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特開2025-25881極低温装置の初期冷却方法、および極低温装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025881
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】極低温装置の初期冷却方法、および極低温装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131090
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(57)【要約】
【課題】極低温装置の初期冷却時間の短縮を簡便に実現する。
【解決手段】極低温装置10は、真空バルブ34を備える真空容器30と、第1冷却ステージ22aと、第1冷却ステージ22aよりも低温に冷却される第2冷却ステージ22bとを備え、第1冷却ステージ22aおよび第2冷却ステージ22bが真空容器30内に配置されるように真空容器30に設置される極低温冷凍機20と、真空バルブ34から直線経路36でアクセス可能となるように真空容器30内に配置され、第2冷却ステージ22bに熱的に結合された第2伝熱端子52と、を備える。極低温装置10は、真空バルブ34から直線経路36でアクセス可能となるように真空容器30内に配置され、第1冷却ステージ22aに熱的に結合された第1伝熱端子50をさらに備えてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温装置の初期冷却方法であって、前記極低温装置は、真空バルブを備える真空容器と、前記真空容器内に配置される第1冷却部および第2冷却部とを備え、前記第2冷却部は、前記第1冷却部よりも低温に冷却されるものであり、前記方法は、
伝熱体を備える冷却補助器具を前記真空バルブに取り付けることと、
前記真空バルブを通じて前記伝熱体を前記第2冷却部に物理的に接触させることと、
前記伝熱体を通じて前記第2冷却部を冷却することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記冷却補助器具は、前記伝熱体に熱的に結合された冷却源をさらに備え、
前記冷却することは、前記冷却源を使用して、前記伝熱体を通じて前記第2冷却部を冷却することを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却源は、単段冷凍機、または極低温冷媒を備えることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記極低温装置は、前記第1冷却部を冷却する第1冷却ステージと、前記第2冷却部を冷却する第2冷却ステージとを備える極低温冷凍機をさらに備え、
前記接触させることは、前記伝熱体を前記第1冷却部と前記第2冷却部の両方に物理的に接触させることを備え、
前記冷却することは、前記第1冷却ステージを冷却源として使用して、前記伝熱体を通じて前記第2冷却部を冷却することを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
極低温装置の初期冷却方法であって、前記極低温装置は、真空バルブを備える真空容器と、前記真空容器内に配置される第1冷却部および第2冷却部と、前記第1冷却部を冷却する第1冷却ステージと前記第2冷却部を冷却する第2冷却ステージとを備える極低温冷凍機と、を備え、前記第2冷却部は、前記第1冷却部よりも低温に冷却されるものであり、前記方法は、
接触具を備える冷却補助器具を前記真空バルブに取り付けることと、
前記第1冷却部を前記第2冷却部と熱的に結合するように、前記真空バルブを通じて前記接触具を前記第1冷却部と前記第2冷却部の少なくとも一方に物理的に接触させることと、
前記第1冷却ステージを冷却源として使用して前記第2冷却部を冷却することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記冷却することの後に、前記冷却補助器具を前記真空バルブから取り外すことをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
真空バルブを備える真空容器と、
第1冷却ステージと、前記第1冷却ステージよりも低温に冷却される第2冷却ステージとを備え、前記第1冷却ステージおよび前記第2冷却ステージが前記真空容器内に配置されるように前記真空容器に設置される極低温冷凍機と、
前記真空バルブから直線経路でアクセス可能となるように前記真空容器内に配置され、前記第2冷却ステージに熱的に結合された伝熱端子と、を備えることを特徴とする極低温装置。
【請求項8】
前記真空バルブから直線経路でアクセス可能となるように前記真空容器内に配置され、前記第1冷却ステージに熱的に結合された追加の伝熱端子をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の極低温装置。
【請求項9】
前記伝熱端子および前記追加の伝熱端子のうち一方に可撓性伝熱体で接続され、前記伝熱端子および前記追加の伝熱端子のうち他方と接離可能に配置された仲介伝熱体をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の極低温装置。
【請求項10】
前記第1冷却ステージに熱的に結合され、前記第2冷却ステージを囲む輻射シールドをさらに備え、
前記輻射シールドは、シールド開口部を前記直線経路上に備えることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の極低温装置。
