(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025899
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 5/14 20060101AFI20250214BHJP
H04B 10/2575 20130101ALI20250214BHJP
H04B 10/29 20130101ALI20250214BHJP
【FI】
H04L5/14
H04B10/2575
H04B10/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131121
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 敦
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AD01
5K102AD04
5K102AD11
5K102AH21
5K102AH29
5K102AL11
5K102KA01
5K102KA42
5K102PB00
5K102PH31
5K102RB14
(57)【要約】
【課題】 アナログRoFを使用したDASにおいて、RF信号の特性劣化を抑え、通信品質を向上させることができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】 A-RoF親機2とA-RoF子機30との間において、TDD信号と、TDD信号のタイミングに同期するRF信号と、TDD信号のタイミングに同期するDL制御信号及びUL制御信号とを多重し、DL制御信号の周波数とUL制御信号の周波数とを同じ周波数とした無線通信システムであり、更に、アップリンクのRF信号にダウンリンクの制御信号を同期させ、ダウンリンクのRF信号にアップリンクの制御信号を同期させた無線通信システムとしている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と子機とを光ファイバで接続し、無線信号と制御信号を前記光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信システムであって、
前記親機と前記子機との間の通信は、時分割複信信号と、前記時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、前記時分割複信信号のタイミングに同期するダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重し、前記ダウンリンクの制御信号の周波数と前記アップリンクの制御信号の周波数とを同じにしたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記親機と前記子機との間の通信は、前記時分割複信信号のタイミングに同期するアップリンクの無線信号及びダウンリンクの無線信号と、前記アップリンクの無線信号に同期するダウンリンクの制御信号と、前記ダウンリンクの無線信号に同期するアップリンクの制御信号と、を多重することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記親機と前記子機との間の通信は、無線信号の周波数と制御信号の周波数とを同じにしたことを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記親機と複数の前記子機との間にアナログ光ファイバ無線を使用する制御分配装置を設け、
前記制御分配装置は、前記親機から複数のダウンリンクの制御信号を入力し、前記子機に分配するものであり、ダウンリンクの制御信号が当該制御分配装置宛であれば、前記子機には送信せず、前記ダウンリンクの制御信号が特定の子機宛であれば、前記特定の子機以外には前記制御信号を送信しないことを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項5】
親機と子機とが光ファイバで接続され、無線信号と制御信号を前記光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信方法であって、
前記親機と前記子機との間の通信は、時分割複信信号と、前記時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、前記時分割複信信号のタイミングに同期し、同じ周波数を用いたダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重することを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログRoF(Radio on Fiber:光ファイバ無線)による分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)を用いた無線通信システム及び無線通信方法に係り、特に、通信性能を向上させることができる無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
