求項2】
前記温度センサは、前記本体が前記コールドヘッドシリンダに挿入されたとき、前記加熱器よりも前記コールドヘッドシリンダの底面に近接するように、前記本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の昇温補助具。
【請求項3】
前記加熱器は、温風発生器からの温風を吹き出すように構成された温風吹出口を備え、
前記温風吹出口は、前記温度センサから逸れるように前記温風を方向付けるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の昇温補助具。
【請求項4】
前記温風吹出口は、前記本体が前記コールドヘッドシリンダに挿入されたとき、前記コールドヘッドシリンダの側面に向けて前記温風を方向付けるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の昇温補助具。
【請求項5】
前記温度センサは、衝撃吸収材を介して前記本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の昇温補助具。
【請求項6】
コールドヘッドシリンダの昇温方法であって、
加熱器および温度センサを、前記加熱器よりも前記温度センサを前記コールドヘッドシリンダの底面に近接させるようにして、前記コールドヘッドシリンダ内に配置することと、
前記温度センサを使用して前記コールドヘッドシリンダの温度を測定しながら、前記加熱器を使用して前記コールドヘッドシリンダを加熱することと、を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドヘッドシリンダの昇温補助具および昇温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるメンテナンススリーブを介して極低温冷凍機のコールドヘッドを真空容器に装着することが知られている。真空容器内には例えば超伝導コイルなどの被冷却物が収容され、この被冷却物はメンテナンススリーブに熱的に結合されている。コールドヘッドとメンテナンススリーブを接触させることにより、極低温冷凍機は、メンテナンススリーブを介して被冷却物を冷却することができる。
【0003】
極低温冷凍機を長期的に運転するなかで、極低温冷凍機のメンテナンスが定期的に必要とされうる。作業者は、メンテナンススリーブからコールドヘッドをいくらか引き上げ、コールドヘッドとメンテナンススリーブの熱接触を解除してコールドヘッドにメンテナンスを施すことができる。コールドヘッドは例えば室温などメンテナンス作業に都合のよい温度に昇温され、作業完了後に再冷却される。その一方で、コールドヘッドの接触解除により、被冷却物は低温に保つことができる。したがって、このメンテナンス方法は、コールドヘッドとともに被冷却物を室温に昇温したうえでコールドヘッドにメンテナンスを施す場合に比べて、被冷却物の再冷却時間を短縮することができ、メンテナンスの所要時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のメンテナンスにおける一つの工程として、コールドヘッドが分解されることがある。分解作業は、コールドヘッドシリンダをメンテナンススリーブに残した状態で、コールドヘッドの内部構成部品をコールドヘッドシリンダから取り外す工程を含みうる。このとき、コールドヘッドシリンダの内部表面は、周囲環境から流入する空気にさらされる。シリンダが周囲温度よりも低温である場合には、このシリンダ表面に空気中の水分が凝縮して霜や氷が付着しうる。コールドヘッドを再び組み立てる前には、こうした霜を除去すべく、コールドヘッドシリンダが周囲温度またはそれよりもいくらか高い温度(例えば約20~40℃)に昇温される。昇温作業における温度管理は通例、コールドヘッドシリンダに備えられた温度センサを利用して行われる。
【0006】
コールドヘッドには極低温の測定に適した温度センサが採用されているが、こうした極低温用の温度センサは、上述の昇温作業における室温程度の温度測定に十分な精度が保証されたものであるとは限らない。その場合、昇温中にコールドヘッドシリンダの過昇温が起こるリスクがある。つまり、実際にはコールドヘッドシリンダが所望の温度よりも過剰に高い温度に加熱されているにもかかわらず、温度測定誤差によりこれを検知できないという、望まれない事態が発生する可能性が考えられる。過昇温は、とくにコールドヘッドシリンダの底部で発生した場合には、再組立後の極低温冷凍機の動作に悪影響を生じさせるかもしれない。
【0007】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、コールドヘッドシリンダの適正な昇温に役立つコールドヘッドシリンダの昇温補助具および昇温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によると、コールドヘッドシリンダの昇温補助具が提供される。昇温補助具は、加熱器を備え、コールドヘッドシリンダに挿入可能な本体と、加熱器よりも本体の先端側に取り付けられた温度センサと、を備える。