【請求項11】
前記シールド開口部には、可動シャッターが設けられていることを特徴とする請求項10に記載の極低温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温装置の初期冷却方法、および極低温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば超伝導磁石装置など極低温で動作する極低温装置においては、装置の起動に際して、室温など初期温度から目標冷却温度に冷却する初期冷却が行われる。超伝導磁石による高磁場の提供など、極低温装置の利用は、初期冷却の完了後に可能となる。
【0003】
極低温装置には、極低温冷却のために、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機などの二段式の極低温冷凍機がよく用いられている。より低温に冷却される極低温冷凍機の第2段が超伝導コイルなどの極低温装置の被冷却物を冷却し、それよりも高温に冷却される極低温冷凍機の第1段が第2段の被冷却物への入熱を低減するための輻射シールドなど第1段の被冷却物を冷却する。第1段の冷凍能力は比較的大きいため、第1段の被冷却物の初期冷却は、比較的短い時間で行える。しかしながら、第2段の冷凍能力は一般に、第1段に比べてかなり小さいため、第2段の被冷却物の初期冷却には第1段に比べて長い時間を要しがちである。とくに、例えば大型の超伝導コイルを有する極低温装置では、初期冷却の所要時間がかなり長くなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-312210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
初期冷却時間を短くするために、極低温装置に様々な専用の機構をあらかじめ組み込んでおくことが提案されている。しかしながら、こうした専用の初期冷却機構は、初期冷却完了後の極低温装置の通常運転の場面では使用されないにもかかわらず、たいてい大掛かりであり、それが組み込まれた極低温装置のコストアップを招きがちである。また、極低温装置に組み込まれた初期冷却機構が極低温装置の通常運転中に万が一故障した場合には、初期冷却機構の修理や交換のために極低温装置の通常運転を中断しなければならないかもしれず、極低温装置の運用に大きな影響を与えうる。これを避けるために、初期冷却機構に高い信頼性を保証するように設計したとすると、それもまた装置のコスト増加につながりうる。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温装置の初期冷却時間の短縮を簡便に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、極低温装置の初期冷却方法が提供される。極低温装置は、真空バルブを備える真空容器と、真空容器内に配置される第1冷却部および第2冷却部とを備える。第2冷却部は、第1冷却部よりも低温に冷却される。方法は、伝熱体を備える冷却補助器具を真空バルブに取り付けることと、真空バルブから伝熱体を真空容器内に挿入することと、伝熱体を第2冷却部に物理的に接触させることと、伝熱体を通じて第2冷却部を冷却することと、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温装置の初期冷却方法が提供される。極低温装置は、真空バルブを備える真空容器と、真空容器内に配置される第1冷却部および第2冷却部と、第1冷却部を冷却する第1冷却ステージと第2冷却部を冷却する第2冷却ステージとを備える極低温冷凍機と、を備える。第2冷却部は、第1冷却部よりも低温に冷却される。方法は、接触具を備える冷却補助器具を真空バルブに取り付けることと、第1冷却部を第2冷却部と熱的に結合するように、真空バルブを通じて接触具を第1冷却部と第2冷却部の少なくとも一方に物理的に接触させることと、第1冷却ステージを冷却源として使用して第2冷却部を冷却することと、を備える。
【0009】
本発明のある態様によると、極低温装置は、真空バルブを備える真空容器と、第1冷却ステージと、第1冷却ステージよりも低温に冷却される第2冷却ステージとを備え、第1冷却ステージおよび第2冷却ステージが真空容器内に配置されるように真空容器に設置される極低温冷凍機と、真空バルブから直線経路でアクセス可能となるように真空容器内に配置され、第2冷却ステージに熱的に結合された伝熱端子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極低温装置の初期冷却時間の短縮を簡便に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る極低温装置を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る冷却補助器具を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る極低温装置の初期冷却方法を模式的に示す図である。
図4図4(a)および図4(b)は、実施の形態に係り、冷却補助器具の他の一例を模式的に示す図である。
図5図5(a)および図5(b)は、実施の形態に係り、冷却補助器具および伝熱端子構造の他の一例を模式的に示す図である。
図6】実施の形態に係り、極低温装置の他の一例を模式的に示す図である。
図7図7(a)および図7(b)は、実施の形態に係り、極低温装置および冷却補助器具の他の一例を模式的に示す図である。