移動体通信システムは、高速大容量、低遅延、多数同時接続を実現すべく第5世代(5G)へと移行しつつあり、更に、その10年後には第6世代(6G)へと移行することが想定される。
特に5G、6Gでは高速大容量、多数同時接続のために、無線周波数帯の高利用や、大規模なアレイアンテナを用いてビームフォーミングを行うMassive MIMO、分散アンテナ等の技術を用いて効率よく通信を行うことが求められている。
【0003】
5Gでは、屋内・不感地対策等として、DAS(Distributed Antenna System:分散アンテナシステム)がある。DASでは、移動体通信システムの基地局に光通信の親機を接続し、親機とアンテナを備えた複数の子機とを光ファイバで接続することで、分散アンテナを多く設置し、通信可能な地域を拡大する。
しかし、6Gの場合は、5Gより高い周波数帯を使用するため、減衰しやすく伝送距離が短くなり、更に多くの分散アンテナを設置しなければならない。
【0004】
これまで使用されてきたデジタルRoF(Radio on Fiber:光ファイバ無線)による分散アンテナシステムでは、子機の無線部(RF部)に高性能な回路(D/A変換回路、変復調回路、RF(Radio Frequency)変換回路等)を実装する必要があった。
そのため、デジタルRoFによる分散アンテナシステムで子機を多く設置すると、高価なシステムとなってしまう。
【0005】
そこで、省電力、低コスト化を図るため、子機を安価にすることが可能なアナログRoFによる分散アンテナシステムが検討されている。アナログRoFを用いた場合、子機における高周波部の回路を簡易に構成することが可能である。
但し、一部の子機のビーム方向の変更や、装置の制御など、接続された複数の子機の内、特定の子機を個別に制御する必要がある。
【0006】
[従来の無線通信システムの構成:
図6]
従来の無線通信システムの構成について
図6を用いて説明する。
図6は、従来の無線通信システムの概略構成図である。
従来の無線通信システムは、アナログRoFによる分散アンテナシステムであり、
図6に示すように、従来の無線通信システムは、RU(Radio Unit)部61と、アナログRoF親機(以下、A-RoF親機と称し、図ではA-RoF親機と記載)62と、アナログRoF子機(以下、A-RoF子機と称し、図ではA-RoF子機と記載)60とを備え、A-RoF親機62とA-RoF子機63とは光ファイバで接続されている。
更に、A-RoF子機60は、光/電気変換部63と、RF(Radio Frequency)部64とを備えている。
【0007】
RU部61は、5G,6G等の移動体通信システムの基地局とA-RoF親機62との間に設けられ、通信データであるRF信号、タイミング制御のためのTDD(Time Division Duplex:時分割複信)信号、基地局からRF部64へのダウンリンク(DL)制御信号、及びRF部64から基地局へのアップリンク(UL)制御信号の4種類の信号の送受信を行う。
また、RU部61は、変復調部65を備え、RF信号の通信に伴う変復調処理等の信号処理を行う。
【0008】
A-RoF親機62は、電気/光(E/O)変換及び光/電気(O/E)変換を行うE/O・O/E変換部66を備え、RU部61と電気信号により通信し、A-RoF子機60と光信号により通信を行う。
A-RoF親機62は、ダウンリンクの信号を多重して光信号に変換し、A-RoF子機60に送信すると共に、A-RoF子機60からのアップリンクの光信号を電気信号に変換し、RF信号とUL制御信号を分離してRU部61に出力する。
【0009】
A-RoF子機60の光/電気変換部63は、光/電気(O/E)変換及び電気/光(E/O)変換を行うO/E・E/O変換部67を備え、A-RoF親機62と光信号により通信し、RF部64と電気信号により通信する。
A-RoF子機60光/電気変換部63は、ダウンリンクの光信号を受信して電気信号に変換し、RF信号とDL制御信号を分離してRF部64に出力し、アップリンクのRF信号とUL制御信号を多重して光信号に変換して、A-RoF親機62に送信する。
【0010】
RF部64は、無線通信部であり、情報制御部68と、通信制御部69と、アンテナ70とを備え、光/電気変換部63と有線で接続し、移動局(図示せず)等の端末と無線で接続して通信を行う。
情報制御部68は、受信したTDD信号を通信制御部69に出力し、DL制御情報に基づいて自装置内部の制御を行い、自装置からのUL制御情報を光/電気変換部63に出力する。
通信制御部69は、TDD信号に基づいて送受信のタイミングを切り替え、情報制御部68からの制御情報に従ってアンテナ70の制御等を行い、RF信号の送受信を行う。
【0011】
そして、RF部64は、DLのRF信号を通信制御部69を介してアンテナ70から空間に放射出力し、アンテナ70で補足したRF信号を通信制御部69を介して光/電気変換部63に出力する。
【0012】