【0009】
本発明のある態様によると、コールドヘッドシリンダの昇温方法が提供される。この方法は、加熱器および温度センサを、加熱器よりも温度センサをコールドヘッドシリンダの底面に近接させるようにして、コールドヘッドシリンダ内に配置することと、温度センサを使用してコールドヘッドシリンダの温度を測定しながら、加熱器を使用してコールドヘッドシリンダを加熱することと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コールドヘッドシリンダの適正な昇温に役立つコールドヘッドシリンダの昇温補助具および昇温方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る極低温装置を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温装置を概略的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係り、メンテナンス中の極低温冷凍機のコールドヘッドを概略的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係り、メンテナンス中の極低温冷凍機のコールドヘッドを概略的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る昇温補助具を概略的に示す図である。
【
図7】実施の形態に係るコールドヘッドシリンダの昇温方法を示す概略的に示す図である。
【
図8】実施の形態に係る昇温補助具の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1および
図2は、実施の形態に係る極低温装置100を概略的に示す図である。
図1には、極低温冷凍機10と例えば超伝導コイルなどの被冷却物90との熱的な結合が解除された状態が示され、
図2には、両者が熱的に結合された状態が示されている。
【0014】
極低温冷凍機10は、この実施の形態においては、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。極低温冷凍機10は、圧縮機12と、二段式のコールドヘッド14とを備える。
【0015】
圧縮機12は、極低温冷凍機10の冷媒ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。コールドヘッド14は、膨張機とも称され、供給された冷媒ガスを内部の膨張室で断熱膨張させることにより寒冷を発生させることができる。圧縮機12とコールドヘッド14との間の冷媒ガスの循環がコールドヘッド14での冷媒ガスの適切な圧力変動と容積変動の組み合わせをもって行われることにより、極低温冷凍機10の冷凍サイクル(例えばGMサイクル)が構成され、それによりコールドヘッド14の各冷却ステージが所望の極低温に冷却される。冷媒ガスは、作動ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0016】
コールドヘッド14は、コールドヘッドシリンダ15と、コールドヘッド駆動部16とを備える。コールドヘッドシリンダ15は、コールドヘッドフランジ17、一段シリンダ18、一段冷却ステージ20、二段シリンダ22、および二段冷却ステージ24を備え、これらはコールドヘッド14の中心軸に沿って同軸に配置されている。
【0017】
一段シリンダ18は、コールドヘッドフランジ17を一段冷却ステージ20と連結し、二段シリンダ22は、一段冷却ステージ20を二段冷却ステージ24と連結する。一段冷却ステージ20および二段冷却ステージ24は、例えば銅(例えば純銅)などの高熱伝導金属、またはその他の熱伝導材料で形成されている。一段シリンダ18および二段シリンダ22は、例えばステンレスなどの金属で形成されている。一般に、冷却ステージを形成する熱伝導材料の熱伝導率は、シリンダを形成する材料の熱伝導率より高い。
【0018】
コールドヘッド駆動部16は、コールドヘッドフランジ17に取り付けられている。コールドヘッド駆動部16は、一段シリンダ18および二段シリンダ22のそれぞれに収容された一段ディスプレーサおよび二段ディスプレーサを軸方向に往復させるモータを備える。また、コールドヘッド駆動部16には、このモータによってディスプレーサと同期して駆動される圧力切替バルブも収納されている。圧力切替バルブは、コールドヘッド14への高圧冷媒ガスの受け入れと低圧冷媒ガスの送出を周期的に切り替えるよう構成されている。圧縮機12、コールドヘッド駆動部16、およびコールドヘッドフランジ17は、周囲環境27に配置されている。
【0019】
