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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025912
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】液晶光学素子及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250214BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20250214BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20250214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250214BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250214BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/20
B32B7/023
B32B27/00 B
B32B27/18 Z
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131150
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
2H291
4F100
【Fターム(参考)】
2H148AA06
2H148AA12
2H148AA18
2H148AA23
2H149AA02
2H149AB01
2H149DB02
2H149FA27W
2H149FA27Y
2H149FA34W
2H149FA34Y
2H149FD04
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB05
2H291GA01
2H291GA08
2H291MA02
2H291PA84
2H291PA85
2H291PA87
4F100AK80
4F100AK80B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA42B
4F100CA30B
4F100GB48
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN18
4F100JN18B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】反射帯域を制限することが可能な液晶光学素子を提供する。
【解決手段】一本実施形態によれば、液晶光学素子は、透明基板と、前記透明基板に対向し、コレステリック液晶及び液晶性を示す添加剤を有する液晶層と、を備え、前記添加剤の屈折率異方性は、前記液晶層の屈折率異方性よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板に対向し、コレステリック液晶及び液晶性を示す添加剤を有する液晶層と、を備え、
前記添加剤の屈折率異方性は、前記液晶層の屈折率異方性よりも小さい、
液晶光学素子。
【請求項2】
透明基板と、
前記透明基板に対向し、コレステリック液晶及び液晶性を示す添加剤を有する液晶層と、を備え、
前記添加剤の屈折率異方性は、前記コレステリック液晶の屈折率異方性よりも小さい、
液晶光学素子。
【請求項3】
前記添加剤は、ネマティック液晶材料またはディスコティック液晶材料によって形成されている、
請求項1または2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記添加剤は、アルコキシシクロヘキシルシクロヘキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンビニル系、アルキルフェニルシクロヘキサン系、アルコキシフェニルシクロヘキサン系、フルオロフェニルシクロヘキサン系、または、シアノフェニルシクロヘキサン系の材料によって形成されている、
請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記コレステリック液晶の螺旋ピッチは、200nm以上、450nm以下である、
請求項1または2に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記液晶層の屈折率異方性は、0.1より大きく、
前記添加剤の屈折率異方性は、0.1より小さい、
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記コレステリック液晶の屈折率異方性は、0.1より大きく、
前記添加剤の屈折率異方性は、0.1より小さい、
請求項2に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する透明基板と、
前記透明基板の第1領域において、前記第1主面に対向し、表示光を出射するように構成された表示モジュールと、
前記第1領域において、前記第2主面に対向し、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、
前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、
前記第2液晶層に重なり、第3コレステリック液晶を有する第3液晶層と、を備え、
前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を有し、
前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶は、互いに異なる螺旋ピッチを有し、