従来の無線通信システムでは、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長多重)の技術を用いて、RF信号の他に、TDD信号、DL制御信号、UL制御信号を多重して光ファイバで双方向通信を行っている。
ここで、
図6に示すように、従来の無線通信システムでは、TDD信号を周波数f1、DL制御信号を周波数f2、UL制御信号を周波数f3として多重している。
【0013】
[従来の無線通信システムにおける送受信のタイミング:
図7]
次に、従来のアナログRoFを用いた無線通信システムにおける送受信について
図7を用いて説明する。
図7は、従来の送受信のタイムチャートである。また、ここではA-RoF親機62の動作として説明する。
図7に示すように、従来の無線通信システムでは、A-RoF親機62は、TDD信号に基づいてRF信号の送受信を切り替える。ここでは、TDD信号がH(High)レベルの時にDLのRF信号を送信し、L(Low)レベルの時にULのRF信号を受信する。
一方、DL制御信号、UL制御信号については、RF信号とは異なるタイミングで送信、受信が行われている。
【0014】
[従来の無線通信システムにおける信号レベル:
図8]
次に、従来の無線通信システムにおける伝送信号の信号レベルについて
図8を用いて説明する。
図8は、従来の伝送信号の信号レベルを示す説明図である。
図8では、横軸を周波数軸、縦軸を信号レベルとしている。
図8に示すように、従来の無線通信システムでは、周波数f2のDL制御信号、周波数f3のUL制御信号、周波数f1のTDD信号、及び主信号であるRF信号が多重された状態で光ファイバで伝送される。
【0015】
ここで、電気光変換/光電気変換時に、重畳される/重畳された周波数信号の数(波数)が多いと、IM歪み(Intermodulation distortion:相互変調歪み)が発生しやすく、RF信号周辺の歪みが多くなる。
また、E/O・O/E変換部66及びO/E・E/O変換部67の部品の許容電力によって、伝送信号の総電力の上限が決まっているので、重畳される信号が多いほどRF信号の信号レベルが圧迫されることになる。
これらにより、多重される信号が多いとRF信号の特性が劣化してしまう。
【0016】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2014-187450号公報「光伝送装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、多周波数共有で光伝送する場合に、信号の規格を満たしつつ、光伝送容量を低減できる光伝送装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、従来のアナログRoFを用いた無線通信システムでは、主信号であるRF信号に多重される周波数信号の数が多く、IM歪みや信号レベル低下の影響でRF信号の特性が劣化してしまうという問題点があった。
【0019】
尚、特許文献1には、アナログRoFを用いたDASにおいて、ダウンリンクの制御信号とアップリンクの制御信号の周波数を同一として伝送する構成の記載がない。
【0020】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、アナログRoFを使用したDASにおいて、RF信号の特性劣化を抑え、通信品質を向上させることができる無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、親機と子機とを光ファイバで接続し、無線信号と制御信号を光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信システムであって、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号と、時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、時分割複信信号のタイミングに同期するダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重し、ダウンリンクの制御信号の周波数とアップリンクの制御信号の周波数とを同じにしたことを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号のタイミングに同期するアップリンクの無線信号及びダウンリンクの無線信号と、アップリンクの無線信号に同期するダウンリンクの制御信号と、ダウンリンクの無線信号に同期するアップリンクの制御信号と、を多重することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、親機と子機との間の通信は、無線信号の周波数と制御信号の周波数とを同じにしたことを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、親機と複数の子機との間にアナログ光ファイバ無線を使用する制御分配装置を設け、制御