図8】実施の形態に係り、極低温装置および冷却補助器具の他の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施の形態に係る極低温装置10を模式的に示す図である。極低温装置10は、被冷却物12と、被冷却物12を冷却する極低温冷凍機20と、極低温冷凍機20が設置され、被冷却物12を収容する真空容器30とを備える。
【0014】
極低温装置10は、超伝導磁石装置であってもよく、被冷却物12は、超伝導コイルであってもよい。超伝導磁石装置は、例えば単結晶引き上げ装置、NMRシステム、MRIシステム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。なお、極低温装置10は、極低温環境を利用する様々な装置であってもよく、被冷却物12は、極低温環境で使用する例えばセンサなど様々な機器、さらにはこうした機器を冷却する例えばヘリウムなどの極低温冷媒であってもよい。
【0015】
極低温冷凍機20は、冷媒ガス(たとえばヘリウムガス)の圧縮機(図示せず)と、コールドヘッドとも呼ばれる膨張機とを備え、圧縮機と膨張機により極低温冷凍機20の冷凍サイクルが構成され、それにより極低温冷却を提供する。極低温冷凍機20は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。極低温冷凍機20は、極低温に冷却される低温部として、第1冷却ステージ22aと第2冷却ステージ22bを備える。極低温冷凍機20は、これら冷却ステージが真空容器30内に配置されるようにして真空容器30に設置されている。第1冷却ステージ22aおよび第2冷却ステージ22bは、例えば、銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅などの純銅)などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。極低温冷凍機20の運転中、第1冷却ステージ22aは、第1冷却温度、例えば30K~80Kに冷却され、第2冷却ステージ22bは、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば3K~20Kに冷却される。
【0016】
なお、図1では例として、1台の極低温冷凍機20を示しているが、例えば被冷却物12が大型の場合など、必要に応じて、極低温装置10は、一つの同じ被冷却物を冷却する複数台の極低温冷凍機20を備えてもよい。
【0017】
真空容器30は、真空領域32を外部環境14から隔てるように構成される。真空容器30は、例えばクライオスタットであってもよい。真空領域32は、真空容器30内に定められ、外部環境14は、大気領域であってもよい。被冷却物12と極低温冷凍機20の低温部は、真空領域32に配置され、外部環境14から真空断熱される。断熱性能を高めるために、真空領域32を外部環境14から隔てる真空容器30の壁部材の表面に沿って、または壁部材の内部に、断熱材料が設けられていてもよい。
【0018】
通例、真空容器30は、円柱状の形状、または中心部に中空部を有する円筒状の形状を有する。よって、真空容器30は、概ね平坦な円形状または円環状の天板30aおよび底板30bと、これらを接続する円筒状の側壁(円筒状外周壁、または同軸配置された円筒状の外周壁および内周壁)30cとを有する。図示の例では、極低温冷凍機20は、真空容器30の天板30aに設置されている。あるいは、極低温冷凍機20は、真空容器30の底板30bなど他の部位に設置されてもよい。真空容器30は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0019】
真空容器30は、真空バルブ34を備える。真空バルブ34は、閉鎖されたとき真空容器30内の真空領域32の気密性を保持し、開放されたとき真空領域32を外部環境14に接続するように構成されている。真空バルブ34は、例えば真空容器30の側壁30cに設けられている。あるいは、真空バルブ34は、天板30aまたは底板30bなど真空容器30の他の壁に設けられてもよい。真空バルブ34は、例えばバタフライバルブであってもよく、この場合、知られているように、円板状の弁体がその直径と一致しまたは平行な軸まわりに回転することにより開閉される。あるいは、真空バルブ34は、ゲートバルブであってもよい。
【0020】
真空領域32には、極低温冷凍機20の低温部および被冷却物12とともに、輻射シールド40が配置される。輻射シールド40は、第1冷却ステージ22aと熱的に結合され第1冷却温度に冷却される。輻射シールド40は、第1冷却ステージ22aに直接取り付けられ、第1冷却ステージ22aと熱的に結合される。あるいは、輻射シールド40は、可撓性または剛性をもつ伝熱部材を介して第1冷却ステージ22aに取り付けられてもよい。輻射シールド40は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。輻射シールド40は、第2冷却温度に冷却される被冷却物12、極低温冷凍機20の第2冷却ステージ22b、およびその他の低温部を囲むように配置され、外部からの輻射熱からこれら低温部を熱的に保護することができる。
【0021】
被冷却物12は、第2冷却ステージ22bと熱的に結合され第2冷却温度に冷却される。被冷却物12は、第2冷却ステージ22bに直接取り付けられ、または、可撓性または剛性をもつ伝熱部材を介して、第2冷却ステージ22bと熱的に結合される。
【0022】
また、極低温装置10は、真空バルブ34から直線経路36でアクセス可能となるように真空容器30内に配置された第1伝熱端子50および第2伝熱端子52を備える。第1伝熱端子50および第2伝熱端子52は、輻射シールド40の内側に配置されている。