前記添加剤の屈折率異方性は、前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々の屈折率異方性よりも小さい、
表示装置。
【請求項9】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する透明基板と、
前記透明基板の第1領域において、前記第1主面に対向し、表示光を出射するように構成された表示モジュールと、
前記第1領域において、前記第2主面に対向し、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、
前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、
前記第2液晶層に重なり、第3コレステリック液晶を有する第3液晶層と、を備え、
前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を有し、
前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶は、互いに異なる螺旋ピッチを有し、
前記添加剤の屈折率異方性は、前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶の各々の屈折率異方性よりも小さい、
表示装置。
【請求項10】
さらに、前記透明基板のうち、前記第1領域から離間した第2領域において、前記第2主面に対向し、第4コレステリック液晶及び前記添加剤を有する第4液晶層と、
前記第4液晶層に重なり、第5コレステリック液晶及び前記添加剤を有する第5液晶層と、
前記第5液晶層に重なり、第6コレステリック液晶及び前記添加剤を有する第6液晶層と、を備え、
前記第1コレステリック液晶及び前記第4コレステリック液晶は、同等の螺旋ピッチを有し、且つ、同一方向に旋回し、
前記第2コレステリック液晶及び前記第5コレステリック液晶は、同等の螺旋ピッチを有し、且つ、同一方向に旋回し、
前記第3コレステリック液晶及び前記第6コレステリック液晶は、同等の螺旋ピッチを有し、且つ、同一方向に旋回している、
請求項8または9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子では、所望の光学性能を実現する上で、格子周期、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さdといった各種パラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、反射帯域を制限することが可能な液晶光学素子及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、液晶光学素子は、
透明基板と、前記透明基板に対向し、コレステリック液晶及び液晶性を示す添加剤を有する液晶層と、を備え、前記添加剤の屈折率異方性は、前記液晶層の屈折率異方性よりも小さい。
【0006】
一実施形態によれば、液晶光学素子は、
透明基板と、前記透明基板に対向し、コレステリック液晶及び液晶性を示す添加剤を有する液晶層と、を備え、前記添加剤の屈折率異方性は、前記コレステリック液晶の屈折率異方性よりも小さい。
【0007】
一実施形態によれば、表示装置は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する透明基板と、前記透明基板の第1領域において、前記第1主面に対向し、表示光を出射するように構成された表示モジュールと、前記第1領域において、前記第2主面に対向し、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、前記第2液晶層に重なり、第3コレステリック液晶を有する第3液晶層と、を備え、前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を有し、前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶は、互いに異なる螺旋ピッチを有し、前記添加剤の屈折率異方性は、前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々の屈折率異方性よりも小さい。
【0008】
一実施形態によれば、表示装置は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する透明基板と、前記透明基板の第1領域において、前記第1主面に対向し、表示光を出射するように構成された表示モジュールと、前記第1領域において、前記第2主面に対向し、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、前記第2液晶層に重なり、第3コレステリック液晶を有する第3液晶層と、を備え、前記第1液晶層、前記第2液晶層、及び、前記第3液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を有し、前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶は、互いに異なる螺旋ピッチを有し、前記添加剤の屈折率異方性は、前記第1コレステリック液晶、前記第2コレステリック液晶、及び、前記第3コレステリック液晶の各々の屈折率異方性よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図2図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
図3図3は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの他の例を説明するための図である。