分配装置は、親機から複数のダウンリンクの制御信号を入力し、子機に分配するものであり、ダウンリンクの制御信号が当該制御分配装置宛であれば、子機には送信せず、ダウンリンクの制御信号が特定の子機宛であれば、特定の子機以外には制御信号を送信しないことを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、親機と子機とが光ファイバで接続され、無線信号と制御信号を光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信方法であって、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号と、時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、時分割複信信号のタイミングに同期し、同じ周波数を用いたダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、親機と子機とを光ファイバで接続し、無線信号と制御信号を光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信システムであって、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号と、時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、時分割複信信号のタイミングに同期するダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重し、ダウンリンクの制御信号の周波数とアップリンクの制御信号の周波数とを同じにした無線通信システムとしているので、多重される周波数信号の数を低減して、無線信号周辺の歪みを抑えると共に、無線信号のレベルを増大させることができ、安価な構成で無線信号の通信品質を向上させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号のタイミングに同期するアップリンクの無線信号及びダウンリンクの無線信号と、アップリンクの無線信号に同期するダウンリンクの制御信号と、ダウンリンクの無線信号に同期するアップリンクの制御信号と、を多重する上記無線通信システムとしているので、電気光変換及び光電気変換時に、無線信号に制御信号を重畳せずに済み、無線信号の品質を更に向上させることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、親機と複数の子機との間にアナログ光ファイバ無線を使用する制御分配装置を設け、制御分配装置は、親機から複数のダウンリンクの制御信号を入力し、子機に分配するものであり、ダウンリンクの制御信号が当該制御分配装置宛であれば、子機には送信せず、ダウンリンクの制御信号が特定の子機宛であれば、特定の子機以外には制御信号を送信しない上記無線通信システムとしているので、制御信号の宛先となっていない子機には制御信号を送信しないことで多重される信号を減らして無線信号の歪みを低減し、システム全体のコストを低減できる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、親機と子機とが光ファイバで接続され、無線信号と制御信号を光ファイバで双方向通信するアナログ光ファイバ無線を使用した無線通信方法であって、親機と子機との間の通信は、時分割複信信号と、時分割複信信号のタイミングに同期する無線信号と、時分割複信信号のタイミングに同期し、同じ周波数を用いたダウンリンクの制御信号及びアップリンクの制御信号と、を多重する無線通信方法としているので、多重される周波数信号の数を低減して、無線信号周辺の歪みを抑えると共に、無線信号のレベルを増大させることができ、安価な構成で無線信号の通信品質を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】本システムの信号レベルを示す説明図である。
【
図5】別のシステムにおけるDL制御情報の例を示す説明図である。
【
図6】従来の無線通信システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本システム)は、アナログRoFを用いたDASであり、アナログRoF親機(A-RoF親機)とアナログRoF子機(A-RoF子機)との間の通信は、TDD信号と、TDD信号のタイミングに同期するRF信号と、TDD信号のタイミングに同期するDL制御信号及びUL制御信号とを多重し、DL制御信号の周波数とUL制御信号の周波数とを同じにしたものであり、制御信号の送受信に用いる周波数の数を削減して、多重される周波数信号の数を減らし、IM歪みを低減すると共にRF信号の信号レベルを大きくすることができ、装置コストを抑えつつ、RF信号の特性劣化を防ぎ、通信品質を向上させることができるものである。
また、本発明の実施の形態に係る無線通信方法は、本システムにおける無線通信方法である。
【0032】