【0023】
第1伝熱端子50は、第1冷却ステージ22a、または輻射シールド40など、真空容器30内で第1冷却温度に冷却される第1冷却部と熱的に結合されており、第1冷却ステージ22aによって第1冷却温度に冷却される。第2伝熱端子52は、第2冷却ステージ22b、または被冷却物12など、真空容器30内で第2冷却温度に冷却される第2冷却部と熱的に結合されており、第2冷却ステージ22bによって第2冷却温度に冷却される。第1伝熱端子50は、第1冷却部に剛に取り付けられ、第2伝熱端子52は、第2冷却部に剛に取り付けられてもよい。第1伝熱端子50は、第1冷却ステージ22aまたは輻射シールド40に固定され、第2伝熱端子52は、第2冷却ステージ22bまたは被冷却物12に固定されてもよい。これら伝熱端子は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。
【0024】
第1伝熱端子50と第2伝熱端子52は、隔離隙間54により互いに物理的に接触しないように隔てられている。よって、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52は、熱的に結合されていない。ただし、後述のように、冷却補助器具60を用いることで、これら2つの伝熱端子を熱的に結合することができる。隔離隙間54の幅(すなわち、隔離隙間54での第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の距離)は、2つの伝熱端子の非接触を確実にするために、例えば、0.1mm以上、または1mm以上であってもよい。また、隔離隙間54は、冷却補助器具60を用いた伝熱端子間の接続を容易にするために、例えば、5mm以下、または2mm以下であってもよい。
【0025】
第1伝熱端子50、第2伝熱端子52および隔離隙間54は、真空バルブ34から直線経路36に沿って真空容器30内を見るとき視認できるように配置されている。輻射シールド40にはシールド開口部42が直線経路36上に形成されているため、シールド開口部42を通じて第1伝熱端子50、第2伝熱端子52および隔離隙間54を真空バルブ34から直接視認することができる。言い換えれば、外部環境14からの真空バルブ34を通じた2つの伝熱端子(および隔離隙間54)へのアクセス用の作業空間38が、真空容器30内で直線経路36に沿って真空バルブ34と2つの伝熱端子との間に確保されている。
【0026】
この例のように、真空バルブ34が側壁30cに取り付けられている場合、真空バルブ34は、側壁30c上で隔離隙間54に合わせた高さ位置に設けられている。直線経路36は、側壁30cに垂直な方向、典型的には水平方向に平行となり、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52は、隔離隙間54により、直線経路36に垂直な方向、例えば鉛直方向に離間されている。
【0027】
本書の冒頭で述べたように、極低温装置10が使用される現場に据え付けられ、装置がはじめて起動されるとき、または、極低温装置10のメンテナンス後に再び起動されるときには、極低温装置10を初期温度(例えば室温など周囲温度)から極低温装置10の運転が可能になる目標の極低温まで冷却する初期冷却が行われる。極低温装置10を冷却する二段式の極低温冷凍機20は、一般に、第1段の冷凍能力が比較的大きく、第2段の冷凍能力は第1段に比べてかなり小さい。例えば、第2段の冷凍能力は、第1段に比べて数十分の1でありうる。そのため、第2冷却部の初期冷却には時間がかかりがちである。初期冷却には、典型的に少なくとも数日以上、例えば大型の超伝導コイルであれば一週間以上もの長い時間を要しうる。
【0028】
そこで、この実施の形態では、初期冷却において、極低温冷凍機20に加えて、冷却補助器具60が使用される。冷却補助器具60は、後述のように、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52を熱的に結合することができる。初期冷却の間、極低温冷凍機20の第1段の冷凍能力を利用して第2冷却部の冷却を補助することができ、初期冷却時間を短縮することができる。
【0029】
図2は、実施の形態に係る冷却補助器具60を模式的に示す図である。冷却補助器具60は、真空バルブ34から真空容器30内に挿入可能な接触具62を備える。接触具62は、伝熱体62aと支持柱62bを備える。伝熱体62aは、支持柱62bの先端に取り付けられている。伝熱体62aは、例えば、銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅などの純銅)、アルミニウムなど高い熱伝導率をもつ金属材料で形成される。支持柱62bは、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの断熱材料、または、伝熱体62aよりも低い熱伝導率をもつ低熱伝導材料(例えばステンレス鋼)で形成される。
【0030】
また、冷却補助器具60は、真空バルブ34に取付可能であり、接触具62を支持する支持具64を備える。支持具64は、接触具62(すなわち伝熱体62a)を直線的に進退させるように伸縮可能である。また、支持具64は、接触具62が収容される冷却補助器具60の内部空間66の気密性を保持するように構成されている。
【0031】