図4図4は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図5図5は、本実施形態において添加剤4として適用可能な材料例を示す図である。
図6図6は、本実施形態において添加剤4として適用可能な材料例を示す図である。
図7図7は、本実施形態において添加剤4として適用可能な材料例を示す図である。
図8図8は、本実施形態において添加剤4として適用可能な材料例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係る液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
図10図10は、本実施形態に係る液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
図11図11は、本実施形態に係る液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
図12図12は、液晶層3に添加剤4が浸透する様子を説明するための図である。
図13図13は、表示装置200の一構成例を示す図である。
図14図14は、表示光DLが反射される様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、透明基板1と、配向膜2と、液晶層3と、を備えている。
【0013】
透明基板1は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。透明基板1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。透明基板1は、任意の形状を取り得る。例えば、透明基板1は、湾曲していてもよい。
【0014】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は350nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は700nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0015】
透明基板1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面(外面)F1と、第2主面(内面)F2と、側面S1と、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面S1は、第1方向A1に沿って延びた面である。図1に示す例では、側面S1は、X-Z平面と略平行な面であるが、側面S1は、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0016】
配向膜2は、第2主面F2に配置されている。配向膜2は、X-Y平面に沿って配向規制力を有する水平配向膜である。配向膜2は、例えば、光照射により配向処理が可能な光配向膜であるが、ラビングによって配向処理される配向膜であってもよいし、微小な凹凸を有する配向膜であってもよい。なお、配向膜2の代わりに、液晶層3を透明基板1に接着する接着層が設けられていてもよい。
【0017】
液晶層3は、第1方向A1において、配向膜2に重なっている。つまり、配向膜2は、透明基板1と液晶層3との間に位置し、また、透明基板1及び液晶層3に接している。
液晶層3は、第3主面(内面)F3と、第4主面(外面)F4と、を有している。第3主面F3及び第4主面F4は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。第3主面F3は、配向膜2に接している。第4主面F4は、例えば空気層に接しているが、透明な保護層で覆われてもよい。
【0018】
液晶層3は、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶CLを有している。コレステリック液晶CLは、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AXを有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸AXに沿った層厚)を示す。
【0019】
液晶層3は、反射面3Rを有している。反射面3Rでは、液晶層3への入射光のうち、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP及び液晶層3の屈折率異方性Δnに応じて決定する選択反射帯域の円偏光が反射される。例えば、第1旋回方向が右回りの場合、右回りの円偏光が反射面3Rで反射され、第1旋回方向が左回りの場合、左回りの円偏光が反射面3Rで反射される。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。また、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0020】
図1に示す例では、液晶層3は、第1主面F1の側から入射した光LTiの一部を透明基板1に向けて反射するように構成されている。なお、液晶層3は、第4主面F4の側から入射した光の一部を反射するように構成することもできる。また、液晶光学素子100において、図1に示した液晶層3に、他のコレステリック液晶を有する液晶層が積層されていてもよい。他のコレステリック液晶とは、例えば、螺旋ピッチPとは異なる螺旋ピッチを有するコレステリック液晶や、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶などである。
【0021】