[本システムの構成:
図1]
本システムについて
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムの概略構成図である。
本システムの基本的な構成は、
図6に示した従来の無線通信システムとほぼ同様であり、
図1に示すようにRU部1と、A-RoF親機2と、A-RoF子機30とを基本的に備えている。但し、A-RoF親機2とA-RoF子機30との間の通信の方法が従来とは異なっている。
【0033】
RU部1は、変復調部11を備え、RF信号の通信に伴う変復調処理等の信号処理を行う。
本システムでは、従来と同様に、RF信号、TDD信号、DL制御信号、UL制御信号の4種類の信号の送受信を行うが、制御信号に用いる周波数をダウンリンクとアップリンクで共通にしている。
【0034】
具体的には、TDD信号を周波数f1、DL制御信号及びUL制御信号を周波数f2として、RF信号と多重する。
従来、多重する4種類の信号にそれぞれ異なる周波数を割り当てて、4波を多重していたが、本システムでは多重する周波数を3波とすることにより、重畳される信号数を減らして、IM歪みを低減すると共に、RF信号の信号レベルを大きくすることができ、通信品質を向上させることができるものである。
本システムにおける送受信の周波数やタイミングについては後述する。
【0035】
A-RoF親機2は、制御信号切替え部(図では制御信号切替部)21と、E/O・O/E変換部22を備え、RU部1と電気信号により通信し、A-RoF子機30と光ファイバを介して光信号により通信を行う。
制御信号切替え部21は、DL制御信号及びUL制御信号とE/O・O/E変換部22との接続を切り替える処理を行う。
【0036】
具体的には、制御信号切替え部21は、TDD信号のタイミングに基づいて、E/O・O/E変換部22との接続をDL制御信号側に切り替えて、DL制御信号をA-RoF子機30に送信するか、又はE/O・O/E変換部22との接続をUL制御信号側に切り替えて、UL制御信号をRU部1に送信するか、の制御を行う。
【0037】
A-RoF子機30は、光/電気変換部3とRF部4とを備えている。
光/電気変換部3は、光信号と電気信号の相互変換(光/電気、電気/光)を行うものであり、O/E・E/O変換部31と、TDDスイッチ(図ではTDD SWと記載)32とを備え、ダウンリンクの光信号を受信して電気信号に変換し、RF信号、TDD信号、DL制御信号を分離してRF部4に出力し、アップリンクのRF信号にUL制御信号を重畳して光信号に変換して、A-RoF親機2に送信する。
【0038】
UL制御信号のいずれかをO/E・E/O変換部31に接続するよう切り替える。切り替えのタイミングについては後述する。
【0039】
RF部4は、情報制御部41と、通信制御部42と、アンテナ43とを備え、移動局等の端末と無線で接続して通信を行う。
通信制御部42と、アンテナ43とは従来と同様であり、説明は省略する。
情報制御部41は、TDD信号のタイミングに基づいて、光/電気変換部3から受信したTDD信号を通信制御部42に出力し、DL制御情報に基づいて自装置を制御すると共に、自装置からのUL制御情報を光/電気変換部3に出力する。
【0040】
[本無線通信システムにおける送受信のタイミング:
図2]
次に、本無線通信システムにおける送受信について
図2を用いて説明する。
図2は、本無線通信システムのタイムチャートである。また、ここではA-RoF親機2の動作として説明する。
図2に示すように、本無線通信システムでは、RF信号については、
図7に示した従来の無線通信システムと同様にTDD信号に同期して送受信を切り替える。具体的には、A-RoF親機2は、TDD信号がHレベルの時にDLのRF信号を送信し、Lレベルの時にULのRF信号を受信する。
【0041】
そして、本無線通信システムの特徴として、DL制御信号及びUL制御信号を同一の周波数f2を用いて伝送するようにしており、TDD信号に同期してDL制御信号とUL制御信号とを切り替える。
具体的には、A-RoF親機2の制御信号切替え部21は、DLのRF信号の送信に同期して(ここではTDD信号がHレベルの時に)UL制御信号を受信し、ULのRF信号の受信に同期して(ここではTDD信号がLレベルの時に)DL制御信号を送信する。
【0042】
このように、UL制御信号とDL制御信号のタイミングを反対にして、送受信が重複しないように制御することにより、同一周波数を用いて送受信を行うことが可能となる。
また、RF信号と制御信号の送受を逆にすることで、E/O・O/E変換部22及びO/E・E/O変換部31においてRF信号と制御信号とを重畳しなくて済み、歪を低減し、RF信号のレベルを確保できるものである。
【0043】
[本無線通信システムにおける信号レベル:
図3]
次に、本無線通信システムにおける伝送信号の信号レベルについて
図3を用いて説明する。
図3は、本無線通信システムの伝送信号の信号レベルを示す説明図である。