より具体的には、支持具64は、取付フランジ64a、真空ベローズ64b、真空フランジ64cを備える。取付フランジ64aは、内部空間66の気密性を保持するように真空バルブ34に取付可能である。真空ベローズ64bは、その一端で取付フランジ64aに気密に接続され、他端で真空フランジ64cに気密に接続されている。真空フランジ64c側の真空ベローズ64bの端部は、真空フランジ64cにより塞がれている。真空フランジ64cには、接触具62の支持柱62bの他端(伝熱体62aとは反対側の端部)が取り付けられており、支持柱62bは、真空ベローズ64b内でその中心軸方向に沿って真空フランジ64cから取付フランジ64aの開口部に向かって延在している。したがって、真空ベローズ64bの伸縮により、取付フランジ64aの開口部を通じて伝熱体62aを直線的に進退させることができる。なお、真空フランジ64cと支持柱62bは、互いに接続された別々の部品であってもよいし、一体化された単一の部品であってもよい。
【0032】
図3は、実施の形態に係る極低温装置10の初期冷却方法を模式的に示す図である。この初期冷却方法では、まず、冷却補助器具60が真空バルブ34に取り付けられる(S10)。冷却補助器具60は、真空バルブ34に取り外し可能に取り付けられる。真空バルブ34への冷却補助器具60の取り付けは、真空バルブ34のフランジに、または真空バルブ34を囲む真空容器30の壁面に、例えばボルト等の締結具を用いて冷却補助器具60の取付フランジ64aを締結することにより行われてもよい。冷却補助器具60の取り付け前に、または取り付け後に、真空バルブ34が開放される。なお、冷却補助器具60を真空バルブ34に取り付ける前に、真空容器30は、真空バルブ34を開くことにより、または真空容器30に設けられた真空バルブ34とは別のリリーフバルブ(図示せず)を開くことにより、大気開放されていてもよい。
【0033】
冷却補助器具60が真空バルブ34に取り付けられた後、真空容器30は、図示しない真空ポンプを用いて真空排気される。真空バルブ34が開放されているため、冷却補助器具60の内部空間66も真空容器30とともに真空排気される。
【0034】
続いて、冷却補助器具60の接触具62が、真空バルブ34から真空容器30内に挿入される(S12)。図示されるように、真空ベローズ64bを縮めるように真空フランジ64cが操作され、それにより、開放された真空バルブ34を通じて接触具62の先端の伝熱体62aが真空容器30内へと進入する。伝熱体62aは、真空容器30内の作業空間38を上述の直線経路36に沿って隔離隙間54に向かって移動する。
【0035】
伝熱体62aは、第2冷却部に物理的に接触する(S14)。この実施の形態では、伝熱体62aは、第1冷却部と第2冷却部の両方に物理的に接触する。図示されるように、伝熱体62aは、隔離隙間54を架橋するようにして第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の両方に接触する。これにより、極低温冷凍機20の第1冷却ステージ22aと第2冷却ステージ22bが、第1伝熱端子50、伝熱体62aおよび第2伝熱端子52を介して熱的に結合される。
【0036】
伝熱体62aは、隔離隙間54を架橋するようにして第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の両方に接触することができるサイズおよび形状を有する。伝熱体62aの長さL(図2参照)は、隔離隙間54を架橋できるように、隔離隙間54の幅(すなわち、隔離隙間54での第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の距離)よりも長い。伝熱体62aの長さは、例えば、1mm以上、または5mm以上であってもよい。伝熱体62aと2つの伝熱端子との間の良好な熱接触のためにこれらの接触面積を大きくするには、伝熱体62aの長さLはなるべく長いことが望まれる。ただし、伝熱体62aの長さLは、真空バルブ34の開口部の直径に制約される。真空バルブ34の開口径は例えば100mm以下であることが多く、そのため、伝熱体62aの長さは、真空バルブ34の開口部を通過することができるように、100mm未満、または50mm未満、または10mm未満であってもよい。
【0037】
伝熱体62aが第1伝熱端子50および第2伝熱端子52に押し当てられた状態が維持されるように、冷却補助器具60の真空フランジ64cが操作される。例えば、真空フランジ64cは、真空容器30または真空バルブ34に例えばねじ止め等により固定されてもよい。
【0038】
そして、伝熱体62aを通じて第2冷却部が冷却される(S16)。極低温冷凍機20の冷却運転が行われ、第1冷却ステージ22a、第2冷却ステージ22bがそれぞれ、初期温度(例えば室温など周囲温度)から第1冷却温度、第2冷却温度へと冷却されていく。第2冷却ステージ22bが第1冷却温度に達するまでは、第1冷却ステージ22aを冷却源として使用して、第1伝熱端子50、伝熱体62aおよび第2伝熱端子52を通じて、第2冷却ステージ22b、被冷却物12など第2冷却部を冷却することができる。なお、第1冷却ステージ22a、第2冷却ステージ22bの冷却温度は、各冷却ステージに設けられた温度センサ(図示せず)により把握されてもよい。
【0039】
冷却後、冷却補助器具60は、真空バルブ34から取り外される。第2冷却部の冷却温度が第1冷却温度に到達した後は、冷却補助器具60を取り外すことができる。冷却補助器具60の取り外しは、上述の取り付けとは逆の手順で行うことができる。すなわち、伝熱体62aを2つの伝熱端子から離し、伝熱体62aを真空バルブ34を通じて真空容器30の外に引き抜くように、冷却補助器具60を操作することができる。第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の熱的な結合は解除される。伝熱体62aが真空バルブ34から外に取り出された後、真空バルブ34が閉鎖され、冷却補助器具60が真空バルブ34から撤去される。