次に、図1に示す液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0022】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光、紫外線、及び、赤外線を含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、透明基板1に対して略垂直に入射するものとする。なお、透明基板1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。例えば、互いに異なる複数の入射角度をもって透明基板1に光LTiが入射してもよい。
【0023】
光LTiは、第1主面F1から透明基板1の内部に進入し、第2主面F2から出射して、配向膜2を透過し、液晶層3に入射する。そして、液晶層3は、反射面3Rにおいて光LTiの一部を反射し、その他の光LTtを透過する。反射された光LTrは、波長λの円偏光である。一例では、光LTrは、可視光の波長帯の第1円偏光である。また、光LTtは、赤外線及び紫外線の他に、可視光の波長帯の第2円偏光を含んでいる。第2円偏光は、第1円偏光とは逆回りの円偏光である。
【0024】
液晶層3で反射された光LTrの進入角θは、光導波条件を満足するように設定されている。ここでの進入角θとは、液晶層3と空気との界面で全反射を起こす臨界角以上の角度に相当する。進入角θは、透明基板1の法線Nに対する角度を示す。
【0025】
透明基板1、配向膜2、及び、液晶層3が同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の光導波体となり得る。この場合、光LTrは、透明基板1と空気との界面、及び、液晶層3と空気との界面において、反射を繰り返しながら、側面S1に向けて導光される。
【0026】
図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
なお、図2では、液晶層3を第1方向A1に拡大して図示している。また、簡略化のため、コレステリック液晶CLを構成する液晶分子LM1として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LM1を図示している。図示した液晶分子LM1の配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0027】
液晶層3は、コレステリック液晶CLと、液晶性を示す添加剤(ゲスト液晶)4と、を有している。
【0028】
点線で囲んだ1つのコレステリック液晶CLに着目すると、コレステリック液晶CLは、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。複数の液晶分子LM1は、コレステリック液晶CLの一端側の液晶分子LM11と、コレステリック液晶CLの他端側の液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は、第3主面F3あるいは配向膜2に近接している。液晶分子LM12は、第4主面F4に近接している。
【0029】
図2に示す例の液晶層3において、第2方向A2に沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLの配向方向は、揃っている。つまり、第2方向A2に沿って隣接する複数の液晶分子LM11の配向方向は、ほぼ一致している。また、第2方向A2に沿って隣接する複数の液晶分子LM12の配向方向も、ほぼ一致している。
【0030】
液晶層3の反射面3Rは、図中に一点鎖線で示すように、X-Y平面に沿って延びた平面状に形成される。ここでの反射面3Rは、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0031】
このような液晶層3は、液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶光学素子100は、液晶層3に電界を形成するための電極を備えていない。
【0032】
添加剤4は、液晶層3においてほぼ均一に浸透している。添加剤4は、コレステリック液晶CLと同様に配向している。このような添加剤4は、屈折率異方性Δn4を有している。屈折率異方性Δn4は、コレステリック液晶CLの屈折率異方性Δn3よりも小さい(Δn4<Δn3)。このため、液晶層3の屈折率異方性Δnは、添加剤4が液晶層3に添加された分に応じて減少する。屈折率異方性Δnは、屈折率異方性Δn4を超えることはない。つまり、屈折率異方性Δn4は、屈折率異方性Δnよりも小さい(Δn4<Δn)。
なお、添加剤4の屈折率異方性Δn4は、ゼロであってもよい。すなわち、添加剤4は、等方性の材料であってもよい。
【0033】
一般的に、コレステリック液晶CLを有する液晶層3において、垂直入射した光に対する選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、次の式(1)で示される。
Δλ=Δn*P …(1)
選択反射帯域Δλの具体的な波長範囲は、(no*P)以上、(ne*P)以下の範囲である。
【0034】
選択反射帯域Δλの中心波長λmは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の平均屈折率nav(=(ne+no)/2)に基づいて、次の式(2)で示される。
λm=nav*P …(2)
一例では、中心波長λmは、350nm~700nmの可視光の範囲の波長である。
【0035】
上記の式(1)に基づくと、選択反射帯域Δλを小さく制限する要望に対しては、屈折率異方性Δnを減少する、もしくは、螺旋ピッチPを減少する必要がある。しかしながら、上記の式(2)で示すように、螺旋ピッチPは、中心波長λmにも影響を与える。このため、中心波長λmの短波長側へのシフトを抑制しつつ選択反射帯域Δλを縮小するためには、屈折率異方性Δnを減少することが有効である。
【0036】