極低温冷凍機10の装着構造30は、真空容器26(例えばクライオスタットなどの極低温真空容器)にコールドヘッド14を装着するための器具である。装着構造30は、コールドヘッド収容スリーブ、または単にスリーブとも称されうる。装着構造30は、周囲環境27から隔離された気密領域28をコールドヘッド14と装着構造30との間に形成するよう真空容器26に設置される。周囲環境27は例えば室温の大気圧環境である。気密領域28は、真空に排気されてもよいし、あるいは、ヘリウムガスのような極低温で液化しない不活性ガスで充填されてもよい。また、装着構造30は、真空容器26と組み合わされて真空容器26内に真空領域29を区画するように真空容器26に設置される。
【0020】
装着構造30は、極低温冷凍機10とともに、極低温冷凍機10の製造業者により顧客に提供されてもよい。被冷却物90を冷却する冷却装置が、極低温冷凍機10および装着構造30から構成されるとも言える。
【0021】
装着構造30も、コールドヘッド14に対応して二段式に構成される。装着構造30は、スリーブフランジ32、一段スリーブ体34、一段伝熱ステージ36、二段スリーブ体38、および二段伝熱ステージ40を備え、これらはコールドヘッド14の中心軸に沿って同軸に配置されている。
【0022】
スリーブフランジ32は、一例として、真空容器26の天板に形成された開口部に固定され、装着構造30はこの開口部から真空容器26内に延びている。また、スリーブフランジ32には、コールドヘッドフランジ17が例えばボルト等の締結部材33で取り付けられる。コールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32が締結されるとき、一段冷却ステージ20と二段冷却ステージ24がそれぞれ一段伝熱ステージ36と二段伝熱ステージ40に押し付けられることになる。スリーブフランジ32は、コールドヘッド14を受け入れる開口部を締結部材33よりも径方向に内側に有し、この開口部の内周面にはコールドヘッドフランジ17が接触している。
【0023】
締結部材33によるコールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32の締結が解除されているとき、コールドヘッドフランジ17は、スリーブフランジ32に対して軸方向に摺動可能であり、それにより、コールドヘッド14は、装着構造30に対し軸方向(
図1および
図2における上下方向)に移動可能である。可動範囲は例えば数mm以内、例えば2~3mm程度である。作業者は、手動により、または油圧ジャッキなどの補助器具を使用して、または動力源を有する昇降装置がコールドヘッド14に接続されている場合にはこれを作動させて、この可動範囲においてコールドヘッド14を軸方向に昇降させることができる。
【0024】
コールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32との間には例えばOリングなどのシール部材42が挟み込まれている。シール部材42は、スリーブフランジ32の開口部内周面に形成された周溝に配置されている。シール部材42が設けられているので、コールドヘッド14が装着構造30に対し上述の可動範囲内で軸方向に移動されても気密領域28は周囲環境27から隔離されている。
【0025】
一段スリーブ体34は、スリーブフランジ32を一段伝熱ステージ36と連結し、二段スリーブ体38は、一段伝熱ステージ36を二段伝熱ステージ40と連結する。一段スリーブ体34および二段スリーブ体38はそれぞれ、一段シリンダ18および二段シリンダ22を囲むように配置されている。一段伝熱ステージ36の中心部には、一段スリーブ体34の内部空間を二段スリーブ体38の内部空間に接続する開口部が設けられている。コールドヘッド14の二段シリンダ22および二段冷却ステージ24はこの開口部から二段スリーブ体38の内部空間へと挿入される。一段伝熱ステージ36および二段伝熱ステージ40は、例えば銅(例えば純銅)などの高熱伝導金属、またはその他の熱伝導材料で形成されている。一段スリーブ体34および二段スリーブ体38は、例えばステンレスなどの金属で形成されている。伝熱ステージを形成する熱伝導材料の熱伝導率は、スリーブ体を形成する材料の熱伝導率より高い。
【0026】
したがって、装着構造30の一段伝熱ステージ36は、極低温冷凍機10のコールドヘッド14の移動によりコールドヘッド14の一段冷却ステージ20と接触し又は接触解除される。同様に、装着構造30の二段伝熱ステージ40は、コールドヘッド14の移動により二段冷却ステージ24と接触し又は接触解除される。
【0027】