図3に示すように、本無線通信システムでは、RF信号と、周波数f1のTDD信号、及び周波数f2のUL制御信号及びDL制御信号、の3波が多重された状態で光ファイバによって伝送される。
【0044】
4波を多重していた従来に比べて、多重される波数が少なくなるため、IM歪を抑えると共に、送信電力に上限があっても従来に比べてRF信号の送信電力を大きくすることができ、RF信号の特性を改善し、通信品質を向上させることができるものである。
【0045】
また、RF信号の周波数を、制御信号と同一の周波数とする(f2とする)ことにより、多重される波数を2波に減らして、RF信号の歪み成分を低減し、一層通信品質を良好にすることができるものである。
RF信号と制御信号の周波数を同一としても、RF信号と制御信号はダウンリンクとアップリンクが同期しているため、E/O・O/E変換部22及びO/E・E/O変換部31での処理に問題はない。
【0046】
更にまた、上述した例では、基地局から送信されるTDD信号をA-RoF親機2及びA-RoF子機30に伝送するものとしたが、A-RoF親機2及びA-RoF子機30において、RF信号から生成することも可能である。その場合には、TDD信号を多重して伝送する必要がなくなるため、更に多重される波数を減らして、通信品質を向上させることが可能となる。
【0047】
[別の実施の形態]
上述した例では、A-RoF子機30を1台接続した例について説明したが、本発明の別の実施の形態では、A-RoF親機2からの信号を分配する制御分配装置を設けることにより、A-RoF子機30を複数接続したシステムとしている。本発明の別の実施の形態に係るシステムを別のシステムと呼ぶ。
【0048】
別のシステムでは、制御分配装置が、各A-RoF子機30宛のDLのRF信号及びDL制御信号を、当該A-RoF子機30のみに送信すると共に、制御分配装置宛のDL制御信号があった場合には、当該制御信号をいずれのA-RoF子機30にも送出しない制御を行うものとしている。
これにより、不要な制御信号を多重せずに済み、RF信号の特性を良好に保つことができるものである。制御分配装置については後述する。
【0049】
[別のシステムの構成:
図4]
別のシステムの構成について
図4を用いて説明する。
図4は、別のシステムの概略構成図である。
図4に示すように、別のシステムでは、子機側の構成として、
図1と同様のA-RoF子機30a及び30b(区別しない場合にはA-RoF子機30と記載することもある)を備え、親機側の構成として、RU部10とA-RoF親機20とを備え、A-RoF親機20とA-RoF子機30a及び30bとの間に、制御分配装置(図ではA-RoF制御分配装置と記載)5を備えている。
A-RoF子機30は、
図1と同様の構成及び動作であるため、説明は省略する。
【0050】
RU部10は、各A-RoF子機30のRF部4で送受信されるRF信号に対応して、複数の変復調部11a及び11bを備えており、それぞれ対応するRF信号の変復調を行う。ここでは、RF部4aはRF信号(1)(図ではRF信号1と記載)を送受信し、RF部4bはRF信号(2)(図ではRF信号2と記載)を送受信するものとしている。
【0051】
A-RoF親機20は、
図1に示した本システムと同様の制御信号切替え部21と、多重分離部(図ではMUX/DEMUXと記載)23とを備えている。
多重分離部23は、RF信号(1)及びRF信号(2)と、周波数f1のTDD信号と、周波数f2のDL制御信号及びUL制御信号について、ダウンリンクの信号を光信号に変換して多重し、光ファイバを介して制御分配器5に出力し、光ファイバから入力される多重されたアップリンクの光信号を各信号に分離して電気信号に変換して基地局に送出する。
【0052】
制御分配装置5は、多重分離部51と、RFスイッチ52と、TDDスイッチ53と、制御信号判定部54と、E/O・O/E変換部55a,55b(E/O・O/E変換部55と記載することもある)とを備えている。
多重分離部51は、光ファイバから入力される多重されたダウンリンクの光信号を電気信号に変換して各信号に分離し、ダウンリンクのRF信号(1)及びRF信号(2)をRFスイッチ52に出力し、TDD信号及びDL制御信号をE/O・O/E変換部55に出力する。
また、多重分離部51は、アップリンクの信号を多重して光信号に変換し、光ファイバを介してA-RoF親機20に出力する。
【0053】
RFスイッチ52は、ダウンリンクのRF信号について、宛先となるRF部4に接続する光/電気変換部3に対応するE/O・O/E変換部55に出力すると共に、他のE/O・O/E変換部55には出力しないよう、スイッチのオン/オフを切り替える。
具体的には、RFスイッチ52は、多重分離部51からダウンリンクのRF信号(1)が入力された場合には、E/O・O/E変換部55aへの接続をオンとし、E/O・O/E変換部55bへの接続をオフとする。
反対に、多重分離部51からダウンリンクのRF信号(2)が入力された場合には、E/O・O/E変換部55bへの接続をオンとし、E/O・O/E変換部55aへの接続をオフとする。
【0054】