【0040】
こうして、極低温装置10は、図1に示される状態に戻る。第1冷却部は第1冷却ステージ22aによって第1冷却温度に維持される一方、第2冷却部は第2冷却ステージ22bによってさらに冷却され、最終的には第2冷却温度へと冷却される。その後、極低温装置10は通常運転を開始することができる。
【0041】
したがって、実施の形態によると、冷却補助器具60を用いて極低温装置10の初期冷却時間を短くすることができる。つまり、初期冷却の間、冷却補助器具60の伝熱体62aで第1伝熱端子50と第2伝熱端子52を熱的に結合し、極低温冷凍機20の第1段の冷凍能力を利用して第2冷却部の冷却を補助し、それにより初期冷却時間を短縮することができる。
【0042】
既存技術では、初期冷却時間を短くするために、極低温装置に様々な専用の機構をあらかじめ組み込んでおくことが提案されている。しかしながら、こうした専用の初期冷却機構は、初期冷却完了後の極低温装置の通常運転の場面では使用されないにもかかわらず、たいてい大掛かりであり、それが組み込まれた極低温装置のコストアップを招きがちである。また、極低温装置に組み込まれた初期冷却機構が極低温装置の通常運転中に万が一故障した場合には、初期冷却機構の修理や交換のために極低温装置の通常運転を中断しなければならないかもしれず、極低温装置の運用に大きな影響を与えうる。これを避けるために、初期冷却機構に高い信頼性を保証するように設計したとすると、それもまた装置のコスト増加につながりうる。
【0043】
これに対して、実施の形態によると、冷却補助器具60は初期冷却に限り極低温装置10に取り付けられるにすぎない。冷却補助器具60は初期冷却後に極低温装置10から取り外される。極低温装置10は、図1に示されるように、専用の初期冷却機構を持つ必要が無い。極低温装置10のコストを抑えることができる。また、極低温装置10は、通常運転中に初期冷却機構の故障に悩まされることがない。
【0044】
また、冷却補助器具60は、極低温装置10から取り外された後、この極低温装置10で以降に行われ得る初期冷却に、または別の極低温装置での初期冷却に、再利用することができる。
【0045】
図4(a)および図4(b)は、実施の形態に係り、冷却補助器具60の他の一例を模式的に示す図である。冷却補助器具60は、図4(a)に示される格納状態と、図4(b)に示される展開状態とを切り替え可能であってもよい。冷却補助器具60の接触具62は、伝熱体62aと支持柱62bとを備える。伝熱体62aは、支持柱62bの先端に折り畳み可能に(例えば、回動可能に)取り付けられている。なお、図を見やすくするために、例えば真空ベローズ64bなど冷却補助器具60の他の構成要素の図示は省略されている。
【0046】
格納状態においては、図4(a)に示されるように、伝熱体62aは、真空バルブ34を通過することができるように、支持柱62bに沿って折り畳まれている。格納状態を保持するために、伝熱体62aは、ばね62cで支持柱62bに引き寄せられていてもよい。
【0047】
冷却補助器具60の展開状態においては、図4(b)に示されるように、伝熱体62aは、伝熱端子(例えば、第1伝熱端子50、または第2伝熱端子52)に対向するように、支持柱62bから展開される。伝熱体62aは、接触具62が真空バルブ34を通じて真空容器30内に挿入されて伝熱端子に突き当てられることにより展開されてもよい。伝熱体62aの長さLは、真空バルブ34の開口径よりも大きくてもよく、展開状態において伝熱体62aは真空バルブ34を通過することはできない。展開された伝熱体62aは、隔離隙間54を架橋するようにして第1伝熱端子50と第2伝熱端子52の両方に接触する。このように、伝熱体62aを可動式とすることにより、伝熱体62aと伝熱端子との接触面積を広くすることができ、初期冷却での伝熱体62aと伝熱端子との熱接触をより良好にすることができる。
【0048】
図5(a)および図5(b)は、実施の形態に係り、冷却補助器具60および伝熱端子構造の他の一例を模式的に示す図である。図5(a)には、開放された真空バルブ34に冷却補助器具60が取り付けられ、接触具62がまだ挿入されていない状態が示されている。よって、図5(a)では、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52は、物理的に接触せず、熱的に結合されていない。
【0049】
図5(a)に示されるように、仲介伝熱体68が、第1伝熱端子50に可撓性伝熱体70で接続され、第2伝熱端子52と接離可能に配置されている。仲介伝熱体68は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。冷却補助器具60が無いときに仲介伝熱体68が第2伝熱端子52と物理的に接触しないことを確実にするために、ばね72が設けられていてもよい。ばね72は、仲介伝熱体68が第2伝熱端子52から離れた位置に保持されるように仲介伝熱体68を第1伝熱端子50に接続する。
【0050】
冷却補助器具60の接触具62は、支持柱62bを有する。支持柱62bは、上述のように、断熱材料または低熱伝導材料で形成されてもよい図示されるように、接触具62は、伝熱体62aを備えなくてもよい。
【0051】