コールドヘッドシリンダ15には、温度センサ44が設けられていてもよい。温度センサ44は、二段冷却ステージ24の底部に設けられ、二段冷却ステージ24の温度を測定してもよい。温度センサ44は、二段冷却ステージ24に実現される極低温の測定に適する極低温用の温度センサであり、例えば酸化ルテニウム温度計であってもよい。温度センサ44は、配線45により温度表示器46に接続されていてもよい。配線45は、気密領域28でコールドヘッドシリンダ15にらせん状に巻き付けられ、コールドヘッドフランジ17のフィードスルー47を通じて周囲環境27に引き出されてもよい。温度表示器46は、周囲環境27に配置された温度表示器46に接続されていてもよい。温度表示器46は、配線45を通じて温度センサ44の出力を取得し、測定温度を表示し又は他の機器に出力することができる。温度表示器46は、極低温冷凍機10を制御するコントローラの一部を構成していてもよい。
【0028】
また、真空領域29に露出される一段伝熱ステージ36の外面には、輻射シールド92が熱的に結合されている。輻射シールド92は、被冷却物90を熱的に保護するために、被冷却物90を囲むように配置されている。
図1及び
図2には輻射シールド92の一部のみが示される。輻射シールド92は、一段伝熱ステージ36に直接取り付けられてもよいし、あるいは、剛性または可撓性の伝熱部材を介して接続されてもよい。一段伝熱ステージ36には、輻射シールド92とともに、またはこれに代えて、別の被冷却物が熱的に結合されてもよい。また、真空領域29に露出される二段伝熱ステージ40の外面には被冷却物90が熱的に結合されている。被冷却物90は、二段伝熱ステージ40に直接取り付けられてもよいし、あるいは、剛性または可撓性の伝熱部材を介して接続されてもよい。
【0029】
図1に示されるように、コールドヘッド14と装着構造30の熱接触が解除された状態においては、コールドヘッド14が可動範囲の例えば上端に位置する。このとき、一段冷却ステージ20が一段伝熱ステージ36から物理的に離れ、二段冷却ステージ24が二段伝熱ステージ40から物理的に離れるので、極低温冷凍機10は、被冷却物90および輻射シールド92を冷却しない。コールドヘッド14が被冷却物90および輻射シールド92よりも高い温度例えば室温に昇温されたとしても、コールドヘッド14から被冷却物90および輻射シールド92への熱的な影響は限定的であるか、無視しうる。被冷却物90および輻射シールド92は極低温に維持される。
【0030】
図2に示されるように、コールドヘッド14と装着構造30が熱接触している状態においては、コールドヘッド14が可動範囲の下端に位置する。このとき、一段冷却ステージ20が一段伝熱ステージ36に物理的に接触し、それにより、一段冷却ステージ20は、一段伝熱ステージ36を介して輻射シールド92と熱接触する。それとともに、二段冷却ステージ24が二段伝熱ステージ40に物理的に接触し、それにより、二段冷却ステージ24は、二段伝熱ステージ40を介して被冷却物90と熱接触する。こうして、極低温冷凍機10は、被冷却物90および輻射シールド92を冷却することができる。輻射シールド92は、例えば30K~80K(通例は30K~50K、例えば40K)に冷却され、被冷却物90は、例えば3K~20K(通例は3K~4K)に冷却されうる。
【0031】
以上の構成を有する極低温装置100の動作の一例を説明する。極低温冷凍機10のメンテナンスが許容されるタイミングが到来すると、極低温冷凍機10の冷却運転が停止される。このとき、
図2に示されるように、一段冷却ステージ20は一段伝熱ステージ36と物理的かつ熱的に接触し、二段冷却ステージ24は二段伝熱ステージ40と物理的かつ熱的に接触している。
【0032】
作業者が締結部材33を操作することによって、コールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32との締結が解除される。そして、コールドヘッド14が装着構造30からいくらか引き上げられる。コールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32の間にはシール部材42が設けられているので、周囲環境27からの気密領域28の隔離は保持される。
【0033】
こうして、
図1に示されるように、一段冷却ステージ20は一段伝熱ステージ36から物理的に離れて熱的に非接触となり、二段冷却ステージ24は二段伝熱ステージ40から物理的に離れて熱的に非接触となる。したがって、被冷却物90および輻射シールド92を低温に保ちつつ、コールドヘッド14を昇温することができる。
【0034】
極低温冷凍機10のメンテナンスが行われる。
図3および
図4は、実施の形態に係り、メンテナンス中の極低温冷凍機10のコールドヘッド14を概略的に示す図である。
図3に示されるように、コールドヘッド14のコールドヘッド駆動部16がコールドヘッドフランジ17から取り外される。コールドヘッド駆動部16とともに、一段ディスプレーサ19および二段ディスプレーサ23がそれぞれ、一段シリンダ18および二段シリンダ22から引き抜かれる。コールドヘッドシリンダ15(すなわち、コールドヘッドフランジ17、一段シリンダ18、一段冷却ステージ20、二段シリンダ22、および二段冷却ステージ24)は、そのまま装着構造30に装着されている。取り外されたコールドヘッド駆動部16、一段ディスプレーサ19および二段ディスプレーサ23は、消耗部品の交換や清掃、修理などのメンテナンスが施され、または、新品のコールドヘッド駆動部またはディスプレーサと交換される。