本実施形態によれば、液晶層3は、コレステリック液晶CLに加えて、添加剤4を有している。添加剤4の屈折率異方性Δn4は、コレステリック液晶CLの屈折率異方性Δn3より小さい。このため、液晶層3が添加剤4を有していない場合と比較して、液晶層3の屈折率異方性Δnを減少することができる。これにより、液晶層3における選択反射帯域Δλを小さく制限することができる。
【0037】
また、液晶層3における選択反射帯域Δλを制限したことにより、液晶光学素子100の透過率が向上する。
【0038】
また、コレステリック液晶CLを形成するための材料として、所望の屈折率異方性Δnを得るための材料を選定することが難しい場合であっても、添加剤4の添加量を調整することで容易に所望の屈折率異方性Δnを実現することができる。
【0039】
図3は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの他の例を説明するための図である。
図3に示す例は、図2に示した例と比較して、第2方向A2に沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLの配向方向が互いに異なっている点で相違している。また、第2方向A2に沿って隣接するコレステリック液晶CLの各々の空間位相は、互いに異なっている。そして、複数の液晶分子LM11の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。また、複数の液晶分子LM12の配向方向も、第2方向A2に沿って連続的に変化している。これらの配向方向については、後述する。
【0040】
液晶層3の反射面3Rは、図中に一点鎖線で示すように、X-Y平面に対して傾斜している。反射面3RとX-Y平面とのなす角度φは、鋭角である。
なお、反射面3Rの形状は、図2及び図3に示したような平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面3Rの一部に凸凹を有していたり、反射面3Rの傾斜角度φが均一でなかったり、複数の反射面3Rが、規則的に整列していなかったりしてもよい。複数のコレステリック液晶CLの空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面3Rを構成することができる。
【0041】
図4は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図4には、コレステリック液晶CLの空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、コレステリック液晶CLに含まれる液晶分子LM1のうち、第3主面F3の近傍に位置する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0042】
第2方向A2に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は互いに異なる。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は略一致する。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0043】
特に、第2方向A2に並んだコレステリック液晶CLに着目すると、各液晶分子LM11の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数のコレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、図3に示した液晶層3のように、X-Y平面に対して傾斜する反射面3Rが形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子LM11の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子LM11の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子LM11の長軸方向に相当する。このような液晶分子LM11の配向方向は、配向膜2になされた配向処理によって制御することができる。
【0044】
ここで、図4に示すように、一平面内において、第2方向A2に沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を周期Tと定義する。なお、図4においてDPは、液晶分子LM11の旋回方向を示している。図3に示した反射面3Rの傾斜角度φは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。周期Tは、一例では、350nm~700nmである。
【0045】
ここで、上記の添加剤4として適用可能な材料例について図5乃至図8を参照して説明する。
【0046】
図5に示す材料例(1)~(2)は、ネマティック液晶材料の例であり、アルコキシシクロヘキシルシクロヘキサン系の材料である。このようなネマティック液晶材料の長軸が液晶層3においてY軸と平行である場合、Y軸に沿った屈折率nyがX軸に沿った屈折率nxより大きい(ny>nx)。つまり、ネマティック液晶材料は、X-Y平面において屈折率異方性Δnを有している。
図5に示す材料例(3)~(6)は、ネマティック液晶材料の例であり、シクロヘキシルシクロヘキサンビニル系の材料である。
【0047】
図6に示す材料例(7)は、ネマティック液晶材料の例であり、アルキルフェニルシクロヘキサン系の材料である。
図6に示す材料例(8)~(10)は、ネマティック液晶材料の例であり、アルコキシフェニルシクロヘキサン系の材料である。
図6に示す材料例(11)~(12)は、ネマティック液晶材料の例であり、フルオロフェニルシクロヘキサン系の材料である。
【0048】