図5(b)には、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52が物理的に接触し熱的に結合された状態が示されている。真空ベローズ64bの収縮により接触具62(すなわち支持柱62b)が真空バルブ34を通じて真空容器30内に挿入され、支持柱62bの先端が仲介伝熱体68に接触し、仲介伝熱体68が第2伝熱端子52と物理的に接触する。仲介伝熱体68が接触具62により第2伝熱端子52に押し付けられ、隔離隙間54が架橋され、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52が熱的に結合される。このようにして、真空バルブ34を通じて接触具62を第1冷却部に物理的に接触させ、第1冷却部を第2冷却部と熱的に結合することができる。よって、上述の実施の形態と同様に、第1冷却ステージ22aを冷却源として使用して第2冷却部を冷却することができる。
【0052】
なお、図示される例とは逆に、仲介伝熱体68は、第2伝熱端子52に可撓性伝熱体70で接続され、第1伝熱端子50と接離可能に配置されていてもよい。ばね72は、仲介伝熱体68が第1伝熱端子50から離れた位置に保持されるように仲介伝熱体68を第2伝熱端子52に接続してもよい。この場合、支持柱62bの先端が仲介伝熱体68に接触し、仲介伝熱体68が第1伝熱端子50と物理的に接触する。仲介伝熱体68が接触具62により第1伝熱端子50に押し付けられ、第1伝熱端子50と第2伝熱端子52が熱的に結合される。このようにして、真空バルブ34を通じて接触具62を第2冷却部に物理的に接触させ、第1冷却部を第2冷却部と熱的に結合し、第1冷却ステージ22aを冷却源として使用して第2冷却部を冷却することができる。
【0053】
図6は、実施の形態に係り、極低温装置10の他の一例を模式的に示す図である。輻射シールド40のシールド開口部42には、可動シャッター44が設けられていてもよい。可動シャッター44は、図6において矢印46で模式的に示されるように、シールド開口部42を開閉するように構成されている。冷却補助器具60が真空バルブ34に取り付けられ、冷却補助器具60により第1伝熱端子50と第2伝熱端子52を熱的に結合するときには、可動シャッター44は開かれる。これにより、冷却補助器具60は真空バルブ34およびシールド開口部42を通じて第1伝熱端子50と第2伝熱端子52にアクセスすることができる。一方、冷却補助器具60が真空バルブ34から取り外されているときには、可動シャッター44は閉鎖される。これにより、シールド開口部42を通じた第2冷却部(例えば、極低温冷凍機20の第2冷却ステージ22b)への熱の侵入を可動シャッター44により遮蔽することができる。
【0054】
図6に示される可動シャッター44は、図1から図3の実施の形態、図4(a)および図4(b)の実施の形態、および図5(a)および図5(b)の実施の形態に適用されてもよい。あるいは、図6に示される可動シャッター44は、後述の図7(a)および図7(b)の実施の形態に適用されてもよい。
【0055】
図7(a)および図7(b)は、実施の形態に係り、極低温装置10および冷却補助器具60の他の一例を模式的に示す図である。図7(a)には、冷却補助器具60が取り付けられた状態の極低温装置10が示され、図7(b)には、極低温装置10から取り外された状態の冷却補助器具60が示されている。
【0056】
図7(a)に示されるように、極低温装置10は、上述の実施の形態と同様に、被冷却物12と、被冷却物12を冷却する極低温冷凍機20と、極低温冷凍機20が設置され、被冷却物12を収容する真空容器30とを備える。極低温冷凍機20は、第1冷却温度に冷却される第1冷却ステージ22aと、第1冷却温度より低い第2冷却温度に冷却される第2冷却ステージ22bとを備える。真空容器30の壁には、真空バルブ34が設けられている。真空容器30内には、第1冷却ステージ22aによって冷却され、被冷却物12および第2冷却ステージ22bを囲む輻射シールド40が配置されている。被冷却物12は、第2冷却ステージ22bによって冷却される。
【0057】
また、極低温装置10は、真空バルブ34から直線経路36でアクセス可能となるように真空容器30内に配置された伝熱端子74を備える。伝熱端子74は、輻射シールド40の内側に配置されている。伝熱端子74は、第2冷却ステージ22b、または被冷却物12など、真空容器30内で第2冷却温度に冷却される第2冷却部と熱的に結合されており、第2冷却ステージ22bによって第2冷却温度に冷却される。伝熱端子74は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。
【0058】
図7(b)に示されるように、冷却補助器具60は、伝熱体62aと、伝熱体に熱的に結合された冷却源76と、冷却源76を収容するクライオスタット78とを備える。伝熱体62aは、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。冷却源76は、例えば、単段式の極低温冷凍機(例えば、単段GM冷凍機)であってもよい。冷却源76は、極低温冷凍機20の第1冷却ステージ22aと同様に、第1冷却温度への極低温冷却を提供してもよい。あるいは、冷却源76は、第1冷却温度よりも低い冷却温度(例えば、上述の第2冷却温度、または第2冷却温度よりも高い冷却温度)への極低温冷却を提供してもよい。
【0059】
また、冷却補助器具60は、真空バルブ34に取付可能であり、伝熱体62aを支持する支持具64を備える。支持具64は、伝熱体62aを直線的に進退させるように伸縮可能であり、伝熱体62aが収容される冷却補助器具60の内部空間66の気密性を保持するように構成されている。支持具64は、取付フランジ64aと真空ベローズ64bとを備え、クライオスタット78の一部を構成する。取付フランジ64aは、内部空間66の気密性を保持するように真空バルブ34に取付可能である。真空ベローズ64bは、その一端で取付フランジ64aに気密に接続され、他端でクライオスタット78に気密に接続されている。伝熱体62aの基端は、冷却源76と熱的に結合され(例えば、単段式の極低温冷凍機の冷却ステージに取り付けられ)、真空ベローズ64b内でその中心軸方向に沿って取付フランジ64aの開口部に向かって延在している。したがって、真空ベローズ64bの伸縮により、取付フランジ64aの開口部を通じて伝熱体62aを直線的に進退させることができる。