【0035】
このようにコールドヘッド14の内部構造がコールドヘッドシリンダ15から取り外されることによって、コールドヘッドシリンダ15の内部表面が周囲環境27に露出されることになる。極低温冷凍機10の冷却運転中に極低温に冷却されている部材、例えば、一段冷却ステージ20、二段シリンダ22、および二段冷却ステージ24は、依然として低温にあるかもしれず、これら部材の表面には周囲環境27から霜が付着しうる。
【0036】
そこで、コールドヘッド14を再び組み立てる前に、コールドヘッドシリンダ15が加熱され、コールドヘッドシリンダ15内に付着した霜が除去されてもよい。この加熱には、
図4に示されるように、例えばヒートガン、ドライヤーなどの温風発生器48が使用されてもよい。温風発生器48からの温風49をコールドヘッドシリンダ15内に供給することにより、コールドヘッドシリンダ15が加熱されてもよい。
【0037】
続いて、極低温冷凍機10が再び組み立てられる。メンテナンスが施された(または新品の)コールドヘッド駆動部16、一段ディスプレーサ19および二段ディスプレーサ23がコールドヘッドシリンダ15に挿入され、コールドヘッド駆動部16がコールドヘッドフランジ17に再び取り付けられる。
図1に示される状態に戻る。そして、極低温冷凍機10の冷却運転が再開される。
【0038】
一段冷却ステージ20および二段冷却ステージ24をそれぞれ一段伝熱ステージ36および二段伝熱ステージ40に接触させるように、コールドヘッド14が装着構造30に対して移動される。コールドヘッド14が装着構造30に再び押し込まれる。
【0039】
コールドヘッド14の移動により、一段冷却ステージ20は一段伝熱ステージ36と物理的かつ熱的に接触し、二段冷却ステージ24は二段伝熱ステージ40と物理的かつ熱的に接触する。そして、締結部材33によってコールドヘッドフランジ17とスリーブフランジ32が締結される。こうして、
図2に示される状態に戻る。
【0040】
したがって、実施の形態に係る極低温装置100によれば、コールドヘッド14の移動により装着構造30との熱接触が解除され、被冷却物90および輻射シールド92を低温に保ちつつコールドヘッド14を昇温しメンテナンスをすることができる。被冷却物90および輻射シールド92をコールドヘッド14とともに室温に昇温して極低温冷凍機10にメンテナンスを施す場合に比べて被冷却物90および輻射シールド92の再冷却時間を短縮することができ、メンテナンスの所要時間を短くすることができる。
【0041】
図5は、従来の昇温補助具50を概略的に示す図である。コールドヘッドシリンダ15への上述の加熱工程では、昇温と霜取りを促進するために、昇温補助具50が使用されてもよい。昇温補助具50は、両端が開放された中空の筒状の形状を有し、その一端をコールドヘッドシリンダ15に挿入して二段冷却ステージ24に近接させることができるように、二段シリンダ22および二段冷却ステージ24の内径よりもいくらか小さい外径を有する。また、昇温補助具50は、コールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき他端がコールドヘッドシリンダ15の外に位置するように、コールドヘッドシリンダ15の軸方向深さ(つまりコールドヘッドフランジ17から二段冷却ステージ24の底部24aまでの軸方向距離)よりもいくらか長い軸方向長さを有する。
【0042】
昇温補助具50がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたときコールドヘッドシリンダ15の外に位置する昇温補助具50の一方の開放端は、温風導入口51として利用される。温風導入口51には、温風発生器48の温風吹出口が接続される。温風発生器48からの温風49が温風導入口51から昇温補助具50内に導入される。コールドヘッドシリンダ15内で二段冷却ステージ24に近接して配置される昇温補助具50の他方の開放端は、温風吹出口52として利用される。温風導入口51から昇温補助具50内に導入された温風49は、温風吹出口52から二段冷却ステージ24の底部24aに向けて吹き出される。温風49はまず、二段冷却ステージ24の底部24aを加熱し、底部24aからの熱伝導により、二段冷却ステージ24の側部24b、および二段シリンダ22などコールドヘッドシリンダ15の他の部位を加熱することができる。
【0043】
昇温補助具50には温度センサは設けられていないため、加熱工程におけるコールドヘッドシリンダ15の温度管理は、コールドヘッド14に備えられた温度センサ44を利用して行われる。温度センサ44としては上述のように、極低温の測定に適した温度センサが用いられている。しかしながら、こうした極低温用の温度センサは、その仕様によっては、コールドヘッドシリンダ15の加熱工程で測定すべき室温程度の温度範囲の測定に十分な精度が保証されていない。