図7に示す材料例(13)~(15)は、ネマティック液晶材料の例であり、シアノフェニルシクロヘキサン系の材料である。
【0049】
図8に示す材料例(16)~(17)は、ディスコティック液晶材料の例である。このようなディスコティック液晶材料の短軸が液晶層3においてZ軸と平行である場合、X軸に沿った屈折率nxがY軸に沿った屈折率nyと同等である(nx≒ny)。つまり、ディスコティック液晶材料は、X-Y平面において等方性を呈し、屈折率異方性Δnがほぼゼロである。
【0050】
次に、液晶光学素子100の製造方法について説明する。
【0051】
まず、図9に示すように、透明基板1を洗浄する(ステップST1)。
そして、透明基板1の第2主面F2に配向膜2を形成する(ステップST2)。配向膜2には、所定の配向処理を行う。
【0052】
そして、配向膜2の上に液晶材料(コレステリック液晶を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する(ステップST3)。その後、チャンバ内を減圧することで溶媒を除去し、塗布した液晶材料を乾燥し(ステップST4)、さらに、液晶材料をベークする(ステップST5)。ベークにより液晶材料に含まれる液晶分子は、配向膜2の配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。そして、液晶材料を室温程度まで冷却し(ステップST6)、その後、液晶材料に紫外線を照射して液晶材料を硬化する(ステップST7)。これにより、コレステリック液晶CLを有する液晶層3が形成される。
【0053】
続いて、図10に示すように、溶媒に上記の添加剤4を溶かした液晶溶液を用意する。溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、トルエン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などの有機溶媒が適用可能である。そして、液晶層3に液晶溶液を塗布する(ステップST8)。ここでの塗布とは、液晶層3を液晶溶液に浸漬したり、液晶層3に液晶溶液を滴下したりすることを含むものである。これにより、液晶溶液に含まれる添加剤4が溶媒とともに液晶層3に均一に浸透する。塗布した液晶溶液のうち、過剰な液晶溶液は、スピンナーなどを利用して除去される。必要に応じて、液晶溶液を除去するための有機溶媒を用いてもよい。
その後、透明基板1を加熱することで液晶層3に浸透した溶媒を除去し、液晶層3を乾燥する(ステップST9)。そして、透明基板1を室温程度まで冷却する(ステップST10)。
なお、液晶層3への添加剤4の添加量は、上記のステップST8乃至ST10を行う回数で調整することができる。つまり、添加量を増大したい場合には、上記のステップST8乃至ST10を複数回繰り返し行えばよい。これにより、所望の反射性能を有する液晶光学素子100が製造される。
【0054】
図10に示した工程の代わりに、図11に示す工程を適用してもよい。以下、図11に示す工程について説明する。
まず、液状の添加剤4を用意する。比較的融点が低い添加剤4は、溶媒を用いることなく、加熱することで液状化する。そして、液晶層3に添加剤4を塗布する(ステップST11)。ここでの塗布とは、液晶層3を添加剤4に浸漬したり、液晶層3に添加剤4を滴下したりすることを含むものである。これにより、添加剤4が液晶層3に均一に浸透する。
【0055】
その後、スピンナーなどを利用して過剰な添加剤4を除去する(ステップST12)。なお、必要に応じて、過剰な添加剤4を除去するための有機溶媒を用いてもよい。
そして、透明基板1を加熱することで液晶層3を乾燥させる(ステップST13)。
そして、透明基板1を室温程度まで冷却する(ステップST14)。
なお、液晶層3への添加剤4の添加量は、上記のステップST11乃至ST14を行う回数で調整することができる。つまり、添加量を増大したい場合には、上記のステップST11乃至ST14を複数回繰り返し行えばよい。これにより、所望の反射性能を有する液晶光学素子100が製造される。
【0056】
図12は、液晶層3に添加剤4が浸透する様子を説明するための図である。
【0057】
図12の左側は液晶溶液を塗布する前の液晶光学素子100を示し、図12の右側は液晶溶液を塗布した後の液晶光学素子100を示している。なお、図12は、添加剤4が添加された様子を模式的に示すものである。
【0058】
液晶溶液を塗布する前の液晶層3においては、コレステリック液晶CLは、螺旋ピッチP0を有している。
液晶溶液を塗布した後の液晶層3は、添加剤4を含む液晶溶液が浸透したことによって膨潤する。このため、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチPは、螺旋ピッチP0より拡大する。
【0059】
液晶層3が膨潤したことで得られる螺旋ピッチPは、反射すべき選択反射帯域Δλの中心波長λmに応じて設定される。
例えば、中心波長λmが450nmであり、液晶層3の平均屈折率navが1.6である場合、螺旋ピッチPは、約280nmに設定される。
また、中心波長λmが500nmであり、液晶層3の平均屈折率navが1.6である場合、螺旋ピッチPは、約310nmに設定される。
また、中心波長λmが600nmであり、液晶層3の平均屈折率navが1.6である場合、螺旋ピッチPは、約380nmに設定される。
【0060】
このように、平均屈折率navが1.6である液晶層3において、350nm~700nmの可視光の波長を中心波長λmとするためには、螺旋ピッチPは、200nm以上、450nm以下に設定される。
このとき、例えば、液晶層3の屈折率異方性Δnは、0.1より大きく、添加剤4としては、屈折率異方性Δn4が0.1より小さい材料を用いることができる。