また、RFスイッチ52は、制御分配装置5宛のDL制御信号の入力に伴う制御信号判定部54からの指示に従って、RF信号の出力をオフに切り替え、指示に従って再びオンに切り替える。
DL制御信号に関する切替えについては後述する。
【0055】
TDDスイッチ53は、TDD信号に同期して、DL制御信号とUL制御信号とを切り替え、多重分離部51からのDL制御信号を制御信号判定部54に出力し、E/O・O/E変換部55からのUL制御信号を多重分離部51に出力する。
【0056】
制御信号判定部54は、DL制御信号の宛先に応じて、出力先を制御する。
別のシステムでは、DL制御信号の特定の位置に宛先(特定のRU4又は制御分配装置5)の情報が含まれており、制御分配装置5はこの情報に基づいて出力先を切り替える。
【0057】
具体的には、制御信号判定部54は、DL制御信号の宛先を判定し、入力されたDL制御信号が特定のRF部4宛であれば、当該RF部4に対応するE/O・O/E変換部55に出力し、制御分配装置5宛であれば、当該制御信号に基づいて自装置の制御を行うと共に、当該DL制御信号を終端させる。また、その際には、RFスイッチ52を制御してRF信号の出力をオフにする。
これにより、不要なDL制御信号の伝送をなくし、歪みを低減し、RF信号の送信レベルを大きくして特性を良好にすることができるものである。
尚、RFスイッチ52をオフにした場合には、制御信号判定部54は、例えばTDD信号のタイミングに合わせて、UL制御信号のタイミングでオンにするよう制御する。
【0058】
別のシステムでは、RF部4の制御の一部を制御分配装置5によって行うことにより、RF部4に伝送される制御情報を低減することも可能である。つまり、制御分配装置5宛のDL制御信号には、制御分配装置5の制御を行う信号のほか、配下に接続されたA-RoF子機30のRF部の制御を制御分配装置5単位で行うための信号も含まれる。
制御分配装置5単位で行うRF部4の制御としては、例えば、個別RF部または特定グループのリセット等がある。
【0059】
また、別のシステムでは、制御信号を同一周波数とすることで削減した1波分を用いて、各RF部4毎または同じ制御信号の送受信を行うRF部4の特定のグループに対して1波長を割り当て、光波長の有効利用を図ることができるものである。これにより、多重分離部51の性能に応じて、接続するRF部4の数を増やすことができる。
図4の例では、RF信号を個別の光波長(λ1、λ2)に変換することにより、A-RoF親機20と制御分配装置5との間の伝送で制御信号が多重されても歪は発生しない。
歪が発生するのは制御分配装置5のE/O・O/E変換部55であるが、ここで、制御信号が、一部のRF部4のみにしかRF信号に重畳されないため、全体として歪成分の低減を図ることができるものである。
【0060】
[DL制御情報:
図5]
別のシステムにおけるDL制御情報について
図5を用いて説明する。
図5は、別のシステムにおけるDL制御情報の例を示す説明図である。
図5に示すように、別のシステムでは、TDD信号に同期したDL制御信号区間の内、一部の特定区間を制御分配装置用の制御情報として割り当て、別の特定区間をRF部4用の制御情報として割り当てている。
図5の例では、前半は制御分配装置5用、後半はRF部4用のDL制御情報としている。
【0061】
そして、制御分配装置5の制御信号判定部54は、DL制御信号が前半区間に含まれるかどうかを判定して、制御分配装置5宛であることを識別して、制御を行う。
RF部4用であれば、更に宛先を識別して、それに応じてDL制御信号の出力先を特定する。
【0062】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、A-RoF親機2とA-RoF子機30との間の通信において、TDD信号と、TDD信号のタイミングに同期するRF信号と、TDD信号のタイミングに同期するDL制御信号及びUL制御信号とを多重し、DL制御信号の周波数とUL制御信号の周波数とを同じ周波数にしたものであり、制御信号の送受信に用いる周波数の数を削減して、多重される周波数信号の数を減らし、IM歪みを低減すると共にRF信号の信号レベルを大きくすることができ、装置コストを抑えつつ、RF信号の特性劣化を防ぎ、通信品質を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、アナログRoFを使用したDASにおいて、RF信号の特性劣化を抑え、通信品質を向上させることができる無線通信システム及び無線通信方法に適している。
【符号の説明】
【0064】
1,10,61…RU部、 2,20,62…A-RoF親機、 3,63…光/電気変換部、 30,60…A-RoF子機、 4,64…RF部、 5…制御分配装置、 11,65…変復調部、 21…制御信号切替え部、 22,55,66…E/O・O/E変換部、 23,51…多重分離部、 31,67…O/E・E/O変換部、 32,53…TDDスイッチ、 41,68…情報制御部、 42,69…通信制御部、 43,70…アンテナ、 52…RFスイッチ、 54…制御信号判定部