【0044】
このようなケースでは、加熱工程の最中にコールドヘッドシリンダ15の二段冷却ステージ24が過剰に昇温されるリスクがあることを本発明者は認識した。つまり、実際には二段冷却ステージ24が室温程度の所望の温度よりも過剰に高い温度に加熱されているにもかかわらず、温度測定誤差によりこれを検知できないという、望まれない事態が発生する可能性が考えられる。
【0045】
二段冷却ステージ24の過昇温は、場合によっては、再組立後の極低温冷凍機10の動作に悪影響を生じさせるかもしれない。例えば、温度センサ44が装着された二段冷却ステージ24の底部と温度センサ44との熱伝導を良好にするためのグリスや接着剤がこれらの間に用いられている場合があるが、こうした介在物は耐熱性が低いことが多い。もし、過昇温により介在物が損傷された場合には、温度センサ44による以降の温度測定の精度低下が懸念される。最悪の場合、コールドヘッドシリンダ15を装着構造30から取り外したうえで、温度センサ44および二段冷却ステージ24を修理、交換するといった本来不要な追加のメンテナンス作業が発生しうる。
【0046】
図6は、実施の形態に係る昇温補助具60を概略的に示す図である。昇温補助具60は、上述の昇温補助具50と同様に、コールドヘッドシリンダ15を効率的に加熱するために使用される。昇温補助具60は、加熱器61を備える本体62と、本体62に設けられた温度センサ63とを備える。
【0047】
昇温補助具60の本体62は、コールドヘッドシリンダ15に挿入可能な形状を有する。一例として、
図7に示されるように、本体62は、その先端をコールドヘッドシリンダ15に挿入し二段冷却ステージ24に近接させることができるように、二段シリンダ22および二段冷却ステージ24の内径よりもいくらか小さい外径を有する中空の筒状の形状を有する。また、本体62は、コールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき他端がコールドヘッドシリンダ15の外に位置するように、コールドヘッドシリンダ15の軸方向深さよりもいくらか長い軸方向長さを有する。
【0048】
昇温補助具60がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたときコールドヘッドシリンダ15の外に位置する昇温補助具60の一方の開放端は、
図6に示されるように、温風導入口64として利用される。温風導入口64には、温風発生器48の温風吹出口が取り外し可能に接続される。温風発生器48からの温風49が温風導入口64から昇温補助具60内に導入される。
【0049】
加熱器61は、本体62の先端部に設けられている。加熱器61は、温風発生器48からの温風49を吹き出すように構成された温風吹出口65を備える。温風吹出口65は、温度センサ63から逸れるように温風49を方向付けるように構成されている。具体的には、例えば、温風吹出口65は、温風49が加熱器61から径方向外向きに放出されるように加熱器61に形成された複数の穴であってもよい。これら複数の穴は、加熱器61の全周にわたり温風49を放出することができるように、周方向に並んでいてもよい。
【0050】
また、温風吹出口65は、
図7に示されるように、本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき、コールドヘッドシリンダ15の側面(例えば、二段冷却ステージ24の側部24b)に向けて温風49を方向付けるように構成されている。言い換えれば、温風吹出口65は、温風49が二段冷却ステージ24の底部24aに向けて直接吹き付けられないように構成されている。
【0051】
温度センサ63は、加熱器61よりも本体62の先端側に取り付けられている。そのため、温度センサ63は、本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき、加熱器61よりもコールドヘッドシリンダ15の底面(すなわち、二段冷却ステージ24の底部24a)に近接することになる。
【0052】
温度センサ63は、接触式の温度計が使用されてもよい。本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき、温度センサ63または温度センサ63が取り付けられた部位(例えば、後述の測温部66b)が二段冷却ステージ24の底部24aに接触し、底部24aの温度を測定することができる。温度センサ63は、室温程度の温度範囲(例えば、0~50℃程度の温度範囲)で、コールドヘッド14の温度センサ44に比べて良好な精度で温度を測定可能であってもよく、例えば、熱電対、白金温度センサなど、安価な汎用の温度センサであってもよい。
【0053】