【0060】
図7(a)および図7(b)に示される極低温装置10および冷却補助器具60を用いる初期冷却方法においては、まず、冷却補助器具60が真空バルブ34に取り付けられる。冷却補助器具60は、真空バルブ34から取り外し可能である。冷却補助器具60の取り付け前に、または取り付け後に、真空バルブ34が開放される。冷却補助器具60が真空バルブ34に取り付けられた後、真空容器30は、図示しない真空ポンプを用いて真空排気される。真空バルブ34が開放されているため、冷却補助器具60の内部空間66も真空容器30とともに真空排気される。
【0061】
続いて、冷却補助器具60の伝熱体62aが、真空バルブ34から真空容器30内に挿入される。真空ベローズ64bを縮めるようにクライオスタット78が操作され、それにより、開放された真空バルブ34を通じて伝熱体62aが真空容器30内へと進入する。伝熱体62aは、直線経路36に沿って隔離隙間54に向かって移動する。そして、伝熱体62aは、第2冷却部、具体的には、伝熱端子74に物理的に接触する。これにより、冷却源76が伝熱体62aと伝熱端子74を介して極低温冷凍機20の第2冷却ステージ22bと熱的に結合される。
【0062】
次に、伝熱体62aを通じて第2冷却部が冷却される。冷却源76の冷却運転により、極低温冷凍機20の第2冷却ステージ22bは、初期温度(例えば室温など周囲温度)から冷却源76の冷却温度へと冷却されていく。このとき、極低温冷凍機20の冷却運転も行われる。こうして、極低温装置10の第1冷却部、第2冷却部はそれぞれ、第1冷却温度、第2冷却温度へと冷却される。
【0063】
冷却後、冷却補助器具60は、真空バルブ34から取り外される。冷却補助器具60の取り外しは、上述の取り付けとは逆の手順で行われる。すなわち、伝熱体62aを伝熱端子74から離し、伝熱体62aを真空バルブ34を通じて真空容器30の外に引き抜くように、冷却補助器具60が操作される。伝熱体62aと伝熱端子74の熱的な結合は解除される。伝熱体62aが真空バルブ34から外に取り出された後、真空バルブ34が閉鎖され、冷却補助器具60が真空バルブ34から撤去される。このようにしても、上述の実施の形態と同様に、極低温装置10の初期冷却時間の短縮を簡便に実現することができる。
【0064】
単段式の極低温冷凍機に代えて、またはそれに加えて、図8に示されるように、冷却源76は、極低温冷媒、例えば液体窒素などの極低温液体を備えてもよい。この場合、冷却源76は、伝熱体62aと熱的に結合され、極低温冷媒82を貯えるように構成された極低温冷媒槽80を備えてもよい。あるいは、冷却源76は、伝熱体62aと熱的に結合され、内部を極低温冷媒が流れるように構成された冷却配管を備えてもよい。
【0065】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0066】
上述の実施の形態では、真空ベローズ64bの伸縮により、接触具62、または伝熱体62aが真空バルブ34に対し進退する場合を例として説明しているが、本発明は、これに限られない。ある実施の形態においては、冷却補助器具60は、伝熱体62aと支持柱62bとを備える接触具62と、真空バルブ34に取付可能であり、接触具62を支持する支持具64と、を備え、支持柱62bが伝熱体62aを真空バルブ34に対し進退させるように伸縮可能であってもよい。支持具64は、取付フランジ64aおよび真空フランジ64cと、取付フランジ64aと真空フランジ64cとを接続し、内部に接触具62を収容する筒部材とを備えてもよい。
【0067】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機20が二段式のGM冷凍機である場合を例として説明したが、極低温冷凍機20は、単段式、または三段式など他の多段式のGM冷凍機であってもよい。また、極低温冷凍機20は、GM冷凍機には限られない。極低温冷凍機20は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0068】
上述の実施の形態では、極低温装置10は、被冷却物12を極低温冷凍機20で直接冷却する伝導冷却式で構成されている。しかし、ある実施の形態においては、極低温装置10は、被冷却物12を液体ヘリウムなどの極低温冷媒に浸して冷却する浸漬冷却式で構成されてもよい。
【0069】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0070】
10 極低温装置、 20 極低温冷凍機、 22a 第1冷却ステージ、 22b 第2冷却ステージ、 30 真空容器、 34 真空バルブ、 36 直線経路、 38 作業空間、 40 輻射シールド、 42 シールド開口部、 44 可動シャッター、 50 第1伝熱端子、 52 第2伝熱端子、 54 隔離隙間、 60 冷却補助器具、 62 接触具、 62a 伝熱体、 64 支持具、 64a 取付フランジ、 64b 真空ベローズ、 64c 真空フランジ、 68 仲介伝熱体、 70 可撓性伝熱体、 74 伝熱端子、 76 冷却源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8