また、他の観点では、例えば、コレステリック液晶CLの屈折率異方性Δn3は、0.1より大きく、添加剤4としては、屈折率異方性Δn4が0.1より小さい材料を用いることができる。
【0061】
《適用例》
次に、本実施形態に係る液晶光学素子100の適用例として、拡張現実を提供可能な表示装置200について説明する。
【0062】
図13は、表示装置200の一構成例を示す図である。
【0063】
表示装置200は、透明基板1と、表示モジュールDMと、第1液晶層31と、第2液晶層32と、第3液晶層33と、第4液晶層34と、第5液晶層35と、第6液晶層36と、を備えている。
【0064】
透明基板1は、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成され、第1主面F1と、第2主面F2と、を有している。また、透明基板1は、その一端側の第1領域1Aと、その他端側の第2領域1Bと、を有している。図示した例では、第1領域1A及び第2領域1Bは、第2方向A2に並び、互いに離間している。
【0065】
表示モジュールDMは、第1領域1Aにおいて、第1主面F1に対向している。表示モジュールDMは、表示光DLを出射するように構成されている。表示モジュールDMは、発光素子を含む照明装置と液晶パネルとの組み合わせであってもよいし、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、マイクロLED、ミニLEDなどの発光素子を備えた表示パネルであってもよい。表示モジュールDMは、発光素子として、赤発光素子、緑発光素子、及び、青発光素子を有している。
【0066】
赤発光素子は、中心波長λrの赤光を出射するように構成されている。緑発光素子は、中心波長λgの緑光を出射するように構成されている。青発光素子は、中心波長λbの青光を出射するように構成されている。つまり、表示モジュールDMから出射される表示光DLは、中心波長λrの赤光、中心波長λgの緑光、及び、中心波長λbの青光を有している。
【0067】
第1液晶層31は、第1領域1Aにおいて、第2主面F2に対向し、第1コレステリック液晶CL1を有している。第1液晶層31は、第2主面F2に接着されていてもよいし、図示を省略した配向膜の上に形成されていてもよい。第1コレステリック液晶CL1は、螺旋ピッチP1を有している。また、第1液晶層31は、第2主面F2に対して傾斜した反射面31Rを有している。
【0068】
第2液晶層32は、第1液晶層31に重なり、第2コレステリック液晶CL2を有している。第2液晶層32は、第1液晶層31に接着されている。第2コレステリック液晶CL2は、螺旋ピッチP2を有している。螺旋ピッチP2は、螺旋ピッチP1より大きい(P2>P1)。また、第2液晶層32は、第2主面F2に対して傾斜した反射面32Rを有している。
【0069】
第3液晶層33は、第2液晶層32に重なり、第3コレステリック液晶CL3を有している。第3液晶層33は、第2液晶層32に接着されている。第3コレステリック液晶CL3は、螺旋ピッチP3を有している。螺旋ピッチP3は、螺旋ピッチP2より大きい(P3>P2)。また、第3液晶層33は、第2主面F2に対して傾斜した反射面33Rを有している。
【0070】
反射面31R、反射面32R、及び、反射面33Rは、いずれも同様に傾斜している。図示した例では、反射面31R、反射面32R、及び、反射面33Rの各々と第2主面F2との第1方向A1に沿った間隔は、第1領域1Aから第2領域1Bに向かう方向に沿って次第に拡大している。
【0071】
なお、図示した例では、第1コレステリック液晶CL1、第2コレステリック液晶CL2、及び、第3コレステリック液晶CL3は、いずれも同じ方向に旋回しているが、いずれか1つが逆方向に旋回していてもよい。
また、第1液晶層31、第2液晶層32、及び、第3液晶層33の積層順は、図示した例に限らない。
【0072】
第4液晶層34は、第2領域1Bにおいて、第2主面F2に対向し、第4コレステリック液晶CL4を有している。第4液晶層34は、第2主面F2に接着されていてもよいし、図示を省略した配向膜の上に形成されていてもよい。また、第4液晶層34は、第2主面F2に対して傾斜した反射面34Rを有している。
第4コレステリック液晶CL4は、螺旋ピッチP4を有している。螺旋ピッチP4は、螺旋ピッチP1と同等である(P4=P1)。螺旋ピッチP1及び螺旋ピッチP4は、中心波長λbに応じて設定されている。第1コレステリック液晶CL1及び第4コレステリック液晶CL4は、同一方向に旋回している。
【0073】
第5液晶層35は、第4液晶層34に重なり、第5コレステリック液晶CL5を有している。第5液晶層35は、第4液晶層34に接着されている。また、第5液晶層35は、第2主面F2に対して傾斜した反射面35Rを有している。
第5コレステリック液晶CL5は、螺旋ピッチP5を有している。螺旋ピッチP5は、螺旋ピッチP4より大きく(P5>P4)、螺旋ピッチP2と同等である(P5=P2)。螺旋ピッチP2及び螺旋ピッチP5は、中心波長λgに応じて設定されている。第2コレステリック液晶CL2及び第5コレステリック液晶CL5は、同一方向に旋回している。
【0074】
第6液晶層36は、第5液晶層35に重なり、第6コレステリック液晶CL6を有している。第6液晶層36は、第5液晶層35に接着されている。また、第6液晶層36は、第2主面F2に対して傾斜した反射面36Rを有している。
第6コレステリック液晶CL6は、螺旋ピッチP6を有している。螺旋ピッチP6は、螺旋ピッチP5より大きく(P6>P5)、螺旋ピッチP3と同等である(P6=P3)。螺旋ピッチP3及び螺旋ピッチP6は、中心波長λrに応じて設定されている。第3コレステリック液晶CL3及び第6コレステリック液晶CL6は、同一方向に旋回している。
【0075】