この実施の形態では、温度センサ63は、衝撃吸収材66を介して本体62に取り付けられている。この例では、
図6に示されるように、衝撃吸収材66は、撓み可能な接続部材であり、本体62の底面に取り付けられた基部66aと、温度センサ63が取り付けられた測温部66bと、基部66aと測温部66bを接続する撓み部66cとを備える。本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されて温度センサ63または測温部66bが二段冷却ステージ24の底部24aに接触するとき、衝撃吸収材66は、撓み部66cが撓むことにより、昇温補助具60が二段冷却ステージ24に突き当たる衝撃を吸収または緩和することができる。なお、撓み部66cに代えて、または撓み部66cとともに、衝撃吸収材66は、基部66aと測温部66bを接続するばね材を備えてもよい。
【0054】
なお、衝撃吸収材66は、必須ではない。ある実施の形態では、温度センサ63は、本体62の底部に直接取り付けられていてもよい。
【0055】
温度表示器70が昇温補助具60に付属して設けられていてもよい。温度センサ63は、配線67により温度表示器70に接続されていてもよい。配線67は、温度センサ63から延び、本体62にらせん状に巻き付けられ、コールドヘッドシリンダ15の外に引き出されてもよい。温度表示器70は、配線67を通じて温度センサ63の出力を取得し、測定温度を表示し又は他の機器に出力することができる。温度表示器70は、コールドヘッド14の温度センサ44の測定温度を表示するための上述の温度表示器46と同一であってもよいし、または、温度表示器46とは別に設けられてもよい。温度表示器70は、例えば、市販の温度テスタであってもよい。
【0056】
図7は、実施の形態に係るコールドヘッドシリンダ15の昇温方法を示す概略的に示す図である。まず、本方法の第1ステップとして、
図7の左側に示されるように、加熱器61および温度センサ63が、加熱器61よりも温度センサ63をコールドヘッドシリンダ15の底面に近接させるようにして、コールドヘッドシリンダ15内に配置される。この配置ステップは、昇温補助具60の本体62をコールドヘッドシリンダ15に挿入することによって行うことができる。本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入され、加熱器61の温風吹出口65は、二段冷却ステージ24の側部24bに対向して配置され、温度センサ63(または測温部66b)は、二段冷却ステージ24の底部24aに接触して配置される。
【0057】
なお、第1ステップの前に、コールドヘッドシリンダ15は、周囲環境からの熱流入により自然昇温されてもよい。例えば、極低温冷凍機10の運転終了時には、二段冷却ステージ24は、例えば4K程度の極低温にある。この運転終了温度から所定の加熱開始温度(例えば、液体窒素温度)まで、コールドヘッドシリンダ15(つまり二段冷却ステージ24)は、自然昇温されてもよい。自然昇温中の二段冷却ステージ24の温度は、温度センサ44の測定温度から把握できる。作業者は、温度センサ44の測定温度に基づいて自然昇温を続行しまたは終了してもよい。以下の第2ステップは、自然昇温の終了後に行われてもよい。
【0058】
次に、第2ステップとして、
図7の右側に示されるように、昇温補助具60を使用してコールドヘッドシリンダ15が加熱される。この実施の形態では、コールドヘッドシリンダ15は、温風発生器48からの温風49を用いて加熱される。温風導入口64(
図6参照)から昇温補助具60の本体62内に導入された温風49は、加熱器61の温風吹出口65を通じて二段冷却ステージ24の側部24bに向けて吹き出される。よって、温風49はまず、二段冷却ステージ24の側部24bを優先的に加熱する。そして、主として側部24bからの熱伝導により、二段冷却ステージ24の側部24b、および二段シリンダ22などコールドヘッドシリンダ15の他の部位が加熱される。
【0059】
こうしたコールドヘッドシリンダ15の加熱と同時に、温度センサ63を使用してコールドヘッドシリンダ15の温度が測定される。温度センサ63によって二段冷却ステージ24の底部24aの温度が測定され、測定温度を示す情報が温度センサ63から温度表示器70(
図6参照)に送信される。測定温度は、温度表示器70により表示され、または温度表示器70から出力される。作業者は、温度表示器70を利用して、コールドヘッドシリンダ15の温度、具体的には二段冷却ステージ24の底部24aの温度を把握することができる。作業者は、測定温度が加熱終了温度(例えば約20~40℃)に達したとき本昇温方法を終了してもよい。
【0060】
実施の形態によると、上述のように、温度センサ63が二段冷却ステージ24の底部24aの温度を測定するように配置されている。よって、二段冷却ステージ24の底部24aに設けられたコールドヘッド14の温度センサ44での加熱温度を正確に測定することができる。したがって、従来の昇温補助具50を使用した場合における温度センサ44の温度測定誤差に起因するコールドヘッドシリンダ15の過昇温を防止し、又はそのリスクを低減することができる。過昇温により生じうるコールドヘッド14の温度センサ44への悪影響も避けられる。
【0061】
実施の形態によると、昇温補助具60を用いてコールドヘッドシリンダ15を加熱することにより、二段冷却ステージ24の側部24bが底部24aよりも先に温められることになる。そのため、仮に過昇温が起こるとしても、それはまず二段冷却ステージ24の側部24bで生じることになる。これも、二段冷却ステージ24の底部24aでの過昇温のリスクを低減することに役立つ。
【0062】
また、温度センサ63には温風49が直接あたらないこと、および、温度センサ63として室温付近で良好な測定精度をもつ温度センサを採用可能であることも、コールドヘッド14の温度センサ44での加熱温度を正確に知ることに役立つ。
【0063】
コールドヘッドシリンダ15の側面(例えば、二段シリンダ22の内周面)は、極低温冷凍機10の動作中、二段ディスプレーサ23との摺動面となるため、コールドヘッドシリンダ15と二段ディスプレーサ23との径方向クリアランスには高い寸法精度が求められる。何らかの原因で、コールドヘッドシリンダ15の側面が損傷され、この径方向クリアランスが変化したとすると、極低温冷凍機10の冷凍性能が低下しうるなど、極低温冷凍機10に大きな影響が生じうる。
【0064】
実施の形態によると、温度センサ63を二段冷却ステージ24の底部24aに接触させているため、昇温補助具60は、コールドヘッドシリンダ15の側面(例えば、二段シリンダ22の内周面)には接触する必要が無い。昇温補助具60がコールドヘッドシリンダ15の側面と接触した場合に起こりうる損傷を避けることができ、上述の問題も回避できる。
【0065】
上述の実施の形態では、昇温補助具60は温風49でコールドヘッドシリンダ15を加熱するように構成されているが、他の加熱方式を利用した昇温補助具60も可能である。
【0066】
図8は、実施の形態に係る昇温補助具60の変形例を概略的に示す図である。昇温補助具60は、加熱器61を備える本体62と、本体62に設けられた温度センサ63とを備える。加熱器61は、例えば電気ヒータなど、適宜の加熱器であってもよい。加熱器61は、本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき、二段冷却ステージ24の側部24bを効率的に加熱するために側部24bに対向するように、本体62の先端部に設けられていてもよい。温度センサ63は、加熱器61よりも本体62の先端側に取り付けられている。温度センサ63は、本体62がコールドヘッドシリンダ15に挿入されたとき、加熱器61よりもコールドヘッドシリンダ15の底面(すなわち、二段冷却ステージ24の底部24a)に接触することができる。図示されるように、温度センサ63は、本体62の底部に直接取り付けられていてもよい。
【0067】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0068】
上述の実施の形態では、昇温補助具60がコールドヘッド14の二段冷却ステージ24を加熱する場合を例として説明しているが、昇温補助具60は、コールドヘッド14の一段冷却ステージ20の加熱に用いることも可能である。その場合、昇温補助具60がコールドヘッドシリンダ15に挿入され、加熱器61の温風吹出口65は、一段冷却ステージ20の側部に対向して配置され、温度センサ63(または測温部66b)は、一段冷却ステージ20の底部に接触して配置されてもよい。そして、加熱器61を使用してコールドヘッドシリンダ15が加熱されてもよい。温風49は、加熱器61の温風吹出口65を通じて一段冷却ステージ20の側部に向けて吹き出されてもよい。コールドヘッドシリンダ15の加熱と同時に、温度センサ63を使用してコールドヘッドシリンダ15の温度(例えば、一段冷却ステージ20の底部の温度)が測定されてもよい。
【0069】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10が二段式のGM冷凍機である場合を例として説明したが、極低温冷凍機10は、単段式、または三段式など他の多段式のGM冷凍機であってもよい。また、極低温冷凍機10は、GM冷凍機には限られない。極低温冷凍機10は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0070】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0071】
14 コールドヘッド、 15 コールドヘッドシリンダ、 44 温度センサ、 48 温風発生器、 49 温風、 60 昇温補助具、 61 加熱器、 62 本体、 63 温度センサ、 65 温風吹出口、 66 衝撃吸収材。