反射面34R、反射面35R、及び、反射面36Rは、いずれも同様に傾斜している。図示した例では、反射面34R、反射面35R、及び、反射面36Rの各々と第2主面F2との第1方向A1に沿った間隔は、第1領域1Aから第2領域1Bに向かう方向に沿って次第に縮小している。
【0076】
なお、図示した例では、第4コレステリック液晶CL4、第5コレステリック液晶CL5、及び、第6コレステリック液晶CL6は、いずれも同じ方向に旋回しているが、いずれか1つが逆方向に旋回していてもよい。
また、第4液晶層34、第5液晶層35、及び、第6液晶層36の積層順は、図示した例に限らない。
【0077】
第1領域1Aと第2領域1Bとの間、あるいは、第1液晶層31と第4液晶層34との間においては、第2主面F2は、空気層に接している。なお、第1主面F1は、第1領域1A及び第2領域1Bを含む全域で空気層に接している。
【0078】
ここでの第1液晶層31、第2液晶層32、第3液晶層33、第4液晶層34、第5液晶層35、及び、第6液晶層36は、図3を参照して説明したように、添加剤4を有している。そして、添加剤4の屈折率異方性は、各液晶層の各々の屈折率異方性よりも小さい。また、添加剤4の屈折率異方性は、各コレステリック液晶の各々の屈折率異方性よりも小さい。
【0079】
次に、図13に示す表示装置200の光学作用について説明する。
【0080】
表示モジュールDMは、中心波長λrの赤光、中心波長λgの緑光、中心波長λbrの青光を含む表示光DLを透明基板1に向けて出射する。表示光DLは、第1主面F1から透明基板1の内部に進入し、第2主面F2から出射して、第1液晶層31、第2液晶層32、第3液晶層33に入射する。そして、第1液晶層31の反射面31R、第2液晶層32の反射面32R、及び、第3液晶層33の反射面33Rにおいて、表示光DLの一部を反射する。反射された光LTrは、再び透明基板1に入射し、第1領域1Aと第2領域1Bとの間の透明基板1と空気層との界面において、反射を繰り返しながら、第2領域1Bに向けて導光される。
【0081】
第2領域1Bにおいては、光LTrは、第2主面F2から出射して、第4液晶層34、第5液晶層35、第6液晶層36に入射する。そして、第4液晶層34の反射面34R、第5液晶層35の反射面35R、及び、第6液晶層36の反射面36Rにおいて、光LTrの一部を反射する。反射された光LTrは、透明基板1を透過する。透明基板1を透過した光LTtは、ユーザの瞳Eに導かれる。
【0082】
一方で、第1液晶層31、第2液晶層32、第3液晶層33、第4液晶層34、第5液晶層35、及び、第6液晶層36の各々は、外光LTeに含まれる特定の選択反射帯域の光のみを反射し、その他の帯域の光を透過する。また、透明基板1は、外光LTeのほとんどの成分を透過する。このため、ユーザは、表示装置200の周辺環境を視認しながら、表示モジュールDMに表示された画像を視認することができる。
【0083】
図14は、表示光DLが反射される様子を説明するための図である。
【0084】
第1液晶層31においては、隣接する第1コレステリック液晶CL1の配向方向が線形に変化することで、反射面31Rが形成されている。反射面31Rでは、表示光DLのうち、中心波長λbの青光の円偏光が反射される。
【0085】
第2液晶層32においては、隣接する第2コレステリック液晶CL2の配向方向が線形に変化することで、反射面32Rが形成されている。反射面32Rでは、表示光DLのうち、中心波長λgの緑光の円偏光が反射される。
【0086】
第3液晶層33においては、隣接する第3コレステリック液晶CL3の配向方向が線形に変化することで、反射面33Rが形成されている。反射面33Rでは、表示光DLのうち、中心波長λrの赤光の円偏光が反射される。
【0087】
第4液晶層34においては、隣接する第4コレステリック液晶CL4の配向方向が線形に変化することで、反射面34Rが形成されている。反射面34Rでは、反射面31Rで反射された中心波長λbの青光LTrが反射される。
【0088】
第5液晶層35においては、隣接する第5コレステリック液晶CL5の配向方向が線形に変化することで、反射面35Rが形成されている。反射面35Rでは、反射面32Rで反射された中心波長λgの緑光LTrが反射される。
【0089】
第6液晶層36においては、隣接する第6コレステリック液晶CL6の配向方向が線形に変化することで、反射面36Rが形成されている。反射面36Rでは、反射面33Rで反射された中心波長λrの赤光LTrが反射される。
【0090】
透明基板1を透過した光LTtは、中心波長λbの青光LTr、中心波長λgの緑光LTr、及び、中心波長λrの赤光LTrを有している。
【0091】
このような表示装置200によれば、ユーザに対して拡張現実を提供することができる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、反射帯域を制限することが可能な液晶光学素子及び表示装置を提供することができる。
【0093】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
100…液晶光学素子
1…透明基板 F1…第1主面 F2…第2主面 S1…側面
3…液晶層 CL…コレステリック液晶 3R…反射面
4…添加剤
200…表示装置 DM…表示モジュール
31…第1液晶層 CL1…第1コレステリック液晶 31R…反射面
32…第2液晶層 CL2…第2コレステリック液晶 32R…反射面
33…第3液晶層 CL3…第3コレステリック液晶 33R…反射面
34…第4液晶層 CL4…第4コレステリック液晶 34R…反射面
35…第5液晶層 CL5…第5コレステリック液晶 35R…反射面
36…第6液晶層 CL6…第6コレステリック液晶 36R…反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14